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特開2023-33425がん、糖尿病および神経障害の処置のための新規スピロおよび環式ビス-ベンジリジンプロテアソーム阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033425
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】がん、糖尿病および神経障害の処置のための新規スピロおよび環式ビス-ベンジリジンプロテアソーム阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 221/20 20060101AFI20230303BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 31/438 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 31/403 20060101ALN20230303BHJP
   A61K 31/397 20060101ALN20230303BHJP
【FI】
C07D221/20 CSP
A61P35/00
A61P3/10
A61P25/00
A61K31/438
A61K31/403
A61K31/397
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023004636
(22)【出願日】2023-01-16
(62)【分割の表示】P 2019562219の分割
【原出願日】2018-01-30
(31)【優先権主張番号】62/451,920
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519272916
【氏名又は名称】アップ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ユン-ニエン チャン
(57)【要約】
【課題】 疾患を処置する方法を提供すること
【解決手段】 本明細書において記載されているのは、ユビキチン受容体ADRM1/RPN13またはプロテアソームDUB酵素(USP14、UCH37およびRPN11)のいずれかを介してプロテアソーム機能を阻害し、がん/糖尿病/神経障害の処置に使用され得る、スピロおよび環式ビス-ベンジリジンプロテアソーム阻害剤である。哺乳動物に、治療有効用量の本明細書において記載されている通りの化合物を投与することによって、哺乳動物における疾患を処置する方法も、本明細書において提供される。処置される疾患は、例えば、がんまたは糖尿病または神経障害であってよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
ユビキチン-プロテアソーム系(UPS)は、多くの疾患で変更される、細胞ホメオスタシス、細胞周期進行およびシグナル伝達経路において、極めて重要な役割を果たす。プロテアソームタンパク質と直接結合する低分子によりUPS機能を変調することは、多種多様な疾患、具体的にはがん、糖尿病および神経障害を処置するために有用であり得る。がん細胞の異常代謝を標的化することは、がん療法のための新たなアプローチである。実際に、プロテアソーム阻害剤を用いてタンパク質分解を阻害することはがん療法に十分な治療指数を提供するであろうという初期の疑念にもかかわらず、過去10年間で、20Sプロテアソームの触媒機能を標的化する3つのプロテアソーム阻害剤が、多発性骨髄腫およびマントル細胞リンパ腫を処置するためにFDAによって承認された。しかしながら、固形腫瘍、毒性および抵抗性多発性骨髄腫の出現に対するそれらの限られた効能は、独特で補完的な作用機序を持つ代替的なプロテアソーム阻害剤の探究へと駆り立ててきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
概要
本明細書において提供されるのは、がん/糖尿病/神経障害の処置に使用され得る、ユビキチン受容体ADRM1/RPN13またはプロテアソームDUB酵素(USP14、UCH37およびRPN11)のいずれかを介してプロテアソーム機能を阻害する新しい種類のプロテアソーム阻害剤である、スピロおよび環式ビス-ベンジリジン(bis-benzylidine)低分子(以後、Up I、IIおよびIII、Up化合物)である。Up化合物
は、プロテアソームによる脱ユビキチン化活性および基質認識の阻害を反映して、高分子量ポリユビキチン化タンパク質凝集体の急速および毒性の蓄積をトリガーする、プロテアソームの19S規制粒子と結合する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1図1:Up109およびUp117がプロテアソーム標的ホタルルシフェラーゼレポーターを安定させた。
