(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033470
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】電流検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
G01R15/20 C
G01R15/20 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005004
(22)【出願日】2023-01-17
(62)【分割の表示】P 2021556020の分割
【原出願日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2019207066
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 学
(72)【発明者】
【氏名】白坂 正臣
(57)【要約】
【課題】温度上昇によるケースやカバーの変形を抑えることができ、これにより、複数のバスバのそれぞれを流れる被測定電流によって発生する磁界を正確に検知可能とし、高い電流検出精度を維持することができる電流検出装置を提供する。
【解決手段】バスバの厚さ方向において、バスバと磁気センサとを挟み込むように、第1シールド板は磁気センサ側に配置され、第2シールド板はバスバ側に配置されており、磁気センサ側の複数の第1シールド板はカバーと一体に形成され、バスバ側に配置された複数の第2シールド板はケースと一体に形成され、基板は、隣り合う磁気センサの間において少なくとも一部が分割されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに固定されるカバーと、
被測定電流が流れる複数の板状のバスバと、
前記バスバに前記被測定電流が流れることにより発生する磁界を検知する複数の磁気センサと、
複数の前記磁気センサを搭載する基板とを備え、
さらに、前記バスバの厚さ方向において互いに対向する一対のシールド板を複数備え、
複数の前記磁気センサは、複数の前記バスバにそれぞれ対応して配置され、かつ、前記バスバの厚さ方向において、複数の前記バスバにそれぞれ対向して配置され、
前記一対のシールド板は、前記磁気センサ側に配置された第1シールド板と、前記バスバ側に配置された第2シールド板とからなり、前記バスバの厚さ方向において、前記バスバと前記磁気センサとを挟み込むように配置されており、
複数の前記第1シールド板は、前記カバーと一体に形成され、
複数の前記第2シールド板は、前記ケースと一体に形成され、
前記基板は、隣り合う前記磁気センサの間において少なくとも一部が分割されたことを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
複数の前記第2シールド板は、これらに対向する複数の前記バスバとともに前記ケースと一体に形成されている請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記基板は、すべての前記磁気センサについて、互いに分割されており、
隣り合う前記基板同士を電気的に接続する配線部がケースと一体に形成された請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項4】
前記カバーは、隣り合う前記第1シールド板の間において少なくとも一部が分割されている、請求項2に記載の電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバを流れる電流を測定可能な電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電流センサは、平行平板状に対向配置された2枚のシールド板と、各シールド板の間の収容空間に位置するように並列に配置された3本のバスバと、各バスバに対応して設けられた検出素子と、を備え、各シールド板は、各バスバのうちの隣同士の間に対応する部分それぞれに、バスバの長手方向に沿って設けられたスリットと、スリットによって各バスバの配列方向に分かれた一方の部分と他方の部分とを支持する支持部とを有している。これにより、シールド板の一部において磁気飽和が生ずるのを抑えることができ、磁気シールドの機能低下を防ぐことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電流検出装置で測定する電流はますます増大する傾向にあり、これにともなってバスバ、シールド板、これらを収容するカバーとケースなどが大型化しつつある。