(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033417
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】非結核性抗酸菌肺感染症を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7008 20060101AFI20230303BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230303BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230303BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230303BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230303BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230303BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20230303BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230303BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230303BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20230303BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
A61K31/7008
A61P11/00
A61P31/04
A61K9/12
A61K9/127
A61K9/72
A61K47/28
A61K47/24
A61K45/00
A61K31/7048
A61K31/47
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023003885
(22)【出願日】2023-01-13
(62)【分割の表示】P 2021089011の分割
【原出願日】2015-05-15
(31)【優先権主張番号】61/993,439
(32)【優先日】2014-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/042,126
(32)【優先日】2014-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/048,068
(32)【優先日】2014-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/056,296
(32)【優先日】2014-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513204012
【氏名又は名称】インスメッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】イーグル,ジーナ
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,レヌ
(57)【要約】
【課題】それを必要とする患者における肺感染症、例えば、非結核性抗酸菌肺感染症を少なくとも1つの治療周期の間、治療するための方法が、本明細書で提供される。
【解決手段】該方法は、電気的に中性の脂質およびアミノグリコシドを含む脂質成分を含む、リポソーム複合体化アミノグリコシドを含む、医薬組成物を、患者の肺に投与することを含む。投与は、医薬組成物をエアロゾル化して、遊離アミノグリコシドおよびリポソーム複合体化アミノグリコシドの混合物を含むエアロゾル化された医薬組成物を供すること、およびネブライザーを介して患者の肺にエアロゾル化された医薬組成物を投与することを含む。本明細書で提供される方法は、投与期間の間またはその後に、治療された患者に関する抗酸菌培養の半定量的尺度におけるベースラインからの変化および/またはNTM培養の陰性転化をもたらす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療または予防を必要とする患者における非結核性抗酸菌(NTM)肺感染症を治療するまたはそれに対する予防を提供するための方法であって、
複数のリポソーム中に封入されたアミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、投与期間の間、患者の肺に投与することを含み、前記複数のリポソームの脂質成分は1つまたは複数の電気的に中性の脂質から成り、
前記患者の肺に投与することは、医薬組成物をエアロゾル化して、遊離アミノグリコシドおよびリポソーム複合体化アミノグリコシドの混合物を含むエアロゾル化された医薬組成物を供すること、およびネブライザーを介して患者の肺にエアロゾル化された医薬組成物を投与することを含み、
前記投与期間の間または投与期間の後、患者は、抗酸菌培養の完全な半定量的尺度におけるベースラインからの変化および/または投与期間の間もしくはその後におけるNTM培養の陰性転化を経験する、方法。
【請求項2】
治療または予防を必要とする患者における非結核性抗酸菌(NTM)肺感染症を治療するまたはそれに対する予防を提供するための方法であって、
複数のリポソーム中に封入されたアミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、投与期間の間、患者の肺に投与することを含み、前記複数のリポソームの脂質成分は、1つまたは複数の電気的に中性の脂質から成り、
前記患者の肺に投与することは、医薬組成物をエアロゾル化して、遊離アミノグリコシドおよびリポソーム複合体化アミノグリコシドの混合物を含むエアロゾル化された医薬組成物を供すること、およびネブライザーを介して患者の肺にエアロゾル化された医薬組成物を投与することを含み、
前記投与期間の間または投与期間の後、患者は、治療方法を受ける前に患者が歩いたメートル数に比べて増加した、6分間歩行試験(6MWT)において歩いたメートル数を示す、方法。
【請求項3】
治療または予防を必要とする患者における非結核性抗酸菌(NTM)肺感染症を治療するまたはそれに対する予防を提供するための方法であって、
複数のリポソーム中に封入されたアミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、投与期間の間、患者の肺に投与することを含み、前記複数のリポソームの脂質成分は、1つまたは複数の電気的に中性の脂質から成り、
前記患者の肺に投与することは、医薬組成物をエアロゾル化して、遊離アミノグリコシドおよびリポソーム複合体化アミノグリコシドの混合物を含むエアロゾル化された医薬組成物を供すること、およびネブライザーを介して患者の肺にエアロゾル化された医薬組成物を投与することを含み、
前記投与期間の間または投与期間の後、患者は、NTM肺感染症のための非リポソームアミノグリコシド治療に供された患者に比べてより多い、6MWTにおいて歩いたメートル数を示す、方法。
【請求項4】
治療または予防を必要とする患者における非結核性抗酸菌(NTM)肺感染症を治療するまたはそれに対する予防を提供するための方法であって、
複数のリポソーム中に封入されたアミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、投与期間の間、患者の肺に投与することを含み、前記複数のリポソームの脂質成分は、1つまたは複数の電気的に中性の脂質から成り、
前記患者の肺に投与することは、医薬組成物をエアロゾル化して、遊離アミノグリコシドおよびリポソーム複合体化アミノグリコシドの混合物を含むエアロゾル化された医薬組成物を供すること、およびネブライザーを介して患者の肺にエアロゾル化された医薬組成物を投与することを含み、
患者は、投与期間終了後少なくとも15日間、治療前の患者のFEV1に比べてFEV1の改善を経験する、方法。
【請求項5】
前記アミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩が、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ボホルマイシン、ブルラマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、ダクチマイシン、エチミシン、フラミセチン、ゲンタマイシン、H107、ハイグロマイシン、ハイグロマイシンB、イノサマイシン、K-4619、イセパマイシン、KA-5685、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、プラゾマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、ロドストレプトマイシン、ソルビスチン、スペクチノマイシン、スポラリシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、ベルチルマイシン、薬学的に許容されるそれらの塩、またはそれらの組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩が、アミカシンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩が、アミカシン硫酸塩である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のリポソームが、一枚膜ベシクル、多重膜ベシクルまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記電気的に中性の脂質が、電気的に中性のリン脂質または電気的に中性のリン脂質、およびステロールを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電気的に中性の脂質が、ホスファチジルコリンおよびステロールを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電気的に中性の脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびステロールを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記電気的に中性の脂質が、DPPCおよびコレステロールを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アミノグリコシドがアミカシンであり、前記電気的に中性の脂質がDPPCおよびコレステロールを含み、前記リポソームが一枚膜ベシクル、多重膜ベシクルまたはそれらの混合物を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
患者に投与される医薬組成物の体積が、約8mL~約10mLである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記医薬組成物が、アミノグリコシドもしくはその薬学的に許容される塩約500mg~約650mg、またはアミノグリコシドもしくはその薬学的に許容される塩約550mg~約625mg、またはアミノグリコシドもしくはその薬学的に許容される塩約550mg~約600mgを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記医薬組成物が水性分散液である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬組成物が、アミカシンまたはその薬学的に許容される塩約70~約75mg/mL;DPPC約32~約35mg/mL;およびコレステロール約16~約17mg/mLを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬組成物が、約8mLの体積を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記エアロゾル化された医薬組成物が、投与期間の間、単一の投薬セッションにおいて1日1回投与される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
単一の投薬セッションの間、前記エアロゾル化された医薬組成物が、約15分未満、約14分未満、約13分未満、約12分未満または約11分未満で投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
単一の投薬セッションの間、前記エアロゾル化された医薬組成物が、約10分~約14分、約10分~約13分、約10分~約12分、約10分~約11分、約11分~約15分、約12分~約15分、約13分~約15分または約14分~約15分で投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記エアロゾル化された医薬組成物の約25%~約35%が、患者の肺の気管支および肺胞領域に沈着する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記治療または予防を必要とする患者が、嚢胞性線維症を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記治療または予防を必要とする患者が、気管支拡張症を有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記治療または予防を必要とする患者が、喫煙者であるかまたは喫煙の前歴を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記治療または予防を必要とする患者が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記治療または予防を必要とする患者が、喘息を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記治療または予防を必要とする患者が、先にNTM治療法に対して非反応性であった、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記治療または予防を必要とする患者が、線毛機能不全症患者である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記治療または予防を必要とする患者が、NTM肺感染症に加えて、糖尿病、僧帽弁障害、急性気管支炎、肺高血圧症、肺炎、喘息、気管癌、気管支癌、肺癌、嚢胞性線維症、肺線維症、咽頭異常、気管異常、気管支異常、アスペルギルス症、HIVまたは気管支拡張症から選ばれる併発状態を有する、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
僧帽弁障害が、僧帽弁逸脱症である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
NTM肺感染症が、M.avium感染症である、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
M.avium感染症が、Mycobacterium avium subsp.hominissuis感染症である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
