(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033400
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】長期循環物質のないポロクサマー組成物、その産生方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
C08G 65/30 20060101AFI20230303BHJP
C08G 65/08 20060101ALI20230303BHJP
A61K 31/765 20060101ALI20230303BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230303BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230303BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230303BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230303BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230303BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230303BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230303BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230303BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230303BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230303BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20230303BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230303BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230303BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230303BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20230303BHJP
A61K 35/14 20150101ALI20230303BHJP
A61K 35/18 20150101ALI20230303BHJP
A61K 35/19 20150101ALI20230303BHJP
【FI】
C08G65/30
C08G65/08
A61K31/765
A61P9/04
A61P9/10
A61P9/00
A61P25/00
A61P7/00
A61P7/06
A61P27/02
A61P7/04
A61P31/04
A61P29/00
A61P7/02
A61P11/00
A61P17/02
A61P43/00 121
A61P1/10
A61K35/14
A61K35/18
A61K35/19
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002208
(22)【出願日】2023-01-11
(62)【分割の表示】P 2020132549の分割
【原出願日】2015-07-07
(31)【優先権主張番号】62/021,697
(32)【優先日】2014-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519192577
【氏名又は名称】ライフラフト バイオサイエンシーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル,アール.マーティン
(72)【発明者】
【氏名】バラスブラマニアン,マナルサミー
(72)【発明者】
【氏名】スミス,スチュワート ブイ.
(57)【要約】
【課題】長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー組成物およびその使用を提供する。特に、LCMFポロクサマー188組成物およびその使用を提供する。ポロクサマー組成物、特にLCMFポロクサマー組成物を調製するための超臨界流体抽出(SFE)法および高圧(亜臨界)法も提供する。
【解決手段】HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーであり、a及びa’の各々はC2H4Oのパーセンテージが60~90重量%となる整数であり、bはC3H6Oの分子量が1,300~2,300Daとなる整数であり、全成分の1.5%以下が低分子量成分であり且つ全成分の1.5%以下が高分子量成分であり、多分散性値が1.07未満であり、所定の循環半減期の5.0倍以下であるLCMFポロクサマー188。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポロクサマー188であって:
前記ポロクサマー188が、式HO(CH2CH2O)a'-[CH(CH3)CH2O]b
-(CH2CH2O)aHを有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマー
であり;
aおよびa’の各々は、親水性物質(C2H4O)のパーセンテージが前記コポリマーの全分子量の60%~90重量%となるような整数であり;
aおよびa’は同一または異なり;
bは、疎水性物質(C3H6O)の分子量が1,300~2,300ダルトンとなるような整数であり;
前記コポリマーの全成分の1.5重量%以下が4,500ダルトン未満の重量平均分子量を有する低分子量成分であり;
前記コポリマーの全成分の1.5重量%以下が13,000ダルトンを上回る重量平均分子量を有する高分子量成分であり;
前記コポリマーの多分散性値が1.07未満であり;
前記ポロクサマーが、逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって評価して同じRP-HPLC条件下で全成分のうち重量平均分子量が4,500ダルトン未満の低分子量成分が1.5重量%を上回る精製ポロクサマー188よりも短い平均保持時間(tR)を有する、前記ポロクサマー188。
【請求項2】
前記RP-HPLC条件が、前記精製ポロクサマー188の前記平均tRが9.9~1
0;および前記ポロクサマーの前記平均tRが8.7~8.8となるようなものである、
請求項1に記載のポロクサマー。
【請求項3】
ポロクサマー188であって:
前記ポロクサマー188が、式HO(CH2CH2O)a'-[CH(CH3)CH2O]b
-(CH2CH2O)aHを有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマー
であり、式中:
aおよびa’の各々は、親水性物質(C2H4O)のパーセンテージが前記コポリマーの全分子量の60重量%~90重量%となるような整数であり;
aおよびa’は同一または異なり;
bは、疎水性物質(C3H6O)の分子量が1,300~2,300ダルトンとなるような整数であり;
前記コポリマーの全成分の1.5重量%以下が4,500ダルトン未満の重量平均分子量を有する低分子量成分であり;
前記コポリマーの全成分の1.5重量%以下が13,000ダルトンを上回る重量平均分子量を有する高分子量成分であり;
前記コポリマーの多分散性値がまたは1.07未満であり;
前記ポロクサマー188の容量因子(k’)が、RP-HPLCによって評価すると、同じRP-HPLC条件下での全成分のうち重量平均分子量が4,500ダルトン未満の低分子量成分が1.5重量%を上回る精製ポロクサマー188のk’よりも少ない、前記ポロクサマー188。
【請求項4】
RP-HPLC条件は、前記ポロクサマー188の平均k’が3.2~3.3であり、前記精製ポロクサマー188の平均k’が3.6~3.7となるようなものである、請求項3に記載のポロクサマー。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のポロクサマーを含む医薬組成物。
【請求項6】
薬剤的に許容される成分を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
心不全、心筋梗塞、肢虚血、ショック、脳卒中、虚血性脳卒中、鎌状赤血球病、神経変性疾患、黄斑変性、糖尿病性網膜症または鬱血性心不全の治療で使用するための請求項5または6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
急性心筋梗塞、急性肢虚血、敗血症性ショック、出血性ショック、急性脳卒中または心不全の治療で使用するための請求項5または6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
膜の再封鎖または修復によって治療可能な障害を治療すること;
組織虚血または再かん流傷害を治療すること;
炎症反応を減らすこと;
血液粘度を低下させること;
血栓溶解を促進すること;
止血を促進すること;
薬物、核酸またはタンパク質の送達用のビヒクルとして;
疎水性薬物の懸濁液を安定化させるための乳化剤として;
皮膚創傷を清浄化すること;
保存損傷易感染性血液を処理するため;または
便秘薬として
から選択される、疾患または状態を治療するための使用のための、請求項5または6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載のポロクサマーを含む組成物であって:
静脈内投与用に処方され;
5~50gの前記ポロクサマーを含む、前記組成物。
【請求項11】
血液または血液製剤と、請求項1~4のいずれか1項に記載のポロクサマーとを含む、組成物。
【請求項12】
前記血液または血液製剤が赤血球または血小板である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
疾患または障害または状態を治療するための輸血のためのものであって、治療が輸血を含む、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
前記疾患または障害または状態が、鎌状赤血球病、急性胸部症候群、末梢動脈疾患、心不全、脳卒中、末梢血管疾患、黄斑変性、呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全、虚血、ショック、アシドーシス、低体温症、貧血性分解、外科手術、外傷、失血および血液疾患から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記疾患または障害または状態が、出血性ショック、敗血症性ショック、急性ARDS、貧血性分解および急性失血から選択される、請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
R. Martin EmanueleおよびMannarsamy Balasubramanianの2014年7月7日に出願された、表題「長期循環物質のないポロクサマー組成物、その産生方法およびその使用」の米国特許仮出願第62/021,697号の優先権の利点を主張する。
【0002】
本願は、R. Martin EmanueleおよびMannarsamy Balasubramanianの同じ日に出願された、表題「長期循環物質のないポロクサマー組成物、その産生方法およびその使用」の米国特許出願番号(代理人整理番号38645.04003.US02/4003)に関する。
【0003】
本願はさらに、R. Martin Emanuele、Santosh VetticadenおよびPatrick Keranの20
14年7月7日に出願された「心不全のポロクサマー療法」という表題の米国特許仮出願第62/021,691号;R. Martin Emanuele、Santosh VetticadenおよびPatrick Keranの2015年2月27日に出願された「心不全のポロクサマー療法」という表題の米
国特許仮出願第62/126,400号;R. Martin Emanuele、Santosh VetticadenおよびPatrick Keranの2014年7月7日に出願された「心不全のポロクサマー療法」とい
う表題の国際PCT出願第PCT/US14/45627号に関連し、そして本願はさらに、各々、R. Martin Emanuele、Santosh VetticadenおよびPatrick Keranの同じ日に出
願された「心不全のポロクサマー療法」という表題の国際PCT出願番号(代理人整理番号38645.04001.WO12/4001BPC)および米国出願番号(代理人整理番号38645.04001.US12/4001)にも関連する。
【0004】
許される場合、出願の各々の主題は、その全体で参照することによって組み込まれる。
【0005】
長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー組成物およびその使用を提供する。LCMFポロクサマー組成物を調製するための超臨界流体抽出(SFE)法および高圧(亜臨界)法も提供する。
【背景技術】
【0006】
ポロクサマーと呼ばれるあるポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレン(POP/POE)コポリマーは、ヒトまたは動物に投与された場合、有益な生物学的効果がある。これらのコポリマーは、単独で、または例えば、抗凝固剤、フリーラジカルスカベンジャー、抗炎症薬、抗生物質、膜安定化薬および潅流液(perfusion media)をはじめとする他
の化合物との組み合わせのいずれかで、循環器疾患を治療するために使用されてきた。ポロクサマー188(P188)(例えば、米国特許第5,696,298号を参照)は、ヒトおよび動物の血液および他の体液における病的疎水性相互作用を治療するために有益である。ポロクサマーの市販の製剤は、構成分子のサイズおよび構造が大きく異なる分子の非常に不均一な集団を含む。市販のポロクサマー中に存在する分子の多様性は生物活性の予測を困難にする可能性があり、また望ましくない生物活性に至る可能性がある。したがって、ポロクサマーの別の製剤が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
別のポロクサマー製剤ならびにそれらの製造方法および使用方法を提供する。長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー、特にLCMFポロクサマー188を提供する。LCMFポロクサマーをヒト対象などの対象に投与した場合、LCMFポロクサマーをヒト
などの対象に投与した際にコポリマーの分布におけるすべての成分の循環半減期がコポリマーの分布における主成分の循環半減期よりも5.0倍以下長くなるような、主ピークよりも有意に長い半減期を有する物質を対象中で生じない。概して、ヒトにおけるLCMFポロクサマー188の全成分の半減期は12時間未満である。ポロクサマー188などのポロクサマーの市販の製剤および従来の製剤は、ヒトに投与した場合、コポリマーの分布中の主成分の循環半減期の5.0倍超である半減期を有する長期循環物質(LCM)を含む。低分子量不純物の除去を含む、LCMFポロクサマーおよび他のポロクサマーの調製方法も提供する。
【0008】
LCMFポロクサマーには、式:
HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するLCMFポロクサマーポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーがあり、式中、aおよびa’の各々は、親水性物質(C2H4O)のパーセンテージがコポリマーの全分子量の約60%~90重量%または60%~90重量%となるような整数であり;aおよびa’は同一または異なり;bは、疎水性物質(C3H6O)の分子量が約1,300~2,300ダルトン(Da)になるような整数であり;コポリマーの分布における全成分の1.5%以下は4,500Da未満の平均分子量を有する低分子量成分であり;コポリマーの分布における全成分の1.5%以下は13,000Da超の平均分子量を有する高分子量成分であり;コポリマーの多分散性値は約1.07未満または1.07未満、例えば1.06以下、1.05以下、1.04以下、1.03以下および1.02以下であり;そしてコポリマーの分布における全成分の循環半減期は、対象に投与した場合、コポリマーの分布における主成分の循環半減期よりも5.0倍以下長い。LCMFポロクサマーは、長期循環物質(LCM)を含む、米国特許第5,696,298号で記載されているポロクサマーなどの当該技術分野で公知のポロクサマー188の製剤、およびそれらの市販の製剤よりも親水性が高い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188であって、LCMFポロクサマー188が、式HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーであり;aおよびa’の各々は、親水性物質(C2H4O)のパーセンテージがコポリマーの全分子量の約60%~90重量%となるような整数であり;aおよびa’は同一または異なり;bは、疎水性物質(C3H6O)の分子量が約1,300~2,300ダルトンになるような整数であり;コポリマーの分布における全成分の1.5%以下は4,500ダルトン未満の平均分子量を有する低分子量成分であり;コポリマーの分布における全成分の1.5%以下は13,000ダルトンを上回る平均分子量を有する高分子量成分であり;コポリマーの多分散性値は約1.07未満または1.07未満、例えば1.06、1.05、1.04もしくは1.03、または1.06未満、1.05未満、1.04未満もしくは1.03未満であり;そしてヒト対象に静脈内投与した後、主ピークを構成しないいかなる成分の循環血漿半減期もコポリマーの分布における主成分の循環半減期よりも5.0倍以下長い、長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188を提供する。
【0010】
コポリマーのポリマー分布を構成する全成分が、対象へ静脈内投与した後のコポリマーの主成分の循環半減期よりも5.0倍以下または4.0倍以下、または3.0倍以下長いヒト対象などの対象の血漿中の循環半減期を有する実施形態が含まれる。例えば、コポリマーの分布における全成分は、ヒト対象に投与された場合、コポリマーの分布における主成分の循環半減期よりも4倍以下長い対象の血漿中の循環半減期を有する。コポリマーの分布における全成分が、ヒト対象に投与された場合、30時間以下、25時間以下、20時間以下、15時間以下、12時間以下、10時間以下、9時間以下、8時間以下または7時間以下、例えば10または12時間以下である対象の血漿中の半減期を有する実施形
態が含まれる。LCMFポロクサマーは、したがってLCMを含まない。
【0011】
長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188であって:LCMFポロクサマー188が、式HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーであって;aおよびa’の各々は、親水性物質(C2H4O)のパーセンテージがコポリマーの全分子量の約60%~90重量%となるような整数であり;aおよびa’は同一または異なり;bは、疎水性物質(C3H6O)の分子量が約1,300~2,300ダルトンとなるような整数であり;コポリマーの分布における全成分の1.5%以下は4,500ダルトン未満の平均分子量を有する低分子量成分であり;コポリマーの分布における全成分の1.5%以下は、13,000ダルトンを上回る平均分子量を有する高分子量成分であり;コポリマーの多分散性値が約1.07未満または1.07未満である、長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188を本明細書中で提供し;そしてそのLCMFポロクサマーは、長期循環物質(LCM)を含む精製ポロクサマー188よりも親水性であり、そのためにコポリマーの分布における全成分の循環半減期は、コポリマーの分布における主成分の循環半減期よりも5.0倍以下長くなる。
【0012】
長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188であって:LCMFポロクサマー188が、式HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーであり;aおよびa’の各々は、親水性物質(C2H4O)のパーセンテージがコポリマーの全分子量の約60%~90重量%となるような整数であり;aおよびa’は同一または異なり;bは、疎水性物質(C3H6O)の分子量が約1,300~2,300ダルトンとなるような整数であり;コポリマーの分布における全成分の1.5%以下は4,500ダルトン未満の平均分子量を有する低分子量成分であり;コポリマーの分布における全成分の1.5%以下は、13,000ダルトンを上回る平均分子量を有する高分子量成分であり;コポリマーの多分散性値は約1.07未満または1.07未満である、長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188を提供し;そしてそのLCMFは、LCMを含む精製ポロクサマー188よりも短い、逆相高性能液体クロマトグラフィーによって評価される平均(mean)保持時間(tR)を有する。いくつかの実施形態では、例えば、RP-HPLC条件は、LCM含有ポロクサマー188の平均(mean)tRが約9.9~10または9.9~10;およびLCMFポロクサマーの平均tRが約8.7~8.8または8.7~8.8となるようなものである。
【0013】
長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188であって:LCMFポロクサマー188が、式HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーであり;aおよびa’の各々は、親水性物質(C2H4O)のパーセンテージがコポリマーの全分子量の約60%~90重量%となるような整数であり;aおよびa’は同一または異なり;bは、疎水性物質(C3H6O)の分子量がおよそ1,300~2,300ダルトンになるような整数であり;コポリマーの分布における全成分の1.5%以下は4,500ダルトン未満の平均分子量を有する低分子量成分であり;コポリマーの分布における全成分の1.5%以下は13,000ダルトンを上回る平均分子量を有する高分子量成分であり;コポリマーの多分散性値はおよそ1.07未満または1.07未満であり;そしてRP-HPLCによって評価される容量因子(capacity factor)(k’)が、同じ条件下の精
製LCM含有ポロクサマー188のk’よりも低い、長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188を提供する。例えば、RP-HPLC条件は、LCMFポロクサマーの平均(mean)k’が約3.2~3.3または3.2~3.3、およびLCM含有ポロクサマー188の平均(mean)k’が約3.6~3.7または3.6~3.7となるようなものである。
【0014】
本明細書中の実施形態で、LCMFポロクサマーは、約1,400~2,000ダルトン(Da)または1,400~2,000Da、例えば1,750Daの分子量を有する疎水性物質と、コポリマーの約70%~90%または70%~90重量%を構成する親水性部分とを有するポロクサマーであり得る。LCMFポロクサマーは、7,680~9,510ダルトン、例えば8,400~8,800ダルトンの平均分子量を有し得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、13,000ダルトンを上回る製剤中の高分子量成分のパーセンテージはポロクサマー製剤の成分の全分布の1%未満を構成する。いくつかの実施形態では、ヒト対象に静脈内投与した後、LCMFポロクサマーは、主ピークの循環血漿半減期の4倍を超える循環半減期を有する成分をもたらさない。いくつかの実施形態では、13,000ダルトンを越える製剤中の高分子量成分のパーセンテージが、ポロクサマー製剤の成分の全分布の0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満またはそれ以下を構成する。
【0016】
LCMFポロクサマーは、対象に投与された場合、本明細書中の開示全体で記載し示すようにLCM含有ポロクサマーの成分よりも短い時間内で全成分が消失する点でLCM含有ポロクサマーとは異なる。RP-HPLCによって特性評価した場合、本明細書中で提供するLCMFポロクサマーは、平均(mean)k’および平均tRが対応するLCM含有ポロクサマーよりも少なくなるようなものである。LCMFポロクサマーは対応するLCM含有ポロクサマーよりも親水性である。
【0017】
本明細書中で記載するものをはじめとする超臨界流体抽出法によって産生されるLCMFポロクサマーを提供する。例えば:a)ポロクサマー溶液を抽出容器中に導入し、ポロクサマーを第1アルカノール中に溶解させて溶液を形成すること;b)ポロクサマー溶液と、第2アルカノールおよび超臨界二酸化炭素を含む抽出溶媒とを、超臨界二酸化炭素を第1の一定期間維持する温度および圧力下で混合すること、ただし、前記温度は二酸化炭素の臨界温度より高いが40℃以下であり;前記圧力は220bar~280barであり;前記アルカノールは全抽出溶媒の7%~8重量%であるアルカノール濃度で提供される;およびc)ステップb)における第2アルカノールの抽出溶媒中の濃度を抽出法の時間とともに勾配段階で複数回増加させ、複数回の各々はさらなる一定期間の間に行うこと;ただし、連続ステップの各々で、アルカノール濃度を第2アルカノールの前の濃度と比べて1~2%増加させる;およびd)抽出容器から抽出溶媒を除去し、それによってラフィネートポロクサマー製剤から抽出された物質を除去することを含む方法によって製造されるLCMFポロクサマーを提供する。
【0018】
LCMFポロクサマーを製造するためのいくつかの実施形態では、a)において、ポロクサマーと第1アルカノールの重量比は約2:1~3:1または2:1~3:1(両端を含む)である;および/またはステップc)における複数回は2、3、4または5勾配段階で行う;および/またはステップc)は:i)第2アルカノールの濃度を約7%~8%から約8.2%~9.5%まで第2の一定期間中に増加させる;およびii)第2アルカノールの濃度を約8.2%から9.5%から約9.6%から11.5%まで第3の一定期間中に増加させることを含む2ステップで実施することができる。特定の実施形態では、LCMFポロクサマーを:
ステップb)におけるアルカノール濃度が約7.4重量%または7.4重量%である;
ステップi)におけるアルカノール濃度が約9.1重量%または9.1重量%である;および
ステップii)におけるアルカノール濃度が約10.7重量%または10.7重量%である方法によって製造する。
【0019】
第1の一定期間、第2の一定期間および第3の一定期間の各々は2時間~12時間で実施することができる;一定期間は同一または異なり得る。例えば、第1の一定期間は2時間~6時間の間;第2の一定期間は2時間~6時間の間;そして第3の一定期間は4時間~10時間の間で実施することができる。LCMFポロクサマーを製造する方法において、第1および第2アルカノールは各々独立して、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびそれらの組み合わせから選択される。例えば、第1および第2アルカノールは同一または異なり得、例えば第1アルカノールはメタノールであり、第2アルカノールはメタノールまたは異なるアルカノールである。抽出された物質を除去するステップd)は、ステップb)およびc)全体を通して実施できる。方法は例えばバッチ法または連続法として実施することができる。
【0020】
本明細書中の実施形態では、当該方法によって製造されるLCMFポロクサマーはLCMFポロクサマー188である。上記および本開示全体にわたって記載するようなLCMFポロクサマー188を含むLCMFポロクサマーを製造する方法も提供する。
【0021】
本明細書中で提供するLCMFポロクサマーを含む組成物を提供する。組成物は薬剤的に許容されるビヒクル中で処方された医薬組成物であり得る。特に、組成物、および本明細書中で提供するLCMFポロクサマーを含有または含む医薬組成物を提供する。LCMFポロクサマー188を含む組成物を提供する。長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188を含む組成物を提供し:当該組成物は静脈内投与用に処方され;そして組成物は5~50gのLCMFポロクサマーを含む。LCMFポロクサマーは、本明細書中で提供するいずれかを含む任意のLCMFポロクサマーであり得る。ポロクサマーを投与する任意の疾患または障害または状態の治療の組成物および方法の使用を提供する。例示的な疾患および状態としては、限定されるものではないが、心不全、心筋梗塞、脳卒中、ショックおよび鎌状赤血球病、例えば限定されるものではないが、急性心筋梗塞、肢虚血、ショック、急性脳卒中、虚血性脳卒中、糖尿病性網膜症、出血性ショック、神経変性疾患、黄斑変性、糖尿病性網膜症および鬱血性心不全が挙げられる。
【0022】
LCMFポロクサマー組成物は、例えば限定されるものではないが、膜の再封鎖および修復によって治療される障害の治療;組織虚血および再かん流傷害の治療;炎症反応の軽減;血液粘度の低下;血栓溶解の促進;止血の促進または維持をはじめとする他の障害、状態、疾患および使用のため;薬物、核酸またはタンパク質の送達のビヒクルとして;疎水性薬物の懸濁液を安定化させる乳化剤として;皮膚創傷の清浄化;化粧品処方中の界面活性剤として;保存損傷易感染性血液の治療または血液および血液製剤中の保存損傷の予防のため;パーソナルケア製品および石けんの粘度を調節するため;便秘薬として、および当業者に公知の他の使用のために使用することができる。
【0023】
LCMFポロクサマーを含む組成物は、血液、赤血球および/もしくは血液製剤、例えば濃厚赤血球中に処方することができるか、またはこれらを含み得る。そのような組成物は輸血のために使用できる。輸血は、限定されるものではないが、鎌状赤血球病、急性胸部症候群、末梢動脈疾患、心不全、脳卒中、末梢血管疾患、黄斑変性、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全、虚血、ショック、アシドーシス、低体温症、貧血性分解、外科手術、外傷、失血および血液疾患をはじめとする疾患の治療;および輸血を含むあらゆる治療で使用される。これらとしては、出血性ショック、敗血症性ショックおよび急性失血が挙げられる。したがって、輸血のための組成物の使用、ならびに鎌状赤血球病、急性胸部症候群、末梢動脈疾患、心不全、脳卒中、末梢血管疾患、黄斑変性、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全、虚血、ショック、例えば出血性ショックおよび敗血症性ショック、アシドーシス、低体温症、貧血性分解、外科手術、外傷、急性失血ならびに血液疾患から選択される疾患または障害にかかっている対象に対して組成物を投与するこ
とによる治療方法であって、治療が輸血を含む治療方法も提供する。
【0024】
LCMFポロクサマーは、LCMを除去する任意の方法によって調製できる。これらの方法には、限定されないが、a)ポロクサマー188溶液を抽出容器に導入し、ポロクサマーを第1アルカノール中に溶解させて溶液を形成するステップ;b)ポロクサマー溶液と、第2アルカノールおよび超臨界液体を含む抽出溶媒とを、超臨界液体を維持する温度および圧力下で混合するステップであって、抽出溶媒中の第2アルカノールの濃度を抽出法の時間とともに増加させるステップ;およびc)抽出溶媒を抽出容器から除去し、それによって抽出された物質をポロクサマー製剤から除去し、それによってLCMFポロクサマーを製造するステップを含む方法によって、LCMFポロクサマー188または後述するものなど任意の最適なポロクサマーを調製するための記載した調製法が含まれる。
【0025】
当該方法には、a)ポロクサマー188溶液を抽出容器中に導入し、ポロクサマーを第1アルカノール中に溶解させて溶液を形成すること;b)ポロクサマー溶液と、第2アルカノールおよび超臨界二酸化炭素を含む抽出溶媒とを、超臨界二酸化炭素を第1の一定期間維持する温度および圧力下で混合すること、ただし、前記温度は二酸化炭素の臨界温度より高いが40℃以下であり;前記圧力は220bar~280barであり;前記アルカノールは全抽出溶媒の7%~8重量%であるアルカノール濃度で提供される;c)ステップb)における第2アルカノールの抽出溶媒中の濃度を抽出法の時間とともに勾配段階で複数回増加させること、ただし、複数回の各々はさらなる一定期間の間で行い;連続ステップの各々で、アルカノール濃度を第2アルカノールの前の濃度と比べて1~2%増加させる;および抽出容器から抽出溶媒を除去し、それによってラフィネートポロクサマー製剤から抽出された物質を除去し、それによってLCMFポロクサマーを製造することを含む、長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマーの調製方法が含まれる。
【0026】
