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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033774
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/95 20130101AFI20230306BHJP
【FI】
A61F2/95
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139659
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】大塚 渉
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 偉師
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA45
4C267AA49
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB08
4C267BB52
4C267CC07
4C267HH09
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】留置具の自然状態の形状を良好に維持することが可能な構造の医療器具を提供する。
【解決手段】医療器具100は、管状の留置具10と、留置具10に挿通されているインナーカテーテル20と、を有する医療器具100であって、インナーカテーテル20は樹脂チューブであり、インナーカテーテル20において、留置具10に挿通されている領域は、樹脂中に点在している複数の空隙25を有しており当該インナーカテーテル20の軸方向に対して交差する方向への屈曲が容易な柔軟部30を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の留置具と、前記留置具に挿通されているインナーカテーテルと、を有する医療器具であって、
前記インナーカテーテルは樹脂チューブであり、
前記インナーカテーテルにおいて、前記留置具に挿通されている領域は、樹脂中に点在している複数の空隙を有しており当該インナーカテーテルの軸方向に対して交差する方向への屈曲が容易な柔軟部を有する医療器具。
【請求項2】
前記複数の空隙は、周方向及び軸方向において分散して配置されている請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記複数の空隙は、それぞれ周方向に延在している請求項2に記載の医療器具。
【請求項4】
前記複数の空隙は、それぞれ軸方向に延在している請求項2に記載の医療器具。
【請求項5】
前記柔軟部は、前記空隙を間に挟んで互いに対向している一対の壁面を有し、
前記一対の壁面の対向方向に視たときの当該一対の壁面の形状が実質的に互いに等しい請求項1から4のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項6】
前記柔軟部は、前記一対の壁面どうしを繋いでいる複数の紐状部を有する請求項5に記載の医療器具。
【請求項7】
前記インナーカテーテルの内腔は、当該インナーカテーテルの管壁によって、外部から液密に遮蔽されている請求項1から6のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項8】
前記柔軟部は、前記インナーカテーテルの軸方向における中間部に配置されており、
前記インナーカテーテルにおいて前記柔軟部よりも先端側の部分と前記柔軟部との境界には外形に段差が無く、
前記インナーカテーテルにおいて前記柔軟部よりも基端側の部分と前記柔軟部との境界にも外形に段差が無い請求項1から7のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項9】
前記柔軟部は、前記インナーカテーテルの軸方向における中間部に配置されており、
前記柔軟部は、前記インナーカテーテルにおいて前記柔軟部よりも先端側の部分と比べて細径であり、前記インナーカテーテルにおいて前記柔軟部よりも基端側の部分と比べて細径である請求項8に記載の医療器具。
【請求項10】
前記柔軟部は、前記インナーカテーテルの軸方向における中間部に配置されており、
前記インナーカテーテルの軸方向における位置を第1軸とし、前記インナーカテーテルの軸方向における各部の曲げ剛性を第2軸とするプロファイルについて、
前記インナーカテーテルにおいて前記柔軟部よりも先端側の部分と前記柔軟部との境界では、連続的に曲げ剛性が変化しており、かつ前記先端側の部分は前記柔軟部よりも曲げ剛性が高く、
前記インナーカテーテルにおいて前記柔軟部よりも基端側の部分と前記柔軟部との境界でも、連続的に曲げ剛性が変化しており、かつ前記基端側の部分は前記柔軟部よりも曲げ剛性が高い請求項1から9のいずれか一項に記載の医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療器具としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。
特許文献1の医療器具(同文献には、ステントデリバリーシステムと記載)は、管状の留置具(同文献には、ステントと記載)と、留置具に挿通されているインナーカテーテル(同文献には、ガイドカテーテルと記載)と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-297502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、特許文献1の技術は、留置具の自然状態の形状を維持する構造について、なお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、留置具の自然状態の形状を良好に維持することが可能な構造の医療器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、管状の留置具と、前記留置具に挿通されているインナーカテーテルと、を有する医療器具であって、
