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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033561
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】超音波センサアレイおよびカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
A61B8/12
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006249
(22)【出願日】2023-01-19
(62)【分割の表示】P 2019115293の分割
【原出願日】2019-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
(57)【要約】
【課題】複数の超音波センサを備える医療用の超音波センサアレイにおいて機械的クロストークが発生することを抑制する。
【解決手段】複数の超音波センサを備える医療用の超音波センサアレイにおいて、各超音波センサは、圧電素子と、圧電素子を挟むように配置された第1の電極板および第2の電極板とを有する。第1の電極板は、複数の超音波センサのそれぞれに分離されており、第2の電極板は、一体の第2の電極板が、複数の超音波センサに共有されている。第2の電極板は、第1の圧電素子との接続領域と第2の圧電素子との接続領域との間の位置において、各圧電素子が配置される側の表面から厚さ方向の少なくとも一部にわたって切断されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波センサを備える医療用の超音波センサアレイであって、
各前記超音波センサは、圧電素子と、前記圧電素子を挟むように配置された第1の電極板および第2の電極板と、を有し、
前記第1の電極板は、前記複数の超音波センサのそれぞれに分離されており、
前記第2の電極板は、一体の前記第2の電極板が、前記複数の超音波センサに共有されており、
前記第2の電極板は、第1の前記圧電素子との接続領域と第2の前記圧電素子との接続領域との間の位置において、各前記圧電素子が配置される側の表面から厚さ方向の少なくとも一部にわたって切断されている、超音波センサアレイ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波センサアレイであって、さらに、
前記複数の超音波センサに囲まれた位置に配置され、前記第2の電極板を共有する非発振部を有し、
前記第2の電極板は、第1の前記圧電素子との接続領域と第2の前記圧電素子との接続領域との間の位置において、各前記圧電素子が配置される側の表面から厚さ方向の全体にわたって切断されている、超音波センサアレイ。
【請求項3】
ガイドワイヤであって、
ガイドワイヤ本体と、
前記ガイドワイヤ本体の先端部に配置された請求項1または請求項2に記載の超音波センサアレイと、
を備え、
前記超音波センサアレイは、各前記超音波センサの超音波送受信面が前記ガイドワイヤ本体の挿入方向前方を向くように配置されている、ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項3に記載のガイドワイヤであって、
前記ガイドワイヤ本体は、金属製のコアシャフトを備え、
前記超音波センサアレイの前記第2の電極板は、前記コアシャフトに電気的に接続されている、ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項4に記載のガイドワイヤであって、さらに、
前記ガイドワイヤ本体の基端部に配置された電極端子部と、
前記複数の超音波センサのそれぞれの前記第1の電極板と前記電極端子部との間で信号を伝送する信号伝送部と、
を備え、
前記信号伝送部は、前記複数の超音波センサのそれぞれについて個別に設けられた信号線であって、超音波の送信のために前記超音波センサに入力される送信電気信号を前記電極端子部から前記超音波センサへ伝送し、また受信された超音波に応じて前記超音波センサから出力される受信電気信号を前記超音波センサから前記電極端子部へ伝送する信号線を含む、ガイドワイヤ。
【請求項6】
請求項5に記載のガイドワイヤであって、
前記信号伝送部は、一の前記超音波センサについて設けられた一の前記信号線と、他の前記超音波センサについて設けられた他の前記信号線と、の間に配置された定電圧配線を含む、ガイドワイヤ。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のガイドワイヤと、
前記ガイドワイヤの前記電極端子部に電気的に接続される接続端子部を有し、前記信号の伝送を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、各前記超音波センサから出力される前記受信電気信号に基づき血管の状態を示す画像を表示部に表示させる表示制御部を備える、ガイドワイヤシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のガイドワイヤシステムであって、
前記制御装置は、さらに、
終端抵抗回路と、
前記電極端子部および前記接続端子部を介して接続された各前記信号線から受信された前記受信電気信号の中から、1つの前記受信電気信号を順次選択して前記表示制御部に送る第1のスイッチ回路と、
前記電極端子部および前記接続端子部を介して接続された各前記信号線から受信された前記受信電気信号の中から、前記第1のスイッチ回路により選択されなかった残りの各前記受信電気信号を選択して前記終端抵抗回路に送る第2のスイッチ回路と、
を有する、ガイドワイヤシステム。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のガイドワイヤシステムであって、
前記制御装置は、一の前記超音波センサについて設けられた一の前記信号線と、他の前記超音波センサについて設けられた他の前記信号線と、の間のクロストーク量として予め設定された値に基づき、前記一の信号線により伝送される前記受信電気信号を補正する信号補正部を含む、ガイドワイヤシステム。
【請求項10】
カテーテルであって、
カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の先端部に配置された請求項1または請求項2に記載の超音波センサアレイと、
を備え、
前記超音波センサアレイは、各前記超音波センサの超音波送受信面が前記カテーテル本体の挿入方向前方を向くように配置されている、カテーテル。
【請求項11】
請求項10に記載のカテーテルであって、
前記カテーテル本体は、金属製の補強体を備え、
前記超音波センサアレイの前記第2の電極板は、前記補強体に電気的に接続されている、カテーテル。
【請求項12】
基端部及び、先端部を含むイメージングガイドワイヤであって、
前記先端部に、コア部材と、そのコア部材の外周を覆うコイル体と、前記先端部の進行方向に超音波照射面を持つよう配置された超音波センサアレイと、を有し、
前記先端部から基端部にかけて、前記コア部材に沿って延在する複数の信号線と、
前記コア部材の少なくとも一部に沿って延在するポリマージャケットと、を有し、
前記超音波センサアレイは、夫々が第1の電極と第2の電極と超音波発振部とを有する複数の超音波素子を有し、
前記第2の電極は前記複数の超音波素子において共有され、第1の前記超音波発振部との接続領域と第2の前記超音波発振部との接続領域との間の位置において、前記第1と第2の超音波発振部が配置される側の表面から厚さ方向の少なくとも一部にわたって切断され、
前記複数の信号線と前記超音波センサアレイとが接続される、イメージングガイドワイヤ。
【請求項13】
請求項12に記載のイメージングガイドワイヤであって、
前記イメージングガイドワイヤは、前記基端部に電極を有し、
前記超音波センサアレイは、前記複数の信号線を配設した連続したフレキシブル基板上に配置され、前記フレキシブル基板を介して前記電極に接続される、イメージングガイドワイヤ。
【請求項14】
請求項12に記載のイメージングガイドワイヤであって、
前記イメージングガイドワイヤは、前記複数の信号線に接続されるリボン線を有し、
前記リボン線は、前記コア部材に沿って前記基端部まで延在される、イメージングガイドワイヤ。
【請求項15】
請求項12に記載のイメージングガイドワイヤであって、
前記複数の信号線は、前記コア部材に巻きつけられ、前記コイル体が配置された場所において巻き付けピッチは密であり、前記コイル体の最基端側より前記基端部において巻き付けピッチが疎とされる、イメージングガイドワイヤ。
【請求項16】
請求項12に記載のイメージングガイドワイヤであって、
前記複数の信号線は、前記コイル体が配置された場所では前記コア部材に巻き付けられ、前記基端部において前記コア部材に並設される、イメージングガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、超音波センサアレイ、イメージングガイドワイヤ、ガイドワイヤシステム、イメージングカテーテル、及びカテーテルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓疾患の治療を行う手技において、手技を行う医師は、X線透視装置で冠動脈の造影を行いながら、血管の画像をもとに、ガイドワイヤを狭窄部や閉塞部(以下、「病変部」という。)に挿入していく。ガイドワイヤは、その後のバルーンカテーテルやステントを病変部まで持っていく為の一種のレールの役目をしており、ガイドワイヤが病変部を通過するか否かは、手技の成功率に大きく寄与する。
【0003】
ガイドワイヤを通過させるのが特に難しい慢性完全閉塞病変(以下、「CTO」という、Chronic Total Occlusion)の場合は造影剤が病変である閉塞部を通過せず、閉塞部内及びその先の血管の画像も得ることができない。この場合医師は、手先の感覚を頼りに硬い石灰化部などを避け、血管の真腔内でガイドワイヤが通過しやすい通過ルートを探しながらガイドワイヤを挿入していく。そのため、閉塞部内へのガイドワイヤの挿入は、必然的に医師の経験に左右される。または、閉塞部及び周辺の血管の状況によっては、医師はガイドワイヤを閉塞部内を通過させるのではなく、血管壁内を通過するルートを選択することもある。
【0004】
CTOのような血管の情報が乏しい病変部の診断支援を行うガイドワイヤの例として、先端に超音波センサを取り付け、そのエコー情報から病変部の硬さや血流の情報をモニタリングしながら、病変部に挿入されるガイドワイヤが知られている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0005】
ガイドワイヤの進行方向の空間的な血管情報を確認する術として、血管内の前方画像を確認する方法は有効である。特許文献1及び特許文献2には、ガイドワイヤ先端に超音波センサ素子を取り付け、超音波エコーを用いて画像化を行う方法が記載されている。特許文献1及び特許文献2に記載されている、1の超音波センサ素子を用いて超音波の発信と超音波エコーの検出をする場合、超音波センサ素子は発信から受信の間に超音波センサ素子自身の振動が停止するまでの時間を必要とする。そのため超音波センサ素子は、発信から受信の切り替えに時間を要し、近距離での精細度の高い前方画像の取得を行うことが困難となる。
