(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033469
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/22 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
B60C9/22 C
B60C9/22 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005001
(22)【出願日】2023-01-17
(62)【分割の表示】P 2019112964の分割
【原出願日】2019-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】菱ヶ江 明
(72)【発明者】
【氏名】林 徹
(57)【要約】
【課題】タイヤライフを伸ばしつつ、グリップ力をさらに向上させたタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ10は、ベルト層50と、ベルト層50のタイヤ径方向外側に設けられる補強層100とを備える。補強層100は、複数のコードを有するストリップ部材がタイヤ周方向に沿って巻き廻された内側補強層110と、複数のコードを有するストリップ部材がタイヤ周方向に沿って巻き廻され、内側補強層110のタイヤ径方向外側に設けられる外側補強層120とを有する。外側補強層120は、タイヤ幅方向において隣り合わせとなるストリップ部材間に空隙G1を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ幅方向における一端から他端に亘って設けられるベルト層と、
前記ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられる補強層と、
タイヤライフに配慮した材料を用いたトレッドと
を備え、
前記補強層は、
複数のコードを有するストリップ部材がタイヤ周方向に沿って巻き廻された内側補強層と、
複数のコードを有するストリップ部材がタイヤ周方向に沿って巻き廻され、前記内側補強層のタイヤ径方向外側に設けられる外側補強層と
を有し、
前記内側補強層または前記外側補強層の少なくとも何れかは、タイヤ幅方向において隣り合わせとなる前記ストリップ部材間に空隙を有し、
前記外側補強層は、タイヤ赤道線からトレッド幅の半分の30%までの領域であるタイヤ幅方向のセンター領域において、少なくとも前記空隙を有し、
前記内側補強層は、少なくとも前記センター領域において、前記空隙を有さずに前記ストリップ部材が連続して設けられる連続部分を有し、
前記外側補強層は、前記ベルト層のタイヤ幅方向における端部と重なる領域において、前記空隙を有さずに前記ストリップ部材が連続して設けられる連続部分を有するタイヤ。
【請求項2】
タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ幅方向における一端から他端に亘って設けられるベルト層と、
前記ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられる補強層と、
タイヤライフに配慮した材料を用いたトレッドと
を備え、
前記補強層は、
複数のコードを有するストリップ部材がタイヤ周方向に沿って巻き廻された内側補強層と、
複数のコードを有するストリップ部材がタイヤ周方向に沿って巻き廻され、前記内側補強層のタイヤ径方向外側に設けられる外側補強層と
を有し、
前記内側補強層または前記外側補強層の少なくとも何れかは、タイヤ幅方向において隣り合わせとなる前記ストリップ部材間に空隙を有し、
前記外側補強層は、タイヤ赤道線からトレッド幅の半分の30%までの領域であるタイヤ幅方向のセンター領域において、少なくとも前記空隙を有し、
前記内側補強層は、少なくとも前記センター領域において、前記空隙を有さずに前記ストリップ部材が連続して設けられる連続部分を有し、
前記空隙の幅は、前記ストリップ部材の幅よりも狭いタイヤ。
【請求項3】
タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ幅方向における一端から他端に亘って設けられるベルト層と、
前記ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられる補強層と、
タイヤライフに配慮した材料を用いたトレッドと
を備え、
前記補強層は、
複数のコードを有するストリップ部材がタイヤ周方向に沿って巻き廻された内側補強層と、
複数のコードを有するストリップ部材がタイヤ周方向に沿って巻き廻され、前記内側補強層のタイヤ径方向外側に設けられる外側補強層と
を有し、
前記内側補強層または前記外側補強層の少なくとも何れかは、タイヤ幅方向において隣り合わせとなる前記ストリップ部材間に空隙を有し、
