(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033650
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 1/00 20060101AFI20230303BHJP
B43K 1/12 20060101ALI20230303BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
B43K1/00 110
B43K1/12 B
B43K8/02 110
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010882
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2018191814の分割
【原出願日】2018-10-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】牧 貴之
(57)【要約】
【課題】 筆記の安定性を確保でき、筆記中の線引き箇所を容易に視認できる筆記具を提供する。
【解決手段】 少なくとも、軸筒10の端面と当接するフランジ部42を有する保持体40と、U字状の筆記芯30を介して空間部33を形成する筆記部32とを有する筆記具Aであって、前記保持体40に孔部44、44を形成し、該孔部44、44に筆記芯30が挿入され、筆記芯30外周に保持体40が配置されていることを特徴とする筆記具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書及び/又は図面に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペイントマーカー、油性マーカー、水性マーカー、アンダーラインマーカーと呼ばれるタイプの筆記具に関し、更に詳しくは、筆記芯を筆記具の軸筒に安定して保持させることができると共に、筆記中の線引き箇所等を容易に視認できる筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペイントマーカー、アンダーラインマーカー等と称される筆記具は、幅広の筆記芯を備えることにより幅広の線引きを可能にしたものであって、マーキングの視認性や作業性に優れているため幅広く使用されている。
ラインマーカー等の筆記具における筆記芯は、一般に合成樹脂繊維等を棒状等に集束したものや、高分子の焼結体などの多孔質部材に毛細管作用を付与し、これにより筆記具本体となる軸体から供給されるインクをペン先に導出することにより筆記可能としたものである。
【0003】
また、蛍光インクを筆記具本体となる軸体内に収容した筆記具の普及にともない、幅広の線引きを可能とした多くの構造、形状のペン先を有する筆記具が市販されたことにより、使用者の用途に応じた筆記具の広い選択が可能となり、その作業性も快適なものとなっている。
【0004】
本出願人は、筆記具本体となる軸体から供給されるインクを誘導し、かつ保留できる筆記芯を有する筆記具において、ペン先に、筆記方向を視認できる可視部(窓)を備えた筆記具を開示している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された筆記具において、一本の筆記芯で透明部材を介さずに素通しの形状とした筆記部とした場合、筆記具の軸筒への更に安定して取り付けることが切望されており、また、筆記時における更に安定した筆記を得ることが切望されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-52682号公報(特許請求の範囲、
図1~
図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、一本の筆記芯で透明部材を介さずに素通しの形状とした筆記部とした場合でも、筆記具の軸筒への更に安定した取り付け、並びに、筆記時における更に安定した筆記を得ることができる筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来の現状等を解決するために鋭意検討した結果、少なくとも、軸筒の端面と当接するフランジ部を有する保持体とU字状の筆記芯を介して空間部を形成する筆記部を有する筆記具であって、保持体を特定構造とし、この保持体と筆記芯とを特定配置等することなどにより、上記目的の筆記具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明の筆記具は、少なくとも、軸筒の端面と当接するフランジ部を有する保持体と、U字状の筆記芯を介して空間部を形成する筆記部とを有するペン先を備えた筆記具であって、前記保持体に孔部を形成し、該孔部に筆記芯が挿入され、筆記芯外周に保持体が配置されていることを特徴とする。
前記保持体と筆記芯との隙間は0.01mm以上形成されていることが好ましい。
前記筆記部は、軸筒の両端に備え、筆記芯からのインク流量が略等しく、具体的には、両端のインク流量差は50mg/10m未満とすることが好ましい。
また、 筆記部の耐曲げ力が1kg以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、筆記芯を筆記具の軸筒に安定して保持させることができると共に、U字状の筆記芯の空間部により筆記の際における視認性を妨げず筆記中の線引き箇所等を容易に視認できる筆記具が提供される。