このような大型の電流検出装置、例えば特許文献1に記載の電流センサでは、温度の上昇によってカバー、ケースなどに変形が生じると、検出素子とバスバの距離や、検出素子とシールド板の距離が、温度上昇前と異なってしまい、また、場所によって距離が不均一となってしまい電流の検出精度が低下してしまうおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、温度上昇によるケースやカバーの変形を抑えることができ、これにより、複数のバスバのそれぞれを流れる被測定電流によって発生する磁界を正確に検知可能とし、高い電流検出精度を維持することができる電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の電流検出装置は、ケースと、ケースに固定されるカバーと、被測定電流が流れる複数の板状のバスバと、バスバに被測定電流が流れることにより発生する磁界を検知する複数の磁気センサと、複数の磁気センサを搭載する基板とを備え、さらに、バスバの厚さ方向において互いに対向する一対のシールド板を複数備え、複数の磁気センサは、複数のバスバにそれぞれ対応して配置され、かつ、バスバの厚さ方向において、複数のバスバにそれぞれ対向して配置され、一対のシールド板は第1シールド板と第2シールド板とからなり、バスバの厚さ方向において、バスバと磁気センサとを挟み込むように配置されており、磁気センサ側の複数の第1シールド板がカバーと一体に形成され、カバーは、隣り合う第1シールド板の間において少なくとも一部が分割されており、バスバ側に配置された複数の第2シールド板が、ケースと一体に形成されたことを特徴としている。
これにより、温度が上昇したときのカバーの変形を抑えることができるため、磁気センサとの距離が不均一となることを防ぐことができ、よって、一部のシールド板において磁気飽和が生じることがなくなり、精度の高い電流検出を行うことができる。
【0007】
本発明の電流検出装置において、前記第1シールド板は前記磁気センサ側に配置され、前記第2シールド板は前記バスバ側に配置されていることが好ましい。
また、複数の第2シールド板は、これらに対向する複数のバスバとともに前記ケースと一体に形成されていることが好ましい。
これにより、それぞれのバスバに対する第2シールド板の相対位置が定まるため、シールド性を高めることができる。
【0008】
本発明の電流検出装置において、基板は、隣り合う磁気センサの間において少なくとも一部が分割されていることが好ましい。
これにより、温度が上昇したときの基板の変形を抑えることができるため、基板上の磁気センサとバスバとの距離を均一に保つことが可能となり、バスバを流れる電流を精度良く検出することが可能となる。
【0009】
本発明の電流検出装置において、基板は、すべての磁気センサについて、互いに分割されており、隣り合う基板同士を電気的に接続する配線部がケースと一体に形成されていることが好ましい。
これにより、温度上昇時の基板の変形をより確実に抑えることができ、かつ、隣り合う基板同士の通電を確保することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、温度上昇によるケースやカバーの変形を抑えることでき、これにより、複数のバスバのそれぞれを流れる被測定電流によって発生する磁界を正確に検知可能とし、高い電流検出精度を維持することができる電流検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電流検出装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】(a)は第1実施形態に係る電流検出装置の構成を示す平面図、(b)は(a)のA-A’線における断面図である。
【
図3】(a)は第1実施形態の変形例に係る電流検出装置の構成を示す斜視図、(b)は(a)に示す電流検出装置の平面図である。
【
図4】(a)は第2実施形態に係る電流検出装置の構成を示す断面図、(b)は(a)の電流検出装置において、カバー部材を省略して示した平面図である。
【
図5】(a)は、常温における電流の検出結果に対する、高温下における電流の検出結果の誤差を示すグラフ、(b)は、高温下で電流検出を継続的に行った場合において、初期の検出結果に対する1000時間経過後の検出結果の誤差を示すグラフである。
【
図6】(a)は第2実施形態の変形例1に係る電流検出装置の構成を示す平面図、(b)は、第2実施形態の変形例2に係る電流検出装置の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る電流検出装置について図面を参照しつつ詳しく説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る電流検出装置10の構成を示す斜視図、
