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  • 特開-変調装置及び変調方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000336
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】変調装置及び変調方法
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/185 20060101AFI20221222BHJP
   H03L 7/22 20060101ALI20221222BHJP
   H03C 3/00 20060101ALI20221222BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
H03L7/185
H03L7/22
H03C3/00 B
H03C3/00 A
H04B1/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101089
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】504371734
【氏名又は名称】株式会社ファイ・マイクロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 正樹
(72)【発明者】
【氏名】結城 直彦
【テーマコード(参考)】
5J106
5K060
【Fターム(参考)】
5J106AA04
5J106BB01
5J106BB08
5J106CC01
5J106CC21
5J106CC41
5J106CC52
5J106CC54
5J106CC55
5J106HH01
5J106KK12
5J106KK39
5J106QQ12
5J106RR04
5J106RR05
5J106RR09
5K060CC02
5K060CC04
5K060FF03
5K060HH16
5K060HH23
5K060HH26
5K060HH27
5K060HH28
5K060HH29
(57)【要約】
【課題】本発明は、低コストな電気部品で周波数変動を抑えた広帯域FM信号を生成できる変調装置及び変調方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る変調装置は、周波数fckであるシステムクロックに基づいて生成された原FM信号の中心周波数fck/Lと周波数帯域WをN倍して逓倍FM信号を生成する逓倍PLLと、VCOが出力する周波数fLOのローカル信号から生成した周波数fLO/Mのローカル分周信号と周波数fck/Kのクロック分周信号との差分周波数が基準信号の周波数fxoに近づくように前記VCOを制御し、周波数fLOを変化させるLO生成ヘテロダインPLLと、前記逓倍FM信号を周波数fLO分だけ低下させ、広帯域FM信号として出力する混合器と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数fckであるシステムクロックに基づいて生成された原FM信号の中心周波数fck/Lと周波数帯域WをN倍して逓倍FM信号を生成する逓倍フェーズ・ロック・ループ(PLL)と、
電圧制御発振器(VCO)が出力する周波数fLOのローカル信号から生成した周波数fLO/Mのローカル分周信号と前記システムクロックから生成した周波数fck/Kのクロック分周信号との差分周波数(fck/K-fLO/M)が基準信号の周波数fxoに近づくように前記VCOを制御し、前記ローカル信号の周波数fLOを変化させるLO生成ヘテロダインPLLと、
前記逓倍FM信号を前記ローカル信号の周波数fLO分だけ低下させ、広帯域FM信号として出力する混合器と、
を備える変調装置。
ただし、前記K、前記L、前記M、及び前記Nは正の数である。
【請求項2】
前記K、前記L、前記M、及び前記Nを任意に変更する設定器をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の変調装置。
【請求項3】
前記K、前記L、前記M、及び前記Nが
N:L=M:K
の関係であることを特徴とする請求項1又は2に記載の変調装置。
【請求項4】
周波数fckであるシステムクロックに基づいて生成された原FM信号の中心周波数fck/Lと周波数帯域WをN倍して逓倍FM信号を生成すること、