NTM肺感染症が、Mycobacterim abscessus感染症である、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
NTM肺感染症が、Mycobacterium avium complex (M. aviumおよびM. intracellulare)である、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
NTM肺感染症が、M.avium、M.avium subsp.hominissuis(MAH)、M.abscessus、M.chelonae、M.bolletii、M.kansasii、M.ulcerans、M.avium、M.avium complex(MAC)(M. aviumおよびM. intracellulare)、M.conspicuum、M.kansasii、M.peregrinum、M.immunogenum、M.xenopi、M.marinum、M.malmoense、M.marinum、M.mucogenicum、M.nonchromogenicum、M.scrofulaceum、M.simiae、M.smegmatis、M.szulgai、M.terrae、M.terrae complex、M.haemophilum、M.genavense、M.asiaticum、M.shimoidei、M.gordonae、M.nonchromogenicum、M.triplex、M.lentiflavum、M.celatum、M.fortuitum、M.fortuitum complex(M. fortuitumおよびM. chelonae)またはそれらの組み合わせである、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
NTM肺感染症が、過敏性肺疾患に類似した症状を有するNTM肺感染症である、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
NTM肺感染症が、マクロライド耐性NTM肺感染症である、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記治療または予防を必要とする患者に、1つまたは複数の追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記1つまたは複数の追加の治療剤が、マクロライド系抗生物質である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記マクロライド系抗生物質が、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタマイシン、ミデカマイシン、オレアンドマイシン、ソリスロマイシン、スピラマイシン、トロレアンドマイシン、タイロシン、ロキシスロマイシン、またはそれらの組み合わせである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記マクロライド系抗生物質が、アジスロマイシンである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記マクロライド系抗生物質が、クラリスロマイシンである、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記マクロライド系抗生物質が、エリスロマイシンである、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記マクロライド系抗生物質が経口投与される、請求項40~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記1つまたは複数の追加の治療剤が、リファマイシンである、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
リファマイシンが、リファンピンである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
リファマイシンが、リファブチン、リファペンチン、リファキシミンまたはそれらの組み合わせである、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記1つまたは複数の追加の治療剤が、キノロンである、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
キノロンが、フルオロキノロンである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記1つまたは複数の追加の治療剤が、第2のアミノグリコシドである、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
前記第2のアミノグリコシドが、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ボホルマイシン、ブルラマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、ダクチマイシン、エチミシン、フラミセチン、ゲンタマイシン、H107、ハイグロマイシン、ハイグロマイシンB、イノサマイシン、K-4619、イセパマイシン、KA-5685、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、プラゾマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、ロドストレプトマイシン、ソルビスチン、スペクチノマイシン、スポラリシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、ベルチルマイシン、薬学的に許容されるそれらの塩、またはそれらの組み合わせである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第2のアミノグリコシドが、静脈内投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記第2のアミノグリコシドが、吸入を介して投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記第2のアミノグリコシドが、ストレプトマイシンである、請求項51~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記1つまたは複数の追加の治療剤が、エタンブトールである、請求項39に記載の方法。
【請求項57】
前記1つまたは複数の追加の治療剤が、イソニアジドである、請求項39に記載の方法。
【請求項58】
前記1つまたは複数の追加の治療剤が、セフォキシチンである、請求項39に記載の方法。
【請求項59】
前記1つまたは複数の追加の治療剤が、イミペネムである、請求項39に記載の方法。
【請求項60】
前記1つまたは複数の追加の治療剤が、チゲサイクリンである、請求項39に記載の方法。
【請求項61】
キノロンが、シプロフロキサシンである、請求項49に記載の方法。
【請求項62】
キノロンが、レボフロキサシンである、請求項49に記載の方法。
【請求項63】
キノロンが、ガチフロキサシンである、請求項49に記載の方法。
【請求項64】
キノロンが、エノキサシンである、請求項49に記載の方法。
【請求項65】
キノロンが、レボフロキサシンである、請求項49に記載の方法。
【請求項66】
キノロンが、オフロキサシンである、請求項49に記載の方法。
【請求項67】
キノロンが、モキシフロキサシンである、請求項49に記載の方法。
【請求項68】
キノロンが、トロバフロキサシンである、請求項49に記載の方法。
【請求項69】
投与期間の間または投与期間の後、患者がNTM培養の陰性転化を示す、請求項1~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
NTM培養の陰性転化までの時間が、約10日間、約20日間、約30日間、約40日間、約50日間、約60日間、約70日間、約80日間、約90日間、約100日間または約110日間である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
NTM培養の陰性転化までの時間が、約20日間~約200日間、約20日間~約190日間、約20日間~約180日間、約20日間~約160日間、約20日間~約150日間、約20日間~約140日間、約20日間~約130日間、約20日間~約120日間、約20日間~約110日間、約30日間~約110日間、または約30日間~約100日間である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
患者が、投与期間終了後少なくとも15日間、投与期間前の患者のFEV1に比べてFEV1の改善を経験する、請求項1~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
患者が、投与期間終了後少なくとも15日間、投与期間前の患者の血中酸素飽和度に比べて血中酸素飽和度の改善を経験する、請求項1~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
患者のFEV1が、投与期間前の患者のFEV1よりも少なくとも5%増加する、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
患者のFEV1が、投与期間前の患者のFEV1よりも少なくとも10%増加する、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
患者のFEV1が、投与期間前の患者のFEV1よりも少なくとも15%増加する、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
患者のFEV1が、投与期間前のFEV1よりも5%~50%増加する、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
患者が、治療方法を受ける前に患者が歩いたメートル数に比べて増加した、6分間歩行試験(6MWT)において歩いたメートル数を示す、請求項1~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
増加した6MWTにおいて歩いたメートル数が、一実施形態において、少なくとも約5メートルである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
増加した6MWTにおいて歩いたメートル数が、一実施形態において、少なくとも約10メートルである、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
増加した6MWTにおいて歩いたメートル数が、一実施形態において、少なくとも約20メートルである、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
増加した6MWTにおいて歩いたメートル数が、一実施形態において、少なくとも約30メートルである、請求項78に記載の方法。
【請求項83】
増加した6MWTにおいて歩いたメートル数が、一実施形態において、少なくとも約40メートルである、請求項78に記載の方法。
【請求項84】
増加した6MWTにおいて歩いたメートル数が、一実施形態において、少なくとも約50メートルである、請求項78に記載の方法。
【請求項85】
増加した6MWTにおいて歩いたメートル数が、一実施形態において、約5メートル~約50メートルである、請求項78に記載の方法。
【請求項86】
増加した6MWTにおいて歩いたメートル数が、一実施形態において、約15メートル~約50メートルである、請求項78に記載の方法。
【請求項87】
患者が、NTM肺感染症のための非リポソームアミノグリコシド治療に供された患者に比べてより多い、6MWTにおいて歩いたメートル数を示す、請求項1~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
より多いメートル数が、少なくとも約5メートル、少なくとも約10メートル、少なくとも約15メートル、少なくとも約20メートル、少なくとも約25メートル、少なくとも約30メートル、少なくとも約35メートル、少なくとも約40メートル、少なくとも約45メートル、または少なくとも約50メートルである、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
より多いメートル数が、約5メートル~約80メートル、約5メートル~約70メートル、約5メートル~約60メートルまたは約5メートル~約50メートルである、請求項87に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 関連出願への相互参照
本願は、それぞれの開示の全体が、あらゆる目的で、参照により組み込まれる、2014年5月15日に出願された、米国仮出願第61/993,439号;2014年8月26日に出願された同第62/042,126号;2014年9月9日に出願された同第62/048,068号;および2014年9月26日に出願された同第62/056、296号からの優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 吸入による投与に好適なある一定の技術は、リポソームを使用し、脂質複合体が、肺における薬物の延長された治療効果を供給する。これらの技術は、持続的な活性、および疾患部位への薬物の取り込みを標的とし促進する能力を有する、薬物も提供する。
【0003】
[0003] リポソームの吸入送達は、噴霧化の間のせん断誘起応力に対するそれらの感受性によって複雑化され、これは、物理的特徴(例えば、捕捉、サイズ)を変化させうる。しかしながら、特徴の変化が再現可能であり、許容性基準を満たす限り、それらは、医薬開発にとって禁止される必要はない。
【0004】
[0004] 感受性宿主における非結核性抗酸菌(NTM)による肺感染症は、感染者の間で、重度化する可能性のある罹患率、さらに死亡率をもたらしうる。感染率が上がっているため、非結核性抗酸菌肺疾患(PNTM)は、米国において新興の公衆衛生上の懸念を生じさせる。NTMは、環境のどこにでもいる。米国におけるNTM肺(PNTM)感染症の80%超は、Mycobacterium avium complex(MAC)によるものである。さらに、M.Kansasii、M.abscessusおよびM.fortuitumが、通常、単離される。
【0005】
[0005] 米国におけるNTM肺感染症の有病率は、最近15年で2倍超となった。ATS/IDSA PNTMは、NTM肺感染症の2年間の有病率が、8.6/100,000人であると報告した。NTM肺感染症の有病率は、年齢とともに増大し、少なくとも50歳の人では20.4/100,000であり、特に女性に蔓延している(中央値年齢:66歳;女性:59%)。
【0006】
[0006] 感受性個体において、NTM肺感染症は、重篤であるかまたは生命を脅かしうる。利用可能な治療法は、耐容性が低い可能性があり、顕著な有害事象を有する可能性がある。本発明は、それを必要とする患者におけるNTM肺感染症を治療するための方法を提供することによって、このニーズおよび他のニーズに対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007] 一態様において、本発明は、それを必要とする患者へのリポソーム複合体化アミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物の有効量の吸入投与を介する、非結核性抗酸菌(NTM)感染症(1つまたは複数の非結核性抗酸菌により引き起こされたかまたはそれによる肺感染症)を治療するまたはそれに対する予防を提供するための方法を提供する。一実施形態において、治療を必要とする患者は、嚢胞性線維症患者であるか、気管支拡張症患者であるか、喘息を患っているかまたは慢性閉塞性肺疾患(COPD)を患っている。