【0006】
また特許文献3には超音波センサを含む複数のセンシング要素を取り付けることが記載されている。かかる構成であれば、発信と受信に別のセンシング要素を用いることができ、センシング要素は、発信から受信の切り替えに時間を要しない。しかし、特許文献3に記載の構成には、ガイドワイヤの直径が細径であることに起因する、複数のセンシング要素の取り付けに関する課題が幾つか存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-112289号公報
【特許文献2】特開平3-205040号公報
【特許文献3】特表2018-516623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1の課題は、受信信号遅延に関する。小さい断面積(開口幅)で精細度の高い画像を得るには、開口幅が小さく方位分解能が低下する欠点を補う為に、高周波(10~50MHz)の超音波センサ素子を複数且つ高密度で配列された超音波センサアレイをガイドワイヤ先端に取り付ける必要がある。複数の個別の超音波センサ素子を用いて超音波センサアレイを構成する場合、個別の超音波センサ素子の配置の位置ずれを生じ、結果として個別の超音波センサ間での信号受信遅延を生じる。このような信号受信遅延は血管の画像の精細度を低下させるため、好ましくない。特許文献3にはガイドワイヤ先端に複数のセンシング要素を取り付けることが記載されているが、センシング要素の配置の位置ずれ及び位置ずれにより生じる信号受信遅延に関する具体的な解決手段は記載されていない。
【0009】
第2の課題は、機械的クロストークの発生に関する。送信側と受信側の超音波センサ素子を高密度で配置した超音波センサアレイにおいて、送信側の超音波センサ素子と受信側の超音波センサ素子との間で機械的振動が伝搬することよる機械的クロストークが発生する。このような機械的クロストークの発生は、血管の画像の精細度を低下させるため、好ましくない。特許文献3に、ガイドワイヤ先端に複数のセンシング要素を取り付けることが記載されているが、この機械的クロストークに関する具体的な解決手段は記載されていない。
【0010】
第3の課題は、信号の伝搬により生じる電気的クロストークに関する。特許文献3には、複数のセンシング要素に接続された複数の電気伝導体がガイドワイヤのシャフトに巻回されることが記載されている。しかし特許文献3に記載されている、比較的近い離間距離で並設した電気伝導体に信号を流した場合、信号を流した電気伝導体に流れる電流の変動が他の電気伝導体で電流の変化を生じさせる、電気的クロストークが発生する。このような電気的クロストークの発生は、他の電気伝導体に流れる信号の劣化として表れ、結果として血管の画像の精細度を低下させるため、好ましくない。
【0011】
一般に電気的クロストークの抑制には、同軸線やシールド線などが用いられる。一方で、ガイドワイヤの先端のシャフトは柔軟且つ細径であることが求められる。例えば同軸線のような太い信号線をガイドワイヤのシャフトに巻回して使用した場合、ガイドワイヤの横断面径が太くなるため血管の通過性が低下する。またガイドワイヤのシャフトに並設した場合、当該同軸線の存在によりガイドワイヤの横断面内での方向による剛性が異なってくるために、血管の湾曲に沿ってガイドワイヤが湾曲するための柔軟性が低下する。そのためガイドワイヤにおいて、その先端に配置した超音波センサアレイで取得した信号の伝搬に同軸線等の太い信号線を使用することは困難である。しかし特許文献3には電気的クロストークに関する具体的な解決手段は記載されていない。
【0012】
第4の課題は、信号線の終端部において生じる電気信号の反射に関する。信号線を伝搬してきた電気信号は信号線の終端部又は信号線のインピーダンスの変化が生じる箇所(例えば信号線の繋ぎ変えが行われる箇所)において反射を生じ、反射した信号により、当該信号線内での電気信号自体の電圧変動を歪める現象が発生する。このような反射による電圧変動の歪は、当該信号線に流れる信号の劣化として表れ、結果として血管の画像の精細度を低下させるため、好ましくない。特許文献3には、この電気信号の反射に関する具体的な解決手段は記載されていない。
【0013】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0015】
(1)本明細書に開示される超音波センサアレイは、複数の超音波センサを備える医療用の超音波センサアレイであって、各前記超音波センサは、圧電素子と、前記圧電素子を挟むように配置された第1の電極板および第2の電極板と、を有し、前記第1の電極板は、前記複数の超音波センサのそれぞれに分離されており、前記第2の電極板は、一体の前記第2の電極板が、前記複数の超音波センサに共有されており、前記第2の電極板は、第1の前記圧電素子との接続領域と第2の前記圧電素子との接続領域との間の位置において、切断されず、又は各前記圧電素子が配置される側の表面から厚さ方向の一部において切断されている。本超音波センサアレイによれば、1の超音波センサ母材を準備し、第1の電極板の側から圧電素子を切断し、第2の電極板を切断せず又は第2の電極板の厚さ方向の途中まで切断をすることで、前記複数の超音波センサは第2の電極板の厚さ方向に切断されない共有された部分が残るとの構造を有することになる。よって前記超音波センサアレイを構成する前記複数の超音波センサが配置される配置平面内において、位置ずれを抑制することができる。その結果、前記複数の超音波センサ間での位置ずれによる超音波信号の送受信タイミングのずれを抑制することができる。
【0016】
(2)上記超音波センサアレイにおいて、隣接する第1の超音波センサと第2の超音波センサの間において、前記第2の電極板は、前記第1の超音波センサの前記圧電素子との接続領域と前記第2の超音波センサの前記圧電素子との接続領域との間の位置において、各前記圧電素子が配置される側の表面から厚さ方向の少なくとも一部にわたって切断されている。本超音波センサアレイによれば、第2の電極板における各圧電素子が配置される側の表面が切断されているため、ある1つの超音波センサの圧電素子の振動が第2の電極板を介して超音波センサの配列方向に伝わることを抑制することができる。その結果、隣接する他の超音波センサの圧電素子も振動する機械的クロストークが発生することを抑制することができる。
【0017】
(3)上記超音波センサアレイにおいて、さらに、前記複数の超音波センサに囲まれた位置に配置され、前記第2の電極板を共有する非発振部を有し、前記第1の超音波センサと前記非発振部との間の位置において前記第2の電極板は切断されず又は厚さ方向の一部にわたって切断され、前記第1の超音波センサの前記圧電素子との接続領域と前記第2の超音波センサの前記圧電素子との接続領域との間の位置において、各前記圧電素子が配置される側の表面から厚さ方向の全体にわたって切断されている構成としてもよい。本超音波センサアレイによれば、1つの超音波センサの圧電素子が振動しても、該振動は、他の超音波センサに直接的には伝搬されず非発振部に伝搬され、非発振部において減衰するため、該振動が他の超音波センサの圧電素子に伝わることを抑制することができ、その結果、他の超音波センサの圧電素子も振動する機械的クロストークが発生することを効果的に抑制することができる。
【0018】
(4)また、本明細書に開示されるガイドワイヤには、ガイドワイヤ本体と、前記ガイドワイヤ本体の先端部に配置された上記超音波センサアレイと、を備え、前記超音波センサアレイは、各前記超音波センサの超音波送受信面が前記ガイドワイヤ本体の挿入方向前方を向くように配置されている構成としてもよい。本ガイドワイヤによれば、比較的径が小さいガイドワイヤにおいて、ガイドワイヤ本体の先端部に前方視で超音波センサアレイが配置されているため、超音波センサアレイを血栓内に容易に潜入させることが可能であり、超音波センサアレイを用いた血栓内の精細度の高い画像情報の取得を実現することができる。
【0019】
(5)上記ガイドワイヤにおいて、前記ガイドワイヤ本体は、金属製のコアシャフトを備え、前記超音波センサアレイの前記第2の電極板は、前記コアシャフトに電気的に接続されている構成としてもよい。本ガイドワイヤによれば、コアシャフトを複数の超音波センサに電気的に接続された基準電位線として利用することができ、装置構成の簡素化を実現することができる。
【0020】
(6)上記ガイドワイヤにおいて、さらに、前記ガイドワイヤ本体の基端部に配置された電極端子部と、前記複数の超音波センサのそれぞれの前記第1の電極板と前記電極端子部との間で信号を伝送する信号伝送部と、を備え、前記信号伝送部は、前記複数の超音波センサのそれぞれについて個別に設けられた信号線であって、超音波の送信のために前記超音波センサに入力される送信電気信号を前記電極端子部から前記超音波センサへ伝送し、また受信された超音波に応じて前記超音波センサから出力される受信電気信号を前記超音波センサから前記電極端子部へ伝送する信号線を含む構成としてもよい。本ガイドワイヤによれば、各超音波センサについての信号伝送を制御するIC等を用いることなく、電極端子部と超音波センサとの間の信号伝送を実現することができるため、IC等を用いることに伴う電圧値制限を回避することができ、該電圧値制限に起因して各超音波センサの探索深度が浅くなることを回避することができる。
【0021】
(7)上記ガイドワイヤにおいて、前記信号伝送部は、前記超音波センサアレイに接続される複数の信号線を並設し、一の前記超音波センサについて設けられた一の前記信号線(第1の信号線)と、他の前記超音波センサについて設けられた他の前記信号線(第2の信号線)と、の間に配置された定電圧配線を含む構成としてもよい。また該定電圧配線は、基準電位線に接続されてよい。このような構成により、前記第2の信号線に発生する電圧の変動の程度は、前記第1の信号線に流れる電流に起因して前記定電圧配線に生じる電圧の変動程度により決定されることになり、電気的クロストークを小さくすることができる。よって複数の信号線を並設しても、一の超音波センサについて設けられた第1の信号線と、他の超音波センサについて設けられた第2の信号線と、の間の電気的クロストークの発生を抑制することができ、超音波センサアレイを用いた血管の精細度の高い画像情報の取得を実現することができる。
【0022】
(8)また、本明細書に開示されるガイドワイヤシステムは、上記ガイドワイヤと、前記ガイドワイヤの前記電極端子部に電気的に接続される接続端子部を有し、前記信号の伝送を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、各前記超音波センサから出力される前記受信電気信号に基づき血管の状態を示す画像を表示部に表示させる表示制御部を備える構成としてもよい。本ガイドワイヤシステムによれば、超音波センサアレイを用いた血管の状態(例えば、血栓の状態)を示す精細度の高い画像の表示を実現することができる。
【0023】