いくつかの実施形態では、抽出された物質を除去するステップd)は、ステップb)およびc)の全体を通して実施することができる。上述のように、ステップa)において、ポロクサマーと第1アルカノールの重量比は約2:1~3:1または2:1~3:1(両端を含む)であり得る;および/またはステップc)における複数回は2、3、4または5勾配段階で行う。ステップc)は、i)第2アルカノールの濃度を約7%から8%から約8.1%から9.5%まで第2の一定期間の間で増加させること;およびii)第2アルカノールの濃度を約8.2%から9.5%から約9.6%から11.5%まで第3の一定期間の間で増加させることを含む2ステップで実施することができる。特定の実施形態において、ステップb)におけるアルカノール濃度は約7.4重量%または7.4重量%である;ステップi)におけるアルカノール濃度は約9.1重量%または9.1重量%;および/またはステップii)におけるアルカノール濃度は約10.7重量%または10.7重量%である。第1の一定期間、第2の一定期間および第3の一定期間の各々は2時間~12時間実施することができ;そして一定期間は同じかまたは異なり得る。例えば、第1の一定期間は2時間~6時間実施することができ;第2の一定期間は2時間~6時間実施することができ;そして第3の一定期間は4時間~10時間実施することができる。第1および第2アルカノールは各々独立して、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびそれらの組み合わせから選択することができる。各々は同一または異なり得、例えば第1アルカノールはメタノールであり得る、および/または第2アルカノールはメタノールであり得る。
【0027】
LCMFポロクサマーを調製するための抽出法であって:a)ポロクサマーを抽出容器に装入し、そしてポロクサマーを第1アルカノールに溶解させて溶液を形成するステップと;b)第2アルカノールおよび圧力下の超臨界液体を含む抽出溶媒と溶液とを混合して抽出混合物を形成するステップであって、第2アルカノールの抽出溶媒中の濃度を抽出法の時間とともに増加させるステップと;c)抽出溶媒を抽出容器から除去し、それによっ
て低分子量物質をポロクサマーから除去するステップとを含む、前記抽出法を提供する。いくつかの実施形態において、当該方法は、a)ポロクサマーを抽出容器に装入し、アルコール、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、アミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される第1溶媒中にポロクサマーを溶解させて溶液を形成すること;b)抽出溶媒と溶液とを混合して抽出混合物を形成すること、ただし、抽出溶媒は高圧二酸化炭素と第1溶媒とを含み、抽出溶媒中の溶媒の濃度を抽出法の時間とともに増加させる;およびc)抽出溶媒を抽出容器から除去し、それによって低分子量不純物をポロクサマーから除去することを含む。方法の実施形態において、ステップcの後に、方法はさらに繰り返しステップbおよびcを含み得る。
【0028】
本明細書中で記載する方法で使用するポロクサマーは、限定されるものではないが、ポロクサマー188、ポロクサマー331およびポロクサマー407をはじめとする任意のポロクサマーであり得る。上述のように、全ての方法に関して、第1および第2アルカノールは各々独立して、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびそれらの組み合わせから選択される。例えば、アルカノールの一方または両方はメタノールであり得る。本明細書中で提供するすべての方法において、圧力下の超臨界液体は、限定されるものではないが、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、アンモニアおよびフレオンなどの任意の好適な超臨界液体であり得る。特定の実施形態において、圧力下の超臨界液体は二酸化炭素である。LCMFポロクサマー188などのLCMFポロクサマーを調製する方法の実施形態において、抽出溶媒はメタノールと二酸化炭素とを含む。例示的なメタノールと二酸化炭素との比は1:100~約15:100または1:100~15:100、例えば2:100~約10:100または2:100~10:100である。メタノールと二酸化炭素との比は当該方法を実施する過程にわたって増加させることができる。本明細書中の方法にはバッチ法および連続法が含まれる。当該方法を実施する例示的な実施形態では、抽出容器を125~500barの範囲内、例えば25~100bar、または200bar~400barもしくは280bar~340barの範囲内で加圧することができる。抽出容器の温度は10℃~80℃であり得る。方法の実施形態において、第2アルカノールは、3%~20%または3%~15%の全抽出溶媒のパーセンテージ(w/w)として提供することができる。
【0029】
上記方法のステップb)において、抽出溶媒中のステップb)の第2アルカノールの濃度は、抽出法の時間とともに勾配段階で複数回増加させることができ:複数回の各々はさらなる所定の期間に行う;および連続ステップの各々において、アルカノール濃度を、例えば、前の第2アルカノール濃度と比べて1~2%増加させ;そして抽出溶媒を抽出容器から除去し、それによって抽出された物質をラフィネートポロクサマー製剤から除去する。
【0030】
他の実施形態において、LCMFポロクサマーを精製する方法は:a)ポロクサマー溶液を抽出容器に導入するステップであって、ポロクサマーを溶媒中に溶解させて溶液を形成し、溶媒が、アルコール、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、アミン、およびそれらの混合物から選択されるステップと;b)ポロクサマー溶液と、溶媒および高圧二酸化炭素を含む抽出溶媒とを混合するステップであって、抽出溶媒中の溶媒の濃度を抽出法の時間とともに増加させるステップと;c)抽出溶媒を抽出容器から除去し、それによって抽出された物質をポロクサマーから除去してLCMFポロクサマーを製造するステップとを含み得る。ステップa)における溶媒はメタノールであり得る。抽出溶媒はメタノールと二酸化炭素とを含み得る。抽出された物質は4,500ダルトン未満の低分子量不純物を含む。上述のものを含み、本明細書中で例示する方法は、LCMFポロクサマー、特に、式HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aH(式中:aまたはa’の各々は、親水性物質(C2H4O)のパーセンテージがコポリマーの全分子量の約60%~90重量%となるような整数であり;aおよびa’は同一または異
なり;そしてbは、疎水性物質(C3H6O)の分子量が約1,300~2,300ダルトンとなるような整数である)を有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーであるポロクサマーを含む、本明細書中の開示全体にわたって記載する特性を有するLCMFポロクサマーを製造することができる。結果として得られるポロクサマーは、本明細書中で記載するようなLCM物質を有しないLCMFポロクサマー、例えばポロクサマーLCMF188であり:LCMFポロクサマー188は、式HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーであり;aおよびa’の各々は、親水性物質(C2H4O)のパーセンテージがコポリマーの全分子量の約60%~90重量%となるような整数であり;aおよびa’は同一または異なり;bは、疎水性物質(C3H6O)の分子量がおよそ1,300~2,300ダルトンとなるような整数であり;コポリマーの分布中の全成分の1.5%以下は4,500ダルトン未満の平均分子量を有する低分子量成分であり;コポリマーの分布中の全成分の1.5%以下は13,000ダルトンを上回る平均分子量を有する高分子量成分であり;コポリマーの多分散性値はおよそ1.07未満または1.07未満であり;そしてポロクサマーは、ヒトなどの対象に投与された場合、コポリマーの分布における全成分の循環半減期が、コポリマーの分布における主成分の循環半減期よりも5.0倍以下長くなるようなLCM物質を含まない。結果として得られるLCMFポロクサマー、例えばLCMFポロクサマー188は、精製LCM含有ポロクサマー188などの対応するLCM含有ポロクサマーよりも親水性である。結果として得られるLCMFポロクサマーは、本明細書中で例示し、説明するものなどのRP-HPLCに関する同じ適切な条件下で評価した場合、対応するLCM含有ポロクサマーよりも低い平均tRおよび低いk’を有する。
【0031】
結果として得られるポロクサマーがLCMFポロクサマーであることを確認または特定する方法も提供する。これらの方法は、例えば、LCMFポロクサマーをRP-HPLCで試験すること、ならびに物質と、出発物質および/もしくはLCMを含むことが知られている標準とを比較すること、またはポロクサマーの親水性を評価し、それと出発物質および/もしくはLCM物質を含むことが知られている標準とを比較することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本明細書中で記載する図面は、すべての可能な実施ではなく選択された実施形態だけを例示するためであり、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0033】
【
図1】
図1は、ポロクサマーの超臨界流体抽出法(SFE)のための一般的過程100である。
【
図2】
図2は、本明細書中で記載する方法を使用してポロクサマー188などのポロクサマーを調製するための過程100’の具体例である。
【
図3】
図3は、本明細書中で記載する方法を使用して、ポロクサマー188などのポロクサマーを調製するための過程100”の具体例である。
【
図4】
図4は、本明細書中で提供する方法において有用な抽出装置を示す。
【
図5】
図5は、溶媒分布床中の異なるサイズのステンレス球の断面の一実施形態を示す。
【
図6】
図6A~6Bは、市販のポロクサマー188(パネルA)と本明細書中で提供する実施形態にしたがって精製した物質(パネルB)中の低分子量物質含有量のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)比較を示す。
【
図7】
図7A~Bは、経時的な血漿中の成分の分子量分布を示す拡大したHPLC-GPCクロマトグラムを示す。
【
図8】
図8A~Bは、Grindel et al. (2002) (Biopharmaceutics & Drug Disposition 23:87-103)で記載されるような精製ポロクサマー188の48時間の連続IV注入中およびその後の健常なヒトにおけるポロクサマー188(パネルA)および高分子量成分(パネルB)の個々の血漿濃度を示す。
【
図9】
図9は、15%LCMF188と15%P188(商標Flocor(登録商標)で入手可能)の組成物のプロフィールを、他のポロクサマーおよびポリマー(異なる疎水性/親水性のもの)に対して比較した逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)クロマトグラムであり、LCMF188がP188よりも親水性であることを示す。
【
図10】
図10は、LCMFポロクサマー188の様々なロットを精製ポロクサマー188と比較し、親水性の差異を確認するRP-HPLCクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
概要
A.定義
B.ポロクサマー、ポロクサマー188、LCM含有ポロクサマー188およびLCMFポロクサマーの分子多様性
1.ポロクサマー
2.ポロクサマー188
3.ポロクサマー188の分子多様性
a.低分子量成分
b.長期循環半減期をもたらす成分
C.長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー
D.ポロクサマーを精製するための抽出法
1.抽出のための過程
a.超臨界法
b.高圧法
2.抽出容器およびシステム
3.抽出および抽出剤の除去
4.精製ポロクサマーの調製のための例示的方法
a.低分子量(LMW)成分の除去
b.長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマーの調製
5.LCMFポロクサマーのアイデンティティーを確認するための方法
E.医薬組成物および処方
1.処方
2.投与量
3.投与量および投与
F.ポロクサマー188およびLCMFP188の方法および治療的使用
G.実施例
【0035】
A.定義
別段の定義がない限り、本明細書中で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中の開示全体にわたって言及するすべての特許、特許出願、公開出願および刊行物、Genbank配列、データベース、ウェブサイトおよび他の公開された資料は、別段の記載がない限り、それらの全体が参照により組み込まれる。本明細書中の用語について複数の定義がある場合、本章のものが優先する。URLまたは他のそのような識別子またはアドレスを参照する場合、そのような識別子は変わる可能性があり、インターネット上の特定の情報は出現しては消えていく可能性があるが、インターネットを検索することによって同等の情報を見出すことができると理解される。それに対する参照は、そのような情報の有効性および公開を立証する。
【0036】
本明細書中で用いる場合、ポロクサマーはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの
合成ブロックコポリマーである。「ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマー」、「PPC」または「ポロクサマー」は、以下の化学式:
HO(C2H4O)a’─[C3H6O]b─(C2H4O)aH
を有する、ポリオキシエチレン(POE)のブロックが両側にあるポリオキシプロピレン(POP)の中央ブロックを含むブロックコポリマーを指し、式中:a’およびaは、同一または異なり得、各々が、(C2H4O)によって表される親水性部分(すなわち、コポリマーのポリオキシエチレン部分)がコポリマーの約60重量%~90重量%、例えばコポリマーの70重量%~90重量%を構成するような整数であり;bは、(C3H6O)bによって表される疎水性物質(すなわち、コポリマーのポリオキシプロピレン部分)がおよそ950~4,000ダルトン(Da)、例えば約1,200~3,500Da、例えば1,200~2,300Da、1,500~2,100Da、1,400~2,000Daまたは1,700~1,900Daの分子量を有するような整数である。例えば、親水性部分の分子量は5,000~15,000Daであり得る。上記一般式を有する例示的ポロクサマーは、aまたはa’が5~150の整数であり、bが15~75の整数であるポロクサマー、例えばaが70~105の整数であり、bが15~75の整数であるポロクサマーを含む。ポロクサマーとしては、ポロクサマー188(例えば、商標Pluronic(登録商標)F-68、Flocor(登録商標)、Kolliphor(登録商標)およびLutrol(登録商標))で販売されているもの)が挙げられる。
【0037】
ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーの命名法はモノマー組成に関連する。ポロクサマー数の上2桁に100を掛けると、疎水性ポリオキシプロピレンブロックのおよその分子量になる。下1桁に10を掛けると、親水性ポリオキシエチレン含有量のおよその重量パーセントが得られる。例えば、ポロクサマー188は、親水性ポリオキシエチレンブロック含有量が全分子量の約80%である、約1,800Daのポリオキシプロピレン疎水性物質を含むポリマーを表す。
【0038】
ポロクサマーは、2ステップで、まずポリオキシプロピレンコアを構築し、次いでポリオキシエチレンをポリオキシプロピレンコアの末端に付加することによって合成することができる。両ステップ中の重合速度における変動のために、ポロクサマーは、様々な分子量の不均一ポリマー種を含む。ポリマー種の分布は、限定されるものではないが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)をはじめとする標準的技術を用いて特性評価することができる。
【0039】
本明細書中で用いる場合、ポロクサマー188(P-188またはP188とも呼ばれる)は、以下の化学式:
HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーを指し、式中、aおよびa’は同一または異なり得、各々は、(C2H4O)によって表される親水性部分(すなわち、コポリマーのポリオキシエチレン部分)が約60%~90%、例えば約80%または81%を構成し、およびbは、(C3H6O)によって表される疎水性物質がおよそ1,300~2,300Da、例えば1,400~2,000Da、例えばおよそ1,750Daの分子量を有するような整数である。例えば、aは約79であり、bは約28または28である。化合物の平均全分子量はおよそ7,680~9,510Da、例えば概して8,400~8,800Da、例えば約8,400Daまたは8,400Daである。ポロクサマー188は、ポリマーの全体の鎖長が主に異なるが、不飽和を有する切断ポリマー鎖と、ある低分子量グリコールも含む不均質なポリマー種の分布を含み得る製剤である。低分子量(LMW)ポリマー種および高分子量(HMW)ポリマー種を表す主ピークと両側の「ショルダー」ピークとを含む種プロフィール(例えばGPCによって決定)を示すものも、ポロクサマー188分子に含まれる。ポロクサマー188はまた、主成分以外の種を除去するかまたは減らすために精製される物質を指す。
【0040】
本明細書中で用いる場合、ポロクサマー188製剤に関連した「主成分」または「主ピーク」は、約13,000Da未満でかつ約4,500Daを上回る分子量を有し、約7,680~9,510Da、例えば概して8,400~8,800Da、例えば約8,400Daまたは8,400Daの平均分子量を有するコポリマー分子の種を指す。主ピーク種は、クロマトグラフィー条件に応じて14~15分でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって溶出するものを含む(米国特許第5,696,298号を参照)。
【0041】
本明細書中で用いる場合、ポロクサマー188製剤の種または成分に関する「低分子量」または「LMW」は、概して4,500Da未満の分子量を有する成分を指す。LMW種は、クロマトグラフィー条件に応じて15分後にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって溶出するものを含む。(米国特許第5,696,298号を参照)。そのような不純物は、低分子量ポロクサマー、ポロクサマー分解産物(アルコール、アルデヒド、ケトン、およびヒドロペルオキシドを含む)、ジブロックコポリマー、不飽和ポリマー、ならびにオリゴ(エチレングリコール)およびオリゴ(プロピレングリコール)を含むオリゴマーグリコールを含み得る。
【0042】
本明細書中で用いる場合、ポロクサマー188製剤の種または成分に関する「高分子量」または「HMW」は、概して13,000Da超、例えば14,000Da超、15,000Da超、16,000Da超またはそれ以上の分子量を有する成分を指す。HMW種は、クロマトグラフィー条件に応じて13~14分でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって溶出するものを含む(米国特許第5,696,298号を参照)。
【0043】
本明細書中で用いる場合、「多分散性」または「D」は、ポリマー組成物の特定の分子量分布の広がりを指す。単分散サンプルはすべての分子が同一であるものとして定義される。そのような場合、多分散性(Mw/Mn)は1である。狭い分子量標準は1に近いD値を有し、典型的なポリマーは2~5の範囲を有する。あるポリマーは20を上回る多分散性を有する。したがって、高い多分散性値は、所与の調製物中の分子の集団のサイズにおける幅広い変動を意味し、一方、低い多分散性値は変動が少ないことを意味する。多分散性を評価するための方法は当該技術分野で公知であり、米国特許第5,696,298号で記載されるような方法を含む。例えば、多分散性はクロマトグラムから決定できる。多分散性値は、採用したゲル浸透カラムの特定のクロマトグラム条件、分子量標準およびサイズ排除特性に応じて変動する可能性があると理解される。本明細書中の目的に関して、多分散性への言及は、米国特許第5,696,298号で用いられるとおりであり、カラムヒーターモジュール、モデル410屈折率検出器、Maxima820ソフトウェア(すべてマサチューセッツ州ミルフォードのMilliporeのWaters Div.から得られる)、直列の2つのLiChrogel PS-40カラムおよびLiChrogel PS-20カラム(ニュージャージー州ギブズタウンのEM Science)、ならびにポリエチレングリコール分子量標準(マサチューセッツ州アマーストのPolymer Laboratories, Inc.)を備えたモデル600E Powerlineクロマトグラフシステムを用いて得られるクロマトグラムから決定されるとおりである。当業者は、単に両システムに関して1つのサンプルを試験し、次いで各クロマトグラムから得られる多分散性値を比較することによって、異なる分離法を用いて得られる任意の多分散性値を本明細書中に記載する値に変換することができる。
【0044】
本明細書中で用いる場合、「精製ポロクサマー188」または「P188-P」または「精製長期循環物質(LCM)含有ポロクサマー188」は、約1.07以下、例えば1.05以下または1.03以下のポロクサマーの多分散性値を有するポロクサマー188を指し、低分子量成分の量が減少しているが、長期循環物質を含む精製ポロクサマー188である。「低分子量物質が除去された」もしくは「低分子量物質が減少した」ポロクサ
マー188またはその同様の変形は、成分の全分布の3.0%以下もしくは3.0%未満、および概して2.0%以下もしくは2.0%未満または1.5%以下もしくは1.5%未満の低分子量成分の分布がある精製ポロクサマー188を指す。典型的には、そのようなポロクサマー188は、より高いかまたは大きいパーセンテージの低分子量成分を含むポロクサマー188の形態と比べて減少した毒性を示す。ポロクサマー188を精製して、低分子量成分を除去または減少させる。ポロクサマー188などのポロクサマーの市販の製剤および従来の製剤は,ヒトに投与した場合、コポリマーの分布中の主成分の循環半減期の5.0倍超である半減期を有する長期循環物質(LCM)を含む。
【0045】
典型的な精製LCM含有ポロクサマー188は、商標FLOCOR(登録商標)(例えば、LCM含有ポロクサマー188を記載する米国特許第5,696,298も参照のこと)で入手可能なポロクサマー188である。精製LCM含有ポロクサマー188を哺乳類に対して、特にヒトに対して静脈内注射として投与する場合、治療した対象から得られる血液のGPC分析は、2つの循環ピーク、すなわちポリマー分布の主成分を含む主ピークと指定されるピークと、主ピークよりも高分子量のピークであって、(本明細書中で示すように、主ピークより5倍超遅く、典型的には30時間超および70時間もの)循環からのクリアランス速度を示すピーク、すなわち長期循環物質(LCM)を示す。
【0046】
本明細書中で用いる場合、長期循環物質(LCM)は、対象に投与すると、ポロクサマー製剤の主成分の半減期よりも実質的に長い、ヒトなどの対象における半減期を有する従来のポロクサマー製剤中の物質を指す。ヒト対象に投与した場合、ポロクサマー製剤中のLCM物質は、ポロクサマー製剤の主成分の半減期の5倍超または約5倍超の半減期を有する。本明細書中で提供されるLCMFポロクサマーはそのような長期循環物質を生じない。主成分よりも5倍長い半減期を有する成分はない。ポロクサマーを比較するために、対応するポロクサマーの成分を比較し、この場合、対応するポロクサマーは同じ式を有する。例えば、LCMFポロクサマー188をポロクサマー188と比較する。
【0047】
本明細書中で用いる場合、ポロクサマー188に関して「長期循環物質のない」または「LCMF」とは、精製ポロクサマー188について上述したように、低分子量成分の量が減少した精製ポロクサマー188製剤であって、対象に静脈内投与した後に、いかなる長期循環物質も主ピークの循環半減期(t1/2)よりも5倍以下長い(ヒト対象における)半減期を示すように、さらに均一にポリマー分布の成分が循環から消失する精製ポロクサマー188製剤を指す。したがって、LCMFは、本明細書中で記載するような、主成分のt1/2よりも5.0倍超大きく、概してコポリマーの分布における主成分の半減期よりも4.0倍以下、3.0倍以下、2.0倍以下または1.5倍以下大きなt1/2を有する循環物質であるかまたはそのような循環物質を、ヒト対象に投与した場合に生じる高分子量成分または低分子量成分などの成分を含まないポロクサマー188である。典型的には、LCMFポロクサマーは、ポリマー分布の全成分が循環からより均一な速度で消失するポロクサマーである。
【0048】
本明細書中で用いる場合、「コポリマーの分布」とは、ポロクサマー製剤中のポリマー分子の分子量分布を指す。分子量の分布は、これらに限定されるものではないが、束一性測定、光散乱技術、粘度測定法およびサイズ排除クロマトグラフィーをはじめとする当業者に公知の標準的技術を使用して測定することができる。特に、ポリマーの流体力学的容積に基づいて分子量分布を決定するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法を用いることができる。ポリマーの分子重量または質量の分布は、多分散性によって要約することができる。例えば、ポロクサマーにおける分子量分布の差異が大きいほど、多分散性が高い。
【0049】
本明細書中で用いる場合、半減期、生物学的半減期、血漿半減期、終末相半減期、排出
半減期またはt1/2は、生体がその正常な排出チャンネルを介して投与された物質の量の半分を排出するために要する時間を指す。正常な排出チャンネルには、概して、物質を身体から排出する排泄機能に加えて腎臓および肝臓の機能による身体の清浄化が含まれる。半減期は、物質の血漿濃度をその定常状態レベルの半分にするためにかかる時間、すなわち血漿半減期として説明することができる。半減期は、1回量の薬物を通常は静脈内で投与することによって決定でき、次いで血漿中の薬物の濃度を一定間隔で測定する。薬物の濃度は血漿中でピーク値に達し、そして薬物が分解し、血液中から除去されるにつれて減少する。
【0050】
本明細書中で用いる場合、「Cmax」とは投与後の薬物のピークまたは最大血漿濃度を指す。
【0051】
本明細書中で用いる場合、「定常状態での薬物の濃度」または「Css」は、薬物消失速度と薬物投与速度とが等しくなる薬物の濃度を指す。それは、概して等間隔で等しい用量を無限回数投与した後に達成される。定常状態濃度を達成するために要する時間は薬物の半減期に左右される。半減期が短いほど、迅速に定常状態に到達する。典型的には、最終定常状態濃度の90%を超えて蓄積するためには3~5半減期かかる。
【0052】
本明細書中で用いる場合、「不純物」とは、ポロクサマー製剤中の望ましくない成分を指す。典型的には不純物は4,500ダルトン未満のLMW成分と13,000ダルトンを上回る高分子量成分とを含む。
【0053】
本明細書中で用いる場合、製剤中のポロクサマー成分に関連して「除去または減少させる」とは、ポロクサマー製剤中の成分の重量パーセンテージを成分の初期パーセンテージに対して減少させること指す。概して、ポロクサマー成分は、成分の全分布に対する成分の重量パーセンテージが少なくとも1%、典型的には少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、またはそれ以上減少する場合に、除去または減少されたとみなす。例えば、ほとんどのポロクサマー188商品は、分布中の全成分の約4重量%であるLMW成分(4,500ダルトン未満)を含む。LMW物質は、成分が3重量%未満、例えば2重量%未満または1重量%未満である場合に精製産物において減少したとみなす。
【0054】
本明細書中で用いる場合、「溶媒」とは、溶質を溶解させて溶液を形成する任意の液体を指す。
【0055】
本明細書中で用いる場合、「極性溶媒」とは、その分子において、正および負電荷が恒久的に分離しているか、または正および負電荷の中心が一致しない溶媒を指す。これらの溶媒は高い誘電率を有し、化学的に活性であり、および配位共有結合を形成する。極性溶媒の例はアルコールおよびケトンである。
【0056】
本明細書中で用いる場合、「フィード」とは、溶媒中に溶解させた溶質を指す。
【0057】
本明細書中で用いる場合、「抽出溶媒」とは、ポロクサマー製剤中に含まれる望ましくない物質を可溶化させるために使用できる任意の液体または超臨界流体を指す。抽出溶媒は、溶媒抽出をおこなって、溶解度の差異に基づいて1以上の他のものから分離することができる溶媒である。概して、抽出溶媒は、関心対象の物質がその中に溶解している溶媒と非混和性または部分的に混和性である。例えば、抽出溶媒は、関心対象の物質がその中に溶解している第1溶媒と混合しないかまたは部分的にしか混合しないので、静置した場合、2つの独立した層が生じるものである。例示的抽出溶媒は、超臨界液体または高圧液体である。
【0058】
本明細書中で用いる場合、「超臨界液体」および「超臨界流体」という用語は、その臨界温度(Tc;すなわち、それより高いと化合物を液化することができない、化合物に特徴的な温度)および臨界圧(pc;すなわち、その臨界温度で化合物を液化するために充分な最小圧力)を上回る状態の、ガスなどの任意の化合物を包含する。この状態で、異なった液相および気相は典型的には存在しない。超臨界液体は、典型的には溶媒密度の変化を示し、圧力、温度、または共修飾溶媒(co-modifier solvent)の存在の変化はわずか
である。
【0059】
本明細書中で用いる場合、「超臨界二酸化炭素」とは、その臨界温度(約31℃)および臨界圧(約74bar)以上で保持される二酸化炭素の流体状態を指す。その臨界温度および臨界圧以下で、二酸化炭素は通常、空気中では気体として、または凍結した場合は固体のドライアイスとして挙動する。31℃より高い温度および74barより高い圧力で、二酸化炭素は気体と液体の中間の特性を呈するので、気体のように膨張してその容器を満たすが、液体のような密度を有する。
【0060】
本明細書中で用いる場合、「臨界温度」または「臨界点」とは、それより高いと明白な液相および気相が存在しない蒸気-液体臨界点を意味する温度を指す。したがって、それは、どれだけ圧力をかけても、それ以上では物質の蒸気が液化できない温度である。例えば、二酸化炭素の臨界温度は約31℃である。
【0061】
本明細書中で用いる場合、「臨界圧」とは、その臨界温度で気体を液化するために必要な圧力を指す。例えば、二酸化炭素の臨界圧は約74barである。
【0062】
本明細書中で用いる場合、「高圧液体」という用語は、室温またはさらに高い温度で圧縮性気体を加圧して液体にすることによって生じる液体を含む。
【0063】
本明細書中で用いる場合、「共修飾溶媒」とは、抽出溶媒(例えば超臨界流体二酸化炭素)の溶媒強度を増加させる極性有機溶媒を指す。共修飾溶媒は、溶質と強力に相互作用することができ、それによって抽出溶媒中の溶質の溶解性を実質的に増加させることができる。共修飾溶媒の例としてはアルカノールが挙げられる。典型的には5重量%~15重量%の共修飾溶媒を使用できる。
【0064】
本明細書中で用いる場合、「アルカノール」という用語は単純な脂肪族有機アルコールを包含する。概して、本明細書中で提供する方法における使用を意図するアルコールは6個以下の炭素原子を含む(すなわち、C1~C6アルカノール)。アルカノールのアルカン部分は分枝または非分枝であり得る。アルカノールの例としては、これらに限定されるものではないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(2-プロパノール)、およびtert-ブチルアルコールが挙げられる。
【0065】
本明細書中で用いる場合、「亜臨界抽出」とは、常温常圧で通常気体状である流体物質であって、それより高い圧力および低い温度で液体に変わるものを使用する過程を指す。圧力または温度を次いで標準化し、および抽出物質を蒸発させて、抽出物が残る。抽出剤はリサイクルできる。
【0066】
本明細書中で用いる場合、「抽出容器」または「抽出器」とは、最高10,000psigの圧力および最高200℃の温度に耐えることができる高圧容器を指す。容器の容積は、2mL~200Lの範囲内であり得、概して1L~200L、例えば5L~150Lである。抽出容器は概してステンレス鋼で作られている。そのような装置は当業者に周知であり、市販されている。
【0067】
本明細書中で用いる場合、アイソクラティックとは、抽出溶媒を一定またはほぼ一定の濃度で使用する系を指す。
【0068】
本明細書中で用いる場合、「勾配」または「勾配段階」とは、典型的には1以上の成分の濃度の変化によってその成分の組成が異なる2以上の抽出溶媒を使用する系を指す。例えば、アルカノール溶媒(例えばメタノール)の濃度を抽出の過程で連続して増加させる。したがって、抽出溶媒は一定のままではない。
【0069】
本明細書中で用いる場合、「複数」は、数回の過程またはステップを指す。繰り返しの数は、2、3、4、5、6またはそれ以上であり得る。
【0070】
本明細書中で用いる場合、「抽出された物質」は、除去された物質を含む生成物を指す。
【0071】
本明細書中で用いる場合、「ラフィネート」は、1つの成分または複数の成分が除去された生成物を指す。例えば、抽出された物質が除去された精製ポロクサマー。
【0072】
本明細書中で用いる場合、「バッチ法」または「バッチ抽出」は、平衡が達成されるまで2層を振盪することによって1つの非混和性層から溶質を抽出し、その後、層を沈降させた後サンプリングする過程を指す。例えば、バッチ抽出は、溶質を抽出溶媒のバッチと混合することによって実施できる。溶質は2つの相間で分布する。一旦平衡が達成されると、混合を停止し、抽出物相およびラフィネート相を分離させる。この方法では、使用済み溶媒を蒸留によって除去してリサイクルすることができるか、または新鮮な溶媒をレザバーから連続して添加することができる。
【0073】