【0008】
[0008] 一実施形態において、NTM感染症は、M.avium、M.avium subsp. hominissuis(MAH)、M.abscessus、M.chelonae、M.bolletii、M.kansasii、M.ulcerans、M.avium、M.avium complex(MAC)(M. aviumおよびM. intracellulare)、M.conspicuum、M.kansasii、M.peregrinum、M.immunogenum、M.xenopi、M.marinum、M.malmoense、M.marinum、M.mucogenicum、M.nonchromogenicum、M.scrofulaceum、M.simiae、M.smegmatis、M.szulgai、M.terrae、M.terrae complex、M.haemophilum、M.genavense、M.gordonae、M.ulcerans、M.fortuitum、M.fortuitum complex(M. fortuitumおよびM. chelonae)感染症またはそれらの組み合わせから選ばれるNTM肺感染症である。さらなる実施形態において、NTM感染症は、M.avium complex(MAC)(M. aviumおよびM. intracellulare)感染症である。一実施形態において、NTM感染症は、不応性NTM肺感染症である。
【0009】
[0009] 一実施形態において、リポソーム複合体化アミノグリコシドを含む組成物は、分散液(例えば、リポソーム溶液または懸濁液)である。組成物のリポソーム部分は、電気的に中性の脂質を含む脂質成分を含む。さらなる実施形態において、電気的に中性の脂質は、ホスファチジルコリンおよびステロール(例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびコレステロール)を含む。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシンまたはその薬学的に許容される塩である。なおさらなる実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシン硫酸塩である。
【0010】
[0010] 一実施形態において、NTM感染症を治療するまたはそれに対する予防を提供するための方法は、エアロゾル化された医薬組成物を、それを必要とする患者の肺に投与することを含み、ここで、エアロゾル化された医薬組成物は、遊離アミノグリコシドおよびリポソーム複合体化アミノグリコシドの混合物を含み、リポソームの脂質成分は、電気的に中性の脂質から成る。さらなる実施形態において、電気的に中性の脂質は、ホスファチジルコリンおよびステロール(例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびコレステロール)を含む。さらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンまたはその薬学的に許容される塩である。なおさらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシン硫酸塩である。
【0011】
[0011] 本明細書で提供される方法は、投与期間の間またはその後に、治療された患者に関する抗酸菌培養の半定量的尺度におけるベースラインからの変化および/またはNTM培養の陰性転化をもたらす。例えば、一実施形態において、本明細書で提供される方法は、投与期間後にNTM培養が陰性転化する患者を結果として生じさせる。
【0012】
[0012] 一実施形態において、アミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩は、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン(rhodestreptomycin)、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン薬学的に許容されるそれらの塩またはそれらの組み合わせである。なおさらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンである。別の実施形態において、アミノグリコシドは、以下の表1に示すアミノグリコシド、その薬学的に許容される塩またはその組み合わせから選ばれる。
【0013】
【0014】
[0013] 一実施形態において、本明細書で提供される医薬組成物は、リポソームの分散液(すなわち、リポソーム溶液またはリポソーム懸濁液のいずれかでありうる、リポソーム分散液または水性リポソーム分散液)である。一実施形態において、リポソームの脂質成分は本質的に、1つまたは複数の電気的に中性の脂質から成る。さらなる実施形態において、電気的に中性の脂質は、リン脂質およびステロールを含む。さらなる実施形態において、リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)であり、ステロールは、コレステロールである。
【0015】
[0014] 一実施形態において、アミノグリコシド医薬組成物(アミノグリコシドリポソーム溶液または懸濁液)中の脂質対アミノグリコシドの重量比は、約2:1、約2:1以下、約1:1、約1:1以下、約0.75:1以下、または約0.7:1である。別の実施形態において、組成物中の脂質対アミノグリコシドの重量比は、約0.10:1~約1.25:1、約0.10:1~約1.0:1、約0.25:1~約1.25:1、約0.5:1~約1:1である。
【0016】
[0015] 一実施形態において、本明細書で提供される方法は、噴霧化またはエアロゾル化を介するリポソームアミノグリコシド組成物の投与を含む。したがって、この実施形態における方法は、エアロゾル化されたアミノグリコシド組成物の生成を伴う。一実施形態において、噴霧化に際して、エアロゾル化された組成物は、約1μm~約3.8μm、約1.0μm~4.8μm、約3.8μm~約4.8μmまたは約4.0μm~約4.5μmのエアロゾル液滴サイズを有する。さらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンである。なおさらなる実施形態において、アミカシンはアミカシン硫酸塩である。
【0017】
[0016] 一実施形態において、組成物中に存在するアミノグリコシドの約70%~約100%は、治療を必要とする患者への投与の前に、リポソーム複合体化、例えば、複数のリポソーム中に封入される。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、表1に提供されるアミノグリコシドから選ばれる。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは(例えば、アミカシン硫酸塩としての)アミカシンである。なおさらなる実施形態において、治療を必要とする患者への投与の前に、アミカシンの約80%~約100%は、リポソーム複合体化されるか、またはアミカシンの約80%~約100%は、複数のリポソーム中に封入される。別の実施形態において、治療を必要とする患者への投与の前に(すなわち、噴霧化の前に)、組成物中に存在するアミノグリコシドの約80%~約100%、約80%~約99%、約90%~約100%、90%~約99%または約95%~約99%が、リポソーム複合体化される。
【0018】
[0017] 一実施形態において、噴霧化後のリポソームと複合体化した(本明細書中では、「リポソーム会合した」とも称される)アミノグリコシドのパーセントは、約50%~約80%、約50%~約75%、約50%~約70%、約55%~約75%または約60%~約70%である。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、表1に提供されるアミノグリコシドから選ばれる。さらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンである。なおさらなる実施形態において、アミカシンは、アミカシン硫酸塩である。一実施形態において、エアロゾル化された(すなわち、噴霧化後の)組成物は、約65%~約75%のリポソーム複合体化アミノグリコシドおよび約25%~約35%の遊離アミノグリコシドを含む。さらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンである。なおさらなる実施形態において、アミカシンは、アミカシン硫酸塩である。
【0019】
[0018] 一実施形態において、本明細書で提供される方法によって治療される肺感染症は、Mycobacterium abscessus肺感染症またはMycobacterium avium complex肺感染症である。先の実施形態のうちの1つまたは複数において、患者は、嚢胞性線維症患者、気管支拡張症患者、喘息患者またはCOPD患者である。
【0020】
[0019] 一実施形態において、嚢胞性線維症を有する患者は、本明細書で提供される組成物またはシステムのうちの1つにより肺感染症の治療を受ける。さらなる実施形態において、肺感染症は、Mycobacterium abscessusまたはMycobacterium avium complexにより引き起こされる。
【0021】
[0020] 一実施形態において、リポソームアミノグリコシド組成物中のアミノグリコシドの濃度は、約50mg/mL以上である。さらなる実施形態において、リポソーム複合体化アミノグリコシド中のアミノグリコシドの濃度は、約60mg/mL以上である。さらなる実施形態において、リポソーム複合体化アミノグリコシド中のアミノグリコシドの濃度は、約70mg/mL以上、例えば、約70mg/mL~約75mg/mLである。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、表1に提供されるアミノグリコシドから選ばれる。なおさらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシン(例えば、アミカシン硫酸塩)である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】[0021]実施例1に記載の、不応性非結核性抗酸菌(NTM)肺感染症を有する患者における、リポソーム複合体化アミカシンの無作為化二重盲検プラセボ対照試験の試験デザインを示す図である。
【
図2】[0022]実施例1に記載の、不応性非結核性抗酸菌肺感染症を有する患者における、リポソーム複合体化アミカシンの無作為化二重盲検プラセボ対照試験のための患者分布を示す図である。
【
図3】[0023]各NTM治療群における患者数を示すグラフである。
【
図4】[0024]実施例1に示す試験の二重盲検相およびオープンラベル相の両方に関する、修正された治療意図患者(modified intent to treat patient)(mITT)集団についての、試験日の関数としての、抗酸菌培養の完全な半定量的尺度の対数目盛による(LS)ベースラインからの平均変化を示すグラフである。
【
図5】[0025]
図5(上図)は、無作為化二重盲検プラセボ対照試験(修正された治療意図集団)の間の様々な時点における、NTM培養が陰性転化した患者の割合を示す棒グラフである。
図5(下図)は、様々な時点でNTM培養が陰性転化したMAC患者の割合を示す棒グラフである。
【
図6】[0026]無作為化二重盲検プラセボ対照試験の間の様々な時点で少なくとも1つのNTM培養陰性結果を有する患者を示す表である。
【
図7】[0027]
図7(上図)は、84日目および168日目の6分間歩行試験におけるベースラインからの変化を示すグラフ(mITT集団)であり、
図7(下図)は、84日目におけるLAIを受容する患者対プラセボを受容する患者の6MWTにおける歩行距離(メートル)のベースラインからの平均変化のグラフ(最終観察繰越、修正された治療意図集団)である。
【
図8】[0028]
図8(上図)は、84日目および168日目の6分間歩行試験において歩いた平均のメートルを示すグラフである(全患者)。
図8(下図)は、培養が陰性転化した患者(3つ以上の陰性培養)対培養が陰性転化しなかった患者の、6MWTにおける歩行距離(メートル)のベースラインから84日目および168日目までの平均変化を示すグラフである(最終観察繰越、修飾された治療意図集団)。
【
図9】[0029]実施例2に記載の非嚢胞性線維症性(非CF)M.avium complex(MAC)肺感染症を有する患者における、リポソーム封入アミカシン(ARIKAYCEまたはLAI)の無作為化プラセボ対照試験の試験デザインを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0030] 本明細書に記載の発明は、一部分において、それを必要とする患者における肺感染症を治療するための方法、例えば、該患者の肺にアミノグリコシド医薬組成物を、例えば、噴霧化を介して投与することを対象とする。
【0024】
[0031] 本明細書中で使用される用語「約」は、「約」が修飾する対象のプラスまたはマイナス10パーセントを指す。
【0025】
[0032] 用語「治療すること」は:(1)状況、障害もしくは状態に苦しめられるかもしくはそれにかかりやすい素因を持っている可能性があるが、まだ該状況、障害もしくは状態の臨床もしくは亜臨床症状を経験も呈示もしていない対象において発生する、該状況、障害もしくは状態の臨床症状の出現を防止するかもしくは遅延させること;(2)該状況、障害もしくは状態を阻止すること(すなわち、疾患の発生を、または維持療法の場合にはその少なくとも1つの臨床もしくは亜臨床症状の再発を停止させ、低減しまたは遅延させること);および/または(3)該状態を軽減すること(すなわち、状況、障害もしくは状態、またはその臨床もしくは亜臨床症状の少なくとも1つの後退を引き起こすこと)を含む。治療される対象に対する利益は、統計学的に有意であるかまたは対象もしくは医師が少なくとも知覚可能である。
【0026】
[0033] 本明細書中で使用される「予防」は、感染症もしくは疾患の完全な防止、または該感染症もしくは疾患の症状の発生の防止;感染症もしくは疾患もしくはその症状の発病の遅延;または引き続いて発生した感染症もしくは疾患もしくはその症状の重症度の減少を意味しうる。
【0027】
[0034] 用語「抗菌性の」は、本分野で承認されており、細菌微生物の増殖を防止、阻止または破壊する本発明の化合物の能力を指す。細菌の例は上で提供される。
【0028】
[0035] 用語「抗微生物の」は、本分野で承認されており、細菌、真菌、原虫およびウイルスなどの微生物の増殖を防止、阻止、遅延または破壊する本発明のアミノグリコシド化合物の能力を指す。
【0029】
[0036] 「有効量」は、所望の治療反応を結果としてもたらすのに十分な、本発明において使用されるアミノグリコシド(例えば、アミカシン)の量を意味する。本明細書で提供される組成物の有効量は、遊離のおよびリポソーム複合体化アミノグリコシドを両方含む。例えば、一実施形態において、リポソーム複合体化アミノグリコシドは、リポソーム中に封入された、もしくはリポソームと複合体化したアミノグリコシド、またはそれらの組み合わせを含む。