前記外側補強層は、タイヤ赤道線からトレッド幅の半分の30%までの領域であるタイヤ幅方向のセンター領域において、少なくとも前記空隙を有し、
前記内側補強層は、少なくとも前記センター領域において、前記空隙を有さずに前記ストリップ部材が連続して設けられる連続部分を有し、
前記空隙と前記ストリップ部材の幅とは、1:2の関係を有するタイヤ。
【請求項4】
タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ幅方向における一端から他端に亘って設けられるベルト層と、
前記ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられる補強層と、
タイヤライフに配慮した材料を用いたトレッドと
を備え、
前記補強層は、
複数のコードを有するストリップ部材がタイヤ周方向に沿って巻き廻された内側補強層と、
複数のコードを有するストリップ部材がタイヤ周方向に沿って巻き廻され、前記内側補強層のタイヤ径方向外側に設けられる外側補強層と
を有し、
前記内側補強層または前記外側補強層の少なくとも何れかは、タイヤ幅方向において隣り合わせとなる前記ストリップ部材間に空隙を有し、
前記外側補強層は、タイヤ赤道線からトレッド幅の半分の30%までの領域であるタイヤ幅方向のセンター領域において、少なくとも前記空隙を有し、
前記内側補強層は、少なくとも前記センター領域において、前記空隙を有さずに前記ストリップ部材が連続して設けられる連続部分を有し、
前記センター領域における前記ストリップ部材間の空隙は、前記センター領域以外の領域における前記ストリップ部材間の空隙よりも広いタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ走行に適したタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の交錯ベルト層のタイヤ径方向外側に、複数のコードをゴム引きしたストリップ状の部材(ストリップ部材)をタイヤ周方向に沿って巻き廻した補強層を有する空気入りタイヤ(以下、タイヤと適宜省略する)が知られている(特許文献1)。
【0003】
このようなタイヤによれば、高速走行時に発生する遠心力によるタイヤの径成長が抑制されるため、高速走行時における操縦安定性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したタイヤによれば、高速走行時における操縦安定性が向上するが、近年では、車両の性能向上に伴って、特にスポーツ走行に用いられるタイヤでは、高速走行時における操縦安定性と路面のグリップ力との向上をより高い次元で両立することが市場から求められている。また、スポーツ走行といえども、特に一般ユーザが使用するタイヤの場合、タイヤライフの向上も重要である。
【0006】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、タイヤライフを伸ばしつつ、グリップ力をさらに向上させたタイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、タイヤ(空気入りタイヤ10)であって、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ幅方向における一端から他端に亘って設けられるベルト層(ベルト層50)と、前記ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられる補強層(例えば、補強層100)とを備え、前記補強層は、複数のコード(コード112)を有するストリップ部材(ストリップ部材111)がタイヤ周方向に沿って巻き廻された内側補強層(内側補強層110)と、複数のコード(コード122)を有するストリップ部材(ストリップ部材121)がタイヤ周方向に沿って巻き廻され、前記内側補強層のタイヤ径方向外側に設けられる外側補強層(外側補強層120)とを有し、前記内側補強層または前記外側補強層の少なくとも何れかは、タイヤ幅方向において隣り合わせとなる前記ストリップ部材間に空隙(空隙G1)を有する。
【発明の効果】
【0008】
上述したタイヤによれば、タイヤライフを伸ばしつつ、グリップ力をさらに向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、空気入りタイヤ10の断面図である。
【
図2】
図2は、トレッド20のショルダー部分を含む空気入りタイヤ10の一部拡大断面図である。
【
図3】
図3は、補強層100の一部拡大断面図である。
【
図4】
図4は、変更例に係る補強層100Aの一部拡大断面図である。
【
図5】
図5は、変更例に係る補強層100Bの一部拡大断面図である。
【
図6】
図6は、変更例に係る補強層100Cの一部拡大断面図である。
【
図7】