本明細書中で用いる場合、「連続法」または「連続抽出」とは、溶液を通る非混和性溶媒の連続流または両相の連続した向流がある過程を指す。例えば、連続抽出溶媒を溶質と混合する。ミキサー中で生じるエマルジョンを沈殿槽ユニット中に供給し、ここで相分離が起こり、連続ラフィネートおよび抽出物流れが得られる。
【0074】
本明細書中で用いる場合、「医薬組成物」は、薬剤的に許容される処方として、および/または1以上の薬剤的に許容される賦形剤と処方される、LCMFポロクサマーなどの本明細書中で記載するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーを含む組成物を包含する。ある場合では、医薬組成物は、好適な緩衝液で6~7または6または約6などの所望のpHで緩衝されたポロクサマーの水性注射液を含む。緩衝液の例は、クエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウム/クエン酸などの、当業者に生体適合性であると知られている任意のものである。好適な濃度は、経験的に決定することができ、典型的には生理食塩水などの等張液中0.005~0.05Mの範囲、特に約0.01Mであり得る。ある場合では、本明細書中の方法で有用な医薬組成物は、ポロクサマーの処方について当業者に公知である(例えば国際PCT出願公開第WO94/008596号および本明細書中で記載する他のそのような参考文献および刊行物を参照のこと)。
【0075】
本明細書中で用いる場合、「治療」という語は、疾患または状態と関連する症状を改善または軽減することを指す。治療とは、状態、障害または疾患の症状が改善されるか、そうでなければ有益に変更される任意の方法を意味する。したがって、治療は予防、療法および/または療養を包含する。治療はさらに、本明細書中の組成物の任意の薬学的用途も包含する。
【0076】
本明細書中で用いる場合、疾患または状態を有する対象を「治療する」とは、対象に本
明細書中で提供もしくは記載する組成物または他の製品を投与して、その治療を行うことを意味する。
【0077】
本明細書中で用いる場合、例えば医薬組成物または他の治療薬の投与によるなどの治療による特定の疾患または障害の症状の改善とは、組成物または治療薬の投与に起因または関連し得る症状の、恒久的または一時的、持続的または一過性を問わず、いかなる軽減も指す。
【0078】
本明細書中で用いる場合、「防止」または「予防」とは、疾患または状態を発症する危険性が減少した方法を指す。予防は、疾患もしくは状態の発症の危険性の低減および/または疾患の症状の悪化もしくは進行の防止または疾患の症状の悪化もしくは進行の危険性の低減を含む。
【0079】
本明細書中で用いる場合、特定の疾患を治療するための化合物または医薬組成物の「有効量」は、症状を改善、またはある程度軽減して所望の生理学的効果を達成するために充分な量である。そのような量を一回量として投与することができるか、またはレジメンにしたがって投与することができ、それによって有効となる。有効量は、通常の手続きに従い、当業者によって容易に決定され、組成物を投与する特定の症状に依存する。
【0080】
本明細書中で用いる場合、「治療上有効な量」または「治療上有効な用量」とは、少なくとも治療効果を生むために充分な化合物を含む薬剤、化合物、物質、または組成物を指す。有効量は、特定の疾患または障害を、治療、たとえば予防、療養改善、阻止または他の方法で治療するために充分な治療薬の量である。
【0081】
本明細書中で用いる場合、「疾患」または「障害」とは、限定されるものではないが、感染、後天的条件、および遺伝的条件をはじめとする原因もしくは状態に起因し、そして特定可能な症状によって特徴づけられる、生物の病的状態を指す。本明細書における関心対象の疾患および障害としては、膜の再封鎖および修復を必要とする任意のもの、組織虚血および再かん流傷害、減少性炎症性障害(decreasing inflammatory disorders)、血栓溶解に関連する障害、ならびに止血に関連する障害が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、疾患および障害としては、急性心筋梗塞、急性肢虚血、ショック、急性脳卒中、心不全、鎌状赤血球病、神経変性疾患、黄斑変性、糖尿病性網膜症および鬱血性心不全が挙げられる。
【0082】
本明細書中で用いる場合、「対象」とは、動物、特にヒトまたは獣医学的動物(veterinary animal)、例えばイヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマおよび他の家畜(farm animal)、動物園の動物およびペットを指す。したがって、治療する「患者」または「対象」は、ヒトおよびまたは非ヒト動物、例えば哺乳類を含む。哺乳類には、霊長類、例えばヒト、チンパンジー、ゴリラおよびサル;飼い慣らされた動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ブタ、ヤギ、ウシ;ならびにげっ歯類、例えばマウス、ラット、ハムスターおよびアレチネズミが含まれる。
【0083】
本明細書中で用いる場合、「組み合わせ」とは、2つの品目間またはそれ以上の品目間の任意の関係を指す。関係は、キット中など空間的であり得るか、または共通の目的のための2以上の品目の使用を指す。
【0084】
本明細書中で用いる場合、「組成物」とは、2以上の生成物もしくは化合物(例えば、薬剤、モジュレータ、レギュレータなど)の任意の混合物を指す。組成物は、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性もしくは非水性処方またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0085】
本明細書中で用いる場合、「製品」は、作製し、販売する生成物である。その用語は、包装品中に含まれる精製ポロクサマーを含むことが意図される。
【0086】
本明細書中で用いる場合、流体は流動できる任意の組成物を指す。流体は、したがって、半固体、ペースト、溶液、水性混合物、ゲル、ローション、クリームの形態である組成物および他のそのような組成物を包含する。
【0087】
本明細書中で用いる場合、「キット」とは、組み合わせの要素を使用して方法を実施するための試薬ならびに他の生成物および/または成分を任意に含んでもよい、包装された組み合わせを指す。例えば、本明細書中で提供される精製ポロクサマーと、限定されるものではないが、投与、診断、および生物活性もしくは特性の評価をはじめとする目的のための別の品目とを含むキットを提供する。キットは、使用説明書を任意に含んでもよい。
【0088】
本明細書中で用いる場合、動物としては、限定されるものではないが、ヒト、ゴリラおよびサルをはじめとする霊長類;げっ歯類、例えばマウスおよびラット;家禽、例えばニワトリ;反芻動物、例えばヤギ、ウシ、シカ、ヒツジ;ヒツジ(ovine)、例えばブタお
よび他の動物などの任意の動物が挙げられる。非ヒト動物は、想定される動物としてヒトを除外する。
【0089】
本明細書中で用いる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上そうでないとする明確な記載がない限り、複数の指示対象を含む。
【0090】
本明細書中で用いる場合、範囲および量は、「約」または「およそ」特定の値または範囲として表すことができる。約は正確な量も包含する。したがって、「約0.05mg/mL」は「約0.05mg/mL」および「0.05mg/mL」も意味する。
【0091】
本明細書中で用いる場合、「任意の(optional)」または「任意に(optionally)」とは、その後に記載される事象または状況が起こるかまたは起こらず、およびその説明が前記事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含むことを意味する。例えば、任意に置換されていてもよい基とは、その基が置換されていないか、または置換されていることを意味する。
【0092】
本明細書中で用いる場合「保持時間」または“tR”は、LCMFポロクサマー188サンプルなどのサンプルを逆相高性能液体クロマトグラフィーの逆相カラムに注入してから蒸発光散乱検出器によるピーク応答までの間経過した時間を意味する。保持時間は、低疎水性サンプルよりも高疎水性サンプルの方が長い。
【0093】
本明細書中で用いる場合、「容量因子(capacity factor)」またはk’は次式によっ
て決定され、式中、t
0はボイド時間、すなわち非保持物質が逆相HPLCカラムを通過する時間(下記実施例7を参照)に等しい:
【数1】
【0094】
商標FLOCOR(登録商標)で販売されているポロクサマーなどのLCM含有精製ポロクサマー188は9.883の平均保持時間(tR)および3.697のk’を有し;
一方、LCMFポロクサマー188は8.897の平均保持時間(tR)および3.202の平均k’を有する(実施例7を参照)。
【0095】
本明細書中で用いる場合、任意の保護基、アミノ酸および他の化合物の略語は、特に明記しない限り、それらの一般的な用法、認定された略語、または生化学命名法に関するIUPAC-IUB委員会((1972) Biochem. 11:1726を参照)に従う。
【0096】
B.ポロクサマー、ポロクサマー188、LCM含有ポロクサマー188およびLCMFポロクサマーの分子多様性
1.ポロクサマー
ポロクサマーは、ポリオキシエチレン(EOまたはPOE)の繰り返し単位の鎖が両側にあるポリオキシプロピレン(POまたはPOP)の繰り返し単位のコアから構成される、合成直鎖トリブロックコポリマーのファミリーである。すべてのポロクサマーはこのEO-PO-EO構造モチーフによって定義される。特定のポロクサマー(例えばポロクサマー188)はさらに、異なる化学的および物理的特性、ならびに特有の薬力学的特性を有する特定のポロクサマーを提供する、繰り返しEOおよびPO単位の数によって規定される。
【0097】
ポロクサマー188を含むあるポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーは、ヒトまたは動物に投与した場合に、いくつかの障害に対して有益な生物学的効果を及ぼす。これらの活性は、例えば多くの刊行物および特許で記載されている(例えば、米国特許第4,801,452号、同第4,837,014号、同第4,873,083号、同第4,879,109号、同第4,897,263号、同第4,937,070号、同第4,997,644号、同第5,017,370号、同第5,028,599号、同第5,030,448号、同第5,032,394号、同第5,039,520号、同第5,041,288号、同第5,047,236号、同第5,064,643号、同第5,071,649号、同第5,078,995号、同第5,080,894号、同第5,089,260号、第RE36,665号(第5,523,492号の再発行)、同第5,605,687号、同第5,696,298号、同第6,359,014号、同第6,747,064号、同第8,372,387号、同第8,580,245号、米国特許公開第2011/0044935号、同第2011/0212047号、同第2013/0177524号、および国際出願番号WO2006/037031(PCT/US2005/034790として出願)、WO2009/023177(PCT/US2005/037157として出願)およびWO2006/091941(PCT/US2006/006862として出願)、ならびにPCT/US2014/45627、米国特許仮出願第62/021,691号および同第62/021,676号を参照のこと)。ポロクサマー188などのポロクサマーを治療薬として有用にするそれらの活性には、細胞膜中へ組み入れられ、それによって損傷を受けた細胞膜を修復する能力が含まれる。
ポロクサマーは、次式:
HO(C2H4O)a’─(C3H6O)b─(C2H4O)aH
を有するPOP/POEブロックコポリマーを含み、式中、「a’」および「a」は同一または異なり得、各々は、(C2H4O)によって表される親水性部分が化合物のおよそ50重量%~95重量%、例えば60重量%~90重量%、例えば化合物の70重量%~90重量%を構成するような整数であり;そして「b」は、(C3H6O)によって表される疎水性物質が約950~4,000Da、例えば1,200~3,500Daの分子量を有するような整数である。例えば、疎水性物質は、1,200~2300Da、例えば概して1,500~2100Daの分子量を有する。コポリマーの平均分子量は5,000~15,000Da、例えば、5,000~12,000Da、5,000~9000Daである。
【0098】
ある例では、bは、約15~約70の整数、例えば約15~約60、もしくは約15~約30、またはその間の任意の数である。ある例では、bは、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、または約30である。ある態様において、下付き文字「a’」および「a」を有するフランキング単位の整数は、同じ値であり得るか、または同じ値である。ある例では、aまたはa’は、約45~約910の整数、例えば90、100、200、300、400、500、600、700、800、または900である。ある他の例では、aまたはa’は、約10~約215の整数、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、100、125、150、175、200または215である。さらに他の例では、aまたはa’は、約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57,58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、または70である。当業者はこれらの値が平均値であることを認めるであろう。a、a’およびbの値は平均であり、概して、ポリマー分子は分子の分布または集団である。したがって、集団内のa、a’およびbの実際の値はある範囲の値を構成する。
【0099】
ポロクサマー命名法は、様々なポリマーメンバーの組成に関連する。ポロクサマー数の上2桁に100を掛けると、疎水性物質のおよその分子量になる。下1桁を10倍すると、界面活性剤の親水性物質(ポリオキシエチレン)含有量のおよその重量パーセントになる。例えば、ポロクサマー407は、約4000Daのポリオキシプロピレン疎水例物質を含み、ポリオキシエチレン親水性物質が全分子量の約70%を構成するポリマーである。ポロクサマー188(P188)は、約1800Daの分子量を有する疎水性物質を有し、コポリマーの全分子量の約80%である親水性物質を有する。
【0100】
ポロクサマーは、限定されるものではないが、ADEKA NOL、Synperonic(商標)、Pluronic(登録商標)およびLutrol(登録商標)をはじめとする商品名および商標で販売され、呼ばれる。ポロクサマーの例としては、ポロクサマー188(P188;商標Pluronic(登録商標)F-68、Kolliphor(登録商標)P188で販売、80%POE)、ポロクサマー407(P407;商標Lutrol F-127、Kolliphor(登録商標)P188、Pluronic(登録商標)F-127で販売;70%POE)、ポロクサマー237(P237;商標Pluronic(登録商標)F87、Kolliphor(登録商標)P237で販売;70%POE)、ポロクサマー338(P338;商標Kolliphor(登録商標)P338、Pluronic(登録商標)F-108で販売;80%POE)およびポロクサマー331(Pluronic(登録商標)L101;10%POE)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
したがって、非精製P188は商業的に入手可能であるか、または上述のような様々な名称で販売されているかもしくは知られている。以下の議論では、より均質な(LCMF)ポロクサマー188を製造するために本明細書中の方法を使用することについて言及しているが、本明細書中の方法は公知ポロクサマーのいずれかのさらに均質な調製物を製造するために使用できる。
【0102】
ポロクサマーは標準的ポリマー合成技術を使用して合成することができる。例えば、ポロクサマーは、当業者に公知の標準的技術を使用するエチレンオキシド-プロピレンオキシド縮合によって形成する(例えば、米国特許第RE36,665号;同第RE37,285号;同第RE38,558号;同第6,747,064号;同第6,761,824号;および同第6,977,045号を参照;Reeve, L.E., “The Poloxamers: Their Chemistry and Medical Applications,” in Handbook of Biodegradable Polymers, Domb
, A.J. et al. (eds.), Hardwood Academic Publishers, 1997も参照のこと)。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ性触媒の存在下でPOPおよびPOEモノマーを逐次付加することによって、ポロクサマーを合成できる(例えば、Schmolka J. Am. Oil Chem. Soc. 54 (1977) 110-116を参照)。POPブロックの重合と、それに続いてPOPブロックの両末端でPOE鎖を成長させることによって反応を開始する。ポリマーを合成する方法は、米国特許第5,696,298号にも記載されている。
【0103】
2.ポロクサマー188
ポロクサマー188(P188)コポリマーは以下の化学式:
HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aH
を有し、式中、(C3H6O)によって表される疎水性物質は約1,750ダルトンの分子量を有し、ポロクサマー188は7,680~9,510Da、例えば概して約8,400~8,800ダルトンの平均分子量を有する。ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン重量比はおよそ4:2:4である。本明細書によると、P188は81.8±1.9%のオキシエチレンの重量パーセント、および0.026±0.008mEq/gの不飽和レベルを有する。
【0104】
様々なポロクサマー、および特にP188を、接着性疎水性タンパク質または損傷を受けた膜の存在に起因する損傷によって血流に対する抵抗が病的に増加する疾患および状態の治療のために使用する。この接着性は病理学的疎水性相互作用によって生じ、特定のリガンドとそれらの受容体との相互作用を必要としない。そのようなタンパク質および/または損傷を受けた膜は、摩擦を増加させ、そして血管の有効半径を減少させることによって微小血管系における抵抗を増大させる。例えば、ポロクサマー188は損傷を受けた組織を通る血流を増加させるための潤滑剤として作用すると考えられる。有利には、これは疎水性表面の互いへの接着を阻止し、それによって摩擦を減らし、流量を増加させる。
【0105】
P188は、損なわれた細胞および変性タンパク質上に発生する疎水性部分と結合し、それによって水和格子(hydration lattice)を復元する。そのような結合は損傷を受け
た膜の封止を促進し、かつ細胞を破壊し得る炎症性メディエータのカスケードを停止させる。このポリマーはまた、血液中で形成された要素の有害な凝集を引き起こす疎水性接着性相互作用を阻害する。P188の抗接着効果および抗炎症効果は、摩擦を減らすこと、血液中の形成された要素の接着および凝集を防止すること、赤血球の変形能、血小板および顆粒球の非接着性ならびに血液の正常な粘度を維持すること、アポトーシスを減らすこと、ならびにVEGF、様々なケモカイン、およびインターロイキンをはじめとする複数の炎症マーカーによって、損傷を受けた組織における血流を増強することによって示される。
【0106】
3.ポロクサマー188の分子多様性
市販のポロクサマー188製剤は約8,400ダルトンの分子量を有するとされる。しかしながら、そのようなポロクサマー188は、3,000ダルトン未満から20,000ダルトンを越える分子量を有する分子から構成される。市販のポロクサマー188の分子多様性および分子の分布は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて検出される広い第1ピークおよび第2ピークで見ることができる(例えば、国際PCT出願公開番号WO94/08596を参照)。
【0107】
構造の多様性は、生物活性の多様性があることを意味する。例えば、最適のレオロジー効果、細胞保護効果、抗接着効果および抗血栓効果が、およそ8400~9400DaであるP188の分子で観察される。そのような成分は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの、サイズに基づいて成分を分離する方法を用いて、ポロクサマー製剤中の主
成分すなわち過半成分(predominant component)として特定することができる。しかし
ながら、成分の分布はさらに、典型的にはわずかな低分子量(LMW、すなわち概して4,500ダルトン未満)または高分子量(HMW、すなわち概して13,000ダルトン超)成分も示す。15,000超および4,500ダルトン未満のP188成分は効果の低いレオロジー保護剤または細胞保護剤であり、望ましくない副作用を示す。P188製剤などのポロクサマー製剤中の他の物質または成分は2つの異なる起原、すなわち合成および分解に由来する。
【0108】
分子多様性に寄与する主な機構はポロクサマーが合成される過程である。典型的な製造過程で、第1ステップはPOPブロックの形成である。これらは、プロピレングリコール開始剤をプロピレンオキシドモノマーと反応させることによって形成される。その後、エチレンオキシドモノマーを両端に付加してブロックコポリマーを形成する。ポロクサマーの合成の結果、POコアおよびEO末端を構築するステップ中に重合速度のばらつきが生じ得る。
【0109】
POPの合成中で、2つの異なる反応機構がPOP鎖成長を制限し、意図されたものでないジブロックポリマーが生じる。これらの物質は、典型的には(P188のポリマー分布に対して)低い分子量を有する。1つの機構では、不飽和は、アルカリ触媒と反応させることによってプロピレンオキシドから直接形成される。塩基はプロピレンオキシドのアリルアルコールへの転移を触媒し、次いで末端不飽和を有する一官能性鎖を開始する。これらの種類の副反応は反応の期間中、低分子量(LMW)物質を生成する。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)では、これらの不純物の分布は主ピーク中ならびにLMWショルダー中にある。第2の機構において、成長するポリマー鎖中の負の酸素原子によって、6炭素原子離れて位置する水素原子が引き抜かれ、鎖を停止・移動させることができ、アリル末端基を生じる。これらのバックバイティング(back-biting)反応は高分子量(H
MW)POPブロックで優勢である。これらの物質の分布はほとんどLMWショルダーにある。
【0110】
加えて、高分子量物質(P188のポリマー分布に対して)は、典型的な商業的製造キャンペーン中にポロクサマー188のバッチ間の重合リアクターの不適切な清浄化のために形成され得る。リアクターが、P188などのポロクサマーの典型的なバッチの製造後に残留する生成物を除去するために完全に清浄化されない場合、残存する生成物はその後のバッチで開始剤として作用し、「二量体様」ポロクサマー分子を形成する。この物質は高分子量を有するものであり、GPCでHMWショルダーとして観察されるポリマー分布の一部である。
【0111】
ポロクサマーの分解経路は、低分子量アルデヒドおよび酸に至る過酸化と、LMWポリエチレングリコールに至る熱分解とを含む。酸化的分解はポロクサマーの安定性に影響を及ぼす主な分解経路である。この過程はポリマー鎖に対して構造変化をもたらし、過酸化物とカルボニルとを生成する。過酸化物は一過性であり、典型的には抗酸化剤として商品に添加されるブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)と急速に結合する。熱分解は他の物質を産生する別の経路である。様々な鎖長のグリコールが熱分解の主な分解産物である。強制熱分解の研究によって、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールが形成されることが証明された。
【0112】
したがって、特定のポロクサマーは、EO-PO-EO構造モチーフを有するが、反復するEOおよびPO単位の数が異なる複数の化学物質から構成される。EO-POモチーフを有する様々な切断ポリマー(truncated polymer)およびさまざまな他の物質が、意
図するポロクサマー化合物の合成の間に起こる副反応の結果として生じ得る。これらの他の物質が全体的なポロクサマー分布内に存在し、見出すことができる。結果は、不均一な
物質(すなわち、多分散性である物質)である。
【0113】
例えば、P188の合成のために、POコアおよびEO末端を構築するステップ中で重合速度のばらつきがあり得る。したがって、P188のほとんどの非精製形態は、主に全体の鎖長が異なるベル形のポリマー種の分布を含む。加えて、不完全な重合によって生じた様々な低分子量(LMW)成分(例えば、グリコールおよび切断ポリマー)、および高分子量(HMW)成分(例えば二量体化ポリマー)が存在し得る。典型的には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるP188の特性化によって、意図せぬLMWおよびHMW成分を表す「ショルダー」ピークを有するP188の主ピークを特定する(Emanuele and Balasubramanian (2014) Drugs R D 14:73-83を参照のこと)。例えば、BASF(ニュージャージー州パーシッパニー)からP188の入手可能な製剤は、およそ1,750Daの分子量を有する疎水性ブロックと、ポリマーの80重量%を構成するPOEブロックと、およそ8,400Daの全分子量とによって特徴づけられる公開された構造を有する。実際の化合物は、意図するPOE-POP-POEコポリマーから構成されるが、1,000Da未満から30,000Da超に及ぶ分子量の他の分子も含む。市販のポロクサマー188の分子多様性および分子の分布は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して検出される広い第1および第2ピークによって示される。市販のポロクサマーをはじめとする非精製ポロクサマー製剤中に存在する分子の多様性は多様な生物学的活性をもたらし得る。観察される生物学的活性の多くは望ましくない、または/およびポロクサマーの薬物としての治療効果を制限する望ましくない副作用をもたらし得る。人工の血液製剤を投与すると観察される、補体活性化、食細胞遊走不能(migration paralysis)、およ
び細胞毒性は、それらの製剤のポロクサマー188成分中の不純物の原因の一つとなる。加えて、ポロクサマー188の注入の結果、腎臓損傷を意味するクレアチニンの上昇と、毒物学的動物実験では臓器重量(腎臓)の増加が示された。腎臓の組織学的評価によって、近位(proximal)尿細管上皮細胞の用量に関連した細胞質空胞化が示された。
【0114】
低分子量成分を除去するために精製されるポロクサマー188(例えば、Grindel et al. (2002) Journal of Pharmaceutical Sciences, 90:1936-1947 (Grindel et al. 2002a)またはGrindel et al. (2002) Biopharmaceutics & Drug Disposition, 23:87-103 (Grindel et al. 2002b)を参照のこと)は、対象に投与された場合に異なる薬物動態プロフィールを示す成分を含む。主成分は約7時間の血漿中半減期(t
1/2)を示し、高分子量成分(すなわち、長保持時間種)は半減期において約10倍またはそれ以上の増加を示し、約70時間またはそれ以上のt
1/2で、したがって実質的に長い血漿滞留時間を示し、主成分よりも循環からゆっくりと除去される。このことは本明細書中で示されている(例えば
図8Aおよび
図8Bを参照)。
【0115】
a.低分子量成分
腎臓に対して有毒なポロクサマー188中の物質は主成分よりも低分子量を有するものであると確認されている。P188の治療可能性の研究から、ひとつには上昇した血清クレアチニンから明らかなように臨床試験評価中に観察される急性腎機能不全のために、商標RheothRx(登録商標)で入手可能なポロクサマーの治療応用の中止に至った。これらの効果は、合成過程の間に生じる様々な低分子量(LMW)物質の存在に起因することが判明した(Emanuele and Balasubramanian (2014) Drugs R D 14:73-83)。LMW物質は腎臓中の近位尿細管上皮細胞によって蓄積した。
【0116】
LMW物質の分子量は数百Daから数千Daまで及び得る。幅広い溶解度特性を有するこれらの不純物の複雑な性質のためにそれらを親分子から選択的に除去するのが困難になる。蒸留、結晶化、限外濾過などの従来の精製過程は、低分子量(LMW)物質を主成分から有効に分離しない。分取GPCなどの精製用クロマトグラフ技術の使用は費用がかかり、拡大するのが実務的に困難である。様々な物質を異なって可溶化し、除去するための
混合溶媒系も困難であり、リサイクルするのに費用がかかる大量の溶媒の使用が要求される。
【0117】
P188中に存在するこれらの低分子量物質の量を減少させる超臨界流体クロマトグラフィーが報告されている(例えば米国特許第5,567,859号を参照のこと)。二酸化炭素を用いて超臨界流体抽出を実施して、コポリマーを精製して、多分散性を1.17未満まで減少させた。しかしながら、その方法は本明細書中で示すようにLMW成分を充分に除去または減少させない。
【0118】
以下でさらに詳細に記載するように、本明細書中で提供する方法はこれらのLMW成分が実質的にないポロクサマー製剤を生成する。例えば、LMW成分が減少した精製P188は、約5%未満、4%未満、3%未満、2%未満または1%未満のLMW成分を有する。したがって、本明細書中で提供するポロクサマー製剤、および特にP188ポロクサマー製剤は、概して減少した毒性を示し、投与した場合にクレアチニンレベルを上昇させない。加えて、本明細書中で記載するように、結果として得られるLCMFP188ポロクサマー製剤は、投与した際の長期循環物質の低減をはじめとする他の有利な特性をする。
【0119】
b.長期循環半減期の原因となる成分
P188中の成分は、主要すなわち過半ポロクサマー種よりも長い循環半減期を有する血漿または血液中の物質であるか、またはそのような物質を生じさせると確認されている。より長い循環半減期を有するこの物質が非臨床および臨床研究で観察されている。精製P188の静脈内投与後に得られる血漿の高性能液体クロマトグラフィー・ゲル浸透クロマトグラフィー(HPLC-GPC)による分析は、循環において2つの明確なピークを示す(Grindel et al. (2002) Journal of Pharmaceutical Sciences, 90:1936-1947 (Grindel et al. 2002a) or Grindel et al. (2002) Biopharmaceutics & Drug Disposition, 23:87-103 (Grindel et al. 2002b)。約8,600ダルトンの平均ピーク分子量を有
する主ピークと、約16,000ダルトンの平均分子量を有する小さなピークとがある。2つのピークは明確に異なる薬物動態プロフィールを示し、高分子量ピークほど循環からのクリアランスが遅く、明確に長い血漿滞留時間を示す(
図8Aおよび
図8Bを参照)。同様の観察結果がラットおよびイヌでも報告された。同様の長期循環成分が未処理(native)または非精製ポロクサマー188で観察されている(国際PCT出願公開第WO94/008596号を参照)。
【0120】
例えば、
図8Aで示すように、精製P188を健常なボランティアに100mg/kg/hrの投与量として1時間、続いて30mg/kg/hrの維持量で47時間静脈内投与した後、主要すなわち過半ピークは、1時間のローディング注入(loading infusion)の終わりまでに0.9mg/mLの平均最高濃度(Cmax)に到達した。0.5mg/mLの平均定常状態濃度(Css)は維持注入の開始と本質的に一致して達成された。維持注入を中止すると、血漿濃度は急速に減少し、排出半減期(t1/2)は約7時間であった。
【0121】
図8Bで示すように、HMW成分は0.2mg/mLのCmaxを示すことが確認され、これは維持注入の終わりまで達成されなかった。濃度が注入の間累積し続けるので、定常状態は達成されなかった。維持注入の中止後、高分子量ピークの血漿レベルはゆっくりと減少したので、血漿レベルは24時間の注入後モニタリング期間の間に約33%しか減少しなかった。この消失速度は主ピークの約1/10であり、t
1/2はおよそ70時間である。Grindel et al. (2002) Journal of Pharmaceutical Sciences, 90:1936-1947 (Grindel et al. 2002a)およびGrindel et al. (2002) Biopharmaceutics & Drug Disposition, 23:87-103 (Grindel et al. 2002b)も参照。長期循環物質(または長保持時間物質)はP188分布のHMWフラクションで確認される(Grindel et al. (2002a))。この
HMW成分はMALDI-TOF質量分析法によって特定すると約16,000Daであることが確認され、フラグメンテーションパターンはブロックコポリマーと一致していた(例えばGrindel et al. (2002a)を参照のこと)。
【0122】
