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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033741
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】赤外線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20230306BHJP
   G01J 1/00 20060101ALI20230306BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20230306BHJP
   G01J 5/90 20220101ALI20230306BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20230306BHJP
【FI】
G01J1/02 H
G01J1/00 B
G01J1/02 Q
G01J5/48 F
G01J5/00 A
H04N5/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139615
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 隆正
(72)【発明者】
【氏名】高橋 琢哉
【テーマコード(参考)】
2G065
2G066
5C122
【Fターム(参考)】
2G065AA11
2G065AB02
2G065BA14
2G065BA15
2G065BA34
2G065BB21
2G065BC11
2G065BC14
2G065CA25
2G065DA03
2G065DA18
2G066BA34
2G066CA02
2G066CA15
2G066CB05
5C122DA16
5C122DA25
5C122EA01
5C122FF10
5C122FH24
5C122GA34
5C122HA81
5C122HA88
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】シャッタの動作精度の劣化を検出することができる赤外線撮影装置を提供する。
【解決手段】赤外線撮影装置1は、赤外線を受光して熱画像データに変換する赤外線センサ3と、赤外線センサ3よりも測定対象物101側に配置されたシャッタ4と、シャッタ4の開閉を制御する制御部82と、熱画像データを出力する出力部73とを備える。制御部82は、シャッタ4の閉じ動作を開始してから所定時間(例えば、450ms)が経過したときに得られた熱画像データの温度のばらつきを表す指標を、予め定めた閾値と比較することで、シャッタ4が劣化したか否かを判定する。出力部73は、制御部によりシャッタ4が劣化したと判定された場合に、シャッタ4が劣化したことを示す劣化情報を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を受光して熱画像データに変換する赤外線センサと、
前記赤外線センサよりも測定対象物側に配置されたシャッタと、
前記シャッタの開閉を制御する制御部と、
前記熱画像データを出力する出力部と、を備え、
前記制御部は、前記シャッタの閉じ動作を開始してから所定時間が経過したときに得られた前記熱画像データの温度のばらつきを表す指標を、予め定めた閾値と比較することで、前記シャッタが劣化したか否かを判定し、
前記出力部は、前記制御部により前記シャッタが劣化したと判定された場合に、前記シャッタが劣化したことを示す劣化情報を出力する
赤外線撮影装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記所定時間が経過したときに得られた前記熱画像データの温度のばらつきを表す指標が、前記閾値を超える場合に、前記シャッタが劣化したと判定する
請求項1に記載の赤外線撮影装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定時間よりも短い特定時間が経過したときに得られた前記熱画像データの温度のばらつきを表す指標が、前記閾値以下である場合に、前記シャッタが劣化していないと判定し、前記特定時間よりも長く且つ前記所定時間よりも短い判定期間中に得られた前記熱画像データの温度のばらつきを表す指標が、前記閾値以下である場合に、前記シャッタが劣化注意状態であると判定する
請求項2に記載の赤外線撮影装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記制御部により前記劣化注意状態であると判定された場合に、前記シャッタが使用可能な範囲内で劣化していることを示す劣化注意情報を出力する
請求項3に記載の赤外線撮影装置。
【請求項5】
前記判定期間中に得られた前記熱画像データの温度のばらつきを表す指標が、前記閾値以下となるまでの時間を待機時間として記憶する記憶部を有し、