図7は、変更例に係るトレッド20のショルダー部分を含む空気入りタイヤ10Aの一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0011】
(1)タイヤの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10の断面図である。具体的には、
図1は、空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。なお、
図1では、断面ハッチングの図示は省略されている(以下同)。
【0012】
図1に示すように、空気入りタイヤ10は、トレッド20、タイヤサイド部30、カーカス40、ベルト層50、ビード部60及び補強層100を備える。
【0013】
本実施形態では、空気入りタイヤ10は、四輪自動車、具体的には、乗用自動車に装着されることを前提としたタイヤである。特に、空気入りタイヤ10は、スポーツ走行(サーキットを含む)に向いているスポーツタイプなどの四輪自動車に好適に用い得る。
【0014】
トレッド20は、路面と接する部分である。トレッド20には、空気入りタイヤ10の使用環境や装着される車両の種別に応じたパターン(不図示)が形成される。
【0015】
タイヤサイド部30は、トレッド20に連なり、トレッド20のタイヤ径方向内側に位置する。タイヤサイド部30は、トレッド20のタイヤ幅方向外側端からビード部60の上端までの領域である。タイヤサイド部30は、サイドウォールなどと呼ばれることもある。
【0016】
カーカス40は、空気入りタイヤ10の骨格を形成する。カーカス40は、タイヤ径方向に沿って放射状に配置されたカーカスコード(不図示)がゴム材料によって被覆されたラジアル構造である。但し、ラジアル構造に限定されず、カーカスコードがタイヤ径方向に交錯するように配置されたバイアス構造でも構わない。カーカス40は、本体部41と、折り返し部42とを有する。
【0017】
本体部41は、トレッド20、タイヤサイド部30及びビード部60に亘って設けられ、ビード部60において折り返されるまでの部分である。
【0018】
折り返し部42は、本体部41に連なり、ビードコア61を介してタイヤ幅方向外側に折り返された部分である。折り返し部42のタイヤ径方向における外側端42eは、ベルト層50のタイヤ径方向内側まで延びている。すなわち、カーカス40には、エンベロープ構造が採用されている。
【0019】
但し、カーカス40は、必ずしもエンベロープ構造でなくてもよく、例えば、外側端42eがベルト層50まで到達せず、ベルト層50よりもタイヤ径方向内側に位置、具体的には、タイヤサイド部30のタイヤ最大幅付近に位置するハイターンナップ構造でも構わない。
【0020】
カーカスコードは、一般的な四輪自動車向けのタイヤと同様に、ナイロンなどの有機繊維を用いて形成される。なお、本実施形態では、カーカス40は、複数枚のプライ(カーカスプライ)を用いて構成される。
【0021】
ベルト層50は、トレッド20のタイヤ径方向内側、具体的には、補強層100のタイヤ径方向内側に設けられる。
【0022】
ベルト層50は、タイヤ幅方向における一端から他端に亘って設けられる。具体的には、ベルト層50は、トレッド20の一方のショルダー部分21(
図1において不図示、
図2参照)から他方のショルダー部分(不図示)に亘って設けられる。ショルダー部分とは、トレッド20とタイヤサイド部30との境界を含む領域と定義されてもよい。
【0023】
本実施形態では、ベルト層50は、スチールなどの金属製のコード(不図示)が交錯する一対の交錯ベルトによって構成される。但し、ベルト層50は、必ずしも交錯ベルトによって構成されていなくてもよい。また、カーカス40がバイアス構造の場合、ベルト層50は、備えられていなくても構わない。
【0024】
例えば、ベルト層50は、金属材料(例えば、スチール)によって形成された補強コードが樹脂によって被覆された単層のスパイラルベルトであってもよい。すなわち、ベルト層50は、カーカス40のタイヤ径方向外側に設けられ、空気入りタイヤ10にスリップ角が付与された場合に、コーナリングフォース(CF)の発生、カーカス40の剛性確保などに貢献する構造であればよい。
【0025】
また、ベルト層50は、一般的な同種の空気入りタイヤに用いられるベルト層よりも剛性が低くてもよい。具体的には、ベルト層50は、一対の交錯ベルトのベルト面内せん断剛性(単に、面内せん断剛性と呼んでもよい)が一般的な同種の空気入りタイヤに用いられる交錯ベルト層よりも低くしてよい。このようなベルト層50によって、トレッド20の接地面積の増大に寄与する。
【0026】
また、このようなベルト層50は、外力によって変形し易くなるが、捻れなどには強いことが求められる。例えば、ベルト層50を構成するコードの直径(線径)を一般的な同種の空気入りタイヤに用いられる交錯ベルト層よりも細くすることによって、このような特性をベルト層50に付与し得る。