前記インナーカテーテルは樹脂チューブであり、
前記インナーカテーテルにおいて、前記留置具に挿通されている領域は、樹脂中に点在している複数の空隙を有しており当該インナーカテーテルの軸方向に対して交差する方向への屈曲が容易な柔軟部を有する医療器具が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、留置具の自然状態の形状を良好に維持することが可能な構造の医療器具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る医療器具の全体構成を示す図である。
図2】実施形態に係る医療器具における留置具及びその周辺構造を示す側面図である。
図3】実施形態における留置具の側面図である。
図4】実施形態におけるインナーカテーテルの側面図であり、柔軟部及びその周辺構造を示している。
図5】実施形態における柔軟部及びその周辺構造を示す断面図である。
図6図4に示すA部の部分拡大図である。
図7】実施形態における空隙の部分拡大図である。
【0009】
先ず、図1から図7を用いて実施形態を説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。なお、図3では、留置具10の自然状態の形状を示しており、図4では、インナーカテーテル20の自然状態における形状を示している。また、図5は、インナーカテーテル20の軸方向に沿った断面図である。また、図7において、紙面の上下方向がインナーカテーテル20の径方向であり、紙面の左右方向がインナーカテーテル20の軸方向である。
また、本発明の医療器具100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要は無く、一つの構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
以下の説明において、先端部21とは、医療器具100のインナーカテーテル20において、当該インナーカテーテル20の挿入先端側の端(遠位端)を含む所定の長さの領域をいう。また基端部とは、インナーカテーテル20の各部において、インナーカテーテル20の基端側の端(近位端)を含む所定の長さの領域をいう。また、先基端方向とは、インナーカテーテル20の長手方向である。軸心とは、インナーカテーテル20の長手方向に沿った中心軸を意味する。
また、以下において、インナーカテーテル20の軸方向を単に軸方向と称したり、インナーカテーテル20の径方向を単に径方向と称したりする場合がある。
また、医療器具100の各部の形状の説明は、特に断りが無い限り、外力が付与されていない自然状態での形状を説明したものである。
【0010】
本実施形態に係る医療器具100は、管状の留置具10と、留置具10に挿通されているインナーカテーテル20と、を有する。
図6及び図7に示すように、インナーカテーテル20は樹脂チューブであり、インナーカテーテル20において、留置具10に挿通されている領域は、樹脂中に点在している複数の空隙25を有しており当該インナーカテーテル20の軸方向に対して交差する方向への屈曲が容易な柔軟部30を有する。
【0011】
本実施形態の場合、インナーカテーテル20が留置具10に収容されている状態において、インナーカテーテル20における留置具10に挿通されている部分は、留置具10の形状と対応する形状となって当該留置具10に収容されている。
そして、医療器具100は、生体管腔の内部における所望の部位に留置具10を留置するために用いられる。留置具10及びインナーカテーテル20が生体の所望の部位に挿入された後、インナーカテーテル20が留置具10から抜去されることによって、留置具10は、上記所望の部位に留置される。この状態において、留置具10は、自然状態の形状(図3に示す形状)もしくは自然状態に近い形状となっている。
【0012】
本実施形態によれば、インナーカテーテル20は、当該インナーカテーテル20の軸方向に対して交差する方向への屈曲が容易な柔軟部30を、留置具10に挿通されている領域に有する。これにより、インナーカテーテル20が留置具10に挿通されている状態において、インナーカテーテル20は留置具10の形状に良好に追従して屈曲することができるので、留置具10がインナーカテーテル20の形状に変形してしまうことを抑制できる。よって、留置具10の自然状態の形状を良好に維持することができる。
より詳細には、柔軟部30は、複数の空隙25を有していることによって、インナーカテーテル20における柔軟部30以外の部分と比較してより曲げ剛性が低くなっている。このため、柔軟部30は、インナーカテーテル20の軸方向に対して交差する方向への屈曲が容易となっている。
なお、ここでいう曲げ剛性とは、部材の断面形状と大きさで決まる断面二次モーメントと、その材料のヤング率との積で表される。
【0013】
本実施形態の場合、一例として、留置具10はステントである。ただし、留置具10は、例えば、ステントグラフトであってもよい。
【0014】
本実施形態の場合、留置具10は、予め屈曲形状に賦形された屈曲部15を有し、屈曲部15に柔軟部30が挿通されている。
