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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033524
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】黒生姜含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/489 20060101AFI20230303BHJP
   A61K 36/906 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230303BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20230303BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230303BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230303BHJP
【FI】
A61K36/489
A61K36/906
A61K31/522
A61P43/00 111
A61P3/00
A61P3/02
A61P3/04
A61P43/00 105
A61P43/00 107
A61P43/00 121
A61Q5/02
A61Q19/00
A61Q19/10
A61K8/49
A61K8/9789
A23L33/105
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005478
(22)【出願日】2023-01-17
(62)【分割の表示】P 2021149829の分割
【原出願日】2015-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】尾上 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】長崎 歩
(72)【発明者】
【氏名】北村 整一
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、副作用の問題がなく、長期的かつ持続的な摂取が可能である、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用を示す組成物を提供することにある。
【解決手段】
上記目的は、黒生姜(Kaempferia parviflora)と、オリゴ糖及びアミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分とを含有し、かつ、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用を有する組成物により解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒生姜(Kaempferia parviflora)と、カフェインとを含有するUCP1発現促進用組成物。
【請求項2】
黒生姜(Kaempferia parviflora)と、カフェインとを含有する代謝促進用組成物。
【請求項3】
黒生姜(Kaempferia parviflora)と、カフェインとを含有する熱産生促進用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒生姜及び特定の成分を含有し、かつ、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脱共役タンパク質(Uncoupling proteins;UCPs)はミトコンドリア内膜での酸化的リン酸化反応を脱共役させ、エネルギーを熱として散逸する機能を有する(非特許文献1を参照)。特に、UCP1は、熱産生部位である褐色脂肪細胞に特異的に発現し、電子伝達系におけるATP合成を経ずに、中性脂質を熱へと変換し、直接的にエネルギーを消費させる役割を担う。また、前駆細胞からの褐色脂肪細胞への分化を促進することができれば、UCP1の発現量を増大することができ、中性脂質を熱へと変換することが可能になる。したがって、UCP1発現量又は褐色脂肪細胞分化を促進することができれば、中性脂質の消費を経て、肥満を解消できる可能性がある。このような、褐色脂肪細胞分化促進剤やUCP1発現促進剤について、カテキン類を有効成分とするものが特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-65672号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】第124回 日本医学会シンポジウム記録集、p.62-70
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のUCP1の発現量及び活性化を促進できるものは、天然物から単離及び精製した特定物質を有効成分として含有する。しかし、このような特定物質は、薬理作用が強いことから、摂取するに際して注意が必要であり、過剰な摂取により副作用がもたらされる危険性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、副作用の問題がなく、長期的かつ持続的な摂取が可能である、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用を示す組成物を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、驚くべきことに、黒生姜と特定の成分とを組み合わせることによって、相加的よりもむしろ相乗的にUCP1発現促進効果及び/又は褐色脂肪細胞分化促進効果が得られることを見出した。そして、UCP1発現促進用組成物、代謝促進用組成物、抗肥満用組成物、体脂肪減少用組成物及び熱産生促進用組成物として、黒生姜と特定の成分とを含有する組成物の創作に成功した。本発明は、かかる知見や成功例に基づいて完成された発明である。
