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特開2023-33671放電プラズマ生成ユニット、及びそれを搭載した光源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033671
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】放電プラズマ生成ユニット、及びそれを搭載した光源装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230306BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20230306BHJP
   H01J 65/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
G03F7/20 521
H01J65/00
H01J65/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139505
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】浦上 英之
(72)【発明者】
【氏名】寺本 雄介
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA24
4C092AA05
4C092AA15
4C092AB12
4C092AB19
4C092AB30
(57)【要約】
【課題】液相のプラズマ原料からプラズマを生成する装置のメンテナンスを容易にすることが可能な放電プラズマ生成ユニット、及びそれを搭載した光源装置を提供すること。
【解決手段】
本発明の一形態に係る放電プラズマ生成ユニットは、一対の放電電極と、一対のコンテナと、支持部材とを具備する。前記一対の放電電極は、各々が円盤状に構成される。前記一対のコンテナは、各々がプラズマ原料を液相の状態で収容可能である。前記支持部材は、前記一対の放電電極の周縁部が互いに離間して対向するように前記一対の放電電極を回転可能に支持し、前記プラズマ原料が前記一対の放電電極にそれぞれ供給されるように前記一対のコンテナを支持する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が円盤状に構成された一対の放電電極と、
各々がプラズマ原料を液相の状態で収容可能な一対のコンテナと、
前記一対の放電電極の周縁部が互いに離間して対向するように前記一対の放電電極を回転可能に支持し、前記プラズマ原料が前記一対の放電電極にそれぞれ供給されるように前記一対のコンテナを支持する支持部材と
を具備する放電プラズマ生成ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の放電プラズマ生成ユニットであって、
前記コンテナは、上方に開口し液相のプラズマ原料が収容される収容部を有し、
前記支持部材は、前記放電電極の少なくとも一部が対応する前記コンテナの上方から前記収容部に挿入されるように、前記一対のコンテナを支持する
放電プラズマ生成ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の放電プラズマ生成ユニットであって、
さらに、前記一対のコンテナの前記収容部に挿入された前記一対の放電電極に付着した前記プラズマ原料の厚みを調整する一対の厚み調整部を具備し、
前記支持部材は、前記一対の放電電極に対応して前記一対の厚み調整部を支持する
放電プラズマ生成ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の放電プラズマ生成ユニットであって、
さらに、前記一対の放電電極を各々の中心軸のまわりに回転させる一対の回転駆動部を具備し、
前記支持部材は、前記一対の回転駆動部を介して、前記一対の放電電極を支持する
放電プラズマ生成ユニット。
【請求項5】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の放電プラズマ生成ユニットであって、
前記支持部材は、真空チャンバの外壁に設けられた開口部を外側から塞ぐ蓋として構成され、前記一対の放電電極と前記一対のコンテナとを前記真空チャンバ内に収まるように支持する
放電プラズマ生成ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の放電プラズマ生成ユニットであって、
前記支持部材は、前記真空チャンバに設けられた第1の位置決め部によりガイドされる第2の位置決め部を有する
放電プラズマ生成ユニット。
【請求項7】
請求項1、2、3、または6のうちいずれか1項に記載の放電プラズマ生成ユニットであって、
前記放電電極の少なくとも一部には、前記プラズマ原料からなるプラズマ原料層が形成されている
放電プラズマ生成ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の放電プラズマ生成ユニットであって、
前記プラズマ原料は、スズを含み、
前記放電電極の素材は、タングステンである
放電プラズマ生成ユニット。
【請求項9】
請求項7に記載の放電プラズマ生成ユニットであって、
前記プラズマ原料層は、少なくとも前記放電電極の前記周縁部に形成される
放電プラズマ生成ユニット。
【請求項10】
請求項7に記載の放電プラズマ生成ユニットであって、
前記周縁部に形成される前記プラズマ原料層の面積は、前記周縁部の面積の80%以上である
放電プラズマ生成ユニット。
【請求項11】
筐体と、
前記筐体に着脱可能に装着されるユニットであって、
各々が円盤状に構成された一対の放電電極と、
各々がプラズマ原料を液相の状態で収容可能な一対のコンテナと、
前記一対の放電電極の周縁部が互いに離間して対向するように前記一対の放電電極を回転可能に支持し、前記プラズマ原料が前記一対の放電電極にそれぞれ供給されるように前記一対のコンテナを支持する支持部材と
を有する放電プラズマ生成ユニットと、
前記放電電極に供給された前記プラズマ原料を気化させるエネルギービームを照射するビーム照射部と、
前記一対の放電電極に放電プラズマを発生させる放電用の電力を供給する電力供給部と、
前記一対のコンテナに前記プラズマ原料を供給する原料供給部と
を具備する光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電プラズマを発生させる放電プラズマ生成ユニット、及びそれを搭載した光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化および高集積化につれて、露光用光源の短波長化が進められている。次世代の半導体露光用光源としては、特に波長13.5nmの極端紫外光(以下、EUV(Extreme Ultra Violet)光とも言う)を放射する極端紫外光光源装置(以下、EUV光源装置とも言う)の開発が進められている。
【0003】
EUV光源装置において、EUV光(EUV放射)を発生させる方法はいくつか知られている。それらの方法のうちの一つに、極端紫外光放射種(以下、EUV放射種とも言う)を加熱して励起することによりプラズマを発生させ、そのプラズマからEUV光を取り出す方法がある。
このような方法を採用するEUV光源装置は、プラズマの生成方式により、LPP(Laser Produced Plasma:レーザ生成プラズマ)方式と、DPP(Discharge Produced Plasma:放電生成プラズマ)方式とに分けられる。
【0004】
DPP方式のEUV光源装置は、EUV放射種(気相のプラズマ原料)を含む放電ガスが供給された電極間の間隙に高電圧を印加して、放電により高密度プラズマを生成し、そこから放射される極端紫外光を利用する。
DPP方式としては、例えば、特許文献1に記載されているように、放電を発生させる電極表面に液相のプラズマ原料(例えば、スズ(Sn)またはリチウム(Li))を供給し、当該原料に対してレーザビーム等のエネルギービームを照射して当該原料を気化し、その後、放電によってプラズマを生成する方法が提案されている。このような方式は、LDP(Laser Assisted Discharge Produced Plasma)方式と呼ばれることもある。
一方、LPP方式のEUV光源装置は、レーザ光をターゲット材料に照射し、当該ターゲット材料を励起させてプラズマを生成する。
【0005】