(9)上記ガイドワイヤシステムにおいて、前記制御装置は、さらに、終端抵抗回路と、前記電極端子部および前記接続端子部を介して接続された各前記信号線から受信された前記受信電気信号の中から、1つの前記受信電気信号を順次選択して前記表示制御部に送る第1のスイッチ回路と、前記電極端子部および前記接続端子部を介して接続された各前記信号線から受信された前記受信電気信号の中から、前記第1のスイッチ回路により選択されなかった残りの各前記受信電気信号を選択して前記終端抵抗回路に送る第2のスイッチ回路と、を有する構成としてもよい。本ガイドワイヤシステムにおいて前記信号線の終端部での信号の反射の発生を抑制することにより、信号線の終端部での反射による信号の歪の発生を効果的に抑制することができ、超音波センサアレイを用いたより精細度の高い画像情報の取得を実現することができる。
【0024】
(10)上記ガイドワイヤシステムにおいて、前記制御装置は、一の前記超音波センサについて設けられた一の前記信号線と、他の前記超音波センサについて設けられた他の前記信号線と、の間の電気的クロストーク量として予め設定された値に基づき、前記一の信号線により伝送される前記受信電気信号を補正する信号補正部を含む構成としてもよい。本ガイドワイヤシステムによれば、システムの構成及びシステム周辺環境の変動により信号線に生じる電気的クロストークの量を把握し前記受信電気信号の補正を行うことで、該電気的クロストークの影響を軽減することができ、超音波センサアレイを用いたより精細度の高い画像情報の取得を実現することができる。
【0025】
(11)また、本明細書に開示されるカテーテルは、カテーテル本体と、前記カテーテル本体の先端部に配置された上記超音波センサアレイと、を備え、前記超音波センサアレイは、各前記超音波センサの超音波送受信面が前記カテーテル本体の挿入方向前方を向くように配置されている構成としてもよい。本カテーテルによれば、各超音波センサ間の信号受信遅延、機械的クロストーク、電気的クロストークにより画像の精細度の低下が発生することを抑制することができる。
【0026】
(12)上記カテーテルにおいて、前記カテーテル本体は、金属製の補強体を備え、前記超音波センサアレイの前記第2の電極板は、前記補強体に電気的に接続されている構成としてもよい。本カテーテルによれば、補強体を複数の超音波センサに電気的に接続された基準電位線として利用することができ、装置構成の簡素化を実現することができる。
【0027】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、超音波センサアレイ、超音波センサアレイを備えるガイドワイヤ(イメージングガイドワイヤ)またはカテーテル(イメージングカテーテル)、ガイドワイヤまたはカテーテルと制御装置とを備えるシステム(ガイドワイヤシステムまたはカテーテルシステム)、それらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】第1実施形態におけるガイドワイヤ110の構成を概略的に示す説明図
図1B】第1実施形態におけるガイドワイヤ110の他の構成を概略的に示す説明図
図1C】第1実施形態におけるガイドワイヤ110の他の構成を概略的に示す説明図
図2】本実施形態における超音波センサアレイ30の構成を概略的に示す説明図
図3】本実施形態における超音波センサアレイ30の構成を概略的に示す説明図
図4】FPC40の構成を概略的に示す説明図
図5】ガイドワイヤ110における各部の構成をより詳細に示す斜視図
図6】ガイドワイヤ110における各部の構成をより詳細に示す斜視図
図7】ガイドワイヤシステム100の構成を概略的に示す説明図
図8】制御装置150を構成するPIM130およびコンソール140の内部構成を概略的に示す説明図
図9】PIM130の動作の一例を示すタイミングチャート
図10】コンソール140の制御部141の構成を示す説明図
図11】ガイドワイヤシステム100により血管の状態を示す画像を表示している様子を模式的に示す説明図
図12】ガイドワイヤシステム100により血管の状態を示す画像を表示している様子を模式的に示す説明図
図13】ガイドワイヤシステム100により血管の状態を示す画像を表示している様子を模式的に示す説明図
図14】ガイドワイヤシステム100により生成された血管の状態を示す画像の一例を示す説明図
図15】ガイドワイヤシステム100により生成された血管の状態を示す画像の一例を示す説明図
図16】ガイドワイヤシステム100により生成された血管の状態を示す3次元画像の一例を示す説明図
図17】第1実施形態の変形例におけるPIM130の動作の一例を示すタイミングチャート
図18】第2実施形態における超音波センサアレイ30の構成を概略的に示す説明図
図19】第3実施形態のガイドワイヤ110における超音波センサアレイ30およびFPC40の周辺部分の構成を概略的に示す説明図
図20】第3実施形態の第1の変形例のガイドワイヤ110における超音波センサアレイ30およびFPC40の周辺部分の構成を概略的に示す説明図
図21】第3実施形態の第2の変形例のガイドワイヤ110における超音波センサアレイ30の構成を概略的に示す説明図
図22】第4実施形態におけるカテーテル200の構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
A.第1実施形態:
A-1.ガイドワイヤ110の構成:
図1Aは、第1実施形態におけるガイドワイヤ110の構成を概略的に示す説明図である。図1Aには、ガイドワイヤ110の側断面(YZ断面)の構成が示されている。図1Aにおいて、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。なお、図1Aでは、ガイドワイヤ110が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、ガイドワイヤ110は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。また、図1Aでは、ガイドワイヤ110の一部分の図示を省略している。
【0030】
本実施形態のガイドワイヤ110は、超音波センサを用いて血管内に超音波を送信すると共に、血管内で反射して戻ってきた超音波(エコー)を受信し、送信から受信までの経過時間や受信信号の振幅等に基づき、血管の状態を可視化(画像化)する診断支援に用いられるイメージングガイドワイヤである。そのためガイドワイヤ110は、ガイドワイヤ本体112と、ガイドワイヤ本体112の先端部に配置された超音波センサアレイ30とを備える。
【0031】
ガイドワイヤ本体112は、全体として細径の(例えば、直径0.2mm~0.5mm程度の)ワイヤ状の装置である。ガイドワイヤ本体112は、コアシャフト10と、コイル体22とを備える。またコイル体22の外層に、ポリウレタン等のウレタン系樹脂、ポリアミド等のアミド系樹脂の群から選択される熱可塑性樹脂からなる樹脂被覆層(ポリマージャケット)18を有し、また樹脂被覆層内に放射線不透過部材を有して良い(図1Bに示す他の構成参照)。なお、図1Bに示す構成では、樹脂被覆層18がガイドワイヤ110の基端面を覆っているが、樹脂被覆層18がガイドワイヤ110の基端面の少なくとも一部を覆っていなくてもよい。
【0032】
コアシャフト10は、先端側が細径であり基端側が太径である棒状の部材である。より具体的には、コアシャフト10は、円形断面の棒状の細径部11と、細径部11に対して基端側に位置し、細径部11より径の大きい円形断面の棒状の太径部13と、細径部11と太径部13との間に位置し、細径部11との境界位置から太径部13との境界位置に向けて径が徐々に大きくなるテーパ部12とから構成されている。コアシャフト10は、例えば、金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等により構成されている。
【0033】
コイル体22は、素線を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材である。コイル体22は、コアシャフト10の先端部(本実施形態では、細径部11およびテーパ部12)の外周を取り囲むように配置されている。コイル体22は、例えば、金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、またはコバルト合金といった放射線透過性合金や、金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)といった放射線不透過性合金により構成されている。
【0034】
ガイドワイヤ本体112のコアシャフト10の先端部には、バッキング材(背面負荷材)60が設けられている。バッキング材60は、超音波センサアレイ30を機械的に支持すると共に、超音波センサアレイ30から発せられた不要な超音波を吸収するための部材であり、例えば樹脂材料により構成されている。
【0035】
図2および図3は、本実施形態における超音波センサアレイ30の構成を概略的に示す説明図である。図2には、超音波センサアレイ30の平面(XY平面)の構成が示されており、図3のA欄には、図2のIII-IIIの位置における超音波センサアレイ30の断面(XZ断面)の構成が示されている。なお、図3のB欄には、後述する別構成の超音波センサアレイ30Xの断面(XZ断面)の構成が示されている。また図3のC欄には、従来の超音波センサアレイ30Yの断面の構成が示されている。
【0036】
超音波センサアレイ30は、送信電気信号に基づき超音波の送信を行い、血管内で反射して戻ってきた超音波(エコー)を受信して、受信電気信号を出力する超音波探触子(プローブ)である。超音波センサアレイ30は、ガイドワイヤ本体112の先端部に実装するために、比較的小さいサイズ(例えば、幅および高さが0.5mm以下)とされている。
【0037】
図2および図3のA欄又はB欄に示すように、本実施形態における超音波センサアレイ30,30Xは、2次元に並べて配置された複数の超音波センサ31,31Xを備えている。より具体的には、超音波センサアレイ30,30Xは、X軸方向に3列、Y軸方向に3列に並べられた合計9個の超音波センサ31,31Xを備えている。各超音波センサ31,31Xの超音波送受信面は、ガイドワイヤ本体112の挿入方向前方(図1Aの状態ではZ軸正方向)を向くように配置されている。すなわち、本実施形態のガイドワイヤ110は、前方視の画像化を実現可能である。
【0038】
各超音波センサ31,31Xは、超音波発振部である圧電素子32,32Xと、圧電素子32,32Xを挟むように配置された第1の電極板33,33Xおよび第2の電極板34,34Xとを有している。圧電素子32,32Xは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等のセラミックスや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の高分子体により構成されている。また、第1の電極板33,33Xおよび第2の電極板34,34Xは、例えば銅等の導電性材料により構成されている。なお、超音波センサアレイ30,30Xを構成する各超音波センサ31,31Xの超音波送受信面側に、圧電素子32,32Xと生体との音響インピーダンスを整合するための音響整合層が設けられていてもよい。