【0008】
したがって、本発明によれば、黒生姜(Kaempferia parviflora)と、ホップ、ケツメイシ、メリロート、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、オリゴ糖及びアミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分とを含有する化粧用組成物が提供される。
【0009】
黒生姜と、ホップ、ケツメイシ、メリロート、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、オリゴ糖及びアミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分とを含有するUCP1発現促進用組成物が提供される。
【0010】
本発明の別の側面によれば、黒生姜と、ホップ、ケツメイシ、メリロート、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、オリゴ糖及びアミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分とを含有する褐色脂肪細胞活性化用組成物が提供される。
【0011】
本発明の別の側面によれば、黒生姜と、ホップ、ケツメイシ、メリロート、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、オリゴ糖及びアミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分とを含有する代謝促進用組成物が提供される。
【0012】
本発明の別の側面によれば、黒生姜と、ホップ、ケツメイシ、メリロート、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、オリゴ糖及びアミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分とを含有する抗肥満用組成物が提供される。
【0013】
本発明の別の側面によれば、黒生姜と、ホップ、ケツメイシ、メリロート、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、オリゴ糖及びアミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分とを含有する体脂肪減少用組成物が提供される。
【0014】
本発明の別の側面によれば、黒生姜と、ホップ、ケツメイシ、メリロート、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、オリゴ糖及びアミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分とを含有する熱産生促進用組成物が提供される。
【0015】
本発明の別の側面によれば、黒生姜と、ホップ、ケツメイシ、メリロート、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、オリゴ糖及びアミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分とを含有する組成物が提供される。
【0016】
好ましくは、本発明の組成物は、褐色脂肪細胞活性化作用、代謝促進作用、抗肥満作用、体脂肪減少作用、熱産生促進作用、UCP1発現促進作用、エネルギー産生促進作用、中性脂質低下作用、皮脂抑制作用及び脂肪代謝促進作用からなる群から選ばれる少なくとも1種類の作用を有する。
【0017】
好ましくは、本発明の組成物において、前記オリゴ糖は、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖及び乳果オリゴ糖からなる群から選ばれる少なくとも1種類のオリゴ糖である。
【0018】
好ましくは、本発明の組成物において、前記アミノ酸は、アラニン、アルギニン及びセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のアミノ酸である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の組成物は、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用を有し、さらにこれらの作用に関連して、褐色脂肪細胞活性化作用、代謝促進作用、抗肥満作用、体脂肪減少作用、熱産生促進作用、UCP1発現促進作用、エネルギー産生促進作用、中性脂質低下作用、皮脂抑制作用、脂肪代謝促進作用などを示すことが期待できる。
【0020】
本発明の組成物で用いられる黒生姜及び特定の成分は、それぞれ医薬品や化粧品などでの使用実績のあるものであることから、本発明の組成物は安全性が高いものである。そこで、本発明の組成物は、上記作用を有することにより、UCP1発現促進用組成物、代謝促進用組成物、抗肥満用組成物、体脂肪減少用組成物及び熱産生促進用組成物として有用であり、非経口的又は経口的な形態で提供することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施例に記載されているとおり、黒生姜抽出物を基準とした、被験物質(イソマルトオリゴ糖)及び黒生姜抽出物と被験物質との組み合わせの官能評価結果を表わした図である。
図2図2は、実施例に記載されているとおり、黒生姜抽出物を基準とした、被験物質(フラクトオリゴ糖)及び黒生姜抽出物と被験物質との組み合わせの官能評価結果を表わした図である。
図3図3は、実施例に記載されているとおり、黒生姜抽出物を基準とした、被験物質(乳果オリゴ糖)及び黒生姜抽出物と被験物質との組み合わせの官能評価結果を表わした図である。