【0030】
[0037] 「リポソーム分散液」は、複数のリポソームを含む溶液または懸濁液を指す。
【0031】
[0038] 本明細書中で使用される「エアロゾル」は、液体粒子の気体状懸濁液である。本明細書で提供されるエアロゾルは、リポソーム分散液の粒子を含む。
【0032】
[0039] 「ネブライザー」または「エアロゾル発生装置」は、液体を、気道へ吸入できるサイズのエアロゾルに変換する装置である。ニューモニック(pneumonic)、超音波式、電子式ネブライザー、例えば、受動的電子メッシュ式ネブライザー、能動的電子メッシュ式ネブライザーおよび振動メッシュ式ネブライザーは、特定のネブライザーが、所要の性質を有するエアロゾルを所要の排出速度で放出する場合、本発明とともに使用するのに適している。
【0033】
[0040] バルク液体を、空気圧で小さな液滴に変換するプロセスは、霧化と呼ばれる。空気圧式ネブライザーの操作は、液体霧化のための推進力として、加圧された気体の供給を必要とする。超音波式ネブライザーは、液体リザーバ中の圧電素子によって導入された電力を使用して、液体を呼吸できる液滴に変換する。様々なタイプのネブライザーが、その開示の全体が、参照により本明細書に組み込まれるRespiratory Care、45巻、6号、609~622頁(2000)に記載されている。用語「ネブライザー」および「エアロゾル発生装置」は、明細書全体を通じて交換可能に使用される。「吸入装置」、「吸入システム」および「アトマイザー」も、用語「ネブライザー」および「エアロゾル発生装置」とともに文献中で交換可能に使用される。
【0034】
[0041] 「質量中央径」または「MMD」は、レーザー回折またはインパクタ測定により決定され、質量基準の平均粒径である。
【0035】
[0042] 「空気力学的中央径」または「MMAD」は、水性エアロゾル液滴の空気力学的分離に関して正規化され、インパクタ測定、例えば、アンダーセンカスケードインパクタ(Andersen Cascade Impactor)(ACI)または次世代インパクタ(Next Generation Impactor)(NGI)により決定される。一実施形態において、気体の流速は、アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)によれば毎分28リットルであり、次世代インパクタ(NGI)によれば毎分15リットルである。「幾何標準偏差」または「GSD」は、空気力学的粒径分布の幅の尺度である。
【0036】
[0043] 非結核性抗酸菌は、感受性個体において重篤な肺疾患を引き起こしうる、土壌および水中に見出される生物であり、現在、そのための有効な治療は限られており、認可された治療法はない。NTM疾患の有病率は、増加していると報告され、米国胸部学会の報告によれば、米国における結核の有病率よりも高いと考えられる。国立生物工学情報センターによれば、NTM感染症の存在が、おそらく水道水の導入により発展途上国において増加していることを疫学調査が示している。特徴的な表現型を有する女性は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子の異常を有する患者とともに、NTM感染症を獲得するリスクが高いと考えられる。一般に、NTM肺疾患を有する、罹患率および死亡率の増加に関するハイリスク群は、空洞病巣を有し、BMIが低く、高齢で、併存疾患指数の高い群である。
【0037】
[0044] NTM肺疾患は、進行性炎症および肺障害をもたらしうる慢性の状態であることが多く、気管支拡張症および空洞性疾患を特徴とする。NTM感染症は、医学的管理のために長期にわたる入院を必要とすることが多い。治療は通常、特に、重症の疾患を有する患者または前治療の試みに失敗した患者において、耐容性が低く、有効性が限定的である可能性のある多剤レジメンを含む。Clarity Pharma Researchにより実施された、会社提供の患者カルテ調査(patient chart study)によれば、米国において、2011年の間にNTM肺疾患を患っている約50,000人の患者が医師を受診した。
【0038】
[0045] 非結核性抗酸菌(NTM)感染症により引き起こされる肺疾患の管理は、長期にわたる多剤レジメンを含み、これは、薬物毒性および準最適のアウトカムに関連していることが多い。NTM培養陰性を達成することは、治療の目的の1つであり、NTM肺感染症を有する患者において臨床的に最も重要な微生物学的エンドポイントを表す。
【0039】
[0046] 一態様において、本発明は、それを必要とする患者における非結核性抗酸菌(NTM)肺感染症を治療するための方法を提供する。一実施形態における該方法は、リポソーム複合体化アミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物の投与期間の間の患者への投与を含む。一実施形態において、リポソーム複合体化アミノグリコシドは、複数のリポソーム中に封入されたアミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩を含む。一実施形態において、複数のリポソームは、中性脂質から成る脂質成分を含む。一実施形態において、中性脂質は、リン脂質およびステロールを含む。さらなる実施形態において、リン脂質はホスファチジルコリンである。なおさらなる実施形態において、ホスファチジルコリンは、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である。なおさらなる実施形態において、ステロールはコレステロールである。一実施形態において、非結核性抗酸菌肺感染症は、不応性の非結核性抗酸菌肺感染症である。一実施形態において、患者は、投与期間の間または投与期間の後、6MWTで歩いたメートル数の治療前に比べた増加および/またはNTM培養の陰性転化を示す。
【0040】
[0047] 治療反応は、使用者(例えば、臨床医)が、治療への有効な反応と認識する任意の反応でありうる。治療反応は、一般に、1つもしくは複数のNTMの増殖もしくは繁殖の低減、阻止、遅延もしくは防止、または1つもしくは複数のNTMの死滅である。治療反応は、肺機能、例えば、1秒量(FEV1)の改善にも反映されうる。患者がNTM肺感染症を治療される一実施態様において、治療反応は、抗酸菌培養の完全な半定量的尺度におけるベースラインからの変化または6分間歩行試験(6MWT)における歩行距離の改善として測定される。さらに、治療反応の評価に基づいて、適切な治療期間、適切な用量および任意の可能性のある併用療法を決定することは当業者の技能の範囲内にある。
【0041】
[0048] 本明細書に記載の方法および組成物により治療可能なNTM肺感染症は、一実施形態において、M.avium、M.avium subsp.hominissuis(MAH)、M.abscessus、M.chelonae、M.bolletii、M.kansasii、M.ulcerans、M.avium、M.avium complex(MAC)(M. aviumおよびM. intracellulare)、M.conspicuum、M.kansasii、M.peregrinum、M.immunogenum、M.xenopi、M.marinum、M.malmoense、M.marinum、M.mucogenicum、M.nonchromogenicum、M.scrofulaceum、M.simiae、M.smegmatis、M.szulgai、M.terrae、M.terrae complex、M.haemophilum、M.genavense、M.asiaticum、M.shimoidei、M.gordonae、M.nonchromogenicum、M.triplex、M.lentiflavum、M.celatum、M.fortuitum、M.fortuitum complex(M. fortuitumおよびM. chelonae)またはそれらの組み合わせである。さらなる実施形態において、非結核性抗酸菌肺感染症は、M.avium complex(MAC)(M. aviumおよびM. intracellulare)、M.abscessusまたはM.aviumである。さらなる実施形態において、M.avium感染症は、M.avium subsp.hominissuisである。一実施形態において、非結核性抗酸菌肺感染症は、M.avium complex(MAC)(M. aviumおよびM. intracellulare)である。別の実施形態において、NTM肺感染症は、不応性の非結核性抗酸菌肺感染症である。
【0042】
[0049] 全体を通して記載のとおり、本明細書に記載の組成物およびシステムは、非結核性抗酸菌(NTM)により引き起こされた感染症を治療するために使用される。一実施形態において、本明細書に記載の組成物およびシステムは、Mycobacterium abscessus、Mycobacterium aviumまたはM.avium complexにより引き起こされた感染症を治療するために使用される。なおさらなる実施形態において、Mycobacterium avium感染症は、Mycobacterium avium subsp.hominissuisである。
【0043】
[0050] 一実施形態において、患者は、リポソームアミノグリコシド組成物の吸入送達を介して、Mycobacterium abscessus、M.kansasii、M.abscessus、M.fortuitum、Mycobacterium aviumまたはM.avium complex(MAC)肺感染症を治療される。さらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシン硫酸塩であり、単一の投薬セッションにおいて1日1回投与される。なおさらなる実施形態において、NTM肺感染症は、MACである。
【0044】
[0051] 一実施形態において、NTM肺感染症は空洞病巣を伴う。一実施形態において、NTM肺感染症は、結節性感染症である。さらなる実施形態において、NTM肺感染症は、微小の空洞病巣を有する結節性感染症である。
【0045】
[0052] 一実施形態において、本明細書に記載の方法を介して投与されるアミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩は、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、または薬学的に許容されるそれらの塩から選ばれる。さらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンである。なおさらなる実施形態において、アミカシンはアミカシン硫酸塩である。別の実施形態において、アミノグリコシドは、以下の表2に示されるアミノグリコシド、その薬学的に許容される塩、またはその組み合わせから選ばれる。例えば、表2に示されるアミノグリコシドのうちの1つまたは複数の硫酸塩などの薬学的に許容される塩は、リポソーム組成物に製剤化され、NTMの治療を必要とする患者に、例えば、ネブライザーによる肺送達を介して投与されうる。
【0046】
【0047】
[0053] 一実施形態において、医薬組成物は、アミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩の組み合わせ、例えば、表2に示される2つ以上のアミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩の組み合わせを含む。一実施形態において、リポソーム複合体化アミノグリコシドを含む組成物は、1つ~約5つのアミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩を含む。別の実施形態において、リポソーム複合体化アミノグリコシドを含む組成物は、表2に示すアミノグリコシドの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは少なくとも6つ(または該アミノグリコシドの薬学的に許容される塩)を含む。別の実施形態において、医薬組成物は、1つから4つまでの間のアミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩を含む。さらなる実施形態において、組み合わせは、例えば、アミカシン硫酸塩として、アミカシンを含む。
【0048】
[0054] 一実施形態において、アミノグリコシドは、アミノグリコシド遊離塩基もしくはその塩、溶媒和物、または他の非共有結合性誘導体である。さらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンである。本発明の薬物組成物中で使用される好適なアミノグリコシドとしては、薬物の薬学的に許容される付加塩および複合体が含まれる。化合物が1つまたは複数のキラル中心を有しうる場合、特記されない限り、本発明は、独自の各ラセミ化合物ならびに独自の各非ラセミ化合物を含む。活性剤が不飽和炭素-炭素二重結合を有する場合、シス(Z)およびトランス(E)異性体は両方とも本発明の範囲内にある。活性剤が、ケト-エノール互変異性体などの互変異性型で存在する場合、各互変異性型は、本発明の内に含まれることを企図される。一実施形態において、アミカシンは、アミカシン塩基またはアミカシン塩、例えば、アミカシン硫酸塩またはアミカシン二硫酸塩として、医薬組成物中に存在する。一実施形態において、上記アミノグリコシドの1つまたは複数の組み合わせが、本明細書に記載の組成物、システムおよび方法において使用される。
【0049】
[0055] 本発明は、一態様において、NTM肺感染症を治療するまたはそれに対する予防を提供するための方法を提供する。治療は、リポソームアミノグリコシド組成物を含む組成物の噴霧化を介する吸入による、該組成物の送達を介して達成される。一実施形態において、組成物は、複数のリポソーム中に封入されたアミノグリコシド、例えば、表1および/もしくは2のアミノグリコシドのうちの1つもしくは複数から選ばれるアミノグリコシド、またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0050】
[0056] 本明細書で提供される医薬組成物は、リポソームに複合体化されたアミノグリコシド、例えば、複数のリポソーム中に封入されたアミノグリコシドを含むリポソーム分散液である。医薬組成物は、「リポソーム複合体化アミノグリコシド」または「リポソーム中に封入されたアミノグリコシド」を含む分散液である。「リポソーム複合体化アミノグリコシド」は、アミノグリコシド(またはアミノグリコシドの組み合わせ)がリポソーム中に封入された実施形態を含み、リポソームとの複合体の一部として、またはアミノグリコシドが水性相中もしくは疎水性二重層相中もしくはリポソーム二重層の界面頭部領域にあることができるリポソームとして、少なくとも約1重量%のアミノグリコシドがリポソームと会合している、任意の形態のアミノグリコシド組成物を含む。
【0051】
[0057] 一実施形態において、リポソームまたは複数のリポソームの脂質成分は、電気的に中性の脂質、正電荷を有する脂質、負電荷を有する脂質またはそれらの組み合わせを含む。別の実施形態において、脂質成分は、電気的に中性の脂質を含む。さらなる実施形態において、脂質成分は、本質的に電気的に中性の脂質から成る。なおさらなる実施形態において、電気的に中性の脂質は、ステロールおよびリン脂質を含む。なおさらなる実施形態において、ステロールはコレステロールであり、リン脂質は中性のホスファチジルコリンである。一実施形態において、ホスファチジルコリンは、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である。