EUV光源装置は、半導体デバイス製造におけるリソグラフィ装置の光源装置として使用される。あるいは、EUV光源装置は、リソグラフィに使用されるマスクの検査装置の光源装置として使用される。すなわち、EUV光源装置は、EUV光を利用する他の光学系装置(利用装置)の光源装置として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-219698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液相のプラズマ原料を使用するLDP方式では、液相のプラズマ原料が放電を発生させる一対の電極の表面に供給される。EUV光を適正に発生させるためには、各電極の間隔や、各電極の表面へのプラズマ原料の供給量等を適正に設定することが重要となる。
一方で、プラズマが発生すると電極本体が削られてしまうことがある。このように電極の形状が変化した場合には電極の交換等を含むメンテナンスが行われる。
【0008】
例えば、電極間の配置や、液相のプラズマ原料を各電極の表面に供給する供給源の配置といった各部材の位置関係を個別に調整するような場合には、メンテナンスに時間がかかる可能性がある。またメンテナンス中は光源装置が停止しているため、メンテナンス時間が増加すると、EUV光を利用する他の光学装置の稼働時間等が制限される可能性がある。
このため、液相のプラズマ原料からプラズマを生成する装置のメンテナンスを容易にすることを可能にする技術が求められている。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、液相のプラズマ原料からプラズマを生成する装置のメンテナンスを容易にすることが可能な放電プラズマ生成ユニット、及びそれを搭載した光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る放電プラズマ生成ユニットは、一対の放電電極と、一対のコンテナと、支持部材とを具備する。
前記一対の放電電極は、各々が円盤状に構成される。
前記一対のコンテナは、各々がプラズマ原料を液相の状態で収容可能である。
前記支持部材は、前記一対の放電電極の周縁部が互いに離間して対向するように前記一対の放電電極を回転可能に支持し、前記プラズマ原料が前記一対の放電電極にそれぞれ供給されるように前記一対のコンテナを支持する。
【0011】
この放電プラズマ生成ユニットでは、支持部材により、一対の円盤状の放電電極と、プラズマ原料を液相の状態で収容する一対のコンテナとが支持される。各放電電極は、回転可能に支持され、各々の周縁部が離間して対向するように配置される。各コンテナは、各放電電極にプラズマ原料を供給するように配置される。これにより、各放電電極やコンテナを適正に配置した状態で一体的に着脱することが可能となり、液相のプラズマ原料からプラズマを生成する装置のメンテナンスを容易にすることが可能となる。
【0012】
前記コンテナは、上方に開口し液相のプラズマ原料が収容される収容部を有してもよい。この場合、前記支持部材は、前記放電電極の少なくとも一部が対応する前記コンテナの上方から前記収容部に挿入されるように、前記一対のコンテナを支持してもよい。
【0013】
これにより、各放電電極に容易にプラズマ原料を供給することが可能となる。
【0014】
前記放電プラズマ生成ユニットは、さらに、前記一対のコンテナの前記収容部に挿入された前記一対の放電電極に付着した前記プラズマ原料の厚みを調整する一対の厚み調整部を具備してもよい。この場合、前記支持部材は、前記一対の放電電極に対応して前記一対の厚み調整部を支持してもよい。
【0015】
これにより、プラズマ原料の供給量を調整することが可能となり、適切な条件のもとでプラズマを発生させることが可能となる。
【0016】
前記放電プラズマ生成ユニットは、さらに、前記一対の放電電極を各々の中心軸のまわりに回転させる一対の回転駆動部を具備してもよい。この場合、前記支持部材は、前記一対の回転駆動部を介して、前記一対の放電電極を支持してもよい。
【0017】
これにより、回転駆動部を放電電極やコンテナとともに一体的に着脱するといったことが可能となり、例えばメンテナンスの作業時間を短くすることが可能となる。
【0018】
前記支持部材は、真空チャンバの外壁に設けられた開口部を外側から塞ぐ蓋として構成され、前記一対の放電電極と前記一対のコンテナとを前記真空チャンバ内に収まるように支持してもよい。
【0019】
これにより、放電プラズマユニット全体を、真空チャンバの外側から着脱することが可能となる。これにより、放電プラズマユニットの交換作業等を容易に行うことが可能となる。
【0020】
前記支持部材は、前記真空チャンバに設けられた第1の位置決め部によりガイドされる第2の位置決め部を有してもよい。
【0021】
これにより、真空チャンバに対して放電プラズマユニットを適正な位置関係で装着することが可能となる。
【0022】
前記放電電極の少なくとも一部には、前記プラズマ原料からなるプラズマ原料層が形成されていてもよい。
【0023】
これにより、放電プラズマユニットを実際に動作させた場合に、動作初期の段階から適正な強度の発光を実現することが可能となる。
【0024】
前記プラズマ原料は、スズを含んでもよい。この場合、前記放電電極の素材は、タングステンであってもよい。
【0025】
プラズマ原料がスズであり、放電電極がスズに対して濡れ性の低いタングステンであっても、プラズマ原料層を設けることで、動作初期の段階から適正な強度の発光を実現することが可能となる。
【0026】
前記プラズマ原料層は、少なくとも前記放電電極の前記周縁部に形成されてもよい。
【0027】
これにより、放電プラズマユニットを動作初期の段階から確実に動作させることが可能となる。
【0028】
前記周縁部に形成される前記プラズマ原料層の面積は、前記周縁部の面積の80%以上であってもよい。
【0029】
これにより、放電プラズマユニットを実際に動作させた場合に、動作初期の段階から所望の強度の発光を実現することが可能となる。
【0030】
本発明の一形態に係る光源装置は、筐体と、放電プラズマ生成ユニットと、ビーム照射部と、電力供給部と、原料供給部とを具備する。
前記放電プラズマ生成ユニットは、前記筐体に着脱可能に装着されるユニットであって、各々が円盤状に構成された一対の放電電極と、各々がプラズマ原料を液相の状態で収容可能な一対のコンテナと、前記一対の放電電極の周縁部が互いに離間して対向するように前記一対の放電電極を回転可能に支持し、前記プラズマ原料が前記一対の放電電極にそれぞれ供給されるように前記一対のコンテナを支持する支持部材とを有する。
前記ビーム照射部は、前記放電電極に供給された前記プラズマ原料を気化させるエネルギービームを照射する。
前記電力供給部は、前記一対の放電電極に放電プラズマを発生させる放電用の電力を供給する。
前記原料供給部は、前記一対のコンテナに前記プラズマ原料を供給する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、液相のプラズマ原料からプラズマを生成する装置のメンテナンスを容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る放電プラズマ生成ユニットの概要を説明するための模式図である。
図2】放電プラズマ生成ユニットの構成例を示す斜視図である。
図3図2に示す放電プラズマ生成ユニットの断面図である。
図4】放電プラズマ生成ユニットが装着される固定用基板の構成例を示す斜視図である。
図5】放電プラズマ生成ユニットが固定用基板に装着された状態を示す断面図である。
図6】放電プラズマ生成ユニットに搭載される放電電極の構成例を示す模式図である。
図7】放電プラズマ生成ユニットを備えたEUV光源装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係る放電プラズマ生成ユニットの概要を説明するための模式図である。
放電プラズマ生成ユニット1は、LDP方式で放電プラズマ(以下、プラズマPと記載する)を発生させるユニットである。本実施形態では、放電プラズマ生成ユニット1は、EUV光を放出するプラズマPを発生するように構成され、EUV光源装置2に搭載して用いられる。従って、放電プラズマ生成ユニット1は、EUV光源装置2において、EUV光の光源となるソースヘッドとして機能し、EUV光源装置2に設けられる真空チャンバ内でプラズマPを発生する。
放電プラズマ生成ユニット1は、一対の放電電極(EA,EB)、一対のコンテナ(CA,CB)、一対のスキマー(SKA,SKB)、及びユニット基板20を有する。
【0035】
一対の放電電極EA,EBは、各々が円盤状に構成された電極である。
各放電電極EA,EBは、各電極の周縁部10が互いに離間して対向するように配置される。ここで放電電極EA,EBの周縁部10とは、円盤状の電極の周縁を形成する部分である。図1では、各電極の周縁に設けられる帯状の端面11が周縁部10となる。
また、放電電極EA,EBは、それぞれが回転可能に構成される。例えばモータ等の駆動機構(図示省略)に各電極が接続される。
放電電極EA,EBの素材としては、例えば、タングステン、モリブデンまたはタンタル等の高融点金属が用いられる。
【0036】
