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特開2023-33866電子制御ユニットおよびブレーキ制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033866
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】電子制御ユニットおよびブレーキ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/36 20060101AFI20230306BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B60T8/36
F16K27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139794
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】315019735
【氏名又は名称】日立Astemo上田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛山 喬博
(72)【発明者】
【氏名】中村 元泰
【テーマコード(参考)】
3D246
3H051
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246GA14
3D246LA20A
3D246LA33Z
3H051BB02
3H051CC11
3H051CC17
3H051FF15
(57)【要約】
【課題】組付作業性に優れる電子制御ユニットおよびブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御ユニット2において、ハウジング21の中間壁部24には、保持片31と、保持部とが設けられている。保持片31は、コイル組立体40が中間壁部24の表面24a側へ移動することを規制し、保持部は、コイル組立体40が中間壁部24の裏面24b側へ移動することを規制する。保持片31は、中間壁部24に一体成形されている。また、保持片31は、保持部よりも裏面24b側から、表面24a側へ向かって延びる延在部32と、延在部32の先端部に設けられコイル組立体40が係合可能な係合部としての爪形状部33とを有している。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル組立体と、
前記コイル組立体を保持する中間壁部を有するハウジングと、を備え、
前記中間壁部には、前記コイル組立体が前記中間壁部の一面側へ移動することを規制する保持片と、前記コイル組立体が前記中間壁部の他面側へ移動することを規制する保持部と、が設けられており、
前記保持片は、前記中間壁部に一体成形されており、前記保持部よりも前記他面側から前記一面側へ向かって延びる延在部と、前記延在部の先端部に設けられ前記コイル組立体が係合可能な係合部と、を有することを特徴とする電子制御ユニット。
【請求項2】
前記係合部は、前記延在部の先端部から前記コイル組立体の中心軸に近付く方向に突出して設けられ前記コイル組立体の端面に当接可能な当接面を有する爪形状部であることを特徴とする請求項1に記載の電子制御ユニット。
【請求項3】
前記爪形状部は、前記延在部の延在方向において前記爪形状部の先端側から前記当接面に向かうに従って前記コイル組立体の中心軸に近付く方向に傾斜するガイド面を有することを特徴とする請求項2に記載の電子制御ユニット。
【請求項4】
前記保持片は、前記コイル組立体を中心にして該コイル組立体の周囲に複数配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項5】
前記中間壁部には、前記他面側に窪む凹部が設けられており、
前記延在部は、前記凹部の底面から前記一面側へ向かって突設されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項6】
前記延在部と、該延在部に対して前記コイル組立体とは反対側に位置する前記中間壁部の壁面との間には、所定の空間が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項7】
前記コイル組立体が前記保持部に当接して前記他面側への移動が規制されている状態で、前記保持片の前記係合部と、前記コイル組立体との間には、所定のクリアランスが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電子制御ユニットと、ブレーキ液路が形成された基体と、を備えたブレーキ制御装置であって、