留置具10が屈曲部15を有することによって、生体管腔の内壁に対する留置具10のアンカー性が良好となる。また、屈曲部15には柔軟部30が挿通されているので、屈曲部15が柔軟部30の形状に変形してしまうことを抑制できる。よって、留置具10のアンカー性を良好に維持することができる。
【0015】
留置具10は、長尺な中空の管状部材である。図3に示すように、留置具10は、先端部11と、基端部12と、先端部11と基端部12との間に位置する中間部13と、を有する。例えば、このうち、先端部11と基端部12とが、それぞれ屈曲部15を構成している。ただし、本発明はこの例に限らず、留置具10の先端部11と基端部12とのうちいずれか一方が屈曲部15を構成していてもよい。
中間部13は、例えば、直線状に延在している。中間部13の先端は、先端部11の基端と接続されており、中間部13の基端は、基端部12の先端と接続されている。
先端部11と基端部12とは、例えば、中間部13を基準として、互いに先基端方向において略対称形状に形成されている。より詳細には、先端部11及び基端部12は、例えば、中間部13の軸方向において中間部13から遠ざかる方向に向けて凸の円弧状に、それぞれ形成されている。
先端部11の一般角R1と基端部12の一般角R2とは、例えば、互いに同等の角度に設定されている。より詳細には、一例として、先端部11の中心角(一般角R1)及び基端部12の中心角(一般角R2)の各々は、200度前後であることが挙げられる。
先端部11の曲率半径と基端部12の曲率半径とは、例えば、互いに同等の曲率半径に設定されている。すなわち、先端部11と基端部12とは、例えば、互いに同一形状に形成されている。
ただし、先端部11と基端部12とは、例えば、互いに異なる形状に形成されていてもよい。すなわち、先端部11の一般角R1と基端部12の一般角R2とは、例えば、互いに異なる角度に設定されてもよいし、先端部11の曲率半径と基端部12の曲率半径とは、例えば、互いに異なる曲率半径に設定されていてもよい。
また、留置具10は、屈曲部15を有しておらず、その全体が略直線状に形成されていてもよい。
また、先端部11の外周面及び基端部12の各々の外周面10bには、例えば、複数(例えば、5つ)の開口部17が形成されている。開口部17は、例えば、留置具10の軸方向に対して直交する方向を深さ方向とする側孔であり、留置具10の外周面10bに開口している。
【0016】
また、図1図2及び図3に示すように、留置具10には、例えば、基端部12の配置領域を示すマーキング部19が形成されている。なお、図1図2及び図3において、マーキング部19の形成箇所には、ドットの網掛けを付している。
マーキング部19の位置を指標とすることにより、例えば、内視鏡による撮影画像を介して生体管腔内における基端部12の位置を適確に認識することができる。
マーキング部19は、例えば、インクを塗布することによって形成されている。インクの色は特に限定されないが、一例として、黒色である。
また、例えば、マーキング部19は、白金やタングステンなどのX線不透過性の材料からなるインクやリング部材によって構成されていてもよい。
【0017】
留置具10は、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、シリコーン、ポリアミド、ポリアミドイミド、塩化ビニル、ポリエーテルスルホンなどの樹脂材料によって構成されている。特に留置具10をポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアミドイミドなどの樹脂材料で構成することにより、留置具10の加工性が良好となる。
【0018】
留置具10の外周面には、例えば、親水層(不図示)が形成されていることも好ましい。これにより、医療器具100が生体管腔に挿入される際の摺動抵抗を低減することができる。
親水層は、留置具10の全長に亘って形成されていてもよく、または留置具10の先端側における一部の長さの領域に形成されていてもよい。
親水層の材料は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)などの無水マレイン酸系ポリマーやその共重合体、ポリビニルピロリドンなどの親水性の樹脂材料であることが挙げられる。
【0019】
留置具10の全長は、特に限定されないが、30mm以上1000mm以下であることが好ましく、50mm以上500mm以下であることが更に好ましい。
留置具10の外径は、特に限定されないが、1.5mm以上5mm以下であることが好ましい。
留置具10の先端部11及び基端部12の各々の長さ寸法(軸方向における寸法)は、特に限定されないが、30mm以上100mm以下であることが好ましい。
留置具10の先端部11及び基端部12の各々の一般角R1、R2は、特に限定されないが、150度以上540度以下であることが好ましい。
留置具10の先端部11及び基端部12の各々の曲率半径は、特に限定されないが、5mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0020】
本実施形態の場合、例えば、留置具10は、その内径及び外径は略一定であり、したがってその肉厚は略一定である。ただし、後述するように、留置具10の最先端部の内径及び外径の各々は軸方向において変化していてもよい。
また、留置具10の内径は、インナーカテーテル20の外径よりも大きいことが好ましい。これにより、インナーカテーテル20に対する留置具10の着脱を容易に行うことができる。
【0021】
図4に示すように、インナーカテーテル20は、長尺な中空の管状部材である。また、自然状態におけるインナーカテーテル20(ただし、柔軟部30を除く)は、例えば、略直線状に形成されている。