一対のコンテナCA,CBは、各々がプラズマ原料を液相の状態で収容可能なコンテナ(容器)である。
プラズマ原料は、放電プラズマを発生させる液相の原料であり、典型的には液体金属が用いられる。本実施形態では、コンテナCA,CBには、液相のスズから構成されるプラズマ原料SA,SBがそれぞれ収容される。なお、プラズマ原料の種類は限定されず、例えばリチウム等が用いられてもよい。
またコンテナCA,CBは、導電性材料を用いて構成される。従って、コンテナCAはプラズマ原料SAと通電し、コンテナCBはプラズマ原料SBと通電する。
【0037】
図1に示すように、コンテナCAに貯留されているプラズマ原料SAには、放電電極EAの下側の一部が浸漬している。またコンテナCBに貯留されているプラズマ原料SBには、放電電極EBの下側の一部が浸漬している。
上記したように、各放電電極EA,EBは回転可能に構成される。放電電極EA,EBに付着した液相のプラズマ原料SA,SBは、放電電極EA,EBの回転に伴って、プラズマPが発生される放電領域Dに輸送される。
【0038】
一対のスキマーSKA,SKBは、放電電極EA,EBに付着するプラズマ原料SA,SBの厚みを所定の厚みに調整する。
スキマーSKAは、放電電極EAに対応して配置され、放電電極EAに付着したプラズマ原料SAの厚みを放電領域Dに輸送される前に調整する。スキマーSKBは、放電電極EBに対応して配置され、放電電極EBに付着したプラズマ原料SBの厚みを放電領域Dに輸送される前に調整する。これにより、放電領域Dに供給されるプラズマ原料SA,SBの供給量を制御することが可能となる。
本実施形態では、スキマーSKA,SKBは、一対の厚み調整部に相当する。
【0039】
ユニット基板20は、放電プラズマ生成ユニット1を構成する各部を一体的に支持する支持部材である。
放電プラズマ生成ユニット1では、ユニット基板20により、一対の放電電極EA,EBの周縁部10が互いに離間して対向するように一対の放電電極EA,EBが回転可能に支持される。またユニット基板20により、プラズマ原料SA,SBが一対の放電電極EA,EBにそれぞれ供給されるように一対のコンテナCA,CBが支持される。
これにより、放電電極EA,EBの間に放電を発生させ、かつ放電が発生する放電領域Dにプラズマ原料を供給可能となる配置で、一対の放電電極EA,EBと一対のコンテナCA,CBとを一体的に支持することが可能となる。
またユニット基板20は、各放電電極EA,EBに対応して配置されるスキマーSKA,SKBや、放電電極EA,EBを回転させるモータ等を支持する。
【0040】
図1には、一対の放電電極EA,EB、一対のコンテナCA,CB、一対のスキマーSKA,SKBの各部を囲う矩形の領域により、ユニット基板20が模式的に図示されている。ユニット基板20の具体的な構成については、後に詳しく説明する。
本実施形態では、ユニット基板20は、支持部材に相当する。
【0041】
また放電プラズマ生成ユニット1が搭載されるEUV光源装置2には、プラズマ原料供給部50と、パルス電力供給部56と、レーザ源57とが設けられる。
【0042】
プラズマ原料供給部50は、一対のコンテナCA,CBにプラズマ原料SA,SBを供給する。プラズマ原料供給部50は、例えばプラズマ原料となる液体金属(ここではスズ)を液相の状態で貯留するリザーバを有する。このリザーバから各コンテナCA,CBに液相の状態でプラズマ原料SA,SBが供給される。
本実施形態では、プラズマ原料供給部50は、原料供給部に相当する。
【0043】
パルス電力供給部56は、一対の放電電極EA,EBに放電プラズマを発生させる放電用の電力を供給する。本実施形態では、パルス電力供給部56は、コンテナCA,CBに接続され、コンテナCA,CBの間にパルス電力を供給する。
上記したように、コンテナCA,CBは導電性材料から構成され、スズからなるプラズマ原料SA,SBも導電性材料である。また、放電電極EA,EBは、それぞれの一部がプラズマ原料SA,SBに浸漬している。このため、コンテナCA,CBに供給されたパルス電力は、プラズマ原料SA,SBを介して放電電極EA,EBにそれぞれ供給される。
本実施形態では、パルス電力供給部56は、電力供給部に相当する。
【0044】
レーザ源57は、放電電極に供給されたプラズマ原料を気化させるエネルギービームを照射する。ここでは、図中右側の放電電極EAの周縁部10(電極の端面)に、プラズマ原料SAを気化させるエネルギービーム(レーザビームLB)が照射される。
本実施形態では、レーザ源57は、ビーム照射部に相当する。
【0045】
図1に示すように、レーザ源57からのレーザビームLBが放電電極EAに付着して放電領域Dに輸送されたプラズマ原料SAに照射される。レーザビームLBが照射されたプラズマ原料SAは気化し、気相の状態になる。
このとき、コンテナCA,CBには、パルス電力供給部56からパルス電力が供給される。このパルス電力は、上記したように放電電極EA,EBにそれぞれ供給され、放電電極EA,EBの間で放電が発生する。
この放電により、放電領域Dにおける気相のプラズマ原料SAが電流により加熱励起されてプラズマPが発生し、当該プラズマPからEUV光が放出される。
【0046】
このように、液相のプラズマ原料からプラズマPを発生させるソースヘッド(放電プラズマ生成ユニット1)には、液相のプラズマ原料を扱うための様々な要素(放電電極(EA,EB)、コンテナ(CA,CB)、スキマー(SKA,SKB)等)が含まれる。また、プラズマPを適正に発生させるためには、これらの要素を所定の位置関係となるように調整して配置することが必要となる。
例えば、これらの要素を一つずつ調整しながらEUV光源装置2に取り付けてゆく作業は容易ではなく、ある程度の熟練技巧が必要となる。また、各要素を個別に取り付ける場合、作業時間が長くなる可能性がある。また他の要素を接続するためにも時間がかかる。
【0047】
そこで、本発明者は、ユニット基板20を用いて一体的に扱える放電プラズマ生成ユニット1を発明した。すなわち、放電電極EA,EB、コンテナCA,CB、各コンテナCA,CBに収容されるプラズマ原料SA,SB、各放電電極EA,EBに付着したプラズマ原料SA,SBの厚みを調整するスキマーSKA,SKB、及び放電電極EA,EBを回転駆動するためのモータMA,MB(図2等参照)等の多数の要素を一つのユニット基板20上に組み込んでユニット化し、EUV光源装置2に取り付け可能な放電プラズマ生成ユニット1を発明した。
これにより、各要素を一つずつ調整するといった必要がなくなり、EUV光源装置2のメンテナンスを容易にすることが可能となる。
以下では、放電プラズマ生成ユニット1の具体的な構成例について説明する。
【0048】
図2は、放電プラズマ生成ユニット1の構成例を示す斜視図である。図3は、図2に示す放電プラズマ生成ユニット1の断面図である。図3には、図2Aに示すAA線で切断した放電プラズマ生成ユニット1の断面が図示されている。
放電プラズマ生成ユニット1は、上記したように、放電電極EA,EBと、コンテナCA,CBと、スキマーSKA,SKBと、ユニット基板20とを有する。また放電プラズマ生成ユニット1は、一対のモータMA,MBを有する。
【0049】
まず、ユニット基板20について説明する。
ユニット基板20は、平面形状が円形となるフランジ状の構造体である。本実施形態では、ユニット基板20は、EUV光源装置2の真空チャンバの外壁に設けられた開口部33(図4及び図5等参照)を外側から塞ぐ蓋として構成される。またユニット基板20は、一対の放電電極EA,EBと一対のコンテナCA,CBとを真空チャンバ内に収まるように支持する。
従ってユニット基板20は、真空チャンバの外壁に外側から装着され、真空チャンバの外壁の一部として機能するとともに、真空チャンバ内に放電電極EA,EBやコンテナCA,CBを配置する支持部材として機能する。
【0050】
以下では、鉛直方向をZ方向と記載し、Z方向と直交する水平面をXY面と記載する。ここでは、ユニット基板20は、XZ面に沿って配置されるものとする。図2Aに示すAA線は、X方向と平行な線である。また図3に示す断面図は、ユニット基板20をXY面に沿って切断した断面を表している。
【0051】
また、ユニット基板20をEUV光源装置2に装着した場合に、EUV光源装置2の内部に向けられる側をユニット基板20の内側と記載し、その反対側をユニット基板20の外側と記載する。図2Aは、ユニット基板20の内側を示す斜視図であり、図2Bは、ユニット基板20の外側を示す斜視図である。
【0052】
ユニット基板20は、円盤状の基板本体21と、接続部22と、凹部23とを有する。
基板本体21は、ユニット基板20の本体である。基板本体21の内側及び外側の外周部分には、円環状の切り欠きが形成される。これら内側及び外側の切り欠きの間に形成され径方向に突出した部分が接続部22となる。接続部22は、EUV光源装置2の外壁に接続されてねじ止め等により固定される部分である。