前記制御部は、前記シャッタの劣化を検出する処理を行う場合に、前記記憶部に記憶された前記待機時間が経過するまで前記シャッタの劣化判定を行わず、前記待機時間が経過したのちに得られた前記熱画像データの温度のばらつきを表す指標が、前記閾値以下であるか否かを判定する
請求項3に記載の赤外線撮影装置。
【請求項6】
前記判定期間において、前記制御部は、一定時間が経過する度に前記熱画像データの温度のばらつきを表す指標が、前記閾値以下であるか否かを判定する
請求項3に記載の赤外線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の温度を非接触で計測する赤外線撮影装置が知られている。赤外線撮影装置は、測定対象物から放射されている赤外線を受光して熱画像データに変換する赤外線センサと、赤外線センサよりも測定対象物側に配置されたシャッタと、シャッタを開閉するシャッタ駆動機構を備えている。ところで、シャッタの動作精度は、使用回数や仕様期間に応じて劣化する。
【0003】
シャッタや絞りなどの動作精度の劣化を検知する撮像装置としては、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたカメラシステムは、絞りの累積駆動回数と動作保証回数とを記憶する記憶手段を有している。このカメラシステムは、絞りが駆動されるときに、累積駆動回数の更新処理と、累積駆動回数と動作保証回数との比較処理を行い、積駆動回数が動作保証回数に達した場合にその旨を報知手段により報知する。これにより、使用者は、絞りが交換時期にきていることを知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-140914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたカメラシステムでは、絞りの動作精度が実際に劣化しているか否かに関わらず、絞りの駆動回数に基づいて、動作精度の劣化を画一的に判定する。そのため、実際には使用可能な絞りを交換することになる。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、シャッタの動作精度の劣化を検出することができる赤外線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、赤外線撮影装置は、赤外線を受光して熱画像データに変換する赤外線センサと、赤外線センサよりも測定対象物側に配置されたシャッタと、シャッタの開閉を制御する制御部と、熱画像データを出力する出力部とを備える。制御部は、シャッタの閉じ動作を開始してから所定時間が経過したときに得られた熱画像データの温度のばらつきを表す指標を、予め定めた閾値と比較することで、にシャッタが劣化したと判定する。出力部は、制御部によりシャッタが劣化したと判定された場合に、シャッタの劣化を示す劣化情報を出力する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の赤外線撮影装置によれば、シャッタの動作精度の劣化を検出することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る赤外線撮影装置の概略構成を示したブロック図である。
図2】シャッタを開いた場合と、シャッタが閉じている場合と、シャッタが完全に開いている状態と完全に閉じている状態の間の中間の状態である場合の熱画像の温度分布を示すヒストグラムである。
図3】本発明の一実施形態に係る赤外線撮影装置のシャッタを閉じる処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る赤外線撮影装置について、図1図3を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0011】
[赤外線撮影装置の全体構成]
まず、本発明の一実施形態に係る赤外線撮影装置の構成について、図1を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る赤外線撮影装置の概略構成を示したブロック図である。
【0012】
図1に示すように、赤外線撮影装置1は、レンズ2と、赤外線センサ3と、シャッタ4と、シャッタ駆動機構5を備える。レンズ2は、測定対象物101から放射される赤外線を集光する。赤外線センサ3は、レンズ2により集光された赤外線を受光してアナログの電気信号(アナログ信号)に変換する。
【0013】
シャッタ4は、レンズ2と赤外線センサ3との間に配置される。すなわち、シャッタ4は、赤外線センサ3よりも測定対象物101側に配置されている。シャッタ駆動機構5は、シャッタ4を開閉する。シャッタ4を閉じると、レンズ2により集光された赤外線が遮断される。これにより、測定対象物101から放射された赤外線は、赤外線センサ3に到達しない。また、シャッタ4には、シャッタ4の温度を測定する温度センサ41が取り付けられている。
【0014】