本実施形態の場合、インナーカテーテル20は、留置具10に対して軸方向に摺動させることによって抜去可能に当該留置具10に挿通されている。
初期状態では、インナーカテーテル20の少なくとも柔軟部30は、留置具10に挿通されている。この状態において、インナーカテーテル20は、例えば、屈曲部15(先端部11及び基端部12)の屈曲形状に沿って屈曲している。また、インナーカテーテル20の先端部21及び基端部は、例えば、それぞれ留置具10から外部に露出している。
また、上述のように柔軟部30は樹脂中に点在している複数の空隙25を有しているが、インナーカテーテル20の内腔は、当該インナーカテーテル20の管壁によって、外部から液密に遮蔽されている。
これにより、例えば、インナーカテーテル20の内腔を介して、生理食塩水や薬液などの液体を体内に注入することができる。
より詳細には、図6に示すように、インナーカテーテル20は、当該インナーカテーテル20における空隙25では無い部分(樹脂)によって液密となっている。よって、インナーカテーテル20の内腔は、当該内腔内を流動する液体が、各空隙25を介してインナーカテーテル20から外部に漏洩しない構成となっている。
【0022】
柔軟部30は、例えば、インナーカテーテル20において、少なくとも留置具10の屈曲部15に挿通される領域に形成されていることが好ましい。より詳細には、本実施形態の場合、柔軟部30は、例えば、インナーカテーテル20において、少なくとも留置具10の先端部11に挿通される領域及び留置具10の基端部12に挿通される領域にそれぞれ形成されていることが好ましい。
ただし、柔軟部30は、例えば、インナーカテーテル20において、留置具10に挿通される領域36の全体に亘って形成されていてもよいし、当該領域36の一部分に形成されていてもよい。
本実施形態の場合、柔軟部30は、インナーカテーテル20の軸方向における中間部35に配置されている。なお、ここでいう中間部35とは、インナーカテーテル20の軸方向における先端部21と基端部(不図示)との間の部分であり、当該中間部35は、留置具10に挿通される領域36と、当該領域36よりも基端側の部分であり、留置具10に挿通されない領域37(留置具10に収容されている状態において、当該留置具10から露出している領域)と、を含んでいる。中間部35において、留置具10に挿通される領域36の先端は、例えば、先端部21の基端と接続されており、留置具10に挿通されない領域37の基端は、例えば、インナーカテーテル20の基端部の先端と接続されている。
そして、本実施形態の場合、柔軟部30は、例えば、中間部35における留置具10に挿通される領域36の全域に亘って配置されている。
一方、中間部35における留置具10に挿通されない領域37、インナーカテーテル20の先端部21及び基端部の各々は、例えば、柔軟部30の非形成領域となっている。
このため、柔軟部30の柔軟性を確保しつつも、インナーカテーテル20の良好なプッシャビリティを実現することができる。
なお、柔軟部30は、例えば、中間部35において、留置具10に挿通されている領域36の一部分に形成されていてもよいし、長手方向において互いに連続していない複数の部分に形成されていてもよく、更には、先端部21又は留置具10に挿通されない領域37にも存在していてもよい。
【0023】
本実施形態の場合、柔軟部30は、例えば、インナーカテーテル20において柔軟部30よりも先端側の部分(本実施形態の場合、先端部21)と比べて細径である。同様に、柔軟部30は、インナーカテーテル20において柔軟部30よりも基端側の部分27と比べて細径である。すなわち、柔軟部30の外径は、例えば、インナーカテーテル20において柔軟部30よりも先端側の部分(先端部21)及び柔軟部30よりも基端側の部分27の各々の外径よりも小さい寸法に設定されている。
これにより、柔軟部30の曲げ剛性をより低くすることができるので、インナーカテーテル20が留置具10に挿通されている状態において、インナーカテーテル20は留置具10の形状により良好に追従して屈曲することができる。
より詳細には、インナーカテーテル20において、留置具10に挿通される領域36(柔軟部30)の外径は、先端部21及び留置具10に挿通されない領域37(柔軟部30よりも基端側の部分27)の各々の外径よりも小さい寸法に設定されている。
【0024】
更に、本実施形態の場合、インナーカテーテル20において柔軟部30よりも先端側の部分(本実施形態の場合、先端部21)と柔軟部30との境界には外形に段差が無い。同容易に、インナーカテーテル20において柔軟部30よりも基端側の部分27と柔軟部30との境界にも外形に段差が無い。
これにより、インナーカテーテル20を留置具10から抜去する際にインナーカテーテル20の外周面と留置具10の内周面との間に生じる摩擦抵抗を、低減することができる。
より詳細には、本実施形態の場合、図4及び図6に示すように、柔軟部30と先端部21との境界部24aは、例えば、先端側から基端側に向けて外径及び内径がテーパ状に縮径している。同様に、柔軟部30と基端部との境界部24bは、例えば、基端側から先端側に向けて外径及び内径がテーパ状に縮径している。
【0025】
柔軟部30の内径及び外径の各々は、例えば、軸方向における位置にかかわらず略一定となっている。同様に、先端部21(ただし、最先端部を除く)の内径及び外径の各々は、例えば、軸方向における位置にかかわらず略一定となっており、インナーカテーテル20において柔軟部30よりも基端側の部分27の内径及び外径の各々は、例えば、軸方向における位置にかかわらず略一定となっている。ただし、先端部21の先端部(インナーカテーテル20の最先端部)の内径及び外径の各々は、例えば、基端側から先端側に向けて外径及び内径が縮径しているテーパ状となっていてもよい。