前記基体に前記他面側が対向するように前記基体に対して前記ハウジングが組み付けられており、
前記保持片の弾性力によって前記コイル組立体が前記基体に向けて付勢されていることを特徴とするブレーキ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御ユニットおよびブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子制御ユニットを備えたブレーキ制御装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
このブレーキ制御装置では、電子制御ユニットを構成しているハウジングの中間壁部と電磁弁を駆動するためのコイル組立体との間に板ばねが介設されている。コイル組立体は、板ばねで基体に向けて弾発的に付勢されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-241846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のブレーキ制御装置を製造する工程においては、先にコイル組立体を基体に組み付け、その状態で、後から板ばねを備えたハウジングを基体に組み付ける必要がある。つまり、特許文献1の技術では、ハウジングにコイル組立体を保持させたサブアッシーを構成することができないため、ハウジングを基体に組み付ける作業が煩雑であるという課題があった。
【0005】
本発明は、組付作業性に優れる電子制御ユニットおよびブレーキ制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために創案された本発明に係る電子制御ユニットは、コイル組立体と、前記コイル組立体を保持する中間壁部を有するハウジングと、を備えている。また、前記中間壁部には、前記コイル組立体が前記中間壁部の一面側へ移動することを規制する保持片と、前記コイル組立体が前記中間壁部の他面側へ移動することを規制する保持部と、が設けられている。前記保持片は、前記中間壁部に一体成形されている。また、前記保持片は、前記保持部よりも前記他面側から前記一面側へ向かって延びる延在部と、前記延在部の先端部に設けられ前記コイル組立体が係合可能な係合部と、を有している。
【0007】
この構成では、コイル組立体は、保持部によって他面側への移動が規制されるとともに、延在部を有する保持片によって一面側への移動が規制される。つまり、コイル組立体がハウジングの中間壁部に、十分な弾性変形のための長さを持つ延在部を有する保持片を介して容易かつ確実に保持される。これにより、中間壁部からのコイル組立体の脱落を防ぐことができる。したがって、本発明によれば、ハウジングにコイル組立体を保持させたサブアッシーを形成できるので、組付作業性に優れる電子制御ユニットが得られる。
【0008】
また、前記係合部は、前記延在部の先端部から前記コイル組立体の中心軸に近付く方向に突出して設けられた爪形状部であることが好ましい。そして、爪形状部は、前記コイル組立体の端面に当接可能な当接面を有している。この構成では、爪形状部の当接面をコイル組立体の端面に対して当接可能に対向させることによって、コイル組立体を面で確実に保持することができる。
【0009】
また、前記爪形状部は、前記延在部の延在方向において前記爪形状部の先端側から前記当接面に向かうに従って前記コイル組立体の中心軸に近付く方向に傾斜するガイド面を有することが好ましい。この構成では、コイル組立体のハウジングへの装着時に、コイル組立体が保持片を外側に撓ませながらガイド面に沿って案内される。これにより、コイル組立体の端面が爪形状部の当接面に対向する位置にスムーズに導かれる。したがって、組付作業性がより向上する。
【0010】
また、前記保持片は、前記コイル組立体を中心にして該コイル組立体の周囲に複数配置されていることが好ましい。この構成では、コイル組立体をより安定して中間壁部に保持することができる。
【0011】
また、前記中間壁部には、前記他面側に窪む凹部が設けられており、前記延在部は、前記凹部の底面から前記一面側へ向かって突設されていることが好ましい。延在部を凹部の底面から立ち上がらせることによって、コンパクトな構成でも保持片の延在部の長さを十分に確保することができる。このため、保持片の延在部は、十分に弾性変形し得る。
【0012】
また、前記延在部と、該延在部に対して前記コイル組立体とは反対側に位置する前記中間壁部の壁面との間には、所定の空間が形成されていることが好ましい。この構成では、延在部がコイル組立体の径方向外側に変形するためのスペースを十分確保することができる。したがって、例えばコイル組立体をハウジングに保持させるときに、保持片の延在部を径方向外側に十分に変形させながらコイル組立体をハウジングに容易に装着させることができる。