P188のレオロジー効果、細胞保護効果、抗接着効果および抗血栓効果は、約8,400~9400Daであり約7時間の半減期を有する、分布の過半または主要コポリマー内で最適であるので、長期循環半減期を示す他の成分の存在は望ましくない。例えば、P188の望ましい活性には、血液粘性を低下させ、および赤血球(RBC)凝集を阻害するそのレオロジー効果があり、これは、損傷組織における血流を改善する能力の原因となる。対照的に、P338(Pluronic(登録商標)F108とも呼ばれる)およびP308(Pluronic(登録商標)F98)などの高分子量ポロクサマーは血液粘度およびRBC凝集を増加させる(Armstrong et al. (2001) Biorheology, 38:239-247
)。これはP188の逆の効果であり、高分子量ポロクサマー種が望ましくない生物学的効果を有し得ることを意味する。
【0123】
以下でさらに詳細に記載するように、長期循環物質であるかまたは長期循環物質を生じさせる成分が実質的に減少しているポロクサマー製剤を提供し、すなわちそれらは長期循環物質を含まない(LCMF)。LCMFポロクサマーを製造するための例示的方法(例えば実施例7を参照のこと)も提供する。
【0124】
したがって、本明細書中で提供するLCMFポロクサマー製剤、および特にLCMFポロクサマー188製剤は、より均一な薬物動態プロフィールを示し、したがってより一貫した治療効果を示す。LCMFポロクサマーを以下の節でさらに詳細に説明する。
【0125】
C.長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー
1.07未満の多分散性値を有し;1.5%以下の4,500ダルトン未満の低分子量(LMW)成分;1.5%以下の13,000ダルトンを上回る高分子量成分を有し;対象に投与した場合、コポリマーの分布中の主成分の半減期よりも5.0倍以下長い血液または血漿中の半減期である、コポリマーの分布中の全成分の半減期を有する精製P-188である長期循環物質のない(LCMF)P188を本明細書中で提供する。したがって、LCMFポロクサマー188は、投与した場合、主成分よりも有意に長い半減期を有する成分を生じない。LCMF P-188は以下の化学式:
HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aH
を有し、式中、a’およびaは、同一または異なり得、各々は、(C2H4O)によって表される親水性部分(すなわち、コポリマーのポリオキシエチレン部分)が約60%~90%、例えば約80%または81%を構成するような整数であり;そしてbは、(C3H6O)によって表される疎水性物質が約1,300~2,300Da、例えば約1,750Daの分子量を有するような整数であり;そして化合物の平均全分子量は、約7,680~9,510Da、例えば概して8,400~8,800Da、例えば約8,400Daまたは8,400Daであり、コポリマーは多分散性値が1.07未満となるように、低分子量不純物または他の不純物をはじめとする不純物を除去するために精製されている。
【0126】
研究によって、精製(LCM含有)P-188製剤の主ピーク成分は、ヒト対象に投与された場合、約7時間の(ヒト)血漿中半減期(t1/2)を有することが証明された(Grindel et al. (2002) Journal of Pharmaceutical Sciences, 90:1936-1947 (Grindel et al. (2002a)) or Grindel et al. (2002) Biopharmaceutics & Drug Disposition, 23:87-103 (Grindel et al. (2002b))。精製ポロクサマーはさらに、約16,000ダル
トンの平均分子量を有し、半減期で約10倍またはそれ以上の増加を示し、t1/2が約
70時間である高分子量成分を含む長期循環物質(LCM)ももたらした。
【0127】
例えば、Grindel et al.,(2002aおよび2002b)の研究で特性化された精製P-188(
LCM含有)と対照的に、LCMF P-188と表示される精製ポロクサマーは、ポリマー分布の全成分が、対象に投与された場合、循環からほぼ同じ速度で消失するものである。したがって、LCMF P-188は先行技術のLCM含有p188ポロクサマーとは異なる。LCM含有ポロクサマーのように、LCMFポロクサマーは、1.07未満、概して1.05未満または1.03未満の実質的に少ない多分散性の組成物を含むが、コポリマーの分布中の任意の成分の血液または血漿中の半減期は、ヒト対象に投与した場合、コポリマーの分布中の主成分の半減期よりも5.0倍以下長く、概して4.0倍以下、3.0倍以下、2.0倍以下、または1.5倍以下長い。典型的には、LCMFは、対象に投与した場合、コポリマーの分布における主ピークよりも実質的に長い(5倍超)かまたはコポリマーの分布における主成分よりも長い血液または血漿における半減期を示す成分を含まない。
【0128】
ある例では、LCMFポロクサマー中の全成分の血液または血漿中の半減期は、ヒト対象に投与した場合、30時間を上回り、概して、25時間以下、20時間以下、15時間以下、10時間以下、9時間以下、8時間以下、または7時間以下である半減期を有する成分がないようなものである。
【0129】
理論によって拘束されないが、13,000ダルトンを上回るものなどポロクサマーポリマー分布の高分子量成分は、長期循環半減期物質(longer circulating half-life material)の原因となり得た。ポロクサマー188および精製ポロクサマー188などの非
荷電性分子の糸球体ろ過速度は分子サイズに大きく依存する。これは、糸球体ろ過速度がサイズ閾値以上ではますます限定されるようになる(Chang et al., (1975) Biophysic. J. 15:887 - 906)ので、5,000ダルトンを上回る分子量を有するポロクサマー18
8ポリマー分布の成分について観察される。したがって、ポロクサマー188ポリマー分布の高分子量成分(例えば13,000ダルトンを上回るもの)は、小さなサイズのものよりもゆっくりした速度で循環から除去される可能性が高い。
【0130】
しかしながら、LCMF製剤に関して、分布中にHMW成分が存在することで、長期循環種(すなわち、主ピークよりも5倍超長い半減期を有する種)が生じるわけではない。例えば、LCMF製剤中の13,000ダルトンを上回るHMW不純物は、概して全成分の1.5重量%以下を構成する。LCMF製剤を対象に投与する場合、これらのHMW不純物は分布中の主成分の半減期よりも5.0倍超長い循環半減期をもたらさず、概して4.0倍以下、3.0倍以下、2.0倍以下、1.5倍以下長い。LCMF製剤を対象に投与する場合、それらは分布中の主成分よりも実質的に長い(すなわち、5倍超)または分布中の主成分よりも長い循環半減期を有する成分をもたらさない(例えば、
図7Aおよび7Bを参照)。
【0131】
LCMF製剤中、HMW成分は他の既存の精製P-188製剤と比べて増加または減少させ得る。例えば、本明細書中で提供するLCMFポロクサマーには、例えば1.2%以下、1.1%以下、1.0%以下またはそれ以下など1.3%以下の13,000ダルトンを上回る高分子量成分があるP-188ポロクサマーが含まれる。本明細書中で提供する特定の実施例では、本明細書中で提供するLCMFポロクサマーには、1.0重量%未満、概して0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満またはそれ以下の13,000ダルトンを上回る高分子量成分があるP-188ポロクサマーが含まれる。
【0132】
本明細書中で提供するLCMFポロクサマーは、本明細書中のセクションD、特にセク
ションD.1.bで後述する方法によって調製することができる(例えば
図3を参照のこと)。LCMFポロクサマーの特性の説明および例示を考慮して、当業者はLCMFポロクサマーの他の製造法を想定することができる。例えば、本明細書中で提供するLCMFポロクサマーを:
a)ポロクサマー溶液を抽出容器に導入し、ポロクサマーを第1アルカノール中に溶解させて溶液を形成し;
b)第2アルカノールと、超臨界二酸化炭素を第1の一定期間維持する温度および圧力下の超臨界二酸化炭素とを含む抽出溶媒と接触させ、ここで:
温度は二酸化炭素の臨界温度よりも高いが、典型的には35℃~45℃の範囲であり得;
圧力は220bar~280barであり;そして
アルカノールを全抽出溶媒の7%~8重量%のアルカノール濃度で提供し;そして
c)抽出法の時間とともに勾配段階で複数回、抽出溶媒中のステップb)の第2アルカノールの濃度を増加させ、この場合:
複数回の各々はさらなる一定期間の間で行い;そして
連続ステップの各々で、アルカノール濃度を第2アルカノールの以前の濃度と比べて1~2%増加させ;そして
d)抽出溶媒を抽出容器から除去し、それによって抽出された物質をラフィネートポロクサマー製剤から除去することを含む方法によって製造する。
【0133】
D.ポロクサマーを精製するための抽出法
精製ポリマーが構造(ジブロック、トリブロックなど)、不飽和のない分子のパーセンテージ、分子量の分布、および疎水性/親水性分布(HLB)比に関してより均一となるようにポロクサマーを精製するための超臨界流体抽出法(SFE)および高圧手順を本明細書中で提供する。過程の同調性を利用して異質成分を除去することができ、また時間とともに調節することができ、これによって精製産物の収率を増加させることができる。本明細書中で提供する方法は、様々な物質を選択的に除去するために、その溶媒化特性が変わり得る溶媒系を使用する。その方法は、上記特性を有するLCMFポロクサマー188生成物を製造する模範的なやり方を提供する。
【0134】
本明細書中の方法は、先行技術の方法によって製造されるものとは異なるポロクサマー製剤を提供する。これらには、米国特許第5,696,298号で記載されているものなど、投与した場合に精製ポロクサマー188で観察される長期循環物質を生じないLCMFポロクサマー188製剤が含まれる。LCMFポロクサマー188は精製ポロクサマー188と類似した分子サイズ分布を有するが、成分分子は精製ポロクサマーよりも親水性が高い製剤を生成する。
【0135】
長期循環物質(LCM)がないと、長期循環物質の除去により改善された、クリアランスの速さやその他の薬理学的特性をはじめとするポロクサマーの特性が改善される。本明細書中で提供する方法はポロクサマー製剤中の望ましくない成分を除去し、それによって、望ましくない活性を最小限に抑えるかまたは低減させつつ望ましい治療活性を示すより均質または均一なポロクサマー製剤を調製する。市販のポロクサマーは生物活性のばらつきと同様に毒性を示すことが報告されているので、より均一なかつ均質なポロクサマー製剤は毒性が減少しているが、主なコポリマー成分の治療効果を保持する。
【0136】
そのようなポロクサマーを調製する方法を本明細書中で提供し、LCMFポロクサマー188をはじめとする結果として得られるポロクサマーを提供する。本明細書中で提供する方法は、低分子量(LMW)成分が低減または除去されたポロクサマー製剤をもたらすことに加えて、本明細書中で記載するように血漿または血液中の循環物質であるかまたはそのような循環物質を生じさせる任意の成分が減少または除去されている長期循環物質を
含まない(LCMF)製剤ももたらす。したがって、ポロクサマー、特にLCMFポロクサマー188のLCMF製剤も本明細書中で提供する。本明細書中で提供するLCMFポロクサマー188は、ポロクサマー188について公知の使用のすべてについて使用できる。
【0137】
主成分以外の成分を除去するかまたは減らすため、そしてそれによって製剤の分子多様性を減少させるために、P188などのポロクサマーを精製するための抽出法を本明細書中で提供する。例えば、本明細書中で提供する方法はポロクサマー中のLMW物質を除去または減少させることができる。LMW物質を除去するかまたは減らすことに加えて、本明細書中で提供する特定の方法はさらに、分布中の主成分の半減期よりも実質的に長い半減期を有する長期循環物質であるか、またはそのような長期循環物質を生じさせるポロクサマー製剤中の成分を除去するかまたは減らすこともできることも本明細書中で判明している。抽出の程度、および抽出される成分は、本明細書中で記載する方法で用いられる特定の温度、圧力およびアルカノール濃度によって制御される。
【0138】
本明細書中で提供する方法は、溶解力(solvent power)が共溶媒修飾因子の存在下で
の温度、圧力の操作によって制御される、超臨界または亜臨界抽出溶媒を用いる。二酸化炭素はP188などのポロクサマーの特に効果的な抽出溶媒ではないが、修飾因子としてのアルカノールなどの極性共溶媒の存在が抽出溶媒中CO2の可溶化効率を増加させることが判明した。特に、本明細書中で提供する方法を、抽出過程が進行するにつれその濃度が勾配方式(例えば、段階的勾配または連続上昇式勾配)で増加するアルカノールなどの極性共溶媒の存在下で実施する。濃度がこの方法で増加するアルカノール共溶媒を採用することによって、不純物の除去を増加させることができ、二酸化炭素を単独で使用する場合よりも遙かに多く除去できることが判明した。例えば、二酸化炭素を単独で使用する抽出方法は、本明細書中で記載するようなLMW成分およびHMW成分などの望ましくない成分を、提供する方法によって達成するのと同じ程度まで除去することはできない。
【0139】
超臨界流体抽出を使用してポロクサマーを精製するための本明細書中で提供する方法では、ポロクサマー分布のLMW成分または不純物を、分布中の他のHMW成分よりも低いアルカノール(例えば、メタノール)濃度および高い圧力で選択的に除去できる。さらに後述するように、抽出溶媒の可溶化能を増加させることによって、例えば、アルカノール(例えば、メタノール)などの極性溶媒の圧力および濃度を慎重に制御することによって、他の不純物を除去することも可能である。特に、方法は、高濃度のアルカノール(例えば、メタノール)の勾配を、単独または減圧と組み合わせて用いて、その結果、ポロクサマー分布における成分(例えば、HMW成分)が除去されるので、結果として得られる製品を対象に投与した場合、従来のP-188製品で観察される血漿中の長期循環物質を生じさせない。
【0140】
しかしながら、ポロクサマーの収率に関してはトレードオフがある。概して、アルカノール(例えば、メタノール)共溶媒の濃度が増加するにつれ、抽出溶媒の溶媒和能(solvating power)が増加して、より多くの化合物が可溶化し、抽出の程度が増加する。抽出
溶媒の濃度を勾配方式で増加させることによって、ポロクサマー収率の減少は最小に抑えられ、一方で最終生成物の純度は最大になる。典型的には、本明細書中で提供する方法は、その方法によって得られる抽出または精製ポリマーの量が、方法の実施前のポロクサマーの出発量の少なくとも55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上となるような収率を達成する。しかしながら、結果として得られるポロクサマーは、実質的にさらに高い純度を示し、分布中の主成分のパーセンテージが出発物質よりも高く、投与した場合に毒性副作用を示すかまたは血漿中で長期循環物質の原因となり得る不純物がない。
【0141】
例えばポリマーの分布において望ましくない成分を減少または縮小させることよって、純度を増加させることが望ましい任意のポロクサマーに関して方法を実施できる。当業者は、このやり方での精製に関して特定のポロクサマーを選択することができる。望ましくない成分は、毒性であるか、または所望の活性に対して逆もしくは反対の生物活性を有する物質であるか、あるいはそのような物質を生じさせる任意のものを含む。例えば、ポロクサマーは、ポロクサマー中のLMW成分、例えば、投与した場合にクレアチニンの上昇などの急性腎臓副作用をもたらす任意のLMW成分を減少または除去することが望ましいものであり得る。ポロクサマーはまた、投与した場合に、ポリマーの分布における主成分の半減期とは異なる(例えばより長い)血液中の半減期を有する物質であるか、またはそのような物質を生じさせるHMW成分などの任意の成分を含むものでもあり得る。そのような成分は、血液粘性および赤血球凝集を増加させる可能性があり、したがって望ましくない。
【0142】
その方法で使用するポロクサマーの例としては、ポロクサマー188、ポロクサマー331およびポロクサマー407が挙げられるが、これらの限定されるものではない。典型的には、ポロクサマーは、主成分の平均分子量が4,700Da~12,800Daの範囲内または約4,700Da~12,800Da、例えば概して7,680Da~9,510Da、例えば概して8,400~8,800Daであるものである。特に、ポロクサマーはP188である。
例えば、本明細書中で提供する抽出方法を用いてP188製剤を精製することができ、P188製剤は、以下の化学式:
HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aH:
を有し、式中、(C3H6O)によって表される疎水性物質は約1,750ダルトンの分子量を有し、そして7,680~9,510Da、例えば概して約8,400~8,800ダルトンの平均分子量を有する。P188のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン重量比はおよそ4:2:4である。P188は81.8±1.9%のオキシエチレンの重量パーセント、および0.026±0.008mEq/gの不飽和レベルを有する。本明細書中の方法で使用するためのP188製剤には市販の製剤が含まれる。これらとしては、限定されるものではないが、Pluronic(登録商標)F68(BASF、ニュージャージー州フローラムパーク)およびRheothRx(登録商標)(Glaxo Wellcome Inc.により開発されたもの)が挙げられる。
【0143】
本明細書中で提供する抽出法を実施する際、その方法は:a)ポロクサマーを第1溶媒中に溶解させて溶液を形成することによって調製したポロクサマー(例えば、P188)溶液を抽出容器中に提供し、b)超臨界液体(例えば超臨界二酸化炭素)または亜臨界流体(例えば高圧二酸化炭素)と共修飾溶媒とを含む抽出溶媒を、溶液と混合して抽出混合物を形成し、この場合、抽出溶媒中の共修飾溶媒の濃度を抽出方法の時間にわたって増加させ、およびc)抽出容器から抽出溶媒を除去して、それにより不純物(例えば、LMW成分または他の成分)をポロクサマー製剤から除去することを含む。その方法では、第1溶媒中にポロクサマー溶液を溶解させるステップは、溶液を抽出容器中に装填する前、または溶液を抽出容器中に装填する時点で行うことができる。例えば、ポロクサマーを別の容器中で溶解させ、次いで溶液を抽出容器に添加する。
【0144】
方法は高圧または超臨界流体抽出法方法であり得る。典型的には、方法は、抽出溶媒中超臨界液体を使用する超臨界流体抽出法(SFE)を用いて実施する。超臨界液体は臨界温度以上に加熱され、臨界圧以上に圧縮された任意の液体である。例えば、二酸化炭素は31.1℃の臨界温度、および73.8barの臨界圧を有する。したがって、超臨界二酸化炭素の抽出条件は約31℃の臨界温度および約74barの臨界圧よりも高い。対照
的に、高圧抽出は、圧力は臨界圧を越えるが、温度は臨界温度を越えない亜臨界条件下で達成することができる。
【0145】
1.抽出の過程
a.超臨界法
ある例では、本明細書中で提供する方法で用いる超臨界流体抽出過程は、本質的に、溶媒として超臨界流体を使用する溶媒抽出過程である。超臨界流体を用いて、多成分混合物は、成分の揮発性の差および成分混合物と超臨界流体溶媒との間の特定の相互作用の差を利用することによって分離できる(溶媒抽出)。相図の超臨界領域において、二酸化炭素などの圧縮可能な流体は、液体様密度および圧力に依存した大きく増加した溶解容量(solvent capacity)を示す。
【0146】
超臨界流体は、多くの非常に有利な特性を示し、その特性のために超臨界流体は優れた溶媒となる。例えば、超臨界流体の調節可能な溶解力は、ある範囲内の臨界状態付近で急速に変化する。超臨界流体の溶解力と、そのため抽出中に選択的に除去できる成分の性質は、超臨界流体溶媒の温度および圧力を変えることによって微調整できる。
【0147】
様々な超臨界流体の別の有益な特性は、それらの臨界温度および圧力の差である。各々の超臨界流体は様々な溶解力を有する。調節可能な溶解力範囲は、適切な超臨界流体を選択することによって選択できる。
【0148】
独自の溶解特性に加えて、超臨界流体はそれらをさらに有用にするある物理化学的特性を示す。例えば、超臨界流体は、液体様密度を示し、かつガス様輸送特性、例えば拡散性および粘性を有する。これらの特性も、臨界領域付近で急速に変化する。超臨界流体はゼロ表面張力も有する。ほとんどの有用な超臨界流体は環境温度付近または環境温度以下の沸点を有するので、精製後の溶媒除去ステップは簡単でエネルギー効率がよく、およびいかなる残留溶媒を残さない。
【0149】
抽出中に固体マトリックスを使用することは、分別パラメータにさらなる特徴を提供する。好適な固体マトリックスの使用は、溶質-溶媒相互作用に加えて溶媒-マトリックスおよび溶質-マトリックス相互作用を提供して、分別分解能を増強する。超臨界流体の望ましい輸送特性のために、過程は製造のために容易に拡張可能になる。熱伝達および物質伝達特性は超臨界流体抽出過程で過程をスケールアップしても有意に変化しない。圧力、温度、および流速などの抽出処理条件を精密に制御できるので、精製過程は高度に調節可能であることに加えて再現可能である。
【0150】
そのような方法において、抽出溶媒は超臨界液体(例えば、超臨界二酸化炭素)、ならびに抽出中に時間とともに増加する別の共修飾溶媒、概してアルカノールを含み得る。上述のように、共修飾溶媒の存在は、高分子量またはさらに非極性溶質などの溶質の溶解性を改善することができ、それによって方法でのそれらの抽出を増加させる。
【0151】
例えば、本明細書中で提供する方法は:a)ポロクサマーを第1アルカノール中に溶解させて溶液を形成することによって調製したポロクサマー(例えば、ポロクサマー188)溶液を抽出容器中に提供または導入し、b)第2アルカノールと超臨界液体とを含む抽出溶媒を、超臨界液体状態を作るのに充分な高圧および高温下で溶液と混合して抽出混合物を形成し、この場合、抽出溶媒中の第2アルカノールの濃度を抽出方法中に時間とともに増加させ、およびc)抽出容器から抽出溶媒を除去して、それにより不純物(例えば、LMW成分または他の成分)をポロクサマー製剤から除去することを含み得る。第1および第2アルカノールは同一または異なり得る。その方法では、第1溶媒中にポロクサマー溶液を溶解させるステップは、溶液を抽出容器中に装填する前、または溶液を抽出容器中
に装填する時点で行うことができる。例えば、ポロクサマーを別の容器中で溶解させ、次いで溶液を抽出容器に添加する。
【0152】
例示的過程を
図1で詳述する。
図1は、ポロクサマー製剤から不純物(例えば、LMW成分または他の成分)を除去する過程100を示す。抽出システムを、典型的にはステップ110で示すようにフィード混合タンク中に第1アルカノールを分注する前に、ステップ105で示すように加圧する。システムを抽出過程に好適な温度まで加熱する。温度は、典型的には超臨界液体(例えば、二酸化炭素)の臨界温度より高い温度である。概して、温度はおよそ40℃である。
【0153】
いかなる好適なアルカノールまたはアルカノールの組み合わせも、ポロクサマーを精製する方法で使用できる。好適なアルカノールの例としては、これらに限定されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノール他が挙げられる。例えば、本明細書中で提供する方法には、第1および第2アルカノールが各々、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、およびそれらの組み合わせから独立して選択される上述の抽出方法が含まれる。いくつかの実施形態では、第1アルカノールはメタノールである。ある例では、メタノールは精製溶媒として選択され、方法の実施における第2アルカノールである。当業者は、メタノールが比較的低い毒性を有することを理解するであろう。さらに、メタノールは、ポロクサマー188について良好な溶解性を有する。
【0154】
第1アルカノール(例えば、メタノール)を使用して、過程100におけるステップ115にしたがってポロクサマー溶液を形成する。P188製剤などのポロクサマーをフィードタンク中に分注し、および第1アルカノールと混合されるまで撹拌する。フィードタンクに添加するポロクサマーの量は、抽出方法のスケーラビリティ、抽出容器のサイズ、達成する純度の程度、および当業者のレベル範囲内の他の因子の関数である。例えば、抽出容器1mLあたりのポロクサマー(例えば、P188)の非限定量は0.1kg~0.5kgまたは0.2kg~0.4kgであり得る。いくつかの例では、3Lの抽出容器を使用する抽出方法において、ポロクサマー(例えば、P188)の非限定量は0.6kg~1.2kg、例えば0.8kg~1.0kgであり得る。別の例では、12Lの抽出容器を使用する抽出方法において、ポロクサマー(例えば、P188)の非限定量は1.5kg~5kg、例えば2kg~4kgであり得る。さらなる例では、50Lの抽出容器を使用する抽出方法において、ポロクサマー(例えば、P188)の非限定量は8kg~20kg、例えば10kg~16kgまたは12kg~15kgであり得る。量の変動が、特定の用途、抽出容器、出発物質の純度、および当業者のレベル範囲内の他の検討事項に応じて想定される。
【0155】
ポロクサマーとアルカノールとの任意の好適な比が、本明細書中で提供する方法で使用するために想定される。ポロクサマーのアルカノールに対する比は、重量基準で、例えば約4:1~約1:4、例えば約3:1~約1:3、2:1~約1:2、1:1~4:1または1:2~1:4であり得る。例えば、ポロクサマーとアルカノールとの重量比は、約4:1、または約3:1、または約2:1、または約1:1、または約1:2、または約1:3または約1:4であり得る。例えば、ある量のポロクサマー、例えばP188を、重量基準で等しい量のアルカノール(例えば、メタノール)と混合することができる。ある量のポロクサマー、例えばP188を、重量基準でより少ない量のアルカノール、例えば重量基準で半量のアルカノール(例えば、メタノール)と混合することができる。適切なポロクサマーのアルカノールに対する比が所与のアルカノール中の溶解度などのポロクサマーの特性に依存することは、当業者には理解されるであろう。
【0156】
ポロクサマー/アルカノール混合物を形成した後、混合物の全部または一部をステップ
120で示すように抽出器中にポンプで供給する。そのような例では、ポロクサマー溶液を調製する過程を抽出器から独立した容器中で実施する。ポロクサマーはまた、第1アルカノールと混合する前に抽出器へ固体として導入できることを当業者は理解するであろう。したがって、ポロクサマー溶液を調製する過程は抽出容器中で直接実施することができる。
【0157】
過程100のステップ125で示すように、抽出器を次いで加圧し、抽出溶媒を抽出器に導入する。抽出溶媒は超臨界液体を含む。超臨界液体の例としては、これらに限定されるものではないが、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、アンモニア、Freon(登録商標)、水、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、アセトン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、圧力下の超臨界液体は、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、アンモニア、およびフレオンとして販売されている冷媒から選択される構成要素である。いくつかの実施形態では、圧力下の超臨界液体は二酸化炭素(CO2)である。
【0158】
抽出は、超臨界液体状態(例えば超臨界二酸化炭素)を維持するために高圧および高温下で行う。典型的には、これらは一定に保たれる。この圧力および温度で、超臨界液体(例えば、超臨界二酸化炭素)を実質的に一定の流速で提供する。流速は、0.5kg/h~600kg/h、例えば1kg/h~400kg/h、1kg/h~250kg/h、1kg/h~100kg/h、1kg/h~50kg/h、1kg/h~20kg/h、1kg/h~10kg/h、10kg/h~400kg/h、10kg/h~250kg/h、10kg/h~100kg/h、10kg/h~50kg/h、10kg/h~20kg/h、20kg/h~400kg/h、20kg/h~250kg/h、20kg/h~100kg/h、20kg/h~50kg/h、50kg/h~400kg/h、50kg/h~250kg/h、50kg/h~100kg/h、100kg/h~400kg/h、100kg/h~200kg/hまたは200kg/h~400kg/h(各々両端を含む)で変動し得る。例えば、流速は、20kg/h~100kg/h(両端を含む)、例えば概して約100kg/hまたは100kg/hである。
【0159】
超臨界液体を超臨界状態で維持するいかなる好適な温度も、抽出過程を実施するために使用できる。例えば、二酸化炭素の臨界温度は約31℃である。したがって、抽出容器を、31℃を上回る温度で保持する。いくつかの実施形態では、抽出容器は、32℃~80℃、概して32℃~60℃または32℃~60℃(各々、両端を含む)の温度を有する。例えば、温度は、35℃以下、36℃以下、37℃以下、38℃以下、39℃以下、40℃以下、41℃以下、42℃以下、43℃以下、44℃以下、45℃以下、50℃以下または60℃以下の温度であり得る。概して、温度は31℃を上回るが40℃以下である。当業者は、温度がひとつには抽出溶媒の組成ならびに過程で採用した溶媒中の所与のポロクサマーの溶解度に応じて変化し得ることを理解するであろう。
【0160】
あらゆる好適な圧力を当該方法で使用することができる。超臨界流体抽出法を用いる場合、系をあるレベルで加圧して、超臨界液体が臨界圧よりも高い圧力でとどまることを確実にする。例えば、二酸化炭素の臨界圧は約74barである。したがって、抽出容器を74bar超まで加圧する。特定の程度の圧力は超臨界液体の溶解特性を変更し得る。したがって、選択された特定の圧力は、収率および不純物の抽出の程度に影響を及ぼし得る。典型的には、抽出容器を125~500barの範囲内で加圧する。いくつかの実施形態において、抽出容器を200bar~400bar、200bar~340bar、200bar~300bar、200bar~280bar、200bar~260bar、200bar~240bar、200bar~220bar、220bar~400bar、220bar~340bar、220bar~300bar、220bar~280bar、220bar~260bar、220bar~240bar、240bar~
400bar、240bar~340bar、240bar~300bar、240bar~280bar、240bar~260bar、260bar~400bar、260bar~340bar、260bar~300bar、260bar~280bar、280bar~400bar、280bar~340bar、280bar~300barまたは300bar~340barの範囲内で加圧する。例えば、抽出容器を、およそまたは少なくとも225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、または400bar、概して500bar以下で加圧することができる。抽出容器を例えば310±15barで加圧することができる。
【0161】
典型的には、本明細書中で提供する方法において、抽出容器中に導入する抽出溶媒はアルカノールも含む。したがって、抽出溶媒は第2アルカノールおよび超臨界液体を高圧および高温下で含む。第2アルカノールは超臨界液体の共溶媒修飾因子として、超臨界液体の溶媒特性を変える働きをし、方法における溶質の抽出性を改善する働きをする。任意の好適なアルカノールまたはアルカノールの組み合わせを、上述のように、本明細書中で提供する方法で第2アルカノールとして使用できる。上述のように、特定の例では、第2アルカノールはメタノールである。
【0162】
上述のいかなるものなど、第2アルカノールと超臨界液体とのいかなる好適な組み合わせも、本明細書中で提供する方法において抽出溶媒中で使用することができる。いくつかの実施形態では、抽出溶媒はメタノールおよび二酸化炭素を含む。第2アルカノールを、典型的には、3%~20%、概して3%~15%、例えば5%~12%、5%~10%、5%~9%、5%~8%、5%~7%、7%~15%、7%~12%、7%~10%、7%~9%、7%~8%、8%~15%、8%~12%、8%~10%、8%~9%、9%~15%、9%~12%、9%~10%、10%~15%、または10%~12%(各々両端を含む)である全抽出溶媒のパーセンテージ(w/w)として提供する。アルカノールの流速(kg/h)は抽出器に導入するアルカノールの量の関数である。
【0163】
例えば、アルカノール(例えば、メタノール)の超臨界液体(例えば、二酸化炭素)に対する好適な比は、ポロクサマー出発物質のアイデンティティーおよび純度に基づいて、または温度もしくは圧力などの他の抽出パラメータに基づいて、選択できる。例えば、アルカノール(例えば、メタノール)の超臨界液体(例えば、二酸化炭素)に対する比は、約1:100~約20:100であり得る。いくつかの実施形態では、アルカノール(例えば、メタノール)の超臨界液体(例えば、二酸化炭素)に対する比は約1:100~約15:100である。いくつかの実施形態では、アルカノール(例えば、メタノール)の超臨界液体(例えば、二酸化炭素)に対する比は約2:100~約14:100である。アルカノール(例えば、メタノール)の超臨界液体(例えば、二酸化炭素)に対する比は、約3:100、または約4:100、または約5:100、または約6:100、または約7:100、または約8:100、または約9:100、または約10:100、または約11:100、または約12:100、または約13:100、または約14:100であり得る。
【0164】