また、赤外線撮影装置1は、プリアンプ基板6と、補正処理基板7と、制御基板8とを備える。プリアンプ基板6には、赤外線センサ3と、A/D変換器61と、温度センサ62が設けられている。赤外線センサ3は、例えば、VGA(Video Graphics Array)規格の画素配列(水平640画素×垂直480画素)でアナログ信号の熱画像データを取得する赤外線イメージセンサである。
【0015】
A/D変換器61は、赤外線センサ3から出力されたアナログ信号をデジタル信号(以下、「熱画像データ」とする)に変換する。温度センサ62は、赤外線センサ3の温度を検出する。また、プリアンプ基板6には、赤外線センサ3から出力されたアナログ信号を増幅する不図示のバッファアンプや、赤外線センサ3を制御する不図示のマイコンが設けられている。
【0016】
補正処理基板7には、データ受信部71と、補正処理部72と、出力部73と、データ格納部74と、補正値格納部75が設けられている。データ受信部71は、A/D変換器61から出力された熱画像データを受信し、データ格納部74に格納する。また、データ受信部71は、熱画像データを補正処理部72に送る。
【0017】
補正処理部72は、データ受信部71から供給された熱画像データを、補正値格納部75に格納された補正値を用いて補正する。赤外線センサ3は、画素(ピクセル)毎の感度がばらついている。そのため、補正処理部72は、赤外線センサ3の出力のばらつきをオフセット調整して、同じ輝度に対して同じ出力を得るための補正処理、すなわち、NUC(Non-Uniformity Correction)を行う。補正処理が行われた熱画像データは、出力部73に供給される。
【0018】
補正値格納部75には、補正処理部72によるオフセット調整に必要な補正値が格納されている。補正値は、後述する制御部82により算出され、補正値格納部75に格納される。出力部73は、赤外線撮影装置1の外部に補正処理後の熱画像データを出力する。例えば、データ受信部71が毎秒30フレームの熱画像データを得る場合に、出力部73は、毎秒30フレームの熱画像データを出力(伝送)する。
【0019】
制御基板8には、ヒストグラム検出部81と、制御部82と、記憶部83が設けられている。ヒストグラム検出部81は、データ格納部74に格納された熱画像データから1フレーム分の熱画像データに対応するヒストグラム(温度分布)を検出する。ヒストグラム検出部81は、検出したヒストグラムを制御部82に供給する。
【0020】
制御部82は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御部82は、シャッタ駆動機構5の駆動源に電気的に接続されている。制御部82は、シャッタ駆動機構5の駆動を制御し、シャッタ4を開閉させる。制御部82は、温度センサ41からシャッタ4の温度を得る。また、制御部82は、温度センサ62から赤外線センサ3の温度を得る。
【0021】
制御部82は、シャッタ4を閉じた状態の熱画像データである補正用熱画像データをデータ格納部74から得る。制御部82は、補正用熱画像データの面内ばらつきを測定し、赤外線センサ3の画素(ピクセル)毎の感度のばらつきを補正するための補正値を算出する。制御部82は、算出した補正値を補正値格納部75に格納する。
【0022】
また、制御部82は、ヒストグラム検出部81から供給されるヒストグラムから、シャッタ4の動作精度の劣化(以下、「シャッタ4の劣化」とする)を検出する。制御部82によるシャッタ4の劣化検出及び上述した補正値の算出は、シャッタを閉じる処理において行われる。シャッタを閉じる処理では、シャッタ4が劣化して使用できないこと、シャッタ4が使用可能な範囲内で劣化していること、シャッタ4が劣化していないことを検出する。
【0023】
シャッタを閉じる処理において、シャッタ4が劣化して使用できないことを検出した場合に、制御部82は、劣化情報を出力部73に送る。また、シャッタを閉じる処理において、シャッタ4が使用可能な範囲内で劣化していることを検出した場合に、制御部82は、劣化注意情報を出力部73に送る。出力部73は、制御部82から劣化情報又は劣化注意情報を受信した場合に、その劣化情報又は劣化注意情報を赤外線撮影装置1の外部に出力する。
【0024】
記憶部83は、ヒストグラム検出部81や制御部82による演算を実行するためのプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やパラメータ変数を記憶するための不揮発性メモリを有している。また、記憶部83は、ヒストグラム検出部81や制御部82がプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)を有している。
【0025】
[シャッタの開閉状態と温度分布]
次に、シャッタ4の開閉状態と温度分布について、図2を参照して説明する。
図2は、シャッタ4を開いた場合と、シャッタ4が閉じている場合と、シャッタ4が完全に開いている状態と完全に閉じている状態の間の中間の状態である場合の熱画像の温度分布を示すヒストグラムである。図2に示すヒストグラムの横軸は、温度値であり、縦軸は存在確率である。すなわち、図2は、温度値を示す画素が、全画素数に存在確率を乗じた数だけ存在することを示している。
【0026】