【0052】
[0058] 上で規定されるとおり、リポソーム複合体化アミノグリコシドの実施形態は、アミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩が複数のリポソーム中に封入されている実施形態を含む。さらに、リポソーム複合体化アミノグリコシドは、リポソームとの複合体の一部として、またはアミノグリコシドが水性相中もしくは疎水性二重層相中もしくはリポソーム二重層の界面頭部領域にあることができるリポソームのいずれかとして、少なくとも約1重量%のアミノグリコシドが脂質と会合している、任意の組成物、溶液または懸濁液を表す。一実施形態において、噴霧化の前に、組成物中のアミノグリコシドの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%がそのように会合している。一実施形態において、会合は、脂質および脂質に会合した薬物が保持され(すなわち、被保持物中にあり)、遊離薬物がろ液中にある、フィルターを通した分離によって測定される。
【0053】
[0059] 本明細書で提供される方法は、複数のリポソーム中に封入された、アミノグリコシドまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む。1つまたは複数の脂質が、複数のリポソームを形成するために使用されうる。一実施形態において、1つまたは複数の脂質は、リン脂質、トコフェロール、ステロール、脂肪酸、負電荷を有する脂質、陽イオン性脂質またはそれらの組み合わせを含む、合成、半合成または天然の脂質である。一実施形態において、複数のリポソームの脂質成分は、電気的に中性の脂質から成る。さらなる実施形態において、脂質成分は、DPPCおよびコレステロールを含む。
【0054】
[0060] 一実施形態において、少なくとも1つのリン脂質が複数のリポソーム中に存在する。一実施形態において、リン脂質は電気的に完全に中性である。一実施形態において、リン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)およびホスファチジン酸(PA);ダイズ対応物(soya counterpart)、ダイズホスファチジルコリン(SPC);SPG、SPS、SPI、SPEおよびSPA;水素化卵およびダイズ対応物(例えば、HEPC、HSPC)、グリセロールの2および3位における12~26個の炭素原子鎖を含有する脂肪酸とグリセロールの1位の様々な頭基のエステル結合から作られた、コリン、グリセロール、イノシトール、セリン、エタノールアミンを含むリン脂質、ならびに対応するホスファチジン酸である。これらの脂肪酸の炭素鎖は、飽和または不飽和であることができ、リン脂質は、様々な鎖長および様々な不飽和度の脂肪酸から作られうる。
【0055】
[0061] 一実施形態において、複数のリポソームの脂質成分は、天然の肺表面活性剤の主要構成成分であるジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を含む。一実施形態において、複数のリポソームの脂質成分は、DPPCおよびコレステロールを含むか、または本質的にDPPCおよびコレステロールから成るか、またはDPPCおよびコレステロールから成る。さらなる実施形態において、DPPCおよびコレステロールは、約19:1~約1:1、または約9:1~約1:1、または約4:1~約1:1、または約2:1~約1:1、または約1.86:1~約1:1の範囲内のモル比を有する。なおさらなる実施形態において、DPPCおよびコレステロールは、約2:1または約1:1のモル比を有する。
【0056】
[0062] 本明細書に記載の方法および組成物による使用のための脂質の他の例としては、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレイルホスファチジル-エタノールアミン(DOPE)、パルミトイルステアロイルホスファチジル-コリン(PSPC)などの混合リン脂質および一アシル化リン脂質、例えば、モノ-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
[0063] 一実施形態において、複数のリポソームの脂質成分はステロールを含む。さらなる実施形態において、少なくとも1つの脂質成分は、ステロールおよびリン脂質を含むか、または本質的にステロールおよびリン脂質から成るか、またはステロールおよびリン脂質から成る(例えば、DPPCなどの中性のホスファチジルコリン)。本発明による使用のためのステロールは、コレステロール、コレステロールヘミスクシネートを含むコレステロールのエステル、硫酸水素コレステロールおよび硫酸コレステロールを含むコレステロールの塩、エルゴステロール、エルゴステロールヘミスクシネートを含むエルゴステロールのエステル、硫酸水素エルゴステロールおよび硫酸エルゴステロールを含むエルゴステロールの塩、ラノステロール、ラノステロールヘミスクシネートを含むラノステロールのエステル、硫酸水素ラノステロール、硫酸ラノステロールを含むラノステロールの塩、ならびにトコフェロールを含むが、これらに限定されない。トコフェロールは、トコフェロール、トコフェロールヘミスクシネートを含むトコフェロールのエステル、硫酸水素トコフェロールおよび硫酸トコフェロールを含むトコフェロールの塩を含みうる。用語「ステロール化合物」は、ステロール、トコフェロールなどを含む。
【0058】
[0064] 一実施形態において、それを必要とする患者におけるNTM肺感染症を治療する方法における使用のための、本明細書に記載のリポソームアミノグリコシド組成物中に存在する複数のリポソームの脂質成分中に、少なくとも1つの陽イオン性脂質(正電荷を有する脂質)が提供される。本発明による使用に適した陽イオン性脂質は、脂肪酸のアンモニウム塩、リン脂質およびグリセリドを含むが、これらに限定されない。脂肪酸は、飽和または不飽和である炭素原子12~26個の炭素鎖長の脂肪酸を含む。いくつかの具体例は、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミンおよびステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)およびジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセニルオキシ)-プロパ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0059】
[0065] 一実施形態において、それを必要とする患者におけるNTM肺感染症を治療する方法における使用のための、本明細書に記載のリポソームアミノグリコシド組成物中に存在する複数のリポソームの脂質成分中に、少なくとも1つの陰イオン性脂質(負電荷を有する脂質)が提供される。使用されうる負電荷を有する脂質は、ホスファチジル-グリセロール(PG)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)およびホスファチジルセリン(PS)を含む。例としては、DMPG、DPPG、DSPG、DMPA、DPPA、DSPA、DMPI、DPPI、DSPI、DMPS、DPPS、DSPSおよびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
[0066] 理論に束縛されることを望むものではないが、DPPCなどのホスファチジルコリンは、肺内の細胞(例えば、肺胞マクロファージ)によるアミノグリコシド作用剤の取り込みを助成し、肺内にアミノグリコシドを保持することを助ける。PG、PA、PSおよびPIなどの負電荷を有する脂質は、粒子の凝集を低減させることに加えて、吸入剤組成物の活性特徴の持続ならびに全身性の取り込みのための肺を横切る組成物の輸送(トランスサイトーシス)に役割を演じると考えられる。理論に束縛されることを望むものではないが、ステロール化合物は、組成物の放出特性に影響を与えると考えられる。
【0061】
[0067] リポソームは、捕捉されたある体積の水を含有する、完全に閉じた脂質二重層の膜である。リポソームは、(単一膜二重層を有する)一枚膜ベシクルまたは多重膜ベシクル(それぞれが水性層で隣と分離された多重膜二重層を特徴とする、タマネギ状構造)またはそれらの組み合わせでありうる。二重層は、疎水性の「尾部」領域および親水性の「頭部」領域を有する2つの脂質単分子層から成る。該膜二重層の構造は、脂質単分子層の疎水性(非極性)の「尾部」が、二重層の中心に向かう一方、親水性の「頭部」が水性相に向かうものである。
【0062】
[0068] 本明細書で提供される医薬組成物中の脂質対アミノグリコシドの重量比(重量比は、本明細書中で「脂質:アミノグリコシド」とも称される)は、一実施形態において、3:1以下、2.5:1.0以下、2:1以下、1.5:1以下、1:1以下または0.75:1以下である。一実施形態において、本明細書で提供される組成物中の脂質:アミノグリコシド重量比は、重量基準で0.7:1.0または約0.7:1.0である。別の実施形態において、本明細書で提供されるリポソーム中のL:D比は、(重量基準で)0.75:1以下である。一実施形態において、脂質:アミノグリコシド重量比(脂質対アミノグリコシド重量比)は、約0.10:1.0~約1.25:1.0、約0.25:1.0~約1.25:1.0、約0.50:1.0~約1.25:1.0、または約0.6:1~約1.25:1.0である。別の実施形態において、脂質対アミノグリコシド重量比は、約0.1:1.0~約1.0:1.0、または約0.25:1.0~約1.0:1.0、または約0.5:1~1:1.0である。
【0063】
[0069] 別の実施形態における本明細書で提供される組成物中の脂質対アミノグリコシド重量比は、3未満:1、2.5未満:1.0、2.0未満:1.0、1.5未満:1.0、または1.0未満:1.0である。さらなる実施形態において、脂質対アミノグリコシド重量比は、約0.7:1.0以下または約0.7:1.0である。さらに別の実施形態において、脂質対アミノグリコシド重量比は、約0.5:1.0~約0.8:1.0である。
【0064】
[0070] 投与体積を最小化し、患者の投薬回数を低減するためには、一実施形態において、アミノグリコシド(例えば、アミノグリコシドであるアミカシン)のリポソームによる捕捉が高効率であること、およびリポソームを患者の粘膜および生体膜を透過するのに十分に小さく保つ一方、脂質対アミノグリコシド重量比が可能でおよび/または実際的である限り低値であることが重要である。一実施形態において、本明細書で提供される組成物、すなわち、複数のリポソーム中に封入されたアミノグリコシドを含む組成物中のLアミノグリコシド重量比は、0.7:1.0、約0.7:1.0、約0.5:1.0~約0.8:1.0、または約0.6:1.0~約0.8:1.0である。さらなる実施形態において、本明細書で提供されるリポソームは、細菌生体膜を効果的に透過するのに十分に小さい。なおさらなる実施形態において、光散乱により測定した複数のリポソームの平均径は、約200nm~約400nm、または約250nm~約400nm、または約250nm~約300nm、または約200nm~約300nmである。なおさらなる実施形態において、光散乱により測定した複数のリポソームの平均径は、約260~約280nmである。
【0065】
[0071] 一実施形態において、本明細書に記載のリポソーム組成物は、それぞれの全体が、あらゆる目的で、参照により組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0330400号または米国特許第7,718,189号に示された方法のうちの1つによって製造される。リポソームは、様々な方法(例えば、Cullis et al.(1987)参照)によって作製されうる。一実施形態において、米国特許出願公開第2008/0089927号に記載の方法のうちの1つまたは複数が、アミノグリコシド封入脂質組成物(リポソーム分散液)を作製するために本明細書において使用される。米国特許出願公開第2008/0089927号の開示は、あらゆる目的で、その全体が参照により組み込まれる。例えば、一実施形態において、少なくとも1つの脂質およびアミノグリコシドは、コアセルベート(すなわち、別個の液体相)と混合されて、リポソーム組成物を生成する。コアセルベートは、脂質との混合の前、脂質との混合中または脂質との混合後に生成されうる。さらに、コアセルベートは、活性剤のコアセルベートであることができる。
【0066】
[0072] 一実施形態において、リポソーム分散液は、1つまたは複数の脂質を有機溶媒に溶解して、脂質溶液を生成することによって生成され、アミノグリコシドコアセルベートは、アミノグリコシドの水溶液を脂質溶液と混合することから生成する。さらなる実施形態において、有機溶媒はエタノールである。なおさらなる実施形態において、脂質溶液は、リン脂質およびステロール、例えば、DPPCおよびコレステロールを含む。
【0067】
[0073] 一実施形態において、リポソームは、超音波処理、射出、均質化、膨潤、エレクトロフォーメーション、逆エマルジョン(inverted emulsion)または逆相蒸散法によって作製される。Banghamの方法(J. Mol. Biol.(1965))は、通常の多重膜ベシクル(MLV)を作製する。Lenkら(米国特許第4,522,803号、同第5,030,453号および同第5,169,637号)、Fountainら(米国特許第4,588,578号)およびCullisら(米国特許第4,975,282号)は、それらの水性コンパートメントのそれぞれにおいて実質的に等しい相間溶質分布を有する多重膜リポソームを作製するための方法を開示する。Paphadjopoulosら、米国特許第4,235,871号は、逆相蒸散によるオリゴ層リポソーム(oligolamellar liposomes)の調製を開示する。各方法は、本発明による使用に適している。
【0068】
[0074] 一枚膜ベシクルは、いくつかの技術、例えば、米国特許第5,008,050号および米国特許第5.059,421号の射出技術によってMLVから作製されうる。超音波処理および均質化は、より大きなリポソームからより小さい一枚膜リポソーム作製するために使用されうる(例えば、Paphadjopoulos et al.(1968);Deamer and Uster(1983);およびChapman et al.(1968)参照)。
【0069】
[0075] Banghamら(J. Mol. Biol. 13, 1965, pp. 238-252)のリポソーム調製は、有機溶媒にリン脂質を懸濁し、次いでこれを蒸発乾固させて、反応容器にリン脂質膜を残すことを含む。次に、適量の水性相が添加され、その60混合物が「膨潤」し、結果として生じる、多層膜ベシクル(MLV)から成るリポソームが機械的手段によって分散される。この調製は、Papahadjopoulosら(Biochim. Biophys. Acta. 135, 1967, pp. 624-638)により記載された、小さな超音波処理された一枚膜ベシクルおよび大きな一枚膜ベシクルの発生の基礎をもたらす。
【0070】
[0076] 本明細書で提供される医薬組成物における使用のためのリポソームを作製するために、逆相蒸散、注入法および界面活性剤希釈などの、大きな一枚膜ベシクル(LUV)を作製するための技術が使用されうる。リポソームを作製するためのこれらおよび他の方法の総説は、参照により本明細書に組み込まれるテキスト、Liposomes、Marc Ostro編、Marcel Dekker,Inc.、New York、1983、1章に見出すことができる。同様にあらゆる目的で、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Szoka,Jr.ら(Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9, 1980, p. 467)も参照されたい。