図2(a)は、電流検出装置10の構成を示す平面図、(b)は(a)のA-A’線における断面図である。
図2(a)、(b)においては、
図1に示す構成の一部を省略し簡略化して表示している。
【0013】
図1と
図2(a)、(b)に示すように、電流検出装置10は、上側(
図1と
図2(b)のZ1側)に配置されるカバーとしての3つのカバー部材11、12、13と、下側(
図1と
図2(b)のZ2側)に配置されるケースとしてのケース部材14とを備え、ケース部材14を、3本のバスバ21、22、23が、ケース部材14の幅方向(
図1と
図2(a)、(b)のY1-Y2方向)に沿って貫通している。なお、以下の説明では、カバー部材、バスバ、磁気センサ、及び、対をなす上下のシールド板をそれぞれ3つ設けた形態について説明するが、同様の配置によって、2つ設けた形態や4つ以上設けた形態とすることも可能である。
【0014】
3つのカバー部材11、12、13は、互いに同一の板状の形状を有し、ケース部材14の長手方向(
図1と
図2(a)、(b)のX1-X2方向)において等間隔に配置され、ケース部材14にそれぞれ固定されている。別言すると、ケース部材14に固定されるカバー部材は、ケース部材14の長手方向において互いに分割して配置されている。
【0015】
3つのカバー部材11、12、13内には第1シールド板51、52、53がそれぞれ設けられている。第1シールド板51、52、53は、3つのカバー部材11、12、13とそれぞれ一体となるように、例えば成形によって形成され、X-Y面(X1-X2方向とY1-Y2方向を含む面)に延びるように配置されている。すなわち、磁気センサ側の複数の第1シールド板がカバーと一体に形成されている。
【0016】
ケース部材14内には、バスバ21、22、23の厚さ方向(Z1-Z2方向、上下方向)において、バスバ21、22、23を挟んで第1シールド板51、52、53にそれぞれ対向するように、第2シールド板61、62、63が配置されている。第2シールド板61、62、63は、ケース部材14と一体となるように、例えば成形によって形成され、X-Y面に延びるように、ケース部材14の長手方向(X1-X2方向)において互いに離間して配置されている。これにより、第1シールド板51と第2シールド板61、第1シールド板52と第2シールド板62、及び、第1シールド板53と第2シールド板63がそれぞれ対をなし、一対のシールド板が3組構成される。
【0017】
3本のバスバ21、22、23は、互いに同一形状の導電性の板状の材料からなり、対向する2つの板面がケース部材14の上下(Z1-Z2方向)にそれぞれ対応するように配置され、ケース部材14の幅方向(Y1-Y2方向)に沿って帯状に延び、ケース部材14の長手方向(
図1と
図2(a)、(b)のX1-X2方向)において、等間隔に配置されている。3本のバスバ21、22、23は、その厚さ方向において、第1シールド板51と第2シールド板61、第1シールド板52と第2シールド板62、及び、第1シールド板53と第2シールド板63の3組のシールド板の対によって、それぞれ挟まれている。
【0018】
図2(b)に示すように、ケース部材14内には、長手方向(X1-X2方向)に沿って延びるように回路基板30が配置され、この回路基板30の底面上には、X-Y面において、バスバ21、22、23に対応する位置に磁気センサ41、42、43がそれぞれ搭載されている。
なお、磁気センサ41、42、43は、回路基板30の上面と下面のどちらに設けても良い。
【0019】
磁気センサ41、42、43については、バスバ21、22、23のそれぞれに対する磁気センサ41、42、43の配置や、磁気センサ41、42、43のそれぞれに対する3つの対のシールド板(第1シールド板51、52、53と第2シールド板61、62、63それぞれの対)の配置、及び、これらの配置による作用・効果が互いに同様であるため、ここでは磁気センサ42を例に挙げて説明する。
【0020】
図2(a)又は
図2(b)に示すように、磁気センサ42は、バスバ22の長手方向(Y1-Y2方向)の中心に対応する位置に配置され、バスバ22と磁気センサ42は互いに上下に対向する。さらに、バスバ22の幅方向(X1-X2方向)において、磁気センサ42は、X-Y面における位置が対応するように、バスバ22と対向配置されている。このようにバスバ22に対応するように磁気センサ42を配置したため、磁気センサ42は、バスバ22を流れる電流(被測定電流)による誘導磁界を検出することによって、被測定電流の電流値を測定することができる。磁気センサ42は、例えば、GMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)などの磁気抵抗効果素子を用いて構成される。