【0013】
また、前記コイル組立体が前記保持部に当接して前記他面側への移動が規制されている状態で、前記保持片の前記係合部と、前記コイル組立体との間には、所定のクリアランスが形成されていることが好ましい。この構成では、コイル組立体やハウジングの寸法精度のばらつきをクリアランスによって吸収できるため、コイル組立体を保持部と保持片とで中間壁部に確実に保持することができる。一方、ハウジングを組付対象に組み付ける場合、コイル組立体を組付対象に当接させてコイル組立体を係合部側に寄せることで、クリアランスが無くなる。これにより、コイル組立体を係合部に確実に係合させることができる。したがって、コイル組立体は、保持片の弾性力によって組付対象に向けて付勢され、保持片の係合部と組付対象との間にはさみ込まれて確実に固定され得る。
【0014】
また、本発明に係るブレーキ制御装置は、前記電子制御ユニットと、ブレーキ液路が形成された基体と、を備える。そして、前記基体に前記他面側が対向するように前記基体に対して前記ハウジングが組み付けられており、前記保持片の弾性力によって前記コイル組立体が前記基体に向けて付勢されている。この発明によれば、組付作業性に優れるブレーキ制御装置が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、組付作業性に優れる電子制御ユニットおよびブレーキ制御装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る電子制御ユニットが備わるブレーキ制御装置を示す外観斜視図である。
図2】電子制御ユニットを上に位置させた場合のブレーキ制御装置を示す外観斜視図である。
図3】カバー部材を外した電子制御ユニットを示す斜視図である。
図4】カバー部材を外した電子制御ユニットを後から見た図である。
図5】電子制御ユニットのハウジングを示す斜視図である。
図6】電子制御ユニットのハウジングを後から見た図である。
図7】ハウジングにコイル組立体を装着する様子を説明するための斜視図である。
図8】ハウジングを基体に組み付ける前の図4のA-A線に沿う断面図である。
図9】ハウジングを基体に組み付ける前の図4のB-B線に沿う断面図である。
図10】ハウジングを基体に組み付けた後の図4のA-A線に沿う断面図である。
図11】ハウジングを基体に組み付けた後の図4のB-B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、電子制御ユニットを車両用のブレーキ制御装置(以下、単に「ブレーキ制御装置」という)に適用した場合を例として説明する。
【0018】
ブレーキ制御装置は、四輪自動車等に用いられるものであり、車輪ブレーキのホイールシリンダに付与するブレーキ液圧を適宜制御することで、アンチロックブレーキ制御や挙動安定化制御等の制御を行うものである。
【0019】
なお、ブレーキ制御装置は、エンジン(内燃機関)のみを動力源とする自動車のほか、モータを併用するハイブリッド自動車やモータのみを動力源とする電気自動車・燃料電池自動車等にも搭載することができる。また、ブレーキ制御装置は、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)のブレーキシステムに用いることもできる。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子制御ユニット2が備わるブレーキ制御装置を示す外観斜視図である。図2は、電子制御ユニット2を上に位置させた場合のブレーキ制御装置を示す外観斜視図である。
なお、説明の都合上、図1に示すように、ブレーキ制御装置について上下左右前後の方向を設定する。ただし、図1に示す方向は一例であって、ブレーキ制御装置の実際の設置方向がこれに限定されるものではない。
【0021】
ブレーキ制御装置は、図1図2に示すように、基体1と、基体1の後面1aに取り付けられた電子制御ユニット2と、基体1の前面1bに取り付けられた電動モータ3とを備えている。
【0022】
基体1は、略直方体に形成された金属部品(非磁性の金属部品、例えば、アルミニウム合金製)である。基体1の内部には図示しないシリンダ穴や複数のブレーキ液路が形成されている。ブレーキ液路は、液圧源であるマスタシリンダ(図示せず)と車輪ブレーキ(図示せず)とを接続するための液路である。
【0023】
基体1の各面のうち、後面1aには、電磁弁8(図10参照)や圧力センサ等の複数の電気部品(図示せず)が装着されている。また、前面1bには、入口ポート4が形成され、さらに、基体1の上面1cには、出口ポート5が形成されている。入口ポート4にはマスタシリンダに至る配管が接続される。また、出口ポート5には車輪ブレーキに至る配管が接続される。
