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特開2023-33759複合粒子、その製造方法、および、それを用いたエレクトロクロミックデバイス
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  • 特開-複合粒子、その製造方法、および、それを用いたエレクトロクロミックデバイス 図1
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  • 特開-複合粒子、その製造方法、および、それを用いたエレクトロクロミックデバイス 図13
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  • 特開-複合粒子、その製造方法、および、それを用いたエレクトロクロミックデバイス 図15
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033759
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】複合粒子、その製造方法、および、それを用いたエレクトロクロミックデバイス
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20230306BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20230306BHJP
   C08G 77/26 20060101ALI20230306BHJP
   C08J 3/215 20060101ALI20230306BHJP
   C09K 9/02 20060101ALI20230306BHJP
   C07D 213/38 20060101ALI20230306BHJP
   G02F 1/1516 20190101ALI20230306BHJP
   G02F 1/1523 20190101ALI20230306BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CEZ
G02F1/15 508
C08G77/26
C08J3/215
C09K9/02 A
C07D213/38
G02F1/1516
G02F1/1523
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139638
(22)【出願日】2021-08-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)2021年3月4日公開 日本化学会 第101春季年会(2021) 講演予稿集 https://confit.atlas.jp/guide/event/csj101st/proceedings/list (2)2021年3月19日~22日開催 公益社団法人日本化学会主催 日本化学会 第101春季年会(2021)
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】藤井 和子
(72)【発明者】
【氏名】ベラ マナス クマール
(72)【発明者】
【氏名】樋口 昌芳
【テーマコード(参考)】
2K101
4C055
4F070
4J246
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB04
2K101DB22
2K101DB53
2K101DC02
2K101DC06
2K101DC22
2K101DC42
2K101DC45
2K101DC52
2K101DC54
2K101DC62
2K101DD06
2K101EB01
2K101EG52
2K101EH36
2K101EJ13
2K101EJ22
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA03
4C055BA08
4C055BA25
4C055BB10
4C055CA01
4C055DA08
4C055DA25
4C055EA02
4F070AA41
4F070AA75
4F070AC42
4F070AC53
4F070AC54
4F070DA31
4F070DB03
4F070DC02
4F070DC05
4F070DC07
4F070DC11
4F070FA04
4F070FA15
4J246AA03
4J246AA19
4J246BA12X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA80X
4J246FC102
4J246FC132
4J246GB22
4J246GB26
4J246GB32
4J246GC51
4J246HA63
(57)【要約】
【課題】 エレクトロクロミックデバイスのメモリ特性を改善するメタロ超分子ポリマーを用いた複合粒子、その製造方法、および、それを用いたエレクトロクロミックデバイスを提供すること。
【解決手段】 本発明の複合粒子は、層間に有機基および金属粒子を有する層状ケイ酸化合物からなる層状無機-有機共有結合体の粒子と、粒子を被覆するメタロ超分子ポリマーを含有し、有機基は、X1-L1で表され、X1は、複素環基、アミン基、アミド基、チオエーテル基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、直鎖状または分岐状のアルキル基、直鎖状または分岐状のアルキルアミン基、直鎖状または分岐状の第四級アルキルアンモニウム基、第四級アリールアンモニウム基、クマリンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される官能基であり、L1は、2価の基であり、メタロ超分子ポリマーは、有機配位子および有機配位子に配位された金属イオンを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸化合物と有機基とが共有結合した層状無機-有機共有結合体の粒子と、
前記粒子を被覆するメタロ超分子ポリマーと
を含有し、
前記有機基は、X1-L1で表され、
前記X1は、複素環基、アミン基、アミド基、チオエーテル基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、直鎖状または分岐状のアルキル基、直鎖状または分岐状のアルキルアミン基(第一級、第二級及び第三級を含む)、直鎖状または分岐状の第四級アルキルアンモニウム基、第四級アリールアンモニウム基、クマリン、および、これらの誘導体からなる群から選択される官能基であり、
前記L1は、2価の基であり、
前記メタロ超分子ポリマーは、有機配位子および前記有機配位子に配位された金属イオンを含む、複合粒子。
【請求項2】
前記粒子に対する前記メタロ超分子ポリマーの質量比は、0.1以上40以下の範囲である、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
前記粒子に対する前記メタロ超分子ポリマーの質量比は、0.6以上30以下の範囲である、請求項2に記載の複合粒子。
【請求項4】
前記X1は、イミダゾリン基である、請求項1~3のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項5】
前記層状無機-有機共有結合体は、化学式(1)で表される、請求項1~4のいずれかに記載の複合粒子。
(M x1 n+,mHO)(M x2 x3)R(Si x4)O(OH) (1)
ここで、Mは、アルカリ金属元素、第2族元素、および、遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素であり、Mは、前記Mとは異なるまたは同一である、アルカリ金属元素、第2族元素、および、遷移金属元素からなる群から1種選択される元素であり、Mは、前記Mおよび前記Mとは異なるまたは同一である、第2族元素、第3族元素および遷移金属元素であり、Mは、前記M、前記Mおよび前記Mとは異なるまたは同一である、アルカリ金属元素、第2族元素、第3族元素、および、遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素であり、Rは前記有機基であり、nは、前記M1の価数であり、m、x1、x2、x3、x4、z、k、pおよびqは、それぞれ、0≦m≦100、0≦x1≦4、0≦x2≦2、2≦x3≦4、0≦x4≦3、2.2≦z≦4.5、2≦k≦5、9≦p≦11、および、1.5≦q≦8を満たす。
【請求項6】
前記層状無機-有機共有結合体は、層間に金属粒子を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項7】
前記層状無機-有機共有結合体は、化学式(2)で表される、請求項6に記載の複合粒子。
(M NP)(M x1 n+,mHO)(M x2 x3)R(Si x4)O(OH) (2)
ここで、MNPは層間に位置する金属粒子であり、Mは、アルカリ金属元素、第2族元素、および、遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素であり、Mは、前記Mとは異なるまたは同一である、アルカリ金属元素、第2族元素、および、遷移金属元素からなる群から1種選択される元素であり、Mは、前記Mおよび前記Mとは異なるまたは同一である、第2族元素、第3族元素および遷移金属元素であり、Mは、前記M、前記Mおよび前記Mとは異なるまたは同一である、アルカリ金属元素、第2族元素、第3族元素、および、遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素であり、MNPは、前記M、前記M、前記Mおよび前記Mからなる群から選択される元素からなる金属粒子であり、Rは前記有機基であり、nは、前記M1の価数であり、m、x1、x2、x3、x4、z、k、pおよびqは、それぞれ、0≦m≦100、0≦x1≦3、0≦x2≦2、2≦x3≦3、0≦x4≦2、1≦y≦10、2.2≦z≦4.5、2≦k≦5、9≦p≦11、および、1.5≦q≦8を満たす。
【請求項8】
前記複合粒子の粒径は、0.5nm以上35μm以下の範囲である、請求項1~7のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項9】