【0021】
磁気センサ42は、カバー部材12内に配置された第1シールド板52と、ケース部材14内に配置された第2シールド板62との一対のシールド板によって、バスバ22の厚さ方向の上下から挟まれている。よって、バスバ22の厚さ方向において、第1シールド板52と第2シールド板62とによって、磁気センサ42とバスバ22が挟み込まれるように配置され、磁気センサ42側に第1シールド板51が配置され、バスバ22側に第2シールド板61が配置される。なお、第1シールド板51をバスバ22側に配置し、第2シールド板61を磁気センサ42側に配置する構成も可能である。
【0022】
第1シールド板52と第2シールド板62は、同一の磁性材料からなる磁気シールドとして、強磁性体で形成することが好ましく、上下方向において互いに平行に対向するように配置されている。第1シールド板52と第2シールド板62は、それぞれ、平面視矩形状の同一形状で同一サイズの複数の金属板を上下に積層した構成を有している。このように、磁気センサ42を挟むように第1シールド板52と第2シールド板62を配置することにより、磁気センサ42は、隣接するバスバ21、23を流れる電流による誘導磁界などの外来磁場(外部磁場)を遮って、その影響を抑えることとしている。
【0023】
以上のように構成されたことから、バスバ21、22、23に大電流を流すことなどにより温度が大きく上昇したとしても、カバー部材11、12、13が互いに分割されているため、変形を小さく抑えることができる。また、高温の状態が継続した場合にも、放熱しやすく変形が起きにくくなる。別の言い方をすると、仮に、カバー部材11、12、13が部分的な分割もなく一体に形成されていた場合、カバー部材に反りが発生しやすくなり、第1シールド板51、52、53の配置位置にズレが生じやすい。配置位置がずれることでシールド性が悪くなり、検出精度が悪くなることが考えられる。したがって、本実施形態の構造とすることで、バスバ21、22、23のそれぞれを流れる被測定電流によって発生する磁界を、常温の場合と同様に、正確に検知することができ、大電流を流した場合においても、高い電流検出精度を維持することが可能となる。
【0024】
以下に変形例について説明する。
図3(a)は、第1実施形態の変形例に係る電流検出装置110の構成を示す斜視図、(b)は電流検出装置110の平面図である。
図3(b)においては、
図3(a)に示す構成の一部を省略し簡略化して表示している。この電流検出装置110においては、
図1と
図2(a)、(b)に示す3つのカバー部材11、12、13のように互いに分割した形態に代えて、
図3(a)、(b)に示すように、カバーとしての3つのカバー部材111、112、113の一部が互いに連結されている。別言すると、カバーは、第1シールド板の間において、一部が分割され、残りの部分で互いに連結され、これにより、隣り合うカバー部材の間に前後方向(Y1-Y2方向)に延びるスリット又は切り欠きが形成される。
【0025】
変形例における、ケース部材114(ケース)、3本のバスバ121、122、123、回路基板130、3つの磁気センサ141、142、143、及び、不図示の第2シールド板は、
図1と
図2(a)、(b)に示す、ケース部材14(ケース)、3本のバスバ21、22、23、回路基板30、3つの磁気センサ41、42、43、及び、第2シールド板61、62、63とそれぞれ同様の構成・配置を有する。
【0026】
3つのカバー部材111、112、113は、
図1と
図2(a)、(b)に示すカバー部材11、12、13と同様に、互いに同一の板状の形状を有し、ケース部材114の長手方向(X1-X2方向)において等間隔に配置される。さらに、隣り合う2つのカバー部材111、112は、ケース部材114の長手方向に延びる第1の連結部115によって連結され、隣り合う2つのカバー部材112、113は、ケース部材114の長手方向に延びる第2の連結部116によって連結されている。3つのカバー部材111、112、113と2つの連結部115、116は、X-Y面に沿って広がるように、同一材料で同一の厚さで、例えば成形によって一体で形成される。3つのカバー部材111、112、113内には、
図2(b)に示すのと同様に、第1シールド板51、52、53がそれぞれ設けられている。
【0027】
なお、