また、インナーカテーテル20における柔軟部30よりも先端側の部分(先端部21)の外径は、例えば、インナーカテーテル20における柔軟部30よりも基端側の部分27の外径と同等の寸法に設定されている。
【0026】
ここで、本実施形態の場合、インナーカテーテル20の軸方向における位置を第1軸とし、インナーカテーテル20の軸方向における各部の曲げ剛性を第2軸とするプロファイル(以下、単にプロファイルと称する場合がある)について、インナーカテーテル20において柔軟部30よりも先端側の部分(本実施形態の場合、先端部21)と柔軟部30との境界(本実施形態の場合、境界部24a)では、連続的に曲げ剛性が変化しており、かつ先端側の部分(先端部21)は柔軟部30よりも曲げ剛性が高い。また、インナーカテーテル20において柔軟部30よりも基端側の部分27と柔軟部30との境界(本実施形態の場合、境界部24b)でも、連続的に曲げ剛性が変化しており、かつ基端側の部分(基端部)は柔軟部30よりも曲げ剛性が高い。
すなわち、インナーカテーテル20において柔軟部30よりも先端側の部分(先端部21)と柔軟部30との境界では、段差が無く連続的に曲げ剛性が変化している。同様に、インナーカテーテル20において柔軟部30よりも基端側の部分27と柔軟部30との境界でも、段差無く連続的に曲げ剛性が変化している。
これにより、柔軟部30から先端部21に向けてインナーカテーテル20の曲げ剛性が緩やかに変化する構成となるとともに、柔軟部30から基端部に向けてインナーカテーテル20の曲げ剛性が緩やかに変化する構成となる。このため、インナーカテーテル20が留置具10に挿通されている状態において、インナーカテーテル20は留置具10の形状に更に良好に追従して屈曲することができる。
【0027】
本実施形態の場合、図6に示すように、複数の空隙25は、周方向及び軸方向において分散して配置されている。
これにより、インナーカテーテル20において、複数の空隙25が分散している範囲の全体に対してバランスよく柔軟性を付与できる。
なお、図6においては、複数の空隙25の形状をそれぞれ模式的に示している。
【0028】
また、本実施形態の場合、複数の空隙25は、例えば、それぞれ周方向に延在している。換言すると、複数の空隙25は、例えば、それぞれ周方向において長尺となっている。
これにより、径方向におけるインナーカテーテル20の柔軟性を、より良好に確保することができる。よって、インナーカテーテル20は、より容易に軸方向に対して交差する方向へより屈曲することができる。
【0029】
ただし、本発明において、複数の空隙25は、この例に限定されず、例えば、それぞれ軸方向に延在していてもよい。換言すると、複数の空隙25は、例えば、それぞれ軸方向において長尺となっていてもよい。
このような構成によっても、径方向におけるインナーカテーテル20の柔軟性を、より良好に確保することができる。よって、インナーカテーテル20は、より容易に軸方向に対して交差する方向へより屈曲することができる。
【0030】
本実施形態の場合、図7に示すように、柔軟部30は、空隙25を間に挟んで互いに対向している一対の壁面28を有し、一対の壁面28の対向方向に視たときの当該一対の壁面28の形状が実質的に互いに等しい。
より詳細には、インナーカテーテル20の樹脂中において、一対の壁面28どうしによって空隙25が形成されている。換言すると、空隙25は、一対の壁面28どうしによって画定されている。
ただし、本発明において、柔軟部30は、必ずしも一対の壁面28を有していなくてもよく、空隙25は、例えば、略球形やその他の形状となっていてもよい。
【0031】
図6及び図7に示すように、一対の壁面28の各々の縦断面形状は、例えば、複数の凹凸を含んだ入り組んだ形状となっている。より詳細には、一対の壁面28の各々の縦断面形状は、例えば、周方向に延在した直線状ではなく、典型的には複数方向に屈曲した形状となっている。
更に詳細には、一対の壁面28の集合体の縦断面形状は、当該集合体の延在方向における両端側に向けて幅寸法(軸方向における寸法)が徐々に狭まる形状となっている。一対の壁面28のうちの一方の壁面28の延在方向における一端部と、他方の壁面28の延在方向における一端部と、は互いに接続されている。同様に、一対の壁面28のうちの一方の壁面28の延在方向における他端部と、他方の壁面28の延在方向における他端部と、は互いに接続されている。
ただし、本発明において、一対の壁面28の集合体の縦断面形状は、特に限定されず、例えば、上記以外の形状となっていてもよい。
本実施形態の場合、一対の壁面28の各々の板面は、例えば、およそ軸方向を向いており、したがって一対の壁面28の対向方向は、およそ軸方向である。ただし、本発明において、一対の壁面28の対向方向は、およそ軸方向に限定されず、後述するようにおよそ径方向であってもよいし、その他の方向であってもよい。
また、本実施形態の場合、柔軟部30は、少なくとも空隙25の一部分において、このような一対の壁面28を有していることが好ましい。換言すると、柔軟部30は、必ずしも空隙25の全体において、このような一対の壁面28を有していなくてもよい。
【0032】
また、柔軟部30は、例えば、一対の壁面28どうしを繋いでいる複数の紐状部29を有する。
これにより、一対の壁面28の対向方向におけるインナーカテーテル20の引っ張り強度を十分に確保することができる。
本実施形態の場合、上述のように、一対の壁面28は、およそ軸方向において互いに対向して配置されている。よって、各紐状部29は軸方向の成分を持つ方向に延在している。各紐状部29の延在方向における一端部は、一対の壁面28のうちの一方に接続されており、当該紐状部29の延在方向における他端は、一対の壁面28のうちの他方に接続されている。このような構成によれば、軸方向におけるインナーカテーテル20の引っ張り強度を十分に確保することができる。