前記複合粒子の表面は、平滑である、請求項1~8のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項10】
前記有機配位子は、ターピリジン基、フェナントロリン基、ビピリジン基、イミノ基およびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~9のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項11】
前記金属イオンは、Pt、Cu、Ni、Pd、Ag、Mo、Fe、Co、Ru、Rh、Eu、Zn、Os、CrおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~10のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項12】
前記メタロ超分子ポリマーは、一般式(I)、(II)および(III)からなる群から選択される一般式で表される少なくとも1種である、請求項1~11のいずれかに記載の複合粒子。
【化1】
前記式(I)において、Mは金属イオンを示し、Xはカウンターアニオンを示し、Sは、炭素原子および水素原子を含むスペーサまたは2つのターピリジン基を直接接続するスペーサを示し、R~Rは、それぞれ独立に水素原子または置換基を示し、nは重合度を示す2以上の整数であり、
前記式(II)において、M~M(Nは2以上の整数)は、それぞれ独立に酸化還元電位の異なる金属イオンを示し、X~X(nは2以上の整数)は、それぞれ独立にカウンターアニオンを示し、S~S(Nは2以上の整数)は、それぞれ独立に炭素原子および水素原子を含むスペーサまたは2つのターピリジン基を直接接続するスペーサを示し、R ~R 、R ~R 、R ~R 、R ~R (Nは2以上の整数)は、それぞれ独立に水素原子または置換基を示し、n~nは、それぞれ独立に重合度を示す2以上の整数であり、
前記式(III)において、Mは金属イオンを示し、Xはカウンターアニオンを示し、Aは、炭素原子および水素原子を含むスペーサまたは2つのフェナントロリン基を直接接続するスペーサを示し、R~Rは、それぞれ独立に水素原子または置換基を示し、nは重合度を示す2以上の整数である。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の複合粒子の製造方法であって、
ケイ酸化合物と有機基とが共有結合した層状無機-有機共有結合体の粒子を、メタノール、エタノールおよび水からなる群から少なくとも1種選択された分散媒に分散した粒子分散液を調製することと、
メタロ超分子ポリマーを含有するポリマー溶液を調製することと、
前記粒子分散液と前記ポリマー溶液とを混合し、攪拌することと、
溶媒を除去することと
を包含し、
前記有機基は、X1-L1で表され、
前記X1は、複素環基、アミン基、アミド基、チオエーテル基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、直鎖状または分岐状のアルキル基、直鎖状または分岐状のアルキルアミン基(第一級、第二級及び第三級を含む)、直鎖状または分岐状の第四級アルキルアンモニウム基、第四級アリールアンモニウム基、クマリン、および、これらの誘導体からなる群から選択される官能基であり、
前記L1は、2価の基であり、
前記メタロ超分子ポリマーは、有機配位子および前記有機配位子に配位された金属イオンを含む、方法。
【請求項14】
前記混合し、攪拌することは、前記粒子に対する前記メタロ超分子ポリマーの質量比が0.1以上40以下の範囲となるよう、前記粒子分散液と前記ポリマー溶液とを混合する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子分散液中の前記粒子の濃度は、0.05mg/mL以上10mg/mL以下の範囲である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマー溶液中の前記メタロ超分子ポリマーの濃度は、2mg/mL以上4mg/mL以上の範囲である、請求項13~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒を除去することに先立って、前記混合し、攪拌することによって得られた混合液を塗布することをさらに包含する、請求項13~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
第1の電極と、
前記第1の電極上に位置し、請求項1~12のいずれかに記載の複合粒子を含有するエレクトロクロミック層と、
前記エレクトロクロミック層上に位置する電解質層と、
前記電解質層上に位置する第2の電極と
を備える、エレクトロクロミックデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子、その製造方法、および、それを用いたエレクトロクロミックデバイスに関し、詳細には、メタロ超分子ポリマーを含有する複合粒子、その製造方法、および、それを用いたエレクトロクロミックデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、層状無機化合物の層間に有機物が存在する層状無機-有機複合体は、無機物と有機物双方の特性を併せ持つ可能性があることから研究が盛んである。例えば、イミダゾリン誘導体を用いて、ケイ酸化合物とイミダゾリン基が有する有機基とが共有結合した層状無機-有機複合体の合成が報告されている(例えば、非特許文献1~4を参照)。
【0003】
非特許文献1~4によれば、ニッケルやマグネシウムの金属酢酸塩の水溶液や酸化ニッケルの分散液に、トリエトキシ-3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピルシランを滴下・混合した混合物を80℃~170℃、10時間~6日間加熱することによって、上述の層状無機-有機複合体が得られることを開示する。このような複合体は、吸着材、発光材料として用途が期待されている。
【0004】
一方、ディスプレイ材料及び調光材料としてエレクトロクロミック材料が注目されている。従来の有機及び無機エレクトロクロミック材料の長所を併せ持つ有機/金属ハイブリッドポリマーをエレクトロクロミック材料として用いた多彩で応答性に優れるエレクトロクロミックデバイスが開発されてきている。(例えば、特許文献1および2を参照)。特許文献1および2では、有機配位子がターピリジン基あるいはフェナントロリン基であり、これに金属イオンが配位した有機/金属ハイブリッドポリマーおよびそのエレクトロクロミックデバイスが開示されている。
【0005】
さらに、有機/金属ハイブリッドポリマーを層状ケイ酸塩にインターカレートした複合体が開発された(例えば、特許文献3を参照)。特許文献3によれば、スメクタイト系層状ケイ酸塩が分散した水溶液に、有機/金属ハイブリッドポリマーを添加することにより、層状ケイ酸塩の層間に有機/金属ハイブリッドポリマーをインターカレートさせた複合体が得られることを報告する。特許文献3によれば、このような複合体とすることにより、有機/金属ハイブリッドポリマーの酸化還元電位が低減するため、エレクトロクロミックデバイスの動作電圧を小さくでき、メモリ特性が改善できる。しかしながら、実用化に際しては、メモリ特性のさらなる改善が求められ、省電力化が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-112957号公報
【特許文献2】特開2012-188517号公報
【特許文献3】特開2018-90912号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】藤井 和子ら,第59回粘土科学討論会,「層状無機-イミダゾリン複合体の合成と評価」
【非特許文献2】K.Fujiiら,Journal of Inorganic and Organometallic Polymers and Materials (2019) 29:745-757
【非特許文献3】藤井 和子ら,第63回粘土科学討論会,「層状無機-イミダゾリン共有結合体の合成条件と構造」
【非特許文献4】藤井 和子ら,第100回春季年会,予稿集「層状無機-イミダゾリン共有結合体の形態観察」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、エレクトロクロミックデバイスのメモリ特性を改善するメタロ超分子ポリマーを用いた複合粒子、その製造方法、および、それを用いたエレクトロクロミックデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による複合粒子は、ケイ酸化合物と有機基とが共有結合した層状無機-有機共有結合体の粒子と、前記粒子を被覆するメタロ超分子ポリマーとを含有し、前記有機基は、X1-L1で表され、前記X1は、複素環基、アミン基、アミド基、チオエーテル基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、直鎖状または分岐状のアルキル基、直鎖状または分岐状のアルキルアミン基(第一級、第二級及び第三級を含む)、直鎖状または分岐状の第四級アルキルアンモニウム基、第四級アリールアンモニウム基、クマリン、および、これらの誘導体からなる群から選択される官能基であり、前記L1は、2価の基であり、前記メタロ超分子ポリマーは、有機配位子および前記有機配位子に配位された金属イオンを含み、これにより上記課題を解決する。
前記粒子に対する前記メタロ超分子ポリマーの質量比は、0.1以上40以下の範囲であってもよい。
前記粒子に対する前記メタロ超分子ポリマーの質量比は、0.6以上30以下の範囲であってもよい。
前記X1は、イミダゾリン基であってもよい。
前記層状無機-有機共有結合体は、化学式(1)で表されてもよい。
(M x1 n+,mHO)(M x2 x3)R(Si x4)O(OH) (1)