ある態様では、抽出溶媒の組成が抽出手順全体にわたって一定のままであるアイソクラティック方式で抽出を実施できる。例えば、超臨界液体(例えば、二酸化炭素)およびアルカノール(例えば、メタノール)の量は、例えば、各々の一定流速を維持することによって、抽出の時間にわたって一定である。あるいは、抽出溶媒の組成は、典型的には、抽出溶媒を構成する超臨界液体および/またはアルカノール成分の量を変える(例えば、増加または減少させる)ことによって、時間とともに変えることができる。概して、超臨界
液体(例えば、二酸化炭素)を一定に保ち、一方で、抽出溶媒中のアルカノール(例えば、メタノール)の濃度を抽出の時間にわたって変える(例えば、増加または減少させる)。成分の濃度は、流速を調節することによって変えることができる。
【0165】
抽出溶媒の組成が時間とともに変化し得る態様において、抽出過程が進行するにつれて第2アルカノールを段階式勾配として、または連続上昇式勾配のいずれかで増加させる方法は、その方法にとって有益である。ある場合では、商業等級ポロクサマーは、主生成物または成分とともに高分子量成分および低分子量成分の両方を有する。高圧二酸化炭素抽出流体中の低アルカノール(例えば、メタノール)濃度は、低分子量成分を選択的に除去できる。しかしながら、不純物を多く含む抽出可能物の溶解性は低く、および低分子量成分を有意に減少させるには時間がかかり、そのために効果的でなくなる。抽出溶媒のアルカノール濃度を勾配方式(段階式勾配または連続上昇式勾配としてのいずれか)で増加させることによって、抽出物される低分子量不純物の量が増加する。
【0166】
さらに、アルカノール(例えば、メタノール)濃度が高いほど、より高分子量成分の溶解度、したがって抽出が増加する。したがって、抽出溶媒中のアルカノール(例えば、メタノール)濃度が連続して高くなる勾配で漸進的に低分子量成分を、および最終的には高分子量成分、すなわち溶解しにくい成分を抽出できる。これを説明するための非限定例として、約6.6%w/wの低いアルカノール(例えば、メタノール)濃度は低分子量成分を除去できると考えられる。アルカノールの濃度を1%~3%増加させることで、低分子量成分の抽出の実施を続けるが、高分子量成分も除去する。アルカノールの濃度を1%~3%さらに増加することで、これらの成分、ならびに高分子量を有する、および/または先の抽出溶媒中に溶けにくい他の成分もさらに除去する。
【0167】
しかしながら、低分子量成分についてより高い溶解度を提供するが、主成分を含む他の成分の溶解度も増加させるので、さらに高いアルカノール(例えば、メタノール)濃度を有する抽出溶媒は選択的ではない。したがって、精製産物の収率は高いメタノール濃度で減少する。本明細書中の方法で提供するような、勾配方式で抽出溶媒の濃度を増加させることによって、ポロクサマー収率の減少が最小限に抑えられ、最終生成物の純度が最大になる。
【0168】
メタノール濃度を段階式に増加させることで、抽出器のローディング容量が増加し、それによって所与の抽出システムにおけるスループットが増加することが判明した。2相システムは抽出器の内部を構成する。下相は主にポロクサマーと二酸化炭素が若干溶解したメタノールとの混合物から構成される。抽出溶媒(低いメタノール共溶媒フラクションを有する二酸化炭素)は下相に浸透する。上相は主に抽出溶媒とポロクサマーから抽出された成分とから構成される。2相の相対量は溶媒流中のメタノール濃度に左右される。典型的な抽出システムでは、上相の適切な相分離のために適切なヘッドスペースがある。メタノール共溶媒濃度を抽出過程中に段階的に増加させると、抽出器中へのさらに高いフィード装填に至る。
【0169】
例えば、過程100に戻って、抽出溶媒の組成は、ステップ130~140で示すようにさまざまであり得る。いくつかの実施形態では、抽出溶媒のアルカノール(例えば、メタノール)の重量パーセンテージを方法の過程にわたって増加させる。メタノール/二酸化炭素混合物中のメタノール含有量は、抽出過程が進行するにつれて段階方式または連続方式で増加させることができる。いくつかの実施形態では、例えば、ポロクサマー(例えば、P188)の抽出過程は、超臨界液体(例えば、二酸化炭素)を含む抽出溶媒中、約3%~約10重量%(w/w)、例えば約5%~約10%、例えば6%~8%(例えば、約6.6%または7.4%)などのアルカノール(例えば、メタノール)を用いて開始する。所定の期間の後、抽出溶媒のアルカノール(例えば、メタノール)含有量を約1~3
%、例えば1~2%(例えば、それぞれ7.6%または9.1%まで)上昇させる。アルカノール(例えば、メタノール)含有量を続いて最終期間中に約1~3%、例えば1~2%(例えば、それぞれ8.6%または10.7%まで)再度上昇させる。
【0170】
あらゆる好適な溶媒勾配を当該方法で使用することができる。例えば、超臨界液体(例えば二酸化炭素)中のアルカノール(例えば、メタノール)濃度を抽出手順の過程で約5%から約20%まで増加させることができる。超臨界液体(例えば二酸化炭素)中のアルカノール(例えばメタノール)濃度を約5%から約20%まで、または約5%から約15%まで、または約5%から約10%まで増加させることができる。超臨界液体(例えば二酸化炭素)中のアルカノール(例えばメタノール)濃度を約6%から約18%まで、または約6%から約12%まで、または約6%から約10%まで増加させることができる。超臨界液体(例えば二酸化炭素)中のアルカノール(例えばメタノール)濃度を約7%から約18%まで、または約7%から約12%まで、または約7%から約10%まで増加させることができる。アルカノール(例えばメタノール)濃度は任意の好適な段階数で増加させることができる。例えば、アルカノール(例えばメタノール)濃度を抽出手順の過程で2段階、または3段階、または4段階、または5段階にわたって増加させることができる。当業者は、他の溶媒比および溶媒勾配を抽出過程で使用できることを理解するであろう。
【0171】
本明細書中で提供する過程の抽出時間は、ポロクサマー収率の減少を最小限に抑え、かつ純度を最大にしつつ、製剤中の物質の好適な抽出をもたらす任意の所定の期間であり得る。時間は、圧力、温度、第2アルカノール濃度、および抽出溶媒を提供する過程(例えば、アイソクラティックまたは、本明細書中で記載するような増加するアルカノール濃度の勾配として)の選択の関数である。概して、抽出は、5時間~50時間、概して10時間~30時間、または15時間~25時間(各々、両端を含む)、例えば約15時間または24時間進行する。その方法で用いるアルカノール(例えば、メタノール)濃度が高いほど、典型的には抽出時間が短くなる。アルカノールの勾配を方法で用いる例では、抽出の総時間を手順における勾配段階数の関数として分割することも理解される。各勾配段階での抽出は、同じ量の時間または異なる時間であり得る。当業者は用いる抽出時間を実験的に決定することができる。
【0172】
物質の除去をモニターするため、または温度もしくは抽出溶媒の組成などの抽出パラメータの調節が必要かどうかを判定するために、サンプルを抽出過程の間に集めることができる。
【0173】
特に、方法を使用してP188を精製することができる。過程を他のポリマーにも同様に適用できる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書中で提供する方法は、精製ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレン組成物を調製する方法を提供する。その方法は:
a)第1溶媒中に溶解させたポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロックコポリマー溶液を抽出容器中に提供または導入してコポリマー溶液を形成することであって、第1溶媒はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールまたはそれらの組み合わせであり、組成物は:
i)式HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロックコポリマーであって、平均(mean)または平均(average)分子量が約4,000~約10,000Daである前記コポリマーと、
ii)4,500Da未満の分子量を有する複数の低分子量物質であって、組成物の総重量の4%超を構成する前記複数の低分子量物質と
を含む;
b)第2溶媒を添加して抽出混合物を形成することであって、第2溶媒は、高圧および高温下の超臨界液体と、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールまたはそれらの組み合わせであるアルカノールとを含み、抽出溶媒中の第2溶媒の濃度を抽出方法の時間にわたって増加させる;および
c)抽出混合物を分離させて、ラフィネート相および抽出物相を含む複数の相を形成することであって、ラフィネート相および抽出物相を別々に除去または単離すること
を含む。
【0174】
上記方法のある場合では、コポリマーの平均(mean)または平均(average)分子量は約7,680~9,510Da、例えば概して8,400~8,800Da、例えば約8,400Daまたは8,400Daである。その方法では、コポリマーの添加および第1溶媒を添加してコポリマーの溶液または懸濁液を形成することによって、コポリマー溶液を抽出容器中で形成でき、第1溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルカノールを含む。別法として、第1溶媒をコポリマーに添加してコポリマー溶液を形成するのは別の容器中であり得、および第1溶媒中に溶解させたコポリマー溶液を抽出容器中に提供または導入(すなわち装填)する。場合によっては、ステップc)の前に、方法は、抽出混合物を高圧および高温下で撹拌して、不純物(例えば、低分子量の抽出可能な成分および他の成分)をコポリマー組成物から抽出することを含む。
【0175】
b.高圧法
ポロクサマー(例えばP188)を精製するための本明細書中で提供する方法は混合溶媒系での高圧流体抽出法であり得る。混合系中の溶媒のうちの1つは、二酸化炭素などの、中圧で圧縮して液体にすることができる気体状溶媒である。例えば、メタノールまたはエタノールの溶解力は、高圧二酸化炭素(必ずしも超臨界二酸化炭素でなくてよく、すなわち亜臨界)で修飾して、ポロクサマーの異なるフラクションを選択的に除去する必要とされるちょうどぴったりの溶媒和能を得ることができる。
【0176】
そのような方法では、抽出溶媒は、亜臨界条件下で提供される二酸化炭素、ならびに抽出の時間とともに増加する別の溶媒を含む。したがって、本明細書中で提供する方法のある実施形態は、ポロクサマー製剤(例えば低分子量成分)中の不純物を除去するための抽出法を提供し、この方法は:
a)第1溶媒中に溶解させて溶液を形成したポロクサマーを抽出容器中に提供または導入することであって、第1溶媒はアルコール、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、アミン、およびそれらの混合物から選択される;
b)抽出溶媒を溶液と混合して抽出混合物を形成することであって、抽出溶媒が高圧二酸化炭素と溶媒とを含み、抽出溶媒中の溶媒の濃度を抽出時間法の時間とともに増加させる;および
c)抽出溶媒を抽出容器から除去し、それによって低分子量不純物をポロクサマーから除去すること
を含む。
【0177】
第1および第2溶媒は同一または異なり得る。その方法では、第1溶媒中にポロクサマー溶液を溶解させるステップは、溶液を抽出容器中に提供もしくは導入する前、または溶液を抽出容器中に提供もしくは導入する時点で行うことができる。例えば、ポロクサマーを別の容器中で溶解させ、次いで溶液を抽出容器に添加する。
【0178】
方法の態様において、抽出溶媒は亜臨界条件下にある。この過程において、溶媒の1つは、好ましくは室温(または室温付近)で気体であり、これを高圧で圧縮して液体にすることができる。圧縮して気体にすることができる好適な気体は、二酸化炭素、メタン、エ
タン、プロパン、アンモニア、およびFreon(登録商標)として販売されている冷媒である。典型的な溶媒対は、一方が抽出によって除去される成分の溶媒であり、他方の液体が非溶媒であるように選択されるか、またはその逆である。溶媒対の溶媒和能は、主に混合物中の溶媒の比によって制御される。物質を含む生成物に溶媒対を通すことによって、相対的により可溶性である成分を抽出することができる。気体状溶媒を任意の好適な亜臨界圧で加圧することができる。例えば、二酸化炭素は約25bar~約100barsの圧力で用いることができる。圧力は約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100barであり得る。いくつかの実施形態において、圧力は約60~約85barである。いくつかの実施形態において、圧力は約75barである。
【0179】
任意の好適な温度を用いて抽出過程を実施することができる。いくつかの実施形態において、抽出容器は10℃~80℃の温度を有する。温度は、例えば、約10℃、または約15℃、または約20℃、または約25℃、または約30℃、または約35℃、または約40℃、または約45℃、または約50℃、または約55℃、または約60℃、または約65℃、または約70℃、または約75℃、または約80℃であり得る。いくつかの実施形態において、抽出容器は約20℃~約50℃の温度を有する。ポロクサマー188を精製する場合、例えば、抽出容器は約20℃~約60℃(例えば約40℃)の温度を有し得る。他の温度は、抽出器具および選択された抽出パラメータに応じてポロクサマー188の精製に好適であり得る。当業者は、温度がひとつには抽出溶媒の組成ならびに過程で採用した溶媒中の所与のポロクサマーの溶解度に応じて変化し得ることを理解するであろう。
【0180】
上述の超臨界流体抽出法方法と同様に、抽出溶媒の組成が抽出手順全体にわたって一定のままである、アイソクラティック方式で抽出を実施できる。例えば、抽出溶媒中の二酸化炭素および溶媒(例えばメタノール)の量は、例えば各々の一定な流速を維持することによって、抽出時間にわたって一定である。別法として、抽出溶媒の組成は、典型的には、抽出溶媒を構成する二酸化炭素および/または他の溶媒(例えばメタノール)の量を変える(例えば、増加または減少させる)ことによって、時間とともに変えることができる。概して、二酸化炭素を一定に保ち、一方で、抽出溶媒中の他の溶媒(例えば、メタノール)の濃度を抽出時間にわたって変える(例えば、増加または減少させる)。成分の濃度は、流速を調節することによって変えることができる。溶媒の特定の濃度、および採用した濃度の勾配は、超臨界抽出法に関して上述したものと同様であり得る。所望の純度または収率を達成するために濃度および抽出時間を適切に調節することは当業者のレベル範囲内である。
【0181】
物質の除去をモニターするため、または温度もしくは抽出溶媒の組成などの抽出パラメータの調節が必要かどうかを判定するために、サンプルを抽出過程の間に集めることができる。
【0182】
特に、方法を使用してP188を精製することができる。過程を他のポリマーにも同様に適用できる。混合溶媒系の利益には、混合系を使用する高分子量(HMW)物質および/または低分子量(LMW)物質の有効な除去が含まれる。
【0183】
ある実施形態において、提供する方法は、精製ポリオキシプロピレン/組成物の調製方法を提供する。その方法は:
a)ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロックコポリマー組成物を抽出容器に提供または導入し、これを第1溶媒中に溶解させてコポリマー溶液を形成すること、ここで第1溶媒は、アルコール、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、アミンおよびそれらの混合物であり、組成物は:
i)コポリマーの平均(mean)または平均(average)分子量が約4,000~約10,000Daであるポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロックコポリマーと、
ii)4,000Da未満の分子量を有する複数の低分子量物質であって、複数の低分子量物質が組成物の総重量の4%超を構成するもの;
b)第2溶媒を添加して抽出混合物を形成し、ここで第2溶媒は高圧二酸化炭素と第1溶媒とを含み、抽出溶媒中の第1溶媒の濃度を抽出時間法にわたって増加させる;および
c)抽出混合物を分離させてラフィネート相と抽出物相とを含む複数の相を形成し、そしてラフィネート相および抽出物相を別々に除去または単離する。
【0184】
ポロクサマーが精製されるポロクサマー188である場合、コポリマーの平均(mean)
または平均(average)分子量は約7,680~9,510Da、例えば概して8,40
0~8,800Da、例えば約8,400Daまたは8,400Daである。その方法では、コポリマーを添加することにより、そして第1溶媒を添加してコポリマーの溶液または懸濁液を形成することによって、コポリマー溶液を抽出容器中で形成することができ、第1溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルカノールを含む。別法として、第1溶媒をコポリマーに添加してコポリマー溶液を形成することは別の容器中であり得、第1溶媒中に溶解させたコポリマー溶液を抽出容器中に提供または導入(すなわち装填)する。場合によっては、ステップc)前に、方法は、抽出混合物を高圧および高温下で撹拌して不純物(例えば低分子量抽出可能な成分および他の成分)をコポリマー組成物から抽出することを含む。
【0185】
ある態様では、このアプローチは超臨界流体抽出過程の密度変動および浸透特性がない。溶媒リサイクルは容易かつエネルギー効率がよい。典型的な高圧抽出では、抽出された成分を含む排出流れを低圧に供し、これにより、相分離が起こり、より揮発性の高い溶媒が気体として分離する。これにより、抽出された成分を多く含む他の溶媒が残る。抽出過程は抽出可能な成分が混合物から実質的に激減するまで継続する。気体状溶媒を圧縮して液体に戻し、継続した抽出に利用可能である。圧縮性溶媒は圧力の変化が最小で溶媒混合物から完全に分離されるように選択されるので、この溶媒リサイクル過程は効率的である。
【0186】
2.抽出容器およびシステム
本明細書中で提供する方法のいずれにかついて、
図4中のシステム200は、提供する方法を実施するための一実施形態を表す。システム200は、不純物(例えばLMW物質および/または他の成分)をポロクサマーから超臨界流体または亜超臨界(sub-supercritical)法を用いて抽出するために使用できる1つのシステムである。ポリマーフィード
ポンプ201に精製するポロクサマー(例えばP188)を装填する。ポロクサマーを、バルブ205を通ってポリマーフィードタンク207に輸送する。抽出容器215を使用して、サンプルからの抽出不純物を、例えばポロクサマーからのLMW物質または他の成分を除去する。二酸化炭素(または他の超臨界液体もしくは亜超臨界液体)ポンプ208に、バルブ243および予冷器203を通って外部二酸化炭素供給250から二酸化炭素を装填する。二酸化炭素をポンプ208から熱交換器210へ、次いで抽出器215へ供給する。メタノール(または他の好適な溶媒)を、ポンプ209を通して抽出器215中へ供給する。そのような実施形態において、メタノールおよび二酸化炭素は不純物、例えばLMW物質または他の成分を抽出器215中のポロクサマーから抽出する。抽出後、精製ポロクサマー混合物を排出させ、急速減圧処理によって集める。抽出した成分を、コレクタ225、減圧容器227、およびサイクロンセパレータ231を使用して溶媒流れから単離する。コレクタ225中に収集する間に放出される二酸化炭素蒸気を、凝縮器23
2を使用して凝縮することができ、およびリサイクルすることができる。
【0187】
いくつかの実施形態では、抽出装置は、抽出容器の底部で「流動」床を形成するある形状の粒子を含む溶媒分布システムを含み得る。床は、スクリーンまたはストレーナーまたは焼結金属ディスクによって支持できる。床に使用する粒子は、完全な球体またはペブルなどの不揃いな形状の粒子のいずれかであり得る。有孔率が低いかまたは表面粗度が低い平滑面を使用することは容易な清浄化のために好ましい。これらの利点は、薬品製造過程で立証できる。
【0188】
床を形成する粒子の密度は、溶媒密度よりも高くなるように選択し、したがって抽出過程の間に流入する溶媒によって床は影響を受けないままである。粒子サイズは、床の充填密度および有孔性を制御するために均一であり得るかまたは異なるサイズ分布を有し得る。充填分布配置(packing distribution arrangement)を、バランスの取れた最適抽出および抽出容器から出ていく前の溶媒粒子のその後の合体を提供するように設計する。これによって、ポロクサマーを装填した抽出器の最大装填を促進する。これはまた、抽出効率を最大にすることができ、抽出時間を最小限に抑えることができ、および抽出容器からの精製産物の望ましくないキャリーオーバーを最小限に抑えることができる。
【0189】
床中の球のサイズは、抽出容器の寸法、抽出容器中の溶媒液滴の滞留時間、および溶媒液滴が合体する能力を含む1以上のシステム特性に基づいて選択される。球の直径は約5mm~約25mmの範囲であり得る。直径は、床が異なるサイズの球を含む場合、平均直径であり得る。別法として、床中の球はすべて同じ直径を有し得る。溶媒分布床中の異なるサイズのステンレス鋼球の断面の一例を
図5に示す。
【0190】
このように、効率的溶媒抽出器具を提供する。その器具は:
a)抽出器の底部の分布システムであって、複数の球を含む前記分布システム;および
b)抽出器の最上部の粒子合体システム
を備える。
【0191】
いくつかの実施形態では、複数の球は金属球、セラミック球、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、複数の球は同じサイズである。いくつかの実施形態では、複数の球は異なるサイズの球を含む。いくつかの実施形態では、粒子合体システムは、デミスターパッド、据置型噴霧器、および温度ゾーンから選択される1以上の構成要素を含む。
【0192】
3.抽出および抽出剤の除去
本明細書中で提供する方法のいずれもバッチ法または連続法として実施できる。いくつかの実施形態では、方法はバッチ法である。バッチ法は、前述のような様々な寸法およびサイズの抽出容器で実施できる。例えば、装置トレイン(equipment train)は120L
の高圧抽出器を含み得る。ポロクサマーを適切な溶媒(例えば、メタノールなどのアルカノール溶媒)中に溶解させたポロクサマー(例えば、P188)溶液を抽出容器中に提供または導入する。上記方法で記載する任意のものなどの抽出溶媒(例えば、超臨界または高圧二酸化炭素およびメタノール)を、制御した温度、流れ、および圧力で維持した抽出容器中に独立して連続的にポンプで供給する。本明細書中で記載するように抽出溶媒組成を変えることによって物質を除去する。別法として、温度および圧力などの抽出処理条件も、独立してまたは組み合わせて変えることができる。後述するように、物質を除去した後、精製産物を二酸化炭素ガスから分離するように好適に設計したサイクロンセパレータ中に精製産物を排出させる。生成物を乾燥して残留アルカノール溶媒を除去する。
【0193】
いくつかの実施形態では、抽出方法は連続法である。典型的な連続抽出では、ポロクサマーを適切な溶媒(例えば、メタノールなどのアルカノール溶媒)中に溶解させたものであるポロクサマー(例えば、P188)溶液を、好適な充填材料を充填した高圧抽出カラムの中間点でロードする。抽出溶媒を、向流方式で底部から抽出カラムを通ってポンプで供給する。LMW物質または他の成分などの抽出物質をカラムの最上部から除去し、一方、精製産物をカラムの底部から除去する。精製産物を抽出器カラムの底部で連続して集め、および定期的に除去し、特別に設計したサイクロンセパレータ中に排出させる。残留メタノールを含む精製ポリマー粒子を続いて真空下で乾燥した。
【0194】
精製ポロクサマー生成物で望まれる純度のレベルに応じて、抽出ステップを所与のバッチについて繰り返すことができる。すなわち、充分なレベルのポロクサマー純度が得られるまで、追加の抽出溶媒を抽出容器に導入することができ、除去することができる。したがって、本明細書中で提供する方法のある実施形態は、ステップc)の後に、ステップb)およびc)を繰り返すことをさらに含む上述のような抽出方法を提供する。ポロクサマーが十分に純粋になるまで、ステップb)およびc)を繰り返すことができる。例えば、ステップb)およびc)を1回、2回、3回、4回、もしくは5回、または反復方式で繰り返すことができる。
【0195】
ポロクサマー物質が充分に純粋である場合、生成物をさらなる処理のために準備する。いくつかの実施形態では、生成物を
図1で概要を示すような過程100にしたがって処理する。ステップ145で示すように、生成物を抽出容器から排出させることができ、適切な受器中に集めることができる。ステップ150に示すように、湿潤生成物を純度、化学安定性、または他の特性に関して試験するためにサンプリングすることができる。残留溶媒を真空下で除去することによって生成物を乾燥できる。真空レベルを調節して乾燥速度を制御できる。乾燥は、必要ならば、環境温度、または高温で実施できる。概して、乾燥温度をポロクサマーの融点以下で保持する。湿潤生成物を単一ロットで、またはサブロットとして少量ずつ乾燥できる。ステップ160~170で示すように、例えば、サブロットで、真空下、環境温度にて生成物の乾燥を開始できる。乾燥を次いで過程が進行するにつれてさらに高い温度およびさらに低い圧力で続けることができる。必要ならば、例えばサブロットで収集する場合、過程100のステップ175で示すように、湿潤生成物のあらゆる残りの部分を同様の方法で処理することができる。まとめた様々なサブロットなどの結果として得られる生成物を、ステップ180で示すように好適な容器中で混合し、および結果として得られる生成物を特性化、保存、輸送、または配合することができる。
【0196】
有利には、本明細書中で開示する方法は二酸化炭素を効率的にリサイクルする。特に、抽出物相を温度および圧力の変化に供することによって、超臨界二酸化炭素または高圧二酸化炭素を回収できる。ある実施形態では、本明細書中で採用する方法は、80%超、好ましくは90%超、最も好ましくは95%超のリサイクル効率を有する。
【0197】
本明細書中で提供する方法(例えば上記ステップa)~c)を参照のこと)では、抽出物相をさらに処理することができる。その方法はさらに:複数の分離容器からなるシステムに抽出物相を通過させること;不純物(例えば低分子量不純物)を単離すること;精製された物質またはラフィネートを処理すること;および圧縮された二酸化炭素を再使用のために回収することを含み得る。
【0198】
本明細書中で提供する方法のいずれにおいても、様々なパラメータを、方法および結果として得られる生成物の審査で評価することができる。例えば、メタノール濃度、勾配プロフィール、温度、および圧力などのパラメータを処理最適化のために評価できる。真空レベル、混合様式、時間、および温度などの湿潤ラフィネートを乾燥するための過程および好適な条件も評価できる。
【0199】
4.精製ポロクサマーの調製のための例示的方法
本明細書中で提供する上記方法の結果、特定の精製ポロクサマー製剤、および特にLCMFP188製剤が生成する。特に、本明細書中で提供する方法は、本明細書中で記載したP188コポリマーであって、式:HO(CH2CH2O)a’-(CH2CH(CH3)O)b-(CH2CH2O)aH、および7,680~9,510Da、例えば概して8,400~8,800Da、例えば約8,400Daまたは8,400Daのコポリマーの平均(mean)または平均(average)分子量を有し、4,000Da未満の分子量を有する複数の低分子量物質を含むP188コポリマーを精製するために使用することができ、複数の低分子量物質は組成物の総重量の4%超を構成する。
【0200】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、約4%未満の低分子量成分、例えば約3%未満、約2%未満または約1%未満の低分子量成分を有する精製ポロクサマーを生成する。典型的には、低分子量成分には、グリコールおよび揮発性分解不純物、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アセトン、メタノール、およびペルオキシドなどが含まれる。ある例では、本明細書中の過程は、低分子量成分を実質的に含まないポロクサマー、すなわち4%未満、3%未満、2%未満または1%未満の前記成分を産生する。方法はさらに、精製されたポロクサマーを対象に投与する場合、ポロクサマー分布における主成分の半減期の5.0倍を上回る、例えば概して4.0倍以下、3.0倍以下、2.0倍以下、もしくは1.5倍以下の、血液または血漿中の長い半減期を有する物質であるかまたはそのような物質を生じさせるポロクサマー中の成分がないように、長期循環物質を実質的に含まないポロクサマーを産生することもできる。以下の考察は、そのような精製ポロクサマーを産生する方法の例を詳述する。
【0201】
a.低分子量(LMW)成分の除去
図2は、ポロクサマー中のLMW物質を除去するために有用な過程100’を提供する本明細書中の方法のある実施形態を示す。抽出システムを、ステップ110’で示すように第1アルカノール(例えば、メタノール)をフィード混合タンク中に注入する前に、ステップ105’で示すように加圧する。システムを、過程で使用する二酸化炭素の臨界温度、すなわち約31℃より高い温度である、抽出過程に好適な温度まで加熱する。典型的には、温度は40℃以下である。温度を概して過程全体にわたって一定に保つ。
【0202】
第1アルカノール(例えば、メタノール)を使用して、過程100’中のステップ115’にしたがってポロクサマー溶液を形成する。この過程において、P188ポロクサマーをアルカノール(例えば、メタノール)とともにフィードタンク中に分注し、その結果、アルカノール(例えば、メタノール)中に溶解したP188ポロクサマー溶液を得る。方法で使用するためのポロクサマーの量は、本明細書中で前述の量などのいかなる量でもあり得る。ポロクサマー/アルカノール混合物を形成した後、混合物の全部または一部をステップ120’で示すように抽出器中にポンプで供給する。場合によっては、アルカノールと混合する前にポロクサマーを固体として抽出器中に導入することによって、ポロクサマー溶液を抽出容器中で形成することができる。
【0203】
過程100’のステップ125’で示すように、抽出器を次いで加圧し、抽出溶媒を抽出器中に導入する。抽出溶媒は、典型的には二酸化炭素を含み、抽出を、上述のように31℃の臨界温度を上回る温度にて、74barの臨界圧を超える高圧下で実施する。例えば、例示的方法で、抽出容器を約310±15barまで加圧し、および二酸化炭素を20kg/h~50kg/h、例えば概して約またはおよそ24kg/h(すなわち、390g/min)である流速で提供する。
【0204】
抽出を次いで、二酸化炭素の共溶媒修飾因子として作用する第2アルカノールの存在下
で実施する。抽出溶媒中の第2アルカノールの濃度が抽出方法の時間とともに増加するように、メタノールなどの第2アルカノールを勾配段階方式で添加する。例えば、ステップ130’~140’で示すように、抽出溶媒の組成を変えることができる。例えば、ステップ130’で示すように、ポロクサマー(例えば、P188)の抽出過程は、超臨界液体(例えば、二酸化炭素)を有する抽出溶媒中、約5重量%~7重量%(w/w)、のアルカノール(例えば、メタノール)(例えば約6.6%)の使用を開始する。所定の期間の後、抽出溶媒のアルカノール(例えば、メタノール)含有量を約1~3%、例えば1%(例えば、7.6%まで)上昇させる。アルカノール(例えば、メタノール)含有量を再度その後、最終期間中に約1~3%、例えば1%(例えば、8.6%まで)上昇させる。抽出方法の総時間は15時間~25時間であり得る。各勾配を総時間の一部で実施する。
【0205】
商業的に効果的な精製過程については、メタノール濃度を連続して増加させることが望ましく、低分子量成分のほとんどが選択的に除去されるようにプロフィールを好適に修飾する。残存する低分子量成分を続いて高いメタノール濃度で短時間に除去できる。したがって、約5%~10%(例えば、6.6%)のメタノールを12時間使用し、さらに高いメタノールを10時間使用し、最終的にはさらに高いメタノールを4時間使用する段階式のメタノール濃度プロフィールによって、全収率を有意に低下させることなく、および高分子量成分を濃縮することなく、精製産物を高収率で製造する。
【0206】
ポロクサマー物質が充分に純粋である場合、生成物を過程100’で示すようなさらなる処理のために準備する。ステップ145’で示すように、生成物を抽出容器から排出させることができ、および適切な受器中に集めることができる。ステップ150’で示すように、湿潤生成物を純度、化学安定性、または他の特性に関して試験するためにサンプリングできる。本明細書中で記載するように真空下で残留溶媒を除去することによって生成物を乾燥できる。例示的方法では、ステップ160’~170’で示すように、乾燥をサブロットで真空下、環境温度にて開始することができ、および過程が進行するにつれ、乾燥をさらに高い温度、さらに低い圧力で続けることができる。過程100’のステップ175’で示すように、残りのサブロットを同様に処理できる。ステップ180’で示すように、サブロットを好適な容器中にまとめ、混合することができ、結果として得られる生成物を特性化、保存、輸送、または処方できる。
【0207】
b.長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマーの調製
図3はLCMFポロクサマーを調製するための実施形態を示す。本明細書中の方法のある実施形態は、対象に投与した後に、本明細書中で記載するような血漿または血液中の長期循環物質をもたらすいかなる成分を含まないポロクサマーを生成する過程100”を提供する。ステップ105”で示すように、ポロクサマーおよび第1アルカノール(例えば、メタノール)を抽出容器中に分注し、およびポロクサマー溶液を形成する。この過程において、P188ポロクサマーをアルカノール(例えば、メタノール)とともに抽出容器中に分注し、その結果、アルカノール(例えば、メタノール)中に溶解したP188ポロクサマー溶液を得る。方法で使用するためのポロクサマーの量は、本明細書中で記載するような任意の量であり得る。場合によっては、ポロクサマー溶液は別の容器中で形成することができ、およびポロクサマー溶液を抽出容器に移すことができる。