凹部23は、基板本体21の内側に形成された円形の溝である。凹部23の中心軸は、基板本体21の中心軸と一致するように設定される。従って、基板本体21は、一端が閉塞された薄型の円筒形状の部材であるともいえる。
凹部23を囲む円環状の部分は、真空チャンバの外壁に設けられた開口部33に挿入される挿入部24となる。また、接続部22と挿入部24とを形成する切り欠き(基板本体21の内側の切り欠き)には、ユニット側位置決め部25が形成される。ユニット側位置決め部25については後述する。
【0053】
図1に示すように、放電プラズマ生成ユニット1では、凹部23の内側、すなわち基板本体21の内側の凹んだ部分に放電電極EA,EBやコンテナCA,CB等が配置される。凹部23の直径や深さは、放電プラズマ生成ユニット1の各要素が配置可能なように適宜設定されてよい。また凹部23は、必ずしも円形の溝である必要はなく、例えば楕円形や矩形の凹部23が構成されてもよい。
【0054】
一対の放電電極EA,EBは、円盤状の部材である。各放電電極EA,EBとしては、典型的には、互いに同じ形状で同じサイズの導電性部材が用いられる。
また放電電極EA,EBは、プラズマP等の熱により高温となる。このような高温の状態でも変形、劣化、損耗等が少なくなるように、放電電極EA,EBはタングステン等の高融点金属から形成される。
【0055】
本実施形態では、放電電極EA,EBの周縁には一定の幅を持った帯状の端面11が形成される。また放電電極EA,EBにおいて、端面11に接続する略円形の主面は、放電電極EA,EBの側面12となる。このうち、本実施形態では、放電電極EA,EBの周縁に形成された端面11が、放電電極EA,EBの周縁部10となる。
なお端面11を形成する代わりに、周縁がエッジ状に先鋭化された電極等が用いられてもよい。この場合、放電電極EA,EBの側面12の外周部分(例えば側面12の周縁から電極の半径の10%程度の幅の領域)が周縁部10となる。
【0056】
図2及び図3に示すように、放電電極EA,EBは、ユニット基板20の内側に形成された凹部23に収まるように配置される。放電電極EA,EBは、互いの周縁部10が離間して対向し、各々のZ方向の位置(水平位置)が同じになるように並んで配置される。例えば各電極の中心の水平位置は、円形の凹部23の中心と同じ水平位置に設定される。
ここでは、ユニット基板20の内側を正面から見た場合に、放電電極EAが右側に配置され、放電電極EBが左側に配置される。
【0057】
一対のモータMA,MBは、一対の放電電極EA,EBを各々の中心軸のまわりに回転させる。本実施形態では、モータMA,MBは、一対の回転駆動部に相当する。
モータMAは、回転軸JAを有し、モータMBは、回転軸JBを有する。
モータMA,MBは、ユニット基板20の外側に配置され、各モータMA,MBの回転軸JA,JBは、ユニット基板20の外側から基板本体21を貫通して、ユニット基板20の内側の凹部23へと延びている。
【0058】
本実施形態では、ユニット基板20により、一対のモータMA,MBを介して、一対の放電電極EA,EBが支持される。具体的には、各モータMA,MBの回転軸JA,JBを支持することで、以下のように回転軸JA,JBに接続された放電電極EA,EBが支持される。
【0059】
放電電極EAは、放電電極EAの中心軸と回転軸JAの中心軸とが一致するように、回転軸JAに連結される。従って放電電極EAは、モータMA(回転軸JA)の回転に伴い、放電電極EAの中心軸の周りに回転する。
また放電電極EBは、放電電極EBの中心軸と回転軸JBの中心軸とが一致するように、回転軸JBに連結される。従って放電電極EBは、モータMB(回転軸JB)の回転に伴い、放電電極EBの中心軸の周りに回転する。
【0060】
ユニット基板20には、回転軸JA及び回転軸JBを受けるシール部材PA及びPBが設けられる。
シール部材PAは、基板本体21に設けられた回転軸JAが通る貫通孔に配置され、回転軸JAと基板本体21との間の隙間を封止し、回転軸JAを回転可能に支持する。
またシール部材PBは、基板本体21に設けられた回転軸JBが通る貫通孔に配置され、回転軸JBと基板本体21との間の隙間を封止し、回転軸JBを回転可能に支持する。
シール部材PA及びPBとしては、例えば、メカニカルシールが用いられる。シール部材PA及びPBを用いることで、後述するEUV光源装置2のチャンバ54(図7参照)にユニット基板20を取り付けた際に、チャンバ54内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸JA,JBを回転可能に支持することが可能となる。
【0061】
回転軸JA,JBを設置する位置(貫通孔)は、放電電極EA,EBの各周縁部10が対向し、かつ各周縁部10が離隔するように設定される。このとき、プラズマPが生成される放電領域Dは、放電電極EA,EBの周縁部10が互いに最も接近した放電電極EA,EBの間の間隙に位置する。
図2及び図3に示す例では、ユニット基板20(基板本体21)の中心軸と重なるように放電領域Dが形成される。
【0062】
また、放電電極EA,EBの各中心軸は平行ではない。具体的には、図3に示すように、鉛直方向(Z方向)から見た回転軸JA,JBの間隔が、モータMA,MBが設けられる外側で狭くなり、放電電極EA,EBが設けられる内側で広くなるように、各回転軸JA,JBが配置される。
さらに、アノードとして使用される放電電極(ここでは放電電極EB)は、カソードとして使用される放電電極(ここでは放電電極EA)よりも、モータが設けられる側(凹部23の底面26側)に退避される。
【0063】
このような配置により、放電電極EA,EBの周縁部10が互いに向かい合う側(対向面側)において各周縁部10を接近させつつ、放電電極EA,EBの対向面側とは反対側をレーザビームLBの照射経路から退避させることが可能となる。さらに、アノードである放電電極EBでレーザビームLBを遮光することなく、レーザビームLBをカソードである放電電極EAの端面11に照射することが可能となる。すなわち、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部10に、レーザビームLBを容易に照射することが可能となる。
【0064】
一対のコンテナCA,CBは、プラズマ原料を液相の状態で収容する液体容器として構成される。各コンテナCA,CBは、コンテナ本体15と、収容部16とを有する。
コンテナ本体15は、コンテナCA,CBの本体であり、プラズマ原料を液相の状態で収容することが可能な材料(例えばステンレス鋼等)を用いて構成される。
収容部16は、上方に開口し液相のプラズマ原料を収容する。具体的には、収容部16は、液体を貯留することが可能なように各コンテナ本体15に形成された凹状の構造である。
【0065】
図2Aに示すように、本実施形態では、コンテナ本体15に、円盤状の放電電極が挿入可能なようにスリット型の収容部16が設けられる。またコンテナ本体15は、収容部16を挟んで対向する一対の側壁部17を有する。
ここでは、コンテナ本体15は、Y方向から見た側壁部17の平面形状が略半円形状となるように構成され、側壁部17の半円の頂点が最も低い位置となるように配置される。また、コンテナ本体15に設けられた収容部16も、Y方向から見た平面形状が略半円形状となる。またコンテナ本体15の上方には段差が設けられており、Y方向から見るとコンテナ本体15の一方の上端は、他方の上端よりも低くなっている。
【0066】
上記したように、コンテナCAの収容部16には、放電電極EAに供給される液相のプラズマ原料SAが貯留される。またコンテナCBの収容部16には、放電電極EBに供給される液相のプラズマ原料SBが貯留される。
【0067】
ここで、コンテナCAは、プラズマ原料SAを収容する収容部16に、放電電極EAの下部が挿入されるように配置される。また、コンテナCBは、プラズマ原料SBを収容する収容部16に、放電電極EBの下部が挿入されるように配置される。具体的には、図3に示すように、コンテナCA及びコンテナCBは、ユニット基板20の凹部23の底面26に取付用部材18によって取り付けられる。
【0068】
このように、本実施形態では、ユニット基板20により、放電電極EA,EBの少なくとも一部が対応するコンテナCA,CBの上方から収容部16に挿入されるように、一対のコンテナCA,CBが支持される。
これにより、各コンテナCA,CBに貯留されるプラズマ原料SA,SBを、放電電極EA,EBに直接付着させて容易に供給することが可能となる。
【0069】
なお、コンテナCA,CBは、コンテナ本体15の上端のうち低くなっている部分が、放電電極EA,EBの周縁部10が対向する側となるように配置される。これにより、各放電電極EA,EBの対向する部分が露出し、周縁部10を適正に対向して配置することが可能となる。
