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  • 特開-建物用防水シート 図1
  • 特開-建物用防水シート 図2
  • 特開-建物用防水シート 図3
  • 特開-建物用防水シート 図4
  • 特開-建物用防水シート 図5
  • 特開-建物用防水シート 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003358
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】建物用防水シート
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104486
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】514004219
【氏名又は名称】株式会社トラストコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 和義
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AC04
2E139AD03
(57)【要約】
【課題】 水害発生時に空気等の気体を供給することを要さず、かつ水害が発生する前に建物の通常の利用を妨げることなく、浸水から建物を保護する建物用防水シートを提供する。
【解決手段】 本開示による建物用防水シート101は、建物1の外壁面を全周に渡って覆う非透水性のシート本体1と、シート本体1の上端部に連結し、水に浮くフロート13と、を備えている。そして、シート本体1とフロート13とは、平常時においては、建物1を囲み排水機能を有する溝3に収納されている。さらに、シート本体1の下端部は、溝3の内壁に水密に連結されている。シート本体1は、上下方向の伸縮を容易にする蛇腹状の折り目15を有している。フロート13は、例えば、気体が充填された気密性の袋体である。袋体は、気体を注入し封じることのできる気体注入口を有していてもよい。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁面を全周に渡って覆う非透水性のシート本体と、
前記シート本体の上端部に連結し、水に浮くフロートと、を備え、
前記シート本体と前記フロートとは、平常時においては、前記建物を囲み排水機能を有する溝に収納されており、
前記シート本体の下端部は、前記溝の内壁に水密に連結されている、建物用防水シート。
【請求項2】
前記フロートは、気体が充填された気密性の袋体である、請求項1に記載の建物用防水シート。
【請求項3】
前記袋体は、気体を注入し封じることのできる気体注入口を有する、請求項2に記載の建物用防水シート。
【請求項4】
建物の外壁面を全周に渡って覆う非透水性のシート本体と、
前記シート本体の上端部に連結し、気体を充填可能な気密性の袋体と、を備え、
前記袋体は、気体を注入し封じることのできる気体注入口を有し、
前記シート本体と前記袋体とは、平常時においては、前記建物を囲み排水機能を有する溝に収納されており、
前記シート本体の下端部は、前記溝の内壁に水密に連結されている、建物用防水シート。
【請求項5】
前記シート本体は、上下方向の伸縮を容易にする蛇腹状の折り目を有する、請求項1から4のいずれかに記載の建物用防水シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洪水などの水害による浸水から家屋等の建物を保護する建物用防水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
水害の発生により家屋等の建物が浸水すると、建物内の人は仮に避難できたとしても、建物自体、建物内に置かれた設備、家具、衣類、図書その他の一切の物が泥水に洗われ、再使用に支障を来す。特許文献1には、かかる浸水から建物を保護することを意図した装置が開示されている。この従来装置は、建物の周囲の地面に深く掘られた格納庫に膨縮自在な筒状密閉膜材の筒体を格納しておき、注入装置により圧縮空気もしくはヘリウムガスを注入することにより、筒体を上方に伸長させて所望高さ(例えば3m以上)にすることにより、高水位の海水や川水の浸水から建物を防護するものとなっている。
【0003】
しかし、水害等が発生したときには、同時に停電が発生することも少なくなく、その場合には、注入装置により空気等の圧送が困難となるという問題点が想定される。また、水害の発生前に、水害に備えて空気等の気体を筒体に充填すると、水害が到来する前から、建物が筒体に囲まれることとなり、建物の通常の利用が妨げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3229308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、水害発生時に空気等の気体を供給することを要さず、かつ水害が発生する前に建物の通常の利用を妨げることなく、浸水から建物を保護する建物用防水シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、建物用防水シートであって、建物の外壁面を全周に渡って覆う非透水性のシート本体と、前記シート本体の上端部に連結し、水に浮くフロートと、を備えている。そして、前記シート本体と前記フロートとは、平常時においては、前記建物を囲み排水機能を有する溝に収納されている。さらに、前記シート本体の下端部は、前記溝の内壁に水密に連結されている。