電圧制御発振器(VCO)が出力する周波数fLOのローカル信号から生成した周波数fLO/Mのローカル分周信号と前記システムクロックから生成した周波数fck/Kのクロック分周信号との差分周波数(fck/K-fLO/M)が基準信号の周波数fxoに近づくように前記VCOを制御し、前記ローカル信号の周波数fLOを変化させること、及び
前記逓倍FM信号を前記ローカル信号の周波数fLO分だけ低下させた広帯域FM信号を出力すること、
を特徴とする変調方法。
ただし、前記K、前記L、前記M、及び前記Nは正の数である。
【請求項5】
設定器から前記K、前記L、前記M、及び前記Nを任意に変更することを特徴とする請求項4に記載の変調方法。
【請求項6】
前記K、前記L、前記M、及び前記Nが
N:L=M:K
の関係であることを特徴とする請求項4又は5に記載の変調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、映像など多チャンネルの信号を広帯域FM信号に変換する変調装置及び変調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、光ヘテロダイン広帯域FM変調方式を開示する。当該方式は、次のように広帯域FM信号を生成する。送信信号により振幅変調された電気信号を入力し周波数変調された光信号を出力し、この光信号とは異なる光周波数の局部発振光をこの周波数変調された光信号に合波する。この合波された二つの光信号からこの二つの光信号の光周波数の差に等しい周波数の電気信号を出力することにより、振幅変調された電気信号が周波数変調された電気信号に変換される。周波数変調された光信号および局部発振光のゆらぎに起因する雑音をこの電気信号から除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2700622号
【特許文献2】特開2000-349560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方式には、高価な光部品を必要とし、特性ばらつき補償のため回路構成が複雑化するという課題がある。具体的には、特許文献1の方式は、広帯域FM変調信号を得るために、2光周波数を合波しヘテロダイン検波する必要があり、高価な光部品で構成されて低コスト化が困難である。そして、FM周波数変動を抑えるため、レーザダイオードの温調とFM変調用のパイロット信号が必要であり、消費電力の増大が避けられず、パイロット信号の分離回路も不可欠である。
【0005】
一方、上記課題が発生する光部品ではなく低コストな電気部品で広帯域FM信号生成する技術も知られている(例えば、特許文献2を参照。)。特許文献2の方式は、電気部品(VCO発振器の電圧-周波数変換)で広帯域FM信号を生成させている。しかし、VCOの特性変動がそのまま生成FM信号の特性ばらつきとなり、特許文献2の方式だけではFM周波数変動を抑えることは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、低コストな電気部品で周波数変動を抑えた広帯域FM信号を生成できる変調装置及び変調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る変調装置及び変調方法は、低周波の原FM信号をデジタル変調回路(DDS)で生成し、PLLによる周波数逓倍回路で目的とする高周波の広帯域FM信号に変換することとした。
【0008】
具体的には、本発明に係る変調装置は、
周波数fckであるシステムクロックに基づいて生成された原FM信号の中心周波数fck/Lと周波数帯域WをN倍して逓倍FM信号を生成する逓倍フェーズ・ロック・ループ(PLL)と、
電圧制御発振器(VCO)が出力する周波数fLOのローカル信号から生成した周波数fLO/Mのローカル分周信号と前記システムクロックから生成した周波数fck/Kのクロック分周信号との差分周波数(fck/K-fLO/M)が基準信号の周波数fxoに近づくように前記VCOを制御し、前記ローカル信号の周波数fLOを変化させるLO生成ヘテロダインPLLと、
前記逓倍FM信号の中心周波数を前記ローカル信号の周波数fLO分だけ低下させ、広帯域FM信号として出力する混合器と、
を備える。
ただし、前記K、前記L、前記M、及び前記Nは正の数である。
【0009】
また、本発明に係る変調方法は、
周波数fckであるシステムクロックに基づいて生成された原FM信号の中心周波数fck/Lと周波数帯域WをN倍して逓倍FM信号を生成すること、
電圧制御発振器(VCO)が出力する周波数fLOのローカル信号から生成した周波数fLO/Mのローカル分周信号と前記システムクロックから生成した周波数fck/Kのクロック分周信号との差分周波数(fck/K-fLO/M)が基準信号の周波数fxoに近づくように前記VCOを制御し、前記ローカル信号の周波数fLOを変化させること、及び