ここで、Mは、アルカリ金属元素、第2族元素、および、遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素であり、Mは、前記Mとは異なるまたは同一である、アルカリ金属元素、第2族元素、および、遷移金属元素からなる群から1種選択される元素であり、Mは、前記Mおよび前記Mとは異なるまたは同一である、第2族元素、第3族元素および遷移金属元素であり、Mは、前記M、前記Mおよび前記Mとは異なるまたは同一である、アルカリ金属元素、第2族元素、第3族元素、および、遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素であり、Rは前記有機基であり、nは、前記M1の価数であり、m、x1、x2、x3、x4、z、k、pおよびqは、それぞれ、0≦m≦100、0≦x1≦4、0≦x2≦2、2≦x3≦4、0≦x4≦3、2.2≦z≦4.5、2≦k≦5、9≦p≦11、および、1.5≦q≦8を満たす。
前記層状無機-有機共有結合体は、層間に金属粒子を含有してもよい。
前記層状無機-有機共有結合体は、化学式(2)で表されてもよい。
(M NP)(M x1 n+,mHO)(M x2 x3)R(Si x4)O(OH) (2)
ここで、MNPは層間に位置する金属粒子であり、Mは、アルカリ金属元素、第2族元素、および、遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素であり、Mは、前記Mとは異なるまたは同一である、アルカリ金属元素、第2族元素、および、遷移金属元素からなる群から1種選択される元素であり、Mは、前記Mおよび前記Mとは異なるまたは同一である、第2族元素、第3族元素および遷移金属元素であり、Mは、前記M、前記Mおよび前記Mとは異なるまたは同一である、アルカリ金属元素、第2族元素、第3族元素、および、遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素であり、MNPは、前記M、前記M、前記Mおよび前記Mからなる群から選択される元素からなる金属粒子であり、Rは前記有機基であり、nは、前記M1の価数であり、m、x1、x2、x3、x4、z、k、pおよびqは、それぞれ、0≦m≦100、0≦x1≦3、0≦x2≦2、2≦x3≦3、0≦x4≦2、1≦y≦10、2.2≦z≦4.5、2≦k≦5、9≦p≦11、および、1.5≦q≦8を満たす。
前記複合粒子の粒径は、0.5nm以上35μm以下の範囲であってもよい。
前記複合粒子の表面は、平滑であってもよい。
前記有機配位子は、ターピリジン基、フェナントロリン基、ビピリジン基、イミノ基およびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
前記金属イオンは、Pt、Cu、Ni、Pd、Ag、Mo、Fe、Co、Ru、Rh、Eu、Zn、Os、CrおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
前記メタロ超分子ポリマーは、一般式(I)、(II)および(III)からなる群から選択される一般式で表される少なくとも1種であってもよい。
【化1】
前記式(I)において、Mは金属イオンを示し、Xはカウンターアニオンを示し、Sは、炭素原子および水素原子を含むスペーサまたは2つのターピリジン基を直接接続するスペーサを示し、R~Rは、それぞれ独立に水素原子または置換基を示し、nは重合度を示す2以上の整数であり、
前記式(II)において、M~M(Nは2以上の整数)は、それぞれ独立に酸化還元電位の異なる金属イオンを示し、X~X(nは2以上の整数)は、それぞれ独立にカウンターアニオンを示し、S~S(Nは2以上の整数)は、それぞれ独立に炭素原子および水素原子を含むスペーサまたは2つのターピリジン基を直接接続するスペーサを示し、R ~R 、R ~R 、R ~R 、R ~R (Nは2以上の整数)は、それぞれ独立に水素原子または置換基を示し、n~nは、それぞれ独立に重合度を示す2以上の整数であり、
前記式(III)において、Mは金属イオンを示し、Xはカウンターアニオンを示し、Aは、炭素原子および水素原子を含むスペーサまたは2つのフェナントロリン基を直接接続するスペーサを示し、R~Rは、それぞれ独立に水素原子または置換基を示し、nは重合度を示す2以上の整数である。
本発明による上述の複合粒子の製造方法は、ケイ酸化合物と有機基とが共有結合した層状無機-有機共有結合体の粒子を、メタノール、エタノールおよび水からなる群から少なくとも1種選択された分散媒に分散した粒子分散液を調製することと、メタロ超分子ポリマーを含有するポリマー溶液を調製することと、前記粒子分散液と前記ポリマー溶液とを混合し、攪拌することと、溶媒を除去することとを包含し、前記有機基は、X1-L1で表され、前記X1は、複素環基、アミン基、アミド基、チオエーテル基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、直鎖状または分岐状のアルキル基、直鎖状または分岐状のアルキルアミン基(第一級、第二級及び第三級を含む)、直鎖状または分岐状の第四級アルキルアンモニウム基、第四級アリールアンモニウム基、クマリン、および、これらの誘導体からなる群から選択される官能基であり、前記L1は、2価の基であり、前記メタロ超分子ポリマーは、有機配位子および前記有機配位子に配位された金属イオンを含み、これにより上記課題を解決する。
前記混合し、攪拌することは、前記粒子に対する前記メタロ超分子ポリマーの質量比が0.1以上40以下の範囲となるよう、前記粒子分散液と前記ポリマー溶液とを混合してもよい。
前記粒子分散液中の前記粒子の濃度は、0.05mg/mL以上10mg/mL以下の範囲であってもよい。
前記ポリマー溶液中の前記メタロ超分子ポリマーの濃度は、2mg/mL以上4mg/mL以上の範囲であってもよい。
前記溶媒を除去することに先立って、前記混合し、攪拌することによって得られた混合液を塗布することをさらに包含してもよい。
本発明によるエレクトロクロミックデバイスは、第1の電極と、前記第1の電極上に位置し、上述の複合粒子を含有するエレクトロクロミック層と、前記エレクトロクロミック層上に位置する電解質層と、前記電解質層上に位置する第2の電極とを備え、これにより上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合粒子は、上述したケイ酸化合物と有機基とが共有結合した層状無機-有機共有結合体の粒子と、それを被覆するメタロ超分子ポリマーとを含有する。有機基はケイ酸化合物と共有結合しているため、有機基がデインターカレーションすることがない。メタロ超分子ポリマーが層間にインターカレートすることなく、粒子を被覆する。この結果、層状ケイ酸化合物が負電荷を帯びているため、メタロ超分子ポリマー中の金属イオンの酸化還元電位が安定化し、これをエレクトロクロミック層に用いれば、メモリ特性が向上したエレクトロクロミックデバイスを提供できる。
【0011】
本発明の複合粒子の製造方法は、上述のケイ酸化合物と有機基とが共有結合した層状無機-有機共有結合体の粒子をメタノール、エタノールおよび水からなる群から少なくとも1種選択された分散媒に分散した粒子分散液を調製することと、メタロ超分子ポリマーを含有するポリマー溶液を調製することと、粒子分散液とポリマー溶液とを混合し、攪拌することと、溶媒を除去することとを包含する。分散媒として上述の特定の分散媒を用いることにより、層状無機-有機共有結合体が剥離あるいは膨潤しにくいため、メタロ超分子ポリマーが層間にインターカレートすることなく、粒子を被覆できる。また、単に混合・攪拌し、不要な溶媒を除去するだけ上述の複合粒子が製造されるので、特別の装置や技術を不要とし、汎用性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の複合粒子の断面を示す模式図
図2】本発明の複合粒子に用いるケイ素化合物を示す模式図
図3】別の層状無機-有機共有結合体を示す模式図
図4】本発明の複合粒子を製造する工程を示すフローチャート
図5】本発明のエレクトロクロミックデバイスを示す模式図
図6】層状無機-有機共有結合体の粒子のSEM像を示す図
図7】例1の試料のSEM像を示す図
図8】例2の試料のSEM像を示す図
図9】例3の試料のSEM像を示す図
図10】例1~例3および例5の試料のサイクリックボルタモグラムを示す図
図11図10から算出した例1~例3および例5の試料の酸化還元電位を示す図
図12】例3のエレクトロクロミックデバイスの透過率の変化(A)および発色の変化(B)を示す図
図13】例5のエレクトロクロミックデバイスの透過率の変化(A)および発色の変化(B)を示す図
図14】例3のエレクトロクロミックデバイスのメモリ特性を示す図
図15】例5のエレクトロクロミックデバイスのメモリ特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
【0014】
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明の複合粒子およびその製造方法について説明する。
図1は、本発明の複合粒子の断面を示す模式図である。
図2は、本発明の複合粒子に用いるケイ素化合物を示す模式図である。
【0015】
本発明の複合粒子100は、層状無機-有機共有結合体101からなる粒子102(以降では単に粒子と呼ぶ)と、その粒子102を被覆するメタロ超分子ポリマー103とを含有する。ここで、層状無機-有機共有結合体101は、ケイ素化合物の層110と、それと共有結合した有機基120とを含有する。ケイ素化合物の層110は、好ましくは、ケイ素(Si)と水素(H)と酸素(O)とを含有する無機化合物の層である。
【0016】
有機基120は、X1-L1で表され、X1は、複素環基、アミン基、アミド基、チオエーテル基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、直鎖状または分岐状のアルキル基、直鎖状または分岐状のアルキルアミン基(第一級、第二級及び第三級を含む)、直鎖状または分岐状の第四級アルキルアンモニウム基、第四級アリールアンモニウム基、クマリン、および、これらの誘導体からなる群から選択される官能基であり、L1は、2価の基である。有機基120のL1が層110と共有結合する。X1としてアルキル鎖を含む場合、例示的には、炭素数は1~30である。
【0017】