【0027】
ビード部60は、タイヤサイド部30に連なり、タイヤサイド部30のタイヤ径方向内側に位置する。ビード部60は、タイヤ周方向に延びる円環状であり、リムホイール(不図示)に係止される。ビード部60は、ビードコア61と、ビードフィラー62とを含む。
【0028】
ビードコア61は、複数の金属コードが撚られることによって形成される。例えば、ビードコア61は、スチールのコードによって形成できる。コード本数(芯数)は、特に限定されない。
【0029】
ビードフィラー62は、ビードコア61のタイヤ径方向外側に設けられる。ビードフィラー62は、ゴムを用いて形成される他の部分よりも硬質なゴム(或いは樹脂)を用いて形成される。ビードフィラー62は、カーカス40の本体部41と折り返し部42とによって形成された断面形状が楔形の空間を埋めるように設けられる。ビードフィラー62は、スティフナーと呼ばれてもよい。
【0030】
ビード部60のタイヤ幅方向外側面には、リムライン90が設けられる。リムライン90は、ビード部60がリムホイールに正しく装着されているかを確認するために、タイヤ周方向に沿って形成される凸部である。
【0031】
ベルト層50のタイヤ径方向外側には、補強層100が設けられる。具体的には、補強層100は、トレッド20のタイヤ径方向内側に設けられる。
【0032】
補強層100は、タイヤ径方向内側に設けられる層(プライと呼んでもよい)と、タイヤ径方向外側に設けられる層との二層構造である。補強層100は、複数のコードをゴム引きしたストリップ部材をタイヤ周方向に沿って複数回巻き廻すことに形成される。
【0033】
このような補強層100は、キャップまたはレイヤー、キャップ&レイヤーなどとも呼ばれることもある。
【0034】
図2は、トレッド20のショルダー部分を含む空気入りタイヤ10の一部拡大断面図である。
図2に示すように、補強層100は、内側補強層110と外側補強層120とを含む。
【0035】
内側補強層110及び外側補強層120は、複数のコードを有するストリップ部材がタイヤ周方向に沿って巻き廻されることによって形成される。
【0036】
外側補強層120は、内側補強層110のタイヤ径方向外側に設けられる。内側補強層110では、タイヤ幅方向において隣り合わせとなるストリップ部材が密接している。一方、外側補強層120では、タイヤ幅方向において隣り合わせとなるストリップ部材間に空隙(隙間)が設けられている。つまり、外側補強層120では、ストリップ部材がタイヤ幅方向において、間隔を空けて配置されている。
【0037】
補強層100は、トレッド20のショルダー部分21まで設けられる。補強層100は、ベルト層50のタイヤ幅方向の端部50eよりもタイヤ幅方向外側に位置する。
【0038】
また、補強層100は、カーカス40の折り返し部42とタイヤ幅方向において重複するように設けられる。具体的には、折り返し部42の外側端42eは、補強層100のタイヤ幅方向における端部100eよりもタイヤ幅方向内側に位置する。
【0039】
(2)補強層の形状
図3は、補強層100の一部拡大断面図である。具体的には、
図3は、空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った補強層100の一部拡大断面図である。
【0040】
図3に示すように、本実施形態では、補強層100は、内側補強層110と外側補強層120とによって構成される。
【0041】
内側補強層110は、ストリップ部材111がタイヤ周方向に沿って螺旋状にベルト層50のタイヤ径方向外側に巻き付けられることによって形成される。
【0042】
外側補強層120は、ストリップ部材121がタイヤ周方向に沿って螺旋状に内側補強層110のタイヤ径方向外側に巻き付けられることによって形成される。
【0043】
ストリップ部材111は、複数のコード112をゴム材料によって被覆したものである。同様に、ストリップ部材121は、複数のコード122をゴム材料によって被覆したものである。コード112及びコード122は、有機繊維またはスチールなどの金属によって形成できる。有機繊維の場合、例えば、ポリエステル、アラミド繊維などを用いることができる。
【0044】
本実施形態では、ストリップ部材111は、6本のコード112によって構成される。同様に、ストリップ部材121も、6本のコード122によって構成される。なお、ストリップ部材111を構成するコード112の数、及びストリップ部材121を構成するコード122の数は、6本に限定されず、6本より多くてもよいし、6本より少なくてもよい。
【0045】
また、タイヤ幅方向における端部100e(
図2参照)などの一部では、ストリップ部材111を構成するコード112の数、またはストリップ部材121を構成するコード122の数は、これよりも少なくても構わない。