図4図4は、実施例に記載されているとおり、黒生姜抽出物を基準とした、被験物質(アラニン)及び黒生姜抽出物と被験物質との組み合わせの官能評価結果を表わした図である。
図5図5は、実施例に記載されているとおり、黒生姜抽出物を基準とした、被験物質(セリン)及び黒生姜抽出物と被験物質との組み合わせの官能評価結果を表わした図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の組成物は、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用を有し、かつ、黒生姜(Kaempferia parviflora)と、ホップ、ケツメイシ、メリロート、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、オリゴ糖及びアミノ酸のいずれかの成分(以下、特定成分とよぶ。)とを少なくとも含有する。
【0023】
本発明の組成物は、UCP1発現促進作用及び褐色脂肪細胞分化促進作用のうち、いずれか1種の作用を有するものであってもよいし、これら2種全ての作用を有するものであってもよい。また、黒生姜と組み合わせられる特定成分は、特定成分のうちのいずれか1種の成分であってもよいし、2種以上の成分であってもよい。例えば、特定成分のうちの、カフェイン、アラニン及びイソマルトオリゴ糖というような組み合わせが可能である。
【0024】
本発明の組成物は、UCP1発現促進作用及び褐色脂肪細胞分化促進作用の他に、褐色脂肪細胞活性化作用、代謝促進作用、抗肥満作用、体脂肪減少作用、熱産生促進作用、エネルギー産生促進作用、中性脂質低下作用、皮脂抑制作用及び脂肪代謝促進作用を示し得る。
【0025】
本発明の組成物は、上記した作用を有することにより、UCP1発現促進用組成物、代謝促進用組成物、抗肥満用組成物、体脂肪減少用組成物及び熱産生促進用組成物という態様を採り得る。
【0026】
黒生姜(Kaempferia parviflora)は、東南アジアなどに自生することで知られているショウガ科バンウコン属の植物である。黒生姜は、精力増進、滋養強壮、血糖値の低下、体力回復、消化器系の改善、膣帯下、痔核、痔疾、むかつき、口内炎、関節痛、胃痛の改善などの作用があることが知られている。黒生姜は、長期にわたりヒトに摂取されてきた実績のある天然植物であって安全性が高いことから、本発明の組成物は、実用性が高く、そのままで、又は加工することにより、非経口的又は経口的な形態で種々の用途に適用可能である。
【0027】
黒生姜の使用部位は、所望の薬理作用に寄与する成分を含む部位であれば特に限定されず、例えば、根、葉、茎、花、枝などが挙げられるが、好ましくは5,7-ジメトキシフラボン(57DMF)などのポリメトキシフラボノイド(PMF)を多く含む根茎である。
【0028】
黒生姜は、採取した状態の未加工のものに加えて、例えば、処理物(乾燥物、裁断物など)又は黒生姜や黒生姜処理物の粉末、搾汁、抽出物などの黒生姜の加工物を包含する。ここで、抽出物とは、黒生姜における成分が抽出された物であれば特に限定されないが、例えば、黒生姜やその処理物を溶媒で抽出して得られる抽出液、その希釈液や濃縮液、又はそれらの乾燥物やその粉末が挙げられる。本発明において用いられる黒生姜は、皮膚外用組成物などの非経口用組成物や、経口用組成物などへの適用容易性を考慮すれば、黒生姜の抽出物又は搾汁などのエキスや該エキスの乾燥物であることが好ましい。
【0029】
黒生姜粉末は、例えば、洗浄後にスライスした黒生姜を天日又は乾燥機を用いて乾燥後、そのままで、又は適当な形状や大きさに裁断して得た処理物を、粉砕装置を用いて粉砕することで得ることができる。粉砕装置としては通常使用されるものが広く使用できるが、例えば、原料ホッパー、粉砕機、分級機、製品ホルダーなどから構成される粉砕機を用いることができる。
【0030】
黒生姜抽出物は、黒生姜やその処理物を溶媒で抽出することによって得られる。抽出に使用される溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの低級アルコール;酢酸エチル、酢酸メチルなどの低級エステル;アセトン;これらと水との混合溶媒などが挙げられる。水もまた抽出溶媒として挙げられ、熱水や温水などであってもよい。本発明の組成物は、ヒトが経口的に摂取する可能性があるものであることから、原料である黒生姜の抽出物は、水単独、エタノール単独又は水とエタノールとの混合溶媒(いわゆる含水エタノール)によって抽出されたものであることが好ましい。特に、20~80vol%の濃度の含水エタノールを溶媒として使用することが好ましく、40~70vol%の濃度の含水エタノールを溶媒として使用することがより好ましい。
【0031】
溶媒として混合溶媒を使用する場合は、例えば、アセトン/水(2/8~8/2、体積比)混合物、エタノール/水(2/8~8/2、体積比)混合物などを用いることができる。エタノール/水の場合、黒生姜の根茎に対して、その質量の2~20倍質量の溶媒を加え、室温又は加熱下で10分~48時間程度抽出することが好ましい。
【0032】
抽出方法は特に限定されないが、例えば、安全性、利便性及び工業化の観点から、可能な限り緩やかな条件で抽出操作を行うことが好ましい。例えば、黒生姜の部位やその乾燥物を、粉砕、破砕、細断などして、これに2~20倍質量の溶媒を加え、0℃~溶媒の還流温度の範囲で10分~48時間、静置、振盪、攪拌、還流などの任意の条件下にて抽出を行う。抽出作業後、ろ過、遠心分離などの固液分離操作を行い、不溶な固形物を除去する。これに、必要に応じて希釈、濃縮などの操作を行うことにより、抽出液を得る。さらに、不溶物についても同じ操作を繰り返して抽出し、その抽出液を先の抽出液と合わせて用いてもよい。これらの抽出液は、当業者が通常用いる精製方法により、さらに精製して使用してもよい。
【0033】