メタロ超分子ポリマー103は、有機配位子およびその有機配位子に配位された金属イオンを含む。このようなメタロ超分子ポリマー103は、エレクトロクロミック特性を示す。層状無機-有機共有結合体101において、有機基120はケイ素化合物の層110と共有結合しているため、メタロ超分子ポリマー103が層110間にインターカレートすることなく、粒子102を被覆する。このような形態とすることにより、層状無機-有機共有結合体101が負電荷を帯び、メタロ超分子ポリマー103中の金属イオンが安定化する。この結果、メタロ超分子ポリマー103の酸化還元電位が安定化するので、これをエレクトロクロミック層に用いれば、メモリ特性が向上したエレクトロクロミックデバイスを提供できる。
【0018】
以降では各構成要素について詳述する。
有機基120の複素環基は、好ましくは、含窒素複素環基である。含窒素複素環基は、より好ましくは、ピロール基、チアゾール基、イソチアゾール基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、イミダゾール基、イミダゾリン基、イミダゾリジン基、ピラゾール基、1,3,5-トリアジン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピリダジン基、ピラジン基、インドール基、キノリン基、イソキノリン基、ブリン基、テトラゾール基、テトラジン基、トリアゾール基、カルバゾール基、アクリジン基、キノキサリン基、キナゾリン基、インドリジン基、イソインドール基、3H-インドール基、2H-ピロール基、1H-インダゾール基、プリン基、フタラジン基、ナフチリジン基、シンノリン基、プテリジン基、カルボリン基、フェナントリジン基、ペリミジン基、フェナントロリン基、フェナジン基、フェナルサジン基、フェノチアジン基、フラザン基、フェノキサジン基、ピロリジン基、ピロリン基、ピラゾリン基、ピラゾリジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、インドリン基、イソインドリン基、キヌクリジン基およびこれらの誘導体からなる群から選択される。
【0019】
中でも、X1は、イミダゾリン基が好ましい。これにより、高収率で本発明の複合体を製造できる。
【0020】
L1は、2価の基としては特に制限されないが、ヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基が挙げられる。ヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基としては、例えば、アルキレン基(炭素数1~10個が好ましい)、シクロアルキレン基(炭素数3~10個が好ましい)、アルケニレン基(炭素数2~10個が好ましい)、アルキニレン基(炭素数2~10個が好ましい)、及び、これらの組み合わせ、並びに、上記と-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、及び、-NR-(Rは水素原子又は1価の有機基を表す)との組み合わせ等が挙げられる。
【0021】
ケイ素化合物の層110は、好ましくは、アルカリ金属元素、第2族元素、第3族元素、および、遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素を含有してもよい。図2に示すように、層110は、これら元素の陽イオン八面体シート210が一対のケイ素系シート220で挟持されていてもよい。八面体シート210は、詳細には、図2に示すように、これら元素の陽イオンと酸素と水酸基とからなる八面体が稜共有して連なっている。
【0022】
ケイ素系シート220は、本願明細書においてシロキサン結合を有するものを表すものであるが、好ましくは、シロキサン(Si-O-Si)結合が連なり、シート状の形態をであるポリシロキサンシートである。このようなポリシロキサンシートは、例示的には、以下の2種類が挙げられる。
(1)シロキサン結合のSiの4つの手の内1つは、有機基と、残りの手の3つが酸素と結合する。Siと結合する酸素は、Si-O-Si、Si-OH、または、陽イオン八面体のO(陽イオン八面体と頂点共有)である。
(2)シロキサン結合のSiの4つの手全てが酸素と結合し、Si四面体を形成する。4つの手のうち3つはシロキサン結合する。そして、Si四面体は頂点共有で二次元状のヘキサゴナルネットワークを形成する。4つの手のうち残る1つは陽イオン八面体と頂点共有する。これらのポリシロキサンシートであれば、八面体シート210を挟持し、有機基120のL1と共有結合し得る。
【0023】
ポリシロキサンシートが上述のL1と共有結合したものをオルガノポリシロキサンシートと呼ぶ場合がある。
【0024】
層110の各層の厚さは、好ましくは、0.5nm以上2nm以下の範囲である。これにより、層110は、一対のケイ素系シート220で八面体シート210を挟持した積層構造となり得る。
【0025】
層状無機-有機共有結合体101は、化学式(1)で表されてもよい。
(M x1 n+,mHO)(M x2 x3)R(Si x4)O(OH) (1)
は、Li、Na等のアルカリ金属元素、Mg等の第2族元素、および、Ni等の遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素であり、Mは、Mとは異なるまたは同一である、アルカリ金属元素、第2族元素、および、遷移金属元素からなる群から1種選択される元素であり、Mは、MおよびMとは異なるまたは同一である、第2族元素、Al等の第3族元素および遷移金属元素であり、Mは、M、MおよびMとは異なるまたは同一である、アルカリ金属元素、第2族元素、第3族元素、および、遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素であり、Rは有機基120であり、nは、Mの価数であり、m、x1、x2、x3、x4、z、k、pおよびqは、それぞれ、0≦m≦100、0≦x1≦4、0≦x2≦2、2≦x3≦4、0≦x4≦3、2.2≦z≦4.5、2≦k≦5、9≦p≦11、および、1.5≦q≦8を満たす。
【0026】
上記パラメータm、x1、x2、x3、x4、y、z、k、pおよびqは、それぞれ、より好ましくは、6≦m≦12、0.8≦x1≦1.2、0≦x2≦0.1、2.6≦x3≦3.4、0≦x4≦0.1、3.2≦z≦4、3.2≦k≦4、9≦p≦11、および、1.5≦q≦5を満たす。これにより、層状無機-有機共有結合体101が安定となる。
【0027】
図3は、別の層状無機-有機共有結合体を示す模式図である。
【0028】
層状無機-有機共有結合体101は、層110間に金属粒子130をさらに含有してもよい。金属粒子130は、遷移金属元素からなり、より好ましくは、第8族元素、第9族元素および第10族元素からなる群から選択される元素からなる。金属粒子130は、有機基120に覆われることはないため、効果的に金属本来の特性を発揮できる。
【0029】
金属粒子130の第8族元素の群は、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)およびハッシウム(Hs)からなる。第9族元素の群は、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)およびマイトネリウム(Mt)からなる。第10族元素の群は、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)およびダームスタチウム(Ds)からなる。
【0030】
金属粒子130は、上述した元素群から選択される限り、単一の元素からなってもよいし、2以上の元素からなる複合金属であってもよいし、2以上の元素からなる金属のコアシェル構造であってもよい。
【0031】
金属粒子130は、好ましくは、Ni、CoおよびFeからなる群から少なくとも1つ選択される遷移金属元素からなる。これらの金属元素であれば、後述する製造方法によって金属粒子130を層間に効率的に位置させることができる。中でもNiは収率の観点から好ましい。
【0032】
金属粒子(MNP)を有する場合、層状無機-有機共有結合体101は、化学式(2)で表されてもよい。
(M NP)(M x1 n+,mHO)(M x2 x3)R(Si x4)O(OH) (2)
NPは、層間に位置する金属粒子であり、Mは、Li、Na等のアルカリ金属元素、Mg等の第2族元素、および、Ni等の遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素であり、Mは、Mとは異なるまたは同一である、アルカリ金属元素、第2族元素、および、遷移金属元素からなる群から1種選択される元素であり、Mは、MおよびMとは異なるまたは同一である、第2族元素、Al等の第3族元素および遷移金属元素であり、Mは、M、MおよびMとは異なるまたは同一である、アルカリ金属元素、第2族元素、第3族元素、および、遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素であり、Rは有機基120であり、Rは有機基120であり、nは、Mの価数であり、m、x1、x2、x3、x4、y、z、k、pおよびqは、それぞれ、0≦m≦100、0≦x1≦3、0≦x2≦2、2≦x3≦3、0≦x4≦2、1≦y≦10、2.2≦z≦4.5、2≦k≦5、9≦p≦11、および、1.5≦q≦8を満たす。
【0033】
上記パラメータm、x1、x2、x3、x4、y、z、k、pおよびqは、それぞれ、より好ましくは、6≦m≦12、0.8≦x1≦1、0≦x2≦0.1、2.6≦x3≦3.4、0≦x4≦0.1、1≦y≦6、3.2≦z≦4、3.2≦k≦4、9≦p≦11、および、1.5≦q≦5を満たす。これにより、上述の層間に金属粒子を含有した層状無機-有機共有結合体が安定となる。
【0034】
金属粒子130は、好ましくは、0.5nm以上100nm以下の範囲の粒径を有する。金属粒子130は、より好ましくは、1.5nm以上50nm以下の範囲の粒径を有し、より好ましくは、1.5nm以上20nm以下の範囲の粒径を有し、なお好ましくは、2nm以上15nm以下の範囲の粒径を有する。
【0035】
なお、本願明細書において、金属粒子130の粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察された画像において無作為に選んだ金属粒子100点の粒径を測定し、その平均粒径とする。