また、保持体と筆記芯との隙間を0.01mm以上形成することによって、より空気置換を上げて、インク流通性を確保することができる。
更に、筆記部を軸筒の両端に備え、そのインク流量が略等しい構成とするによって、保管状態により一端の筆記部でインク流量が少なくなっても、他の他端の筆記部により筆記を続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の筆記具の実施形態の一例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図である。
【
図2】
図1の筆記具における左側のペン先部分の拡大斜視図である。
【
図3】
図1の筆記具における左側のペン先における保持体の実施形態の一例を示す各図面であり、(a)は左側方向から見た斜視図、(b)は平面図、(c)左側面図、(d)は正面図、(e)は右側面図、(f)は縦断面図、(g)は後方側から見た斜視図である。
【
図4】
図1の筆記具における右側のペン先部分の拡大斜視図である。
【
図5】
図1の筆記具における右側のペン先における保持体の実施形態の一例を示す各図面であり、(a)は平面図、(b)は前方側から見た斜視図、(c)は左側面図、(d)は正面図、(e)は右側面図、(f)は後方側から見た斜視図、(g)は縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。
図1(a)~(c)は、本発明の筆記具の実施形態の一例を示す平面図、正面図、縦断面図であり、
図2は、
図1の筆記具における左側のペン先部分の拡大斜視図、
図3(a)~(g)は左側のペン先における保持体の実施形態の一例を示す各図面であり、
図4は、
図1の筆記具における右側のペン先部分の拡大斜視図、
図5(a)~(g)は右側のペン先における保持体の実施形態の一例を示す各図面である。
本実施形態の筆記具Aは、
図1(a)~(c)に示すように、筆記具本体となる軸筒10内のインク吸蔵体20にインクを吸蔵させ、左側となる一端にペン先B、右側となる他端にペン先Cを有し、インク吸蔵体20のインクを毛管作用により、それぞれペン先B、Cの各筆記部32に供給する構成となっている。なお、軸筒10の各両端部側に着脱自在に嵌合するペン先B及びペン先Cを保護する気密性の高いポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなる各キャップ(図示せず)を備えるものである。
【0013】
軸筒10は、例えば、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂で形成されるものであり、筆記具用インクを含浸したインク吸蔵体20を収容する筒状体からなると共に、左側となる一端側にはペン先Bを固着する先軸25、右側となる他端側にはペン先Cを固着する先軸26を有している。
軸筒10は筒状に成形され、筆記具の本体(軸体)として機能する。また、先軸25、26は、それぞれ筒状に形成され、各々長手方向中央部付近の外周部に軸筒10の両端の開口端面と当接する凸部25a、26aを有し、該凸部25a、26aの後方側(軸筒側)に軸筒10内に嵌合する嵌合筒部25b、26b、前方側に各ペン先B、Cを固着する先軸筒部25c、26cを有している。
【0014】
インク吸蔵体20は、水性インク、油性インクなどの筆記具用インクを含浸したものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維束、フェルト等の繊維束を加工したもの、また、スポンジ、樹脂粒子、焼結体等の多孔体を含むものである。このインク吸蔵体20は、軸筒10内に収容保持されている。
さらに、インク吸蔵体20としては、例えば、細いデニール繊維束と、該細いデニール繊維の単糸繊度より大きい単糸繊度を有する複数の太いデニール繊維束とから構成してもよい。前記細いデニール繊維束の単糸繊度は、1~5デニールの範囲から選ばれ、太いデニール繊維束の単糸繊度は、15~20デニールの範囲から選ばれる。このインク吸蔵体は、細いデニール繊維束の中の複数箇所(具体的には1~8箇所)に、太いデニール繊維が分散配置される。太いデニール繊維束が比較的大きい空隙を有し、細いデニール繊維束が太いデニール繊維束と比較し小さい空隙を有する。
前記太いデニール繊維束が多量のインクを保持するインク保溜部を構成し、細いデニール繊維束が各々のインク保溜部の相互間を接続するインク接続部を構成する。各々の太いデニール繊維束が細いデニール繊維束により包囲される。太いデニール繊維により形成されるインク保溜部の各々は、異なる横断面形状を有することで、インク吸蔵体のインクを各ペン先B、Cに過剰とならず、安定した状態で効率よく供給することができる。
【0015】
また、太いデニール繊維束(インク保溜部)の各々は、インク吸蔵体20の軸心から径方向に離れた部分に分散配置され、少なくとも、インク誘導部31の後端部が接続されるインク吸蔵体20の軸心部には、細いデニール繊維束が位置される。インク吸蔵体20の繊維全体の占有断面積に対する太いデニール繊維束の占有断面積の割合は、好ましくは、35%~60%(より好ましくは、50%~60%)の範囲に設定される。この範囲に設定することより、安定した適正量のインク吐出性が得られる。インク吸蔵体20の繊維全体の占有断面積に対する太いデニール繊維束の占有断面積の割合が35%より小さいと、ペン先B及びペン先Cからのインク吐出性が不十分となり、一方、インク吸蔵体20の繊維全体の占有断面積に対する太いデニール繊維の占有断面積60%より大きいと、ペン先B及びペン先Cからのインク吐出性が過剰となる。