【0007】
この構成によれば、水害により建物の周囲の水位が上昇すると、フロートは水面に浮き、溝から離れ、シート本体を引き上げる。水位の上昇とともにフロートは上昇し、フロートに引き上げられたシート本体は、建物の外壁面を全周に渡って覆う。シート本体の下端部は、溝の内壁に水密に連結されているので、シート本体に覆われた建物は浸水を免れる。溝は排水機能を有するので、通常の降雨などによりフロートが無用に上昇することが回避される。水に浮くフロートが備わるので、水害発生時に空気等の気体を供給することを要さない。また、フロートは水位の上昇と共に上昇するので、水害が発生する前に建物の通常の利用が妨げられない。
【0008】
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様による建物用防水シートであって、前記フロートは、気体が充填された気密性の袋体である。
この構成によれば、少量の材料で大きな浮力を得ることができる。
【0009】
本発明のうち第3の態様によるものは、第2の態様による建物用防水シートであって、前記袋体は、気体を注入し封じることのできる気体注入口を有している。
【0010】
この構成によれば、気体注入口を通じて気体が袋体に供給されることにより、フロートが形成される。水害の前に、水害に備えて袋体にあらかじめ気体を充填し、フロートを形成しても、水位が上がらない限り、フロートは溝に収容されたままであるので、水害が到来するまで、建物の通常の利用が妨げられない。
【0011】
本発明のうち第4の態様によるものは、建物用防水シートであって、建物の外壁面を全周に渡って覆う非透水性のシート本体と、
前記シート本体の上端部に連結し、気体を充填可能な気密性の袋体と、を備えている。そして、前記袋体は、気体を注入し封じることのできる気体注入口を有している。さらに、前記シート本体と前記袋体とは、平常時においては、前記建物を囲み排水機能を有する溝に収納されている。また、前記シート本体の下端部は、前記溝の内壁に水密に連結されている。
【0012】
この構成によれば、水害の前に、水害に備えて袋体にあらかじめ気体を充填することにより、水に浮くフロートを形成しておくことができる。水害により建物の周囲の水位が上昇すると、フロートは水面に浮き、溝から離れ、シート本体を引き上げる。水位の上昇とともにフロートは上昇し、フロートに引き上げられたシート本体は、建物の外壁面を全周に渡って覆う。シート本体の下端部は、溝の内壁に水密に連結されているので、シート本体に覆われた建物は浸水を免れる。溝は排水機能を有するので、通常の降雨などによりフロートが無用に上昇することが回避される。水に浮くフロートを水害発生に備えて事前に形成しておくことができるので、水害発生時に空気等の気体を供給することを要さない。また、フロートは水位の上昇と共に上昇するので、水害が発生する前に建物の通常の利用が妨げられない。
【0013】
本発明のうち第5の態様によるものは、第1から第4のいずれかの態様による建物用防水シートであって、前記シート本体は、上下方向の伸縮を容易にする蛇腹状の折り目を有している。
この構成によれば、水害が去った後に、シート本体を折り畳んで、フロート又は袋体と共に、シート本体を溝に再度収納する作業が容易となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、水害発生時に空気等の気体を供給することを要さず、かつ水害が発生する前に建物の通常の利用を妨げることなく、浸水から建物を保護する建物用防水シートが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態による建物用防水シートが上方に延びた状態を例示する斜視図である。
図2図1の建物用防水シートが設置された建物及びその周囲の構成を例示する外観図であり、水害発生前の状態を例示している。
図3図1の建物用防水シートが溝に収容された状態について一例を示す断面図である。
図4図1の建物用防水シートが設置された建物及びその周囲の構成を例示する外観図であり、水害発生時の状態を例示している。
図5図1の建物用防水シートが溝に収容された状態について別の例を示す断面図である。
図6】本発明の別の一実施の形態による建物用防水シートが上方に延びた状態を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態による建物用防水シートが上方に延びた状態を例示する斜視図である。この建物用防水シート(以下、適宜「防水シート」と略記する)101は、浸水から保護すべき建物の外壁面を全周に渡って覆う非透水性のシート本体11と、シート本体11の上端部に連結し、水に浮くフロート13と、を有している。シート本体11は、上下方向の伸縮を容易にする蛇腹状の折り目15を有している。シート本体11の下端部には、周方向に沿って、ボルト挿通用の孔17が並んでいる。図示例では、シート本体11は、保護すべき建物を矩形に囲むように、4面を有している。また図示例では、フロート13は、シート本体11の一面毎に、その一端から他端に延びるように設けられている。フロート13は、一例として、空気等の気体が充填された気密性の袋体である。袋体は、少量の材料で大きな浮力を得ることができる、という利点がある。
【0017】
図2は、図1の防水シート101が設置された建物及びその周囲の構成を例示する外観図であり、水害発生前の状態を例示している。防水シート101は、平常時においては、建物1の周囲の地面2に設けられた溝3に収納されている。図示例では、建物1は二階建ての住宅である。溝3は、建物1を囲むように設けられている。図示例では、溝3の上面には、溝3を覆う溝蓋5が配置されている。このため、防水シート101は、溝蓋5によって隠されており、図上には現れていない。溝蓋5は、例えば金属製の格子状のグレーティングである。溝蓋5は、直線状の溝に沿って複数に分割されていても良い。