【0004】
図2図2:Up109およびUp117がポリユビキチンタグ付きタンパク質を蓄積した。
【0005】
図3図3:Up109およびUp117がNFκBシグナル伝達を阻害した。
【0006】
図4図4:Up109およびUp117がRPN13と結合する。
【0007】
図5図5:化合物の処置によるポリUBタンパク質の蓄積:(A)Up化合物(1μM)で4時間にわたって処置し、K48連結型抗Ub抗体でイムノブロットしたHeLa細胞;(B)Up化合物(1μM)で12時間にわたって処置し、抗Ub抗体でイムノブロットしたOV2008細胞;(C)Up化合物で4時間にわたって処置し、抗Ub抗体でイムノブロットしたLNCaP細胞。
【0008】
図6図6:Up109処置による4UBFLレポータータンパク質の安定化。
【0009】
図7図7:Up109がRPN13と結合する。
【0010】
図8A図8:(A)Up109で12時間にわたって処置したES2細胞におけるCHOP-10定量化;(B)Up109およびボルテゾミブで12時間にわたって処置したES2細胞のFACS分析によるアネキシンV染色。
図8B図8:(A)Up109で12時間にわたって処置したES2細胞におけるCHOP-10定量化;(B)Up109およびボルテゾミブで12時間にわたって処置したES2細胞のFACS分析によるアネキシンV染色。
【0011】
図9図9:BALB/Cマウスに4UBFL遺伝子を電気穿孔法で導入し、Up109で処置し、IVISイメージングを使用してルシフェラーゼ活性を定量化した。
【0012】
図10図10:ES2Lu腫瘍成長に対するUp109のin vivo効能。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
本明細書において提供されるのは、以下に示す式IまたはIIまたはIIIまたはIVのいずれかの構造を有する化合物であって、
【化1】
【化2】
式中、
- Aの各対は、
(i)R1、OR1、NR1R2、S(O)qR1、SONR1R2、NR1SOR2、C(O)R1、C(O)OR1、C(O)NR1R2、NR1C(O)R2、NR1C(O)OR2、CFおよびOCFからなる群から選択される1~5個の置換基で必要に応じて置換されているフェニル;
(ii)R1、OR1、NR1R2、S(O)qR1、SONR1R2、NR1SOR2、C(O)R1、C(O)OR1、C(O)NR1R2、NR1C(O)R2、NR
1C(O)OR2、CFおよびOCFからなるものから選択される1~5個の置換基で必要に応じて置換されているナフチル;
(iii)R1、OR1、NR1R2、S(O)qR1、SONR1R2、NR1SOR2、C(O)R1、C(O)OR1、C(O)NR1R2、NR1C(O)R2、NR1C(O)OR2、CFおよびOCFからなる群から選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されている、O、NおよびSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を有する5または6員の単環式ヘテロアリール基;、ならびに
(iv)O、NおよびSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を含有する8から10員の二環式ヘテロアリル基;第2の環は、3から4個の炭素原子を使用して第1の環と縮合しており、前記二環式ヘテロアリール基は、R1、OR1、NR1R2、S(O)qR1、SONR1R2、NR1SOR2、C(O)R1、C(O)OR1、C(O)NR1R2、NR1C(O)R2、NR1C(O)OR2、CFおよびOCFからなる群から選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されている;
(v)任意の基がR1またはR2に属する
のうちの1つであり、
- nは、0~4の範囲の原子数(0、1、2、3、4)を表し、炭素、窒素または酸素であることができる。窒素の場合、これは、NH、NR1またはNR2であることができ;