【0016】
用いる筆記具用インクの組成は、特に限定されず、筆記具の用途等に応じて、水性染料インク、油性インク、熱変色性インクなどの好適な配合処方とすることができ、例えば、アンダーラインペン等ではインクに蛍光色素、例えば、ベーシックバイオレット11、ベーシックイエロー40、熱変色性マイクロカプセル顔料などの色材を含有させることできる。
好ましくは、染料インク又は染料を含む樹脂微粒子顔料インクが望ましい。
染料を含む樹脂微粒子顔料インクとしては、少なくとも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、塩基性染料又は油溶性染料とで構成される着色樹脂微粒子であって、前記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量が着色樹脂微粒子を構成する全ポリマー成分に対して、30質量%以上であると共に、前記塩基性染料又は油溶性染料の含有量が全ポリマー成分に対して、15質量%以上である着色樹脂微粒子が水に分散された着色樹脂微粒子の分散液と、水溶性有機溶剤と、水とを+含有するものが挙げられる。
また、これらのインクは、インク配合成分種、各配合量を調整することなどにより、インク粘度(25℃:コンプレート型粘度計)1~5mPa・s、表面張力30~60mN/m、後述するペン先B、Cの筆記部32からのインク流量を筆跡の濃度と乾燥性の観点から10mの筆記距離で50mg以上200mg未満に設定することが好ましい。
【0017】
また、筆記具用インクを熱変色性インクとした場合は、少なくとも、摩擦熱等により変色する着色剤と鱗片状シリカを含む水性インクとすることが好ましい。
用いる鱗片状シリカは、自己造膜性を有する薄板状のシリカ(SiO2)の微粒子であり、インク状態では水媒体中に固体として分散状態で存在し、筆記時には筆記面に沿って緩やかに配向するとともに、水分の蒸発に伴ってシリカ表面のシラノール基同士が密着して強固な被膜を形成する。そのため、筆跡に強い定着性を付与することができる。
【0018】
用いることができる鱗片状シリカとしては、例えば、粉体や水でスラリー状に分散されたものが適用でき、具体的には、薄片状の一次粒子、該薄片一次粒子が互いに面間が平行的に配向して複数枚重なって形成される実質的に葉状二次粒子(積層構造の粒子形態を有する鱗片状シリカ)、前記薄片一次粒子が葉状二次粒子形態で三次凝集した三次凝集粒子、更にこれらの混合物などが挙げられる。
【0019】
前記薄片一次粒子は、その厚さが0.001~0.1μmのものである。このような薄片一次粒子は、互いに面間が平行的に配向して1枚または複数枚重なった葉状シリカ二次粒子を形成する。前記二次粒子の厚さは、0.001~3μm、好ましくは0.005~2μmであり、厚さに対する葉状二次粒子の最長長さの比(アスペクト比)は、少なくとも10、好ましくは30以上、更に好ましくは50以上のものであり、厚さに対する葉状二次粒子の最長長さの比は、少なくとも2、好ましくは5以上、更に好ましくは10以上を有するような鱗片状のシリカが望ましい。
上記葉状二次粒子の厚さが0.001μm未満の場合には、葉状二次粒子の強度が不十分となるため好ましくない。なお、二次粒子の厚さは、微粉末状のものを走査型電子顕微鏡観察することで測定ができる。また、厚さと平面方向の粒径は、透過型電子顕微鏡により撮影した粒子像サイズのスケール計測等により区別することができる。
【0020】
用いる鱗片状シリカは、その大きさを特に限定されるものではなく、平均粒子径が0.002~20μm、好ましくは0.01~10μm、更に好ましくは0.01~8μmのものが適用できる。平均粒径が0.002μm未満の場合は、表面積が小さくなり十分な筆跡定着性が得られ難く多量の添加を必要としてしまい、20μmを越えると、筆記時のインク吐出性が悪くなることがある。なお、三次凝集粒子を用いる場合、平均粒子径が4~6μm程度のものが最も有用である。
【0021】
前記平均粒子径の測定方法としては、レーザー回折/散乱式粒度測定装置(例えば、堀場製作所社製、LA-920型)、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所社製、LB-500型)、コールターカウンター(例えば、コールターエレクトロニクス社製、MA-II型)等を粒子径の範囲に応じて適宜使用して測定される。
【0022】
具体的に用いることができる鱗片状シリカとしては、上記特性を有するものであれば、特に限定されず、また、上記特性を有する市販品を用いてもよく、例えば、AGCエスアイテック社製のサンラブリー、C、TZ-824、LFS、LFS-C等が挙げられる。
【0023】
用いる鱗片状シリカの含有量は、インク組成物全量に対して、好ましくは、0.1~10重量%、より好ましくは、0.5~5重量%の範囲で用いられる。この含有量が0.1重量%未満では所望の性能を発現し難く、また、10重量%を超えて配合しても更なる効果は得られないので、これ以上の含有を要しない。
【0024】