【0018】
図3は、防水シート101が溝3に収容された状態について一例を示す断面図である。図示例のように、平常時においては、シート本体11は折り畳まれており、折り畳まれたシート本体11はフロート13と共に、溝3に収納されている。
【0019】
溝3は、一例として建物1の基礎の周囲に形成されたコンクリート溝である。溝3には、雨水等を排水するための排水路20が連通している。溝3の底壁には、弾力を有し非透水性の2枚の弾性板部材21,23が重なり合うように配置されている。弾性板部材21,23は、例えばゴム板である。2枚の弾性板部材21,23の間に、シート本体11の下端部が挟み込まれている。上側の弾性板部材23の上には、鋼板などの剛性の押さえ板25が配置されている。弾性板部材21,23及び押さえ板25には、ボルト挿通用の孔が設けられており、シート本体11の下端部に設けられる孔17と位置合わせがなされている。これらの孔にボルト27が挿通され、溝3の底壁にねじ込まれている。それにより、2枚の弾性板部材21,23が、押さえ板25により押圧されつつ、溝3の底壁に固定される。シート本体11を挟んで押圧する2枚の弾性板部材21,23は、水の浸入を防ぐシール材として機能する。このようにして、シート本体11の下端部が、溝3の底壁に水密に連結される。
【0020】
溝3の底壁には、ボルト27に螺合するナットが埋め込まれていてもよい。また、フロート13を成す袋体には、空気等の気体を外部から注入し、封止することを可能にする気体注入口14が設けられても良い。この場合、気体注入口14を通じて気体が袋体に供給されることにより、袋体は水に浮くフロート13として機能する。
【0021】
図4は、図2と同様に、防水シート101が設置された建物1及びその周囲の構成を例示する外観図であり、水害発生時の状態を例示している。洪水等の水害により建物1の周囲の水位が上昇すると、フロート13は水面15に浮き、溝3から離れ、シート本体11を引き上げる。このとき、溝蓋5は、フロート13により押し上げられ、溝3から離れる。図示例では、溝蓋5は地面2の上にひっくり返っている。水位の上昇とともにフロート13は上昇し、フロート13に引き上げられたシート本体11は、建物1の外壁面を全周に渡って覆うこととなる。図示例では、水面50は、建物1の二階の窓付近に達している。
【0022】
シート本体11の下端部は、溝3の底壁に水密に連結されているので、シート本体11に覆われた建物1は浸水を免れる。溝3には排水路20が連通している(図3参照)ので、通常の降雨などによりフロート13が無用に上昇することが回避される。フロート13は水位の上昇があって、初めて上昇するので、水害発生前に袋体に気体をあらかじめ供給し、フロート13を形成していても、水害が発生する前に、フロート13が上昇することにより、防水シート101が建物1の通常の利用を妨げる、という不都合を生じない。従って、水害発生を待って、すなわち水害発生時に、袋体に気体を供給することを要しない。
【0023】
水害が去った後には、フロート13は地面2の上、又は溝3の中に戻る。シート本体11は蛇腹状の折り目15を有しているので、シート本体11を折り畳んで、フロート13とともに溝3に収納する作業が容易に行い得る。
【0024】
図5は、防水シート101が溝3に収容された状態について別の例を示す断面図である。この図示例では、2枚の弾性板部材21,23及び押さえ板25が、ボルト27により、溝3の側壁に固定されている。このため、通常の降雨などにより溝3を水が流れることがあっても、ボルト27がねじ込まれる部分が、水に濡れることを回避することができる。それにより、ボルト27及びねじ込まれるネジ穴の耐久性が高められる。
【0025】
図6は、本発明の別の一実施の形態による建物用防水シートが上方に延びた状態を例示する斜視図である。この防水シート102は、フロート33が、シート本体11の一面毎に、その一端から他端に沿って、幾つかに分割して配置されている点で、図1に例示した防水シート101とは異なっている。このように、フロート33は、多数に分割されていても良い。フロート13、33が、気体注入口14(図3参照)を有し気体が充填された袋体である場合には、全てのフロート13、33は、内部の気体室が互いに連通するように連結していることが望ましい。それにより、1つの気体注入口14を通じて、全ての袋体に気体を充填することが可能となる。
【0026】
(その他の実施の形態)
例示した建物用防水シート101、102のフロート13,33が、気体が充填された袋体として構成される例を示した。これに対して、フロート13、33を、発泡性樹脂など、気体の充填を要することなく水に浮く材料により構成することも可能である。この場合には、水害発生に備えて、事前に空気等の気体をフロート13、33に充填する必要もなくなる。
【符号の説明】
【0027】
1 建物、 2 地面、 3 溝、 5 溝蓋、 11 シート本体、 13 フロート(袋体)、 14 気体注入口、 15 折り目、 17 孔、 20 排水路、 21,23 弾性板部材、 25 押さえ板、 27 ボルト、 33 フロート、 50 水面、 101、102 建物用防水シート(防水シート)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6