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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033844
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】体験共有システム、及び体験共有方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 13/00 20060101AFI20230306BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G06F13/00 650R
G06F3/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139761
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】今井 弘二
【テーマコード(参考)】
5B084
5E555
【Fターム(参考)】
5B084AA02
5B084AA18
5B084AB07
5B084AB13
5B084BB01
5B084DC02
5B084DC03
5B084DC06
5B084EA02
5B084EA03
5B084EA47
5E555AA04
5E555AA63
5E555AA64
5E555AA76
5E555BA04
5E555BA38
5E555BA87
5E555BA88
5E555BC13
5E555BD09
5E555BE17
5E555CA42
5E555CA44
5E555CB21
5E555CB23
5E555CC01
5E555DA08
5E555DB32
5E555DB57
5E555EA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ユーザの様々な都合に合わせてより柔軟に利用することができる体験共有システム及び体験共有方法を提供する。
【解決手段】体験共有アプリPNがインストールされた1つ以上のユーザ端末と、ユーザ端末と通信網としてのネットワークを介して接続された体験共有サーバ1とを備える体験共有システムであって、パーティを構成する1以上のユーザUNが含まれるセッション内で、体験は、各ユーザ端末における体験共有アプリPNを介してサイト上で共有できる。体験共有サーバ1と、各ユーザ端末における体験共有アプリPNには、セッションを管理するためのセッション情報がそれぞれ格納され、体験供給する上でセッション内における体験共有状態に生じた変化は、各セッション情報に反映される。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体験共有アプリがインストールされた1つ以上のユーザ端末と、前記ユーザ端末と通信網を介して接続されたサーバとを備える体験共有システムにおいて、
パーティを構成する1以上のユーザが含まれるセッション内で前記ユーザ端末における体験共有アプリを介してサイト上で体験共有可能とされ、
前記サーバと、前記ユーザ端末における体験共有アプリには、前記セッションを通じた体験共有を管理するためのセッション情報がそれぞれ格納され、
前記体験共有する上で前記サーバ又は何れか一の前記体験共有アプリに格納される前記セッション情報が変更された場合に、他の前記サーバ及び前記体験共有アプリに格納されるセッション情報に当該変更分が反映されること
を特徴とする体験共有システム。
【請求項2】
前記サーバは、少なくとも前記パーティへユーザの参加認証を行うためのパーティ情報が格納されていること
を特徴とする請求項1記載の体験共有システム。
【請求項3】
前記サーバは、前記セッション内で体験共有する前記サイトをURIを介して管理すること
を特徴とする請求項1又は2記載の体験共有システム。
【請求項4】
前記一の体験共有アプリは、前記体験共有状態に変化に応じた前記セッション情報の差分データを前記サーバに送信し、
前記サーバは、受信した前記差分データを自ら格納しているセッション情報に反映させるとともに、前記差分データを他の体験共有アプリに伝送すること
を特徴とする請求項1~3のうち何れか1項記載の体験共有システム。
【請求項5】
前記サーバは、前記差分データを所定時間に亘り蓄積した上で他の体験共有アプリに伝送する上で、既に蓄積した前記差分データに新たに受信した差分データと同一のデータが存在する場合には、当該蓄積した前記差分データから当該同一のデータを削除すること
を特徴とする請求項4記載の体験共有システム。
【請求項6】
体験共有アプリがインストールされた1つ以上のユーザ端末と、前記ユーザ端末と通信網を介して接続されたサーバとで行われる体験共有方法において、
パーティを構成する1以上のユーザが含まれるセッション内で前記ユーザ端末における体験共有アプリを介してサイト上で体験共有可能とされ、
前記サーバと、前記ユーザ端末における体験共有アプリには、前記セッションを管理するためのセッション情報がそれぞれ格納され、前記体験供給する上で前記セッション内における体験共有状態に変化が生じた場合に前記各セッション情報に反映すること
を特徴とする体験共有方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体験共有システム、及び体験共有方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、遠隔にいるユーザが、ユーザ端末を用い、インターネット等の通信網を介して、様々な体験共有を行うことを可能とする体験共有システムが提案され、実施に供されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、遠隔地から墓参りを行うに際し、ユーザは実際に墓まで行く必要が全くなく、ネットワークを介して実際の墓参りの代行を依頼することができるとともに、その墓参り代行が完了したことを確認可能とする遠隔墓参りシステムが開示されている。
【0004】
さらに、現在における世界規模のコロナ禍の影響等もあって、所謂ソーシャルディスタンスを保ちながら、教育や観光、医療、スポーツ等の生活のあらゆるシーンにおいて、離れている人でもつながり、誰一人取り残さずに、安心、安全に、共同体験等が行える新たな生活様式が求められている。
【0005】
そのため、コンピュータによる仮想空間(Cyber;サイバー)に現実(Physical;フィジカル)の情報を取り込む等して高度に融合させた空間(以下、CP(Cyber Physical)空間と略す)を活用したさらに新しい様々な体験共有システムも数多く提案されてきている。
【0006】