【0039】
また超音波発振部としては、圧電素子32のほか、CMUT(Capacitive Micro-machined Ultrasound Transducer)等のMEMSデバイスを用いても良い。
【0040】
本実施形態の超音波センサアレイ30,30Xでは、図3のA欄又はB欄に示すように、第1の電極板33,33Xは、複数の超音波センサ31,31Xのそれぞれに分離されている。すなわち、各超音波センサ31,31Xについて、独立した1つの第1の電極板33,33Xが設けられている。一方、第2の電極板34,34Xについては、一体の第2の電極板34,34Xが、各超音波センサ31,31Xに共有されている。すなわち、1つの第2の電極板34,34Xが、すべての超音波センサ31,31Xの第2の電極板34,34Xとして機能する。第2の電極板34,34Xは、金属製のコアシャフト10に電気的に接続されており、第2の電極板34,34Xの電位は、所定の基準電位(本実施形態及び図面では、0V又はGNDと表記)とされる。
【0041】
また、図3のA欄に示す超音波センサアレイ30では、各超音波センサ31に共有される第2の電極板34は、ある圧電素子32(第1の圧電素子)との接続領域と他の圧電素子32(第2の圧電素子)との接続領域との間の位置において、各圧電素子32が配置される側の表面36(図3のA欄では上面)に、凹部35が形成されている。すなわち、第2の電極板34は、該位置において、該表面36から厚さ方向(Z軸方向)の一部にわたって切断されている。なお、図3のA欄に示す超音波センサアレイ30におけるすべての上記位置において、そのような構成(第2の電極板34が厚さ方向の一部にわたって切断されている構成)が採用されている。
【0042】
また、図1Aに示すように、ガイドワイヤ110は、ガイドワイヤ本体112の基端部に配置された電極端子部70と、超音波センサアレイ30を構成する各超音波センサ31の第1の電極板33と電極端子部70との間で信号を伝送するFPC(Flexible Printed Circuits、フレキシブルプリント回路基板)40とを備える。FPC40は、特許請求の範囲における信号伝送部に相当する。
【0043】
図4は、FPC40の構成を概略的に示す説明図である。図4には、FPC40の一部分の断面(XY断面)の構成が示されている。FPC40は、例えばポリイミド等の絶縁性材料により構成されたベース層上に、銅等の導電性材料により構成された配線層が配置され、配線層の上にベース層と同様の絶縁性材料により構成されたカバー層が配置された、柔軟性のある回路基板である。なお図4のFPC40に替えて、ほぼ同様の構造になるリボン線を用いてもよい。
【0044】
図4に示すように、FPC40は、配線層において、n本の信号線41(41A,41B,41C,41D・・・)を有する。なお、nは、超音波センサアレイ30を構成する超音波センサ31の個数であり、本実施形態ではn=9である。各信号線41は、超音波センサアレイ30を構成する複数の超音波センサ31のそれぞれについて個別に設けられたもの(すなわち、各超音波センサ31についての専用信号線)であり、各超音波センサ31の第1の電極板33に電気的に接続されている。各信号線41は、超音波の送信のために超音波センサ31に入力される送信電気信号を電極端子部70から超音波センサ31へ伝送し、また受信された超音波に応じて超音波センサ31から出力される受信電気信号を超音波センサ31から電極端子部70へ伝送する。また、FPC40は、配線層において、一の超音波センサ31について設けられた一の信号線41(例えば41A)と、他の超音波センサ31について設けられた他の信号線41(例えば41B)と、の間に配置された定電圧配線42を有する。定電圧配線42の電位は、所定の基準電位(本実施形態及び図面では、0V又はGNDと表記)とされる。
【0045】
定電圧配線42は、超音波センサ31の電極もしくは、ガイドワイヤ110のコアシャフト10のテーパ部12近傍で、コアシャフト10に電気的に接続されるとともに、電極端子部70もしくは制御装置内で、コアシャフト10に電気的に接続される。このとき、図1Cに示す他の構成のように、先端側と基端側との2箇所で、例えば半田材19によって定電圧配線42をコアシャフト10に電気的に接続することにより、先端側と基端側との電位差をなくすようにしてもよい。
【0046】
各超音波センサ31において、FPC40の信号線41を介して電極端子部70に接続された第1の電極板33と、コアシャフト10に電気的に接続されることにより基準電位とされた第2の電極板34とを介して、圧電素子32に送信電気信号に応じた電圧が印加されると、圧電素子32が伸縮することによって圧電素子32から超音波が送信される。また、圧電素子32に超音波(血管内からの反射波)が受信されると、圧電素子32が伸縮することによって第1の電極板33と第2の電極板34との間に電圧が発生し、受信された超音波に応じた受信電気信号が電極端子部70に向けて出力される。なお、比較的細径のガイドワイヤ110に実装するために比較的サイズが小さい超音波センサアレイ30において、分解能を向上させるために、超音波センサ31から送信される超音波の周波数は、例えば、10MHz以上であることが好ましく、20MHz以上であることがさらに好ましい。
【0047】
また、図1Aに示すように、ガイドワイヤ110は、ハウジング50を備える。ハウジング50は、ガイドワイヤ110の先端部において、超音波センサアレイ30およびFPC40の一部を覆う略円筒状の部材であり、例えば金属により構成されている。本実施形態では、ハウジング50は、コイル体22の先端に、例えば溶接により接合されている。ハウジング50は、超音波センサアレイ30やFPC40を保護すると共に、ガイドワイヤ110の先端チップとしても機能する。なお、ハウジング50は、コイル体22と一体の部材であってもよく、又は樹脂材料であっても良い。
【0048】
また、図1Aに示すように、ガイドワイヤ110は、アウターシャフト80を備える。アウターシャフト80は、コイル体22より基端側において、コアシャフト10やFPC40の周囲を覆う略円筒状の部材であり、例えば金属により構成されている。本実施形態では、アウターシャフト80は、コイル体22の基端に、例えば溶接により接合されている。アウターシャフト80は、FPC40を保護すると共に、各電気信号のシールドとして機能する。なお、アウターシャフト80は、コイル体22と一体の部材であってもよい。
【0049】
図5および図6は、上述したガイドワイヤ110における各部の構成をより詳細に示す斜視図である。図5のA欄には、超音波センサアレイ30を実装するFPC40の構成が示されており、図5のB欄には、FPC40を覆うハウジング50の構成が示されている。図5のA欄およびB欄に示すように、超音波センサアレイ30が実装されたFPC40は折り曲げられて、ハウジング50内に収容される。
【0050】
また、図6のA欄およびB欄には、コアシャフト10の周囲に配置されたFPC40およびアウターシャフト80の構成が示されている。図6のA欄およびB欄に示すように、FPC40は、コアシャフト10の周囲に螺旋状に巻き付けられており、アウターシャフト80はそのようなFPC40の外側を覆っている。本実施形態では、FPC40がコアシャフト10の周囲に螺旋状に巻き付けられているため、FPC40の存在に起因するコアシャフト10の剛性増加量に指向性が生ずることを抑制することができ、ガイドワイヤ110の操作性の低下を抑制することができる。
【0051】
FPC40がコアシャフト10の周囲を巻回される際、巻回ピッチはコアシャフト10の先端側と基端側との間で、全体として均一ピッチ又は異なるピッチであっても良く、先端側においては均一ピッチで巻回し、途中からピッチが変化するのであっても良い。例えば全体として均一ピッチでFPC40を巻回した場合、ガイドワイヤ110はFPC40を巻回されたことに起因する場所ごとの剛性の変化は発生しない。一方、FPC40の巻回ピッチを場所ごとに変化させることにより、ガイドワイヤ110は長軸に沿った場所ごとに求められる剛性を実現することができる。またコイル体22が配置されている場所においてはFPC40は密に巻回されて配置し、基端側のコイル体22が配置されていない場所ではFPC40は疎に巻回され又は巻回されずにコアシャフト10に並設することができる。コイル体22が配置されている場所では、ガイドワイヤ110は血管の湾曲に沿って任意の方向に湾曲できる必要があり横断面内の方向による剛性増加量に指向性が生じないようにするために密に巻回される。ガイドワイヤ110のコイル体22が配置されていない場所は冠動脈内に進入しないことから、当該場所において横断面内の方向による剛性増加量に指向性があったとしてもガイドワイヤ110の進行への影響が小さく、FPC40はコアシャフトに対し疎に巻回され又は巻回されずに並設されて良い。
【0052】
若しくは、コイル体22が配置された中においては、FPC40はコアシャフト10の周囲を巻回し、コイル体22の基端側端部よりも基端側においてFPC40はコアシャフト10に沿って延在するのであっても良い。かかる構成により、コイル体22が配置された範囲内では、ガイドワイヤ110の横断面内において、コアシャフト10の中心から横断面内の任意の方向において大よそ均一な剛性及び柔軟性を得ることが可能となる。一方でコイル体22よりも近位側では、FPC40の配置による横断面内の任意の方向での剛性及び柔軟性のばらつきの抑制よりも、FPC40内の信号の劣化を抑制することを優先するために、かかる構成とされて良い。
【0053】
また図6のA欄でコアシャフト10を巻回するFPC40の記載をしているが、リボン線を使用し規則正しく配列されることで同様の構造を得ることができる。若しくは、超音波センサアレイ30に接続したFPC40をコアシャフト10の周囲に巻き付けられた後、コイル体22が配置された中において、FPC40はリボン線に接続され変更されるのであっても良い。FPC40からリボン線への変更は、ガイドワイヤ110の長軸に沿った剛性の変化が少ない箇所で行うのが良い。
【0054】
また、図6のC欄には、ガイドワイヤ110の基端に設けられた電極端子部70の構成が示されている。電極端子部70の近傍においては、コアシャフト10の外周に巻き付けられたFPC40のカバー層(カバーレイフィルム)が除去され、配線層が露出している。このFPC40の配線層が露出した部分の外側に、開口が形成された電極リング72が配置され、該開口に充填された導電性ペーストにより、電極リング72とFPC40の配線層とが電気的に接続されている。なお、電極リング72の先端側および基端側には、絶縁性樹脂90が配置されている。
【0055】