図3(a)、(b)に示す例では、X-Y面において、第1の連結部115を奥側(Y2側)に配置し、第2の連結部116を手前側(Y1側)に配置しているが、2つの連結部115、116を前後方向(Y1-Y2方向)のいずれの位置に、どの程度の幅で配置するかは、求められる検出精度や、3つのカバー部材111、112、113の変形量などに応じて任意に設定できる。
【0028】
以上のように、2つの連結部115、116によって、3つのカバー部材111、112、113が連結され、隣り合う第1シールド板の間において一部が分割されたカバーが形成される。分割の範囲や連結部の大きさ・形状は任意に設定できる。このカバーのケース部材114への固定は、3つのカバー部材111、112、113と2つの連結部115、116のいずれか、又は両方をケース部材114に固定することで行うことができる。
【0029】
カバーをこのように構成することによって、温度上昇による変形を抑える効果が得られるとともに、電流検出装置110の製造工程においてカバーの組み付け性を高めることができる。
【0030】
<第2実施形態>
図4(a)は第2実施形態に係る電流検出装置210の構成を示す断面図であって、
図1(b)に対応する位置の図である。
図4(b)は、電流検出装置210において、カバー部材211、212、213を省略して示した平面図である。
【0031】
第2実施形態の電流検出装置210においては、
図2(a)、(b)に示す第1実施形態における回路基板30に代えて、隣り合う磁気センサ241、242、243の間において分割された、3つの回路基板231、232、233を用いている。これらの回路基板231、232、233は、ケース部材214の長手方向(X1-X2方向)において、等間隔に配置され、ケース部材214上に載置・固定される。隣り合う2つの回路基板231、232は、ケース部材214内に埋設された第1配線部234によって互いに電気的に接続され、隣り合う2つの回路基板232、233についても、ケース部材214内に埋設された第2配線部235によって互いに電気的に接続される。
【0032】
ここで、
図4(a)、(b)に示す例では、X-Y面において、2つの配線部234、235の両方を手前側(Y1側)に配置しているが、これらの配線部234、235を前後方向(Y1-Y2方向)のいずれの位置に、どの程度の幅で配置するかは、求められる検出精度や、3つの回路基板231、232、233の変形量などに応じて任意に設定できる。
【0033】
3つのカバー部材211、212、213、ケース部材214、3本のバスバ221、222、223、3つの磁気センサ241、242、243、3つの第1シールド板251、252、253、及び、3つの第2シールド板261、262、263は、第1実施形態における、3つのカバー部材11、12、13、ケース部材14、3本のバスバ21、22、23、3つの磁気センサ41、42、43、3つの第1シールド板51、52、53、及び、3つの第2シールド板61、62、63とそれぞれ同様の構成・配置を有する。
【0034】
図5(a)は、常温(25°C)における電流の検出結果に対する、高温下(125°C)における電流の検出結果の誤差(
図5(a)の縦軸:温度誤差)を示すグラフである。
図5(b)は、高温下(125°C)で電流検出を継続的に行った場合において、初期の検出結果に対する1000時間経過後の検出結果の誤差(
図5(b)の縦軸:耐久性誤差)を示すグラフである。
図5(a)、(b)において、実施例は、第2実施形態の電流検出装置210を用いた場合であり、比較例は、前記実施例に対して、カバー部材が3分割されていない1枚の構成であり、かつ、回路基板も3分割されていない1枚の構成とした場合である。
【0035】
図5(a)、(b)の比較例におけるS部分とC部分は、回路基板とカバー部材の変形による誤差への寄与度を概略的に切り分けて示したものであり、S部分は回路基板の変形による誤差への寄与を示し、C部分はカバー部材の変形による誤差への寄与を示している。
【0036】
図5(a)、(b)にそれぞれ示すように、実施例においては、温度誤差は0.1%程度、耐久性誤差は0.1%未満となっており、高温にすることによる影響が小さくなっており、温度上昇による、カバー部材などの各部材の変形が抑えられており、磁気センサとバスバとの距離や、磁気センサと第1シールド板及び第2シールド板との距離がほぼ一定に維持されていることが分かる。これに対して、比較例においては、温度誤差が実施例の約7倍、耐久性誤差が実施例の約10倍となっており、温度上昇によって、カバー部材や回路基板が変形しやすくなっており、磁気センサとバスバとの距離や、磁気センサと第1シールド板及び第2シールド板との距離が変化してしまうことにより、電流の検出結果に大きな誤差を生じさせていると考えられる。