このように様々な体験共有システムが数多く提案されてきているものの、上記したような状況下であることから、今後、このような体験共有システムは、ユーザの様々な都合に合わせてより柔軟に利用することができるようにする必要性がある。しかしながら、そのような体験共有システムは、今のところ見聞されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-284676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点を鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ユーザの様々な都合に合わせてより柔軟に利用することができる体験共有システム、及び体験共有方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上述した課題を解決するために、体験共有アプリがインストールされた1つ以上のユーザ端末と、前記ユーザ端末と通信網を介して接続されたサーバとを備える体験共有システムにおいて、パーティを構成する1以上のユーザが含まれるセッション内で前記ユーザ端末における体験共有アプリを介してサイト上で体験共有可能とされ、前記サーバと、前記ユーザ端末における体験共有アプリには、前記セッションを通じた体験共有を管理するためのセッション情報がそれぞれ格納され、前記体験共有する上で前記サーバ又は何れか一の前記体験共有アプリに格納される前記セッション情報が変更された場合に、他の前記サーバ及び前記体験共有アプリに格納されるセッション情報に当該変更分が反映されることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の体験共有システムは、体験共有アプリがインストールされた1つ以上のユーザ端末と、前記ユーザ端末と通信網を介して接続されたサーバとを備える体験共有システムにおいて、パーティを構成する1以上のユーザが含まれるセッション内で前記ユーザ端末における体験共有アプリを介してサイト上で体験共有可能とされ、前記サーバと、前記ユーザ端末における体験共有アプリには、前記セッションを通じた体験共有を管理するためのセッション情報がそれぞれ格納され、前記体験共有する上で前記サーバ又は何れか一の前記体験共有アプリに格納される前記セッション情報が変更された場合に、他の前記サーバ及び前記体験共有アプリに格納されるセッション情報に当該変更分が反映されることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の体験共有システムは、請求項1記載の発明において、前記サーバは、少なくとも前記パーティへユーザの参加認証を行うためのパーティ情報が格納されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の体験共有システムは、請求項1又は2記載の発明において、前記サーバは、前記セッション内で体験共有する前記サイトをURIを介して管理することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の体験共有システムは、請求項1~3のうち何れか1項記載の発明において、前記一の体験共有アプリは、前記体験共有状態に変化に応じた前記セッション情報の差分データを前記サーバに送信し、前記サーバは、受信した前記差分データを自ら格納しているセッション情報に反映させるとともに、前記差分データを他の体験共有アプリに伝送することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の体験共有システムは、請求項4記載の発明において、前記サーバは、前記差分データを所定時間に亘り蓄積した上で他の体験共有アプリに伝送する上で、既に蓄積した前記差分データに新たに受信した差分データと同一のデータが存在する場合には、当該蓄積した前記差分データから当該同一のデータを削除することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の体験共有方法は、体験共有アプリがインストールされた1つ以上のユーザ端末と、前記ユーザ端末と通信網を介して接続されたサーバとで行われる体験共有方法において、パーティを構成する1以上のユーザが含まれるセッション内で前記ユーザ端末における体験共有アプリを介してサイト上で体験共有可能とされ、前記サーバと、前記ユーザ端末における体験共有アプリには、前記セッションを管理するためのセッション情報がそれぞれ格納され、前記体験供給する上で前記セッション内における体験共有状態に変化が生じた場合に前記各セッション情報に反映することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上述した構成からなる本発明によれば、体験共有サーバ又は何れか一の体験共有アプリに格納されるセッション情報が変更された場合に、他の体験共有サーバ及び体験共有アプリに格納されるセッション情報に当該変更分が反映される。これにより、一の体験共有アプリにおいて体験共有する上で生じる様様な変化を、他の体験共有アプリに反映することができ、ユーザ間の体験共有を円滑に進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る体験共有システム全体の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る体験共有システムの概略構成を示すブロック図である。
図3図3(a)は、サイトを説明するための模式図であり、図3(b)は、パーティを説明するための模式図であり、図3(c)は、セッションを説明するための模式図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る体験共有システムにおける体験共有の具体例1を示す説明図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る体験共有システムにおける体験共有の具体例2を示す説明図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る体験共有システムにおける体験共有の具体例3を示す説明図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る体験共有システムにおける体験共有の具体例4を示す説明図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る体験共有システムにおける体験共有の具体例5を示す説明図である。
図9図9は、フィジカル空間のある位置に配置されたパノラマビデオカメラにより、全方位に向けて映像を撮影している状態を示す平面図である。
図10図10は、過去映像をもとに再現したCP空間内の各位置の何れかの位置にアバターを設置した例を示す平面図である。
図11図11は、本発明を適用した体験共有システムを、ユーザが用いるユーザ端末にインストールされた体験共有アプリと、体験共有サーバで構成する例を示す図である。
図12図12は、一のパーティで複数のセッションを構成する例を示す図である。
図13図13は、サイトをURIによって指定する例を示す図である。
図14図14は、体験共有システムの主要な構成要素を示す図である。
図15図15は、本実施形態に係る体験共有システムの同期手法について説明するための図である。
図16図16は、体験共有アプリ側に加えられたセッション情報への変更点に基づく差分データを配信する例を示す図である。
図17図17は、セッションを管理するためのセッション情報の詳細について説明するための図である。
図18図18は、本発明を適用した体験共有システムにおいて、セッション情報の変更を即時に通知するための即時メッセージのやり取りを行う例を示す図である。
図19図19は、各ユーザが受信者を指定し、その指定した者との間でセッション情報の内容を変更せずに即時メッセージを送受信する例を示す図である。
図20図20は、体験共有サーバと、体験共有アプリとの間でセッション時刻を刻むセッション時計を持つ例を示す図である。
図21図21は、本発明を適用した体験共有システムにおいて事象発生時刻を同期させる例を示す図である。
図22図22は、体験共有サーバに記録されるアカウント情報、パーティ情報の詳細について説明するための説明図である。
図23図23は、セッションの運営管理において、パーティの開始時の管理手法について説明するための図である。
図24図24は、セッションの運営管理において、パーティへの参加と離脱手法について説明するための図である。