- Xは、水素、OR1またはNPであり、ここで、Pは、R1、C(O)R1、C(O)OR1、C(O)NR1R2、S-N(R1)COOR1およびS-N(R1)からなる群から選択され、Yは、O、S、NR1およびCR1R2からなる群から選択され、ここで、R1およびR2は、水素、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、ハロゲン、シアノおよびC1~C14直鎖状または分枝鎖状アルキル基からなる群から選択され、これらはCi~C4直鎖状または分枝鎖状アルキル、最大ペルハロ置換されているC1~C14直鎖状または分枝鎖状アルキル、Ci~Ci4アルコキシ、水素、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、C1~C14アルキルアミノ、C-i~C-nジアルキルアミノ、ハロゲンおよびシアノからなる群から選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されており;
- Zは、水素;C1からC14直鎖状、分枝鎖状または環式アルキル;アルケニル、フェニル;ベンジル、1~5置換ベンジル、CiからC3アルキル-フェニル{ここで、アルキル部分は、最大ペルハロまでハロゲンで必要に応じて置換されている};最大ペルハロ置換されているC1からC14直鎖状または分枝鎖状アルキル;-(CH2)q-K{ここで、Kは、酸素、窒素および硫黄から選択される1から4個の原子を含有し、飽和、部分飽和もしくは芳香族である、5もしくは6員の単環式ヘテロ環式環、または、O、NおよびSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を有する8から10員の二環式ヘテロアリールであり、前記アルキル部分は、最大ペルハロまでハロゲンで必要に応じて置換されており、変数qは、0から4までの範囲の整数である}からなる群から選択され;
- Bは、(i)R1、C(O)R1、C(O)OR1、C(O)NR1R2、S-N(R)COOR1、S-N(R1)COO(B)、S(B)であり;ここで、ペルハロ置換されているC1~C14直鎖状または分枝鎖状アルキル以外の各R1~R2は、C-1~C14直鎖状または分枝鎖状アルキル、最大ペルハロ置換されているC1~C14直鎖状または分枝鎖状アルキル、C1~C3アルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、C1~C3アルキルアミノ、C1~C6ジアルキルアミノ、ハロゲン、シアノからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されており;
- Rは、H、C1~6-アルキル、C2~6-アルケニル;C1~3-アルコキシ-C1~6-アルキル-;C1~3-アルコキシ-C2~6-アルケニル-;アリール-C0~6-アルキル-;ヘテロアリール-C0~6-アルキル-;ヘテロシクリル-C0~6-アルキル-;シクロアルキル-C0~6-アルキル-;---C1~6-アルキル-COOC1~6-アルキル;----C2~6-アルキル-アリールオキシ;C1~6
アルキル-ヘテロアリール;C1~6-アルキル-ヘテロシクリル;C1~6-アルキル-シクロアルキル;C1~6-アルキル-アリール;COR、{ここで、Rは、C1~6-アルキル;C2~6-アルケニル;C1~6-アルコキシ;C1~3-アルコキシ-C1~6-アルキル-;C1~3-アルコキシ-C2~6-アルケニル-;アリール-C0~6-アルキル-;ヘテロアリール-C0~6-アルキル-;ヘテロシクリル-C0~6-アルキル-;シクロアルキル-C0~6-アルキル-;-C1~6-アルキル-COOC1~6-アルキル;NH;-NHC1~6-アルキル;-N(C1~6-アルキル);-C0~6-アルキル-アリールオキシから選択される}である、
化合物である。
【0014】
本明細書において記載されている化合物は、DUB阻害剤またはプロテアソーム受容体阻害剤のいずれかとして、プロテアソームタンパク質と結合する。
【0015】
哺乳動物に、有効量の本明細書において開示されている化合物を投与することによって、哺乳動物におけるプロテアソームを阻害する方法も、本明細書において提供される。本明細書において使用される場合、用語「哺乳動物」は、例えば、ヒト、イヌおよびネコを含む。
【0016】
哺乳動物に、治療有効用量の本明細書において記載されている通りの化合物を投与することによって、哺乳動物における疾患を処置する方法も、本明細書において提供される。処置される疾患は、例えば、がんまたは糖尿病または神経障害であってよい。
【0017】
本明細書において開示されている化合物は、医療専門家によって決定できるように、単独で、または少なくとも1つの他の治療剤もしくは放射線と組み合わせて、有用に投与されてよい。
【0018】
本明細書において記載されている要件を満たす例示的な化合物は、下記:
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
を含む。
【実施例0019】
(実施例1)
Up治療用化合物(Up化合物)によるがん細胞増殖およびコロニー形成の阻害