用いる摩擦熱等により変色する着色剤としては、筆跡を摩擦体等で擦過して加温することによって、筆跡が変色(消色や変色)するものであれば、特に限定されず、また、市販品があれば、それらを用いても良い。
用いることができる上記熱変色性の着色剤としては、例えば、電子供与性染料であって、発色剤としての機能するロイコ色素と、該ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となる顕色剤及び上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールすることができる変色温度調整剤を少なくとも含む熱変色性組成物を、所定の平均粒子径となるように、マイクロカプセル化することにより製造される熱変色性の着色樹脂粒子などを挙げることができる。
マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、壁膜がウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂等となる樹脂原料を使用、例えば、アミノ樹脂溶液、具体的には、メチロールメラミン水溶液、尿素溶液、ベンゾグアナミン溶液などの各液を徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより熱変色性のマイクロカプセル顔料からなる熱変色性の着色樹脂粒子を製造することができる。この熱変色性の着色樹脂粒子では、ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度、消色温度を好適な温度に設定することができる。
なお、前記熱変色性の着色樹脂粒子は、可逆熱変色性となるものが好ましい。可逆熱変色性となるものは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態又は消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、又は、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独又は併用して構成することができる。
また、用いる熱変色性インクとして具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、-30~-10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、60~80℃の範囲に特定し、ΔH値を40~100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0025】
前記加熱消色などする熱変色性着色剤の他、汎用の着色剤を併用することができる。
汎用の着色剤としては、水性系媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、例えば、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
塩基性染料としては、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
【0026】
前記顔料としては、例えば、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:Sandye Super Blue GLL、顔料分24%、山陽色素株式会社製〕、C.I. Pigment Red 146〔品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、C.I.Pigment Red 220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
なお、前記顔料を分散する樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル酸樹脂、マレイン酸樹脂、アラビアゴム、セルロース、デキストラン、カゼイン等、およびそれらの誘導体、前記した樹脂の共重合体等が挙げられる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
また、酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉顔料、天然雲母、合成雲母、アルミナ、ガラス片から選ばれる芯物質の表面を二酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、コレステリック液晶型光輝性顔料等を使用することもできる。
前記着色剤は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インク組成物中1~35質量%、好ましくは2~30質量%の範囲で用いられる。
【0027】
また、水に相溶性のある従来汎用の水溶性有機溶剤を用いることもでき、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオプレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
なお、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用することもでき、インク組成物中2~60質量%、好ましくは5~35質量%の範囲で用いられる。