なお、本実施形態の超音波センサアレイ30の製造方法は、例えば以下の通りである。はじめに、圧電素子32の材料(例えば、PZT)により構成された板状の圧電体ウェハの第1の表面に第1の電極層(第1の電極板33)を成膜すると共に、圧電体ウェハの第1の表面とは反対側の第2の表面に第2の電極層(第2の電極板34)を成膜することで超音波センサの母材を形成する。次に、レーザを用いて超音波センサ母材の第1の電極層および圧電体ウェハを切断することにより、第1の電極層を複数の超音波センサ31に対応する複数の第1の電極板33に分割し、かつ、圧電体ウェハを複数の超音波センサ31に対応する複数の圧電素子32に分割する。このとき、図3のA欄を参照して上述したように、第2の電極板34(第2の電極層)における各圧電素子32が配置される側の表面36に凹部35が形成されるように、第2の電極板34の表面も一緒に切断する。または図3のB欄を参照して上述したように、圧電体ウェハを複数の圧電素子に分割したところで、切断を終了する。このように、レーザを用いた加工を行うことにより、微小なサイズでありながら、複数の超音波センサ31を備える超音波センサアレイ30を作製することができる。なお、作製された超音波センサアレイ30は、FPC40上の所定の位置に配置され、例えば導電性接着剤によりFPC40に接合される。
【0056】
A-2.ガイドワイヤシステム100の構成:
次に、上述した構成のガイドワイヤ110を備えるガイドワイヤシステム100の構成について説明する。図7は、ガイドワイヤシステム100の構成を概略的に示す説明図である。ガイドワイヤシステム100は、ガイドワイヤ110に加えて、ガイドワイヤ110における各信号の伝送を制御する制御装置150を備える。
【0057】
制御装置150は、コネクタ120と、PIM(Patient Interface Module)130と、コンソール140とを備える。コネクタ120とPIM130との間、およびPIM130とコンソール140との間は、ケーブル122,124を介して接続されている。コネクタ120は、ガイドワイヤ110の電極端子部70に電気的に接続され、ガイドワイヤ110との間で各信号のやりとりを行う接続端子である。コネクタ120は、特許請求の範囲における接続端子部に相当する。またケーブル124は、無線接続にすることも可能である。
【0058】
図8は、制御装置150を構成するPIM130およびコンソール140の内部構成を概略的に示す説明図である。まず、PIM130の構成について説明する。PIM130は、主として、ガイドワイヤ110における超音波の送受信を制御する装置である。PIM130は、コネクタ120と接続されたn本の信号線LINE(1)~LINE(n)と、n本の信号線LINE(1)~LINE(n)と接続された3つのスイッチ回路(第1のスイッチ回路SW1、第2のスイッチ回路SW2、第3のスイッチ回路SW3)と、第3のスイッチ回路SW3と接続され、送信電気信号の送信のためのTXドライバ131と、第1のスイッチ回路SW1と接続され、受信電気信号の受信のための保護回路132およびプリアンプ(前置増幅器)133と、n本の信号線G(1)~G(n)を介して第2のスイッチ回路SW2と接続され、超音波の送信及び受信を行わない信号線のインピーダンス整合のための終端抵抗Rgを有するn個の終端抵抗回路X(1)~X(n)とを有する。なお、上述したように、nは、超音波センサアレイ30を構成する超音波センサ31の個数であり、本実施形態ではn=9である。
【0059】
n本の信号線LINE(1)~LINE(n)は、それぞれ、コネクタ120およびガイドワイヤ110の電極端子部70を介して、ガイドワイヤ110のFPC40に含まれるn本の信号線41の1つと電気的に接続される。これにより、n本の信号線LINE(1)~信号線LINE(n)は、それぞれ、超音波センサアレイ30を構成するn個の超音波センサ31の1つの第1の電極板33に電気的に接続される。
【0060】
また、図8の右下欄に示すように、第3のスイッチ回路SW3は、n本の信号線LINE(1)~信号線LINE(n)の内の1つを順次選択し、選択された信号線LINEを送信電気信号の送信のためのTXドライバ131に接続する。また、第1のスイッチ回路SW1は、n本の信号線LINE(1)~信号線LINE(n)の内の別の1つを順次選択し、選択された信号線LINEを受信電気信号の受信のための保護回路132およびプリアンプ133に接続する。また、第2のスイッチ回路SW2は、n本の信号線LINE(1)~信号線LINE(n)の内、第3のスイッチ回路SW3および第1のスイッチ回路SW1のいずれにも選択されなかった(n-2)本の信号線LINEを選択し、選択された信号線LINEを、対応する信号線Gを介してインピーダンス整合のための終端抵抗回路Xに接続する。(n-2)本の信号線LINEには、夫々の信号線に接続された超音波センサ31からの受信電気信号又は第1のスイッチ回路SW1に接続された信号線LINEから(n-2)本の信号線LINEに生じた信号の反射による電位変動が発生する。(n-2)本の信号線LINEが終端抵抗回路Xに接続されることにより、(n-2)本の信号線LINEに生じた電位変動に対して、該信号線内で反射としての更なる電位変動を生じることなく所定の基準電位(本実施形態及び図面では、0V又はGNDと表記)に接続することができる。SW3、SW1は信号線を1本ずつ選択するスイッチ回路の例を説明したが、複数の信号線を同時に選択するスイッチ回路を用いても良い。
【0061】
図9は、PIM130の動作の一例を示すタイミングチャートである。図9には、PIM130によるガイドワイヤ110の制御の実行中において、n本の信号線LINE(1)~信号線LINE(n)の内、信号線LINE(1)が超音波の送信に用いられ、信号線LINE(2)が超音波の受信に用いられ、その他の信号線LINE(3)~信号線LINE(n)が超音波の送信にも受信にも用いられない期間における、各信号の一例が示されている。
【0062】
コンソール140から出力されるADD信号がLレベルからHレベルに切り替えられたタイミングで、各スイッチ回路SW1~SW3は信号線LINEを選択する。例えば、図9の例では、第3のスイッチ回路SW3が信号線LINE(1)を選択し、第1のスイッチ回路SW1が信号線LINE(2)を選択し、第2のスイッチ回路SW2が信号線LINE(3)~LINE(n)を選択する。これにより、信号線LINE(1)がTXドライバ131に接続され、信号線LINE(2)が保護回路132およびプリアンプ133に接続され、信号線LINE(3)~LINE(n)がそれぞれ対応する終端抵抗回路X(3)~X(n)に接続される。なお、この時点で、RESET信号はHレベルになっており、終端抵抗回路X(3)~X(n)に接続された信号線LINE(3)~LINE(n)はGNDに接続された状態となっている。また、この時点で、RESET_RX信号もHレベルになっており、信号線LINE(2)や保護回路132もGNDに接続された状態となっている。
【0063】
コンソール140から出力されるSTART信号がLレベルからHレベルに切り替えられたタイミングで、TXドライバ131から第3のスイッチ回路SW3に向けて送信電気信号TXsignalが出力される。送信電気信号TXsignalは、所定の周波数(例えば、20MHz)を有する所定の信号レベル(例えば、+50V/-50V)のパルス波である。送信電気信号TXsignalは、第3のスイッチ回路SW3を介して信号線LINE(1)に入力される。その結果、超音波センサアレイ30を構成する複数の超音波センサ31の内、FPC40の信号線41を介して信号線LINE(1)に接続された超音波センサ31が駆動され、超音波を送信する。このとき、上述したように、信号線LINE(2)~LINE(n)はGNDに接続されているため、信号線LINE(1)に入力された送信電気信号TXsignalに起因して、各信号線間で電気的クロストークが発生することが抑制される。すなわち、例えば図9のA1欄において、信号線LINE(2)~LINE(n)に、破線で示す信号が発生することを抑制することができる。この結果、例えば保護回路132において、該電気的クロストークに起因して信号レベルがリミットまで振り切れる、という事態の発生を抑制することができ、またプリアンプ133において、該電気的クロストークに起因して高いレベルの信号が入力されて出力飽和し、復帰まで時間がかかる、という事態の発生を抑制することができる。
【0064】
超音波センサ31から送信された超音波が血管内で反射された反射波(エコー)が受信される最も早いタイミングより前に、RESET_RX信号がHレベルからLレベルに切り替えられ、反射波の受信準備がなされる。例えば、最短で1mm先の対象からの反射波を受信する場合には、1mm×2(往復)の距離を生体内の音速(約1500m/s)で除した約1.3μsが経過する前に、反射波の受信準備のためのRESET_RX信号の切り替えがなされる。超音波センサ31により受信された反射波の信号は、FPC40の信号線41、信号線LINE(2)および第1のスイッチ回路SW1を経て、受信電気信号RXsignalとして保護回路132に入力される。この受信電気信号RXsignalは、保護回路132において所定の信号レベルに制限された受信電気信号RX0に変換されてプリアンプ133に入力され、プリアンプ133において増幅された受信電気信号RX1に変換され、コンソール140に向けて出力される。このとき、上述したように、信号線LINE(3)~LINE(n)はGNDに接続されているため、信号線LINE(3)~LINE(n)が受信信号を伝送することに起因して各信号線間で電気的クロストークが発生することが抑制される。すなわち、例えば図9のA2欄において、信号線LINE(3)~LINE(n)に、破線で示す信号が発生することを抑制することができる。この結果、例えばコンソール140に向けて出力される受信電気信号RX1の精度が向上する。
【0065】
超音波センサ31から送信された超音波が血管内で反射された反射波(エコー)が受信される最も遅いタイミングより後に、RESET_RX信号がLレベルからHレベルに切り替えられ、次のシーケンスにおける超音波の送信準備がなされる。例えば、最長で10mm先の対象からの反射波を受信する場合には、10mm×2(往復)の距離を生体内の音速(約1500m/s)で除した約13μsが経過した後に、次のシーケンスにおける超音波の送信準備のためのRESET_RX信号の切り替えがなされる。以降、各スイッチ回路SW1~SW3における信号線LINEの選択が切り替えられながら、上述した処理と同様の処理が繰り返され、超音波センサアレイ30を構成する各超音波センサ31による超音波の送受信が実行される。
【0066】
次に、コンソール140の構成について説明する。コンソール140は、主として、上述したPIM130におけるシーケンス動作を制御すると共に、PIM130から入力された受信電気信号RX1に基づき血管の状態を可視化(画像化)する処理を行うためのコンピュータである。図8に示すように、コンソール140は、制御部141と、シーケンス制御回路143と、A/D変換器(ADC)144と、操作部145と、表示部146と、記憶部147とを備える。これらの各部は、バス148を介して互いに接続されている。
【0067】
コンソール140の表示部146は、例えば液晶ディスプレイ等により構成され、各種の画像や情報を表示する。また、操作部145は、例えばキーボードやマウス、ボタン、マイク等により構成され、管理者の操作や指示を受け付ける。なお、表示部146がタッチパネルを備えることにより、操作部145として機能するとしてもよい。また、記憶部147は、例えばROMやRAM、ハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラムやデータを記憶したり、各種のプログラムを実行する際の作業領域やデータの一時的な記憶領域として利用されたりする。