MTTアッセイによって指し示される通り、Up化合物によるがん細胞の処置は、細胞増殖を阻害した。簡潔に述べると、がん細胞をUp化合物とともに24または48または72時間の期間にわたってインキュベートし、MTTアッセイを使用して細胞生存率を測定した。化合物のIC50を表1に載せる。また、Up109およびUp117も、それらのIC50値に対応するOV2008およびA2780がん細胞において、コロニー形成を有意に阻止した。両化合物は、SKOV3およびそのタキソール耐性系(SKOV3-TR)において同様に活性であったのに対し、タキソールは、7倍の差異を示した。
【表1】
(実施例2)
【0020】
生細胞におけるプロテアソーム機能を測定するために、本発明者らは、変異型ユビキチン(ユビキチンG76V)遺伝子の4つの複製がホタルルシフェラーゼ(FL)遺伝子のN末端と縮合している、遺伝子操作されたユビキチン-ホタル(4Ub-FL)レポーターを利用した。図1に示されているこの実験の結果は、4Ub-FLレポータータンパク質が、プロテアソームによって急速に分解されることを明らかにしている。重要なことに、4Ub-FL遺伝子を発現している293TT細胞のプロテアソーム阻害剤による処置は、その安定化およびルシフェラーゼ活性の増大をもたらす。興味深いことに、Up109およびUp117の処置は、用量依存性様式で、RA190よりも大きい4Ub-FL生物発光の増大を生成した。Up109は、13倍の生物発光の増大を示すのに対し、Up117およびRA190では、処置前と比較して、それぞれ11倍および5倍の増大が観察された。
(実施例3)
【0021】
ポリユビキチン化タンパク質の蓄積は、プロテアソーム阻害の一般的な現象である。本発明者らは、抗K48連結型ユビキチンイムノブロット分析により、HeLa細胞におけるポリユビキチン化タンパク質のレベルに対するこれらの化合物の影響を検査した。図2に示されているこの実験の結果は、Up109またはUp117によるHeLa細胞の処置(4時間)が、RA190と同様にK48連結型ポリユビキチン化タンパク質のレベルを劇的に増大させたことを明らかにしている。しかしながら、化合物への曝露後に観察さ
れた、蓄積したK48ポリユビキチン化タンパク質は、ボルテゾミブ処置細胞において見られたものよりも高い分子量を呈し、より急速に現れた。これらの結果は、子宮頸がん細胞においてUp109およびUp117によって与えられた毒性が、高分子量ポリユビキチン化タンパク質の以前の蓄積に関連し、ボルテゾミブとは異なる機序によって現れることを示唆している。
(実施例4)
【0022】
NFκBは、高悪性度子宮頸部上皮内新生物(CIN)および子宮頸がんを含む多くのがんにおいて、構成的に活性化される。NFκBレポーター構築物を担持する293細胞の、ヒトTNF-aによる刺激は、レポーター活性の増大につながり、Up109、UP117およびRA190は、TNF-aによる刺激後、レポーター活性の有意な用量依存性減少を生成した(図3)。TNF-aの存在下でのUp109およびUp117による処置後、HeLa細胞においてIkB-aの安定化が観察された。
(実施例5)
【0023】
細胞内標的を同定するために、RA190Bプローブを使用して競合アッセイを実施した。先に、本発明者らは、ビオチン化RA190(RA190B)がRPN13と共有結合することを示した。本発明者らは、RA190Bをプローブとして使用して、RPN13と結合しているUp化合物を決定した。HeLa細胞溶解物をUp109またはUp117で前処置し、次いで、その後、RA190Bで処置した。溶解物を還元条件下で変性させ、タンパク質をゲル上で分離させ、HRPストレプトアビジンでプローブした。図4は、Up109およびUP117の存在下での42kDaタンパク質のRA190B標識化の消失が、RPN13との結合についてRA190Bとの競合を指し示していることを示す。
(実施例6)
Up化合物はポリユビキチン化(Ubiquinated)タンパク質をin vitroで蓄積
した
【0024】
ポリユビキチン化タンパク質の蓄積は、プロテアソーム阻害の一般的な現象である。本発明者らは、抗ユビキチンイムノブロット分析により、ポリユビキチン化タンパク質がん細胞のレベルに対するこれらの化合物の影響を検査した。がん細胞系(HeLa、OV2008およびLNCaP)をUp化合物で指し示されている時間にわたって処置し、細胞を溶解させ、ウエスタンブロット分析に供した。抗ユビキチン抗体を用いるイムノブロットは、処置細胞におけるポリユビキチン化タンパク質の蓄積を示す(図5)。HeLa細胞を、K48連結を介してユビキチン(ubiqiuitin)でタグ付けされたタンパク質を認識する、K48連結型抗Ub抗体でプローブした。基質タンパク質に結合しているK48連結型ポリユビキチン鎖は、多くの場合、26Sプロテアソームによる基質の標的化および破壊のための認識配列としての働きをする。OV2008およびLNCaP細胞を、抗Ub抗体でプローブした。