【0208】
ステップ110”で示すように、第1アルカノール(例えば、メタノール)およびポロクサマーを分注した後、抽出システムを加圧する。ステップ115”で示すように、システムを、過程で使用する二酸化炭素の臨界温度、すなわち約31℃より高い温度である、抽出過程に好適な温度まで加熱する。典型的には、温度は35℃~45℃である。温度を概して過程全体にわたって一定に保つ。約49barの加圧二酸化炭素下、35℃から約45℃または45℃の間の温度にて所定の期間、概して数時間未満でポロクサマー溶液が形成する。
【0209】
過程100”のステップ120”で示すように、抽出器を次いで加圧し、および抽出溶媒を抽出器中に導入する。抽出溶媒は、典型的には二酸化炭素および第2アルカノールを含み、および上述のように31℃の臨界温度より高い温度で、高圧下、すなわち74barの臨界圧より高い圧力下で、抽出を実施する。例えば、例示的方法では、抽出容器を約247±15bar(240~260barの範囲)まで加圧し、および二酸化炭素を、50kg/h~120kg/h(両端を含む)、例えば概して約またはおよそ100kg/hの流速で提供する。
【0210】
抽出を、二酸化炭素の共溶媒修飾因子として作用する第2アルカノールの存在下で実施する。ステップ125”~135”で示すように、抽出溶媒中の第2アルカノールの濃度が抽出方法の時間とともに増加するように、メタノールなどの第2アルカノールを勾配段階方式で添加する。例えば、抽出溶媒の組成をステップ125”~135”で示すように変えることができる。例えば、ステップ125”で示すように、ポロクサマー(例えば、P188)の抽出過程は、超臨界液体(例えば、二酸化炭素)を有する抽出溶媒中、約7重量%~8重量%(例えば約7.4重量%または7.4重量%)のアルカノール(例えば、メタノール)の使用を開始する。所定の期間の後、抽出溶媒のアルカノール(例えば、メタノール)含有量を約1~3%、例えば2%まで(例えば、9.1%まで)上昇させる。アルカノール(例えば、メタノール)含有量を再度続いて最終期間で約1~3%、例えば2%まで(例えば、10.7%まで)上昇させる。抽出方法の総時間は15時間~25時間(両端を含む)であり得る。各勾配を全時間の一部で実施する。
【0211】
投与した場合に長期循環形態を生じさせる成分を含む低分子量成分以外の成分を除去する抽出過程について、収率の減少を最小限に抑えつつ、これらの成分の純度および除去を最大にする過程があることが望ましい。他の方法よりも高濃度のアルカノール(例えばメタノール)から出発した場合、概して7%~8重量%から出発して、アルカノール(例えば、メタノール)濃度を連続して増加させることで、収率の減少を最小限に抑えつつ、これらの成分および低分子量成分を選択的に除去するようにプロフィールが好適に修飾されることが判明した。例えば、そのような例示的方法は、55%を上回る収率、概して60%または65%を上回る収率をもたらすことができる。残存する低分子量成分を続いて高いメタノール濃度で短時間に除去できる。したがって、約7~8%(例えば、7.4%)のメタノールを約3時間使用し、さらに高いメタノール(例えば、9.1%)を約4時間使用し、および最終的に、さらに高いメタノール(例えば、10.7%)を約8時間使用する段階式メタノール濃度プロフィールによって、全収率を著しく低下させることなく精製産物を高収率で得る。
【0212】
ポロクサマー物質が充分に純粋である場合、生成物を過程100”で示すようにさらなる処理のために準備する。ステップ140”で示すように、生成物を抽出容器から排出させることができ、適切な受器中に集めることができる。生成物をステップ145”で示すような気体飽和溶液からの粒子(particles from gas saturated solutions)(PGSS)技術により減圧下で沈殿させることができる。本明細書中で記載するように真空下で残留溶媒を除去することによって生成物を乾燥できる。ステップ150”~165”で示すような例示的方法では、乾燥を真空下で35℃~45℃の高温にて開始することができる。乾燥生成物をステップ160”で示すように集めることができる。結果として得られる生成物をステップ165”で示すように特性化、保存、輸送、または処方することができる。
【0213】
5.LCMFポロクサマーのアイデンティティーを確認する方法
本明細書中の方法または他の方法によって作製されたポロクサマー188製剤がLCMFポロクサマー188であることを確認するために、ポロクサマーの特性を評価すること
ができる。特性としては、ヒトまたは動物モデルに投与した際に長期循環物質がないこと、米国特許第5,696,298号で記載されているポロクサマーなどのLCM物質を含むポロクサマーの製剤ならびに市販のポロクサマー188(例えば商標Pluronic(登録商標)F-68、Flocor(登録商標)、Kolliphor(登録商標)およびLutrol(登録商標)で販売されているもの)と比較した逆相(RP)-HPLCにおけるポロクサマーの挙動、ならびに本明細書中で例示する条件下でのRP-HPLCにおける挙動(すなわち実施例7を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。製剤はLCM物質が欠如していることを確認するいかなる方法も使用できる。
【0214】
E.医薬組成物および処方
本明細書中で提供する方法によって調製されるいかなるものなど、ポロクサマーP188を含む組成物を提供する。特に、LCMFポロクサマー、特にLCMFポロクサマーP188を含む組成物を提供する。その組成物は、セクションFで記載する任意のものなどの、P188が治療することが知られているかまたは治療することができる任意の疾患もしくは状態を治療するために使用されるかまたは治療する方法で使用される。
【0215】
1.処方
LCMFP188などのP188を含む医薬組成物は、選択された量のポロクサマーを1以上の生理学的に許容される担体または賦形剤と混合して処方を製造することによって任意の通常の方法で処方することができる。処方、担体および/または賦形剤の選択は投与熟練者の技術範囲内であり、多くのパラメータに左右される可能性がある。これらには、例えば、投与様式(すなわち、全身性、経口、鼻、肺、局所(local)、局所(topical)、または任意の他の様式)および治療する症状、障害、または疾患が含まれる。
【0216】
有効濃度のP188、例えばLCMFP188を全身性、局所(topical)または局所
(local)投与のために好適な医薬担体またはビヒクルと混合する。コポリマーの投与に好適な医薬担体またはビヒクルには、特定の投与様式に好適であることが当業者に知られている任意の担体が含まれる。治療上有効な量のP188、例えばLCMFP188を含む医薬組成物は、投与直前に滅菌水などで復元される凍結乾燥粉末として提供することもできる。
【0217】
化合物を微粉化形態もしくは他の好適な形態で懸濁させることができ、または誘導体化してさらに溶解性の高い活性生成物を製造できる。結果として得られる混合物の形態は、意図する投与様式およびLCMFP188などのP188の選択された担体またはビヒクル中の溶解性をはじめとする多くの因子に左右される。結果として得られる混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョンおよび他のそのような混合物であり、および非水性もしくは水性混合物、クリーム、ゲル、軟膏、エマルジョン、溶液、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ剤、ペースト、フォーム、エアロゾル、洗浄液(irrigation)、スプレー、坐剤、包帯、または全身性、局所(topical)もしくは局所(local)投与に好適な任意の他の処方として処方できる。筋肉内、非経口または関節内投与などの局所内部投与のために、ポロクサマーは、等張緩衝生理食塩水などの水性媒体中溶液懸濁液として処方することができるか、または体内投与を意図した生体適合性支持体もしくは生体接着剤と組み合わせることができる。
【0218】
概して、薬剤的に許容される組成物は、規制当局からの認可を考慮して調製するか、または動物およびヒトでの使用のために一般的に認められた薬局方基準にしたがって調製する。医薬組成物は、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルなどの担体を含み得、これとともにイソ型を投与する。そのような医薬担体は、無菌液体、例えば水ならびに石油、動物、植物、または合成起源のもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、およ
びゴマ油をはじめとする油であり得る。水は、医薬組成物を静脈内投与する場合の典型的な担体である。生理食塩水溶液ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液は、液体担体として、特に注射液のためにも使用できる。組成物は、活性成分とともに:希釈剤、例えばラクトース、スクロース、リン酸二カルシウム、またはカルボキシメチルセルロース;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルク;ならびにバインダー、例えばデンプン、天然ゴム、例えばアカシアゴムゼラチン、グルコース、糖蜜、ポリビニルピロリドン、セルロースおよびその誘導体、ポビドン、クロスポビドン、および当業者に公知の他のそのようなバインダーを含み得る。好適な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールが挙げられる。組成物は、所望により、少量の湿潤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、トリエタノールアミンオレエート、および他のそのような薬剤も含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、および持続放出処方の形態をとり得る。吸入器(inhaler)または吸入器(insufflator)で使用するための(例えばゼラチン)のカプセルおよびカートリッジは、治療化合物の粉末ミックスおよびラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末ベースを含めて処方することができる。そのような組成物は、治療上有効な量のP188を、LCMF形態をはじめとする本明細書中で記載する形態で、対象または患者に対して適切な投与のための形態を提供するような好適な量の担体とともに含む。
【0219】
処方は、投与様式に適合するように選択する。例えば、LCMFP188などのP188を含む組成物は、注入(例えば、ボーラス注入法または連続注入)による非経口投与用に処方できる。注入可能な組成物は、油性もしくは水性ビヒクル中懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとり得る。緩衝液、防腐剤、抗酸化剤、および好適な成分は必要に応じて組み入れることができるか、または処方を構成することができる。
【0220】
非経口投与に適した処方としては、処方を意図する投与経路に適合性にする抗酸化剤、緩衝液、静菌剤および溶質を含み得る水性および非水性無菌注射液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。処方を単位投与または複数回投与容器、例えば、密封アンプルおよびバイアル、予備充填シリンジまたは他の送達装置中で提供でき、および水溶液で、無菌液体担体、例えば、注射用の水を使用直前に添加するだけでよい、乾燥またはフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵できる。
【0221】
LCMFP188などのP188は、組成物中の単独の医薬活性成分として処方できるか、または他の活性成分と組み合わせることができる。組織標的化リポソームをはじめとするリポソーム懸濁液はさらに、薬剤的に許容される担体として好適であり得る。これらは、当業者に公知の方法にしたがって調製できる。例えば、リポソーム処方は、米国特許第4,522,811号で記載するようにして調製できる。リポソーム送達はさらに、コラーゲンゲルおよびフィブロネクチンで修飾したリポソームなどの医薬マトリックスを含む徐放性処方も含み得る(例えば、Weiner et al. (1985) J. Pharm. Sci. 74(9):922-925を参照)。本明細書中で提供する組成物は、送達を促進する1以上のアジュバント、例
えば限定されるものではないが、不活性担体またはコロイド状分散系をさらに含み得る。そのような不活性担体の代表的かつ非限定的な例は、水、イソプロピルアルコール、気体状フルオロカーボン、エチルアルコール、ポリビニルピロリドン、プロピレングリコール、ゲル産生物質、ステアリルアルコール、ステアリン酸、鯨蝋、ソルビタンモノオレエート、およびメチルセルロース、ならびにそれらの2以上の好適な組み合わせから選択することができる。
【0222】
LCMF P188などのP188を薬剤的に許容される担体中に、治療する対象に対する望ましくない副作用がなく、治療上有用な効果を及ぼすために充分な量で含める。治療上効果的な濃度は、本明細書中で提供するアッセイなどの、公知のインビトロおよびインビボシステムで化合物を試験することによって経験的に決定できる。
【0223】
2.投与量
本明細書中で提供するLCMF P188などのP188を含む医薬組成物は、単回服用量(直接)投与、複数服用量投与のために、または希釈もしくは他の修飾のために、処方できる。処方中の化合物の濃度は、投与した場合、意図する治療のために有効な量を送達するために有効である。当業者は本明細書中の方法にしたがった投与のために組成物を処方できる。例えば、組成物を処方するために、化合物または混合物の重量分率を、選択されたビヒクル中に、意図する効果が観察されるような効果的な濃度で溶解、懸濁、分散、または他の方法で混合する。
【0224】
投与する治療薬の正確な量または用量は、治療する状態、投与経路、および他の検討事項、例えば対象の体重および生理学的状態ならびに対象に左右される。
【0225】
必要ならば、特定の投与量および期間および治療プロトコルは、経験的に決定または推定できる。例えば、本明細書中で提供するLCMFP188などのP188の例示的用量を、必要ならば、特定の対象および状態に適切な投与量を決定するための出発点として使用できる。治療期間および注入の間隔は、疾患または状態の重篤度および治療に対する対象の反応で変化し、それに応じて調節できる。LCMFP188などのP188の活性レベルおよび半減期などの因子を、投与量を決定する場合に考慮できる。特定の投与量およびレジメンは当業者が経験的に決定できる。
【0226】
特に、ポロクサマーは、約10.0mg/mL~約300.0mg/mLの範囲の濃度で、例えば(少なくとも)10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45.0、50.0、55.0、60.0、65.0、70.0、75.0、80.0、85.0、90.0、95.0、100.0、105.0、110.0、115.0、120.0,125.0、130.0、135.0、140.0、145.0、150.0、155.0、160.0、165.0、170.0、175.0、180.0、185.0、190.0、195.0、200.0、205.0、210.0、215.0、220.0、225.0、230.0、235.0、240.0、245.0、250.0、255.0、260.0、265.0、270.0、275.0、280.0、285.0、290.0、295.0または300.0mg/mLで投与のために処方することができる。典型的には、濃度は22.5%以下、すなわち225mg/mLである。
【0227】
例えば、別々に、または本明細書中で記載する医薬組成物の成分として投与する場合、ポロクサマーを概して約0.5%~25.0%、例えば0.5%~20%または25%の濃度で投与するが、さらに薄い濃度またはさらに高濃度を使用できる。例えば、ポロクサマーを約0.5%~約25重量%/体積、例えば少なくとも0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10.0%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、20.5%、21.0%、21.5%、22.0%、22.5%、23.0%、23.5%、24.0%、24.5%または25.0重量%/体積の濃度で投与することができる。他の実施形態では、ポロクサマーを約0.5%~約10重量%/
体積、例えば0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、または10.0重量%/体積の濃度で投与する。さらに別の実施形態では、ポロクサマーを約5%~約15重量%/体積、例えば5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10.0%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、または15重量%/体積の濃度で投与する。他の実施形態では、ポロクサマーを16~25%、例えば22.5重量%/体積の濃度で投与する。例えば、濃度は10%~22.5%、例えば10%~20%または15%~20%である。
【0228】
一例では、ポロクサマーは、希釈の有無を問わず投与を意図した無菌非発熱性溶液として処方できる。最終投与形態を100mLのバイアル中で調製することができ、この場合、100mLは、15g(150mg/mL)の精製ポロクサマー188、例えばLCMFP188、308mgの塩化ナトリウムUSP、238mgのクエン酸ナトリウムUSP、36.6mgのクエン酸USPおよび注射用の水USPを100mLにするためのQs含んでいた。溶液のpHは約6.0であり、約312mOsm/Lのオスモル濃度を有する。他の用途については、少なくとも500mlを10%~20%、例えば約15重量%または15重量%のポロクサマー製剤/組成物の体積の濃度で調製する。例えば、静脈内投与については、100mg/kgの投与量を1時間、続いて30mg/kg/hrの維持注入を48時間使用して組成物を注入する場合、目標Cssを達成するように組成物を処方する。熟練した医師もしくは薬剤師または他の当業者は、特定の対象、治療する状態および目標血中濃度について適切な濃度を選択することができる。
【0229】
3.投与量および投与
本明細書中の方法において、本明細書中で記載するLCMFP188などのポロクサマー188は、セクションFで記載する任意の疾患または状態を含む疾患または状態を治療するために対象に投与することができる。特に、本明細書中で記載する精製ポロクサマー188などのポロクサマー188は、他のP188組成物を治療のために使用できるかまたは使用されてきた治療法での使用が意図される。
【0230】
本明細書中に記載する精製ポロクサマー188などのポロクサマー188に関してセクションFで記載するいずれかなどの疾患および状態の治療は、限定されるものではないが、静脈内および動脈内(カテーテルによる(catheter directed)投与または他の経路に
よる)、肺内、経口または経皮投与をはじめとする非経口投与を含む本明細書中で記載するような好適な処方を使用して任意の好適な投与経路によって実施できる。治療は典型的には静脈内投与によって実施する。
【0231】
活性剤、例えばLCMF P188などのポロクサマー188は、治療される患者に対して望ましくない副作用の非存在下で治療上有用な効果を及ぼすために充分な量で含まれる。任意の疾患または状態のために投与するLCMFP188などのP188の量は、標準的臨床技術によって決定することができる。加えて、インビトロアッセイおよび動物モデルを、最適投与量範囲の特定を助けるために使用できる。経験的に決定できる正確な投与量は、特定の組成、投与経路、所望の投与期間、治療する疾患の種類および疾患の重篤性に左右される可能性がある。
【0232】
実際的制限は、早期臨床試験に登録した患者のサブセットにおける腎臓機能不全のために、国民医薬品明細(P188-NF)(Emanuele and Balasubramanian, Drugs R D 14
(2):73-83 (2014))にしたがって製造したポロクサマー188の臨床用途を制限してい
る。加えて、動物実験によって、P188-NFは血清クレアチニンのレベルを増加させ、クレアチニンは薬物注入の最後に腎臓から効率的に除去されないことが明らかになる。
本明細書中で記載する精製ポロクサマー188はP188-NFの制限に対処するように修飾された。クレアチニンレベルの上昇および腎臓毒性を防止するために、ポロクサマー188を精製して低分子量および高分子量種汚染物質を除去した。臨床試験、例えばC97-1248試験において、研究者はP188-Pの静脈内投与によって血清クレアチニンがプラセボのレベルを上回る有意な増加を起こらないことを見出した。高性能液体クロマトグラフィーによる評価に基づいて低および高分子量種の減少は、非精製(P188-NF)治療に関連する腎臓の危険性を軽減または除去する。したがって、精製ポロクサマー188、例えば本明細書中で記載するLCMFポロクサマー188は、以前に評価した非精製形態において存在する実際的な制限を示さない。
【0233】
必要ならば、特定の投与量および期間ならびに治療プロトコルは、経験的に決定または推定できる。事前にヒト対象に投与し、臨床試験で使用したポロクサマー188の投与量は、本明細書中で記載する精製ポロクサマー188などのポロクサマー188の投与量を決定するための指針として使用できる。ポロクサマー188の投与量も、関連する動物研究から決定または推定できる。ポロクサマー188の活性レベルおよび半減期などの因子を、そのような決定で使用できる。特定の投与量およびレジメンは、様々な因子に基づいて経験的に決定できる。そのような因子としては、個体の体重、全般的健康、年齢、採用した特定の化合物の活性、性、食事、投与時間、排出速度、薬物の組み合わせ、疾患の重篤度および経過、ならびに患者の疾患に対する体質、および治療する医師の判断が挙げられる。活性成分ポロクサマー188を典型的には医薬的に効果的な担体と組み合わせる。担体物質と組み合わせて単一投与形態または複数投与形態を産生することができることができる活性成分の量は、治療する宿主および特定の投与様式に応じて変わる可能性がある。
【0234】
特定の例では、P188などのポロクサマー(例えばLCMFP188)を、治療する状態に応じて、約100mg/kgまたは100mg/kgかつ2000mg/kgまでの投与量で投与するために処方する。用量としては、例えば100~500mg/kg患者の体重、例えば100mg/kg~450mg/kg、100~400mg/kg、100mg/kg~300mg/kg、100mg/kg~200mg/kg、200mg/kg~500mg/kg、200mg/kg~450mg/kg、200mg/kg~400mg/kg、200mg/kg~300mg/kg、300mg/kg~500mg/kg、300mg/kg~450mg/kg、300mg/kg~400mg/kg、400mg/kg~500mg/kg、400mg/kg~450mg/kgまたは450mg/kg~500mg/kg患者の体重、例えば少なくともまたは少なくとも約100、125、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900および2000mg/kg患者の体重が挙げられる。
【0235】
ポロクサマーの用量は、投与様式および患者の生理的要求に合う濃度および流体体積で投与する。概して、長期間注入(例えば12、24、または48時間連続注入)に関して、投与する体積は典型的には約5.0mL/kg/hr以下、例えば4.5ml/kg/hr、4.0ml/kg/hr、3.5ml/kg/hr、3.0ml/kg/hr、2.5ml/kg/hr、2.0ml/kg/hr、1.5ml/kg/hr、1.0ml/kg/hr、0.5ml/kg/hr、0.25ml/kg/hrまたは0.125ml/kg/hrである。短期間投与(例えばボーラス投与または短期間注入)に関しては、ポロクサマーの用量は、患者の要求に応じて5.0ml/kg/hrを上回る体積、例えば7.5ml/kg/hrまたは10.0ml/kg/hrまたは12.5ml/kg/hrまたは15ml/kg/hrまたはさらに高用量で投与することができる。ポロクサマーは、1回量としてまたは1時間ごと、1日ごと、1週間ごと、1ヶ月ごと、もしく
はそれ以上など、様々な間隔で繰り返す複数回投与で投与することができる。注入に関して、注入は、典型的には1時間~72時間、例えば12時間、24時間または48時間である期間にわたって対象に適切な投与量を提供することができる。
【0236】
本明細書中で提供する方法で使用する処方は、いかなる適切な経路によっても、例えば、経口、鼻、肺、非経口、静脈内、皮内、皮下、関節内、大槽内、眼内、脳室内、くも膜下腔内、筋肉内、腹腔内、気管内または局所(topically)、ならびにそれらのいずれか2以上の任意の組み合わせによって、液体、半液体または固体形態で投与でき、各投与経路に好適な方法で処方する。本明細書中で記載する反復投与などの複数回投与は、任意の経路または経路の組み合わせにより実施できる。最も好適な投与経路は、治療する病状に応じて変わる。典型的には、組成物を静脈内注入用に処方する。
【0237】
P188、特に本明細書中で提供するLCMF P188などのポロクサマーの有効量を、単独または疾患もしくは状態を治療するための他の薬剤と組み合わせて送達できる。LCMFP188を採用する治療レジメンと組み合わせて施すさらなる追加治療を当業者は選択できる。そのような決定は、治療する特定の疾患または状態、治療する特定の対象、対象の年齢、疾患または状態の重篤度および他の因子に左右される。
【0238】
F.ポロクサマー188およびLCMFP188の方法および治療的使用
ポロクサマー188(P188)およびその組成物、例えばLCMFP188およびその組成物は、これらに限定されるものではないが、急性心筋梗塞、急性肢虚血、ショック、急性脳卒中、心不全、鎌状赤血球病、および神経変性疾患をはじめとする様々な疾患における臨床的有用性で、細胞保護用途、血液レオロジー用途、抗炎症用途、抗血栓/線維素溶解促進用途をはじめとする様々な用途で使用できる。本明細書中で提供するP188、例えばLCMFP188または本明細書中で提供する方法によって製造される任意のP188を使用して、P188が従来使用されてきたかまたは有効であると知られている任意の疾患または状態を治療することができる。P188のいくつかの用途は、例えば、Moloughney et al., (2012) Recent Pat Biotechnol. 6(3):200-211 and Karmarker, ”Poloxamers and their applications” Pharmainfo.net Published Oct. 27, 2008で概説さ
れ、URLは:pharmainfo.net/pharma-student-magazine/poloxamers-and-their-applications-0である。P188の使用例としては、膜の再封鎖および修復を必要とする用途における使用、組織虚血および再かん流傷害の治療、炎症反応の縮小、血液粘度の低減、血栓溶解の促進、止血の促進、薬物のビヒクルとしての使用、核酸またはタンパク質の送達、乳化剤としての使用、疎水性薬物の懸濁安定剤としての使用、皮膚創傷の清浄化、化粧品処方中の界面活性剤としての使用、パーソナルケア製品および石けんの粘度を調節するための使用、および便秘薬としての医薬的使用が挙げられるが、これらに限定されるものではない(例えば、欧州公開番号EP0682946を参照)。
【0239】
LCMFP188などのP188は、膜の再封鎖、安定性,および/または修復を必要とする用途で使用することができる。そのような使用により、細胞をアポトーシスおよび壊死から保護することにより、組織、例えば損傷を受けた組織における細胞喪失を防止する。例えば、P188を使用して、電気的損傷またはフリーラジカル損傷後の細胞膜を修復することができる(例えば、米国特許第5,605,687号、米国特許公開第2006/0121016号、およびLee et al., (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4524-4528を参照)。P188はさらに、軟骨損傷後、例えば外的関節損傷後の細胞死を減らすため(例えば、Isaac et al., (2010) J Orthop Res. (4):553-558を参照)、例えば、骨関節炎の予防に役立てるために使用することもできる。P188はさらに、興奮毒性、例えばグルタメート毒性に応答した神経保護のために使用されてきた(Frim et al., (2004) Neuro Report. 15: 171-174)。P188はさらに、誤って折りたたまれたタンパク
質により損傷を受けた膜を修復することによって、変性疾患、例えばアルツハイマー病の
治療用薬剤として使用されてきた(例えば、米国特許公開第20100316590号を参照)。
【0240】
P188はさらに、ジストロフィンの発現減少と関連した心筋症および心疾患を治療するためおよび予防するため(例えば、米国特許第7,846,426号および同第8,580,245号を参照)、およびジストロフィン損失以外の機序に起因する慢性心不全を治療するため(例えば、米国特許公開第2009/0246162号を参照)に使用されてきた。P188を含む組成物はさらに、血栓症を抑制するため、心筋梗塞サイズを縮小するため、血液粘度を減少させるため、および心筋梗塞後の損傷を受けた組織の潅流を改善するために使用することができる(Justicz et al., (1991) Am Heart J. 122(3 Pt 1):671-680; O'Keefe et al., (1996) Am. J. Cardiol. 78:747-750)。
【0241】
P188はさらに、検査中に移植細胞の細胞膜に対する損傷を最小限に抑えるための細胞移植の方法で使用することもできる。例えば、P188を含む組成物を、軟組織再構成または増大の適用などの脂肪組織、脂肪細胞、幹細胞および脂肪組織由来の他の細胞(例えば米国特許第8,512,695号および米国特許公開第2010/0104542号を参照)の移植中に脂肪細胞の生存を改善するために使用できる。P188はさらに、パーキンソン病療法のための移植されたドーパミン作動性細胞の生存および神経再生を改善するためにも使用されてきた(Quinn et al., (2008) Eur J Neurosci. 27(1):43-52)。
【0242】
P188はさらに、慢性微小血管疾患、例えば限定されるものではないが、黄斑変性、糖尿病性網膜症および鬱血性心不全を治療するための治療薬として使用することもできる(例えば、米国特許公開第US2011/0212047号を参照)。上腸間膜動脈閉塞(SMAO)のモデルにおいてなど、組織虚血および再かん流傷害の治療のためのP188の使用も記載されている(例えば、Hunter et al., (2010) Ann Clin Lab Sci. 40(2):
115-125を参照)。P188を含む組成物は、骨格筋障害、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)および関連する障害を治療するためにも使用されてきた(例えば、米国特許公開第2011/0033412号を参照)。
【0243】
P188はさらに、例えば血液粘度を減少させることによって、例えば血液中の接着性相互作用を防止することによって、血流を増強するために使用されてきた(例えば、米国公開第2010/0183519号を参照)。そのような使用は、脂肪塞栓の発生(例えば、Adams et al., (1960) Surg. Forum 10:585およびDanielson et al., (1970) J Thorac Cardiovasc Surg. 59(2):178-184を参照)、および赤血球沈降(Hoppensteadt et al., (2014) FASEB J.28(1):suppl. 1139.6)などの血流の減少に関連する問題を軽減することができる。P188はさらに、出血性ショックを治療するためにも使用されてきた(Mayer et al., (1994) Ann Clin Lab Sci. 24(4):302-311)。
【0244】
P188はさらに、ホモ接合型鎌状赤血球貧血(SS)ならびに混合ヘテロ接合状態、例えばSC、SD、およびS-βサラセミアである鎌状赤血球病(SD)を治療するためにも使用されてきた(例えば、Adams-Graves et al., (1997) Blood 90:2041-2046; Ballas et al., Hemoglobin 2004, 28(2):85-102; Gibbs and Hagemann, (2004) Ann. Pharmacother. 38:320-324; Orringer JAMA. 2001;286(17):2099-2106を参照)。
【0245】
炎症反応はさらに、P188の使用によって、例えば食細胞遊走を抑制すること、および例えば、好中球の流入および付着を減少させることによって減少させることができる(例えば、Lane et al., (1984) Blood. 64:400-405; Schaer et al., (1994) Circulation. 90(6):2964-2975を参照)。
【0246】
P188はさらに、創傷治癒および封止のための療法で使用することもできる(例えば
、米国特許仮出願第62/021,676号、米国特許第8,758,738号、および米国特許公開第20140056839号を参照)。
【0247】
P188のさらなる使用としては、組織培養培地添加剤として、例えば低温保存培地(cryostorage media)用のサプリメントとして(例えば、Kerleta et al., (2010) ALTEX.