なお、各紐状部29は、例えば、直線状となっていてもよいし、屈曲形状となっていてもよい。また、各紐状部29の一部分は、例えば、複数方向に分枝していてもよい。
【0033】
このような空隙25を形成する手法としては、特に限定されないが、例えばインナーカテーテル20の成形体を軸方向に牽引することによって形成する手法や、インナーカテーテル20を成形する際に発泡剤を樹脂中に混在させる手法等を用いることができる。
なお、インナーカテーテル20を軸方向に牽引することによって空隙25を形成する場合、柔軟部30の内径は、先端部21及びインナーカテーテル20における柔軟部30よりも基端側の部分27の各々の内径よりも小さい寸法となる。
また、発泡剤を樹脂中に混在させる手法によって空隙25を形成する場合、柔軟部30の内径は、先端部21及びインナーカテーテル20における柔軟部30よりも基端側の部分27の各々の内径よりも小さい寸法となっていてもよいし、当該内径と同等の寸法となっていてもよい。同様に、この場合、柔軟部30の外径は、先端部21及びインナーカテーテル20における柔軟部30よりも基端側の部分27の各々の外径よりも小さい寸法となっていてもよいし、当該外径と同等の寸法となっていてもよい。
【0034】
インナーカテーテル20の成形体を軸方向に牽引する手法によって柔軟部30を形成する場合、当該柔軟部30には、複数の空隙25が周方向及び軸方向において分散して配置されている。複数の空隙25は、一例として、それぞれ周方向に延在している。また、各空隙25は、およそ軸方向において互いに対向している一対の壁面28と、当該一対の壁面28どうしを繋いでいる複数の紐状部29を有する。
一方、発泡剤を樹脂中に混在させる手法によって柔軟部30を形成する場合、インナーカテーテル20を成形(例えば、押し出し成形)する際に、軸方向と発泡剤の長手方向がほぼ一致するように発砲剤が配向されるので、形成される複数の空隙25も、それぞれ軸方向に延在した形状となる。そして、各空隙25は、一例として、およそ径方向において互いに対向している一対の壁面28と、当該一対の壁面どうしを繋いでいる複数の紐状部29を有する。
【0035】
ここで、本実施形態の場合、樹脂中の単位面積当たりの空隙25の占有率を調整することによって、柔軟部30の曲げ剛性を変更することができる。
より詳細には、樹脂中の単位面積当たりの空隙25の占有率を大きくすると、柔軟部30の曲げ剛性を低くすることができる。一方、樹脂中の単位面積当たりの空隙25の占有率を小さくすると、柔軟部30の曲げ剛性を高くすることができる。よって、留置具10の曲げ剛性や各寸法等に応じて、インナーカテーテル20の曲げ剛性を適宜設定することができるので、より確実に、留置具10がインナーカテーテル20の形状に変形してしまうことを抑制できる。
また、境界部24a、24bにおける樹脂中の単位面積当たりの空隙25の占有率を調整することによって、当該境界部24a、24b(連続的に曲げ剛性が変化している部分)における上記プロファイルの傾斜度を変更することができる。
より詳細には、境界部24a、24bにおける単位面積当たりの空隙25の占有率が、柔軟部30側から先端部21側及び基端部側に向けて徐々に減少している構成とすることによって、上記プロファイルの傾斜度を小さくすることができる。一方、境界部24a、24bにおける単位面積当たりの空隙25の占有率が、柔軟部30側から先端部21側及び基端部側に向けて急唆に減少している構成とすることによって、上記プロファイルの傾斜度を大きくすることができる。
これにより、例えば、インナーカテーテル20の曲げ剛性が、柔軟部30から先端部21及び基端部に向けて緩やかに切り替わる構成、もしくは柔軟部30から先端部21又は基端部に向けて急唆に切り替わる構成を実現することが可能である。
樹脂中の単位面積当たりの空隙25の占有率を調整する手法としては、インナーカテーテル20を軸方向に引っ張ることにより空隙25を形成する場合、例えば、引張荷重や引張速度、温度、チューブ内圧等を調整する手法を用いることができる。
もしくは、樹脂中の単位面積当たりの空隙25の占有率を調整する手法としては、インナーカテーテル20の樹脂中に発泡剤を混在させることにより空隙25を形成する場合、例えば、当該発泡剤の混入量や処理温度を軸方向において調整する手法を用いることができる。
【0036】
また、境界部24a、24bの軸方向における寸法を調整することによっても、例えば、インナーカテーテル20の曲げ剛性が、柔軟部30から先端部21及び基端部に向けて急唆に切り替わる構成、もしくは柔軟部30から先端部21及び基端部に向けて緩やかに切り替わる構成を実現することができる。
境界部24a、24bの軸方向における寸法を調整する手法としては、インナーカテーテル20を軸方向に引っ張ることにより空隙25を形成する場合、例えば、インナーカテーテル20を軸方向に引っ張る際に、インナーカテーテル20におけるクランプする部分どうしの距離や温度を調整する手法を用いることができる。
もしくは、境界部24a、24bの軸方向における寸法を調整する手法としては、インナーカテーテル20の樹脂中に発泡剤を混在させることにより空隙25を形成する場合、例えば、当該発泡剤の混入量や処理温度を軸方向において調整する手法を用いることができる。
【0037】