【0046】
本実施形態では、内側補強層110は、タイヤ幅方向における全域において、ストリップ部材111が連続して設けられる(
図1及び
図2も参照)。つまり、隣り合わせとなるストリップ部材111間には、空隙は設けられていない。
【0047】
一方、外側補強層120は、タイヤ幅方向において隣り合わせとなるストリップ部材121間に空隙G1を有する。つまり、ストリップ部材121は、空隙G1を設けてタイヤ周方向に沿って螺旋状に巻き付けられる。
【0048】
また、本実施形態では、複数の空隙G1は全て同一であり、変化しない。また、外側補強層120は、タイヤ赤道線CLを含むタイヤ幅方向のセンター領域CT(
図1参照)において、少なくとも空隙G1を有してもよい。つまり、タイヤ幅方向におけるセンター領域CT以外の領域、例えば、ショルダー部分21(
図2参照)寄りの領域では、外側補強層120は、空隙G1を有していなくてもよい。
【0049】
なお、本実施形態では、センター領域CTとは、タイヤ赤道線CLから、空気入りタイヤ10のトレッド幅(TW)の半分(TW/2)の30%までの領域と定義する。
【0050】
また、本実施形態では、上述したように、内側補強層110は、タイヤ幅方向における全域において、ストリップ部材111が連続して設けられているが、内側補強層110は、少なくともセンター領域CTにおいて、空隙G1を有さずにストリップ部材111が連続して設けられる連続部分115(
図1参照)を有していればよい。
【0051】
図3に示すように、空隙G1の幅は、ストリップ部材121の幅よりも狭くてもよい。本実施形態では、ストリップ部材111及びストリップ部材121のタイヤ幅方向に沿った幅は、6mm程度である。また、空隙G1のタイヤ幅方向に沿った幅は、3mm程度である。
【0052】
また、空隙G1とストリップ部材121の幅とは、1:2程度の関係となることが好ましい。
【0053】
(3)変更例
次に、上述した補強層100の変更例について説明する。具体的には、
図4~
図7を参照して、変更例に係る補強層100A、補強層100B、補強層100C及び補強層100Dの構成について説明する。以下、補強層100と異なる部分について主に説明する。
【0054】
(3.1)変更例1
図4は、変更例に係る補強層100Aの一部拡大断面図である。
図4に示すように、補強層100Aは、内側補強層110と外側補強層120Aとによって構成される。
【0055】
外側補強層120Aは、ストリップ部材121Aによって構成される。ストリップ部材121Aは、補強層100の外側補強層120を構成するストリップ部材121と比較すると、コード122の数が少なく、3本のコード122によって構成されている。
【0056】
また、タイヤ幅方向において隣り合わせとなるストリップ部材121Aには、空隙G2が設けられる。空隙G2は、ストリップ部材121Aのタイヤ幅方向に沿った幅よりも狭いことが好ましい。
【0057】
また、補強層100Aのように、ストリップ部材111を構成するコード112の本数(6本)と、ストリップ部材121Aを構成するコード122の本数(3本)とは、異なっていてもよい。
【0058】
また、ストリップ部材121Aを構成するコード122の本数は、ストリップ部材111を構成するコード112の本数よりも多くてもよいし、少なくてもよい。
【0059】
補強層100Aによれば、補強層100Aの剛性の調整が容易であり、空気入りタイヤ10の径成長の抑制と、接地面積の増大とをバランス良く実現し得る。
【0060】
(3.2)変更例2
図5は、変更例に係る補強層100Bの一部拡大断面図である。
図5に示すように、補強層100Bは、内側補強層110Bと外側補強層120Bとによって構成される。
【0061】
内側補強層110Bは、タイヤ幅方向において隣り合わせとなるストリップ部材111B間に空隙G3を有する。つまり、ストリップ部材111Bは、空隙G3を設けてタイヤ周方向に沿って螺旋状に巻き付けられる。
【0062】
一方、外側補強層120Bは、タイヤ幅方向における全域において、ストリップ部材121Bが連続して設けられる。つまり、隣り合わせとなるストリップ部材121B間には、空隙は設けられていない。
【0063】
補強層100Bのように、外側補強層120Bではなく、内側補強層110Bに空隙G3が設けられてもよい。
【0064】
補強層100Bによれば、空隙が設けられていない外側補強層120Bが内側補強層110Bのタイヤ径方向外側に設けられるため、空気入りタイヤ10の径成長を確実に抑制しつつ、接地面積を増大できる。
【0065】
(3.3)変更例3
図6は、変更例に係る補強層100Cの一部拡大断面図である。
図6に示すように、補強層100Cは、内側補強層110と外側補強層120Cとによって構成される。
【0066】