(実施例7)
Up109はプロテアソーム依存性レポータータンパク質を安定させた
【0025】
生細胞におけるプロテアソーム機能を測定するために、本発明者らは、変異型ユビキチン(ユビキチンG76V)遺伝子の4つの複製がホタルルシフェラーゼ(FL)遺伝子のN末端と縮合している、遺伝子操作されたユビキチン-ホタル(4Ub-FL)レポーターを利用した。4Ub-FLレポータータンパク質は、プロテアソームによって急速に分解される(図6)。重要なことに、4Ub-FL遺伝子を発現している293TT細胞のUp109による処置は、その安定化およびルシフェラーゼ活性の増大をもたらす。Up109の処置は、用量依存性様式で、より大きい4Ub-FL生物発光の増大を生成した。
(実施例8)
Up109およびUp117はRPN13と結合する
【0026】
細胞内標的を同定するために、RA190Bプローブを使用して競合アッセイを実施した。先に、本発明者らは、ビオチン化RA190(RA190B)がRPN13と共有結合することを示した。本発明者らは、RA190Bをプローブとして使用して、RPN13と結合しているUp化合物を決定した。OV2008細胞溶解物をUp化合物(25μM)で前処置し、次いで、その後、RA190B(5μM)で処置した。溶解物を還元条件下で変性させ、タンパク質をゲル上で分離させ、HRPストレプトアビジンでプローブした。Up109およびUP117の存在下でのRPN13タンパク質のRA190B標識化の消失は、RPN13との結合についてRA190Bとの競合を指し示している(図7)。
(実施例9)
Up109はERストレスおよびアポトーシスを上昇させた
【0027】
プロテアソーム機能の阻害時におけるアンフォールドタンパク質の蓄積は、小胞体(ER)ストレスを急速に誘発する。ERストレスは、アンフォールドタンパク質応答(UPR)を構成するシグナル伝達事象の進化的に保存されたシリーズをトリガーする。UPRは、ERにおける蓄積したアンフォールドタンパク質を排除することによってタンパク質ホメオスタシスを回復させようと試みるが、タンパク質ホメオスタシスを回復させることができなければ、アポトーシスがトリガーされる。C/EBP相同タンパク質(CHOP)は、UPR誘発性プログラム細胞死の発生時に上昇する。ES2細胞のUp109処置は、CHOP-10 mRNA発現を急速に上方調節した(図8A)。アネキシンV陽性細胞は、Up109処置によるアポトーシスの上昇を指し示している(図8B)。
(実施例10)
Up109は4UBFLをin vivoで安定させた:
【0028】
Up109によるプロテアソーム阻害についてin vivoで試験するために、生きているBalb/cマウスの筋肉細胞に、電気穿孔法により、4UbFLレポーターDNA構築物を形質導入した。ルシフェリンの腹腔内注射後、トランスフェクトされた筋肉組織におけるルシフェラーゼの酵素(enzymic)活性を、IVISイメージャーを使用して
、生物発光として可視化した。4UbFL DNAの電気穿孔法の2日後に、マウスを撮像し、ベースライン発光を記録した。対照群(n=5)のマウスをビヒクル単独で腹腔内処置し、別の群(n=5)をUp109(40mg/Kg)で腹腔内処置した。処置後4時間、24時間および48時間後のマウスを再度撮像し、発光を定量化した(図9)。この結果は、(1)Up109が固形組織への良好なアクセシビリティを有すること、(2)Up109が潜在的に1日おきで投薬され得ることを指し示している。
(実施例11)
用量制限毒性研究
【0029】
臨床効果を誘発し許容される毒性で動作する最適用量を同定するために、雌Balb/C系統マウスに対し、Up109を用いて一連の実験を実施した。マウスの個体群(n=3)に、漸増単回用量のUp109(3、10、20、40および100mg/Kg)を腹腔内注射し、エンドポイント評価は、臨床的観察および体重を含んでいた。有害作用の臨床的に明らかな兆候は、Up109では見られなかった。1日おきで2週間にわたるUp109(40mg/Kg、n=5)の繰り返し腹腔内投薬を用いて、別の実験を行った。観察可能な毒性/体重損失は見られなかった。
(実施例12)
ES2卵巣腫瘍成長に対するUp109のin vivo効能
【0030】