【0028】
その他、必要に応じて、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2-ベンズチアゾリン3-オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、インクの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系界面活性剤を使用してもよい。
更に、潤滑剤を添加することができ、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、N-アシルアミノ酸系界面活性剤、ジカルボン酸型界面活性剤、β-アラニン型界面活性剤、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールやその塩やオリゴマー、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、α-リポ酸、N-アシル-L-グルタミン酸とL-リジンとの縮合物やその塩等が用いられる。
また、N-ビニル-2-ピロリドンのオリゴマー、N-ビニル-2-ピペリドンのオリゴマー、N-ビニル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、N-ビニル-ε-カプロラクタムのオリゴマー等の増粘抑制剤を添加することで、出没式形態での機能を高めることもできる。
【0029】
また、耐乾燥性を妨げない範疇でアルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の水溶性樹脂を一種又は二種以上添加したり、尿素、ノニオン系界面活性剤、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤を一種又は二種以上含有することもできる。
【0030】
前記水性インクには、剪断減粘性付与剤を含有することもできる。
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、ゼータシーガム、ダイユータンガム、マクロホモプシスガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万~15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ポリN-ビニル-カルボン酸アミド架橋物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、HLB値が8~12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示できる。更には、インク組成物中にN-アルキル-2-ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加してもよい。前記剪断減粘性付与剤は、インク組成物中0.1~20重量%の範囲で用いることができる。
【0031】
上記熱変色性インクを用いた場合には、JIS S 6050-2002に規定する鉛筆描線の消し能力(消字率)が70%未満で可塑剤を含む熱可塑性エラストマー(摩擦体)を筆記具のキャップ(図示せず)の頂部又は開口端部に形成することが好ましい。この摩擦体を備えることにより、摩擦体の擦過動作により摩擦熱を発生容易にし、摩擦熱より熱変色性インクによる筆跡を容易に熱変色(変色、消色)させ、かつ筆跡された紙面等を痛めることなく使用することができる。
【0032】
ペン先Bは、少なくとも、ペン芯となる筆記芯30と、該筆記芯30を保持する保持体40とを有するものである。
この筆記芯30は、
図1、
図2に示すように、略U字状となっており、インク誘導部31、31と、該インク誘導部31、31からのインクを導出する筆記部32とを有するものであり、このU字状の筆記芯30を介して内側に筆記中の線引き箇所等を容易に視認できる四角形状(台形)の空間部(素通し部)33が形成されている。なお、本発明において、「U字状」とは、コ字状等を含むものであり、筆記部32と内側に筆記中の線引き箇所等を容易に視認できる空間部(素通し部)33が形成できる構造となるものであれば良いものである。また、空間部(素通し部)33は、
図1(c)の方向からの開口面積を10~60mm
2とすることが好ましい。
【0033】
この筆記芯30は、良好なインク流出性を有するものであるので多孔質部材から構成されている。例えば、この筆記芯30は、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる並行繊維束、フェルト等の繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、または、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂などのプラスチック粉末などを焼結したポーラス体(焼結芯)などからなるものである。