【0036】
金属粒子130の含有量は、好ましくは、0wt%より多く30wt%以下の範囲である。金属粒子130の含有量は、より好ましくは、1wt%以上15wt%以下の範囲である。金属粒子130の含有量は、さらに好ましくは、3wt%以上10wt%以下の範囲である。金属粒子130の含有量を制御することにより、エレクトロクロミック特性に加えて、触媒活性、プラズモン発光、光電効果、発光制御など金属元素に基づく機能を効果的に発揮できる。質量パーセント濃度を「wt%」と表記する。
【0037】
層110間の層間距離は、有機基120の種類に依存するが、例示的には、7Å以上50Å以下の範囲である。この範囲であれば、層110間にメタロ超分子ポリマー103がインターカレートすることを抑制できる。
【0038】
有機基120として長鎖アルキル基の様に嵩高い基を有する有機基を選べば、層間距離を大きくでき、その逆の有機基を選べば、層間距離を小さくできる。また、有機基120の組成比を制御することでも層間距離を制御できる、例えば、有機基120の組成比(上記化学式中のz)が大きいと、層間距離が広がる。
【0039】
メタロ超分子ポリマー103において有機配位子とは、金属イオンを配位でき、金属イオンと、有機配位子とが、配位結合、および、有機金属結合からなる群より選択される少なくとも1種を含む結合形態によって交互に連なって高分子化可能である有機化合物であれば、特に制限はない。有機配位子は、好ましくは、ターピリジン基、フェナントロリン基、ビピリジン基、イミノ基およびこれらの誘導体からなる群から選択される。メタロ超分子ポリマーを構成する有機配位子は、単数種であっても複数種であってもよい。これらの有機配位子が金属イオンと配位し、錯形成することによって、有機配位子と金属イオンとが交互に連結した状態となり、メタロ超分子ポリマーを構成する。
【0040】
ターピリジン基は、代表的には、2,2’:6’,2”-ターピリジンであるが、これに、種々の置換基を有した誘導体であってもよい。例示的な置換基は、ハロゲン原子、炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えばC~C10)、カルボニル基、カルボン酸エステル基(例えばC~C10)、アミノ基、置換アミノ基、アミド基、置換アミド基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。炭化水素基としては、例えば、C~C10等の直鎖または分岐のアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が例示できる。さらにこれらの置換基が有していてよい置換基の例として、メチル基、エチル基、ヘキシル基等のC~C10のアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基等のC~C10のアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子等の置換基が挙げられるが、これに限らない。
【0041】
ビピリジン基は、2,2’-ビピリジン、3,3’-ビピリジン、4,4’-ビピリジン、2,3’-ビピリジン、2,4’-ビピリジン、3,4’-ビピリジンであるが、これに種々の置換基を有した誘導体であってもよい。ここでも例示的な置換基は、上述したとおりである。
【0042】
イミノ基は、C=Nを有し、これに種々の置換基を有した誘導体であり得る。誘導体が有し得る例示的な置換基は、上述したとおりである。
【0043】
フェナントロリン基は、フェナントレンのうちの任意の2つの炭素原子が窒素原子で置換されたものであるが、これに種々の置換基を有した誘導体であってもよい。誘導体が有し得る例示的な置換基は、メチル基、t-ブチル基、フェニル基、チエニル基、ビチエニル基、ターチエニル基、フェニルアセチル基等であるが、これに限らない。
【0044】
金属イオンは、酸化還元反応によって価数を変化させる任意の金属イオンであり得るが、好ましくは、Pt、Cu、Ni、Pd、Ag、Mo、Fe、Co、Ru、Rh、Eu、Zn、Os、CrおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンである。これらの金属イオンは、上述の有機配位子と配位する。より好ましくは、有機配位子が、ターピリジン基またはその誘導体である場合には、6配位の金属イオンが選択され、有機配位子がフェナントロリン基、ビピリジン基、イミノ基またはこれらの誘導体である場合には、4配位の金属イオンが選択される。
【0045】
メタロ超分子ポリマー103は、好ましくは、一般式(I)、(II)および(III)からなる群から選択される一般式で表される。メタロ超分子ポリマー103はこれらの混合物であってもよい。
【0046】
【化2】
【0047】
式(I)および式(II)で表されるメタロ超分子ポリマーは、いずれも、有機配位子としてターピリジン基またはその誘導体とそれに配位された金属イオンとを含む。式(III)で表されるメタロ超分子ポリマーは、有機配位子としてフェナントロリン基またはその誘導体とそれに配位された金属イオンとを含む。
【0048】
式(I)において、Mは金属イオンを示し、Xはカウンターアニオンを示し、Sは、炭素原子および水素原子を含むスペーサまたは2つのターピリジン基を直接接続するスペーサを示し、R~Rは、それぞれ独立に水素原子または置換基を示し、nは重合度を示す2以上の整数である。
【0049】
式(II)において、M~M(Nは2以上の整数)は、それぞれ独立に酸化還元電位の異なる金属イオンを示し、X~X(nは2以上の整数)は、それぞれ独立にカウンターアニオンを示し、S~S(Nは2以上の整数)は、それぞれ独立に炭素原子および水素原子を含むスペーサまたは2つのターピリジン基を直接接続するスペーサを示し、R ~R 、R ~R 、R ~R 、R ~R (Nは2以上の整数)は、それぞれ独立に水素原子または置換基を示し、n~nは、それぞれ独立に重合度を示す2以上の整数である。
【0050】
ここで、式(I)および式(II)における金属イオンは、好ましくは、Fe、Co、Ni、Zn、Ru、Os、CrおよびRhからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンであり得る。これらの金属イオンは6配位形態をとりうるので、上記有機配位子との錯形成が可能になる。
【0051】
式(I)および式(II)におけるカウンターアニオンは、酢酸イオン、リン酸イオン、塩素イオン、六フッ化リンイオン、四フッ化ホウ素イオン、および、ポリオキソメタレートからなる群から選択され得る。これらのカウンターアニオンによって、メタロ超分子ポリマー103は電気的に中性となり安定化する。
【0052】
式(I)および式(II)におけるスペーサが炭素原子および水素原子を含むスペーサである場合、このようなスペーサは炭素原子および水素原子を含む二価の有機基であり得る。例示的には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基等が挙げられる。中でも、フェニレン基、ビフェニレン基などのアリーレン基が好ましい。また、これらの炭化水素基はメチル基、エチル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。また、このようなスペーサは、酸素原子や硫黄原子をさらに含んでいてもよい。酸素原子や硫黄原子は修飾能を有するので、メタロ超分子ポリマー103の材料設計に有利である。
【0053】
二価のアリーレン基の中でも以下に示すアリーレン基が好ましい。これらであれば、メタロ超分子ポリマー103が安定化する。
【0054】
【化3】
【0055】
スペーサを構成する脂肪族炭化水素基としては、例えば、C~C等のアルキレン基、具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、n-ブチレン基、t-ブチレン基等が例示できる。さらにスペーサを構成する二価の有機基として、これらの基にメチル基、エチル基、ヘキシル基等のC~Cのアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基等のC~Cのアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子等の置換基を有するものを用いてもよい。
【0056】
式(I)のR~Rおよび式(II)のR ~R 、R ~R 、R ~R 、R ~R は、それぞれ独立に水素原子または置換基を示し、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えばC~C10)、カルボニル基、カルボン酸エステル基(例えばC~C10)、アミノ基、置換アミノ基、アミド基、置換アミド基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。炭化水素基としては、例えば、C~C10等の直鎖または分岐のアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が例示できる。さらにこれらの置換基が有していてよい置換基の例として、これらの炭化水素基にメチル基、エチル基、ヘキシル基等のC~C10のアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基等のC~C10のアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子等の置換基を有するものを用いてもよいが、これらに限らない。
【0057】
式(I)において、nは重合度を示す2以上の整数であり、例えば2~5000、好ましくは10~1000である。式(II)において、n~nは、それぞれ独立に重合度を示す2以上の整数であり、その合計n+n・・・+nは、例えば2~5000、好ましくは10~1000である。
【0058】
式(III)において、Mは金属イオンを示し、Xはカウンターアニオンを示し、Aは、炭素原子および水素原子を含むスペーサまたは2つのフェナントロリン基を直接接続するスペーサを示し、R~Rは、それぞれ独立に水素原子または置換基を示し、nは重合度を示す2以上の整数である。
【0059】