【0037】
また、
図5(a)、(b)の比較例におけるS部分とC部分はいずれも実施例の数倍になっており、回路基板とカバー部材のいずれの変形も検出誤差への影響が大きいことが分かる。また、S部分とC部分を比較するとカバー部材の変形による影響がより大きいことが分かる。したがって、第1実施形態のように、回路基板30は1枚で構成し、カバーを、3分割されたカバー部材11、12、13とする構成においても、検出誤差を抑える効果が得られることが分かる。
【0038】
以下に変形例について説明する。
図6(a)は、第2実施形態の変形例1に係る電流検出装置310の構成を示す平面図、(b)は、第2実施形態の変形例2に係る電流検出装置の構成を示す平面図である。
図6(a)、(b)は、
図4(b)と同様に、カバー部材を省略した状態を示す平面図である。
【0039】
変形例1の電流検出装置310においては、
図4(a)、(b)に示す、2つの配線部234、235を用いずに、
図6(a)に示すように、3つの回路基板331、332、333が、一部において互いに連結されている。隣り合う2つの回路基板331、332は、ケース部材314の長手方向(X1-X2方向)に延びる第1の連結部334によって連結され、第1の連結部334に設けられた第1の配線部(不図示)によって互いに電気的に接続される。隣り合う2つの回路基板332、333は、ケース部材314の長手方向に延びる第2の連結部335によって連結され、第2の連結部335に設けられた第2の配線部(不図示)によって互いに電気的に接続される。3つの回路基板331、332、333と2つの連結部334、335は、X-Y面に沿って広がるように、同一材料で同一の厚さで、例えば成形によって一体で形成される。別言すると、回路基板は、隣り合う磁気センサの間において、一部が分割され、残りの部分で互いに連結されている。
【0040】
変形例1における、ケース部材314(ケース)、3本のバスバ321、322、323、3つの磁気センサ341、342、343、及び、不図示の第2シールド板は、
図4(a)又は
図4(b)に示す、ケース部材214(ケース)、3本のバスバ221、222、223、3つの磁気センサ241、242、243、及び、第2シールド板261、262、263とそれぞれ同様の構成・配置を有する。
【0041】
ここで、
図6(a)に示す例では、X-Y面において、2つの連結部334、335の両方を奥側(Y2側)に配置しているが、2つの連結部334、335を前後方向(Y1-Y2方向)のいずれの位置に、どの程度の幅で配置するかは、求められる検出精度や、3つの回路基板331、332、333の変形量などに応じて任意に設定できる。例えば
図6(b)に示す変形例2のように、第1の連結部336を奥側に、第2の連結部337を手前側に配置してもよい。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的又は本発明の思想の範囲内において改良又は変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明に係る電流検出装置は、温度上昇によるケースやカバーの変形を抑えることでき、これにより、複数のバスバのそれぞれを流れる被測定電流によって発生する磁界を正確に検知可能とし、高い電流検出精度を維持することができる点で有用である。
【符号の説明】
【0043】
10 電流検出装置
11、12、13 カバー部材(カバー)
14 ケース部材(ケース)
21、22、23 バスバ
30 回路基板
41、42、43 磁気センサ
51、52、53 第1シールド板
61、62、63 第2シールド板
110 電流検出装置
111、112、113 カバー部材(カバー)
114 ケース部材(ケース)
115 第1の連結部
116 第2の連結部
121、122、123 バスバ
130 回路基板
141、142、143 磁気センサ
210 電流検出装置
211、212、213 カバー部材(カバー)
214 ケース部材(ケース)
221、222、223 バスバ
231、232、233 回路基板
234 第1配線部
235 第2配線部
241、242、243 磁気センサ
251、252、253 第1シールド板
261、262、263 第2シールド板
310 電流検出装置
314 ケース部材(ケース)
321、322、323 バスバ
331、332、333 回路基板
334、336 第1の連結部
335、337 第2の連結部
341、342、343 磁気センサ