【0068】
また、コンソール140のシーケンス制御回路143は、上述したADD信号やSTART信号をPIM130に向けて出力する。また、A/D変換器144は、コンソール140から出力されたアナログ信号である受信電気信号RX1をデジタル信号に変換する。
【0069】
また、コンソール140の制御部141は、例えばCPU等により構成され、記憶部147から読み出したコンピュータプログラムを実行することにより、コンソール140の動作を制御する。例えば、制御部141は、図10に示すように、信号補正部160、IIRフィルタ161、データ切り出し部162、整相加算部163、検波部165、log圧縮部166、ダイナミックレンジ調整部167および画像プロット部168として機能する。制御部141は、特許請求の範囲における表示制御部に相当する。
【0070】
コンソール140の制御部141による画像化処理は、例えば以下の通りである。すなわち、A/D変換器144から出力されるデジタル信号としての受信電気信号RX1に対して、信号補正部160が後述する補正処理を行い、IIRフィルタ161がフィルタリングを行い、データ切り出し部162が超音波センサアレイ30の信号受信を行った超音波センサ31からの信号からエコー信号を含むデータを切り出す。整相加算部163が、記憶部147から読み出された遅延時間データDDを用いて整相加算法(Delay And Sum,DAS)による受信ビームフォーミング処理を行う。以降、検波部165が全波整流を行い、log圧縮部166が圧縮増幅を行い、ダイナミックレンジ調整部167がダイナミックレンジを調整し、画像プロット部168が、表示部146に画像を表示するための画像信号(輝度信号)への変換を行う。制御部141は、この画像信号に基づき、表示部146に血管の状態を示す画像を表示させる。なお受信ビームフォーミング処理による画像の精細度を高める処理については、整相加算法に限定されず、他の受信ビームフォーミング処理を行っても良い。
【0071】
なお、コンソール140の記憶部147には、FPC40の信号線41間のクロストーク量として予め設定された値を示すクロストーク量データCDが記憶されている。信号補正部160は、A/D変換器144から出力される受信電気信号RX1を、記憶部147から読み出されたクロストーク量データCDに基づき補正する。
【0072】
また記憶部147は、使用する超音波の周波数、超音波センサの数等、構成の異なる超音波センサアレイ毎のキャリブレーション情報を記憶して、複数の超音波センサアレイに対応可能とすることができる。なお記憶部147はその形態を問わず、装置内に固定されたHDDや固体記憶媒体(ソリッドステートドライブ:SSD)等の記憶媒体、または装置に対して取り外し可能な携帯型記憶媒体であっても良い。
【0073】
図11図13は、本実施形態のガイドワイヤシステム100により血管の状態を示す画像を表示している様子を模式的に示す説明図である。図11図13には、ガイドワイヤ110が血管BV内に挿入された状態で超音波センサアレイ30による超音波の送受信を行うことにより、表示部146に血管BVの状態を示す画像が表示された様子が示されている。
【0074】
例えば図11の例では、ガイドワイヤ110の先端に配置された超音波センサアレイ30が、血管BVに生じた血栓PL内に潜入し、表示部146に、血管BVの血管壁VWの状態や血栓PLの状態(血栓PL内の空洞CAの状態を含む)を示す画像が表示されている。このように、本実施形態のガイドワイヤ110はカテーテルと比較して細径であるため、超音波センサアレイ30を血栓PL内に容易に潜入させることができ、血栓PL内の状態を把握することができる。また、本実施形態のガイドワイヤ110はカテーテルと比較して細径であるため、超音波センサアレイ30を血栓PL内に潜入させ、さらに血栓PLを通過させることができ、血栓PLの先の状態を把握することができる。
【0075】
また、例えば図12の例では、ガイドワイヤ110の先端に配置された超音波センサアレイ30が、血管BVに生じた血栓PLにより狭窄状態となった真腔TLに位置しており、表示部146に、血管BVの血管壁VWの状態や血栓PLの状態を示す画像が表示されている。また、例えば図13の例では、ガイドワイヤ110の先端に配置された超音波センサアレイ30が、血管壁VWの偽腔FL内に位置しており、表示部146に、血管BVの血管壁VWの状態や血栓PLの状態を示す画像が表示されている。このように、本実施形態のガイドワイヤ110はカテーテルと比較して細径であるため、超音波センサアレイ30が真腔TLではなく偽腔FLに入り込んだことを容易に把握することができ、その後のガイドワイヤ110の適切な操作に資する情報を得ることができる。
【0076】
図14および図15は、本実施形態のガイドワイヤシステム100により生成された血管の状態を示す画像の一例を示す説明図である。図14および図15に示すように、本実施形態のガイドワイヤシステム100によれば、血栓PLの状態を含む血管の状態を精度良く示す画像を得ることができる。
【0077】
また、本実施形態では、超音波センサアレイ30を構成する複数の超音波センサ31が2次元配置されているため、ボリュームレンダリングを行うことにより、3次元画像を得ることもできる。図16は、本実施形態のガイドワイヤシステム100により生成された血管の状態を示す3次元画像の一例を示す説明図である。図16には、血管の状態を示す2次元画像I2~I4に加えて、血管の状態を示す3次元画像I1が示されている。
【0078】
A-3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の超音波センサアレイ30は、複数の超音波センサ31を備える医療用の超音波センサアレイである。超音波センサアレイは、第1の電極板33となる電極層と、第2の電極板34となる電極層、その間に挟まれた圧電素子32とからなる超音波センサの母材を準備し、第1の電極板33となる電極層の側から圧電素子32を切断し、第2の電極板34となる電極層を切断せず又は当該電極層の厚さ方向の途中まで切断して形成される。
【0079】
従来行われている、ダイサーを用いて電極と圧電素子とからなる超音波センサ母材を切断して個別の超音波センサ31Yに分離した後で、アレイ形状に複数の超音波センサ31Yを共通基板300上に並べる方法(図3C欄)では、超音波センサ31Yのサイズが微細になってくると、複数の超音波センサ31Yが配置されるX-Y平面において規則正しく配列することが困難になる。
【0080】
図3のA欄は、第2電極板34となる電極板を厚さ方向の途中まで切断して超音波センサアレイ30を形成した例図を示す。各超音波センサ31は、圧電素子32と、圧電素子32を挟むように配置された第1の電極板33および第2の電極板34とを有する。第1の電極板33は、複数の超音波センサ31のそれぞれに分離されている。第2の電極板34は、一体の第2の電極板34が、複数の超音波センサ31に共有されている。第2の電極板34は、1つの圧電素子32(第1の圧電素子)との接続領域と他の1つの圧電素子32(第2の圧電素子)との接続領域との間の位置において、各圧電素子32が配置される側の表面36から厚さ方向の少なくとも一部にわたって切断されている(図3のA欄参照)。かかる形成方法により、超音波センサアレイ30を構成する複数の超音波センサ31間で共有される第2の電極板34の厚さ方向の少なくとも一部において切断されない部分が残る。その結果、複数の超音波センサ31が配置されるX-Y平面内での位置ずれを抑制することができ、信号受信遅延を抑制することが可能となる。
【0081】
図3のB欄の超音波センサアレイ30Xでは、図3のA欄の超音波センサアレイ30と異なり、第2の電極板34Xにおける各圧電素子32Xが配置される側の表面36Xが切断されていない。かかる構成により、夫々の超音波センサ31XのX-Y平面内での配置位置のずれを抑制することができ、信号受信遅延を抑制することが可能となる。
【0082】
図3のA欄の超音波センサアレイ30では、第2の電極板34における各圧電素子32が配置される側の表面36が切断されている。そのため、超音波センサアレイ30では、図3のA欄に矢印で示すように、ある1つの超音波センサ31の圧電素子32の振動が第2の電極板34を介して超音波センサ31の配列方向に伝わることを抑制することができ、その結果、複数の超音波センサ31の配置平面X-Y内での位置ずれが抑制されることによる信号受信遅延の抑制に加え、隣接する他の超音波センサ31の圧電素子32に生じる機械的クロストークの発生をさらに抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態のガイドワイヤ110は、ガイドワイヤ本体112と、ガイドワイヤ本体112の先端部に配置された超音波センサアレイ30とを備える。超音波センサアレイ30は、各超音波センサ31の超音波送受信面がガイドワイヤ本体112の挿入方向前方を向くように配置されている。このように、本実施形態のガイドワイヤ110は、比較的径が小さいガイドワイヤにおいて、ガイドワイヤ本体112の先端部に前方視で超音波センサアレイ30が配置されているため、超音波センサアレイ30を血栓PL内に容易に潜入させることが可能であり、超音波センサアレイを用いた血栓PL内の精細度の高い画像情報の取得を実現することができる。
【0084】
また、本実施形態のガイドワイヤ110において、ガイドワイヤ本体112は、金属製のコアシャフト10を備え、超音波センサアレイ30の第2の電極板34は、コアシャフト10に電気的に接続されている。そのため、本実施形態のガイドワイヤ110によれば、コアシャフト10を複数の超音波センサ31に電気的に接続された基準電位線(例えば、GND電位線)として利用することができ、装置構成の簡素化を実現することができる。
【0085】
また、本実施形態のガイドワイヤ110は、さらに、ガイドワイヤ本体112の基端部に配置された電極端子部70と、複数の超音波センサ31のそれぞれの第1の電極板33と電極端子部70との間で信号を伝送する信号伝送部としてのFPC40とを備える。FPC40は、複数の超音波センサ31のそれぞれについて個別に設けられた信号線41を含む。各信号線41は、超音波の送信のために超音波センサ31に入力される送信電気信号を電極端子部70から超音波センサ31へ伝送し、また受信された超音波に応じて超音波センサ31から出力される受信電気信号を超音波センサ31から電極端子部70へ伝送する。このように、本実施形態のガイドワイヤ110によれば、各超音波センサ31についての信号伝送を制御するIC等を用いることなく、電極端子部70と超音波センサ31との間の信号伝送を実現することができるため、IC等を用いることに伴う電圧値制限を回避することができ、該電圧値制限に起因して各超音波センサ31の探索深度が浅くなることを回避することができる。
【0086】