ヒト卵巣がんES2異種移植モデルを処置するUp109の効能を試験するために、ルシフェラーゼ発現ES2細胞(ES2-Lu)をヌード雌マウスの腹膜腔に(すなわち同所性)接種した。接種の2日後に、マウスをそれらの基礎的発光活性について撮像し、次いで、2つの群(n=10)に無作為化した。第1の群をビヒクルで処置し、第2の群をUp109(10mg/Kg)により隔日で2週間にわたって処置した。マウスを、第1および第2週の処置後、それらのルシフェラーゼ活性について撮像した。図6に指し示される通り、Up109は、ビヒクルと比較して腫瘍負荷を有意に低減させ、体重損失およびいかなる観察可能な副作用もなかった。ビヒクル群マウスにおける腫瘍負荷は過剰であり、処置終了時に犠牲にした(図10)。
(実施例13)
Up化合物一般合成スキーム
【化7】
【0031】
反応条件:(a)置換アルデヒド、NaOH、エタノール;(b)ジオキサン中4M HCl;(c)酸塩化物、DCM、トリエチルアミンまたは酸、HOBt、HBTU、DMF、DIPEA;(d)臭化アルキル、アセトン、KCO;(e)塩化スルホニル、DCM、トリエチルアミン。R=芳香環上の異なる置換基。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
式IまたはIIまたはIIIまたはIVのいずれかの構造を有する化合物であって、
【化8】

式中、
Aの各対は、
(i)R1、OR1、NR1R2、S(O)qR1、SO NR1R2、NR1SO R2、C(O)R1、C(O)OR1、C(O)NR1R2、NR1C(O)R2、NR1C(O)OR2、CF およびOCF からなる群から選択される1~5個の置換基で必要に応じて置換されているフェニル;
(ii)R1、OR1、NR1R2、S(O)qR1、SO NR1R2、NR1SO R2、C(O)R1、C(O)OR1、C(O)NR1R2、NR1C(O)R2、NR1C(O)OR2、CF およびOCF からなるものから選択される1~5個の置換基で必要に応じて置換されているナフチル;
(iii)R1、OR1、NR1R2、S(O)qR1、SO NR1R2、NR1SO R2、C(O)R1、C(O)OR1、C(O)NR1R2、NR1C(O)R2、NR1C(O)OR2、CF およびOCF からなる群から選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されている、O、NおよびSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を有する5または6員の単環式ヘテロアリール基;ならびに
(iv)O、NおよびSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を含有する8から10員の二環式ヘテロアリル基;第2の環は、3から4個の炭素原子を使用して第1の環と縮合しており、前記二環式ヘテロアリール基は、R1、OR1、NR1R2、S(O)qR1、SO NR1R2、NR1SO R2、C(O)R1、C(O)OR1、C(O)NR1R2、NR1C(O)R2、NR1C(O)OR2、CF およびOCF からなる群から選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されている;
(v)任意の基がR1またはR2に属する
のうちの1つであり、
nは、0~4の範囲の原子数(0、1、2、3、4)を表し、C、NまたはOであることができ、ここで、nがNである場合、これは、NH、NR1またはNR2であることができ;
Xは、水素、OR1またはNPであり、ここで、Pは、R1、C(O)R1、C(O)
OR1、C(O)NR1R2、S-N(R1)COOR1およびS-N(R1)からなる群から選択され、Yは、O、S、NR1およびCR1R2からなる群から選択され、ここで、R1およびR2は、水素、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、ハロゲン、シアノおよびC1~C14直鎖状または分枝鎖状アルキル基からなる群から選択され、これらはCi~C4直鎖状または分枝鎖状アルキル、最大ペルハロ置換されているC1~C14直鎖状または分枝鎖状アルキル、Ci~Ci4アルコキシ、水素、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、C1~C14アルキルアミノ、C-i~C-nジアルキルアミノ、ハロゲンおよびシアノからなる群から選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されており;