27(3):191-197を参照)、ならびに保存損傷易感染性血液を防止または減少させるための血液および血液製剤、例えば濃厚赤血球に対する添加剤としての使用が挙げられる。
【0248】
P188はさらに、様々な化粧品および薬剤の処方でも使用されてきた。P188は、医薬組成物(例えば、米国特許公開第20040258718号、同第20090214685号、同第20100087501号、同第20100249240号、同第20110008266号、同第20120277199号、ならびに米国特許第8,133,918号、同第8,460,644号および同第8,709,385を参照)、核酸(例えば、米国特許公開第20030206910号および同第20060013883号を参照)、抗菌剤(例えば、米国特許公開第20060078616号を参照)、ならびにタンパク質(例えば、米国特許公開第20100310669号および同第2012/0141619号、米国特許第8,137,677号、ならびにJeong B., et al., (2002)
Adv Drug Del Rev, 54(1); 37-51を参照)の溶解性およびバイオアベイラビリティーを
増加させるために使用できる。P188は、医薬品の送達、例えば、眼科系送達(ophthalmic delivery)(Qi et al. (2007) Int. J. Pharm. 337:178-187)、粘膜付着性(mucoadhesive)送達(Chang et al., (2002) J. Controlled Rel. 82:39-50)、直腸送達(Choi et al. (1998) Int. J. Pharm. 165:23-32; Yong et al, (2006) Int. J. Pharm. 321:56-61; ElHady et al., (2003) Saudi Pharmaceutical Journal. 11:159-171; Yong et al., (2004) Eur. J. Pharm. Sci. 23:347-353; Yun et al, (1999) Int. J. Pharm. 189:137-145; およびPaek et al., (2006) Biological & Pharmaceutical Bulletin. 29:1060-1063)、ならびに経皮送達(Cappel et al., (1991) Int. J. Pharm. 69:155-167)のための医薬担体として使用することができる。P188はさらに、液体経口、非経口および局所投与形態における乳化剤、懸濁安定剤として、また疎水性薬物の可溶化剤としても使用することができる。固体投与形態で、P188は、湿潤剤、可塑剤、または錠剤潤滑剤として使用することができ、またその熱可逆性ゲル化挙動のためにゲルの処方において適用範囲が広い(例えば、Desai et al, (2007) Drug Deliv. 14(7):413-426 and Muzikova
et al., (2013) Acta Pol Pharm. 70(6):1087-1096を参照)。
【実施例0249】
G.実施例
【0250】
以下の実施例は、例示目的のためだけに含まれ、本明細書中の発明の範囲を限定することを意図しない。
【0251】
実施例1
メタノール/超臨界CO2共溶媒での抽出によるポロクサマー188の連続処理精製
メタノール/超臨界CO2共溶媒での抽出によるポロクサマー188の連続処理精製を評価した。連続処理は高スループットを可能にする。ポロクサマー188(旭電化工業、日本)のメタノール中フィード溶液を、好適な充填材料を充填した高圧抽出カラムの中間点にポンプで供給した。メタノールと混合した超臨界CO2(Carboxyque、フランス国)を、向流方式で底部から抽出カラムを通してポンプで供給した(流速=30kg/h~40kg/h)。メタノールの平均濃度は13%であり、9重量%から13.2重量%の勾配として供給した。勾配は、カラムの中央の導入口でのメタノール、CO2およびポロクサマー流速ならびにカラムの底部で導入するCO2/メタノール流速を調節することによって調節した。カラム圧力は200±15barであった。フィード溶液およ
び超臨界CO2/メタノール溶媒の温度は36℃から44℃の勾配であった。カラムジャケット温度および抽出温度は36℃から54℃の勾配であった。
【0252】
メタノールを含む精製産物を抽出カラムの底部から除去しながら低分子量(LMW)ポリマーをカラムの最上部で除去した。精製産物を1時間に1度集め、ガス飽和溶液からの粒子(PGSS)技術により減圧下で沈殿させた。精製産物を真空下で40℃以下にて乾燥して、残留メタノールを除去した。
【0253】
フィード当たりの精製ポロクサマーのおよその収率はおよそ60%であった。ピーク平均分子量はおよそ9,000ダルトンであった。低分子量成分(4,500ダルトン未満)はおよそ1.0%であった。多分散性はおよそ1.0であった。
【0254】
実施例2
メタノールの平衡濃度の評価および生成物排出に対する効果
精製後、開放環境中での精製ポロクサマー188の取り扱いを最小限に抑えるために、蓋を開けずに抽出器から生成物をスムーズに押し出すために適した精製ポロクサマー188生成物中のメタノールの濃度を決定した。2バッチのポロクサマー188(およそ8,000および9,000Da)を評価して抽出容器中のポロクサマー188/メタノール/CO2濃度を特定した。抽出容器に、3,000psig(208bar)および4,500psig(311bar)にて抽出セル容量1mLあたり0.25グラムのポロクサマー188を装填した。抽出容器内部に装填したポリマー188生成物中のメタノールの平衡濃度を専用の実験で26時間の実施中に測定した。結果から、6.6%~8.6%のメタノール/CO2で抽出容器中の装填されたポロクサマー188生成物中のメタノールの平衡濃度はおよそ25~35%メタノールであることがわかった。
【0255】
どのような精製産物中濃度が、蓋を開けずに抽出器から生成物を排出させるのに適しているかを評価するために、12Lの抽出容器中に残ったラフィネートの濃度を25~35%の様々なレベルに調節した。生成物を、急速減圧システムを通して排出させた。乾燥性と排出条件との相関関係を評価した。結果から、より高いメタノール濃度で、25%~35%の濃度範囲の上限で、およそ2600グラムの湿潤生成物が10分未満で放出されて、自由流動性微粉末が得られることがわかった。生成物の外観は、4500から1000psi(311から70bar)のヘッド圧力の変化に伴って変化しなかった。排出速度が遅いほど、またメタノール濃度が低いほど、粗い粒子が得られた。
【0256】
実施例3
超臨界流体抽出法(SFE)に対する溶媒分布システムの効果
メタノール/超臨界CO2共溶媒を使用する超臨界流体抽出法(SFE)に対する溶媒分布システムの効果を判定した。分布システムは底部に充填された様々なサイズの金属またはセラミック球を含み得る。この床の有孔率は、異なるサイズの球を選択することによるか、または異なるサイズの球の混合物を使用することによって、正確に調節することができる。システムの有効率は気泡サイズおよび抽出効率を制御する。これらの球は容易に除去することができ、清浄化することができる。様々な分布システムをSFE過程に対するそれらの効果について、また抽出される全物質に対して低分子量(LMW)物質を抽出する際のそれらの効率について比較した。効率は、典型的には、特定の目標低分子量種(4,500ダルトン未満のLMW成分の%)の収率およびスループットによって判定する。
【0257】
A.方法
SFE過程は、3.08Lのセルを使用して以下の状態下で実施した:T=40℃、圧力=300bar、メタノール流速=全流速の6.6%(95~100g/minのCO
2流速に対して6.5~7g/minのメタノール流速;140~148g/minのCO2流速に対して10~10.5g/minのメタノール流速)、セル長=5'、および
ID=2”。一連の実験は、次のような異なる溶媒分布システムを使用する過程を実施することによって実施した:システムなし;セルの底部にステンレス鋼(SS)球;SS球を有するアルミニウム吸込ストレーナー;SS球を有する吸込金網(40メッシュ);6個の孔(1/16”直径)を有する曲管;または12個の孔(1/16”直径)を有する曲管。
【0258】
第1、第2、第3および第4の抽出時間で集めた抽出物サンプルをGPCおよび重量分析によって分析した。重量平均分子量(Mw)、最高ピークの分子量(Mp)および多分散性指数(PD)(Mw/数平均分子量と定義される)を算出した。
【0259】
B.結果
試験した分布システムの各々について各実験の実施条件およびパラメータを、GPC結果および重量分析と同様にまとめる。
【0260】
1.分布システム-なし
【0261】
【0262】
【0263】
2.分布システム-セルの底部に1000ステンレス鋼球
【0264】
【0265】
【0266】
結果から、より良好なCO2およびメタノール分布のためにセルの底部に1000SS球を加えることにより、主生成物キャリーオーバーが減少し、過程の効率が59%増加することがわかる。したがって、結果から、システムは抽出器の底部でステンレス鋼SS球を使用して有効なCO2/MeOH溶媒分布を提供することがわかる。
【0267】
3.分布システム-さらに高いCO2流速および直線速度でのセルの底部の1000ステンレス鋼球
【0268】
【0269】
【0270】
結果から、この過程が、低いCO2流速および直線速度を使用する前の実験で記載されている過程ほど効率的でなかったことがわかる。
【0271】
4.分布システム-SS球を有するアルミニウム吸込ストレーナー
【0272】
【0273】
【0274】
結果から、底部の1000-SS球だけの代わりに分布システムとしてその中にSS球
を有するアルミニウム吸込ストレーナーを使用することで、さらに高い直線速度であっても過程が4倍効率的になることがわかる。例えば、その方法では、抽出された物質があまり除去されなかったが、それでも同様のレベルのLMWフラクションが除去された、すなわち、抽出された物質が前の実験において120.88グラムであるのに対してこの実施例では31.09グラムであり、抽出されたLMWフラクションは前の実験の23.09グラムに対してこの実施例では17.1グラムであった。したがって、結果から、システムが抽出器の底部でアルミニウム吸込ストレーナーを使用して有効なCO2/MeOH溶媒分布を提供したことがわかる。
【0275】
5.分布システム-SS球を有する吸込金網40メッシュ
【0276】
【0277】
【0278】
結果から、吸込金網40メッシュを使用する分布システムにおける抽出効率が、前記実施例で記載するSS球を有するアルミニウム吸込ストレーナーと類似していたことがわかる。
【0279】
6.分布システム-6個の孔1/16”を有する曲管
【0280】
【0281】
【0282】
結果から、直径1/16”の6個の孔を有する曲管は、前の分布システムよりも効率が悪かったことがわかる。
【0283】
7.分布システム-直径1/16”の12個の孔を有する曲管
【0284】
【0285】
【0286】
結果は、直径1/16”の12個の孔を有する曲管は、6個の孔を有する分布システムを使用する前の実験よりも若干効率的であるが、吸込金網およびステンレス鋼球よりも効率的でないことを示す。
【0287】
C.まとめ
分布システムがステンレス鋼球を有するアルミニウム吸込ストレーナーまたはステンレス鋼球を有する吸込金網メッシュである方法で、最高の精製効率が観察された(例えば、実験4および5を参照)。曲管分布システム中の孔の数を増加させることによっても、精製効率はある程度まで増加した(例えば、実験7を参照)。したがって、結果から、分布システムがSFE設備において役割を果たし、そのデザインによって過程が多少効率的になることがわかる。好適なデザインはステンレス鋼球を有する吸込金網または吸込ストレーナーである。曲管も分布システムとして使用できるが、できるだけ多くの孔を有する場合である。記載した他の実験のほとんどについて、吸込金網分布システムを用いて実験を実施した。
【0288】
実施例4
12Lスケールのポロクサマー188の2ステップ抽出バッチ処理精製
過程は高分子量成分(>13,000ダルトン)が多くなるように設計する。典型的な抽出プロフィールでは、精製後の高分子量成分の増加は有意ではない。ポロクサマー188の2ステップバッチ処理精製は、12Lスケールで、メタノール濃度を調節することによって実施する。抽出前のポロクサマー188は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC
)によって測定するとおよそ1%の高分子量成分と5%の低分子量成分とを含む。
【0289】
撹拌抽出容器と、サイクロンセパレータと、CO2溶媒循環と、メタノール共溶媒系とを含む12Lの抽出システムを漏れについて試験する。抽出システムをキャンペーンの開始時にCO2で310±15barまで加圧する。メタノール(2kg)をライナー付フィード混合タンクに分注し、40℃まで温める。およそ3700グラムのポロクサマー188をフィードタンクに添加し、完全に混合されるまで撹拌する。5100グラムの混合溶液をポンプで抽出器中に供給する。CO2流速を390gm/minで維持する。メタノール濃度を調節することによって2回の連続した抽出を実施する。抽出を12時間±30分間、7.6%MeOH/CO2にて、27.6±1.0gm/minのメタノール流速で実施する。抽出を12時間±15分間、8.6%MeOH/CO2で、36.6±1.0gm/minのメタノール流速で続ける。
【0290】
24時間の精製後、急速減圧システム(ガス飽和溶液からの粒子(PGSS))を通して抽出器を排出させ、湿潤生成物はライナー中に集められる。湿潤生成物のサンプル(~600gm)をフラスコに移し、ロータリーエバポレータを使用して、室温、適度な真空で約3時間、続いて室温、高真空で30分間、そして35℃でさらに30分間乾燥させる。乾燥産物を集め、分子量分布についてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって試験する。精製産物中で低分子量(LMW)成分は検出されない。精製産物はおよそ4.5%の高分子量(HMW)成分を含んでいた。
【0291】
実施例5
メタノール/超臨界CO2共溶媒での抽出によるポロクサマー188のバッチ処理精製
メタノール/超臨界CO2共溶媒での抽出によるポロクサマー188のバッチ処理精製を評価した。抽出溶媒温度、圧力およびメタノール共溶媒含有量を制御することにより溶媒特性を調節することによってポロクサマー188(旭電化工業、日本)を精製した。過程は圧力および共溶媒含有量が異なっていた。
【0292】
ポロクサマー188(13~14kg)を高圧抽出容器中でメタノール溶媒と混合した。メタノールおよび超臨界CO2の共溶媒(BOCガス、USA)を混合し、抽出容器を通してポンプで供給した。低いメタノール濃度で抽出を開始し、抽出の間に除去したフラクションの組成をモニターしながらメタノール濃度を連続して増加させた。平均メタノール濃度は7.3%(重量基準)であった。濃度を段階的に6.6%から7.6%から8.6%まで増加させた。抽出容器圧力は300±15barであった。メタノール/超臨界CO2溶媒温度および抽出器ジャケット温度は40±5℃であった。抽出温度を35~45℃に調節した。溶出フラクションをゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析した。抽出容器から回収した精製ポロクサマー188の分子量分布は出発物質よりも狭かった。
【0293】
結果として得られる収率は約75%であった。ピーク平均分子量はおよそ9,000ダルトンであった。低分子量成分(4,500ダルトン未満)は約1.0%であった。多分散性は約1.0であった。
【0294】
実施例6
12Lスケールのポロクサマー188の多段抽出バッチ処理精製およびゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分析
【0295】
A.超臨界流体抽出(SFE)法
4バッチのポロクサマー188を12リットルの抽出容器中SFEバッチ処理によって精製した。各バッチを後述するようにして精製した。システムをCO2で加圧し、圧力を
バッチ間で900psig(63bar)より高く維持した。メタノール(2000±20gm)を、ライナー付フィード混合タンク中に分注し、40℃まで温めた。ポロクサマー188(3696±20gm)をフィードタンク中に分注し、混合するまで撹拌した。90パーセント(90%)のポロクサマー188溶液を抽出器中にポンプで供給し、システムを310±15barに加圧した。CO2流速を390gm/minで維持した。メタノール濃度を6.6重量%、7.6重量%または8.6重量%の制御された段階的増加で調節することによって3回の連続した抽出を実施した。各メタノール濃度で、表15で記載するような所定の時間、抽出を実施した。インプロセスサンプルを、各抽出の間で指定された時間後に抽出器の底部から集めた。
【0296】
【0297】
26時間の精製過程の最後で、抽出器を、急速減圧システムを通して放出させ、湿潤生成物をライナー中に集めた。サブロットの湿潤生成物(~600g)をフラスコに移し、ロータリーエバポレータを使用して室温および適度の真空にておよそ3時間、続いて室温および高真空にて30分間、そして35℃および高真空にてさらに30分間乾燥させた。乾燥産物をサブロットとして集めた。この乾燥過程を残りの湿潤生成物で繰り返して、3つのサブロットの乾燥産物を作製した。3つのサブロットを10Lのドラム中でまとめ、30分間混合して、精製ポロクサマー188を製造した。フィードあたりの収率はおよそ55%であった。
【0298】
B.精製産物の特性評価
出発および精製ポロクサマー188生成物をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって評価した。結果を
図6A~6Bに記載する。
【0299】
図6Aは、出発ポロクサマー188のGPCプロフィールを示す。GPC図では、保持時間を異なる分子量種の相対量に対してプロットする。x軸の保持時間の増加は分子量の
減少に対応する。出発ポロクサマー188のGPC図は、低分子量側で小さなさらなるピークを有する狭い分子量分布を示す。低分子量成分の曲線の下の面積はおよそ4~7%であり、平均分子量は4,500ダルトン未満である。
【0300】
図6Bは、精製ポロクサマー188のGPCプロフィールを示す。精製ポロクサマー188は市販のポロクサマー188よりも狭い分子量分布を有する。比較すると、精製ポロクサマー188のGPC図は、著しくわずかな低分子量ピーク(主ピークの面積の1.5%未満)を有する狭い分子量分布を示す。
【0301】
実施例7
長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188の調製および投与
A.超臨界流体抽出(SFE)過程
抽出を247±15気圧(およそ200~260bar)の圧力で実施し、7.4、9.1および10.7重量%メタノールの制御された段階方式でメタノールを増加させて、ポロクサマー188の多段抽出バッチ処理を実施した。精製前に、ポロクサマー188原料(BASF Corporation、ニュージャージー州ワシントン)をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって特性評価した。分子量分析は、原料が約8,500±750Daの主ピークの平均分子量、6.0%以下の4,500Da未満の低分子量(LMW)種および1%以下の13,000Daを上回る高分子量種(HMW)を有することを証明した。加えて、多分散性は1.2以下であった。
【0302】
50Lの高圧ステンレス鋼製抽出容器に14kgの商業等級のポロクサマー188(BASF Corporation、ニュージャージー州ワシントン)およびCO2(49±10気圧、すなわち720±147psi)で加圧した7kgのメタノール(Messer France, S.A.S.、フランス国ラヴェラ)を装填し、均質溶液が得られるまで35℃~50℃まで40~80分間加熱した。CO2(メイン供給タンクから、または抽出システムを通したリサイクルを経て供給する)を熱交換器中で冷却し、温度制御した高圧ステンレス鋼溶媒性溶媒レザバー中に供給する。高圧ポンプは液体CO2の圧力を所望の抽出圧力まで増加させた。高圧CO2流れを第2熱交換器によって処理温度まで加熱した。メタノール(Merck KGaA、ドイツ国ダルムシュタット)をメイン供給タンクからCO2溶媒流れに供給して、抽出メタノール/CO2共溶媒を生成させ、これを吸入装置(inlet system)から抽出容器中へ細かい霧として247±15気圧(3600±psi)または240~260barの圧力および40℃の温度にて供給した。
【0303】
7.4%のメタノール/CO2抽出共溶媒を、典型的には8kg/hrのメタノール流速(6.8kg/hr~9.2kg/hrの範囲;108kg/hrの全流速)で3時間ポロクサマー溶液を通してろ過した。抽出を9.1%メタノール/CO2の共溶媒でさらに4時間、典型的には10kg/時のメタノール流速(8.5kg/hr~11.5kg/hrの範囲;110kg/hrの全流速)で続けた。抽出を10.7%メタノール/CO2共溶媒でさらに8時間、典型的には12kg/時のメタノール流速(10.2kg/hr~13.8kg/hrの範囲;112kg/hrの全流速)でさらに続けた。抽出過程全体にわたって、可溶性種の抽出物を抽出器の最上部から連続して抽出した。抽出溶媒を抽出器の最上部から除去し、および直列に配置した2つの高圧ステンレス鋼製サイクロンセパレータに通して、システム圧力を247気圧(3600psi)から59気圧(870psi)まで減圧し、次いで59気圧から49気圧(720psi)まで減圧し、およびメタノール蒸気からCO2を分離した。分離したCO2を凝縮させ、熱交換器に通し、および溶媒レザバー中で保存した。別のサイクロンセパレータに通すことによってメタノール排気流れの圧力をさらに減圧した。精製ポロクサマー188は抽出器中に残留した。
【0304】
抽出後、精製ポロクサマー188溶液を抽出器の底部からスターラーを備えたミキサー/ドライヤーユニット中へ排出した。ポロクサマー188生成物をガス飽和溶液からの粒子(PGSS)技術により減圧下で沈殿させた。沈殿はおよそ20%~35%のメタノールを含んでいた。精製ポロクサマー188を真空下で40または45℃以下にて乾燥して、残留メタノールを除去した。生成物のフィード収率は65%の平均収率をもたらした。
【0305】
GPCによって測定される精製産物の分子量分析によって、精製産物が受入仕様を満たすことが示された。約8,500±750Daの主ピークの平均分子量および平均8,500±750Daの平均分子量、1.5%以下の4,500Da未満の低分子量(LMW)種および1.5%以下の13,000Daを上回る高分子量種(HMW)があった。加えて、多分散性は1.05以下であった。したがって、結果から、処理の結果、LMW種において測定可能な減少が起こったこと、および精製産物の多分散性が改善されたことがわかる。
【0306】
結果として得られる精製ポロクサマー188を、150mg/mlの精製ポロクサマーと3.08mg/mlの塩化ナトリウムと2.38mg/mlのクエン酸ナトリウム(二水和物)と0.366mg/mlの無水クエン酸とを注射用の水中に含む無色透明な無菌非発熱性水溶液に配合した。溶液を無菌ろ過し、100mlのガラスバイアル中に充填し、窒素ブランケットで被覆し、ブチルゴム栓およびアルミニウムオーバーシールで閉鎖した。結果として得られる溶液のオスモル濃度はおよそ312mOsm/Lであった。LCMFポロクサマー188組成物はいかなる静菌剤または防腐剤を含んでいなかった。
【0307】
B.HPLC-GPC(方法1)を使用した精製(LCMF)ポロクサマー188の静脈内投与後の血漿濃度経時変化の特性評価
上述のようにして生成した精製LCMFポロクサマー188を、QT/QTc間隔に対するその効果を判定するための評価の一部として62人の健常なボランティアに静脈内投与した。62人の対象のうち8人を、HPLC-GPC法を使用した血漿ポロクサマーレベルの定量分析のためにランダムに選択した。投与後、ベースラインで、薬物投与の間(1、2、3、4、5、および6時間)ならびに投与後1、1.5、2、2.5、5、6、および18時間で、ヘパリン抗凝固処理チューブへ静脈穿刺によって血液サンプルを得た。血漿を遠心分離によって分離し、分析まで凍結保存した。精製ポロクサマー188を、300mg/kg/hrの投与量の高用量で1時間と、続いて200mg/kg/hrの維持量で5時間、または100mg/kgの低用量で1時間と、続いて30mg/kg/hrで5時間のいずれかで投与した。0.9mg/mLの投与した精製ポロクサマー188の平均最高濃度(Cmax)が1時間のローディング注入の終わりまでに達成された。約0.4mg/mlの定常状態での平均濃度(Css)が維持注入中に達成された。血漿濃度は、維持注入の中止後に急速に減少した。上述のように精製したLCMF製品は、血漿中で、先行技術のポロクサマー188で観察され、また本明細書中で定義するような長期循環高分子量物質を示さなかった。
【0308】
血漿中にそのような長期循環物質がないことを確認するために、高用量を投与した対象由来の血漿を、HPLC-GPCを用いて同様に試験した。
図7Aおよび7Bは、単一の対象について精製LCMFポロクサマー188の投与後の様々な時点で得られた血漿の一連のHPLC-GPCを示す。
図7Aは全時点でのクロマトグラムを示し、一方、
図7Bは比較のために選択された時点を示す。どちらの図においても、クロマトグラムを拡大してポリマー分布の高分子量部分(19.8キロダルトン~12.4キロダルトン)を示す。主ピーク部分(12.8~4.7KDa)および低分子量部分(4.7~2.5KDa)も示す。HPLC-GPC法は、既知濃度の標準に対する溶出ピークの高さに基づいて血漿レベルを定量する(すなわち、溶出ピークが高いほど血漿レベルが高い)。GPC法はまた、サンプル溶出時間を既知分子量の標準の溶出時間と比較することによって分子量
範囲を特定する。
【0309】
クロマトグラムは、時間とともに、ポロクサマー188ポリマー分布の高分子量部分が主ピークおよび低分子量成分に比例して減少することを示す。このように、ポリマー分布は高分子量部分が実質的に同じ方法で循環から消失することを示す。結果はまた、より高分子量種がより長い循環半減期(他のポリマー成分に対して)を示さず、静脈内投与後の循環において蓄積しないことも示す。
【0310】
C.HPLC-GPCによる、精製LCMFポロクサマー188および精製LCM含有ポロクサマー188の静脈内投与後の血漿濃度経時変化の比較
1.長期循環物質(LCM)含有ポロクサマー188の投与
安全性および薬物動態研究の一部として、(LCM含有)精製ポロクサマー188を6人の健常なボランティアに対して100mg/kg/hrの静脈内投与量として1時間、続いて30mg/kg/hrで48時間投与した(Grindel et al)。薬物投与前(ベー
スライン)、投与中(1時間、6時間、12時間、18時間、24時間、36時間および48時間)ならびに薬物投与後30分、1時間、1.5時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、14時間、20時間および24時間にEDTA抗凝固チューブ中に静脈穿刺によって血液サンプルを得た。血漿を分離し、HPLC-GPC法を使用する分析まで凍結乾燥した。血漿サンプルの分析によって、(LCM含有)精製ポロクサマー188の主ピークおよびHMWピークのクリアランス反応速度論が明らかになった。
【0311】
HMWピーク(長期循環物質)
上記用量で投与した後、HMW成分(HPLC-GPCアッセイにおいておよそ16,000ダルトンのピークとして検出される)は薬物投与期間中に蓄積し、薬物投与後2時間まで225μg/ml(n=6)の平均Cmax濃度に到達しなかった。注入の中止後6時間まで、平均血漿レベルは、Cmax値から約10%だけ減少した濃度である202ug/mlにとどまった。24時間の注入後血液収集期間にわたって、平均血漿レベルは165μg/mlの血漿濃度まで22.5%減少しただけであった。血漿濃度経時変化におけるこれらの変化に基づいて、48時間を超える排出半減期が推定される。
【0312】
主ピーク
上記用量で投与した後、主ピークは522μg/ml(n=6)の見かけの平均定常状態濃度を達成し、この濃度は薬物注入の間維持された。注入中止後1時間で、血漿レベルは定常状態濃度から52%低下して255μg/mlになった。中止後6時間までに、血漿レベルは85%~81μg/ml低下した。注入後24時間までに、血漿レベルは96%減少して、約19μg/mlの血漿濃度になった(n=6)。血漿濃度経時変化におけるこれらの変化に基づいて、半減期は約5時間であると推定される。
【0313】
2.LCMFポロクサマー188(上述のようにして調製)
既に記載したQT/QTc間隔に対するその効果を判定するための評価の一部として、LCMFポロクサマーを62人の健常なボランティアに300mg/kgの用量で1時間、続いて200mg/kg/hrで5時間投与した。62人の対象のうち8人を、パート(B)で記載するのと類似しているが、低い血漿レベルで直線性が改善されたHPLC-GPC法を使用した血漿ポロクサマーレベルの定量分析のためにランダムに選択した。
【0314】
HMWピーク
上記用量で投与した後、HPLC-GPCアッセイでおよそ16,000ダルトンのピークとして検出されたHMW成分は、薬物投与中にわずかに蓄積し、最後の注入までにそのCmax(117μg/mlの平均値、n=8)を達成した。薬物投与の中止後1時間までに、血漿レベルはCmax値から86μg/mlまで27%減少した。薬物投与終了
後6時間までに、平均血漿レベルはCmax値から34μg/mlまで71%減少した。注入終了後18時間までに、平均血漿レベルは19μg/mlの濃度まで82%減少した(n=8)。血漿濃度における経時的なこれらの変化に基づいて、HMW成分の排出半減期は6~9時間であると推定された。
【0315】
主ピーク
上記用量で投与した後、主ピークは2,637μg/mlのみかけの平均定常状態濃度を達成し、この濃度は6時間の注入期間の間維持された(n=8)。注入の中止後1時間に、平均血漿レベルは定常状態から67%減少して872μg/mlになり、中止後6時間までに、平均血漿レベルは(定常状態から)93%減少して184μg/mlになった。注入の中止後18時間までに、平均血漿レベルは(定常状態から)98%超減少し、約34μg/mlの血漿濃度になった(n=6)。血漿濃度経時変化のこれらの変化に基づいて、排出半減期は約3時間と推定される。
【0316】
c.まとめの比較表
投与後の類似した時点での血漿からの相対的クリアランス速度の比較を下記表1に示す。データは、(LCM含有)精製ポロクサマー188とLCMFポロクサマー188との血漿濃度との減少率の差を示し、LCMFポロクサマー188の方が速く消失することを示す。差はHMWピークおよび主ピークについて明らかである。差はHMWピークについて最も明らかである。これは、LCMFポロクサマーが先行技術のLCM含有ポロクサマーとは異なることを示す。
【0317】
【0318】
D.精製LCMFポロクサマー188がLCMを含有する精製ポロクサマー188とは異なることを裏付ける分析データ
【0319】
1.様々なポロクサマーを比較するための分析試験(RP-HPLCアッセイ)
逆相クロマトグラフィーでは、疎水性固定相(カラム)と、より極性が高い移動相とがある。この「逆」相状態のために、RP-HPLCは通常、相対的疎水性に基づいて化合物を分離するために使用される。疎水性の化合物は、親水性の化合物よりも長いカラム保持時間を示す。
【0320】
以下のHPLC条件を使用して、親水性/親油性バランス(HLB)の差が既知である様々なポロクサマーのカラム保持時間を、精製ポロクサマー188含有LCMおよびLCMFポロクサマー188と共に比較した:
【0321】
【0322】
結果
結果から、LCMFポロクサマー188は先行技術の精製ポロクサマー188とは異なることがわかる。それは異なる薬物速度論的特性を有し、このことは、長期循環物質を含む先行技術の物質よりも親水性が高いことを反映する。
【0323】
図9は、高親水性ポリマー(PEG8000)と、LCMFポロクサマー188、LCM含有精製ポロクサマー188と、HLB値が減少する(疎水性が増加する)2つのポロクサマー、すなわちそれぞれポロクサマー338およびポロクサマー407のRP-HPLCクロマトグラムを示す。最も親水性の高いポリマーであるPEG8000は、その高親水性と一致してカラム上で低い保持性を示す。ポロクサマー338(HLB>24)およびポロクサマー407(HLB18-23)は、それらの既知HLB値と一致してはるかに長い保持時間を示す(t
Rおよびk’値を加える)。LCMF精製ポロクサマー188はLCM含有精製ポロクサマー188よりも急速に溶出し(LCMF精製ポロクサマーの平均t
Rおよびk’は、LCM含有精製ポロクサマーの約10.0(9.883)および3.7(3.697)と比較して、それぞれ約8.8(8.807)および約3.2(3.202)である)、このことは、LCMFポロクサマー188がLCM含有精製ポロクサマー188よりも相対的に親水性が高いことを意味する。
【0324】