ここで、式(III)における金属イオンは、Pt、Cu、Ni、AgおよびPdからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンであり得る。これらの金属イオンは4配位形態をとりうるので、上記有機配位子との錯形成が可能になる。式(III)におけるカウンターアニオンは、過塩素酸イオン、トリフラートイオン、四フッ化ホウ素イオン、塩化物イオンおよび六フッ化リン酸イオンからなる群から選択され得る。これらのカウンターアニオンによって、メタロ超分子ポリマー103は電気的に中性となり安定化する。
【0060】
式(III)におけるスペーサが炭素原子および水素原子を含むスペーサである場合、スペーサは、以下に示すように、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、チエニル基、ビチエニル基、ターチエニル基が代表例として挙げられる。また、ビス(フェナントロリン)誘導体の溶解性を高めるために、アルキル基(炭素数1から16)やアルコキシ基(炭素数1から16)で修飾したスペーサを用いることも望ましい。さらに、ジオキソアルキル基(炭素数2から16)でフェニル基間が連結されたスペーサを用いることもできる。
【0061】
【化4】
【0062】
式(III)におけるRおよびRは、以下に示すように、水素、メチル基、t-ブチル基、フェニル基、チエニル基、ビチエニル基、ターチエニル基が挙げられる。式(III)におけるRおよびRは、水素、フェニル基、フェニルアセチル基が挙げられる。
【0063】
【化5】
【0064】
式(III)において、nは重合度を示す2以上の整数であり、例えば2~5000、好ましくは10~1000である。
【0065】
メタロ超分子ポリマー103は、金属イオンから有機配位子への電荷移動吸収に基づき呈色を示す。すなわち、メタロ超分子ポリマー103は、電気化学的に酸化されると発色が消えた消色状態となり、電気化学的に還元されると発色状態となる。この現象は繰り返し起こすことが可能である。したがって、このようなメタロ超分子ポリマー103は、エレクトロクロミック特性を発揮する。
【0066】
本発明の複合粒子100において、粒子102に対するメタロ超分子ポリマー103の質量比は、好ましくは、0.1以上40以下の範囲である。この範囲であれば、メタロ超分子ポリマー103が粒子102を被覆し、メタロ超分子ポリマー103の酸化還元電位の安定化を促進する。粒子102に対するメタロ超分子ポリマー103の質量比は、より好ましくは、0.6以上30以下の範囲である。この範囲であれば、メタロ超分子ポリマー103の酸化還元電位の安定化をさらに促進する。粒子102に対するメタロ超分子ポリマー103の質量比は、なおさらに好ましくは、0.6以上5以下の範囲である。この範囲であれば、メタロ超分子ポリマー103の酸化還元電位の安定化をさらに促進し、メモリ保持特性が顕著に改善する。
【0067】
本発明の複合粒子100の粒径(D50)は、好ましくは、0.5nm以上35μm以下の範囲である。この範囲であれば、エレクトロクロミックデバイスにおけるエレクトロクロミック層の製造が容易である。粒径は、より好ましくは、0.3μm以上30μm以下の範囲であり、なお好ましくは、1.5μm以上22μm以下の範囲である。
【0068】
本発明の複合粒子100の表面は、メタロ超分子ポリマー103によって被覆されているため平滑である。電子顕微鏡観察によって表面が平滑な粒子が観察されれば、簡易的に、本発明の複合粒子100が得られたと判断してよい。
【0069】
図4は、本発明の複合粒子を製造する工程を示すフローチャートである。
【0070】
ステップS410:ケイ酸化合物と有機基とが共有結合した層状無機-有機共有結合体の粒子が分散した粒子分散液を調製する。このような層状無機-有機共有結合体は、上述したとおりであるため、説明を省略する。なお、層状無機-有機共有結合体は、例えば、次のステップAおよびB、必要に応じてCによって製造され得る。
【0071】
ステップA:アルカリ金属元素、第2族元素、第3族元素、および、遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素の塩または水酸化物と、ケイ素を含有する有機物とを混合する。
【0072】
ステップB:ステップAによって得られた混合物を水熱合成する。水熱合成は、密閉した容器内において熱水の存在下で行われる化合物の合成を表す。水熱合成には、既存のオートクレーブ反応器や水熱合成反応装置が使用され得る。これにより、化学式(1)で表される層状無機-有機共有結合体101が得られる。
【0073】
ステップC:ステップBで得られた生成物に電子線を照射する。これにより、生成物中における金属粒子を成長させることができる。これにより、化学式(2)で表される層状無機-有機共有結合体101が得られる。
【0074】
各ステップについて詳述する。
ステップAにおいて、アルカリ金属元素、第2族元素、第3族元素、および、遷移金属元素からなる群から少なくとも1種選択される元素の塩または水酸化物は、特に制限されるものではないが、具体的には、選択された元素の酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、塩化物等である。
【0075】
ステップAにおいて、ケイ素を含有する有機物は、ケイ素を有し、かつ、X1-L1で表される有機基を有する限り制限はないが、好ましくは、ケイ素は、L1に結合されている。これにより、無機化合物の層の形成を促進する。X1は、複素環基、アミン基、アミド基、チオエーテル基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、ビニル基、SH基、アルキル基、水素および、これらの誘導体からなる群から選択される官能基であり、L1は、2価の基である。X1およびL1は、上述した通りであるため、説明を省略する。
【0076】
なお、X1がイミダゾリン基である場合、有機物は、例示的には、トリエトキシ-3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピルシラン、トリメトキシ-3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピルシラン、トリアルコキシ-3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピルシラン、トリアルコキシ-3-(2-イミダゾリン-1-イル)アルキルシラン、トリアルコキシ-2-メチル-2-イミダゾリン-プロピルシラン、トリアルコキシ-2-フェニル-2-イミダゾリン-プロピルシラン等であり得る。これらであれば、高収率で上述の層状ケイ酸化合物からなる層状無機-有機共有結合体の粒子が得られる。
【0077】
ステップAにおいて、金属元素の塩または水酸化物とケイ素を含有する有機物とを、モル比で、金属元素の塩または水酸化物:ケイ素を含有する有機物=3:2.5~3:5を満たすように混合する。これにより、金属元素の塩または水酸化物とともに、後述の水熱合成によって、上述の化学式(1)によって表される層状無機-有機共有結合体の粒子が促進する。
【0078】
ステップAにおいて、分散媒として、蒸留水、ミリQ(登録商標 MILLI-Q)水、脱イオン水、超純水等とともに原料を混合してもよいし、ステップS420において混合物を分散媒に分散させ、水熱合成を行ってもよい。
【0079】
分散媒に、メタノール、エタノール等のアルコール、トルエン、ヘキサン、ベンゼン等の有機溶媒、塩酸、硝酸等の酸、アンモニア、水酸化ナトリウム等の塩基を含有させてもよい。これにより、合成反応を促進・制御できる。これらの添加量は、0.0001wt%以上95wt%以下の範囲である。
【0080】
ステップBにおいて、水熱合成は、好ましくは、混合物を20℃以上200℃以下の温度範囲で加熱する。この範囲であれば、反応が促進し得る。好ましくは、80℃以上200℃以下、より好ましくは、140℃以上200℃以下の温度範囲で加熱する。これにより、反応がさらに促進し得る。加熱時間は、特に制限はないが、1時間以上10日間以内の間である。1時間未満では反応が十分でなく、収率が低くなり得る。10日を超えて加熱しても、反応はそれ以上進まないため、非効率である。好ましくは、加熱時間は、10時間以上7日以内の間である。
【0081】
ステップCにおいて、電子線の照射は、好ましくは、生成物に、1kV以上200kV以下の範囲の加速電圧で、10pA以上10mA以下の範囲の電流で電子線を照射する。これにより、金属粒子の成長を促進させることができる。電子線の照射は、より好ましくは、50kV以上150kV以下の範囲の加速電圧で、50pA以上200pA以下の範囲の電流で電子線を照射する。なおさらに好ましくは、75kV以上125kV以下の範囲の加速電圧で、70pA以上110pA以下の範囲の電流で電子線を照射する。電子線の照射には、電子線源を備える任意の装置を使用できるが、例示的には、電子線照射装置、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡等である。
【0082】
再度図4に戻る。
ステップS410において、粒子分散液の分散媒は、メタノール、エタノール、および、水からなる群から選択される。これらの分散媒は、層状無機-有機共有結合体の粒子を剥離させたり、膨潤させたりすることがないため、後述のステップS420においてメタロ超分子ポリマーが粒子の層間にインターカレートすることを効果的に抑制できる。
【0083】
ステップS410において、粒子分散液中の粒子濃度は、好ましくは、0.05mg/mL以上10mg/mL以下の範囲である。この範囲であれば、粒子分散液中に粒子が良好に分散し、粒子表面にメタロ超分子ポリマーの被覆を促進できる。粒子分散液中の粒子濃度は、より好ましくは、0.1mg/mL以上5mg/mL以下の範囲であり、なおさらに好ましくは、1mg/mL以上5mg/mL以下の範囲である。これにより、酸化還元電位が安定化し、メモリ保持特性に優れた複合粒子を提供できる。
【0084】
ステップS420:メタロ超分子ポリマーを含有するポリマー溶液を調製する。このようなメタロ超分子ポリマーは、上述したとおりであるため、説明を省略する。メタロ超分子ポリマーは、例えば、特許文献1および特許文献2を参照して合成した有機/金属ハイブリッドポリマー(メタロ超分子ポリマー)を用いることができる。