前記逓倍FM信号の中心周波数を前記ローカル信号の周波数fLO分だけ低下させた広帯域FM信号を出力すること、
を特徴とする。
ただし、前記K、前記L、前記M、及び前記Nは正の数である。
【0010】
本変調装置及び方法は、広帯域FM変調信号を得るために、低周波DDSでFM信号生成し、PLLで逓倍しており、低コストな電気部品で実現できる。そして、FM周波数変動を抑えるため、ヘテロダインPLLを併用し、FM周波数を高精度な電気信号源で制御できる。
【0011】
従って、本発明は、低コストな電気部品で周波数変動を抑えた広帯域FM信号を生成できる変調装置及び変調方法を提供することができる。
【0012】
また、本発明に係る変調装置及び方法は、設定器から前記K、前記L、前記M、及び前記Nを任意に変更できることを特徴とする。分周数やFM変調度(変調指数)などのパラメータを切替可能であり、汎用性が高い。
【0013】
特に、前記K、前記L、前記M、及び前記NがN:L=M:Kの関係である場合、装置のシステムクロックに関わらずLO生成ヘテロダインPLLの分周数Mのみで広帯域FM変調信号の中心周波数を設定することができる。
【0014】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、低コストな電気部品で周波数変動を抑えた広帯域FM信号を生成できる変調装置及び変調方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る変調装置を説明する機能ブロック図である。
図2】本発明に係る変調装置を説明する機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0018】
[実施形態1]
図1は、本実施形態の変調装置301を説明する図である。変調装置301は、
システムクロック11からの周波数fckのクロック信号Sig1に基づいて生成された原FM信号Sig2の中心周波数fck/Lと周波数帯域WをN倍して逓倍FM信号Sig3を生成する逓倍フェーズ・ロック・ループ(PLL)16と、
電圧制御発振器(VCO)157が出力する周波数fLOのローカル信号Sig6から生成した周波数fLO/Mのローカル分周信号Sig7とクロック信号Sig1から生成した周波数fck/Kのクロック分周信号Sig4との差分周波数(fck/K-fLO/M)が高精度信号源13からの基準信号Sig5の周波数fXOに近づくようにVCO157を制御し、ローカル信号Sig6の周波数fLOを変化させるLO生成ヘテロダインPLL15と、
逓倍FM信号Sig3の中心周波数をローカル信号Sig6の周波数fLO分だけ低下させ、広帯域FM信号Sig8として出力する混合器17と、
を備える。
ただし、本実施形態では、fCK/K=fCK/L=750MHz、M=N=16の例を説明する。
【0019】
システムクロック11は、周波数fCKのクロック信号Sig1を出力する。
ダイレクト・デジタル・シンセシス(DDS)12は、複数の入力信号nchを一括してFM変調し、原FM信号Sig2を出力する。原FM信号Sig2の中心周波数(キャリア周波数)は、クロック信号Sig1の周波数fCKの1/Lであり750MHzである。原FM信号Sig2の周波数帯域Wは、±125MHz(250MHz)である。
【0020】
逓倍PLL16は、原FM信号Sig2を16倍に逓倍し、逓倍FM信号Sig3を出力する。つまり、逓倍FM信号Sig3は、原FM信号Sig2の中心周波数fCK/L(=750MHz)の16倍である12GHzの中心周波数(キャリア周波数)、及び原FM信号Sig2の周波数帯域W(±125MHz)の16倍である2GHzの周波数帯域である。
【0021】
LO生成ヘテロダインPLL15は、分周器151、混合器152、ローパスフィルタ153、コンパレータ154、位相比較器とチャージポンプ155、ループフィルタ156、及びVCO157を備える。
【0022】
分周器151は、VCO157が出力するローカル信号Sig6の周波数fLOを1/Mとする。本実施形態ではfLO=9GHz(所望値)、M=16である。このため、信号Sig7の周波数は、fLO/Mで562.5MHzである。
分周器14は、システムクロック11が出力するクロック信号Sig1の周波数fCKを1/Kとして信号Sig4を出力する。本実施形態では信号Sig4の周波数はfCK/Kで750MHzである。
【0023】