図25図25は、セッションの運営管理において、セッションの移動、サイトの変更の方法について説明するための図である。
図26図26は、セッションの運営管理において、セッションとパーティを終了させる例について説明するための図である。
図27図27は、外部のサービス等と連携してコンテンツ等のやりとりをするための窓口となる拡張機能を設ける例を示す図である。
図28図28は、本実施形態に係る体験共有システムにおける拡張機能の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用して例示した実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
[実施形態]
先ず、図1及び図2を用いて、本発明の実施形態に係る体験共有システム100について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る体験共有システム100全体の概略構成を示す模式図であり、図2は、本発明の実施形態に係る体験共有システム100の概略構成を示すブロック図である。
【0020】
本発明の実施形態に係る体験共有システム100は、図1に示すように、サーバとしての体験共有サーバ1を備える。体験共有サーバ1は、通信網としてのネットワークNを介して、体験共有アプリがインストールされた複数のユーザ端末31~3N及び管理用端末5と接続されている。
【0021】
体験共有サーバ1は、詳細については後述するが、パーティを構成する1以上のユーザが含まれるセッション内でユーザ端末31~3Nにおける体験共有アプリを介してサイト41~4N上で体験共有を可能とするプラットホームとなるホストコンピュータである。体験共有サーバ1は、体験共有システム100全体を制御する中央制御部としての役割も担う。
【0022】
ユーザ端末31~3Nは、ユーザ自身が体験共有アプリを通じて体験共有するための端末装置であり、例えばパーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末等で構成される。更にこのユーザ端末31~3Nは、ユーザの頭部に装着するヘッドマウントディスプレイ(HMD)や眼鏡型端末で構成されるものであってもよい。このユーザ端末31~3Nは、様々なコンテンツやカメラにより撮影した映像等を表示するための表示用ディスプレイを少なくとも備える。ユーザは、このユーザ端末31~3Nに表示されるコンテンツや映像を視認することであたかも自分自身が実際にその空間において実体験をしているような感覚を味わうことが可能となる。このユーザ端末31~3Nは、ネットワークNに対して有線接続又は無線接続可能とされている。
【0023】
管理用端末5は、実際に本発明を適用した体験共有システム100を管理者が操作してユーザが体験共有アプリを通じて体験共有等をするための端末装置であり、同じくPC、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末等で構成される。管理用端末5は、ネットワークNに対して有線接続又は無線接続可能とされている。なお、管理用端末5は、他のユーザ端末31~3Nのうち、1つ以上について管理用途である旨の設定がなされることにより、管理用端末5になることが可能となる。
【0024】
そして、体験共有サーバ1は、図2に示すように、その内部に、CPU(Central Processing Unit)等からなる統括管理部10を備えている。
【0025】
この統括管理部10は、複数のユーザ端末31~3NとネットワークNを介して情報の送受信を行うためのインターフェース11と、メモリやデータベース等の記憶部2に接続されている。統括管理部10は、記憶部2に記憶される各種データを管理する。また統括管理部10は、記憶部2に対して各種データを記録するとともに、体験共有システム100を動作させる上で必要とされる場合には、この記憶部2に記憶されている各種データを読み出し、外部へと配信する制御も行う。
【0026】
次に、上述した構成からなる本発明を適用した体験共有システム100の動作について説明をする。
【0027】
本発明を適用した体験共有システム100では、生活や仕事、娯楽等の様々なシーンにおいて共同体験をしたいユーザ、或いは共同体験させたいユーザとCP空間上で情報を共有する。ここでいうCP空間とは、フィジカル(現実世界)とサイバー(仮想世界)を融合させた、より現実に近いサイバー空間を示す。またCP空間は、直方体で構成される場合のみならず、実際には360°映像の場合は球体で構成されるものであってもよいし、他のいかなる形状で構成されるものであってもよい。また、ここでいう共同体験とは、各ユーザがそれぞれ保有するユーザ端末31~3N上に互いの同一の文字や音声を共有したり、同一の映像空間中でアバターとしてインタラクション等をとったりすることで、あたかも各ユーザが同じ臨場感で同じ体験を味わうことをいう。つまり、一のユーザ端末31に表示されているコンテンツやカメラにより撮影した映像等を、他のユーザ端末32~3Nと共有することで、互いにユーザ間でその表示されているコンテンツやカメラにより撮影した映像等が映し出された空間で体験している内容を共有することができる。そして、一のユーザ端末31に表示されているコンテンツが変化した場合、他のユーザ端末32~3Nにおいても同様にコンテンツを変化させることで、ユーザ間において常に体験を共有している感覚を味わうことができる。
【0028】
本発明では、このようなユーザ間での体験共有を実現する上で下記の属性を定義する。
【0029】
先ずサイトは、図3(a)に示すように、「共有するもの・場所」を意味し、文字や音声、実映像、3Dデータ等や、それらを組み合わせた空間で構成される。このサイトは例えば教室や会議室、モデルルームや観光地、工事現場等、ユーザが体験する空間のことである。
【0030】
またパーティとは、図3(b)に示すように、1以上のユーザU1~UNから構成される集まりである。サイトを通じて体験共有を希望するユーザU1~UNは少なくとのこのパーティに属する必要があり、パーティに属さないユーザは、サイトを通じた体験共有ができない。このパーティとは、例えば学校のクラス、コンテストの参加者、団体旅行のグループ等の1以上から形成される集団であり、特定の権限が付与されたものだけが参加できる集団と何ら権限のないものが自由に出入りすることができる集団を形成することができる。
【0031】
またセッションとは、図3(c)に示すように、あるサイトにおいて1以上のユーザU1~UNが情報を共有している状態である。つまり体験共有を目的としてユーザがサイトに入り、コンテンツを体験している状態をいう。ここでいうセッションは、1人のユーザがサイトに参加している状態も含まれる。複数のユーザU1~UNがサイトに参加してセッションを形成している場合、そのサイトに参加している各ユーザU1~UN間で同一のコンテンツを体験することができ、いわゆる体験共有が実現されることとなる。
【0032】
ここでいうセッションは、上述したパーティが学校のクラスであると仮定した場合に、そのクラスの一部の班において体験共有することを意味する。但し、セッションは、これに限定されるものではなく、パーティを構成するユーザ全員が参加することも可能であることから、上述したパーティが学校のクラスであると仮定した場合に、そのクラス全員でサイトを通じて体験共有するものであってもよい。
【0033】