【0085】
ステップS420において、ポリマー溶液の溶媒は、後述するステップS410における粒子分散液の分散媒と親和性があり、かつ、メタロ超分子ポリマーを溶解するものであれば、特に制限はないが、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトンおよび水からなる群から選択される。より好ましくは、ステップS410の分散媒と同一の溶媒が選択される。
【0086】
ステップS420において、ポリマー溶液中のメタロ超分子ポリマー濃度は、好ましくは、2mg/mL以上4mg/mL以下の範囲である。この範囲であれば、メタロ超分子ポリマー中にメタロ超分子ポリマーが良好に分散し、粒子表面にメタロ超分子ポリマーの被覆を促進できる。ポリマー溶液中のメタロ超分子ポリマー濃度は、より好ましくは、2.5mg/mL以上3.5mg/mL以下の範囲でる。これにより、酸化還元電位が安定化し、メモリ保持特性に優れた複合粒子を提供できる。
【0087】
ステップS430:ステップS410で得られた粒子分散液と、ステップS420で得られたポリマー溶液とを混合し、攪拌する。単に混合し、攪拌するだけで、上述の本発明の複合粒子が得られるため、有利である。
【0088】
混合は、好ましくは、粒子に対するメタロ超分子ポリマーの質量比が、好ましくは、0.1以上40以下の範囲を満たすよう行われる。これにより、メタロ超分子ポリマーによる粒子の被覆を促進し得る。より好ましくは、粒子に対するメタロ超分子ポリマーの質量比は、0.6以上30以下の範囲を満たし、なおさらに好ましくは、0.6以上5以下の範囲である。これにより、酸化還元電位が安定化し、メモリ保持特性に優れた複合粒子を提供できる。
【0089】
攪拌は、特に制限はないが、例示的には、室温(15℃以上30℃以下の温度範囲)、12時間以上36時間の間、行ってよい。攪拌には、マグネチックスターラなどの撹拌子を用いた攪拌であってよい。
【0090】
ステップS440:ステップS430で得られた混合液から溶媒を除去する。このような溶媒の除去は特に制限はないが、例示的には、15℃以上50℃以下の温度範囲で大気中12時間以上48時間以下の時間行えばよい。これにより、不要な溶媒が除去され、本発明の複合粒子が得られる。
【0091】
なお、ステップS410とステップS420とは順番を問わない。また、ステップS440に先立って、混合液を基板等に塗布してもよい。これにより、本発明の複合粒子からなる薄膜を提供できる。塗布は、スピンコート、キャスト、スプレー、印刷等任意の手段を採用してよい。
【0092】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1で説明した本発明の複合粒子をエレクトロクロミック層に用いたエレクトロクロミックデバイスについて説明する。
【0093】
図5は、本発明のエレクトロクロミックデバイスを示す模式図である。
【0094】
図5のエレクトロクロミックデバイス500は、第1の電極510と、第1の電極510上に位置するエレクトロクロミック層520と、エレクトロクロミック層520上に位置する電解質層530と、電解質層530上に位置する第2の電極540とを備える。ここで、エレクトロクロミック層520は、実施の形態1で説明した本発明の複合粒子を含有する。
【0095】
第1の電極510および第2の電極540の少なくとも一方は、任意の透明電極であるが、電極材料として、SnO膜、In膜またはInとSnOとの混合物であるITO膜が好ましい。第1の電極510および第2の電極540は、任意の物理的気相成長法または化学的気相成長法によって、ITO等の透明電極材料をプラスチック等の樹脂基板、ガラス基板等の透明基板上に形成することによって得られる。
【0096】
エレクトロクロミック層520は、上述したように実施の形態1で説明した本発明の複合粒子を含有し、本発明の複合粒子については説明を省略する。
【0097】
電解質層530は、少なくとも、高分子および支持塩を含有する。好ましくは、電解質層530は、炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチレン、γ-ブチロラクトン、および、スクシノニトリルからなる群から選択される可塑剤を含有する。これにより、高分子のネットワークに上述の可塑剤および支持塩が存在し、ゲル電解質層を構成できるので、フレキシブルなエレクトロクロミックデバイスを提供できる。
【0098】
より好ましくは、電解質層530は、アセトニトリル、アセトン、および、テトラヒドロフランからなる群から選択される溶媒に上述の高分子および支持塩を溶解させ、キャストしたのちに溶媒を除去することで作製される。これにより、高分子、可塑剤、および、支持塩が均一に分散して存在したゲル電解質層を構成できるので、エレクトロクロミックデバイス特性の向上と安定化につながる。
【0099】
高分子は、好ましくは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(ビニリデンフルオライド-co-ヘキサフルオロイソプロピル)(PVdF-co-PHFP)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリカーボネート、および、ポリアクリロニトリルからなる群から選択される。これらの高分子はゲル電解質層の構成に有利である。
【0100】
支持塩は、好ましくは、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、リチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(LiTFSI)、LiCHCOO、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClOおよびMg(BFからなる群から選択される。これらの支持塩は、本発明の複合粒子におけるメタロ超分子ポリマーのカウンターアニオンとして効果的に機能する。
【0101】
本発明のエレクトロクロミックデバイス500は、エポキシ樹脂および/またはシリコン樹脂からなる封止剤により封止されていてもよい。これにより、エレクトロクロミックデバイス500の酸素や水に対するバリア性が向上する。
【0102】
本発明のエレクトロクロミックデバイス500は、次のように動作する。第1の電極510および第2の電極540が電源(図示せず)に接続され、エレクトロクロミック層520と電解質層530とに所定の電圧を印加する。これにより、エレクトロクロミック層520の酸化還元を制御できる。すなわち、エレクトロクロミック層520を構成する本発明の複合粒子におけるメタロ超分子ポリマーの金属イオンの酸化還元が制御され、発色および消色を発現できる。
【0103】
ここで、エレクトロクロミック層520が、本発明の複合粒子を含有するので、低い動作電圧で動作し、メモリ特性に優れたエレクトロクロミックデバイス500が提供される。メモリ特性の向上により、省電力化が期待される。
【0104】
本発明のエレクトロクロミックデバイス500は、第1の電極510(図5)上に少なくとも実施の形態1で説明した本発明の複合粒子を含有するエレクトロクロミック層520(図5)を形成し、次いで、この上に電解質層530(図5)および第2の電極540(図5)を形成することによって製造される。
【0105】
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
【実施例0106】
[メタロ超分子ポリマーの合成]
メタロ超分子ポリマーとして次式で示される高分子材料を用いた。高分子材料は、特許文献1あるいはF.S.HanらのJ.Am.Chem.Soc.,2008,130(6),pp2073-2081を参照し、東京化成工業株式会社が製造した。以降では、簡単のため、メタロ超分子ポリマーをpolyFeと称する場合がある。
【0107】
【化6】
【0108】
[ケイ酸化合物と有機基とが共有結合した層状無機-有機共有結合体の粒子の合成]
層状無機-有機共有結合体の粒子は、以下のようにして調製された。まず、酢酸ニッケルと、トリエトキシ-3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピルシランとを、3:4のモル比で混合し、水熱合成装置を用い、170℃で6日間、水熱合成を行った。
【0109】
得られた試料について発光分光分析装置(ICP-OES、日立ハイテクサイエンス製、SPS3520UV-DD)を用いて組成分析を行ったところ、次式で表された。
(M x1 n+,mHO)(M x2 x3)R(Si x4)O(OH)
ここで、M、M、MおよびMは、Niであり、Rは有機基(ここではトリエトキシ-3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピルシラン)であり、nは、2であり、m、x1、x2、x3、x4、z、k、pおよびqは、それぞれ、0≦m≦12、x1=0.9、x2=0、x3=3、x4=0、z=3.5、k=3.5、9≦p≦11、1.5≦q≦5を満たすことを確認した。
【0110】
得られた試料についてX線回折(XRD、リガク製、Rigaku RINT-2200HF)を行ったところ、低角側に複数のピークがみられ、最も低角に現れるピークのd値が層間距離に相当し、19Åであった。
【0111】
電界放出形走査電子顕微鏡(SEM、JSM-6500F、日本電子株式会社製)により観察した。結果を図6に示す。
【0112】
図6は、層状無機-有機共有結合体の粒子のSEM像を示す図である。
【0113】
図6によれば、層状の粒子であることが分かった。SEM像から、粒子どうしが重なり合っていないものを無作為に1000個選んでImage J(ver. 1.51n;オープンソースでパブリックドメインの画像処理ソフトウェア)によって粒径を測定した。次いで、得られた粒径から、粒子が球であると仮定したときの体積を算出し、体積の累積体積50容量%における体積累積粒径(D50、メジアン径)を算出したところ、100μmであった。
【0114】