得られた抽出液は、そのままで、又は濃縮するなどして、例えば、液状物、濃縮物、さらにこれらを乾燥した乾燥物などの形態で用いることができる。乾燥は特に限定されず、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、流動乾燥などの当業者が通常用いる方法により行われる。さらに、以上の方法で得られた乾燥物を、当業者に知られる方法を用いて粉末化して使用することが可能である。
【0034】
本発明の組成物において用いられる黒生姜抽出物は特に限定されないが、例えば、抽出物全量に対する57DMF量の割合(57DMF含量)が0.01~50wt%であることが好ましく、0.1~30wt%であることがより好ましく、0.5~20wt%であることがさらに好ましい。また、抽出物全量に対するPMF量(57DMF、3,5,7,4’-テトラメトキシフラボン及び3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボンの総量)の割合(総PMF含量)が0.01~50wt%であることが好ましく、0.1~30wt%であることがより好ましく、0.5~20wt%であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明の組成物は、上記した黒生姜に加えて、ホップ、ケツメイシ、メリロート、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、オリゴ糖及びアミノ酸のうちの1種又は2種以上の特定成分を含有する。上記のうち、オリゴ糖としては、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖及び乳果オリゴ糖が好ましい。また、アミノ酸としては、グルタミン酸及びメチオニンを除くその他のアミノ酸であることが好ましく、酸性アミノ酸及び含硫アミノ酸を除くその他のアミノ酸であることがより好ましく、アラニン、アルギニン及びセリンがさらに好ましい。
【0036】
特定成分は、それぞれ通常知られているとおりのものであれば特に限定されない。例えば、オリゴ糖のうち、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖及び乳果オリゴ糖は通常知られているとおりの糖類であり、これらは固形物、液状物などの形状のものとして、黒生姜と組み合わせられ得る。また、アミノ酸のうち、アラニン、アルギニン及びセリンは通常知られているとおりのアミノ酸であり、D体及びL体のいずれでもよく、形状も特に限定されないが、L体の固形物であることが好ましい。
【0037】
同様に、ホップ、ケツメイシ、メリロート、ショウガ、エラスチン、没食子酸及びカフェインについても通常知られているものであれば、形状については特に限定さない。また、これらのうち、天然物である特定成分については、使用される部位がそれらの一部であっても全部であってもどちらでもよい。
【0038】
特定成分の中で、ホップ、ケツメイシ、メリロート及びショウガの天然物については、それぞれ通常知られているとおりのものであれば特に限定されない。例えば、ホップはセイヨウカラハナソウ(学名:Humulus lupulus)として知られており、例えば、その花(毬花)、種子、果実、茎葉、根などの部位を用いることができるが、毬花を用いることが好ましい。ケツメイシはエビスグサ(学名:Senna obtusifolia)の種子である。メリロートはセイヨウエビラハギ(学名:Melilotus officinalis)として知られており、例えば、その花、種子、果実、茎葉、根などの部位を用いることができるが、花又は茎葉を用いることが好ましい。生姜はショウガ(学名:Zingiber officinale)として知られており、例えば、その花、種子、果実、茎葉、根(根茎)などの部位を用いることができるが、根茎を用いることが好ましい。
【0039】
特定成分は、黒生姜と同様に様々な形態で用いることができ、例えば、天然物の場合は採取した状態の未加工のものに加えて、処理物(乾燥物、裁断物など)又はそれらの粉末、搾汁、抽出物などの加工物であり得る。特定成分の加工物は、本明細書の黒生姜の加工物に関する記載を参照して製造し得る。
【0040】
特定成分は、当業者により通常知られている方法によって製造したものでもよいし、市場に流通しているものであってもよい。
【0041】
特定成分は、各々単独ではほとんどUCP1発現促進作用又は褐色脂肪細胞分化促進作用を示さない。しかし、驚くべきことに、黒生姜と組み合わせることで、少なくともこれらのいずれかの作用を示すようになる。したがって、黒生姜と、特定成分との組み合わせによるUCP1発現促進作用及び褐色脂肪細胞分化促進作用は、相加的というよりも、相乗的な作用であるということができる。
【0042】
本明細書における「発現促進作用」とは、例えば、UCP1発現促進作用の場合、被験体におけるUCP1遺伝子の発現量を促進すること、UCP1タンパク質の翻訳量を増大すること及びUCP1を活性化することのうち少なくともいずれか1つの作用をいう。また、褐色脂肪細胞活性化作用とは、褐色脂肪細胞を活性化すること及び褐色脂肪細胞数を増加させることのうち少なくともいずれか1つの作用をいう。
【0043】
UCP1発現促進作用について、非特許文献1に記載されているとおり、肥満動物ではUCP1の機能が低下していること、多食しても肥満しない動物はUCP1が増加していること、人為的にUCP1の発現を低下させたマウスは肥満し高発現マウスは痩せることが知られている。したがって、UCP1発現促進作用により、抗肥満効果が期待でき、実際にUPC1発現促進作用を有する物質は、白色脂肪細胞での脂肪分解を促すと同時にUCP1を活性化して、遊離した脂肪酸を熱に変え、最終的に体脂肪を減少させることができる。
【0044】