【0071】
[0077] リポソームを作るための他の技術は、逆相蒸散ベシクル(REV)、米国特許第4,235,871号を生成するものを含む。使用されうるリポソームの別のクラスは、実質的に等しい層溶質分布(lamellar solute distribution)を有することを特徴とする。リポソームのこのクラスは、米国特許第4,522,803号に定義された、安定なプルリラメラベシクル(stable plurilamellar vesicle)(SPLV)と名付けられ、米国特許第4,588,578号に記載された単相ベシクルおよび上記の凍結融解した多重膜ベシクル(FATMLV)を含む。
【0072】
[0078] 様々なステロールおよびコレステロールヘミスクシネートなどのそれらの水溶性の誘導体が、リポソームを生成するために使用されており;例えば、米国特許第4,721,612号を参照されたい。Mayhewら、PCT公開第WO85/00968号は、アルファ-トコフェロールおよびそのある一定の誘導体を含むリポソーム中に薬物を封入することによって、その毒性を低減するための方法を記載した。また、様々なトコフェロールおよびそれらの水溶性の誘導体も、リポソームを生成するために使用され、PCT公開第87/02219号を参照されたい。
【0073】
[0079] 一実施形態において、医薬組成物は、噴霧化前に、光散乱法により測定したおよそ0.01ミクロン~およそ3.0ミクロン、例えば、約0.2~約1.0ミクロンの範囲内の平均径を有するリポソームを含む。一実施形態において、組成物中のリポソームの平均径は、約200nm~約300nm、約210nm~約290nm、約220nm~約280nm、約230nm~約280nm、約240nm~約280nm、約250nm~約280nm、または約260nm~約280nmである。リポソーム製品の持続活性プロフィールは、脂質膜の性質により、および組成物中に他の賦形剤を含めることによって調節可能である。
【0074】
[0080] 一実施形態において、本明細書に記載の方法は、リポソーム複合体化アミノグリコシド組成物、例えば、リポソーム複合体化アミカシン(例えば、アミカシン硫酸塩)組成物を、それを必要とする患者に、吸入を介して、例えば、ネブライザーを介して投与することを含む。一実施形態において、組成物中で提供されるアミノグリコシドの量は、約450mg、約500mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、約600mgまたは約610mgである。別の実施形態において、組成物中で提供されるアミノグリコシドの量は、約500mg~約600mg、または約500mg~約650mg、または約525mg~約625mg、または約550mg~約600mgである。一実施形態において、対象に投与されるアミノグリコシドの量は、約560mgであり、8mLの組成物中で提供される。一実施形態において、対象に投与されるアミノグリコシドの量は、約590mgであり、8mLの組成物中で提供される。一実施形態において、対象に投与されるアミノグリコシドの量は、約600mgであり、8mLの組成物中で提供される。一実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンであり、組成物中で提供されるアミカシンの量は、約450mg、約500mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、約600mgまたは約610mgである。別の実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンであり、組成物中で提供されるアミカシンの量は、約500mg~約650mg、または約525mg~約625mg、または約550mg~約600mgである。一実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンであり、対象に投与されるアミカシンの量は、約560mgであり、8mLの組成物中で提供される。一実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンであり、対象に投与されるアミカシンの量は590mgであり、8mLの組成物中で提供される。一実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンであり、対象に投与されるアミノグリコシドの量は約600mgであり、8mLの組成物中で提供される。
【0075】
[0081] 一実施形態において、本明細書に記載の方法は、リポソーム複合体化アミノグリコシド組成物、例えば、リポソーム封入アミカシン組成物(例えば、アミカシン硫酸塩)およびネブライザーを含むシステムの使用を介して実行される。一実施形態において、本明細書で提供されるリポソームアミノグリコシド組成物は、アミノグリコシド約60mg/mL、アミノグリコシド約65mg/mL、アミノグリコシド約70mg/mL、アミノグリコシド約75mg/mL、アミノグリコシド約80mg/mL、アミノグリコシド約85mg/mL、またはアミノグリコシド約90mg/mLを含む。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、例えば、アミカシン硫酸塩としてのアミカシンである。
【0076】
[0082] 本明細書に記載のNTM治療方法の一実施形態において、リポソームアミノグリコシド組成物は、それを必要とする患者に、単一の投薬セッションにおいて1日1回投与される。さらなる実施形態において、組成物はエアロゾルとしてネブライザーを介して投与される。別の実施形態において、該方法は、本明細書に記載のアミノグリコシド組成物のうちの1つを、それを必要とする患者に、1日おきまたは3日ごとに投与することを含む。さらに別の実施形態において、該方法は、本明細書に記載のアミノグリコシド組成物のうちの1つを、それを必要とする患者に、1日2回投与することを含む。
【0077】
[0083] 本明細書で提供される方法は、一実施形態において、本明細書に記載の組成物のうちの1つを(例えば、ネブライザーを介して)それを必要とする患者に少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月または6カ月を含む投与期間の間、投与することを含む。一実施形態において、投与期間の後には、組成物がなにも投与されない期間(「オフ期間」と称される)が続き、その後には、別の投与期間が続く。一実施形態において、オフ期間は、約1カ月、約2カ月、約3カ月、約4カ月、約5カ月または約6カ月である。
【0078】
[0084] 一実施形態において、投与期間は、約15日間~約400日間、例えば、約45日間~約300日間、または約45日間~約270日間、または約80日間~約200日間である。一実施形態において、投与期間は、組成物の、それを必要とする患者への1日1回の投薬セッションにおける投与を含む。
【0079】
[0085] 別の実施形態において、本明細書に記載のNTM治療方法は、リポソーム複合体化アミノグリコシド組成物の、それを必要とする患者への、投与期間の間の1日1回の投薬セッションを介する投与を含む。さらなる実施形態において、投与期間は、約15~約275日間、または約20~235日間、または約28日間~約150日間である。例えば、本明細書で提供される方法は、アミノグリコシド組成物を、それを必要とする患者に、約15~約300日間、または約15~約250日間、または約15~約200日間、または約15~約150日間、または約15~約125日間、または約15~約100日間の投与期間の間、単一の投薬セッションにおいて1日1回投与することを含む。別の実施形態において、投与期間は、約50日間~約200日間である。投与期間の間、一実施形態において、それを必要とする患者は、噴霧化を介してアミノグリコシド組成物を投与され、単一の投薬セッションにおいて毎日、アミノグリコシド約500mg~約1000mg、例えば、アミノグリコシド約500mg~アミノグリコシド約700mg(例えば、アミノグリコシド約590mg)が投与される。
【0080】
[0086] 一実施形態において、投与期間の後には、約15~約200日間、例えば、約15日間~約150日間または約15日間~約75日間、約15日間~約35日間、または約20日間~約35日間、または約25日間~約75日間、または約35日間~約75日間または約45日間~約75日間のオフ期間が続く。別の実施形態において、オフ期間は、約28日間または約56日間である。他の実施形態において、オフ期間は、約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60日間であるが、他の実施形態においては、オフ期間は約56日間である。
【0081】
[0087] 一実施形態において、それを必要とする患者は、投与期間およびオフ期間を含む治療周期において、リポソーム複合体化アミノグリコシド組成物を投与される。さらなる実施形態において、治療周期は、少なくとも1回実践される。さらなる実施形態において、治療周期は、少なくとも2回、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10回反復される。別の実施形態において、治療周期は、少なくとも3回、例えば、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5または少なくとも6回反復される。
【0082】
[0088] NTM肺感染症を有する患者のための様々な治療周期が、以下の表3に提供される。しかしながら、別の実施形態において、本明細書で提供される方法は、オフ期間を含まず、その代わりに投与期間のみを含む。さらなる実施形態において、表3に示される投与期間のうちの1つが、本明細書で提供される方法において使用される。さらなる実施形態において、患者は、単一の投薬セッション中の投与期間の間に、1日1回、リポソームアミノグリコシド組成物を投与される。
【0083】
【0084】
【0085】
[0089] 一実施形態において、本明細書で提供されるシステムは、リポソームアミカシン組成物約8mLおよびネブライザーを含む。一実施形態において、リポソームアミカシン組成物の密度は、約1.05グラム/mLであり;一実施形態において、1用量あたりリポソームアミカシン組成物およそ8.4グラムが、本発明の組成物中に存在する。さらなる実施形態において、組成物の全体積がそれを必要とする対象に投与される。
【0086】
[0090] 一実施形態において、本明細書で提供される医薬組成物は、少なくとも1つのアミノグリコシド、少なくとも1つのリン脂質およびステロールを含む。さらなる実施形態において、医薬組成物は、アミノグリコシド、DPPCおよびコレステロールを含む。一実施形態において、医薬組成物は、以下の表4に提供される組成物である。
【0087】
【0088】
[0091] アミノグリコシド濃度のみを増加させることは、投薬回数の低減をもたらさない可能性があることは留意すべきである。例えば、一実施形態において、脂質対薬物比は固定され、アミカシン濃度が増加すると(したがって、2つの比が、例えば、重量基準で約0.7:1に固定されるため、脂質濃度が増加すると)、溶液の粘度も増加し、これが噴霧時間を遅くする。
【0089】
[0092] 全体を通して提供されるとおり、本明細書に記載の方法は、NTM肺感染症の治療を必要とする患者に、有効量のリポソームアミノグリコシド組成物を吸入を介して投与することを含む。一実施形態において、吸入送達は、ネブライザーを介して行われる。ネブライザーは、患者の肺への送達のために、組成物のエアロゾルミストを提供する。
【0090】
[0093] 一実施形態において、本明細書で提供されるシステムは、電子式メッシュネブライザー、ニューモニック(ジェット)ネブライザー、超音波式ネブライザー、空気圧式ネブライザー、および空気作動式(breath-actuated)ネブライザーから選ばれるネブライザーを含む。一実施形態において、ネブライザーは携帯用である。
【0091】
[0094] 一実施形態において、NTM感染症を治療するための方法は、それを必要とする患者への、ネブライザーを介するリポソーム複合体化アミノグリコシド組成物の1日1回の投薬セッション中の投与を介して行われる。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシン、例えば、アミカシン硫酸塩である。さらなる実施形態において、リポソームの脂質成分は、DPPCおよびコレステロールを含む。なおさらなる実施形態において、ネブライザーは、あらゆる目的で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0330400号に記載のネブライザーのうちの1つである。
【0092】
[0095] ニューモニックネブライザーの操作の原理は、当業者に一般に知られており、例えば、Respiratory Care、45巻、6号、609~622頁(2000)に記載されている。手短に言えば、加圧気体の供給が、空気圧式ネブライザー中での液体の霧化のための推進力として使用される。圧縮気体が送達され、これが陰圧の領域をもたらす。次いで、エアロゾル化される溶液が気体流中に送達され、せん断されて液膜となる。この膜は、不安定であり、表面張力のために破れて液滴となる。次いで、小さな粒子、すなわち、上記のMMADおよびFPF特性を有する粒子が、エアロゾル流中に阻流壁を置くことによって形成されうる。ニューモニックネブライザーの一実施形態において、気体および溶液が出口ポート(ノズル)を出て阻流壁と相互作用する前に混合される。別の実施形態において、液体および気体が出口ポート(ノズル)を出るまで混合は起こらない。一実施形態において、気体は空気、O2および/またはCO2である。
【0093】
[0096] 一実施形態において、液滴のサイズおよび排出速度は、ニューモニックネブライザー中で調整されうる。しかしながら、噴霧化される組成物、および組成物の性質(例えば、会合したアミノグリコシドの%)がネブライザーの改良により変更されるかを考慮すべきである。例えば、一実施形態において、本発明の排出速度および液滴サイズを達成するために、気体速度および/または医薬組成物の速度が修正される。それに加えてまたはその代わりに、本発明の液滴サイズおよび排出速度を達成するために、気体および/または溶液の流速が調整されうる。例えば、一実施形態において、気体速度の増加は、液滴サイズを減少させた。一実施形態において、本発明の液滴サイズおよび排出速度を達成するために、医薬組成物流対気体流の比率が調整される。一実施形態において、液体対気体の流れの比率の増加が、粒径を増加させる。
【0094】
[0097] 一実施形態において、ニューモニックネブライザーの排出速度は、液体リザーバの充填容積を増加させることによって増加する。理論に束縛されることを望むものではないが、排出速度の増加は、ネブライザー内のデッドボリュームの減少による可能性がある。一実施形態において、噴霧化時間は、流れを増加させてネブライザーに動力を供給することによって低減される。例えば、Clayら(1983)Lancet 2、592~594頁およびHessら(1996)Chest 110、498~505頁を参照されたい。
【0095】