図10は、3つの異なるロットの精製LCMFポロクサマー188および2つの異なるロットの精製(LCM含有)ポロクサマー188のクロマトグラムを示す。これらの結果は、異なるロットの物質についての堅固な再現性を証明し、2つの物質間の差異がアッセイ可変性で説明することができないことを示す。これらの結果は、LCMFポロクサマー188のポリマー分布が精製ポロクサマー188よりも親水性であることを証明する。
2.LCMF精製ポロクサマーおよびLCM含有ポロクサマーの異なる薬物動態挙動はそれらの親水性の差と相関する
【0325】
本明細書中(例えば、上記実施例7B、および
図9~10を参照)および表1)で記載するように、LCMFポロクサマー188は、インビボ投与後に長期循環物質(LCM)を含む精製ポロクサマー188と比べた場合、ヒト対象に投与した後に著しく異なる薬物動態挙動を示す。この実施例で提供するデータは、長期循環物質を生じさせる精製ポロクサマー188と比べて、LCMFポロクサマー188はより親水性であることを意味する。
【0326】
ポロクサマー188の精製形、精製LCM含有ポロクサマー188、およびLCMFポロクサマー188のポリマーサイズ分布は、HPLC-GPCによって示されるように、サイズに関して類似している。どちらも基準を満たす:
【0327】
【0328】
両精製ポロクサマーのHPLC-GPCによって示されるようなポリマーサイズ分布は類似している一方で、本明細書中のRP-HPLCによって証明されるように、LCMFポロクサマー188のポリマー分布を含む分子はより親水性が高い。
【0329】
動物に注射した場合、より親水性の高いポリマー分布は循環からより速い速度で消失する。これは、LCMFポロクサマー188製剤中の長期循環物質の存在の減少の原因となる。結果はさらに、観察され、また上述するように、ポリマー分布の主ピークの方が速く消失することを意味する。例えば、臨床試験から得られる血漿濃度の経時変化データは、LCMを含有する精製ポロクサマー188と比較して、LCMFポロクサマー188の主ピークおよび高分子量ピークの短い排出半減期を示す。
【0330】
P188のレオロジー効果、細胞保護効果、抗接着効果および抗血栓効果は、約8,400~9,400ダルトン(約4~7時間の循環半減期を有するもの)である分布の過半または主要コポリマーの範囲内で最適であるので、ポロクサマー188のより大きく疎水性が高い長期循環半減期成分の存在は望ましくない。例えば、P188の望ましい活性には、血液粘性を低下させ、および赤血球(RBC)凝集を阻害するそのレオロジー効果があり、これは、損傷組織における血流を改善する能力の原因となる。対照的に、より疎水性の高分子量ポロクサマー、例えばP338(Pluronic(登録商標)F108とも呼ばれる)およびP308(Pluronic(登録商標)F98)は血液粘度およびRBC凝集を増加させる(Armstrong et al. (2001) Biorheology, 38:239-247)。これ
は、P188の逆の効果であり、高分子量疎水性ポロクサマー種が望ましくない生物学的効果を有し得ることを意味する。
【0331】
したがって、結果は、精製(LCM含有)ポロクサマー188の高分子量ピーク中に含まれる疎水性成分が望まれない不純物であることを意味する。したがって、これらの成分の量が減少したLCMFポロクサマーなどのポロクサマー188が望ましい。
【0332】
実施例8
メタノールの制御された段階的増加を採用した多段抽出バッチ処理においてメタノール
濃度を調節する効果
以下のようなメタノールの制御された段階的増加でメタノール濃度を変更することによって抽出を実施してポロクサマー188の多段抽出バッチ処理を実施する以外は、実質的に上記実施例で記載するように方法を実施した。実行可能な最大圧力は、典型的には250気圧である。したがって、メタノール濃度および抽出時間を調節する過程を用いて、圧力限界を調節することができる。
【0333】
A.制御された段階的増加:6.3、7.1および8.1重量%メタノール
107kg/hrのメタノール流速で3時間ポロクサマー溶液を通して6.3%メタノール/CO2抽出共溶媒をろ過した以外は、ポロクサマー188(14kg)を実施例8で記載するように精製した。抽出は、7.1%メタノール/CO2共溶媒でさらに8時間、108kg/hrのメタノール流速で続けた。抽出は、8.1%メタノール/CO2共溶媒でさらに7時間、109kg/hrのメタノール流速でさらに続けた。過程の最後で、抽出器内容物を排出させ乾燥させて、パートAで記載するようにして残留メタノールを除去した。精製ポロクサマー188の収率は66%であった。結果によってさらに、過程の結果、LMW種の測定可能な低減が起こることが証明された。
【0334】
B.制御された段階的増加:3.8、9.1および10.7重量%メタノール
3.8%メタノール/CO2抽出共溶媒を、ポロクサマー溶液により4時間104kg/hrのメタノール流速でろ過した以外は、実施例8で記載するようにして、ポロクサマー188(14kg)を精製した。抽出を、9.1%メタノール/CO2共溶媒でさらに3時間、108kg/hrのメタノール流速で続けた。抽出を、10.7%メタノール/CO2共溶媒でさらに8時間、112kg/hrのメタノール流速でさらに続けた。過程の最後で、抽出器内容物を排出させ乾燥させて、パートAで記載するようにして残留メタノールを除去した。精製ポロクサマー188の収率は57%であった。結果によってさらに、過程の結果、LMW種の測定可能な低減が起こることが証明された。
【0335】
実施例9
メタノール/高圧CO2共溶媒での抽出によるポロクサマー188のバッチ処理精製
メタノール/高圧CO2共溶媒での抽出によるポロクサマー188のバッチ処理精製を評価する。ポロクサマー188(13~14kg)をメタノール/高圧CO2溶媒での抽出によって精製する。ポロクサマー188を混合するまで高圧抽出容器中でメタノールと撹拌する。メタノールおよび高圧CO2の共溶媒を、抽出容器を通ってポンプで供給する。抽出溶媒の溶媒特性は、抽出溶媒温度、圧力およびメタノール共溶媒の量を調節することによって調節する。具体的には、3つのパラメータの組み合わせを、商業等級ポロクサマー188から低分子量(LMW)および高分子量(HMW)成分を除去するために選択する。メタノールの出発濃度はおよそ2.5重量%であり、徐々に25重量%まで連続して増加させる。抽出容器圧力は75±10barであり、抽出温度、メタノール/CO2共溶媒温度および抽出器ジャケット温度は20~25℃である。抽出過程を逐次方式でおこなって、様々な成分を抽出器から連続して除去する。
【0336】
抽出溶媒を除去し、溶出フラクションをゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析する。精製後、精製ポロクサマー188を抽出容器から回収し、そしてGPCによって分析する。最初に、低分子量(LMW)成分を抽出の間に除去し、そして主フラクションを高濃度のメタノールで除去する。高分子量成分を抽出過程の後期で除去する。精製ポロクサマー188の分子量分布は出発物質よりも狭い。
【0337】
ポリマーの収率は60~80%であり、低分子量成分(4,500ダルトン未満)は1.5%未満であると推定される。ピーク平均分子量は約8,500±750ダルトンである。
修正は当業者には明らかであるので、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。
本発明の実施態様の例は下記の通りである。
[項1]
長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188であって:
前記LCMFポロクサマー188が式HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーであり、式中:
aおよびa’の各々は、前記親水性物質(C2H4O)のパーセンテージが前記コポリマーの全分子量の約60%~90重量%となるような整数であり;
aおよびa’は同一または異なり;
bは、前記疎水性物質(C3H6O)の分子量が約1,300~2,300ダルトンとなるような整数であり;
前記コポリマーの前記ポリマー分布中の全成分の1.5%以下が4,500ダルトン未満の平均分子量を有する低分子量成分であり;
前記コポリマーの前記ポリマー分布中の全成分の1.5%以下が13,000ダルトンを上回る平均分子量を有する高分子量成分であり;
前記コポリマーの多分散性値が約1.07未満または1.07未満であり;
ヒト対象に静脈内投与した後に、前記コポリマー分布中の主ピークを含まない任意の成分の循環血漿半減期が前記コポリマー分布中の主成分の循環半減期の5.0倍以下である、前記長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188。
[項2]
前記コポリマーの前記ポリマー分布を構成する全成分が、前記対象の血漿中で、対象へ静脈内投与した後の前記コポリマーの主成分の循環半減期よりも4.0倍以下、または3.0倍以下長い循環半減期を有する、項1に記載のLCMFポロクサマー。
[項3]
前記コポリマーの分布中の全成分が、ヒト対象に投与した場合、前記コポリマーの分布中の主成分の前記循環半減期よりも3倍以下長い、前記対象の血漿中の循環半減期を有する、項1または2に記載のLCMFポロクサマー。
[項4]
前記コポリマーの分布中の全成分が、ヒト対象に投与した場合、30時間以下、25時間以下、20時間以下、15時間以下、10時間以下、9時間以下、8時間以下または7時間以下の、前記対象の血漿中の半減期を有する、項1~3のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。
[項5]
前記コポリマーの分布中の全成分が、ヒト対象に投与した場合、前記対象の血漿中で、10時間以下または12時間以下の半減期を有する、項4に記載のLCMFポロクサマー。
[項6]
前記ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーが、約1,400~2,000Daまたは1,400~2,000Daの分子量を有する疎水性物質と、前記コポリマーの約70%~90%または70%~90重量%を構成する親水性部分とを有するポロクサマーである、項1~5のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。
[項7]
前記疎水性物質(C3H6O)の前記分子量が約1,750Daまたは1,750Daである、項1~6のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。
[項8]
前記ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーの前記平均分子量が7,680ダルトン~9,510ダルトンまたは8,400~8,800ダルトンである、項1~7のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。
[項9]
13,000ダルトンを上回る前記製剤中の高分子量成分のパーセンテージが、前記ポロクサマー製剤の成分の全分布の1%未満を構成し;
ヒト対象への静脈内投与の結果、前記コポリマーの分布における主成分の循環血漿半減期の4倍を上回る循環半減期を有する成分が得られない、項1~8のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。
[項10]
13,000ダルトンを越える前記製剤中の高分子量成分のパーセンテージが、前記ポロクサマー製剤の成分の全分布の0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、またはそれ以下を構成する、項9に記載のLCMFポロクサマー。[項11]
前記多分散性値が1.06未満、1.05未満、1.04未満または1.03未満である、項1~10のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。
[項12]
長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188であって:
前記LCMFポロクサマー188が、式HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーであり;
aおよびa’の各々は、前記親水性物質(C2H4O)のパーセンテージが前記コポリマーの全分子量の約60%~90重量%となるような整数であり;
aおよびa’は同一または異なり;
bは、前記疎水性物質(C3H6O)の分子量がおよそ1,300~2,300ダルトンとなるような整数であり;
前記コポリマーの分布中の全成分の1.5%以下は4,500ダルトン未満の平均分子量を有する低分子量成分であり;
前記コポリマーの分布中の全成分の1.5%以下は13,000ダルトンを上回る平均分子量を有する高分子量成分であり;
前記コポリマーの前記多分散性値がおよそ1.07未満または1.07未満であり;
前記LCMFポロクサマーは、前記長期循環物質(LCM)を含む精製ポロクサマー188または標準よりも親水性であり、前記ポロクサマー中のLCM物質は、ヒト対象に投与した場合に、前記ポロクサマー製剤の主成分の半減期の約5倍超または5倍超の半減期を有する、
前記長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188。
[項13]
長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188であって:
前記LCMFポロクサマー188が、式HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーであり;
aおよびa’の各々は、前記親水性物質(C2H4O)のパーセンテージが前記コポリマーの全分子量の約60%~90重量%となるような整数であり;
aおよびa’は同一または異なり;
bは、前記疎水性物質(C3H6O)の分子量がおよそ1,300~2,300ダルトンとなるような整数であり;
前記コポリマーの分布中の全成分の1.5%以下が4,500ダルトン未満の平均分子量を有する低分子量成分であり;
前記コポリマーの分布中の全成分の1.5%以下が13,000ダルトンを上回る平均分子量を有する高分子量成分であり;
前記コポリマーの前記多分散性値がおよそ1.07未満または1.07未満であり;
前記LCMFポロクサマーが、逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって評価して同じRP-HPLC条件下で精製LCM含有ポロクサマー188よりも
短い平均保持時間(tR)を有する、前記長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188。
[項14]
前記RP-HPLC条件が、前記精製LCM含有ポロクサマー188の前記平均tRが約9.9~10または9.9~10;および前記LCMFポロクサマーの前記平均tRが約8.7~8.8または8.7~8.8となるようなものである、項13に記載のLCMFポロクサマー。
[項15]
長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188であって:
前記LCMFポロクサマー188が、式HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーであり、式中:
aおよびa’の各々は、前記親水性物質(C2H4O)のパーセンテージが前記コポリマーの全分子量の約60%~90重量%となるような整数であり;
aおよびa’は同一または異なり;
bは、前記疎水性物質(C3H6O)の分子量が約1,300~2,300ダルトンとなるような整数であり;
前記コポリマーの分布中の全成分の1.5%以下が4,500ダルトン未満の平均分子量を有する低分子量成分であり;
前記コポリマーの分布中の全成分の1.5%以下が13,000ダルトンを上回る平均分子量を有する高分子量成分であり;
前記コポリマーの多分散性値がおよそ1.07未満または1.07未満であり;
前記LCMFポロクサマー188の容量因子(k’)が、RP-HPLCによって評価すると、同じRP-HPLC条件下での精製LCM含有ポロクサマー188のk’よりも少ない、前記長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188。
[項16]
RP-HPLC条件は、前記LCMFポロクサマー188の平均k’が約3.2~3.3または3.2~3.3であり、前記精製LCM含有ポロクサマー188の平均k’が約3.6~3.7または3.6~3.7となるようなものである、項13~15のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。
[項17]
a)ポロクサマー188溶液を抽出容器に導入し、前記ポロクサマーを第1アルカノール中に溶解させて溶液を形成すること;
b)前記ポロクサマー溶液と、第2アルカノールおよび超臨界二酸化炭素を含む抽出溶媒とを、第1の一定期間のあいだ超臨界二酸化炭素を維持する温度および圧力下で混合すること:
前記温度は二酸化炭素の臨界温度よりも高いが40℃以下であり;
前記圧力は220bar~280barであり;
前記アルカノールは前記全抽出溶媒の7重量%~8重量%のアルカノール濃度で提供される;および
c)前記抽出溶媒中のステップb)の前記第2アルカノールの濃度を前記抽出法の時間とともに勾配段階で複数回増加させること:
複数回の各々はさらなる一定期間で行い;
連続したステップの各々で、前記アルカノール濃度を前記第2アルカノールの前の濃度と比べて1~2%増加させる;および
d)前記抽出容器から前記抽出溶媒を除去し、それによって前記ラフィネートポロクサマー製剤から抽出された物質を除去すること
を含む方法によって製造される、項1~16のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。[項18]
ステップa)において、ポロクサマーと第1アルカノールとの重量比が約2:1~3:
1または2:1~3:1であり、両端を含む、項17に記載のLCMFポロクサマー。
[項19]
ステップc)における前記複数回を2、3、4または5勾配段階で行う、項17または項18に記載のLCMFポロクサマー。
[項20]
ステップc)を:
i)前記第2アルカノールの濃度を約7%から8%から約8.2%から9.5%まで第2の一定期間で増加させること;および
ii)前記第2アルカノールの濃度を約8.2%から9.5%から約9.6%から11.5%まで第3の一定期間で増加させること
を含む2ステップで行う、項18または項19に記載のLCMFポロクサマー。
[項21]
ステップb)における前記アルカノール濃度が約7.4重量%または7.4重量%であり;
ステップi)における前記アルカノール濃度が約9.1重量%または9.1重量%であり;そして
ステップii)における前記アルカノール濃度が約10.7重量%または10.7重量%である、項20に記載のLCMFポロクサマー。
[項22]
前記第1の一定期間、第2の一定期間および第3の一定期間を、各々2時間~12時間実施する、項17~19のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。
[項23]
前記一定期間が同一または異なる、項22に記載のLCMFポロクサマー。
[項24]
前記第1の一定期間を2時間~6時間実施し;
前記第2の一定期間を2時間~6時間実施し;
前記第3の一定期間を4時間~10時間実施する、項22または項23に記載のLCMFポロクサマー。
[項25]
前記第1および第2アルカノールが各々独立して、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびそれらの組み合わせから選択される、項17~24のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。
[項26]
前記第1および第2アルカノールが同一または異なる、項17~25のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。
[項27]
前記第1アルカノールがメタノールである、項25に記載のLCMFポロクサマー。
[項28]
前記第2アルカノールがメタノールである、項25に記載のLCMFポロクサマー。
[項29]
前記第1アルカノールがメタノールであり、前記第2アルカノールがメタノールである、項25~28のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。
[項30]
前記抽出された物質を除去するステップd)を、ステップb)からc)を通して実施する、項25~29のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。
[項31]
前記方法がバッチ法である、項17~30のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。[項32]
前記方法が連続法である、項17~30のいずれかに記載のLCMFポロクサマー。
[項33]
項1~32のいずれかに記載のLCMFポロクサマーを含む医薬組成物。
[項34]
薬剤的に許容される処方を含む、項33に記載の医薬組成物。
[項35]
項33または項34に記載の医薬組成物を投与することを含む、対象における疾患または障害または状態を治療する方法であって、前記疾患または障害または状態が、心不全、心筋梗塞、肢虚血、ショック、脳卒中、虚血性脳卒中、鎌状赤血球病、神経変性疾患、黄斑変性、糖尿病性網膜症および鬱血性心不全から選択される、前記方法。
[項36]
急性心筋梗塞、急性肢虚血、敗血症性ショック、出血性ショック、急性脳卒中、虚血性脳卒中、心不全、鎌状赤血球病、神経変性疾患、黄斑変性、糖尿病性網膜症および鬱血性心不全の治療で使用するための項33または項34に記載の医薬組成物。
[項37]
膜の再封鎖および修復によって治療される障害を治療すること;
組織虚血および再かん流傷害を治療すること;
炎症反応を減らすこと;
血液粘度を低下させること;
血栓溶解を促進すること;
止血を促進すること;
薬物、核酸またはタンパク質の送達用のビヒクルとして;
疎水性薬物の懸濁液を安定化させるための乳化剤として;
皮膚創傷を清浄化すること;
化粧品処方中の界面活性剤として;
保存損傷易感染性血液を処理するため
パーソナルケア製品および石けんの粘度を調節するため;および
便秘薬として
から選択される、疾患または状態を治療するための使用のための、項33または項34に記載の医薬組成物。
[項38]
長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマーを調製する方法であって:
a)ポロクサマー188溶液を抽出容器に導入し、前記ポロクサマーを第1アルカノールに溶解させて溶液を形成すること;
b)前記ポロクサマー溶液を、第2アルカノールおよび超臨界二酸化炭素を含む抽出溶媒と、超臨界二酸化炭素を維持するための温度および圧力下で第1の一定期間の間混合すること:
前記温度は二酸化炭素の臨界温度よりも高いが40℃以下であり;
前記圧力は220bar~280barであり;
前記アルカノールを前記全抽出溶媒の7%~8重量%であるアルカノール濃度で提供する;
c)前記抽出溶媒中のステップb)における前記第2アルカノールの濃度を前記抽出法の時間とともに勾配段階で複数回増加させること:
複数回の各々をさらなる一定期間で実施し;
連続したステップの各々で、前記アルカノール濃度を前記第2アルカノールの前の濃度と比べて1~2%増加させる;および
d)前記抽出溶媒を前記抽出容器から除去し、それによって前記抽出された物質を前記ラフィネートポロクサマー製剤から除去し、それによって前記LCMFポロクサマーを製造する、前記方法。
[項39]
ステップa)において、ポロクサマーと第1アルカノールの前記重量比が約2:1~3:1または2:1~3:1であり、両端を含む、項38に記載の方法。
[項40]
ステップc)における前記複数回を2、3、4または5勾配段階で実施する、項38または項39に記載の方法。
[項41]
ステップc)を:
i)前記第2アルカノールの前記濃度を約7%から8%から約8.1%から9.5%まで第2の一定期間の間増加させること;および
ii)前記第2アルカノールの前記濃度を約8.2%から9.5%から約9.6%から11.5%まで第3の一定期間の間増加させること
を含む2ステップで行う、項38または項39に記載の方法。
[項42]
ステップb)における前記アルカノール濃度が約7.4重量%または7.4重量%であり;
ステップi)における前記アルカノール濃度が約9.1重量%または9.1重量%であり;そして
ステップii)における前記アルカノール濃度が約10.7重量%または10.7重量%である、項41に記載の方法。
[項43]
前記第1の一定期間、第2の一定期間および第3の一定期間の各々を2時間~12時間実施する、項38~42のいずれかに記載の方法。
[項44]
前記一定期間が同一または異なる、項43に記載の方法。
[項45]
前記第1の一定期間を2時間~6時間実施し;
前記第2の一定期間を2時間~6時間実施し;
前記第3の一定期間を4時間~10時間実施する、項43または項44に記載の方法。[項46]
前記第1および第2アルカノールが各々独立して、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびそれらの組み合わせから選択される、項38~45のいずれかに記載の方法。
[項47]
前記第1および第2アルカノールが同じかまたは異なる、項38~46のいずれかに記載の方法。
[項48]
前記第1アルカノールがメタノールである、項46に記載の方法。
[項49]
前記第2アルカノールがメタノールである、項46に記載の方法。
[項50]
前記第1アルカノールがメタノールであり、前記第2アルカノールがメタノールである、項46~49のいずれかに記載の方法。
[項51]
前記抽出された物質を除去するステップd)をステップb)およびc)を通して行う、項46~50のいずれかに記載の方法。
[項52]
精製LCMFポロクサマーを調製する方法であって:
a)ポロクサマー188溶液を抽出容器に導入し、前記ポロクサマーを第1アルカノール中に溶解させて溶液を形成すること;
b)前記ポロクサマー溶液と、第2アルカノールおよび超臨界液体を含む抽出溶媒とを前記超臨界液体を維持する温度および圧力下で混合し、前記抽出溶媒中の前記第2アルカノールの前記濃度を抽出方法の時間とともに増加させること;および
c)前記抽出溶媒を前記抽出容器から除去し、それによって前記抽出された物質を前記ポロクサマー製剤から除去し、それによってLCMFポロクサマーを製造すること
を含む、前記方法。
[項53]
前記第1および第2アルカノールが各々独立して、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびそれらの組み合わせから選択される、項52に記載の方法。
[項54]
前記第1アルカノールがメタノールである、項52または項53に記載の方法。
[項55]
前記第2アルカノールがメタノールである、項52または項53に記載の方法。
[項56]
高温および高圧下の前記超臨界液体が、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、アンモニアおよびフレオンから選択される、項52~55のいずれかに記載の方法。
[項57]
高温および高圧下の前記超臨界液体が二酸化炭素である、項52~56のいずれかに記載の方法。
[項58]
前記抽出溶媒がメタノールおよび二酸化炭素を含む、項52~57のいずれかに記載の方法。
[項59]
前記第2アルカノールを3%~20%または3%~15%の前記全抽出溶媒のパーセンテージ(w/w)として提供する、項52~58のいずれかに記載の方法。
[項60]
前記抽出溶媒中のステップb)の前記第2アルカノールの濃度を前記抽出法の時間とともに勾配段階で複数回増加させることを含み:
複数回の各々をさらなる一定期間で行い;
連続したステップの各々で、前記アルカノール濃度を前記第2アルカノールの前の濃度と比べて1~2%増加させ;
前記抽出溶媒を前記抽出容器から除去し、それによって前記抽出された物質を前記ラフィネートポロクサマー製剤から除去することを含む、項52~59のいずれかに記載の方法。
[項61]
前記圧力が125bar~500barまたは約125bar~500barである、項52~60のいずれかに記載の方法。
[項62]
前記圧力が約200bar~400barもしくは200bar~400barまたは約280bar~340barもしくは280bar~340barである、項52~61のいずれかに記載の方法。
[項63]
LCMFポロクサマーを精製するための抽出法であって:
a)ポロクサマー溶液を抽出容器に導入し、前記ポロクサマーを溶媒に溶解させて溶液を形成し、前記溶媒はアルコール、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、アミン、およびそれらの混合物から選択される;
b)前記ポロクサマー溶液と、溶媒および高圧二酸化炭素を含む抽出溶媒と混合し、前記抽出溶媒中の前記溶媒の濃度を抽出法の時間とともに増加させること;および
c)前記抽出溶媒を前記抽出容器から除去し、それによって前記抽出された物質を前記ポロクサマーから除去して前記LCMFポロクサマーを製造すること
を含む、前記方法。
[項64]
ステップa)中の前記溶媒がメタノールである、項63に記載の方法。
[項65]
前記抽出溶媒がメタノールおよび二酸化炭素を含む、項63および項64に記載の方法。
[項66]
前記抽出された物質が4,500ダルトン未満の低分子量不純物を含む、項38~65のいずれかに記載の方法。
[項67]
前記精製ポロクサマーが、次式
HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有するLCMFポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーであり、
aまたはa’は、前記親水性物質(C2H4O)のパーセンテージが前記コポリマーの全分子量の約60%~90重量%となるような整数であり;
aおよびa’は同一または異なり;
bは、前記疎水性物質(C3H6O)の分子量がおよそ1,300~2,300ダルトンとなるような整数であり;
前記コポリマーの分布中の全成分の1.5%以下が13,000ダルトンを上回る平均分子量を有する高分子量成分であり;そして
前記コポリマーの多分散性値が1.07未満である、項38~66のいずれかに記載の方法。
[項68]
前記ポロクサマーがポロクサマー188(P188)である、項38~67のいずれか1項に記載の方法。
[項69]
前記LCMFポロクサマーが、式:
HO(CH2CH2O)a’─[CH(CH3)CH2O]b─(CH2CH2O)aHを有し、式中:
aおよびa’の各々は、前記親水性物質(C2H4O)のパーセンテージが前記コポリマーの全分子量のおよそ60%~90重量%となるような整数であり;
aおよびa’は同一または異なり;
bは、前記疎水性物質(C3H6O)の分子量がおよそ1,300~2,300ダルトンとなるような整数であり;
前記コポリマーの分布中の全成分の1.5%以下が4,500ダルトン未満の平均分子量を有する低分子量成分であり;
前記コポリマーの分布中の全成分の1.5%以下が13,000ダルトンを上回る平均分子量を有する高分子量成分であり;
前記コポリマーの多分散性値が、およそ1.07未満または1.07未満である、項38~68のいずれかに記載の方法。
[項70]
前記方法がバッチ法である、項38~69のいずれかに記載の方法。
[項71]
前記方法が連続法である、項38~70のいずれかに記載の方法。
[項72]
項38~71のいずれかに記載の方法によって製造される長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー。
[項73]
長期循環物質のない(LCMF)ポロクサマー188を含む組成物であって:
前記組成物が静脈内投与用に処方され;そして
前記組成物が5~50gの前記LCMFポロクサマーを含む、前記組成物。
[項74]
項1~32および72のいずれかに記載のLCMFポロクサマーを含む組成物であって:
静脈内投与用に処方され;
5~50gの前記LCMFポロクサマーを含む、前記組成物。
[項75]
血液または血液製剤と、項1~32および72のいずれかに記載のLCMFポロクサマーとを含む、組成物。
[項76]
前記血液または血液製剤が濃厚赤血球または血小板である、項75に記載の組成物。
[項77]
疾患または障害または状態を治療するための輸血のためのものであって、治療が輸血を含む、項75または項76に記載の組成物。
[項78]
前記疾患または障害または状態が、鎌状赤血球病、急性胸部症候群、末梢動脈疾患、心不全、脳卒中、末梢血管疾患、黄斑変性、呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全、虚血、ショック、アシドーシス、低体温症、貧血性分解、外科手術、外傷、失血および血液疾患から選択される、項77に記載の組成物。
[項79]
前記疾患または障害または状態が、出血性ショック、敗血症性ショック、急性ARDS、貧血性分解および急性失血から選択される、項78に記載の組成物。
[項80]
CO2で加圧する超臨界流体抽出法を含む方法によって製造される、項1~32にいずれかに記載のLCMFポロクサマー。