好ましい筆記芯30としては、繊維束芯、繊維芯、焼結芯、フェルト芯、スポンジ芯、無機多孔体芯であり、特に好ましくは、変形成形性の点、生産性の点、保形性の点から、焼結芯が望ましい。本実施形態の筆記芯30では、平均粒子径200μmのポリエチレン粉末を焼結した気孔率55%の焼結芯(焼結体)と、該焼結芯を補強する補強材料35から構成されている。なお、本発明において、「平均粒子径」は、電子顕微鏡にて、測定した粒子の直径の平均値を示し、電子顕微鏡に投影された画像内の20個の粒子について測定した粒子径の平均値である。粒子が円形でない場合は、気孔を形成する輪郭の任意の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さと最も短い線分の長さを足して2で割った値を、その粒子の粒子径とする。
また、気孔率は下記のようにして算出される。まず、既知の質量及び見掛け体積を有する筆記芯30を水中に浸し、十分に水を浸み込ませた後、水中から取り出した状態で質量を測定する。測定した質量から、筆記芯30に浸み込ませた水の体積が導出される。この水の体積をペン芯の気孔体積と同一として、下記式(A)から、気孔率が算出される。
気孔率(単位:%)=(水の体積)/(筆記芯の見掛け体積)×100 ……(A)
【0034】
また、この筆記芯30の内部には、筆圧などが強くても空間部(素通し部)33を有する筆記芯30の保形性の維持、耐曲げ性の更なる向上などの点から、補強部材35、本実施形態では、金属(ワイヤー材)を一体に有している。
用いる補強部材35の材質等としては、上記の金属(ワイヤー材)の他、樹脂、炭素繊維等、筆記芯30より耐せん断強度が優れてかつ、筆記芯30の芯径より50%未満の径であることが好ましい。
より好ましくは、良好な筆記性能、筆記芯30の保形性を更に維持する点、好ましいインク流出性の点から、この筆記部32の耐曲げ力が1kg以上であることが望ましい。本発明において、「耐曲げ力」とは、筆記具を筆記角度65°と同様に傾斜して紙面等に押しつけてペン先が塑性変形する荷重として測定した値をいう。
また、筆記芯30の材料種、製法等を好適に調整等して、上記耐曲げ力を維持できれば上記補強部材35を用いなくともよい。
【0035】
本実施形態の筆記芯30の幅方向の長さは、十分な筆記流量の確保を確保する点から、好ましくは、0.50mm以上、特に、1.00~3.00mmであることが望ましい。
筆記部32は、筆記しやすい傾きとなるように、傾斜状(ナイフカット状)としてもよく、この傾き等は、筆記等の使い勝手に合わせて適宜設定される。また、この筆記部32は、描線幅が太いものであり、好ましくは、描線幅は1mm以上、更に好ましくは、描線幅は2mm以上の描線幅となる筆記部32が望ましい。
【0036】
保持体40は、
図1、
図2及び
図3(a)~(g)に示すように、ペン芯となる筆記芯30を固定して、軸筒10の先軸25先端開口部内に固着されるものであり、膨出状の本体部41と、該本体部41の前方側に、軸筒10の端面と当接するフランジ部42と、上記本体部41内にはフランジ面43側に、筆記芯30のインク誘導部31、31を挿入する貫通型の孔部44、44が形成されると共に、該孔部44、44の本体部41内から後方側にかけて上下側にそれぞれインク誘導部31、31を嵌入保持する凹状の保持部45、45が形成されている。この保持部45、45は、
図3(f)に示すように、インク誘導部31、31の後方側の間隔が順次縮小となる縮小部46が形成されてインク誘導部31、31の後方部31a,31aが軸筒10内のインク誘導体20内の所定箇所に確実に挿入される設計となっている。
更に、本体部41の幅方向外周面には、凹状の嵌合部47が形成され、長手方向外周面となる両面空気流通溝には、それぞれ直線状の空気流通溝48と屈曲状の空気流通溝49が形成されている。
【0037】
このように構成される保持体40全体は、硬質材料で構成されており、例えば、金属、ガラス、ゴム弾性を有しない樹脂などから構成されるものである。具体的には、例えば、PP、PE、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の樹脂材料から成形することができる。なお、上述の如く、筆記芯30の空間部33で筆記中の線引き箇所等を容易に視認することできるものであり、この保持体40は後述するように先軸25への取り付けにより先軸25内に固着されるので、保持体40は視認性を有しなくとも良いものである。
また、保持体40は、上記各材料の一種類、または、耐久性の更なる向上の点などから、2種類以上の材料を用いて構成してもよく、射出成形、ブロー成形などの各種成形法により成形することができる。
【0038】
このペン先Bにおいて、上記筆記芯30の保持体40への固着(装着)は、筆記芯30のインク誘導部31、31の各端部を保持体40の貫通型の孔部44、44に挿入し、保持溝45、45に嵌入せしめることにより固着され、軸筒10の端面と当接するフランジ部42により、固着されない部分となる筆記芯30の筆記部32と、筆記中の線引き箇所等を容易に視認できる空間部(素通し部)33がペン先部となる。この保持体40は、フランジ面43を残して軸筒10の一方の開口部内に固着される構造となる。更に、筆記芯30の固着(抜け止め)を確実にするために、固着箇所に接着剤による接着、溶着などを更に用いても良いものである。
上記保持体40と筆記芯30のインク誘導部31、31との間には、より空気置換を上げて、インク流通量を確保する点から、好ましくは、挿入された際に、周状に隙間を有することが望ましく、この隙間は、好ましくは、0.01~0.5mmが好適である。
上記孔部44、44は、図面(
図2,