[0098] 一実施形態において、噴霧化過程の間にエアロゾルを捕捉するために貯液バッグが使用され、その後、吸入を介して対象にエアロゾルが提供される。別の実施形態において、本明細書で提供されるネブライザーは、バルブつき開放口設計を含む。この実施形態において、患者がネブライザーを通して吸入するとき、ネブライザーの排出量が増加する。呼気相の間、一方向バルブはネブライザーチャンバーからそれるように患者フローを転換する。
【0096】
[0099] 一実施形態において、本明細書で提供されるネブライザーは、持続的ネブライザーである。言い換えれば、投薬量を投与しながら医薬組成物をネブライザーに再充填する必要はない。むしろ、ネブライザーは、少なくとも8mLの限度容量または少なくとも10mLの限度容量を有する。
【0097】
[00100] 一実施形態において、本明細書で提供されるネブライザーは、空気圧縮機を使用せず、したがって、空気流を生じない。一実施形態において、エアロゾルは、装置の混合チャンバーに入るエアロゾルヘッドにより生成される。患者が吸入するとき、混合チャンバーの後ろにある一方向吸入バルブを介して空気が混合チャンバーに入り、マウスピースを通って患者までエアロゾルを運ぶ。呼気の際、患者の息が装置のマウスピース上の一方向呼気バルブを通って流れる。一実施形態において、ネブライザーは、混合チャンバー中へエアロゾルを生成し続け、次いで、これが次の呼吸の際に対象により引き込まれる、というこの周期が、ネブライザーの薬剤リザーバが空になるまで続く。
【0098】
[00101] 一実施形態において、本明細書で提供されるアミノグリコシド組成物の有効量の噴霧化時間は、20分未満、18分未満、16分未満または15分未満である。一実施形態において、本明細書で提供されるアミノグリコシド組成物の有効量の噴霧化時間は、15分未満または13分未満である。一実施形態において、本明細書で提供されるアミノグリコシド組成物の有効量の噴霧化時間は、約13分である。
【0099】
[00102] 一実施形態において、本明細書に記載の組成物は、それを必要とする患者に、1日1回投与される。
【0100】
[00103] 別の実施形態において、患者は、本明細書で提供される方法および/または組成物のうちの1つにより、NTM肺感染症を治療される。さらなる実施形態において、組成物は、リポソームアミカシン組成物を含む。なおさらなる実施形態において、組成物は、アミカシン約500mg~約600mg、DPPCおよびコレステロールを含み、組成物の脂質対アミノグリコシド重量比は、0.75:1.0以下、例えば、約0.7:1.0または約0.5:1.0~約0.8:1.0である。
【0101】
[00104] 一実施形態において、本明細書で提供される治療方法のうちの1つに供される患者は、先に異なるNTM治療に対して非反応性であった患者である。さらなる実施形態において、治療を必要とする患者に投与される組成物は、上記表4に示される組成物のうちの1つである。
【0102】
[00105] 一実施形態において、アミノグリコシド組成物の噴霧化の前に、組成物中に存在するアミノグリコシドの約70%~約100%が、リポソーム複合体化される。さらなる実施形態において、該アミノグリコシドはアミノグリコシドである。なおさらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンである。別の実施形態において、噴霧化の前に、組成物中に存在するアミノグリコシドの約80%~約99%、または約85%~約99%、または約90%~約99%または約95%~約99%または約96%~約99%が、リポソーム複合体化される。さらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンまたはトブラマイシンである。なおさらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンである。別の実施形態において、噴霧化の前に、組成物中に存在するアミノグリコシドの約98%がリポソーム複合体化される。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、アミカシンまたはトブラマイシンである。なおさらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシン(例えば、アミカシン硫酸塩)である。
【0103】
[00106] 一実施形態において、噴霧化に際して、リポソームに対するせん断応力のために、リポソーム複合体化アミノグリコシド剤の約20%~約50%が放出される。さらなる実施形態において、アミノグリコシド剤はアミカシンである。別の実施形態において、噴霧化に際して、リポソームに対するせん断応力のために、リポソーム複合体化アミノグリコシド剤の約25%~約45%または約30%~約40%が、リポソーム複合体から放出される。さらなる実施形態において、アミノグリコシド剤はアミカシンである。なおさらなる実施形態において、アミカシンはアミカシン硫酸塩である。
【0104】
[00107] 本明細書に記載の組成物の、すなわち、NTM感染症の治療を必要とする患者への投与のための噴霧化に際して、エアロゾル化された組成物が生成され、一実施形態において、エアロゾル化された組成物の空気力学的中央径(MMAD)は、アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)により測定して、約1.0μm~約4.2μmである。一実施形態において、エアロゾル化された組成物のMMADは、ACIにより測定して、約3.2μm~約4.2μmである。一実施形態において、エアロゾル化された組成物のMMADは、次世代インパクタ(NGI)により測定して、約1.0μm~約4.9μmである。さらなる実施形態において、エアロゾル化された組成物のMMADは、NGIにより測定して、約4.4μm~約4.9μmである。
【0105】
[00108] エアロゾル化された組成物の微粒子割合(FPF)は、一実施形態において、アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)により測定して、約64%以上、または次世代インパクタ(NGI)により測定して、約51%以上である。一実施形態において、エアロゾル化された組成物のFPFは、ACIによりにより測定して約70%以上、NGIにより測定して約51%以上、またはNGIにより測定して約60%以上である。
【0106】
[00109] 噴霧化に際して、医薬組成物中のリポソームが薬物を漏出させる。一実施形態において、噴霧化後のリポソーム複合体化アミノグリコシドの量は、約45%~約85%、または約50%~約80%、または約51%~約77%である。本明細書中で、これらのパーセンテージは、「噴霧化後の会合アミノグリコシドパーセント」とも称される。本明細書で提供されるとおり、一実施形態において、リポソームは、アミノグリコシド、例えば、アミカシンを含む。一実施形態において、噴霧化後の会合アミノグリコシドパーセントは、約60%~約70%である。さらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンである。別の実施形態において、噴霧化後の会合アミノグリコシドパーセントは、約67%、または約65%~70%である。さらなる実施形態において、アミノグリコシドはアミカシンである。なおさらなる実施形態において、アミカシンはアミカシン硫酸塩である。
【0107】
[00110] 一実施形態において、冷トラップ中での凝縮によって空気からエアロゾルを回収し、その後、遊離および封入されたアミノグリコシド(会合アミノグリコシド)について液体をアッセイすることによって、噴霧化後の会合アミノグリコシドパーセントを測定する。
【0108】
[00111] 別の実施形態において、本明細書で提供される方法は、嚢胞性線維症患者における1つまたは複数のNTM肺感染症の治療または予防のために実践される。さらなる実施形態において、治療を必要とする患者に投与される組成物は、上記表4に示される組成物のうちの1つである。
【0109】
[00112] 一実施形態において、NTM肺感染症の治療を必要とする患者は、気管支拡張症患者である。一実施形態において、気管支拡張症は、非嚢胞性線維症(CF)性気管支拡張症である。別の実施形態において、気管支拡張症は、治療を必要とする患者におけるCFに関連する。
【0110】
[00113] 別の実施形態において、NTM肺感染症の治療を必要とする患者は、COPD患者である。さらに別の実施形態において、NTM肺感染症の治療を必要とする患者は、喘息患者である。さらなる実施形態において、治療を必要とする患者に投与される組成物は、上記表4に示される組成物のうちの1つである。
【0111】
[00114] 一実施形態において、本明細書に記載の方法のうちの1つによる治療を必要とする患者は、嚢胞性線維症患者、気管支拡張症患者、線毛機能不全症患者、慢性喫煙者、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者または先に治療に対して非反応性であった患者である。別の実施形態において、嚢胞性線維症患者は、本明細書で提供される方法のうちの1つによりNTM肺感染症を治療される。さらに別の実施形態において、患者は気管支拡張症患者、COPD患者または喘息患者である。一実施形態において、NTM肺感染症は、MAC、M.kansasii、M.abscessus、またはM.fortuitumである。さらなる実施形態において、NTM肺感染症は、MAC感染症である。
【0112】
[00115] 本明細書に記載される方法に供される患者は、一実施形態において、併発状態を有する。例えば、一実施形態において、本明細書に記載の方法のうちの1つによる治療を必要とする患者は、NTM肺感染症に加えて、糖尿病、僧帽弁障害(例えば、僧帽弁逸脱症)、急性気管支炎、肺高血圧症、肺炎、喘息、気管癌、気管支癌、肺癌、嚢胞性線維症、肺線維症、咽頭異常、気管異常、気管支異常、アスペルギルス症、HIVまたは気管支拡張症を有する。
【0113】
[00116] 一実施形態において、本明細書に記載のNTM方法のうちの1つに供される患者は、リポソームアミノグリコシド組成物の投与期間中、または投与期間が終了した後に、NTM培養の陰性転化を示す。一実施形態において、転化までの時間は、約10日間、または約20日間または約30日間または約40日間、または約50日間、または約60日間、または約70日間、または約80日間、または約90日間、または約100日間または約110日間である。別の実施形態において、転化までの時間は、約20日間~約200日間、約20日間~約190日間、約20日間~約180日間、約20日間~約160日間、約20日間~約150日間、約20日間~約140日間、約20日間~約130日間、約20日間~約120日間、約20日間~約110日間、約30日間~約110日間、または約30日間~約100日間である。
【0114】
[00117] いくつかの実施形態において、患者は、投与期間終了後少なくとも15日間、治療前の患者のFEV1に比べて肺機能の改善を経験する。例えば、患者は、FEV1の増加、血中酸素飽和度の増加またはその両方を経験しうる。いくつかの実施形態において、患者は、投与期間前のFEV1よりも少なくとも5%増加した(投与期間または治療周期の後の)FEV1を有する。他の実施形態において、FEV1は、投与期間前のFEV1よりも5~50%増加する。他の実施形態において、FEV1は、投与期間前のFEV1よりも25~500mL増加する。いくつかの実施形態において、血中酸素飽和度は、投与期間前の酸素飽和度に比べて少なくとも1%増加する。
【0115】
[00118] 一実施形態において、本明細書で提供される治療方法の有効性を評価するために、6分間歩行試験(6MWT)が使用される。6MWTは、機能的な運動能力の客観的評価のために使用され、患者が6分間に歩くことのできる距離を測定する、実用的で単純な試験である(あらゆる目的で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、American Thoracic Society.(2002). Am J Respir Crit Care Med. 166, pp. 111-117参照)。
【0116】
[00119] 一実施形態において、本明細書に記載のNTM方法のうちの1つに供された患者は、該治療方法を受ける前に比べて増加した、6MWTにおいて歩いたメートル数を示す。一実施形態において、増加した6MWTにおいて歩いたメートル数は、約5メートル、約10メートル、約15メートル、約20メートル、約25メートル、約30メートル、約35メートル、約40メートル、約45メートル、または約50メートルである。別の実施形態において、増加した6MWTにおいて歩いたメートル数は、少なくとも約5メートル、少なくとも約10メートル、少なくとも約15メートル、少なくとも約20メートル、少なくとも約25メートル、少なくとも約30メートル、少なくとも約35メートル、少なくとも約40メートル、少なくとも約45メートル、または少なくとも約50メートルである。さらに別の実施形態において、増加した6MWTにおいて歩いたメートル数は、約5メートル~約50メートル、または約5メートル~約40メートル、または約5メートル~約30メートルまたは約5メートル~約25メートルである。
【0117】
[00120] 別の実施形態において、本明細書に記載のNTM方法のうちの1つに供された患者は、非リポソームアミノグリコシド治療を受けている患者に比べてより多い、6MWTにおいて歩いたメートル数を示す。一実施形態において、非リポソームアミノグリコシド治療を受けている患者に比べてより多い、6MWTにおいて歩いたメートル数は、約5メートル、約10メートル、約15メートル、約20メートル、約25メートル、約30メートル、約35メートル、約40メートル、約45メートル、約50メートル、約60メートル、約70メートルまたは約80メートルである。別の実施形態において、より多い6MWTにおいて歩いたメートル数は、少なくとも約5メートル、少なくとも約10メートル、少なくとも約15メートル、少なくとも約20メートル、少なくとも約25メートル、少なくとも約30メートル、少なくとも約35メートル、少なくとも約40メートル、少なくとも約45メートル、または少なくとも約50メートルである。さらに別の実施形態において、より多い6MWTにおいて歩いたメートル数は、約5メートル~約80メートル、または約5メートル~約70メートル、または約5メートル~約60メートルまたは約5メートル~約50メートルである。
【0118】
[00121] 一実施形態において、本明細書で提供されるリポソームアミノグリコシド組成物は、NTM肺疾患の治療を必要とする患者に、追加の治療法とともに投与される。
【0119】
[00122] 一実施形態において、本明細書で提供されるリポソームアミノグリコシド組成物は、NTM肺疾患の治療を必要とする患者に、1つまたは複数の追加の治療剤とともに投与される。一実施形態における1つまたは複数の追加の治療剤は、経口投与される。別の実施形態において、一実施形態における1つまたは複数の追加の治療剤は、静脈内投与される。さらに別の実施形態において、一実施形態における1つまたは複数の追加の治療剤は、吸入を介して投与される。
【0120】
[00123] 一実施形態における1つまたは複数の追加の治療剤は、マクロライド系抗生物質である。さらなる実施形態において、マクロライド系抗生物質は、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタマイシン、ミデカマイシン、オレアンドマイシン、ソリスロマイシン、スピラマイシン、トロレアンドマイシン、タイロシン、ロキシスロマイシン、またはそれらの組み合わせである。さらなる実施形態において、マクロライド系抗生物質は経口投与される。