熱産生促進作用とは、例えば、褐色脂肪細胞による中性脂質からの熱産生を促進する作用をいう。中性脂質低下作用とは、例えば、中性脂質を分解して生体内における中性脂質の全量を低下させる作用をいう。皮脂抑制作用とは、例えば、皮脂の発生を抑制する作用をいう。脂肪代謝促進作用とは、例えば、肥満状態を形成する脂肪細胞や脂肪組織を小型の正常な脂肪細胞に質的変換する作用をいう。体脂肪減少作用とは、例えば、遊離した脂肪酸を熱に変えることにより体脂肪を減少させる作用をいう。代謝促進作用及び抗肥満作用とは、例えば、体脂肪を減少するように代謝を促進する作用及び該作用により肥満になることを抑制する作用をいう。エネルギー産生促進作用とは、例えば、褐色脂肪細胞による中性脂質からの熱産生を通じてエネルギーを産生する作用をいう。本段落における各作用はそれぞれ記載した意味の作用を含むが、その他の作用機序により実現されるものも包含する。
【0045】
本発明の抗肥満用組成物などの抗疾患組成物が奏する抗疾患効果とは、例えば、抗肥満用組成物が奏する抗肥満効果の場合、被験体における現在又は将来の肥満若しくは肥満症であるとされる状態になることを抑制若しくは遅滞又はその状態を改善することをいう。また、インスリン抵抗性とは、肝臓、脂肪細胞、骨格筋などで、インスリンの主な作用である糖の吸収促進作用が弱っている状態をいう。抗インスリン抵抗性効果とは、被験体におけるSSPG(Steady-state plasma glucose)法などによる現在又は将来のインスリン抵抗性の指標となる値がより悪化することを抑制若しくは遅滞又はその値を改善することをいう。
【0046】
肥満は様々な疾病の原因となることが知られており、そのような疾病としては2型糖尿病、高血圧症、高脂血症などが挙げられる。さらにこれらの疾病を通じ、脳卒中や虚血性心疾患などがもたらされる場合もある。肥満状態になると、脂肪細胞の肥大が認められ、TNF-α及び遊離脂肪酸(FFA)が分泌され、これらが筋肉細胞や肝臓細胞などのインスリンの標的細胞での糖の取り込みを阻害するとともに、インスリンの働きを促進するアディポネクチンの分泌が抑制され、細胞レベルでインスリン感受性の低下を引き起こし、インスリン抵抗性が生じる。上記の肥満によってもたらされる疾病は、インスリン抵抗性に基づく、一連の代謝異常状態とみられている。そこで、本発明の組成物を用いることにより、肥満や肥満症と関連付けられる2型糖尿病、高血圧症、高脂血症などの疾病を予防又は改善することが可能である。
【0047】
ここで、2型糖尿病の予防及び改善とは、糖尿病の状態又は境界域の状態になることを抑制若しくは遅滞又はそれらの状態から正常域といわれる状態に近づけることをいう。高血圧症の予防及び改善とは、高血圧とされる状態又は境界域の状態になることを抑制若しくは遅滞又はその状態から正常域といわれる状態に近づけることをいう。高脂血症の予防及び改善とは、高脂血症の状態又は境界域の状態になることを抑制若しくは遅滞又はその状態から正常域といわれる状態に近づけることをいう。
【0048】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、室温や加温下で、黒生姜と、特定成分とを混合することにより、固形状組成物とすることができる。または、この固形状組成物を、水などの溶媒に溶解させて液状組成物とすることができる。さらに、黒生姜や特定成分の液状物に、他の固形状成分を加えて混合することにより液状組成物とすることができる。なお、得られた液状組成物は、乾燥処理を経て、粉末化しても良い。この場合の乾燥処理の方法としては、噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本発明において、黒生姜抽出物及び特定成分の含有量は特に限定されず、例えば、これらの質量比([黒生姜]:[特定成分の総量])が1:0.001~20であり、好ましくは1:0.01~10であり、より好ましくは1:0.05~5である。
【0050】
本発明の組成物は、用途に応じて、そのままで、又は他の成分と混合して使用することができる。このように、本発明の組成物は、黒生姜及び特定成分の他に、本発明の目的を達成し得る限り、種々のものを配合できる。
【0051】
例えば、本発明の組成物には、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、香油などの通常の加工に使用される添加物をさらに含有することができる。添加物の使用量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されず、適宜調整される。
【0052】
本発明の組成物は、通常用いられる形態であれば特に制限されず、例えば、液状、ローション状、ムース状、ゲル状、乳液状、懸濁液状、クリーム状、軟膏状、シート状、エアゾール状、スプレー状、スティック状、粉状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、ペースト状、カプセル状、カプレット状などの各形態を採り得る。
【0053】
本発明の組成物は、非経口用組成物として、例えば、化粧品に適した形態として使用することができる。すなわち、本発明の組成物の一態様は、化粧用組成物である。例えば、本発明の組成物は、そのままで、又は通常化粧品の加工に使用される添加物と混合して、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤などの種々の形態に加工され得る。具体的には、化粧水、化粧クリーム、乳液、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、ヘアリンス、トリートメント、洗顔剤、ファンデーション、育毛剤、水性軟膏、スプレーなどとして利用できる。
【0054】
本発明の組成物に含有される黒生姜の含有量は、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用が認められる量であれば特に限定されないが、経口用組成物としては、例えば、0.0001wt%以上、好ましくは0.001wt%以上であり、化粧品などの非経口用組成物としては、例えば、0.00001wt%以上、好ましくは0.0001wt%以上である。
【0055】