次に、図4図8を用いて、本発明の実施形態に係る体験共有システム100においてユーザ間でセッションを通じて体験共有する具体例1~5について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る体験共有システム100における体験共有の具体例1を示す説明図であり、図5は、本発明の実施形態に係る体験共有システム100における体験共有の具体例2を示す説明図であり、図6は、本発明の実施形態に係る体験共有システム100における体験共有の具体例3を示す説明図であり、図7は、本発明の実施形態に係る体験共有システム100における体験共有の具体例4を示す説明図であり、図8は、本発明の実施形態に係る体験共有システム100における体験共有の具体例5を示す説明図である。
【0034】
先ず、図4に示す体験共有システム100の具体例1は、CP空間である表示映像C1が、各種の静止画又は動画の実映像であり、互いにセッションを形成する各ユーザU1~UNにそれぞれ割り当てられたアバターA1~ANが、CP空間である表示映像C1内を散策し、360°からなるCP空間内の任意の方向の画角の映像を各ユーザ端末31~3Nに表示させて視認したり、他のアバターと文字や音声等によるやりとりをしたりすることで、共同体験させることが可能となる。
【0035】
各ユーザが独立にCP空間内を散策したり、各ユーザ間でコミュニケーションをとったりすることに加え、ユーザU1~UNのうち、権限を有するユーザU1が自らのユーザ端末31を操作し、360°からなるCP空間内の任意の方向の画角の映像を視認し、或いはズームアップやズームバックする操作を行った場合、これに連動して他のユーザ端末32~3Nにも同様の映像を表示させたり、映像内のある点を他のユーザ端末32~3Nに指し示したりすることができる。このため、各ユーザU1~UNは、ユーザ端末31~3Nに映し出される共通の映像を視認し、共通の音声を聴くことにより、体験を共有することができる。このような体験共有方法は、例えば、社会見学や野外学習等の共同体験活動の補填や、遠隔からの現場視察や部屋の内覧等の利用等に応用することができる。
【0036】
図5に示す体験共有システム100の具体例2は、遠隔診療の例である。CP空間でユーザU2~UNとしての患者にHMDからなるユーザ端末32~3Nを装着させ、ユーザU2~UNがユーザ端末を介して視認している映像を、同じセッションを形成するユーザU1としての医師のユーザ端末31に表示させる。これにより、ユーザU2~UNが患者として視認している状況をユーザU1としての医師が共有することができ、診断の効率化を図ることができる。このようなHMDからなるユーザ端末32~3Nを介した体験共有は、遠隔による複数人の被検者の医療計測を介した遠隔診療等への応用に加え、リラクゼーション業におけるマインドフルネス、婚活等のマッチングにおける相性診断、更には老人ホームや介護施設における被介護者との体験の共感やコミュニケーションツール等に応用することができる。
【0037】
次に、図6に示す体験共有システム100の具体例3は、静止画又は動画の映像で再現されたCP空間をあるプラネタリウムのドーム内に投影した例である。互いにセッションを形成する各ユーザU1~UNにそれぞれ割り当てられた宇宙服を着た複数のアバターA1~ANが、このプラネタリウムのドームからなるCP空間中の表示映像C1内をユーザ端末31~3Nを介して自由に飛び回り、また360°からなるCP空間内の任意の方向を視認することで、その視認方向の映像の画角をユーザ端末31~3Nに表示させることが可能となる。かかる場合も同様に、ユーザU1~UNのうち、権限を有するユーザU1が自らのユーザ端末31を介してアバターA1を操作し、また360°からなるCP空間内の任意の方向を視認し、或いはズームアップやズームバックする操作を行った場合、これに連動して他のユーザ端末32~3Nにも同様の画像を表示させることができる。このため、各ユーザU1~UNは、遠隔においてプラネタリウムの体験を互いに共有することが可能となる。なお、プラネタリウムのドーム内では、ユーザ端末31~3NでCP空間内の任意の方向を視認できることに加え、ドーム内に投影された映像とアバターA1~ANの動きを俯瞰して視認することができる。
【0038】
次に、図7に示す体験共有システム100の具体例4は、CP空間である表示映像C1がロボットRに搭載されたカメラの実映像で構成されている。HMDからなるユーザ端末31を装着したユーザU1の頭部の動きがロボットRの移動等に対応しており、両手に持つ操縦装置7がロボットRの両手等の動きの操作等に対応しており、表示映像C1を見ながらロボットRを遠隔操作できるようになっている。かかる場合においてユーザU1が同じセッションを構成する他のユーザU2と操作権を交代することもでき、かかる場合には他のユーザU2に装着させたユーザ端末32に対してユーザ端末31と同様の映像C1やロボットRの操作を共有して、ユーザU1と同様にユーザU2もロボットRを遠隔操作できるように構成する。これにより、HMDからなるユーザ端末を装着したユーザの頭部の動きによってロボットRを移動させることができるため、ハンズフリーの操作性と、操作権を共有できる利点を活かし、従来よりも利便性の高い遠隔ロボットの共同作業等を行うことができる。
【0039】
次に、図8に示す体験共有システム100の具体例5は、CP空間内において外部から3Dデータを取り入れるモジュールを実装するものである。外部からの3Dデータとしては、例えば美術作品や展示用の商品等、静的な対象物であってもよいし、演じる役者を3Dデータとして取り込むことで演劇等を動的に見せるものであってもよい。また、図8に示す例では、ヘアカットの実技講習をオンライン上で行う例であり、CP空間内に表示したマネキンの頭部の3Dデータに対してユーザがHMDやタブレット型端末等のユーザ端末32を操作して実技を見学可能とされている。
【0040】
このような体験共有を実現するためには、リアルタイムに撮像した映像や過去に撮像した過去映像を適用するようにしてもよい。これらの映像の撮影は、撮影モジュールを用いて行う。具体的には、この撮影モジュールにおけるビデオカメラやデジタルカメラ、3Dスキャナ等により撮像を行う。図9の平面図は、フィジカル空間の位置Pに配置されたパノラマビデオカメラ37により、全方位に向けて映像を撮影している状態を示している。パノラマビデオカメラ37における撮像装置321により、水平方向に向けて360°に亘り洩れなく撮像を行う。この撮像は、垂直方向に向けても同時に撮像されるが、以下の例では、この水平方向への撮像を記録し、その映像を用いて再現したCP空間を例にとり説明をする。
【0041】
このようにして、映像の撮像が行われると、複数の撮像装置321により各方向に対して時系列的に順次映像が撮像される。そして撮像された画像は、順次蓄積する。過去映像の撮像が終了した段階で、位置Pを中心にして水平方向全方位に亘って撮像された静止画像又は動画像が蓄積されている状態となる。このとき、図示しないマイクにより音声を同時に収録しておいてもよい。このような全方位に向けた画像の撮像を、フィジカル空間の他の各位置Q~Tについても同様に行う。その結果、フィジカル空間の一部、又は全部の各位置において360°に亘る全方位の画像が蓄積されている状態となる。
【0042】
このような過去映像を利用して上述した体験共有を行う場合には、図10に示すように過去映像をもとに再現したCP空間内の各位置P~Tの何れかの位置に1以上のアバターが存在するものとする。例えば、位置PにおいてアバターANが位置する場合、過去映像をユーザ端末31~3Nに表示させる際には、ユーザ端末31~3Nは、位置Pについて予め蓄積している過去映像を読み出して表示用ディスプレイ上に表示させることができる。
【0043】