図3)では、四角形状としたが、筆記芯のインク誘導部31、31が挿入可能で、隙間を形成できれば、特に限定されず、インクの断面形状等に沿って円形状等であっても良いものである。
【0039】
このように構成されるペン先Bは、少なくとも、軸筒10の一方の端面と当接するフランジ部42を有する保持体40と、U字状の筆記芯30を介して空間部33を形成する筆記部32とを有するものであって、前記保持体40に孔部44、44を形成し、該孔部44、44に筆記芯30の後方部側31a、31aが挿入され、筆記芯30外周に保持体40が配置される構成となっている。このペン先Bにおいては、インク吸蔵体20、インク誘導部31、31の後方部側31a、31aから筆記部32へインクが毛管作用により供給されて、筆記に供されることとなる。
【0040】
また、本実施形態では、軸筒10の他方の端面には、ペン先Cを有する構成となっている。
図1~
図3のペン先Bと同様の構成となる場合は、ペン先Bの図示符号と同一の符号を付して、その説明を省略する。
ペン先Cは、少なくとも、ペン芯となる筆記芯30と、該筆記芯30を保持する保持体40とを有するものである。
ペン先Cは、筆記芯30の断面形状が、コ字状となっている点、補強部材35を有しない点、保持体40の孔部44の代わりに、中空柱状のガイド部44a、44aを形成している点で、上記ペン先Bと相違するものである。
図1~
図3と同様の構成となる場合は、ペン先Bの図示符号と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0041】
この筆記芯30は、コ字状となっており、ペン先Bと筆記芯と同様に、インク誘導部31、31と、該インク誘導部31、31からのインクを導出する筆記部32とを有するものであり、このコ字状の筆記芯を介して内側に筆記中の線引き箇所等を容易に視認できる長方形状の空間部(素通し部)33が形成されている。
本実施形態の保持体40の本体部41内から筆記部32(前方)側に、
図1、
図4及び
図5に示すように、インク誘導部31、31をガイドする中空柱状のガイド部44a、44aを形成して、筆記部32等の破損、曲げ防止かつ使用時において定規等を汚しにくい構造となっている。ガイド部44a、44aと筆記芯30のインク誘導部31、31との間には、より空気置換を上げて、インク流通量を確保する点から、好ましくは、周状に隙間を有することが望ましく、この隙間は、好ましくは、0.01~0.5mmが好適である。
上記ガイド部44a、44aは、図面(
図4,
図5)では、定規等に当てやすくするために四角形状としたが、筆記芯のインク誘導部31、31が挿入可能で、隙間を形成できれば、特に限定されず、インクの断面形状等に沿って円形状等であっても良いものである。また、ガイド部44aは、図面(
図4,
図5)では本体部41と合成樹脂等により一体形成されていることが好ましいが、ガイド部44aを金属パイプ等で形成して本体部41を合成樹脂として接着等で構成される別部材の形態としてもよい。
【0042】
このように構成されるペン先Cは、少なくとも、軸筒10の他方の端面と当接するフランジ部42を有する保持体40と、コ字状の筆記芯30を介して空間部33を形成する筆記部32とを有するものであって、前記保持体40に孔部44、44とその前方側に形成した中空状のガイド部44a、44aを形成し、該ガイド部44a、44aに筆記芯30の後方部側が挿入され、筆記芯30外周に保持体40が配置される構成となっている。
このペン先Cもインク吸蔵体20、中空状のガイド部44a、44aにガイドされるインク誘導部31、31の後方部側31a、31aから筆記部32へインクが毛管作用により供給されて、筆記に供されることとなる。
【0043】
軸筒10の両端に備えたペン先B、ペン先Cへのインク流量は、好ましくは、略等しいことが望ましく、更に好ましくは、両端の筆記芯30における筆記部32のインク流量差は10mの筆記距離で50mg未満とすることが望ましい。これにより、保管状態により一端の筆記部32でインク流量が少なくなっても(描線が薄くなっても)、他端の筆記部32により筆記を続けることができる。
軸筒10の両端に備えたペン先B、ペン先Cへのインク流量が略等しい構成とするためには、各筆記芯30、30の材質や気孔率等を同一構成とすることにより容易に行うことができる。
【0044】
このように構成される筆記具Aでは、少なくとも、軸筒10の端面と当接するフランジ部42を有する保持体40と、U字状の筆記芯30を介して空間部33を形成する筆記部32とを有するペン先B、Cを備えたものであり、前記保持体40に孔部44、44などを形成し、該孔部44、44などに筆記芯30のインク誘導部31、31を挿入し、筆記芯30外周に保持体40が配置される構成とすることより、筆記芯30を筆記具の軸筒10に安定して保持させることができると共に、U字状の筆記芯32の空間部33により筆記中の線引き箇所等を容易に視認できるものとなる。
ペン先Bにおいて、筆記部32の耐曲げ力を1kg以上とすることによって、空間部33のある筆記部32であっても、変形せずに筆記を続けることができる。
また、ペン先Cにおいて、保持体40に、筆記芯30のインク誘導部31、31をガイドする中空柱状のガイド部44a、44aを形成することにより、筆記部32等の破損、曲げ防止かつ使用時において定規等を汚しにくい構造となっている。更に、孔部44、44又はガイド部44a、44aと筆記芯30のインク誘導部31、31との間に隙間を0.01mm以上形成することによって、より空気置換を上げて、インク流通性を確保することができるものとなる。