本発明の組成物は、経口用組成物である場合、黒生姜と特定成分とを含有することにより、旨味改善作用を有するものを包含する。
【0056】
本発明の組成物の具体的な態様として、例えば、黒生姜を40~90wt%、特定成分のいずれか1種の成分を10~60wt%の割合で含有する組成物が挙げられる。このうち、黒生姜を50~80wt%、特定成分のいずれか1種の成分を20~50wt%の割合で含有する組成物がより好ましい。
【0057】
本発明の組成物の別の具体的な態様として、黒生姜を40~90wt%、特定成分のいずれか2種の成分を合計で10~60wt%の割合で含有する組成物が挙げられる。このうち、黒生姜を50~80wt%、該2種の成分のうち一方の成分を10~30wt%、他方の成分を10~20wt%の割合で含有する組成物が挙げられる。
【0058】
本発明の組成物の別の具体的な態様として、黒生姜を40~90wt%、特定成分のいずれか3種の成分を合計で10~60wt%の割合で含有する組成物が挙げられる。このうち、黒生姜を50~80wt%、該3種の成分のうち1種目の成分を7.5~20wt%、2種目の成分を7.5~20wt%、3種目の成分を5~10wt%の割合で含有する組成物が挙げられる。
【0059】
上記した本発明の組成物の具体的な態様は、黒生姜及び特定成分の総質量に対する割合を示すものである。すなわち、上記の黒生姜及び特定成分の割合は、添加物を除いた、黒生姜及び特定成分の総質量に対する、黒生姜及び特定成分のそれぞれの割合を示すものである。
【0060】
以下、本発明の組成物の具体的態様に係る配合例を示すが、本発明はこれら配合例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【0061】
(配合例1:化粧水)
全体を100質量部として、黒生姜抽出物 0.01質量部、生姜抽出物 0.01質量部、ケツメイシ 0.01質量部、グリセリン 10質量部、ジグリセリン 3質量部、1,3-ブチレングリコール 12質量部、ペンチレングリコール 3質量部、ヒアルロン酸ナトリウム 0.1質量部、クエン酸 0.01質量部、クエン酸ナトリウム 0.02質量部、キサンタンガム 0.1質量部、メチルパラベン 0.15質量部、カルボマー 0.2質量部、水酸化ナトリウム 0.03質量部及び水 残部を混合して、化粧水の態様で本発明の組成物を調製した。
【0062】
(配合例2:シャンプー)
全体を100質量部として、黒生姜抽出物 0.01質量部、ホップ抽出物 0.02質量部、カフェイン 0.01重量部、ラウレス硫酸ナトリウム 7.5質量部、コカミドプロピルベタイン 4.2質量部、コカミドDEA 3質量部、1,3-ブチレングリコール 0.1質量部、ポリクオタニウム-10 0.225質量部、クエン酸 0.15質量部、クエン酸ナトリウム 0.05質量部、フェノキシエタノール 0.9質量部及び水 残部を混合して、シャンプーの態様で本発明の組成物を調製した。
【0063】
(配合例3:石鹸)
全体を100質量部として、黒生姜粉砕物 0.5質量部、メリロート抽出物 0.2質量部、エラスチン 0.1重量部、グリセリン 2質量部、オリーブ油 1質量部、EDTA-4ナトリウム 0.1質量部、エチドロン酸4ナトリウム 0.2質量部及び石ケン素地 残部を混合及び固化することにより、石鹸の態様で本発明の組成物を調製した。
【0064】
(配合例4:乳液)
全体を100質量部として、黒生姜抽出物 0.1質量部、アラニン 0.1質量部、アルギニン 0.1質量部、ショ糖脂肪酸エステル 3質量部、グリセリン 12質量部、スクワラン 6質量部、ジメチルシリコーンオイル 24質量部、ポリプロピレングリコール 1質量部、増粘剤 0.06質量部、フェノキシエタノール 0.2質量部、エタノール 5質量部、水酸化ナトリウム 0.01質量部及び精製水 残部を混合して、乳液の態様で本発明の組成物を調製した。
【0065】
(配合例5:化粧用クリーム)
全体を100質量部として、黒生姜抽出物 0.1質量部、イソマルトオリゴ糖 0.1質量部、フラクトオリゴ糖 0.1重量部、スクワラン 15.0質量部、ミリスチン酸オクチルドデシル 4.0質量部、水素添加大豆リン脂質 0.2質量部、ブチルアルコール 2.4質量部、硬化油 1.5質量部、ステアリン酸 1.5質量部、親油型モノステアリン酸グリセリン 1.5質量部、モノステアリン酸ポリグリセリル 0.5質量部、ベヘニルアルコール 0.8質量部、モノミリスチン酸ポリグリセリル 0.7質量部、サラシミツロウ 0.3質量部、d-δ-トコフェロール 0.1質量部、メチルパラベン 0.3質量部、C10~30アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.2質量部、カルボキシビニルポリマー 0.1質量部、1,3-ブタンジオール 18.0質量部、水酸化ナトリウム 0.1質量部及び精製水 残部を混合して、化粧用クリームの態様で本発明の組成物を調製した。
【0066】
(配合例6:パック剤)
全体を100質量部として、黒生姜抽出物 0.1質量部、没食子酸 0.01質量部、ポリビニルアルコール 20.0質量部、グリセリン 5.0質量部、エタノール 20.0質量部、カオリン 6.0質量部、防腐剤 0.2質量部、香料 0.1質量部及び精製水 残部を混合して、パック剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0067】
(配合例7:錠剤)
全体を100質量部として、黒生姜粉末 10質量部、ショウガ抽出物 8質量部、カフェイン5重量部、メリロート 5質量部、結晶性セルロース 20質量部、乳糖 50質量部、ステアリン酸マグネシウム 4質量部及びコーンスターチ 残部を混合及び打錠することにより、錠剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0068】
(配合例8:錠剤)