このとき、ユーザ端末31~3Nを介してCP空間内のアバターANの視線方向や位置、状態等が変更された場合、これに応じて表示用ディスプレイ上の表示に反映させるようにしてもよい。かかる場合には、以前に蓄積された映像から、アバターの視線方向に応じた映像を切り出してユーザ端末31~3Nの表示用ディスプレイ上に表示させ、或いはアバターの位置に応じて映像を拡大又は縮小させる。このアバターANが位置Pから他の位置Q~Tに移動した場合、その移動した位置Q~Tについて予め蓄積した映像をアバターANの操作に応じて映像を切り出し、或いは拡大、又は縮小した映像を表示する。このようにして、アバターANの操作に応じて映像を切り出し、或いは拡大、又は縮小した映像を表示することで、ユーザに対して、あたかもアバターANの視線の向き等に応じた視覚で映像を視認している現実感覚を持たせることが可能となる。しかもアバターANを移動させる位置P~T毎に同様に予め蓄積した映像を表示させることができることから、各ユーザU1~UNは、CP空間内を自由に散策するアバターANと同じ臨場感を味わうことが可能となる。
【0044】
ちなみに、アバターANではなく、HMD等からなるユーザ端末31~3Nを装着するユーザU1~UNがこのCP空間内を自由に動き回ることが可能なアプリケーションの場合、過去映像を撮像したCP空間内の各位置P~Tの何れかの位置にユーザU1~UNが存在するものとする。例えば、位置Pにおいてユーザが位置する場合、過去映像をユーザ端末31~3Nに表示させる際には、ユーザ端末31~3Nは、位置Pについて予め蓄積している過去映像を読み出して表示用ディスプレイ上に表示させる。このユーザU1~UNが位置Pから他の位置Q~Tに移動した場合、その移動した位置Q~Tについて予め蓄積した映像をユーザU1~UNの操作に応じて映像を切り出し、或いは拡大、又は縮小した映像を表示する。かかる場合も同様にHMDからなるユーザ端末31~3Nの操作や、或いはユーザ端末31~3Nを装着したユーザの視線方向やユーザの位置の変更に応じて表示用ディスプレイ上の表示に反映させることで、同様に視線の向き等に応じた視覚で映像を視認している現実感覚を持たせることが可能となる。なおHMDからなるユーザ端末31~3Nを利用する場合には、HMDに設けられる操作用のコントローラやハンドトラッキング機能、HMD自体の位置情報等に基づいて表示ディスプレイ上の表示に反映させるようにしてもよい。
【0045】
このようなCP空間内において体験共有する場合には、例えば、ユーザU1自身又はそのアバターA1が位置Pに位置し、ユーザU2自身又はそのアバターA2が位置Qに位置するものとする。このとき権限を有する者がユーザU1である場合、このユーザU1がユーザ端末31の表示用ディスプレイに表示されている映像を、ユーザU2が操作するユーザ端末32の表示用ディスプレイ上に表示させることができる。ユーザ端末31の表示用ディスプレイに表示されている映像は、位置Pにおいて視認している映像であるが、これをユーザU1のみならず、別の位置QにいるユーザU2も視認することができる。このため、ユーザU1とユーザU2は、位置PにおいてユーザU1自身又はそのアバターが視認している画像を同時に視認することができ、互いに体験共有することが可能となる。このとき、各位置P~Tにおいて過去において録音した音声を流すことにより、音声も含めた体験共有を実現することも可能となる。
【0046】
次に、図11図28を用いて、本実施形態に係る体験共有システム100の制御管理等の詳細について説明する。図11図28は、本実施形態に係る体験共有システム100の制御管理等の詳細を説明するための説明図である。
【0047】
先ず、本実施形態に係る体験共有システム100の概要構成について説明する。
【0048】
体験共有システム100は、図11に示すように、ユーザU1~UNが用いるユーザ端末31~3Nにインストールされた体験共有アプリP1~PNと、ネットワークNに接続された体験共有サーバ1とで構成される。この体験共有アプリP1~PNは、ユーザU1~UNに対して同一のセッションを提供するものである。体験共有アプリP1~PNには、体験共有サーバ1を経て、上述した各位置P~T毎に撮像した映像や音声が転送されており、ユーザU1~UNによる体験共有アプリの操作に応じてこれらの映像や音声が読み出されてユーザ端末31~3N上に表示される。
【0049】
なお、この体験共有システム100においては、一のユーザU1による体験共有アプリP1の操作によって撮像された映像を体験共有サーバ1に蓄積することなくそのまた他の体験供給アプリP2~PNへ同じ映像を配信するようにしてもよい。或いは、一の視聴する一のユーザU1による体験共有アプリP1の操作によって体験共有サーバ1に一旦蓄積した映像を他の体験供給アプリP2~PNへストリーミングするようにしてもよい。或いは、一の視聴する一のユーザU1による体験共有アプリP1の操作によって体験共有サーバ1に一旦蓄積した映像を他の体験供給アプリP2~PNにダウンロードさせるようにしてもよい。
【0050】
これにより、多数の体験共有アプリP1~PNが、体験共有プロトコルを介して、体験共有サーバ1と通信することで、上述した視聴覚体験やインタラクションをするための情報を共有することができる。
【0051】
なお、体験共有プロトコルを使うセマンティックス(体験共有プロトコルを通じて受け渡しをするデータの中身や扱い方)が同一であれば、異なる体験共有アプリP1~PNを混在させて実施することもできる。
【0052】
上述したパーティは、図12に示すように、体験共有システム100によって情報を共有できるユーザU1~UN,U1´~UN´で構成される。このパーティの中から互いにあるサイトにおいて1以上のユーザU1~UNに対して情報を共有するセッションが体験共有アプリP1~PNを介して形成される。同様に他のサイトにおいて1以上のユーザU1´~UN´に対して情報を共有する他のセッションが体験共有アプリP1´~PN´を介して形成される。この体験共有アプリP1~PNと、体験共有アプリP1´~PN´は互いに異なるセッションを形成する。
【0053】
この体験共有システム100において、体験共有アプリのユーザU1~UN,U1´~UN´は、パーティを指定して、体験共有サーバ1に接続し、オプションとして、サイトを指定してパーティ内のセッションに参加することができる。また、この体験共有システム100では、パーティ内に新たなセッションを作成したり、途中で異なるセッションに移動したりすることもできる。
【0054】
また、図13に示すように、この体験共有システム100では、同じセッションに参加しているユーザU1~UN,或いはユーザU1´~UN´が共有するコンテンツやCP空間等の各サイトはセッションと一意に紐づいている。このため、サイトを変更することで、セッションが切り替わる。サイトは、URI(Uniform Resource Identifier)によって指定することのできるあらゆる種類のリソースで構成される。このため、例えばURLにより指定可能なオンライン上の静止画や動画、ライブストリーミングの映像、PDFデータ、3Dデータ、独自形式のCP空間データ等のコンテンツもこのサイトに包含される。
【0055】
体験共有システム100の主要な構成要素は、図14に示すように、体験共有アプリPNに提供される開発者の独自プログラム51とするクライアント・ライブラリ52、また体験共有サーバ1側のプログラム群としてのサーバ・プログラム53、記憶部2、クライアント・ライブラリ52とサーバ・プログラム53の通信を規定する体験共有プロトコル55を備える。体験共有システム100では、体験共有アプリPNの開発者は、クライアント・ライブラリ52を利用して、独自プログラム51を組むことにより、上述したアプリケーションの例に挙げられるような体験共有アプリPNを開発することができる。この体験共有アプリPNによってユーザUNに様々な共同体験を提供することができる。なお、この体験共有システム100では、体験共有サーバ1に、外部のサーバ等と連携するための拡張機能の窓口となる拡張機能54を設けてもよい。