図2Aは、シャッタ4を開いて測定対象物101から放射される赤外線を赤外線センサ3が受光した場合の熱画像データのヒストグラムを示す。ヒストグラムの横軸は温度を示し、縦軸は温度の相対度数を示す。シャッタ4を開いた状態では、赤外線センサ3が、測定対象物101から放射される赤外線、及び測定対象物101の周りの赤外線を受光する。その結果、シャッタ4を開いた場合は、熱画像データの温度分布にばらつきが生じている。
【0027】
図2Bは、シャッタ4を閉じた状態で取得した熱画像データのヒストグラムを示す。図2Bに示すように、シャッタ4を閉じた状態では、赤外線センサ3が、シャッタ4から放射された赤外線を受光する。その結果、シャッタ4を閉じた場合は、熱画像データの温度分布にばらつきが生じていない。
【0028】
図2Cは、シャッタ4が完全に開いている状態と完全に閉じている状態の間の中間の状態であるときに取得した熱画像のヒストグラムを示す。シャッタ4が劣化している場合は、所定時間が経過してもシャッタ4が十分に閉じられない。したがって、赤外線センサ3は、シャッタ4から放射された赤外線、及びシャッタ4以外の環境から放射される赤外線を受光する。その結果、シャッタ4が劣化している場合は、熱画像データの温度分布にばらつきが生じている。
【0029】
したがって、シャッタ4を閉じ始めてから所定時間が経過したときの熱画像データの温度分布、つまり、温度値のばらつきを表す指標が、予め定めた閾値を超える場合に、シャッタ4が劣化していると判定することができる。
【0030】
ばらつきを表す指標としては、熱画像データに含まれる各画素が表す温度値の存在範囲、すなわち、温度値の最高値から最低値までの温度幅を用いることができる。例えば、熱画像データに含まれる各画素が表す温度値は、図2Aでは25度以上の温度幅の範囲に分布している。これに対して、図2Bでは、2度以下の温度幅の範囲に分布している。そして、図2Cの温度幅は、図2A図2Bの中間である。シャッタ4が閉じている図2Bを参照すると、温度幅が2度以下であれば、シャッタ4が閉じていると判定できる。所定時間が経過したときに、温度幅2度を閾値としてばらつきを表す指標(温度幅)を判定することで、シャッタ4が劣化したか否かを判定することができる。
【0031】
また、熱画像データに含まれる各画素が表す温度値の分散を、ばらつきを表す指標として用いることもできる。分散は、各画素が表す温度値とそれら温度値の平均値との差を画素ごとに算出し、画素ごとの差の二乗を全画素で合計し、これを画素数で除した値とする(式(1)を参照)。
【0032】
[数1]
【0033】
図2Aにおける分散は、2.5以上であり、図2Bにおける分散は、0.15以下である。図2Cにおける分散は、図2A図2Bの中間である。分散が0.15以下であれば、シャッタ4が閉じていると判定できる。所定時間が経過したときに分散0.15を閾値としてばらつきを表す指標(分散)を判定することで、シャッタ4が劣化したか否かを判定することができる。
【0034】
[シャッタを閉じる処理]
次に、制御部82が行うシャッタを閉じる処理について、図3を参照して説明する。
図3は、赤外線撮影装置1のシャッタを閉じる処理の例を示すフローチャートである。
【0035】
シャッタを閉じる処理は、赤外線撮影装置1の電源がONされる度に実行される。まず、制御部82は、開いた状態のシャッタ4を閉じる制御を開始し、特定時間(例えば、100ms)待機する(S11)。また、ステップS11において、制御部82は、待機時間カウントを初期化する。待機時間カウントは、待機時間を検出するためのカウントである。また、特定時間は、シャッタ4が劣化している(使用可能な劣化を含む)か否かを判定するために設定した時間である。
【0036】
次に、制御部82は、記憶部83に記憶された待機時間カウントを読み出し、待機時間カウントの値に対応する時間(本実施形態では、1カウントが35ms)が経過するまで待機する(S12)。記憶部83には、カウント値の初期値もしくは、前回のシャッタを閉じる処理において格納したカウント値が格納されている。
【0037】
次に、制御部82は、そのときの熱画像データの温度分布を取得する(S13)。すなわち、制御部82は、そのときの熱画像データのヒストグラムを、ヒストグラム検出部81から取得する。次に、制御部82は、熱画像データの温度のばらつきを表す指標が予め定めた閾値以下であるか否かを判定する(S14)。
【0038】
ステップS14において、熱画像データの温度のばらつきを表す指標が閾値以下でないと判定したとき(S14がNO判定の場合)、制御部82は、待機時間カウントに「1」を加算し、待機時間カウントの値は10以下であるか否かを判定する(S15)。ステップS15において、待機時間カウントの値は10以下であると判定したとき(S15がYES判定の場合)、制御部82は、約1フレーム分(例えば、35ms)待機する(S16)。ステップS16の処理後、制御部82は、ステップS13の処理に移行する。
【0039】