内側補強層110は、補強層100などと同様に、ストリップ部材111によって構成される。一方、外側補強層120Cも、補強層100と同様に、ストリップ部材121によって構成されるが、ストリップ部材121間の空隙が異なっている。
【0067】
具体的には、外側補強層120Cでは、異なる複数の空隙が設けられている。より具体的には、空隙G4、空隙G5及び空隙G6が設けられている。空隙G5は、空隙G4よりも広く、空隙G6は、空隙G5よりも広い。つまり、空隙G4、空隙G5及び空隙G6は、G4<G5<G6の関係を有する。
【0068】
また、空隙G4は、ショルダー部分21(
図2参照)寄りに設けられ、空隙G6は、タイヤ赤道線CL寄りに設けられる。つまり、ストリップ部材間の空隙は、ショルダー部分21からタイヤ赤道線CLに向かうに連れて広くなってもよい。或いは、センター領域CTにおけるストリップ部材間の空隙は、センター領域CT以外の領域(例えば、ショルダー部分21)におけるストリップ部材間の空隙よりも広くてもよい。
【0069】
補強層100Cによれば、空気入りタイヤ10のショルダー部分の径成長を抑制しつつ、空気入りタイヤ10のセンター領域の接地面積を増大できる。
【0070】
(3.4)変更例4
図7は、変更例に係るトレッド20のショルダー部分を含む空気入りタイヤ10Aの一部拡大断面図である。
図7に示すように、空気入りタイヤ10Aの補強層100Dは、内側補強層110と外側補強層120Dとによって構成される。
【0071】
外側補強層120Dは、ショルダー部分21では、空隙G7を有さずにストリップ部材121が連続して設けられる連続部分125を有する。一方、外側補強層120Dは、ショルダー部分21以外の領域、例えば、タイヤ赤道線CL(
図1参照)寄りでは、タイヤ幅方向において隣り合わせとなるストリップ部材121間に空隙G7を有する。
【0072】
連続部分125が形成される領域は、ショルダー部分21であれば、特に限定されないが、連続部分125は、ベルト層50のタイヤ幅方向における端部50eと重なる領域に形成されることが好ましい。
【0073】
さらに、本変更例のように、ベルト層50が一対の交錯ベルトによって構成される場合、連続部分125は、当該一対の交錯ベルトを構成する内側ベルト(第1ベルトと呼んでもよい)のタイヤ幅方向における端部50eと、当該一対の交錯ベルトを構成する外側ベルト(第2ベルトと呼んでもよい)のタイヤ幅方向における端部51eとの両方と覆うように形成されることが好ましい。
【0074】
また、連続部分125は、端部50e及び端部51eだけでなく、カーカス40の折り返し部42の外側端42eを覆うように形成されてもよい。
【0075】
さらに、補強層100Dのように、外側補強層120Dのタイヤ幅方向に沿った幅は、内側補強層110のタイヤ幅方向に沿った幅よりも広くてもよい。つまり、外側補強層120Dのタイヤ幅方向における端部121eは、内側補強層110の端部111eよりもタイヤ幅方向外側に位置してもよい。
【0076】
(4)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、空気入りタイヤ10には、ストリップ部材111がタイヤ周方向に沿って巻き廻された内側補強層110と、ストリップ部材121がタイヤ周方向に沿って巻き廻された外側補強層120とを有する補強層100が備えられる。外側補強層120は、ストリップ部材121間に空隙G1を有する。
【0077】
このように、外側補強層120のストリップ部材121間に空隙G1が形成されるため、外側補強層120の剛性は、内側補強層110と比較すると低く、ベルト層50の拘束力が弱くなる。これにより、トレッド20の接地面積が増大する。
【0078】
具体的には、接地面積は、空隙G1が形成されない場合と比較すると、特に、タイヤ周方向において増大する。つまり、トレッド20の周方向における面外剛性が低下し、接地面積が増大する。
【0079】
トレッド20の接地面積が増大すると、トレッド20と路面との摩擦力が増大し、空気入りタイヤ10の路面のグリップ力が向上し得る。なお、グリップ力は、前後力(Fx, 制動力と駆動力)及び横力(Fy, カーブ走行に必要な力)との和を意味してもよいし、端的には、FxとFyとによって示される、いわゆる摩擦円を意味してもよい。
【0080】
さらに、このように接地面積の増大によってグリップ力を高めることができるため、トレッド20に用いられるゴムには、高いグリップ力を発揮するが摩耗の進行が早い材料を用いる必要がない。
【0081】
また、補強層100は、ベルト層50のタイヤ径方向外側において、ストリップ部材をタイヤ周方向に沿って巻き廻すことによって形成される。このため、高速走行時に発生する遠心力による空気入りタイヤ10、具体的には、ベルト層50の径成長が抑制されるため、高速走行時における操縦安定性が向上する。
【0082】