【0056】
続いて、本実施形態に係る体験共有システム100の状態の同期手法について説明する。
【0057】
体験共有システム100では、図15に示すように、体験共有アプリP1~PNが、ユーザU1~UN側に提供するセッションの視聴覚情報等の状態に関する情報は、セッション情報として記述され、格納される。また体験共有サーバ1側には、マスターとなるセッション情報を記憶する。体験共有サーバ1は、新たにセッションに加わった、同じセマンティックスを扱う体験共有アプリP1~PNに最新のセッション情報を提供する。さらに、体験共有システム100では、体験共有アプリP1~PNがセッション情報に加えた変更は、体験共有プロトコル55を介して、同じセマンティックスを扱う他の体験共有アプリP1~PNや体験共有サーバ1に伝播し、それぞれのセッション情報の同期が保たれる。
【0058】
より具体的には、体験共有システム100では、同じセマンティックスを各体験共有アプリP1~PNに対して、セッション参加時に最新のセッション情報の全体が送られる(ステップS11)。体験共有アプリP1~PNのうち、例えば一の体験共有アプリP1において何らかの変更が加えられる場合(ステップS12)、その加えられた変更に基づいて体験共有サーバ1内のマスターとなるセッション情報が更新される(ステップS13)。その結果、体験共有サーバ1側において、更新前のセッション情報と更新後のセッション情報の差分がストリームデータとして他の体験共有アプリP2~PNにも配信される(ステップS14)。これにより、一の体験共有アプリP1において加えられた変更が、他の体験共有アプリP2~P2N側にも反映させることが可能となる。
【0059】
また、体験共有システム100では、図16に示すように、体験共有アプリP1~PNは、体験共有アプリP1~PN側に加えられたセッション情報への変更点に基づく差分データを、一定間隔で体験共有サーバ1に送信するようにしてもよい(ステップS15)。各体験共有アプリP1~PNにおいて加えられたセッション情報の変更点に基づく差分データが体験共有サーバ1に送られた場合、体験共有サーバ1は、送られる変更点を集約して、体験共有サーバ1内のマスターとなるセッション情報に一定間隔(例えば0.2sec等)で反映させる(ステップS16)。これと同時に、集約された変更点、即ち差分データを各体験共有アプリP1~PNに送信する(ステップS17)。これにより、各体験共有アプリP1~PNにおいて加えられた変更点に基づく差分データを体験共有サーバ1側において一括してまとめて蓄積しておき、その蓄積した差分データは、全ての体験共有アプリP1~PN側にも反映させることが可能となる。なお、一定間隔で送り合うセッション情報のデータを、セッション・ストリームと呼ぶ。そして、セッション・ストリームには、差分データのみ送信する差分ストリームと、全データを一括して送るフル・ストリームとがある。
【0060】
図17は、各セッションを管理するためのセッション情報の構成を示している。セッション情報は、セッション管理部61、パーティ共通部62、ユーザリスト部63、セッション固有部64、及びサイト固有部65等からなる。なお、セッションに参加している体験共有アプリP1~PNは、セッション情報におけるセッション管理部61、パーティ共通部62、ユーザリスト部63、セッション固有部64、及びサイト固有部65の何れか、或いは全てを共有してもよい。また、パーティ共通部62は、パーティ内の全てのセッションで共有(同期)される。
【0061】
ここで、セッション管理部61は、セッションの識別子、セッションに対応したサイト(URI)、セッション内時刻等の情報が含まれる。
【0062】
パーティ共通部62は、パーティ内の全てのセッションで共有される情報が含まれ、セッションが終了した後も、その一部は体験共有サーバ1内に永続的に記録されてもよい。即ち、このパーティ共通部62は、セッションの開始から終了までの過程で都度更新され、セッション終了時には削除される情報に加え、セッションの終了後であっても永続的にする残存する永続情報が記録されてもよい。
【0063】
ユーザリスト部63は、セッションに参加しているユーザU1~UNの情報が含まれる。このユーザリスト部63に記録される各ユーザU1~UNの情報は、そのユーザU1~UNがセッションに参加したときに体験共有アプリP1~PNに追加され、セッションを離脱したときに削除されるものである。
【0064】
セッション固有部64は、セッション内で共有される体験共有アプリP1~PNの一時的な状態を記録するものである。このセッション固有部64に記録されている体験共有アプリP1~PNの情報は、セッションが終了すると破棄される。
【0065】
サイト固有部65は、サイト毎の設定情報や、体験共有アプリP1~PNによって生成されるサイト固有の情報が記録される。サイト固有部65に記録されるサイト固有の情報は、セッションが終了した後も体験共有サーバ1内に永続的に記録されてもよい。サイト固有部65は、サイトの情報として、セッションによってはURIのみでは記述しきれない情報を記録するようにしてもよい。またサイト固有部65は、その空間で新たに生まれた情報や知見等をメモとして記録するようにしてもよく、セッション終了後も必要な知見を残しておく場合に活用される。
【0066】
なお、セッション情報のうち、セッション管理部61以外の4つの部(パーティ共通部62、ユーザリスト部63、セッション固有部64、及びサイト固有部65)等に含まれる情報の意味(セマンティクス)は、体験共有アプリP1~PNの開発者が任意に定めることもできる。
【0067】
以下、あるセマンティクスにおいて実際にセッション情報として記述される情報の例について説明する。ここで例示するセマンティクスは、360°映像によるCP空間内に、ユーザU1~UNがアバターとして現れ、空間内を自由に移動し、視点を自由に変えたり、映像内の場所を指し示すことで拡大表示又は縮小表示することができる体験共有アプリPNとする。
【0068】
セッション管理部61では、サイトのURLとして、オンライン上の360°映像ファイルのURLが設定されている。
【0069】
パーティ共通部62では、永続情報として、体験共有アプリPNで表示できるコンテンツのリストと、パーティに参加している、或いは過去に参加したユーザU1~UN毎の操作権限等の情報が記述されている。ここでいう操作権限は、360°映像の再生状態や、360°映像の視点を操作する、360°映像のある部分を指し示す、360°映像内のアバターを表示する等の情報で構成される。
【0070】
ユーザリスト部63では、各ユーザ情報には、各ユーザU1~UNの表示名やアバターの位置や向き、ユーザU1~UNが指し示している映像の位置等の情報が記述されている。このユーザリスト部63に記録される各ユーザU1~UNの情報は、例えばユーザが操作するアバターの位置や向きが時々刻々と変化した場合にその情報が都度更新されるものであってもよい。
【0071】
セッション固有部64では、360°映像の再生状態や、360°映像の視点を操作する、360°映像のある部分を指し示す、360°映像内のアバターを表示する等の操作権限を持っているか、等が記述されている。
【0072】
サイト固有部65では、360°映像内に配置されたテキストや参考写真等の付加的なコンテンツの情報が記述されている。
【0073】