【0070】
コンテナCA,CBの各収容部16に対する液相のプラズマ原料SA,SBの供給は、図1を参照して説明したプラズマ原料供給部50により行われる。プラズマ原料供給部50は、放電プラズマ生成ユニット1をEUV光源装置2に取り付ける際に、各コンテナCA,CBにそれぞれ取り付けられる。
コンテナ本体15には、例えば収容部16と連通する供給口及び回収口が設けられる。プラズマ原料供給部50は、供給口及び回収口に接続され、供給口から液相のプラズマ原料を収容部16に供給し、回収口から収容部16内のプラズマ原料を回収する。このようにプラズマ原料を循環させることで、プラズマ原料の温度や純度を精度よく管理することが可能となる。
なお、コンテナCA,CBには、プラズマ原料SA,SBを液相状態に保持するためのヒータ等の加熱機構がそれぞれ設けられてもよい。
【0071】
一対のスキマーSKA,SKBは、一対のコンテナCA,CBの収容部16に挿入された一対の放電電極EA,EBに付着したプラズマ原料SA,SBの厚みを調整する。すなわち、スキマーSKAは、放電電極EAに付着したプラズマ原料SAの厚みを調整し、スキマーSKBは、放電電極EBに付着したプラズマ原料SBの厚みを調整する。
【0072】
具体的には、スキマーSKA,SKBは、放電電極EA,EBに付着させるプラズマ原料SA,SBの厚みを、所定の厚みにする。
スキマーSKA,SKBは、例えばU字型の凹部28が形成されたチャンネル形状の部材である。スキマーSKA,SKBは、凹部28が放電電極EA,EBの周縁部10を挟み込むように、すなわち凹部28が放電電極EA,EBの周縁部10および周縁部10近傍が通過するように配置される。
【0073】
この場合、スキマーSKA,SKBと、放電電極EA,EBの各表面との間隙が、放電電極EA,EBに付着するプラズマ原料SA,SBの厚みとなる。従って、例えばスキマーSKA,SKBの凹部28と各放電電極EA,EBの周縁部10(電極の端面11)の間隔を適宜設定することで、周縁部10に付着するプラズマ原料の厚みを所定の厚みに調整することが可能となる。
【0074】
本実施形態では、ユニット基板20により、一対の放電電極EA,EBに対応して一対のスキマーSKA,SKBが支持される。
具体的には、各放電電極EA,EBが回転して、プラズマ原料SA,SBが放電領域Dに輸送される前に、プラズマ原料SA,SBの厚みを調整可能なように、スキマーSKA,SKBが配置される。
【0075】
スキマーSKAは、放電電極EAのコンテナCAにより包囲されていない領域であって、放電電極EBと対向しない側に配置される。
また、スキマーSKBは、放電電極EBのコンテナCBにより包囲されていない領域であって、放電電極EAと対向しない側に配置される。
図2Aに示す例では、放電電極EAの左側と、放電電極EBの右側が対向して配置される。従って、スキマーSKAは、コンテナCAに挿入されていない放電電極EAの右側に配置され、スキマーSKBは、コンテナCBに挿入されていない放電電極EBの左側に配置される。
【0076】
また図3に示すように、各スキマーSKA,SKBの放電電極EA,EBに対向しない側(凹部23とは反対側)は、例えばユニット基板20の凹部23を囲む円環状の挿入部24により支持される。このとき、各スキマーSKA,SKBは、凹部23と周縁部10との距離を調整可能なように構成されてもよい。これにより、放電領域Dに輸送されるプラズマ原料の厚みを精度よく制御することが可能となる。
【0077】
図4は、放電プラズマ生成ユニット1が装着される固定用基板の構成例を示す斜視図である。図4Aは、放電プラズマ生成ユニット1が装着されていない固定用基板30の斜視図であり、図4Bは、放電プラズマ生成ユニット1を固定用基板30に装着する際の位置関係を示す斜視図である。図5は、放電プラズマ生成ユニット1が固定用基板30に装着された状態を示す断面図である。
【0078】
固定用基板30は、放電プラズマ生成ユニット1が装着される部材であり、EUV光源装置2に設けられる真空チャンバであるチャンバ54の外壁を構成する。
固定用基板30は、板状の部材であり、例えばステンレス鋼等を用いて構成される。固定用基板30は、チャンバ54の外側となる外壁面31と、チャンバ54の内側となる内壁面32と、開口部33と、複数の装置側位置決め部34とを有する。
【0079】
開口部33は、固定用基板30に設けられた円形の貫通孔である。開口部33の形状・サイズは、放電プラズマ生成ユニット1のユニット基板20(基板本体21)で塞ぐことが可能なように設定される。
【0080】
図5に示すように、開口部33の外壁面31側に円環状の切り欠きが設けられる。この切り欠きの直径は、ユニット基板20の挿入部24の直径よりも大きく、ユニット基板20の接続部22の直径よりも小さく設定される。従ってユニット基板20の挿入部24が、開口部33の切り欠きに嵌め込まれる。また開口部33の切り欠きの外壁面31に対する深さは、例えばユニット基板20の接続部22が固定用基板30の外壁面31と接するように設定される。
また、固定用基板30の内壁面32側の開口部33の直径は、ユニット基板20の凹部23の直径と同程度に設定される。
【0081】
装置側位置決め部34は、開口部33を囲むように、外壁面31上に設けられる。本実施形態では、3つの装置側位置決め部34が設けられる。各装置側位置決め部34は、例えば外壁面31からピン状に突出した構造をしており、開口部33を囲む円周上に等間隔で配置される。
本実施形態では、装置側位置決め部34は、真空チャンバの外壁に設けられた第1の位置決め部に相当する。
【0082】
また、図2Aに示すように、ユニット基板20には、複数のユニット側位置決め部25が形成される。本実施形態では、固定用基板30に設けられた3つの装置側位置決め部34に対応して、3つのユニット側位置決め部25が設けられる。各装置側位置決め部34は、例えば断面形状が2等辺三角形となる凹状の溝を有する。
本実施形態では、ユニット側位置決め部25は、第2の位置決め部に相当する。
【0083】
装置側位置決め部34及びユニット側位置決め部25は、互いに当接するように押し付けられた場合に、一方が他方をガイドするガイド機構として機能する。
固定用基板30に放電プラズマ生成ユニット1(ユニット基板)を装着する場合、上記したユニット側位置決め部25の凹状の溝に、装置側位置決め部34の突出した部分を当接させることにより、放電プラズマ生成ユニット1は、固定用基板30の所定の位置に取り付けられる。
【0084】
このように、ユニット基板20には、真空チャンバの外壁(固定用基板30)に設けられた装置側位置決め部34によりガイドされるユニット側位置決め部25が設けられる。これにより、EUV光源装置2に放電プラズマ生成ユニット1を精度よく装着することが可能となる。
なお、装置側位置決め部34及びユニット側位置決め部25の数、配置、形状等は限定されず、例えば、固定用基板30とユニット基板20との位置決めが可能な任意の位置決め機構が用いられてよい。
【0085】
図5に示すように、固定用基板30には、放電電極EA,EB、モータMA,MB、コンテナCA,CB、スキマーSKA,SKBと、それらが一体的に取り付けられたユニット基板20からなる放電プラズマ生成ユニット1が、外側から装着される。
また放電プラズマ生成ユニット1が装着された固定用基板30は、図5に示すように、チャンバ54の減圧雰囲気を維持可能なように、チャンバ54の壁部に取り付けられる。
【0086】
なお、図5では、チャンバ54の壁部と固定用基板30とのシール構造については省略されている。また、固定用基板30と放電プラズマ生成ユニット1(ユニット基板20)とのシール構造についても省略されている。これらのシール構造としては、例えば、チャンバ54の減圧雰囲気を維持することが可能な公知の構造が用いられてよい。
【0087】
このように、本発明における放電プラズマ生成ユニット1(ソースヘッド機構)は、放電電極EA,EB、モータMA,MB、コンテナCA,CB、スキマーSKA,SKBをユニット基板20に取り付けて一体的なモジュール構造としたものである。
放電プラズマ生成ユニット1では、例えば放電電極EA,EBの配置、スキマーSKA,SKBの位置、放電電極EAとコンテナCAとの位置関係、放電電極EBとコンテナCBとの位置関係等が所定の配置となるように調整されている。
さらに、放電プラズマ生成ユニット1は、図4及び図5に示すように、固定用基板30を介してEUV光源装置2に取り付け可能となっている。
【0088】
このような構造を用いることで、例えば放電電極の交換等のメンテナンスでは、放電プラズマ生成ユニット1全体を容易に交換することが可能となる。これにより、例えばプラズマの生成に必要な様々な要素を所定の位置関係となるように都度調整しながら一要素ずつEUV光源装置2に取り付けるといった必要はなくなる。この結果、メンテナンス作業が十分容易になり、作業時間を短縮することが可能となる。