また、本実施形態のガイドワイヤ110において、FPC40は、一の超音波センサ31について設けられた一の信号線41Aと、他の超音波センサ31について設けられた他の信号線41Bと、の間に配置された定電圧配線42を含む。そのため、本実施形態のガイドワイヤ110によれば、比較的径が小さく、また血管の湾曲に沿って湾曲可能な柔軟性を求められるために同軸ケーブルを用いることが困難である。また画像の取得を行う際に電気的クロストークによる信号劣化を生じた場合、画像の精細度の低下を招くこととなる。一の信号線41Aと他の信号線41Bの間に定電圧配線42を含む構成とすることで、複数の信号線41を実装しても、一の超音波センサ31について設けられた一の信号線41Aと、他の超音波センサ31について設けられた他の信号線41Bと、の間の電気的クロストークによる信号の劣化の発生を抑制することができ、超音波センサアレイを用いた血管のより精細度の高い画像情報の取得を実現することができる。
【0087】
また、本実施形態のガイドワイヤシステム100は、ガイドワイヤ110と、制御装置150とを備える。制御装置150は、ガイドワイヤ110の電極端子部70に電気的に接続される接続端子部としてのコネクタ120を有し、信号の伝送を制御する。また、制御装置150(制御装置150を構成するコンソール140)は、各超音波センサ31から出力される受信電気信号に基づき血管の状態を示す画像を表示部146に表示させる制御部141を備える。そのため、本実施形態のガイドワイヤシステム100によれば、超音波センサアレイを用いた血管の状態(例えば、血栓PLの状態)を示す精細度の高い画像の表示を実現することができる。
【0088】
また、本実施形態のガイドワイヤシステム100において、制御装置150(制御装置150を構成するPIM130)は、終端抵抗回路Xと、第1のスイッチ回路SW1と、第2のスイッチ回路SW2とを有する。第1のスイッチ回路SW1は、電極端子部70およびコネクタ120を介して接続された各信号線41から受信された受信電気信号の中から、1つの受信電気信号を順次選択して制御部141に送る。第2のスイッチ回路SW2は、電極端子部70およびコネクタ120を介して接続された各信号線41から受信された受信電気信号の中から、第1のスイッチ回路SW1により選択されなかった各受信電気信号を選択して終端抵抗回路Xに送る。そのため、本実施形態のガイドワイヤシステム100において、信号線41の終端部での信号の反射の発生を抑制することにより、複数の信号線41を実装しても、信号線41の端部での信号反射による信号の劣化の発生を効果的に抑制することができ、超音波センサアレイを用いた精細度の高い画像情報の取得を実現することができる。
【0089】
また、本実施形態のガイドワイヤシステム100において、コンソール140の制御部141は、信号補正部160を含む。信号補正部160は、一の超音波センサ31について設けられた一の信号線41Aと、他の超音波センサ31について設けられた他の信号線41Bと、の間の電気的クロストーク量として予め設定された値に基づき、一の信号線41により伝送される受信電気信号を補正する。そのため、本実施形態のガイドワイヤシステム100によれば、信号線41間の電気的クロストークの静的な発生量を把握し受信電気信号の補正を行うことで、該電気的クロストークの影響を軽減することができ、超音波センサアレイを用いた精細度の高い画像情報の取得を実現することができる。
【0090】
A-4.第1実施形態の変形例:
図17は、第1実施形態の変形例におけるPIM130の動作の一例を示すタイミングチャートである。図17に示す変形例では、図9に示す第1実施形態と比較して、RESET_RX信号がHレベルからLレベルに切り替えられるタイミングと同じタイミングで、RESET信号もHレベルからLレベルに切り替えられる点が異なる。図17に示す変形例では、送信を選択された信号線LINE(図17の例ではLINE(1))を第3のスイッチ回路SW3を介してTXドライバ131に接続され、受信を選択された信号線LINE(LINE(2))を第1のスイッチ回路SW1を介して保護回路132及びプリアンプ133に接続され、選択されていない信号線LINE(LINE(3)~LINE(n))を任意の終端抵抗Rgに接続する形態であり、RESET信号によりその制御を行う形態である。図17に示す変形例のタイミングチャートに従った動作によっても、図9に示す第1実施形態と同様に、スイッチ回路SW1~SW3の切り替え動作により電気的クロストークの発生を抑制することができる。
【0091】
B.第2実施形態:
図18は、第2実施形態における超音波センサアレイ30Aの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第2実施形態の超音波センサアレイ30Aの構成の内、上述した第1実施形態の超音波センサアレイ30と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0092】
図18のA欄に示すように、第2実施形態の超音波センサアレイ30Aは、2次元に並べて配置された複数の(10個の)超音波センサ31A(31A(1)~31A(10))を備えている。複数の超音波センサ31Aは、平面視で環状に配置されている。すなわち、第2実施形態の超音波センサアレイ30Aは、アニュラ-型のアレイ構造を有する。
【0093】
また、超音波センサアレイ30Aは、複数の超音波センサ31Aに囲まれた位置に配置された非発振部38を有する。非発振部38は、超音波センサ31Aと同様に、圧電素子32と、圧電素子32を挟む第1の電極板33および第2の電極板34とを有する。非発振部38の第2の電極板34は、各超音波センサ31Aの第2の電極板34と一体の部材である。すなわち、一体の第2の電極板が、各超音波センサ31Aおよび非発振部38に共有されている。
【0094】
ここで、非発振部38は、第1の電極板33と第2の電極板34とを導通する貫通ビア39を有する。そのため、非発振部38の第1の電極板33は、常に第2の電極板34と同電位(例えば、0V)となる。その結果、非発振部38は、圧電素子32の振動が抑制された状態となっている。また、各超音波センサ31Aおよび非発振部38に共有される一体の第2の電極板34は、1つの圧電素子32(第1の圧電素子)との接続領域と他の1つの圧電素子32(第2の圧電素子)との接続領域との間の位置において、各圧電素子32が配置される側の表面から厚さ方向の全体にわたって切断されている。すなわち、図18のA欄における各位置37では、第2の電極板34が厚さ方向の全体にわたって切断されている。
【0095】
このように、第2実施形態の超音波センサアレイ30Aは、複数の超音波センサ31Aに囲まれた位置に配置され、第2の電極板34を共有する非発振部38を有する。第2の電極板34は、1つの圧電素子32(第1の圧電素子)との接続領域と他の1つの圧電素子32(第2の圧電素子)との接続領域との間の位置37において、各圧電素子32が配置される側の表面から厚さ方向の全体にわたって切断されている。そのため、図18のB欄に示すように、1つの超音波センサ31A(超音波センサ31A(1))の圧電素子32が振動しても、該振動は、他の超音波センサ31Aに直接的には伝搬されず非発振部38に伝搬され、非発振部38において減衰するため、該振動が他の超音波センサ31Aの圧電素子32に伝わることを抑制することができ、その結果、他の超音波センサ31Aの圧電素子32も振動する機械的クロストークが発生することを効果的に抑制することができる。
【0096】
C.第3実施形態:
図19は、第3実施形態のガイドワイヤ110における超音波センサアレイ30BおよびFPC40Bの周辺部分の構成を概略的に示す説明図である。図19のA欄には、FPC40Bが折り曲げ線L1で折り曲げられた状態における断面(YZ断面)の構成が示されており、図19のB欄には、FPC40Bを広げた状態における平面の構成が示されている。以下では、第3実施形態の超音波センサアレイ30BおよびFPC40Bの周辺部分の構成の内、上述した第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0097】
図19のA欄およびB欄に示すように、第3実施形態のFPC40B上には、超音波センサアレイ30Bを構成する各超音波センサ31BとFPC40Bの各信号線41とが接続される箇所において、インピーダンス整合を取るマッチング抵抗52が設けられている。当該接続箇所においてはインピーダンスの変化を生じ、そのため信号の反射を生じる。かかる信号の反射による各信号線41を流れる信号の劣化を抑止するために、マッチング抵抗52が設けられる。より詳細には、FPC40Bがベース層43と配線層44とカバー層45とから構成され、配線層44における信号線41および定電圧配線42のそれぞれに接続する導電パッド46が設けられ、信号線41上に設けられた導電パッド46と定電圧配線42上に設けられた導電パッド46とに跨がるようにマッチング抵抗52が接続されている。
【0098】
このように、第3実施形態のガイドワイヤ110は、各超音波センサ31Bと信号線41との間のインピーダンス整合を取るマッチング抵抗52を備える。そのため、各超音波センサ31Bと信号線41との接続点での信号反射の発生を抑制することができる。特に、比較的細径のガイドワイヤ110に実装するために比較的サイズが小さい超音波センサアレイ30Bにおいて、分解能を向上させるために超音波センサ31Bから送信される超音波の周波数を高くした場合には、上記信号反射による信号劣化の影響が大きくなるが、第3実施形態のガイドワイヤ110によれば、そのような信号反射の発生を抑制することができる。
【0099】
図20は、第3実施形態の第1の変形例のガイドワイヤ110における超音波センサアレイ30CおよびFPC40Cの周辺部分の構成を概略的に示す説明図である。図20に示す第3実施形態の第1の変形例では、図19に示す第3実施形態におけるマッチング抵抗52に代えて、FPC40Cの配線層44そのもののシート抵抗によりマッチング抵抗53を構成している。すなわち、FPC40Cの配線層44に、信号線41および定電圧配線42とは別に、超音波センサアレイ30Cを構成する各超音波センサ31Cに接続される部分を追加的に設け、該部分をマッチング抵抗53としている。第3実施形態の第1の変形例においても、各超音波センサ31Cと信号線41との間のインピーダンス整合を取るマッチング抵抗53を備えるため、各超音波センサ31Cと信号線41との接続点での信号反射の発生を抑制することができる。
【0100】
図21は、第3実施形態の第2の変形例のガイドワイヤ110における超音波センサアレイ30Dの構成を概略的に示す説明図である。図21に示す第3実施形態の第2の変形例では、図19に示す第3実施形態におけるマッチング抵抗52に代えて、超音波センサアレイ30Dを構成する各超音波センサ31Dに、第1の電極板33Dと第2の電極板34Dとを接続するマッチング抵抗54を設けている。このようなマッチング抵抗54は、例えば、レーザによって圧電素子32Dの壁面を溶融させることにより形成してもよいし、蒸着やエピタキシャル成長により抵抗素子を成膜することにより形成してもよい。第3実施形態の第2の変形例においても、各超音波センサ31Dと信号線41との間のインピーダンス整合を取るマッチング抵抗54を備えるため、各超音波センサ31Dと信号線41との接続点での信号反射の発生を抑制することができる。
【0101】