一方、ステップS15において、待機時間カウントの値は10以下でないと判定したとき(S15がNO判定の場合)、制御部82は、シャッタ4が劣化したと判別し、シャッタ4が劣化したことを示す劣化情報を出力部73に送る(S17)。ステップS17の処理後、制御部82は、ステップS23の処理に移行する。
【0040】
待機時間カウントの値が10である場合のステップS14の処理において、熱画像データの温度のばらつきを表す指標が閾値以下でないと判定されると、ステップS15の処理において待機時間カウントの値が11になる。その結果、ステップS15がNO判定となり、シャッタ4が劣化したと判定されて、劣化情報が出力部73に送られる。
【0041】
シャッタ4を閉じる動作を開始してから待機時間カウントの値が10になるまでの時間は、本発明に係る所定時間に対応する。本実施形態において、シャッタ4を閉じる動作を開始してから温度分布(ヒストグラム)を取得するまでの最短時間は、100msである。そして、待機時間カウントの1カウントに対応する時間が35msであるため、待機時間カウントが0から10になるまでの時間は、350msとなる。したがって、本実施形態における所定時間は、450msとなる。
【0042】
待機時間カウントの値が0から10になるまでの時間(350ms)は、本発明に係る判定期間に対応する。また、待機時間カウントの1カウントに対応する時間(35ms)は、本発明に係る一定時間に対応する。そして、シャッタ4を閉じる動作を開始してから温度分布(ヒストグラム)を取得するまでの最短時間(100ms)は、本発明に係る特定時間に対応する。
【0043】
ステップS14において、熱画像データの温度のばらつきを表す指標が閾値以下であると判定したとき(S14がYES判定の場合)、制御部82は、シャッタ4の温度を温度センサ41から取得する(S18)。次に、制御部82は、温度のばらつきを表す指標が閾値以下であると判定されたときの熱画像データを補正用熱画像データにする。そして、補正用熱画像データ及びシャッタ4の温度から、赤外線センサ3の画素(ピクセル)毎の感度のばらつきを補正するための補正値を決定する(S19)。
【0044】
次に、制御部82は、待機時間カウントの値が1以上であるか否かを判定する(S20)。ステップS20において、待機時間カウントの値が1以上でないと判定したとき(S20がNO判定の場合)、制御部82は、ステップS23の処理に移行する。
【0045】
一方、ステップS20において、待機時間カウントの値が1以上であると判定したとき(S20がYES判定の場合)、制御部82は、待機時間カウントを記憶部83に格納する(S21)。次に、制御部82は、シャッタ4が使用可能な範囲内で劣化していることを示す劣化注意情報を出力部73に送る(S22)。
【0046】
待機時間カウントの値が1以上10以下である場合は、特定時間を経過したときにシャッタ4が閉じ切れていなかったが、所定時間が経過する前にシャッタ4が閉じたことを意味する。そのため、制御部82は、シャッタ4が使用可能な範囲内で劣化していると判定する。一方、待機時間カウントの値が1以上でない場合は、特定時間を経過したときにシャッタ4が閉じている。そのため、制御部82は、シャッタ4が劣化してないと判定する。
【0047】
ステップS17及びステップS22の処理後、又はステップS20がNO判定の場合、制御部82は、シャッタ4を開く(S23)。その後、制御部82は、シャッタを閉じる処理を終了する。このように、赤外線撮影装置1では、シャッタ4の閉じ動作における熱画像データの温度分布(ヒストグラム)から温度のばらつきを検出することにより、シャッタ4の劣化を検出することができる。これにより、実際に使用可能なシャッタに対して劣化であると判定することが無く、赤外線撮影装置の長寿命化に貢献することができる。
【0048】
また、赤外線撮影装置1は、シャッタ4の動作速度を検出する検出部を新たに設けなくても、既存の構成でシャッタ4が閉じたタイミングを検知して、シャッタ4が劣化しているか否かを検出することができる。さらに、赤外線撮影装置1は、使用可能ではあるがシャッタ4に劣化が生じていることを検出することができる。また、赤外線撮影装置1は、劣化注意情報を出力するため、使用者にシャッタ4が劣化し始めている旨の注意を促すことができる。
【0049】
以上説明したように、上述した実施形態の赤外線撮影装置1は、赤外線を受光して熱画像データに変換する赤外線センサ3と、赤外線センサ3よりも測定対象物101側に配置されたシャッタ4と、シャッタ4の開閉を制御する制御部82と、熱画像データを出力する出力部73とを備える。制御部82は、シャッタ4の閉じ動作を開始してから所定時間(例えば、450ms)が経過したときに得られた熱画像データの温度のばらつきを表す指標が、予め定めた閾値を超える場合にシャッタ4が劣化したと判定する。
【0050】
出力部73は、制御部82によりシャッタ4が劣化したと判定された場合に、シャッタ4が劣化したことを示す劣化情報を出力する。これにより、シャッタの動作速度を検出する検出部を新たに設けずに、使用者にシャッタ4の劣化を通知することができる。その結果、実際に使用可能なシャッタに対して劣化であると判定することが無く、赤外線撮影装置の長寿命化に貢献することができる。