【0089】
さらに、ソースヘッド機構に別の要素(上記したパルス電力供給部56、プラズマ原料供給部50、モータMA,MBに電力を供給するライン(図7参照)等を接続する作業も速やかに行うことが可能となる。
また、図5等に示すように、モータMA,MBは、EUV光源装置2の外部(チャンバ54の外部)に配置される。このため、メンテナンス作業時のモータMA,MBの点検が容易となる。また、モータMA,MBの冷却が必要な場合には、当該モータMA,MBを冷却する冷却機構等を容易に装着することが可能となる。
【0090】
[プラズマ原料層を形成した放電電極]
本発明者は、放電プラズマ生成ユニット1をEUV光源装置2に装着しEUV光を発生させる動作を検証した。この検証により、プラズマ原料が付着していない未使用の放電電極EA,EBを搭載した放電プラズマ生成ユニット1を用いた場合、動作初期には必ずしも十分な強度のEUV光が得られないことが判明した。
【0091】
本発明者が調査したところ、未使用の放電電極EA,EBを使用する場合、液相のスズ(プラズマ原料SA,SB)が、放電電極EA,EBに十分に付着しておらず、放電領域Dへの液相のプラズマ原料の供給量が不足していることが分かった。
【0092】
このように、放電電極EA,EBへのプラズマ原料SA,SBの付着量が小さい理由として、放電電極EA,EBに対するプラズマ原料SA,SBの濡れ性が低いことが挙げられる。例えば放電電極EA,EBの素材としてタングステンを用いる場合、未使用もしくは使用履歴の浅い放電電極EA,EBでは、放電電極EA,EBを構成するタングステンとプラズマ原料SA,SBであるスズとの濡れ性が低いために、プラズマ原料SA,SBの付着量が小さくなることが考えられる。
【0093】
なおEUV光の強度は、EUV光源装置2の稼働を続けていくうちに徐々に向上していく。一方で、所望のEUV光強度が得られるまでには、約5時間程度の放電電極EA,EB間の放電動作が必要であった。この場合、EUV光源装置2の所定の動作が可能になるまでに、放電電極EA,EBがプラズマPにさらされることになり、放電電極EA,EBにはある程度の損耗が生じてしまう。
【0094】
図6は、放電プラズマ生成ユニット1に搭載される放電電極の構成例を示す模式図である。図6には、放電プラズマ生成ユニット1に搭載される放電電極E(EA,EB)の模式的な斜視図が示されている。
【0095】
上記した不具合を解決するため、本発明者は、図6に示すように、放電プラズマ生成ユニット1に搭載される放電電極EA,EBの表面に、予めプラズマ原料の層(プラズマ原料層)を設ける構成を発明した。すなわち、放電電極EA,EBの少なくとも一部には、プラズマ原料SA,SBからなるプラズマ原料層が形成されている。
【0096】
プラズマ原料層が形成される部位には、放電電極EA,EBの放電領域Dに輸送される部分が含まれる。これにより、例えば放電プラズマ生成ユニット1を装着した直後であっても、十分な強度のEUV光を発生させることが可能となる。また所望のEUV光強度を得るために長時間の慣らし運転等を行う必要がなくなり、放電電極EA,EBの損耗を抑えることが可能となる。
【0097】
本実施形態では、プラズマ原料層として、スズ層40(スズ膜)が形成される。
スズ層40を形成する方法としては、放電を用いる方法が挙げられる。スズ層40を形成するために用いる放電は、プラズマPを発生させる放電と比べて、弱い電力で発生する放電である。上記したように、EUV光源装置2において、EUV光を発生させる動作を続けると、EUV光の強度が徐々に向上する。これは、プラズマPを発生させる放電にさらされた放電電極EA,EBの表面に十分な厚さのスズ層が形成されるためである。
本発明者は、プラズマPを発生させる放電よりも弱い電力で発生する放電を用いた場合であっても、電極表面にスズ層40が形成されることを見出した。これを利用して、放電電極EA,EBの表面に、予めスズ層40が形成される。
【0098】
放電を用いてスズ層40を形成する場合、放電にさらされた領域の近傍にスズ層40が形成される。従って、スズ層40を形成したい領域を含むように放電を発生させることで、所望の位置にスズ層40を形成することが可能である。
例えば、処理対象となる放電電極を回転可能なように支持し、放電電極の一部が液相のスズに浸漬した状態で放電電極を回転させる。放電電極の近傍には、弱い放電を発生させるための補助電極を配置する。そして、放電電極が回転している間、放電電極と補助電極との間に弱い放電を発生させる。これにより、回転中に放電にさらされる部位の周りにスズ層40が形成される。
この外、プラズマ原料層を形成する方法は限定されず、放電電極の表面にプラズマ原料層を形成することが可能な任意の方法が用いられてよい。
【0099】
本実施形態では、プラズマ原料層であるスズ層40が、少なくとも放電電極EA,EBの周縁部10に形成される。上記したように、放電電極EA,EBの周縁部10は、放電電極EA,EBが最も近接する部位であり、プラズマPが発生する放電領域Dを通過する部位である。従って、少なくとも放電電極EA,EBの周縁部10にスズ層40を形成することで、放電領域Dに安定してプラズマ原料(スズ層40)を供給することが可能となる。
【0100】
図6に示す例では、放電電極Eの周縁部10となる端面11にスズ層40が形成される。これにより、放電電極Eを搭載した放電プラズマ生成ユニット1では、初期動作の時点から放電領域Dに十分な量のプラズマ原料(スズ層40)を供給することが可能となる。この結果、EUV光を十分な強度で安定して発光させることが可能となる。
また図6に示す例では、放電電極Eの側面12の外周部分にもスズ層40が形成される。このように、放電電極Eの側面12にスズ層40を形成することで、プラズマPにさらされる放電電極Eを冷却する効果や、スキマーとの摩擦を低減しモータにかかる負荷を小さくする効果が発揮される。
【0101】
このように、未使用もしくは使用履歴の浅い放電電極EA,EBを用いる場合、放電電極EA,EBの少なくとも一部には、予めスズ層40が生成される。
【0102】
放電電極EA,EBにスズ層40を形成する工程は、例えば放電電極EA,EBを放電プラズマ生成ユニット1に装着した状態で実行される。この場合、例えば放電プラズマ生成ユニット1は、弱い放電を行うための真空チャンバに接続される。そして各放電電極EA,EBに対し、補助電極を用いて生成された弱い放電を作用させることで、スズ層40が形成される。放電プラズマ生成ユニット1に装着した状態でスズ層40を形成する場合、スキマーSKA,SKBの位置調整等を行うことが可能となる。
また、予めスズ層40が形成された放電電極EA,EBを、放電プラズマ生成ユニット1に装着してもよい。この場合、各放電電極EA,EBを個別に処理することが可能となり、例えばスズ層40を形成するための装置をコンパクトに構成することが可能となる。
【0103】
本発明者は、予めスズ層40を形成した放電電極EA,EBを放電プラズマ生成ユニット1に搭載して、当該ユニットをEUV光源装置2に装着した。その後、EUV光源装置2を稼働したところ、EUV光源装置2の動作初期においても、十分な強度のEUV光が得られることが実証された。
【0104】
また本発明者は、周縁部10におけるプラズマ原料層(スズ層40)の面積と、EUV光の強度との関係について調べた。その結果、周縁部10に形成されるプラズマ原料層の面積が、周縁部10の面積の80%以上である場合に、EUV光の強度が所望の値になることが分かった。従って、周縁部10に形成されるプラズマ原料層の面積は、周縁部10の面積の80%以上に設定することが好ましい。これにより、EUV光源装置2の動作初期から所望の強度でEUV光を発生させることが可能となる。
【0105】
なお、プラズマ原料層の面積は、上記した例に限定されるわけではない。例えば周縁部10の面積の80%未満となるプラズマ原料層が形成される場合であっても、EUV光を十分に高い強度で発生させることが可能なため、慣らし運転等の時間を十分に短縮することが可能となる。
【0106】
以上、本実施形態に係る放電プラズマ生成ユニット1では、ユニット基板20により、一対の円盤状の放電電極EA,EBと、プラズマ原料SA,SBを液相の状態で収容する一対のコンテナCA,CBとが支持される。各放電電極EA,EBは、回転可能に支持され、各々の周縁部が離間して対向するように配置される。各コンテナCA,CBは、各放電電極EA,EBにプラズマ原料SA,SBを供給するように配置される。これにより、各放電電極EA,EBやコンテナCA,CBを適正に配置した状態で一体的に着脱することが可能となり、液相のプラズマ原料からプラズマPを生成するEUV光源装置2のメンテナンスを容易にすることが可能となる。
【0107】