D.第4実施形態:
図22は、第4実施形態におけるカテーテル200の構成を概略的に示す説明図である。第4実施形態は、第1実施形態の超音波センサアレイ30を、ガイドワイヤ110ではなくカテーテル200に実装した実施形態である。
【0102】
図22に示すように、カテーテル200は、カテーテル本体210と、カテーテル本体210の先端部に配置された超音波センサアレイ30Eとを備える。カテーテル本体210に実装される超音波センサアレイ30Eの構成は、第1実施形態においてガイドワイヤ110に実装される超音波センサアレイ30の構成と同様である。また、超音波センサアレイ30Eは、各超音波センサ31の超音波送受信面がカテーテル本体210の挿入方向前方を向くように配置されている。なお、本実施形態のカテーテル200は、信号線240を介して超音波センサアレイ30Eと接続されたIC250を備えており、IC250によって超音波センサアレイ30Eにおける超音波の送受信が制御される。第4実施形態のカテーテル200が備える超音波センサアレイ30Eは、第1実施形態の超音波センサアレイ30と同様の構成であるため、各超音波センサ31間の機械的クロストークが発生することを抑制することができる。
【0103】
なお、カテーテル本体210が図示しない金属製の補強体を備え、超音波センサアレイ30Eの第2の電極板34が補強体に電気的に接続されている構成としてもよい。このような構成を採用すれば、補強体を複数の超音波センサ31に電気的に接続された基準電位線(例えば、GND電位線)として利用することができ、装置構成の簡素化を実現することができる。
【0104】
E.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0105】
上記実施形態における超音波センサアレイ30の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記第1実施形態では、超音波センサアレイ30におけるある圧電素子32との接続領域と他の圧電素子32との接続領域との間のすべての位置において、第2の電極板34が厚さ方向の一部にわたって切断されている構成が採用されているが、超音波センサアレイ30における上記位置の一部のみにおいて、そのような構成(第2の電極板34が厚さ方向の一部にわたって切断されている構成)が採用されるとしてもよい。
【0106】
また、上記第1実施形態では、超音波センサアレイ30を構成する複数の超音波センサ31に共有される第2の電極板34は、ある圧電素子32との接続領域と他の圧電素子32との接続領域との間の位置において、各圧電素子32が配置される側の表面36から厚さ方向の一部にわたって切断されているが、第2の電極板34は、該第2の電極板34が複数の超音波センサ31に共有される限りにおいて、該位置において該表面36から厚さ方向の全部にわたって切断されていてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、1つの第2の電極板34が、超音波センサアレイ30を構成するすべての超音波センサ31に共有されているが、1つの第2の電極板34が、超音波センサアレイ30を構成する一部の超音波センサ31のみ(ただし、複数の超音波センサ31)に共有されているとしてもよい。この場合には、超音波センサアレイ30を構成する他の一部の超音波センサ31用に、別の第2の電極板34が設けられればよい。
【0108】
また、上記実施形態において、超音波センサアレイ30を構成する超音波センサ31の個数や配置は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、超音波センサアレイ30を構成する複数の超音波センサ31が2次元に並べて配置されているが、複数の超音波センサ31が1次元に(1列に)並べて配置されていてもよい。また、上記実施形態では、超音波センサアレイ30を構成する各超音波センサ31の超音波送受信面がガイドワイヤ本体112(またはカテーテル本体210)の挿入方向前方を向くように配置されているが、各超音波センサ31の超音波送受信面が他の方向(例えば、ガイドワイヤ本体112またはカテーテル本体210の径方向)を向くように配置されていてもよい。また、上記実施形態では、超音波センサアレイ30の第2の電極板34がコアシャフト10や補強体に電気的に接続されているが、必ずしもこのような構成である必要はない。
【0109】
また、上記実施形態におけるガイドワイヤ110やカテーテル200の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、ガイドワイヤ110のコアシャフト10が、細径部11とテーパ部12と太径部13とから構成されているが、コアシャフト10は、これら3つの部分の内の少なくとも1つを有さないとしてもよいし、該3つの部分の他に他の部分を有するとしてもよい。また、コアシャフト10の一部分と他の一部分との構成材料が互いに異なっていてもよい。また、上記実施形態において、ガイドワイヤ110またはカテーテル200の構成の一部が省略されてもよい。例えば、上記実施形態では、ガイドワイヤ110がアウターシャフト80を備えるが、ガイドワイヤ110がアウターシャフト80を備えなくてもよい。
【0110】
また、上記実施形態において、制御装置150の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態において、PIM130に含まれる構成が、PIM130ではなくコンソール140に含まれるとしてもよいし、反対に、コンソール140に含まれる構成が、コンソール140ではなくPIM130に含まれるとしてもよい。また、PIM130またはコンソール140に含まれる構成の一部が省略されてもよい。また、制御装置150は、PIM130とコンソール140とに分けられることなく、1つの装置であるとしてもよいし、PIM130およびコンソール140以外の装置を備えていてもよい。また、上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されている構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、反対に、ソフトウェアによって実現されている構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。また、上記実施形態における超音波センサアレイ30の駆動制御方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0111】
また、上記実施形態における超音波センサアレイ30の製造方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【符号の説明】
【0112】
10:コアシャフト 11:細径部 12:テーパ部 13:太径部 18:樹脂被覆層 19:半田材 22:コイル体 30:超音波センサアレイ 31:超音波センサ 32:圧電素子 33:第1の電極板 34:第2の電極板 35:凹部 36:表面 37:位置 38:非発振部 39:貫通ビア 40:FPC 41:信号線 42:定電圧配線 43:ベース層 44:配線層 45:カバー層 46:導電パッド 50:ハウジング 52:マッチング抵抗 53:マッチング抵抗 54:マッチング抵抗 60:バッキング材 70:電極端子部 72:電極リング 80:アウターシャフト 90:絶縁性樹脂 100:ガイドワイヤシステム 110:ガイドワイヤ 112:ガイドワイヤ本体 120:コネクタ 122,124:ケーブル 130:PIM 131:TXドライバ 132:保護回路 133:プリアンプ 140:コンソール 141:制御部 143:シーケンス制御回路 144:A/D変換器 145:操作部 146:表示部 147:記憶部 148:バス 150:制御装置 160:信号補正部 161:IIRフィルタ 162:データ切り出し部 163:整相加算部 165:検波部 166:log圧縮部 167:ダイナミックレンジ調整部 168:画像プロット部 200:カテーテル 210:カテーテル本体 240:信号線
図1A
図1B
図1C
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図22
【手続補正書】
【提出日】2023-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波センサを備える医療用の超音波センサアレイであって、
各前記超音波センサは、圧電素子と、前記圧電素子を挟むように配置された第1の電極板および第2の電極板と、を有し、
前記第1の電極板は、前記複数の超音波センサのそれぞれに分離されており、
前記第2の電極板は、一体の前記第2の電極板が、前記複数の超音波センサに共有され
前記第1の電極板の前記圧電素子とは反対側に、分離された複数の第1の電極板に跨る音響整合層が設けられており、
前記第2の電極板は、第1の前記圧電素子との接続領域と第2の前記圧電素子との接続領域との間の位置において、各前記圧電素子が配置される側の表面から厚さ方向の少なくとも一部にわたって切断されている、超音波センサアレイ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波センサアレイであって、さらに、
前記複数の超音波センサに囲まれた位置に配置され、前記第2の電極板を共有する非発振部を有し、
前記第2の電極板は、第1の前記圧電素子との接続領域と第2の前記圧電素子との接続領域との間の位置において、各前記圧電素子が配置される側の表面から厚さ方向の全体にわたって切断されている、超音波センサアレイ。
【請求項3】
複数の超音波センサを備える医療用の超音波センサアレイであって、
各前記超音波センサは、圧電素子と、前記圧電素子を挟むように配置された第1の電極板および第2の電極板と、を有し、
前記第1の電極板は、前記複数の超音波センサのそれぞれに分離されており、
前記第2の電極板は、一体の前記第2の電極板が、前記複数の超音波センサに共有されており、
前記第2の電極板は、第1の前記圧電素子との接続領域と第2の前記圧電素子との接続領域との間の位置において、各前記圧電素子が配置される側の表面から厚さ方向の全体にわたって切断されている部分がある、超音波センサアレイ。
【請求項4】
請求項に記載の超音波センサアレイであって、さらに、
前記複数の超音波センサに囲まれた位置に配置され、前記第2の電極板を共有する非発振部を有する、超音波センサアレイ。
【請求項5】
カテーテルであって、
カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の先端部に配置された請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の超音波センサアレイと、
を備え、
前記超音波センサアレイは、各前記超音波センサの超音波送受信面が前記カテーテル本体の挿入方向前方を向くように配置されている、カテーテル。
【請求項6】
請求項に記載のカテーテルであって、
前記カテーテル本体は、金属製の補強体を備え、
前記超音波センサアレイの前記第2の電極板は、前記補強体に電気的に接続されている、カテーテル。