特に、空気入りタイヤ10のように、スポーツ走行(サーキットを含む)に向いているスポーツタイプなどの四輪自動車は、高速で走行するため、ベルト層50の径成長の抑制が重要である。さらに、補強層100によってベルト層50の剛性が向上するため、空気入りタイヤ10にスリップ角が付与時の応答性が向上する。
【0083】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、タイヤライフを伸ばしつつ、グリップ力をさらに向上させることができる。なお、補強層100によれば、外側補強層120が空隙G1を有しているが、内側補強層110との二層構造であるため、ベルト層50の径成長による操縦安定性の低下も防止できる。さらに、空隙G1を設けることによって空気入りタイヤ10の重量増が抑制できるため、転がり抵抗の低下にも貢献し得る。
【0084】
外側補強層120は、タイヤ赤道線CLを含むセンター領域CTにおいて、少なくとも空隙G1を有していればよい。このため、実質的な接地面積の増大に寄与するセンター領域CTにおいて接地面積を効果的に増大し得る。これにより、グリップ力をさらに向上させることができる。
【0085】
一方、内側補強層110は、少なくともセンター領域CTにおいて、空隙を有さずにストリップ部材111が連続して設けられる連続部分115を有する。このため、操縦安定性への影響が大きいセンター領域CTにおけるベルト層50の径成長を効果的に抑制し得る。また、内側補強層110のセンター領域CT以外では空隙が設けられてもよい。これにより、空気入りタイヤ10の重量増を抑制しつつ、高速走行時における操縦安定性を向上できる。
【0086】
また、変更例4に示したように、外側補強層120Dは、ベルト層50の端部50e及び端部51eと重なる領域において、空隙G7を有さずにストリップ部材121が連続して設けられる連続部分125を有する。このため、補強層100Dは、端部50e及び端部51e付近におけるベルト層50の径成長を確実に抑制し得る。これにより、高速走行時における操縦安定性をさらに向上できる。
【0087】
さらに、上述した補強層100などのように、空隙G1の幅は、ストリップ部材111及びストリップ部材121の幅よりも狭くてもよい。空隙G1の幅をストリップ部材111及びストリップ部材121よりも狭くすることによって、ベルト層50の径成長の抑制と、接地面積の増大とをバランス良く達成し得る。これにより、操縦安定性とグリップ力との向上とを高い次元で両立し得る。
【0088】
また、本実施形態では、ベルト層50は、一般的な同種の空気入りタイヤによりも剛性が低くてもよい。一方で、このようなベルト層50は、外力によって変形し易くなるが、捻れなどには強ければよい。このようなベルト層50によれば、特に、空気入りタイヤ10に荷重が負荷された場合おけるトレッド20の剛性を低くすることができるため、接地面積の増大に貢献する。
【0089】
また、このようなベルト層50と、空隙G1を有する外側補強層120との組合せによれば、コーナリングなどに空気入りタイヤ10が捩れた場合などにおいて、トレッド20の剛性が低く成り過ぎない。このため、トレッド20の変形過多による損傷などを防止し得る。これにより、操縦安定性とグリップ力との向上とをさらに高い次元で両立し得る。
【0090】
(5)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0091】
例えば、上述した実施形態では、空気入りタイヤ10は、スポーツ走行(サーキットを含む)に向いているスポーツタイプなどの四輪自動車に好適に用い得るとしていたが、空気入りタイヤ10は、このような四輪自動車に限定されず、一般的な乗用自動車(SUV:Sport
Utility Vehicleを含む)など、異なる種類の車両に用いられても構わない。
【0092】
また、上述した実施形態では、ストリップ部材の用語が用いられていたが、単に、ストリップと呼ばれてもよい。また、補強層は、補強ベルト層、スパイラルベルト層、或いは単に補強ベルトなどと呼ばれてもよい。
【0093】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0094】
10 空気入りタイヤ
20 トレッド
21 ショルダー部分
30 タイヤサイド部
40 カーカス
41 本体部
42 折り返し部
42e 外側端
50 ベルト層
50e, 51e 端部
60 ビード部
61 ビードコア
62 ビードフィラー
90 リムライン
100, 100A~100D 補強層
100e 端部
110, 110B 内側補強層
111, 111B ストリップ部材
111e 端部
112 コード
115 連続部分
120, 120A~120D 外側補強層
121, 121A, 121B ストリップ部材
121e 端部
122 コード
125 連続部分
G1~G7 空隙