インナーカテーテル20は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどの摩擦抵抗が低いフッ素系樹脂によって、当該インナーカテーテル20の全体が一体成形されているが、ポリウレタン、ポリエチレン、シリコーン、ポリアミド、ポリアミドイミド、塩化ビニル、ポリエーテルスルホンなどの樹脂材料であってもよい。このような構成によれば、生体器官内を移動する際において、インナーカテーテル20の、生体器官の内壁に対する摺動抵抗を低減することができる。更には、柔軟部30と柔軟部30よりも先端側の部分(先端部21)及び柔軟部30よりも基端側の部分27とが共通の樹脂材料によって一体形成されている構造となるので、境界部24a、24bにおいて、柔軟部30と先端部21及び柔軟部30よりも基端側の部分27とが互いに接合された状態を良好に維持することができる。
【0038】
インナーカテーテル20の全長は特に限定されず、少なくとも留置具10の全長に亘って挿入することのできる長さであればよい。
より詳細には、インナーカテーテル20の全長は、例えば、350mm以上5000mm以下であることが好ましく、500mm以上2000mm以下であることが更に好ましい。
柔軟部30の長さ寸法(軸方向における寸法)は、特に限定されないが、20mm以上250mm以下であることが好ましく、30mm以上100mm以下であることが更に好ましい。
柔軟部30の外径は、特に限定されないが、0.5mm以上2.5mm以下であることが好ましく、0.8mm以上2.0mm以下であることが更に好ましい。
先端部21及び基端部の各々の外径は、特に限定されないが、0.8mm以上3.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上2.5mm以下であることが更に好ましい。
境界部24a、24bの各々の軸方向における寸法は、特に限定されないが、0.1mm以上100mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以上50mm以下である。
ただし、インナーカテーテル20の各部の長さや外径及び内径に関しては、医療器具100の用途などに応じて、上記した以外の寸法に設定されてもよい。
【0039】
図1に示すように、本実施形態の場合、医療器具100は、例えば、プッシャーカテーテル40と、プッシャーカテーテル40の基端部に接続されている操作部50と、を更に備えている。
プッシャーカテーテル40は、長尺な中空の管状部材である。プッシャーカテーテル40は、例えば、インナーカテーテル20から取り外し可能にインナーカテーテル20に装着されている。
プッシャーカテーテル40の内径は、インナーカテーテル20の外径よりも大きい寸法に設定されている。
プッシャーカテーテル40の外径は、例えば、留置具10の外径と略同等の寸法に設定されている。
操作部50は、例えば、プッシャーカテーテル40の基端部に接続されている第1部材51と、インナーカテーテル20の基端部に接続されている第2部材52と、を備えている。
第1部材51は、例えば、インナーカテーテル20を挿通可能な筒状に形成されている。
第1部材51の内径は、インナーカテーテル20の外径よりも大きい寸法に設定されている。このため、第1部材51の内腔にインナーカテーテル20を挿通可能となっている。また、第1部材51の先端部には、プッシャーカテーテル40の基端部が接続されており、第1部材51の内腔は、当該第1部材51の先端側の開口を介して、プッシャーカテーテル40の内腔と連通している。
第2部材52は、例えば、後述するガイドワイヤを挿通可能な筒状に形成されている。第2部材52は、例えば、第1部材51に対して取り外し可能に装着されている。第2部材52が第1部材51に装着されている状態において、インナーカテーテル20は、第1部材51の内腔を介して、プッシャーカテーテル40及び留置具10に挿入されている。
そして、プッシャーカテーテル40は、留置具10よりも基端側に配置されており、留置具10の基端側の端面は、プッシャーカテーテル40の先端側の端面と対向している。
【0040】
プッシャーカテーテル40の材料は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレンなどの摩擦抵抗が低いフッ素系樹脂であることが好ましい。これにより、生体器官内を移動する際において、プッシャーカテーテル40の、生体器官の内壁に対する摺動抵抗を低減することができる。
【0041】
ここで、留置具10の基端には、例えば、紐状の部材で構成された連結部材(不図示)が接続されていてもよい。連結部材の基端部は、プッシャーカテーテル40の先端縁に対して固定されている。すなわち、連結部材を介して、留置具10とプッシャーカテーテル40とが互いに連結されている。連結部材の先端部は、インナーカテーテル20の外周面20bと留置具10の内周面10aとの間で挟持されている。
インナーカテーテル20が留置具10から抜去されると、留置具10に対する連結部材の接続が解除され、留置具10とプッシャーカテーテル40との連結を解除することができる。
【0042】
例えば、プッシャーカテーテル40の外周面やインナーカテーテル20の外周面には、親水性剤がコーティングされていることも好ましい。これにより、生体器官の内壁に対するプッシャーカテーテル40及びインナーカテーテル20の摺動抵抗を低減することができ、医療器具100の操作性が良好となる。
【0043】
本実施形態の場合、医療器具100は、使用前の状態では、例えば、滅菌処理が施された状態で包装具(不図示)に収容されている。この状態において、インナーカテーテル20は、留置具10の内腔に挿通された状態となっている。
ここで、上述のように、本実施形態の場合、インナーカテーテル20が留置具10の屈曲部15に挿通されているが、屈曲部15に挿通されている部分の少なくとも一部分は柔軟部30である。このため、インナーカテーテル20が留置具10に挿通された状態で医療器具100が長期間保存されたとしても、留置具10の自然状態の形状を良好に維持することができる。