【0121】
[00124] 一実施形態において、1つまたは複数の追加の治療剤は、マクロライド系抗生物質、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシンまたはそれらの組み合わせである。さらなる実施形態において、マクロライド系抗生物質は経口投与される。
【0122】
[00125] 別の実施形態において、本明細書で提供されるリポソームアミノグリコシド組成物は、NTM肺疾患の治療を必要とする患者に、1つまたは複数の追加の治療剤とともに投与され、1つまたは複数の追加の治療剤は、リファマイシン化合物である。さらなる実施形態において、リファマイシンは、リファンピンである。別の実施形態において、リファマイシンは、リファブチン、リファペンチン、リファキシミン、またはそれらの組み合わせである。
【0123】
[00126] さらなる実施形態において、1つまたは複数の追加の治療剤は、キノロンである。さらなる実施形態において、キノロンは、フルオロキノロンである。別の実施形態において、キノロンは、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ガチフロキサシン、エノキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、モキシフロキサシン、トロバフロキサシン、またはそれらの組み合わせである。
【0124】
[00127] 一実施形態において、第2の治療剤がNTM治療を必要とする患者に投与され、第2の治療剤は、第2のアミノグリコシドである。さらなる実施形態において、第2のアミノグリコシドは、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ボホルマイシン、ブルラマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、ダクチマイシン、エチミシン、フラミセチン、ゲンタマイシン、H107、ハイグロマイシン、ハイグロマイシンB、イノサマイシン、K-4619、イセパマイシン、KA-5685、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、プラゾマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、ロドストレプトマイシン、ソルビスチン、スペクチノマイシン、スポラリシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ベルダマイシン、ベルチルマイシン、薬学的に許容されるそれらの塩、またはそれらの組み合わせである。さらなる実施形態において、第2のアミノグリコシドは、静脈内にまたは吸入を介して投与される。一実施形態において、第2のアミノグリコシドはストレプトマイシンである。
【0125】
[00128] 別の実施形態において、本明細書で提供されるリポソームアミノグリコシド組成物は、NTM肺疾患の治療を必要とする患者に、1つまたは複数の追加の治療剤とともに投与され、1つまたは複数の追加の治療剤は、エタンブトール、イソニアジド、セフォキシチンまたはイミペネムである。
【実施例0126】
[00129] 以下の実施例を参照することによって、本発明をさらに例解する。しかしながら、上記実施形態と同様に、これらの実施例は例示的なものであり、決して本発明の範囲を制限するとは解釈されないことに留意するべきである。
【0127】
実施例1:非結核性抗酸菌(NTM)肺疾患(LD)を有する患者における、吸入用リポソームアミカシン(LAI)の無作為化二重盲検試験
[00130] NTM-LDの増加する有病率は、公衆衛生上の問題であり、特に嚢胞性線維症患者におけるその管理は、多剤レジメンの長期使用、薬物毒性および不十分な奏効率によって複雑化する。LAI(本明細書中で「Arikayce(商標)」または「ARIKAYCE(商標)」とも称される)は、不応性NTM肺疾患を有する患者の治療のために開発中のアミカシンの徐放性脂質組成物である。この試験は、北米の19の拠点において行った、無作為化二重盲検(DB)試験において、これらの患者におけるLAIの有効性、安全性および耐容性を評価した。
図1は、試験デザインを示すフローチャートであり、
図2は、この試験のための患者分布を示す。
【0128】
[00131] LAI組成物は以下の成分を有していた。
【0129】
【0130】
[00132] 安定した薬物レジメンを実行している適格NTM患者を、嚢胞性線維症(CF)の存在または非存在、およびMycobacterium avium complex (MAC)対Mycobacterium abscessus(M. abscessus)肺疾患に基づいて層別化し、彼らの進行中の安定な薬物レジメンに加えて、eFlow(登録商標)ネブライザーシステム(PARI Pharma GmbH)を介して1日1回のLAI590mgまたはプラセボを84日間受容するために、1:1に無作為化した。
図3は、(層ごとに無作為化した)各群の患者数を示す。患者は、スクリーニング前に6カ月以上の米国胸部学会/米国感染症学会(ATS/IDSA)ガイドラインに基づく治療法に対して不応性のNTM肺感染症を有する場合、登録に適格であった。
【0131】
[00133] 二重盲検(DB)相の完了後、オープンラベル(OL)相を承諾した患者は、さらに84日間、1日1回、LAI590mgを受容した(
図1および2)。
【0132】
[00134] スクリーニングした患者136人のうち、90人を無作為化した(CF19%;非CF81%;MACを有する64%およびM. abscessusを有する36%)。患者の54%は、60歳超であり;31%は、40歳超~60歳、および14%は、18~40歳であった。ベースラインの平均年齢は、58.5歳(標準偏差、15.83歳)であった。
【0133】
[00135] 患者80人および59人がそれぞれ、DBおよびOL相を完了して、試験が完了する。mITT集団の人口統計学およびベースラインの特性を、以下の表5に提供する。
【0134】
【0135】
[00136] mITT試験に登録したサンプル集団は、以下を示した:(1)併発肺疾患、患者のうちの17人が嚢胞性線維症を有する;(2)若い嚢胞性線維症患者を含んで、平均年齢59歳;(3)空洞病巣を有する患者68人および微小の空洞性疾患をさらに含む結節性疾患を有する患者21人を含む、肺の異常;(4)2007年から2010年の間に収集した、相当するCDCデータが、米国の平均体格指数(BMI)が、成人男性で28.6、成人女性で28.7であることを明らかにしたのに対して、21.98の平均BMI;および(5)両アーム(arm)がおよそ同じ6分間歩行距離の平均ベースラインを有する、全患者についての約441mの平均ベースライン。
【0136】
[00137] 半定量的抗酸菌培養のための痰、スメア状態、徴候/症状、肺の増悪発生、抗抗酸菌薬のレスキュー(rescue)、6分間歩行距離(6MWD)、胸部のコンピュータ断層撮影、肺活量測定、臨床的/実験室安全性パラメータおよび生活の質の程度を、28日ごとに評価した。プライマリーエンドポイントは、抗酸菌培養については、半定量的尺度におけるベースラインからの変化であり;セカンダリーエンドポイントは、84日目におけるLAI対プラセボについての、NTM培養が陰性転化した患者の割合であった。全患者は、試験薬の最終投薬の28日後、OL相における患者では196日目まで安全性フォローアップのために来院した。
【0137】
[00138]
図4は、試験の二重盲検相およびオープンラベル相の両方における、試験日の関数としての抗酸菌培養(mITT集団)の完全な半定量的尺度におけるベースラインからの平均変化を示すグラフである。図に示すとおり、LAIで治療した患者は、二重盲検相中、治療アーム対プラセボアームで少なくとも一段階の低減を示した。
【0138】
[00139] 治療アーム別の各下位群における、84日目および168日目に喀痰培養がNTMに関して陰性の患者(mITT集団)の割合を、表6~8に要約する。84日目に、喀痰培養がNTMについて陰性を達成した患者において、LAI対プラセボのために統計学的に有意な群間の相違が、非CF感染症(P=.01)、MAC感染症(P=.017)、女性(P=.004)、白人(P=.031)を有する患者および63歳未満の患者(P=.041)で見られた(表6)。
【0139】
[00140] 168日目に、先のLAIアーム対先のプラセボアームにおいて、統計学的に有意により多くのMAC感染症患者は、喀痰培養がNTM陰性であった(P=.026)(表6)。ガイドラインに基づく治療法に対して不応性のNTM肺感染症を有する患者の下位群の解析(表7および表8)において、LAIは、肺疾患とMAC感染症の根底をなす非CFを有する患者のNTM陰性の喀痰培養に関して、プラセボよりも優れて見えた。非CF MAC感染症を有する患者の下位群は、試験の時間枠内(すなわち、12週間の二重盲検相および12週間のオープンラベル相)で陽性の有効性結果を示した。
【0140】
[00141] 培養の転化までの時間は、二重盲検相中のすべての来院で(28、56および84日目)培養陰性となったLAIアームの患者の割合が、統計学的に有意に高いことを示した(
図5、上図)。具体的には、LAIの患者44人中11人に対してプラセボの患者45人中3人と、84日目における陰性培養の達成においてLAIは統計学的有意性を達成した(P=.01)(
図5、上図)。プラセボと比べて、LAIは、56日目(LAI、患者10人/29人対プラセボ、患者2人/28人;P=.0144)および84日目(LAI、患者10人/29人対プラセボ、患者3人/28人;P=.0273)に培養陰性を達成した、MAC感染症を有する患者の割合に関して統計学的有意性を達成した(
図5、下図)。
【0141】
[00142] 少なくとも6カ月間、NTMレジメンに対して不応性の患者において、LAI、吸入したアミカシン組成物は、プラセボに比べて有意に高い培養転化を84日以内にもたらす。少なくとも1つのNTM培養陰性の結果を有する患者を、
図6に提供する。
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
[00143] 6分間歩行試験(6MWT)は、総合的な身体機能または能力に対するLAIの影響を評価した。6MWTエンドポイントの結果(1日目から二重盲検試験の最後の84日目までのベースラインからの変化)を、
図7および
図8に提供する。LAIは、二重盲検相において6MWTの統計学的有意性を示した(LAI対プラセボ:23.895対-25.032メートル、P=0.009)。6MWTにおける歩行距離(メートル)のベースラインから84日目までの平均変化は、プラセボに対してLAIを受容する患者において有意に高かった(20.64m対-25.03m)(
図7、下図)。オープンラベル相においては、LAIアームの患者は、6MWTにおいて継続して改善し、LAIを開始したプラセボ群の患者は、悪化速度の劇的な低下を示した(
図7および8)。さらに、オープランラベル相の最後まで培養陰性状態が持続した患者において、持続的な培養陰性状態のなかった患者に対し、6MWTスコアのベースラインから168日目までの平均変化の有意な差が見られた(55.75m対-13.42m)(
図8、下図)。
【0146】
[00144] 治療に不応性のNTM肺感染症を有する患者は、彼らのガイドラインに基づく治療法のバックグラウンドにLAIが追加された場合、6MWTにおける歩行距離の改善を示した。試験の間、培養陰性状態が持続した患者は、6MWTにより評価して、より良好な身体機能的能力を達成した。
【0147】
[00145] mITT試験に登録したサンプル集団は、168日目の前に、3つの連続した陰性の喀痰培養として測定した培養転化に関して、以下を示した:(1)そのすべてが非嚢胞性線維症であった合計患者16人が培養転化を示した;(2)患者15人がMACを有し、1人がM.abscessusを有した;(3)24カ月超の非LAI治療方法にもかかわらず、患者8人が治療の成功を示さず、12~24カ月の非LAI治療方法にもかかわらず、患者4人が治療の成功を示さず、6~12カ月の非LAI治療方法にもかかわらず、患者4人が治療の成功を示さなかった;(4)患者7人が結節性疾患を示し、患者2人が結節性疾患および微小の空洞病巣を示し、患者7人が空洞病巣を示した;(5)患者11人が、LAI治療方法開始後の56日目またはその前に転化を開始し、患者2人が、LAI治療方法開始後の84日目に転化し、患者3人が、LAI治療方法開始後の112日目に転化した;および(6)168日目における転化者(n=16)対非転化者(n=43)に関する6MWTは、p値が0.0034で、89.34メートル(転化者)対3.85メートル(非転化者)であった。
【0148】
[00146] 喀血、耳鳴りおよび難聴を有する患者において、アーム間の相違はなかった。
【0149】
[00147] さらに、二重盲検相におけるLAIからオープンラベル相に入る患者(試験デザインについては、
図1参照)は、改善を継続したことが見出された。さらに、プラセボからオープンラベル相に入る患者は、彼らの低下速度の劇的な減少を示す。治療下で発現した有害事象(TEAE)は、ほとんどが軽度または中度の重症度であり、TEAEの大多数は、事実上、呼吸器に関する(表9)。局所的事象および根底にある肺疾患の感染性の増悪が、最も一般的なTEAEであった。少数の患者が、これらの事象によって試験薬を中断した。
【0150】
【0151】
実施例2:非CF M.avium complex(MAC)肺感染症を有する患者における吸入用リポソームアミカシン(LAI)の試験
[00148] LAI(本明細書中で「Arikayce(商標)」または「ARIKAYCE(商標)」とも称される)は、不応性のNTM肺疾患を有する患者の治療のために開発中のアミカシンの徐放性脂質組成物である。この試験において、LAIの有効性、安全性および耐容性を、M.avium complex(MAC)肺感染症を有する非嚢胞性線維症患者において評価する。
図9は、試験デザインを示すフローチャートである。
【0152】
[00149] LAI組成物は、以下の成分を含む:
【0153】
【0154】
[00150] 表10は、この試験のための組み入れ基準を提供する。
【0155】
【0156】
[00151] 患者を2:1で2群:(i)LAI590mg+基礎療法および(ii)基礎療法のみに無作為化する。各患者群を、8カ月間、毎日の投薬に供する。一次培養転化を6カ月で評価する。6MWTも、各患者について6カ月で実行する。
【0157】
[00152] 培養転化者は、転化後、12カ月間治療を継続する。
【0158】
[00153] 本願全体を通して引用されるすべての文書、特許、特許出願、刊行物、製品説明書およびプロトコールは、あらゆる目的で、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0159】
[00154] 本明細書中で例解され、論じられている実施形態は、本発明を作製し、使用するために発明者らに知られた最良の方法を当業者に教示することのみを意図される。上記教示に照らして当業者に認識されるとおり、本発明の上記実施形態の改良および変形が、本発明から逸脱することなく可能である。したがって、請求項の範囲およびそれらの等価物の範囲内において、本発明は具体的に記載された以外に実行されうることが理解される。したがって、上記説明および図面は、ほんの一例であり、該開示は、以下の特許請求の範囲により詳細に説明される。