【0045】
本実施形態の筆記具Aでは、上記構成のペン先B及びペン先Cを備えた構成としたが、上記実施形態などに限定されることなく、本発明の技術思想を変更しない範囲内で種々変更することができる。
例えば、上記実施形態では、ペン先がツインタイプ(ペン先B、ペン先C)の筆記具としたが、一方の軸筒10の開口端を封鎖(有底筒状)して、ペン先B又はペン先Cを備えたシングルタイプの筆記具としてもよいものである。
また、上記実施形態において、筆記芯30を焼結芯タイプについて詳述したが、筆記芯30は焼結体以外に、上述の如く、繊維束体、繊維芯、発泡体、海綿体、フェルト体などであってもよい。
更に、上記実施形態では、インク吸蔵体20に吸蔵されたインクを毛管力により筆記芯30の筆記部32に効率的に供給せしめる方式(中綿式)の筆記具を示したが、弁機構を備えた筆記具、例えば、筆記具本体となる軸体内に直接インクが収容されたインク室を設けて、インク室と筆記芯との間に弁機構を設け、ペン先方向の押圧移動で弁機構のスプリングの附勢力に抗して弁棒を後退させて弁部を解放してインクの導出を行い、ペン芯にインクを供給する構成の筆記具であってもよいものである。また、シングルタイプでは、ノック式の筆記具であってもよいものである。
【0046】
さらにまた、上記実施形態の筆記具Aでは、筆記具本体の軸体などの断面を円形軸に形成したが、三角形状、四角形以上の方形状などの異形形状、楕円形状にしてもよいものである。
更に、上記各実施形態では、筆記具用のインク(水性染料インク、油性インク、熱変色性インク、染料を含む樹脂微粒子顔料インク)で説明したが、液状化粧料、液状薬剤、塗布液、修正液などの液状体としてもよいものである。
【0047】
この
図1~
図5準拠の実施形態のペン先B、Cを備えた筆記具Aでは、軸筒10の端面と当接するフランジ部42を有する保持体40と、U字状の筆記芯30を介して空間部33を形成する筆記部32とを有するペン先B、Cを備えたものであり、前記保持体40に孔部44、44などを形成し、該孔部44、44などに筆記芯30のインク誘導部31、31を挿入し、筆記芯30外周に保持体40が配置される構成とすることより、筆記芯30を筆記具の軸筒10に安定して保持させることができると共に、U字状の筆記芯32の空間部33により筆記中の線引き箇所等を容易に視認できるものとなる。
ペン先Bにおいて、筆記部32の耐曲げ力を1kg以上とすることによって、空間部33のある筆記部32であっても、変形せずに筆記を続けることができる。
また、ペン先Cにおいて、保持体40に、筆記芯30のインク誘導部31、31をガイドする中空柱状のガイド部44a、44aを形成することにより、筆記部32等の破損、曲げ防止かつ使用時において定規等を汚しにくい構造となっている。更に、孔部44、44又はガイド部44a、44aと筆記芯30のインク誘導部31、31との間に隙間を0.01mm以上形成することによって、より空気置換を上げて、インク流通性を確保することができるものとなるペン先を用いた筆記具となることが確認された。
【0048】
更に、自動筆記装置にこの筆記具をセットして、JIS S6037に準拠した試験方法に従い、上質紙面上で筆記角度65°、筆記荷重1N、速度7cm/s、距離100mで直線筆記後、筆記した描線状態を目視にて確認したところ、上記好ましいインク組成のものを使用しているため、ペン先Bではインク流量(10mで70mg)、ペン先Cではインク流量(10mで80mg)も共に良好で、ペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現することが判った。
また、両端の筆記部32,32のインク流量差も10mg/10mであり、保管状態により一端の筆記部32でインク流量が少なくなっても(描線が薄くなっても)、他の他端の筆記部32により筆記を続けることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のペン先では、アンダーラインペン、ペイントマーカー、油性マーカー、水性マーカーと呼ばれる所謂マーキングペンタイプの筆記具に用いるペン先として好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
A 筆記具
B ペン先
C ペン先
10 軸筒
20 インク吸蔵体
30 筆記芯
31 インク誘導部
32 筆記部
33 空間部(素通し部)
40 保持体
44 孔部
【手続補正書】
【提出日】2023-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、軸筒の端面と当接するフランジ部を有する保持体と、筆記部と一対のインク誘導部とからなるU字状の筆記芯とを有し、該U字状の筆記芯の内側に空間部が形成さ
れると共に、軸筒内のインクを上記一対のインク誘導部を介して筆記部に供給する筆記具
であって、前記保持体の本体部内から筆記部側に、インク誘導部をガイドする中空柱状のガイド部を形成したことを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記空間部を介して筆記時の前記筆記部と紙面との接触状態を視認することができることを特徴とする請求項1記載の筆記具。