全体を100質量部として、黒生姜粉末 10質量部、ケツメイシ末 8質量部、メリロート 5質量部、イソマルトオリゴ糖 0.5質量部、フラクトオリゴ糖 0.5質量部、結晶性セルロース 20質量部、乳糖 50質量部、ステアリン酸マグネシウム 4質量部及びコーンスターチ 残部を混合及び打錠することにより、錠剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0069】
(配合例9:顆粒剤)
全体を100質量部として、黒生姜粉末 10質量部、ホップ末 15質量部、ケツメイシ抽出物 5質量部、乳糖 10質量部、ステアリン酸カルシウム 1質量部及び結晶性セルロース 残部を混合及び顆粒化することにより、顆粒剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0070】
(配合例10:カプセル剤)
全体を100質量部として、黒生姜抽出物 10質量部、生姜抽出物 20質量部、エラスチン5質量部、レシチン 8質量部及びオリーブ油 残部を混合して調製したものを内容液として、これをカプセル殻に内包することにより、カプセル剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0071】
(配合例11:液剤)
全体を100質量部として、黒生姜エキス粉末 0.84質量部、アルギニン 1質量部、アラニン 1質量部、果糖ブドウ糖液糖 10質量部、クエン酸 1質量部、安息香酸ナトリウム 0.02質量部、香料製剤 2質量部、スクラロース 0.05質量部、アセスルファムカリウム 0.03質量部、及び精製水 残部を混合して、液剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【実施例0072】
[1.黒生姜抽出物と副素材との組み合わせによるUCP1発現量の影響評価]
(1)黒生姜粉砕物の製造
黒生姜の根茎を洗浄後、1~10mm程度にスライスし、1日天日干しにした。その後、40~100℃に設定したオーブン乾燥機で4~6時間乾燥し、粗粉砕後、130~200℃で5~20秒間殺菌を行った。殺菌した粗粉砕物を粉砕機によって粉砕し、黒生姜の根茎粉砕物を得た。同様の方法により、黒生姜の茎粉砕物、葉粉砕物及び花粉砕物を得た。これらを黒生姜粉砕物とした。
【0073】
(2)黒生姜抽出物の製造
上記した方法により得た黒生姜粉砕物 300gを秤量し、60vol%エタノール 3Lと共に三角フラスコに入れた。途中で何回か攪拌しながら室温で24時間静置して1回目の抽出を行った。これを減圧ろ過して、1回目の抽出液を得た。減圧ろ過後の残渣を60vol%エタノール 3Lに浸漬して、室温で24時間静置して2回目の抽出を行った。これを減圧ろ過して、2回目の抽出液を得た。これら1回目及び2回目の抽出液を併せた抽出混合液を減圧濃縮して黒生姜抽出物を得た。得られた黒生姜抽出物は、57DMF含量が9.27wt%であった。
【0074】
(3)被験物質
ホップ、ケツメイシ、メリロートエキス、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、アルギニン、アラニン、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、グルタミン酸及びメチオニンを被験物質として用いた。
【0075】
(4)コラゲナーゼ溶液の調製
コラゲナーゼが0.2%(W/V)、BSAが1%(W/V)となるように調製したDMEM培地を、室温で1時間振盪することによって、コラゲナーゼ溶液を調製した。
【0076】
(5)褐色脂肪細胞液の調製
ICRマウス(九動)をジエチルエーテルで安楽殺した後、背部から褐色脂肪組織を摘出した。得られた褐色脂肪組織から、ピンセットを用いて、褐色脂肪の周辺に付着している脂肪組織、血管、筋肉などを取り除いた後、褐色脂肪をDMEM中で3回洗浄した。次いで、コラゲナーゼ溶液に褐色脂肪を浸し、溶液中で褐色脂肪をハサミで細かく切り刻む細断処理に供した。細断処理した褐色脂肪をコラゲナーゼ溶液中で、37℃で1時間インキュベートすることにより細胞分散液を得た。得られた細胞分散液を、100μmの孔径のセルストレイナーでろ過し、次いで遠心処理(800rpm、5min、20℃)に供した。次いで、沈殿した細胞をDMEMで懸濁して、細胞懸濁液を得た。次いで、オートクレーブで滅菌処理した25μmフィルターを用いて、得られた細胞懸濁液をろ過した。ろ過上清を遠心(800rpm、5min、20℃)した後、沈殿した細胞を10vol%FBS含有DMEMで懸濁し、褐色脂肪細胞液とした。
【0077】
(6)培地の調製
増殖培地として、10vol%FBS含有DMEMを用いた。
【0078】
分化誘導培地として、増殖培地に2.5μM デキサメタゾン、10μg/ml インスリン及び0.5mM IBMXを含有するものを調製した。
【0079】
維持培地として、上記インスリン溶液を用いて、増殖培地に10μg/ml インスリンを含有するものを調製した。
【0080】
被験物質含有培地は以下のとおりに調製した。すなわち、各被験物質をDMSOに溶解後、維持培地で希釈して、DMSO終濃度が0.5vol%となるように調製し、フィルター滅菌した。滅菌後、0.5vol%DMSO含有維持培地を用いて所定濃度、すなわち、黒生姜抽出物、ホップ(毬花)、ケツメイシ、メリロートエキス、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、アルギニン、アラニン、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、グルタミン酸及びメチオニンを20μg/ml又は40μg/mlとなるように、トログリタゾンは10μMになるように希釈した。
【0081】
(7)細胞培養
75cmフラスコにコラーゲンコート溶液を5ml入れ、室温で約1時間静置後、コラーゲンコート溶液を吸引除去し、5mlのPBSで2回洗浄を行うことによって、コラーゲンコートフラスコを得た。
【0082】