【0051】
また、上述した実施形態における制御部82は、所定時間よりも短い特定時間(例えば、100ms)が経過したときに得られた熱画像データの温度のばらつきを表す指標が、閾値以下である場合に、シャッタ4が劣化していないと判定する。また、制御部82は、特定時間よりも長く且つ所定時間よりも短い判定期間(例えば、待機時間カウントの値が1~9(135ms~415ms))中に得られた熱画像データの温度のばらつきを表す指標が、閾値以下である場合に、シャッタ4が劣化注意状態であると判定する。これにより、赤外線撮影装置1は、使用可能ではあるがシャッタ4に劣化が生じていることを検出することができる。
【0052】
また、上述した実施形態における出力部73は、制御部82により劣化注意状態であると判定された場合に、シャッタ4が使用可能な範囲内で劣化していることを示す劣化注意情報を出力する。これにより、使用者にシャッタ4が劣化し始めている旨の注意を促すことができる。
【0053】
また、上述した実施形態の赤外線撮影装置1は、判定期間中に得られた熱画像データの温度のばらつきを表す指標が、閾値以下となるまでの時間を待機時間(待機時間カウント)として記憶する記憶部83を有する。制御部82は、シャッタ4の劣化を検出する処理(シャッタを閉じる処理)を行う場合に、記憶部83に記憶された待機時間が経過するまでシャッタの劣化判定を行わない、すなわち処理を待機する(S12の処理)。
【0054】
そして、制御部82は、待機時間が経過したのちに得られた熱画像データの温度のばらつきを表す指標が、閾値以下であるか否かを判定する。これにより、熱画像データの温度分布を取得する処理(S13の処理)を行う回数を削減することができ、シャッタ4の劣化を検出するための処理負荷を削減することができる。
【0055】
また、上述した実施形態における制御部は、判定期間において、一定時間(例えば、35ms)が経過する度に熱画像データの温度のばらつきを表す指標が、閾値以下であるか否かを判定する。これにより、シャッタ4が閉じたタイミングを高精度に検出することができる。その結果、シャッタ4の劣化の進行状態を細かく検出することができる。例えば、待機時間カウントの値が1~3と、4~6と、7~9とにレベル分けをして、劣化注意情報と一緒にレベルを出力するようにしてもよい。これにより、シャッタ4の劣化の進行状態を使用者に認識させることができる。
【0056】
以上、本発明の赤外線撮影装置について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の赤外線撮影装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。また、上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0057】
例えば、上述した実施形態では、シャッタを閉じる処理においてシャッタ4の劣化を検出する処理を行った。しかし、本発明に係るシャッタの劣化を検出する処理は、上述したシャッタを閉じる処理において行うことに限定されず、例えば、使用者の操作によりシャッタの劣化を検出する処理を行うようにしてもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、シャッタを閉じる処理において、シャッタ4が劣化して使用できないこと、シャッタ4が使用可能な範囲内で劣化していること、シャッタ4が劣化していないことを検出する構成にした。しかし、本発明に係る赤外線撮影装置としては、シャッタが劣化して使用できないこと(シャッタが劣化したこと)のみを検出するものであってもよい。この場合は、シャッタを閉じ始めてから所定時間(例えば、450ms)を経過したときに得られた熱画像データの温度のばらつきを表す指標が、閾値を超えるか否かを判定する。そして、熱画像データの温度のばらつきを表す指標が閾値を超えた場合に、シャッタが劣化して使用できないと判定する。
【0059】
また、上述した実施形態では、出力部73が赤外線撮影装置1の外部に劣化情報や劣化注意情報を出力する構成にした。しかし、本発明に係る赤外線撮影装置としては、劣化情報や劣化注意情報を報知する報知部を備えていてもよい。報知部としては、例えば、液晶表示装置や有機EL(electro-luminescence)ディスプレイ等の表示部であってもよく、また、LED(light emitting diode)などを用いた点灯部であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…赤外線撮影装置、 2…レンズ、 3…赤外線センサ、 4…シャッタ、 5…シャッタ駆動機構、 6…プリアンプ基板、 7…補正処理基板、 8…制御基板、 41…温度センサ、 61…A/D変換器、 62…温度センサ、 71…データ受信部、 72…補正処理部、 73…出力部、 74…データ格納部、 75…補正値格納部、 81…ヒストグラム検出部、 82…制御部、 83…記憶部、 101…測定対象物
図1
図2
図3