LDP方式にてプラズマPを発生させて当該プラズマPからEUV光を取り出す機構の主要部には、放電電極、コンテナ(プラズマ原料)、スキマー、及びモータ等が一組ずつ含まれる。光源装置では、これらの要素を互いに所定の位置関係となるように適正に配置することで、所望の強度のEUV光が所望の方向に取り出すことが可能となる。
【0108】
しかしながら、これらの要素を所定の位置関係となるように調整しながら一要素ずつ光源装置に取り付けてゆくのは容易い作業ではなく、ある程度の熟練が必要となる。また別の要素(例えば、放電電極EA,EBに電力を供給する機構や、モータMA,MBに電力を供給する機構、コンテナCA,CBにプラズマ原料SA,SBを供給する機構等)と接続する作業にも時間がかかるため、メンテナンスの作業時間が増大する可能性がある。
【0109】
これに対し、本実施形態に係る放電プラズマ生成ユニット1では、ユニット基板20により、放電電極EA,EBと、コンテナCA,CBとが、適正な位置関係となるように一体的に支持される。さらに、ユニット基板20により、モータMA,MBや、スキマーSKA,SKBがそれぞれ支持される。これにより、プラズマPからEUV光を取り出すために必要となる多数の要素を、所定の位置関係を維持した状態で一体的にEUV光源装置2に取り付けることが可能となる。
【0110】
またユニット基板20上では、予め各要素の位置が決まっているため、放電プラズマ生成ユニット1に含まれる各要素と、EUV光源装置2を構成するその他の要素との接続も容易に行うことが可能となる。これにより、メンテナンスに要する作業時間を大幅に低減し、EUV光源装置2のダウンタイムを短くすることが可能となる。
【0111】
さらに、放電プラズマ生成ユニット1に搭載される放電電極EA,EBには、予めプラズマ原料層が形成される。これにより、例えば放電プラズマ生成ユニット1を交換した後、EUV光源装置2を動作させた場合、動作初期であっても十分な強度のEUV光を発生させることが可能となる。これにより、実質的なダウンタイムがさらに短くなり、装置を効率的に運用することが可能となる。
【0112】
[EUV光源装置]
EUV光源装置2の基本的な構成例及び動作例について説明する。
図7は、放電プラズマ生成ユニット1を備えたEUV光源装置2の構成を示す概略断面図である。図7には、極端紫外光光源装置(EUV光源装置2)のチャンバ内および接続チャンバ内を水平方向に切断した断面が図示されている。なおここではLDP方式のEUV光源装置を例にとる。
以下の説明では、EUV光源装置の理解をより容易とするために、上記ですでに説明した要素について、改めて新たな符号をつけて説明を行っている箇所もある。
【0113】
EUV光源装置2は、極端紫外光(EUV光)を放出する。この極端紫外光の波長は、例えば、13.5nmである。EUV光は、本発明に係る放射線の一実施形態に相当する。
EUV光源装置2は、放電を発生させる一対の放電電極EA,EBの表面にそれぞれ供給された液相のプラズマ原料SA,SBにレーザビームLB等のエネルギービームを照射して当該プラズマ原料SA,SBを気化させる。その後、放電電極EA,EB間の放電領域Dの放電によってプラズマPを発生させる。プラズマPからはEUV光が放出される。
【0114】
EUV光源装置2は、例えば、半導体デバイス製造におけるリソグラフィ装置の光源装置、又はリソグラフィに使用されるマスクの検査装置の光源装置として使用可能である。
例えば、EUV光源装置2がマスク検査装置用の光源装置と使用される場合、プラズマPから放出されるEUV光の一部が取り出され、マスク検査装置に導光される。
マスク検査装置は、EUV光源装置2から放出されるEUV光を検査光として、マスクのブランクス検査またはパターン検査を行う。ここで、EUV光を用いることにより、5nm~7nmプロセスに対応することができる。なお、EUV光源装置2から取り出されるEUV光は、図7の遮熱板65に設けられた開口(図示は省略)により規定される。
【0115】
図7に示すように、EUV光源装置2は、光源部52と、デブリ捕捉部53とを有する。
光源部52は、LDP方式に基づいてEUV光を発生させる。ここでは、上記した放電プラズマ生成ユニット1を用いて、光源部52が構成される。
デブリ捕捉部53は、光源部52から放射されるEUV光とともに飛散するデブリを捕捉するデブリ低減装置である。光源部52で発生したデブリ、及びデブリ捕捉部53で捕捉されたデブリ等は、デブリ捕捉部53の下方側に配置されるデブリ収容部(図示は省略)に収容される。
【0116】
光源部52は、内部で生成されるプラズマPを外部と隔離するチャンバ54を備える。チャンバ54は、プラズマPを生成する光源部52を収容するプラズマ生成室を形成する。
本実施形態では、チャンバ54は、光源装置の筐体の一例である。
チャンバ54は、剛体、例えば、金属製の真空筐体であり、その内部は、プラズマ原料SA,SBを加熱励起するための放電を良好に発生させ、EUV光の減衰を抑制するために、図示しない真空ポンプにより所定圧力以下の減圧雰囲気に維持される。
【0117】
光源部52のチャンバ54には、図2及び図3等を参照して説明した放電プラズマ生成ユニット1が装着される。従ってチャンバ54の内部には、一対の放電電極EA,EBと、液相のプラズマ原料SAが貯留されるコンテナCAと、液相のプラズマ原料SBが貯留されるコンテナCBとが配置される。またチャンバ54の外部には、モータMA,MBが配置される。
なお図7ではスキマーSKA,SKBの図示が省略されている。
【0118】
図7に示すように、EUV光源装置2は、さらに、制御部55と、パルス電力供給部56と、レーザ源(エネルギービーム照射装置)57と、可動ミラー58をさらに備える。
制御部55、パルス電力供給部56、レーザ源57および可動ミラー58は、チャンバ54の外部に設置される。
制御部55は、EUV光源装置2の各部の動作を制御する。例えば、制御部55は、モータMA,MBの回転駆動を制御し、放電電極EA,EBを所定の回転数で回転させる。また、制御部55は、パルス電力供給部56の動作、レーザ源57からのレーザビームLBの照射タイミングなどを制御する。
【0119】
パルス電力供給部56から延びる2つの給電線QA,QBは、フィードスルーFA,FBを通過して、チャンバ54の内部に配置されたコンテナCA,CBにそれぞれ接続される。
フィードスルーFA,FBは、チャンバ54の壁に埋設されてチャンバ54内の減圧雰囲気を維持するシール部材である。
コンテナCA,CBは、導電性材料から形成され、各コンテナCA,CBの内部に収容されるプラズマ原料SA,SBもスズなどの導電性材料である。
各コンテナCA,CBの内部に収容されているプラズマ原料SA,SBには、放電電極EA,EBの下部がそれぞれ浸されている。従って、パルス電力供給部56からパルス電力がコンテナCA,CBに供給されると、そのパルス電力は、プラズマ原料SA,SBをそれぞれ介して放電電極EA,EBに供給される。
【0120】
パルス電力供給部56は、放電電極EA,EBへパルス電力を供給することにより、放電領域Dで放電を発生させる。
そして、各放電電極EA,EBの回転に基づいて放電領域Dに輸送されたプラズマ原料SA,SBが放電時に放電電極EA,EB間に流れる電流により加熱励起されることで、EUV光を放出するプラズマPが生成される。
【0121】
レーザ源57は、放電領域Dに輸送された放電電極EAに付着したプラズマ原料SAにエネルギービームを照射して、当該プラズマ原料SAを気化させる。レーザ源57は、例えば、Nd:YVO(Neodymium-doped Yttrium Orthovanadate)レーザ装置である。
このとき、レーザ源57は、波長1064nmの赤外領域のレーザビームLBを発する。ただし、エネルギービーム照射装置は、プラズマ原料SAの気化が可能であれば、レーザビームLB以外のエネルギービームを発する装置であってもよい。
【0122】
レーザ源57から放出されたレーザビームLBは、例えば、集光レンズ59を含む集光手段を介して可動ミラー58に導かれる。集光手段は、放電電極EAのレーザビーム照射位置におけるレーザビームLBのスポット径を調整する。集光レンズ59および可動ミラー58は、チャンバ54の外部に配置される。
【0123】
集光レンズ59で集光されたレーザビームLBは、可動ミラー58により反射され、チャンバ54の側壁54aに設けられた透明窓60を通過して、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部に照射される。可動ミラー58の姿勢を調整することにより、放電電極EAにおけるレーザビームLBの照射位置が調整される。
【0124】
放電領域D付近の放電電極EAの周縁部にレーザビームLBを照射するのを容易にするため、放電電極EA,EBの軸線は平行ではない。
回転軸JA,JBの間隔は、モータMA,MB側が狭く、放電電極EA,EB側が広くなっている。