褐色脂肪細胞液をコラーゲンコートフラスコに加え、37℃、5%COインキュベーター内で、褐色脂肪細胞を24時間培養した。次いで、培養後の褐色脂肪細胞を、増殖培地を用いて1回洗浄した後、新しい増殖培地に交換し、サブコンフルエントになるまで培養を行った。
【0083】
培養後の褐色脂肪細胞をトリプシン処理に供し浮遊させた。得られた浮遊細胞を、コラーゲンコート(コラーゲンコート溶液 350μL/ウェル、PBS洗浄 350μL/ウェル×2回)した24ウェルプレートの各ウェルに播種した。
【0084】
増殖培地を用いてコンフルエントになるまで、褐色脂肪細胞を培養した。各ウェルより培地を除去後、各ウェルに分化誘導培地を500μl添加し、48時間培養した。
【0085】
分化誘導培地を除去後、20μg/ml被験物質含有培地の500μlを添加し、6日間培養した。培地は1日おきに交換した。黒生姜抽出物と各被験物質とを組み合わせた培地については、それぞれの40μg/ml被験物質含有培地を250μlずつ添加し、被験物質の最終濃度がそれぞれ20μg/mLとなるようにした。
【0086】
8日間の培養後、上清を回収し、RNeasy Mini Kit(キアゲン社)を用いてRNAを回収し、QuantiTect Reverse Transcription Kit(キアゲン社)を用いてcDNAを合成した。
【0087】
得られたcDNAを鋳型として、UCP1遺伝子に対するプライマー(キアゲン社)を用いて、Rotor-Gene SYBR Green PCR Kit(キアゲン社)により定量リアルタイムPCRを行い、UCP1のmRNA発現量を測定した。内在性コントロールとして、GAPDHプライマー(キアゲン社)を用いて、GAPDHのmRNA発現量を測定した。
【0088】
(8)評価
ホップ、ケツメイシ、メリロートエキス、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、アルギニン、アラニン、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、グルタミン酸及びメチオニンの各被験物質のそれぞれについて、黒生姜抽出物単独、被験物質単独及び黒生姜抽出物と被験物質との組み合わせを供した場合における、UCP1のmRNA発現量の測定結果(内在性コントロールに対する相対発現量)を表1に示す。
【表1】
【0089】
表1が示すように、ホップ、ケツメイシ、メリロートエキス、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、アルギニン、アラニン、イソマルトオリゴ糖及びフラクトオリゴ糖を被験物質とした場合は、黒生姜抽出物単独又は被験物質単独よりも、黒生姜抽出物と被験物質とを組み合わせた方が、UCP1発現量は大きかった。
【0090】
それに対して、驚くべきことに、グルタミン酸及びメチオニンを被験物質とした場合は、黒生姜抽出物単独又は被験物質単独に対して、黒生姜抽出物と被験物質とを組み合わせるとUCP1発現量は小さくなった。
【0091】
さらに驚くべきことに、ホップ、ケツメイシ、メリロートエキス、エラスチン、没食子酸、カフェイン、アルギニン及びイソマルトオリゴ糖を被験物質とした場合は、黒生姜抽出物単独及び被験物質単独の合計UCP1発現量よりも、黒生姜抽出物と被験物質との組み合わせのUCP1発現量は大きかった。
【0092】
以上の結果は、黒生姜抽出物は、ホップ、ケツメイシ、メリロートエキス、ショウガ、エラスチン、没食子酸、カフェイン、アルギニン、アラニン、イソマルトオリゴ糖又はフラクトオリゴ糖と組み合わせることによって、相加的よりもむしろ相乗的にUCP1のmRNA発現量を促進することがわかった。
【0093】
[2.黒生姜抽出物と副素材との組み合わせによる官能試験の影響評価]
被験物質としてイソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、アラニン及びセリンを用いて、黒生姜抽出物単独、被験物質単独及び黒生姜抽出物と被験物質とを組み合わせた組成物を供試物として、甘味、苦味、えぐ味などの項目について官能評価を実施した。供試物2gを、水100mlに懸濁して、各被験試料を得た。被験者として、健常な成人9名を無作為に選出した。
【0094】
これらの被験者9名のそれぞれに対し、各被験試料を経口摂取させ、官能に関する評価を評点法により実施した。評価項目は、「香り」、「味の好み」、「飲み易さ」、「甘さの好み」、「苦さ」、「後味」及び「嗜好性」の7項目とした。
【0095】
官能評価の各項目について、以下のとおりに、評点をつけた。なお、黒生姜抽出物単独についての各項目の評点を5とした。
香り:悪い 1 ← 5 → 9 良い
味の好み:味が好ましくない 1 ← 5 → 9 味が好ましい
飲み易さ:悪い 1 ← 5 → 9 良い
甘さの好み:甘くない 1 ← 5 → 9 甘い
苦さ:苦い 1 ← 5 → 9 苦くない
後味:悪い 1 ← 5 → 9 良い
嗜好性:嗜好性が低い 1 ← 5 → 9 嗜好性が高い
【0096】
各項目の評点の平均値をとった官能評価の結果について、被験物質別に図1図5にそれぞれ示す。
【0097】
図1~5に示されているとおり、総じて、黒生姜抽出物単独又は被験物質単独よりも、黒生姜抽出物と被験物質とを組み合わせた組成物の方が評価項目が優れていた。これらの結果から、被験物質をイソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、アラニン及びセリンとした場合、黒生姜抽出物及び被験物質を含有する組成物は、飲食において嗜好性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の組成物は、非経口的及び経口的のいずれの態様においても適用可能な黒生姜及び特定の成分を含むものであり、特にセルライト、肥満やそれらに伴う疾病を被る被験体にとって有用なものであり、このような被験体の健康及び福祉に資するものである。
図1
図2
図3
図4
図5