即ち、本発明を適用した体験共有システム100によれば、体験共有サーバ1と、体験共有アプリP1~PNには、セッションを管理するためのセッション情報がそれぞれ格納されている。かかる前提の下で、例えば体験共有アプリP1を操作することでアバターの位置や向き等、体験共有する上で何らかの変化が生じた場合には、体験共有アプリP1に格納されるセッション情報が変更される。またこのセッション情報の変更は体験共有サーバ1側においても生じる場合がある。このような体験共有サーバ1又は何れか一の体験共有アプリP1~PNに格納される前記セッション情報が変更された場合に、体験共有サーバ1又は他の体験共有アプリP1~PNに格納されるセッション情報に当該変更分が反映される。これにより、一の体験共有アプリP1~PNにおいて体験共有する上で生じる様様な変化を、他の体験共有アプリP1~PNに反映することができ、ユーザU1~UN間の体験共有を円滑に進めることができる。
【0074】
また、体験共有システム100では、図18に示すように、即時メッセージのやり取りができる。
【0075】
具体的には、体験共有アプリP1~PNは、体験共有サーバ1に対して、即時メッセージを送信することができる(ステップS18)。この即時メッセージは、体験共有サーバ1からの一定間隔の配信を待たずセッション情報の同期を即座に行うために、同期したい差分データをパラメータとしたものである。体験共有サーバ1は、一の体験共有アプリP1から即時メッセージを受け取ると、即座に他の体験共有アプリP2~PNにも、同じ即時メッセージを配信する(ステップS19)。これとともに、体験共有サーバ1内のマスターとするセッション情報にもこの即時メッセージの内容が上書きで反映させる(ステップS20)。このとき体験共有サーバ1は、差分データを所定時間に亘り蓄積した上で他の体験共有アプリに伝送する際には、既に蓄積した差分データに新たに受信した差分データと同一のデータが存在する場合には、当該蓄積した差分データから当該同一のデータを削除するようにしてもよい(ステップS21)。これにより重複した差分データの蓄積を回避することができる。
【0076】
また体験共有システム100では、図19に示すように、各ユーザU1~UNは、受信対象を指定し、その指定したものとの間で即時メッセージを送受信するようにしてもよい。
【0077】
受信対象として他のユーザを指定する場合、具体的には、一のユーザU1は、受信者となる他のユーザU2~UNを指定して即時メッセージを送信する(ステップS22)。次に、指定された受信者(他のユーザU2~UN)の体験共有アプリP2~PNに即時メッセージを配信する(ステップS23)。なお、即時メッセージは、受信者そのものをパラメータしてもよいし、任意のデータをパラメータとすることもできる。また、受信者としてのユーザは、パーティ全員、セッション全員、特定のユーザUN、又は特定のデータオブジェクトの何れかを指定することができる。さらに、受信したパラメータ(データ)の取り扱い方法(セマンティックス)は、セッション情報とは独立して、体験共有アプリP1~PNの開発者が任意に決めることができる。
【0078】
また、体験共有システム100では、図20に示すように、体験共有サーバ1と、体験共有アプリPNとは、セッション内で共通に用いられるセッション時刻を刻むセッション時計を持つようにしてもよい。
【0079】
具体的には、体験共有アプリPNがセッションに参加したとき(ステップS24)に、体験共有サーバ1から現在のセッション時刻が通知され(ステップS25)、通知された時刻で体験共有アプリPN側のセッション時計が開始する(ステップS26)。
【0080】
また、体験共有システム100では、体験共有アプリPNは、体験共有サーバ1のセッション時刻を継続的に観測して、体験共有アプリPN内のセッション時刻を体験共有サーバ1のセッション時刻に合わせることで同期させる。
【0081】
具体的には、体験共有アプリPN側のセッション時刻t0を体験共有サーバ1に送信する(ステップS27)。体験共有サーバ1は、体験共有アプリPNに対して、受信したセッション時刻t0と、体験共有サーバ1側のセッション時刻t1を返信する(ステップS28)。受信した体験共有アプリPN側のセッション時刻t2と、受信したt0,t1をもとに、通信遅延tLと時刻のズレtDを式(tL=(t2-t0)/2、及びtD=(t0+t2)/2-t1)で推定し、セッション時計のズレを調整する(ステップS29)。なお、上述したセッション時計のズレの調整方法は一例であり、他のいかなる方法に基づいて調整を行うようにしてもよいことは勿論である。
【0082】
また、体験共有システム100では、図21に示すように、事象発生時刻を同期させることができる。
【0083】
具体的には、体験共有サーバ1から各セッションの状態を同期するメッセージにセッション時刻を付与する。このセッションの状態を同期するメッセージは、セッション・ストリーム、又は即時メッセージ等である。体験共有アプリP1~PNは、メッセージに付与されたセッション時刻と、現在のセッション時刻との差異を考慮して状態や事象の表現を更新する。
【0084】
また、状態の同期手法として、例えば動画再生を同期させる場合は、予め上述したセッション固有部64において、動画操作を完了したセッション時刻、新たな再生状態(play/pause/reverse)、その時の動画再生位置(フレーム番号やタイムコード)等を記述しておく。そして、体験共有アプリP1~PNが再生停止やシーク等、動画の各種制御操作を行った場合に、これらの情報をパラメータとして即時メッセージとして体験共有サーバ1に送信する。体験共有サーバ1は、各体験共有アプリP1~PNに向けて同期させるべき動画の再生状態をセッション・ストリーム、又は即時メッセージ等を介して配信する。これにより、各体験共有アプリP1~PNにおける動画の再生状態が同期される。新たにセッションに参加した体験供給アプリPNは、セッション・ストリームに含まれるこれらの情報を用いて、動画の再生状態を再現することが可能となる。
【0085】
続いて、本実施形態に係る体験共有システム100のセッションの管理手法について説明する。
【0086】
体験共有システム100では、図22に示すように、体験共有サーバ1の記憶部2には、複数のアカウントに関するアカウント情報と、パーティに関するパーティ情報等が記録されている。
【0087】
アカウント情報は、アカウントの識別子や認証情報、種別や権限等が含まれる。
【0088】
パーティ情報は、パーティ属性情報、パーティ共通部の永続情報、パーティ参加者の情報、サイトごとのサイト固有情報等が含まれる。パーティ属性情報は、パーティの識別子や名称、パーティの作成者や各種権限情報、初期サイト等の情報が記述されている。パーティ共通部の永続情報は、セッション終了後に消去するのではなく永続的に利用する情報や知見等が記述されている。パーティ参加者情報は、パーティに参加できるユーザのアカウント、パーティ内でのみ有効な各参加者の識別子、各参加者の権限等が記述される。サイト固有情報は、サイト毎の詳細な情報が記述される。サイト固有情報は、サイトのURIを記述するようにしてもよい。
【0089】
体験共有システム100では、このようなアカウント情報やパーティ情報を利用し、セッションの運営管理を行う。先ずパーティの開始(アクティブ化)時の管理手法について説明をする。図23に示すように、体験共有アプリPNが体験共有サーバ1に接続した際には(ステップS30)、先ず記憶部2内のアカウント情報に基づいて接続を認証する(ステップS31)。このアカウント情報に基づいて接続が認証された場合には、ステップS32に移行し、接続が認証されなかった場合には、そのままアクティブ化の処理は終了となる。
【0090】