混合器152は、信号Sig4と信号Sig7を混合する。ローパスフィルタ153は、混合器152で混合された信号のうち、差成分のみ(fCK/K-fLO/M=750MHz-562.5MHz=187.5MHz)を透過する。
コンパレータ154は、ローパスフィルタ153から出力される差成分(正弦波)を矩形波に変換する。
【0024】
高精度信号源13は、例えば、水晶発振器であり、基準信号Sig5の周波数fXOを出力する。本実施形態では、周波数fXO=187.5MHzである。
位相比較器とチャージポンプ155は、コンパレータ154が出力する矩形波と基準信号Sig5とを比較し、コンパレータ154が出力する矩形波の周波数と基準信号Sig5の周波数とのずれに応じた電流を出力する。ループフィルタ156は当該電流を当該ずれが小さくなるような電圧に変換してVCO157に入力する。
【0025】
LO生成ヘテロダインPLL15は、このような構成により所望周波数fLO(本実施形態の場合9GHz)で安定したローカル信号Sig6を混合器17へ出力できる。
【0026】
混合器17は、逓倍PLL16からの逓倍FM信号Sig3とLO生成ヘテロダインPLL15からのローカル信号Sig6を混合し、差成分を広帯域FM信号Sig8として出力する。本実施形態の場合、逓倍FM信号Sig3が12GHz±2GHz、ローカル信号Sig6が9GHzなので、広帯域FM信号Sig8は中心周波数3GHz、周波数帯域4GHz(±2GHz)である。
【0027】
つまり、変調装置301は、高精度信号源13が出力する基準信号Sig5の周波数を逓倍PLL16の逓倍数で逓倍した周波数を中心とする広域FM信号Sig8を出力することができる。
【0028】
変調装置301は電気回路のみで構成可能である。つまり、変調装置301は、高価な光部品を用いないため、温度調整回路やパイロット信号の分離回路が不要となり、低消費電力且つ小型化することができる。特に、変調装置301は、図1の破線Aで示した構成を集積化でき、さらなる小型化が可能である。
さらに、変調装置301は、市販DDSで生成した低周波のFM信号をPLLで逓倍する構成なので低コスト化を実現できる。特に、変調装置301は、高精度信号源13を基準とした動作により、広帯域FM信号Sig8の周波数のばらつきを低コストで抑えることができる。
【0029】
[実施形態2]
実施形態1では、本発明の変調装置の動作を理解しやすいようにM=N=16、fCK/L=fCK/K=750MHzで説明した。本実施形態では、各パラメータを一般化した変調装置302を説明する。図2は、変調装置302を説明する図である。変調装置302は、図1の変調装置301に対し、パラメータK、L、M、及びNを任意に変更する設定器18をさらに備える。なお、K、L、M、及びNは正の数である。
【0030】
実施形態1の説明の通り、高精度信号源13の基準信号Sig5の周波数fXOは、信号Sig4と信号Sig5の差分であるから、
【数1】
となり、VCO157が出力するローカル信号Sig6は、
【数2】
となる。
【0031】
DDS12が出力する原FM信号Sig2の中心周波数(キャリア周波数)はfCK/Lであるから、混合器17が出力する広帯域FM信号Sig8の中心周波数(キャリア周波数)は、
【数3】
となる。
【0032】
設定器18により、パラメータ(分周数K、FM変調指数L、分周数M、及び逓倍数N)を適宜調整することで広帯域FM信号Sig8の周波数を変更でき、アプリケーション要求に応じたハード機能を実現可能となる。
【0033】
特に、N:L=M:Kなら、広帯域FM信号Sig8の周波数はMfXOとなるので基準信号Sig5の周波数fXOと分周数Mのみで決定することができる。つまり、混合器152のLO側入力信号Sig4の周波数(fCK/K)=原FM信号Sig2の中心周波数(fCK/L)であれば(すなわちL=Kであれば)、分周数M=逓倍数Nとすることでシステムクロック11の周波数変動の影響を受けないようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、ケーブルテレビジョン用の広帯域FM光信号を送信する送信機や、多重化した大容量データを一括して送る広帯域FM信号送信機に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
11:システムクロック
12:ダイレクト・デジタル・シンセシス(DDS)
13:高精度信号源
14:分周器
15:LO生成ヘテロダインPLL
16:逓倍PLL
151:分周器
152:混合器
153:ローパスフィルタ
154:コンパレータ
155:位相比較器とチャージポンプ
156:ループフィルタ
157:VCO
301、302:変調装置
図1
図2