これにより、放電電極EA,EBの対向面側を接近させつつ、放電電極EA,EBの対向面側とは反対側をレーザビームLBの照射経路から退避させることができ、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部にレーザビームLBを照射するのを容易にすることができる。
【0125】
放電電極EBは、放電電極EAと可動ミラー58との間に配置される。
可動ミラー58で反射されたレーザビームLBは、放電電極EBの外周面付近を通過した後、放電電極EAの外周面に到達する。
このとき、レーザビームLBが放電電極EBで遮光されないように、放電電極EBは、放電電極EAよりも、モータMB側の方向(図7の左側)に退避される。
放電領域D付近の放電電極EAの外周面に付着された液相のプラズマ原料SAは、レーザビームLBの照射により気化され、気相のプラズマ原料SAとして放電領域Dに供給される。
【0126】
放電領域DでプラズマPを発生させるため(気相のプラズマ原料SAをプラズマ化するため)、パルス電力供給部56は、放電電極EA,EBに電力を供給する。
そして、レーザビームLBの照射により放電領域Dに気相のプラズマ原料SAが供給されると、放電領域Dにおける放電電極EA,EB間で放電が生じる。
放電電極EA、EB間で放電が発生すると、放電領域Dにおける気相のプラズマ材料SAが電流により加熱励起されて、プラズマPが発生する。生成されたプラズマPから放射されるEUV光は、チャンバ54の側壁54bに設けられた貫通孔である第1窓部61を通ってデブリ捕捉部53へ入射する。
【0127】
デブリ捕捉部53は、チャンバ54の側壁54bに配置された接続チャンバ62を有する。接続チャンバ62は、剛体、例えば、金属製の真空筐体であり、その内部は、チャンバ54と同様、EUV光の減衰を抑制するために所定圧力以下の減圧雰囲気に維持される。接続チャンバ62は、チャンバ54と利用装置90(例えばリソグラフィ装置やマスク検査装置)との間に接続される。
【0128】
接続チャンバ62の内部空間は、第1窓部61を介してチャンバ54と連通する。接続チャンバ62は、第1窓部61から入射したEUV光を利用装置90へ導入する光取出し部としての第2窓部63を有する。第2窓部63は、接続チャンバ62の側壁62aに形成された所定形状の貫通孔である。
放電領域DのプラズマPから放出されたEUV光は、第1窓部61及び第2窓部63を通じて利用装置90に導入される。
【0129】
一方、プラズマPからはEUV光とともにデブリが高速で様々な方向に放散される。
デブリは、プラズマ原料SA、SBであるスズ粒子及びプラズマPの発生に伴いスパッタリングされる放電電極EA、EBの材料粒子を含む。
これらのデブリは、プラズマPの収縮および膨張過程を経て、大きな運動エネルギーを得る。すなわち、プラズマPから発生するデブリは、高速で移動するイオン、中性粒子および電子を含む。
このようなデブリは、利用装置90に到達すると、利用装置90内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ、性能を低下させることがある。
【0130】
そのため、デブリが利用装置90に侵入しないようにするため、デブリを捕捉するデブリ捕捉部53が接続チャンバ62内に設けられる。
図7に示す例では、デブリ捕捉部53として、複数のホイルを有し、回転することで複数のホイルをデブリと能動的に衝突させる回転式ホイルトラップ64が配置される。回転式ホイルトラップ64は、接続チャンバ62の内部にて、接続チャンバ62から利用装置90へと進行するEUV光の光路上に配置される。
回転式ホイルトラップ64に代えて、複数のホイルの位置が固定された固定式ホイルトラップが配置されてもよい。あるいは、回転式ホイルトラップ64及び固定式ホイルトラップの双方が設けられてもよい。
【0131】
<その他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0132】
図5等を参照して説明した放電プラズマ生成ユニット1は、チャンバ54に外側から装着されるユニットとして構成された。これに限定されず、例えば放電プラズマ生成ユニット1全体をチャンバ54内部に配置するように構成することも可能である。この場合、例えば放電電極やコンテナを支持するユニット基板として、トレイ状の基板等が用いられてもよい。この外、放電プラズマ生成ユニット1の形態は限定されない。
【0133】
上記では、放電プラズマ生成ユニット1にスキマーSKA,SKBが含まれる構成について説明した。スキマーSKA,SKBは、放電プラズマ生成ユニット1に必ずしも設ける必要はない。例えば、スキマーSKA,SKBは、EUV光源装置2に直接装着してもよい。またスキマーSKA,SKBを設けずに、コンテナCA,CBにスキマーとしての機能を持たせてもよい。
【0134】
上記では、放電プラズマ生成ユニット1にモータMA,MBが含まれる構成について説明した。モータMA,MBは、放電プラズマ生成ユニット1に必ずしも設ける必要はない。例えば回転軸JA,JBに対して、後からモータ本体を取り付けるといった構成も可能である。また放電電極をモータに直結する構成に代えて、ギヤやプーリ等を用いた駆動機構を介して放電電極を回転させてもよい。この場合、モータは駆動機構の動力として接続される。
【0135】
上記では、放電電極EA,EBをコンテナCA,CBに挿入して、放電電極EA,EBにプラズマ原料SA,SBを供給する構成について説明した。コンテナCA,CBから、放電電極EA,EBにプラズマ原料を供給する方法は限定されない。例えばコンテナから取り出したプラズマ原料を各電極の周縁部10に接触させてプラズマ原料を供給するといった構成が用いられてもよい。あるいは各電極表面にプラズマ原料を垂らすといった構成が用いられてもよい。
【0136】
本開示において、説明の理解を容易とするために、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が適宜使用されている。一方で、これら「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言を使用する場合と使用しない場合とで、明確な差異が規定されるわけではない。
すなわち、本開示において、「中心」「中央」「均一」「等しい」「同じ」「直交」「平行」「対称」「延在」「軸方向」「円柱形状」「円筒形状」「リング形状」「円環形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」「実質的に中央」「実質的に均一」「実質的に等しい」「実質的に同じ」「実質的に直交」「実質的に平行」「実質的に対称」「実質的に延在」「実質的に軸方向」「実質的に円柱形状」「実質的に円筒形状」「実質的にリング形状」「実質的に円環形状」等を含む概念とする。
例えば「完全に中心」「完全に中央」「完全に均一」「完全に等しい」「完全に同じ」「完全に直交」「完全に平行」「完全に対称」「完全に延在」「完全に軸方向」「完全に円柱形状」「完全に円筒形状」「完全にリング形状」「完全に円環形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。
従って、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が付加されていない場合でも、いわゆる「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現され得る概念が含まれ得る。反対に、「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現された状態について、完全な状態が必ず排除されるというわけではない。
【0137】
本開示において、「Aより大きい」「Aより小さい」といった「より」を使った表現は、Aと同等である場合を含む概念と、Aと同等である場合を含なまい概念の両方を包括的に含む表現である。例えば「Aより大きい」は、Aと同等は含まない場合に限定されず、「A以上」も含む。また「Aより小さい」は、「A未満」に限定されず、「A以下」も含む。
本発明を実施する際には、上記で説明した効果が発揮されるように、「Aより大きい」及び「Aより小さい」に含まれる概念から、具体的な設定等を適宜採用すればよい。
【0138】
以上説明した本発明に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0139】
1…放電プラズマ生成ユニット
2…EUV光源装置
EA、EB…放電電極
10…周縁部
CA、CB…コンテナ
16…収容部
SA、SB…プラズマ原料
MA、MB…モータ
20…ユニット基板
25…ユニット側位置決め部
SKA、SKB…スキマー
30…固定用基板
33…開口部
34…装置側位置決め部
40…スズ層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7