ステップS32に移行した場合、アカウント情報と、パーティ情報におけるパーティ参加者情報とを照合して制限することもできる。パーティ参加者情報には、パーティに参加できるユーザU1~UNのアカウントが記述されていることから、これと照合することにより、体験共有アプリP1~PNを介してアクセスしてきたユーザの参加認証をすることができる。参加認証された場合には、ステップS33に移行してパーティのアクティブ化処理に移行し、参加認証されなかった場合には、そのままアクティブ化の処理は終了となる。
【0091】
ステップS33においてパーティがアクティブ化された場合、パーティ規定のサイトに対応したセッションを設け、セッション情報を作成する。セッション情報の作成時には、先ずパーティ情報中のパーティ属性情報に基づいてパーティ規定のサイトを設ける。またパーティ情報中のパーティ共通部の永続情報があればそれを、セッション情報におけるパーティ共通部62の永続情報において共有させる。またパーティ情報中のパーティ参加者情報からセッションに参加するユーザをセッション情報中のユーザリスト部63に登録する。パーティ情報中のサイト毎の固有情報を、セッション情報中のサイト固有部65に書き込む。このようにしてパーティ規定のサイトに対応したセッション情報を生成することができる。
【0092】
その結果、ユーザUNは、接続した体験共有アプリPNを介して、このセッション情報に対応するセッションに参加することが可能となる(ステップS34)。
【0093】
次にパーティへの参加と離脱手法について説明をする。図24に示すように、既にアクティブになっているパーティに新たに体験共有アプリPNが接続した場合(ステップS35)、記憶部2中のアカウント情報に基づいて、接続を認証する(ステップS36)。このアカウント情報に基づいて接続が認証された場合には、ステップS37に移行し、接続が認証されなかった場合には、そのまま接続は切断される。
【0094】
ステップS37に移行した場合には、必要に応じてパーティ情報中のパーティ参加者情報を参照し、新たに接続した体験共有アプリPNを保有するユーザUNの参加権を照合する。その結果、参加権が必要でない場合はパーティ規定のサイトに対応したセッションにそのままユーザUNを加える。参加権が必要であり有効であれば、パーティ規定のサイトに対応したセッションにユーザUNを加える。具体的には、セッション情報中のユーザリスト部63に、新たに加えるユーザUNを追加する。その結果、ユーザUNは、接続した体験共有アプリPNを介して、このセッション情報に対応するセッションに参加することが可能となる(ステップS38)。なお、規定のサイトに対応するセッションが無い場合は、規定のサイトに対応する新たなセッションを作成して参加させるようにしてもよい。
【0095】
また今までセッションに参加していたユーザUNが体験共有アプリPNによる共同体験を終える場合には、体験共有アプリPNを体験共有サーバ1に対して切断する(ステップS39)。その結果、体験共有アプリPNはセッションから離脱する。その際にユーザUNがパーティから離脱するようにしてもよい(ステップS40)。またユーザUNがパーティから離脱した場合は、セッション情報におけるユーザリスト部63からは、離脱したユーザUNを削除するようにしてもよい。
【0096】
次にセッションの移動、即ちサイトの変更の方法について説明をする。図25に示すように、体験共有アプリPNが体験共有サーバ1に接続してサイトの変更を要求する(ステップS41)。次に、移動先のサイトに対応するセッションに接続を移動させる(ステップS42)。また移動前のセッション情報のユーザリスト部63から該当ユーザUNを取り除く処理も行う(ステップS43)。またパーティ情報中のパーティ参加者情報を参照し、移動先のセッション情報のユーザリスト部63に該当ユーザUNを追加する(ステップS44)。ここで、移動させる対象ユーザUNは、サイト変更のモードによって、要求したユーザUNのみ、同じセッションの全員、パーティ参加者全員の3種類がある。なお、移動先のサイトに対応するセッションが無い場合は、パーティ情報をもとに、新たなセッションを作成して参加するようにしてもよい。その結果、ユーザUNは、移動前のセッションから移動先のセッションに参加することが可能となる。
【0097】
次にセッションとパーティを終了させる場合について説明をする。体験共有システム100では、図26に示すように、体験共有アプリPNが体験共有サーバ1に対して接続を切断する(ステップS45)。そして、体験共有アプリPN自身がセッションから離脱する(ステップS46)。セッション情報におけるユーザリスト部63から、その体験共有アプリPNを操作するユーザUNを削除する。次にステップS47において、セッション情報中のサイト固有部65における永続的に管理すべきサイト固有情報があればパーティ情報に反映させる。またセッションを終了し、セッション情報を削除する(ステップS48)。そして、全てのセッションが終了したら、パーティ共通部62における永続情報があればパーティ情報中のパーティ共通部の永続情報に保存し(ステップS49)、パーティを終了し、非アクティブ化する(ステップS50)。
【0098】
このように、本発明を適用した体験共有システム100では、ユーザUNがパーティを開始し、またセッションに参加し、体験を共有する上で、パーティ情報を介してその参加認証を行うことができる。また、ユーザUNが体験共有するサイトを変更する上で、またセッションやパーティを終了する際においても、その状況をパーティ情報に反映させることで、体験共有システム100全体の参加や離脱、サイト変更等をパーティ情報を介して一括管理することができる。このため、パーティに属さない不審者が勝手にセッションに参加し、セッションを自由に移動することを抑えることが可能となる。
【0099】
図27に示すように、体験共有システム100では、外部のサービス(サーバ)等と連携してコンテンツ等のやりとりをするための窓口となる拡張機能54を設けてもよい。 最後に、この拡張機能54と他の外部サーバ70を連動させることにより、体験共有システム100の機能を拡張する手法について説明する。
【0100】
体験共有システム100が音声通話サーバと連携する例を図28に示す。体験共有サーバ1は、セッションに対応する音声チャンネルを音声通話サーバ1´内に作成する(ステップS51)。体験共有アプリPNが体験共有サーバ1に接続し、セッションに参加した場合(ステップS52)、音声通話サーバ1´への接続トークンを発行し(ステップS53)、体験共有アプリPNに通知する(ステップS54)。体験共有アプリPNがトークンで音声通話サーバ1´に接続した場合(ステップS55)、そのセッション用のチャンネルに参加させ(ステップS56)、音声通話が開始される(ステップS57)。なお、体験共有アプリPNがセッションを移動した場合には、音声通話サーバ1´の参加チャンネルもこれに応じて変更する。
【0101】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1 体験共有サーバ
1´ 音声通話サーバ
2 記憶部
31~3N ユーザ端末
41~4N サイト
5 管理用端末
7 操縦装置
U1~UN ユーザ
U1´~UN´ ユーザ
U ユーザ
P1~PN 体験共有アプリ
P1´~PN´ 体験共有アプリ
R ロボット
A1~AN アバター
C1 表示画像(CP空間)
N ネットワーク(通信網)
10 統括管理部
11 インターフェース
37 パノラマビデオカメラ
41 サイト
51 独自プログラム
52 ライブラリ
53 サーバプログラム
54 拡張機能
55 体験共有プロトコル
61 セッション管理部
62 パーティ共通部
63 ユーザリスト部
64 セッション固有部
65 サイト固有部
100 体験共有システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28