なお、得られた層状無機-有機共有結合体の粒子に、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL製、JEM-1010)を用いて、電子線を照射した(加速電圧100kV、電流90pA、照射時間60秒)ところ、Ni粒子の生成をSADパターンおよびTEM像により確認した。例1~例5では、電子線照射前の層状無機-有機共有結合体の粒子を用いた。
【0115】
[例1~例5]
例1~例4について、以下のようにして試料を調製した。層状無機-有機共有結合体の粒子を分散媒としてメタノールに分散させ、表1に示す種々の濃度の粒子分散液を調製した(図4のステップS410)。メタロ超分子ポリマー(polyFe)をメタノールに溶解させ、表1に示す種々の濃度のポリマー溶液を調製した(図4のステップS420)。次いで、表1に示す質量比を満たすように、粒子分散液とポリマー溶液とを混合し、マグネチックスターラを用いて、室温で24時間攪拌した(図4のステップS430)。混合溶液後、一部の溶液について溶媒を乾燥させ、粉末試料を、一部の溶液をキャストによって基板上に塗布し、溶媒を乾燥させ、薄膜試料を得た(図4のステップS440)。なお、基板には、ITO基板(インジウムスズ酸化物(ITO)でコートされたガラス基板、抵抗率=8~12Ω/cm、2.5cm×2.5cm、igma-Aldrich Co.LLC製)を用いた。
【0116】
例5について、層状無機-有機共有結合体の粒子を使用しない以外は、例1~例4と同様であった。
【0117】
【表1】
【0118】
粉末試料についてSEM像およびXRD回折を行った。SEM像からImage Jを用いてメジアン径(D50)を算出した。結果を表2および図7図9に示す。
【0119】
図7は、例1の試料のSEM像を示す図である。
図8は、例2の試料のSEM像を示す図である。
図9は、例3の試料のSEM像を示す図である。
【0120】
図7図9図6とを比較すると、例1~例3の試料の表面は、いずれも、層状無機-有機共有結合体の粒子のそれと比較して、平滑であった。このことは、層状無機-有機共有結合体の粒子の表面がメタロ超分子ポリマーで被覆されていることを示す。表2によれば、例1~例4の試料は、0.3μm以上30μm以下の範囲の粒径(D50)を有した。原料に用いた層状無機-有機共有結合体の粒子の粒径よりも小さくなったのは、調製時の攪拌中に凝集あるいは積層した高次粒子が壊れたためと考える。さらに、例1~例4の試料のXRDパターン(図示せず)は、層状無機-有機共有結合体の粒子と同様のXRDパターンを示し、d値はいずれも19Åであった。図示しないが、電子線照射後の層状無機-有機共有結合体の粒子を用いた場合も、例1~例3と同様に平滑な表面が確認された。
【0121】
【表2】
【0122】
以上から、例1~例4の試料は、層状無機-有機共有結合体の粒子と、粒子を被覆するメタロ超分子ポリマーとを含有する複合粒子であり、層状無機-有機共有結合体の粒子の層間にメタロ超分子ポリマーはインターカレートしていないことが分かった。
【0123】
次に、例1~例5の試料の動作電位を、サイクリックボルタモグラム測定装置CV50W(BAS製、Japan)を用いて調べた。測定用の作用電極は、グラッシーカーボン電極に例1~例5の試料(1mg、0.5ml)が分散したメタノール20μlを滴下し、乾燥させて調整した。対極としてPtカウンター電極を、参照電極としてAg/Ag+を、電解溶液としてACN/TBAP(過塩素酸テトラブチルアンモニウム)を用いた。いずれも電極は、BAS製であった。電位は、0~1.5V vs.Ag/Ag+の範囲で印加し、電位の挿引速度は、0.1V/sであった。結果を図10に示す。図10から酸化還元電位を算出した。結果を図11に示す。
【0124】
図10は、例1~例3および例5の試料のサイクリックボルタモグラムを示す図である。
図11は、図10から算出した例1~例3および例5の試料の酸化還元電位を示す図である。
【0125】
図10および図11によれば、例1~例3の試料の酸化還元電位(E/2)は、例5のそれに比べて小さく、動作電圧が低減することが分かった。組成の制御により、酸化還元電位が安定化し得ることが分かった。図示しないが、電子線照射後の層状無機-有機共有結合体の粒子を用いた場合も、例1~例3と同様に動作電圧の低減が確認された。
【0126】
【表3】
【0127】
次に、ITO基板(図5の第1の電極510)上に形成した例1~例5の薄膜(図5のエレクトロクロミック層520)を用いてエレクトロクロミックデバイス500(図5)を製造し、エレクトロクロミック特性を調べた。なお、例1~例4の薄膜中には粒子が分散している様子が認められたが、均一な層であった。
【0128】
詳細には次のようにしてエレクトロクロミックデバイスを製造した。第2の電極540(図5)として別のITO基板(2.5cm×2.5cm)上に、電解質層530(図5)を形成した。過塩素リチウム(LiClO、関東化学株式会社製)をアセトニトリル(ACN、富士フイルム和光純薬株式会社製)に溶解し、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA、重量平均分子量=350kg/mol、Sigma-Aldrich Co.LLC.製)添加して、PMMAが完全に溶解するまで激しく撹拌し、電解質材料を得た。この電解質材料は、無色、透明な半ゲル状の粘性の液体であった。なお、PMMAとLiClOとACNとの重量比は、7:3:27:70であった。この電解質材料をドロップキャスト法で別のITO電極に付与し、電解質層を形成した。
【0129】
次いで、エレクトロクロミック層と電解質層とが対向するようにITO電極を貼り合わせ、室温で72時間放置し、不溶な溶媒を除去し、エレクトロクロミックデバイス500(図5)を得た。
【0130】
エレクトロクロミックデバイスに所定の電圧(-3から3V)を印加しながら、UV-VISスペクトロメータ(UV2600、Shimadzu、Japan)を用いて、透過モードで紫外・可視吸収スペクトルを波長300nm~900nmの範囲にて測定した。結果を図12(A)および図13(A)に示す。
【0131】
次に、得られたエレクトロクロミックデバイスについて、エレクトロクロミック特性を調べた。得られたエレクトロクロミックデバイスに電圧を印加し、その発色の変化を確認した。結果を図12(B)および図13(B)に示す。
【0132】
得られたエレクトロクロミックデバイスを閉回路および開回路にてメモリ特性を調べた。電圧(+3.0V)を印加後、電圧を除去してからの透過率の変化と時間との関係を調べた。結果を図14および図15ならびに表4に示す。
【0133】
図12は、例3のエレクトロクロミックデバイスの透過率の変化(A)および発色の変化(B)を示す図である。
図13は、例5のエレクトロクロミックデバイスの透過率の変化(A)および発色の変化(B)を示す図である。
【0134】
図12(A)および図13(A)によれば、還元状態(電圧を印加しない状態)では波長584.6nmに吸収のピークを有したが、酸化状態(電圧を+0.75V印加した状態)ではこのピークがなくなった。これは、polyFe中の鉄イオンがFe2+からFe3+となったためである。図12(B)および図13(B)に示すように、還元状態では、紫色の発色(図12(B)および図13(B)の左図)を示し、エレクトロクロミックデバイスに0Vから+3Vまで印加し、挿引したところ、+0.75V印加した時点で、酸化反応を起こし、紫色の発色が消色し、無色となった(図12(B)および図13(B)右図)。このように目視にて色の発色および消色が確認された。図示しないが、例1、例3および例4のエレクトロクロミックデバイスについても同様の変化を示した。これは、メタロ超分子ポリマー(ここではpolyFe)に基づく特性であり、層状無機-有機共有結合体の粒子をメタロ超分子ポリマーで被覆した複合粒子は、メタロ超分子ポリマーのエレクトロクロミック特性を維持し得ることが示された。
【0135】
なお、図12および図13は、グレースケールで示すが、図12(B)および図13(B)左図においてコントラストが暗く示される領域が、紫色の発色に相当し、右図においてコントラストが明るく示される領域が、紫色の発色が消色し、無色となった領域である。
【0136】
図14は、例3のエレクトロクロミックデバイスのメモリ特性を示す図である。
図15は、例5のエレクトロクロミックデバイスのメモリ特性を示す図である。
【0137】
図14(A)および図15(A)は、閉回路のエレクトロクロミックデバイスにおけるメモリ特性を示し、図14(B)および図15(B)は、開回路のエレクトロクロミックデバイスにおけるメモリ特性を示す。
【0138】
図14図15とを比較すると、驚くべきことに、例3のエレクトロクロミックデバイスのメモリ特性は、開回路および閉回路のいずれにおいても、例5のエレクトロクロミックデバイスのそれに比べて顕著に向上した。表4に示すように、例1および例4のエレクトロクロミックデバイスのメモリ特性も向上した。
【0139】
【表4】
【0140】
以上説明してきたように、本発明のケイ酸化合物と有機基とが共有結合した層状無機-有機共有結合体の粒子と、それを被覆するメタロ超分子ポリマーとを含有する複合粒子は、メタロ超分子ポリマーの有するエレクトロクロミック特性を維持し得、特に酸化還元電位を安定化するため、このような複合粒子をエレクトロクロミック層に用いれば、メモリ特性が向上した省電力化可能なエレクトロクロミックデバイスを提供できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の複合粒子は、低い動作電圧でエレクトロクロミズムを発現し、かつ、優れたメモリ特性を有するので、その発色および消色を利用した任意の装置に可能であり、具体的には、表示素子、調光素子、電子ペーパに適用可能である。を提供できる。
【符号の説明】
【0142】
100 複合粒子
101 層状無機-有機共有結合体
102 粒子
103 メタロ超分子ポリマー
110 ケイ素化合物の層
120 有機基
130 金属粒子
210 陽イオン八面体シート
220 ケイ素系シート
500 エレクトロクロミックデバイス
510 第1の電極
520 エレクトロクロミック層
530 電解質層
540 第2の電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15