【0044】
以下では、一例として、医療器具100が留置具10を胆管(不図示)の内部に留置する手技に用いられる例について説明する。
なお、予め内視鏡(不図示)の挿入部の先端部が、十二指腸(不図示)の内部において、十二指腸乳頭部(ファーター乳頭部)の近傍に留置されているとともに、予め胆管(不図示)内に針孔が形成されており、ガイドワイヤ(不図示)の先端部が、当該針孔に留置されている(係止されている)状態から説明する。
まず、医療器具100を、ガイドワイヤに沿って導入する。より詳細には、インナーカテーテル20をガイドワイヤに外挿し、インナーカテーテル20をガイドワイヤの軸方向に沿って基端側から先端側に摺動させながら、インナーカテーテル20を上記針孔まで送り込む。この際に、留置具10は、弾性復元力に抗してガイドワイヤに沿った略直線状に変形させられている。次に、留置具10をインナーカテーテル20に沿って基端側から先端側に摺動させながら、留置具10を胆管の内部まで送り込む。ここで、例えば、留置具10の先端部11及び中間部13は、十二指腸乳頭部を介して胆管の内部に配置されており、留置具10の基端部12は、十二指腸の内部において、十二指腸乳頭部の近傍に配置されている。次に、この状態で留置具10を留置する。より詳細には、ガイドワイヤ及びインナーカテーテル20をそれぞれ後退させることによって、当該ガイドワイヤ及びインナーカテーテル20の各々を留置具10から抜去する(取り外す)。そして、留置具10の屈曲部15(先端部11及び基端部12)は、弾性復元力により、自然状態の形状、すなわち図3に示す円弧状の形状、もしくは当該自然状態に近い形状に復元する。これにより、円弧状の先端部11が、胆管の内壁に対して係止され、円弧状の基端部12が、十二指腸の内部において、十二指腸乳頭部に対して係止される。なお、インナーカテーテル20を後退させる際において、留置具10の基端側に配置されているプッシャーカテーテル40によって、留置具10の後退が規制される。
【0045】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0046】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)管状の留置具と、前記留置具に挿通されているインナーカテーテルと、を有する医療器具であって、
前記インナーカテーテルは樹脂チューブであり、
前記インナーカテーテルにおいて、前記留置具に挿通されている領域は、樹脂中に点在している複数の空隙を有しており当該インナーカテーテルの軸方向に対して交差する方向への屈曲が容易な柔軟部を有する医療器具。
(2)前記複数の空隙は、周方向及び軸方向において分散して配置されている(1)に記載の医療器具。
(3)前記複数の空隙は、それぞれ周方向に延在している(2)に記載の医療器具。
(4)前記複数の空隙は、それぞれ軸方向に延在している(2)に記載の医療器具。
(5)前記柔軟部は、前記空隙を間に挟んで互いに対向している一対の壁面を有し、
前記一対の壁面の対向方向に視たときの当該一対の壁面の形状が実質的に互いに等しい(1)から(4)のいずれか一項に記載の医療器具。
(6)前記柔軟部は、前記一対の壁面どうしを繋いでいる複数の紐状部を有する(5)に記載の医療器具。
(7)前記インナーカテーテルの内腔は、当該インナーカテーテルの管壁によって、外部から液密に遮蔽されている(1)から(6)のいずれか一項に記載の医療器具。
(8)前記柔軟部は、前記インナーカテーテルの軸方向における中間部に配置されており、
前記インナーカテーテルにおいて前記柔軟部よりも先端側の部分と前記柔軟部との境界には外形に段差が無く、
前記インナーカテーテルにおいて前記柔軟部よりも基端側の部分と前記柔軟部との境界にも外形に段差が無い(1)から(7)のいずれか一項に記載の医療器具。
(9)前記柔軟部は、前記インナーカテーテルの軸方向における中間部に配置されており、
前記柔軟部は、前記インナーカテーテルにおいて前記柔軟部よりも先端側の部分と比べて細径であり、前記インナーカテーテルにおいて前記柔軟部よりも基端側の部分と比べて細径である(8)に記載の医療器具。
(10)前記柔軟部は、前記インナーカテーテルの軸方向における中間部に配置されており、
前記インナーカテーテルの軸方向における位置を第1軸とし、前記インナーカテーテルの軸方向における各部の曲げ剛性を第2軸とするプロファイルについて、
前記インナーカテーテルにおいて前記柔軟部よりも先端側の部分と前記柔軟部との境界では、連続的に曲げ剛性が変化しており、かつ前記先端側の部分は前記柔軟部よりも曲げ剛性が高く、
前記インナーカテーテルにおいて前記柔軟部よりも基端側の部分と前記柔軟部との境界でも、連続的に曲げ剛性が変化しており、かつ前記基端側の部分は前記柔軟部よりも曲げ剛性が高い(1)から(9)のいずれか一項に記載の医療器具。
【符号の説明】
【0047】
10 留置具
10a 内周面
10b 外周面
11 先端部
12 基端部
13 中間部
15 屈曲部
17 開口部
19 マーキング部
20 インナーカテーテル
21 先端部(柔軟部よりも先端側の部分)
24a、24b 境界部
25 空隙
27 柔軟部よりも基端側の部分
28 一対の壁面
29 紐状部
30 柔軟部
35 中間部
36 留置具に挿通される領域
37 留置具に挿通されない領域
40 プッシャーカテーテル
50 操作部
51 第1部材
52 第2部材
100 医療器具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7