Zは、水素;C1からC14直鎖状、分枝鎖状または環式アルキル;アルケニル、フェニル;ベンジル、1~5置換ベンジル、CiからC3アルキル-フェニル{ここで、アルキル部分は、最大ペルハロまでハロゲンで必要に応じて置換されている};最大ペルハロ置換されているCiからC14直鎖状または分枝鎖状アルキル;-(CH2)q-K{ここで、Kは、酸素、窒素および硫黄から選択される1から4個の原子を含有し、飽和、部分飽和もしくは芳香族である、5もしくは6員の単環式ヘテロ環式環、または、O、NおよびSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を有する8から10員の二環式ヘテロアリールであり、前記アルキル部分は、最大ペルハロまでハロゲンで必要に応じて置換されており、変数qは、0から4までの範囲の整数である}からなる群から選択され;
Bは、(i)R1、C(O)R1、C(O)OR1、C(O)NR1R2、S-N(R)COOR1、S-N(R1)COO(B)、S(B)であり;ここで、ペルハロ置換されているC1~C14直鎖状または分枝鎖状アルキル以外の各R1~R2は、C-1~C14直鎖状または分枝鎖状アルキル、最大ペルハロ置換されているC1~C14直鎖状または分枝鎖状アルキル、C1~C3アルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、C1~C3アルキルアミノ、C1~C6ジアルキルアミノ、ハロゲン、シアノからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されており;
は、H、C 1~6 -アルキル、C 2~6 -アルケニル;C 1~3 -アルコキシ-C 1~6 -アルキル-;C 1~3 -アルコキシ-C 2~6 -アルケニル-;アリール-C 0~6 -アルキル-;ヘテロアリール-C 0~6 -アルキル-;ヘテロシクリル-C 0~6 -アルキル-;シクロアルキル-C 0~6 -アルキル-;---C 1~6 -アルキル-COOC 1~6 -アルキル;----C 2~6 -アルキル-アリールオキシ;C 1~6 -アルキル-ヘテロアリール;C 1~6 -アルキル-ヘテロシクリル;C 1~6 -アルキル-シクロアルキル;C 1~6 -アルキル-アリール;COR 、{ここで、R は、C 1~6 -アルキル;C 2~6 -アルケニル;C 1~6 -アルコキシ;C 1~3 -アルコキシ-C 1~6 -アルキル-;C 1~3 -アルコキシ-C 2~6 -アルケニル-;アリール-C 0~6 -アルキル-;ヘテロアリール-C 0~6 -アルキル-;ヘテロシクリル-C 0~6 -アルキル-;シクロアルキル-C 0~6 -アルキル-;-C 1~6 -アルキル-COOC 1~6 -アルキル;NH ;-NHC 1~6 -アルキル;-N(C 1~6 -アルキル) ;-C 0~6 -アルキル-アリールオキシから選択される}である、化合物。
(項2)
DUB阻害剤またはプロテアソーム受容体阻害剤のいずれかとして、プロテアソームタンパク質と結合する、上記項1に記載の化合物。
(項3)
前記化合物が、式
【化9】

を有する、上記項1に記載の化合物。
(項3)
哺乳動物に、有効量の上記項1に記載の化合物を投与することによって、前記哺乳動物におけるプロテアソームを阻害する方法。
(項4)
哺乳動物に、治療有効用量の上記項1に記載の化合物を投与することによって、前記哺乳動物における疾患を処置するまたは方法。
(項5)
前記哺乳動物が、ヒトまたはイヌまたはネコである、上記項4に記載の方法。
(項6)
前記疾患が、がんまたは糖尿病または神経障害の一種である、上記項4に記載の方法。
(項7)
上記項1に記載の化合物が、単独で、または少なくとも1つの他の治療剤もしくは放射線と組み合わせて、投与される、上記項4に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】
からなる群から選択される、化合物。
【請求項2】
DUB阻害剤またはプロテアソーム受容体阻害剤のいずれかとして、プロテアソームタンパク質と結合する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物を含む、哺乳動物におけるプロテアソームを阻害するための組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物を含む、哺乳動物における多発性骨髄腫、前立腺がん、卵巣がん、トリプルネガティブ乳がん、子宮頸がん、または肝臓がんを処置するための組成物。
【請求項5】
前記哺乳動物が、ヒトまたはイヌまたはネコである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、単独で、または少なくとも1つの他の治療剤もしくは放射線と組み合わせて、投与されることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記化合物が、式
【化5】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【外国語明細書】