【0024】
基体1の側面1dにはポンプ穴6が形成されている。ポンプ穴6にはプランジャポンプ6aが装着されている。また、基体1の下面1eにはリザーバ穴7が形成されている。リザーバ穴7にはリザーバ7aが装着されている。
【0025】
なお、基体1に設けられた各穴は、直接に、あるいはブレーキ液路を介して互いに連通している。
【0026】
電動モータ3はプランジャポンプ6aの駆動源となるものである。
電子制御ユニット2は、基体1の後面1aに突出している電気部品(図示せず)を覆った状態で、後面1aに固定されている。電子制御ユニット2は、樹脂材料によって一体成形されたハウジング21と、ハウジング21の後側に形成された開口を閉塞するカバー部材22とを備えている。カバー部材22は樹脂材料や金属材料で形成されている。
【0027】
ハウジング21は、略矩形状を呈している。ハウジング21は、周縁部に設けられた取付用孔21b(図3参照)に挿通されるボルト21aを介して、基体1の後面1aに取り付けられる。ハウジング21の取付面には、シール部材(図示せず)が装着されている。
【0028】
図3は、カバー部材22を外した電子制御ユニット2を示す斜視図である。図4は、カバー部材22を外した電子制御ユニット2を後から見た図である。
【0029】
図3図4に示すように、ハウジング21は、周壁部23と、周壁部23の内側に形成された中間壁部24とを有している。中間壁部24は、周壁部23と一体に形成されており、周壁部23の内側に形成される空間を前後方向に区画している。中間壁部24の一面側となる表面(後面)24a側の空間には、図2に示すように、制御基板P(破線で図示)が配置されている。一方、中間壁部24の他面側となる裏面(前面)24b(図10参照)側の空間には、コイル組立体40の大部分が収容されている。表面24aは、中間壁部24のカバー部材22(図2参照)側の面であり、裏面24bは、中間壁部24の基体1(図2参照)側の面である。
【0030】
中間壁部24には、複数のコイル組立体40が装着されている。各コイル組立体40は、保持部30および保持片31によって中間壁部24に抜け止め状態(脱落不能状態で)で保持されている。各コイル組立体40は、基体1側に取り付けられた電磁弁8(図3では図示せず。図10参照)に装着され、電磁弁8を駆動する。電磁弁8としては、ノーマルオープンタイプ(常開型)の電磁弁や、ノーマルクローズタイプ(常閉型)の電磁弁が挙げられる。電磁弁8の仕様は、ブレーキ制御装置の構成によって適宜設定される。
【0031】
また、そのほか、中間壁部24には、センサ(図示せず)が挿通されている。センサとしては、例えば圧力センサ(液圧センサ)が挙げられる。圧力センサは、基体1内のブレーキ液路を流通するブレーキ液の液圧を検出可能である。
【0032】
図5は、電子制御ユニット2のハウジング21を示す斜視図である。図6は、電子制御ユニット2のハウジング21を後から見た図である。
【0033】
図5図6に示すように、中間壁部24には、各コイル組立体40(図3参照)を装着する位置に対応して複数のコイル装着孔25が形成されている。コイル装着孔25には、コイル組立体40が挿通される。ここでは、複数のコイル装着孔25のうちのいくつかは互いに部分的に重なっている。
【0034】
なお、中間壁部24の内部には、導電性材料によって形成される複数のバスバー(図示せず)が埋設(モールド)されている。各バスバーの端部は、ハウジング21に設けられたコネクタ21c等に電気的に接続されている。
【0035】
中間壁部24の表面24a側において、コイル装着孔25の開口縁部には、内面が円弧状に形成された規制壁27が立設されている。また、中間壁部24の表面24a側に位置するコイル装着孔25の開口縁部において、各規制壁27の周方向端部には、保持部30が設けられている。この保持部30には、コイル組立体40の各ターミナル46(図4参照)が配置される。保持部30にターミナル46が配置されると、各コイル組立体40は、規制壁27によって、コイル装着孔25に対して周方向に周り止め規制される。また、各コイル組立体40は、保持部30によって、中間壁部24の裏面24b側へ移動することを規制された状態で係止される。
【0036】
図7は、ハウジング21にコイル組立体40を装着する様子を説明するための斜視図である。図7に示すように、コイル組立体40は、中間壁部24の表面24a側からコイル装着孔25に挿入される。
【0037】
図8は、ハウジング21を基体1に組み付ける前の図4のA-A線に沿う断面図である。図9は、ハウジング21を基体1に組み付ける前の図4のB-B線に沿う断面図である。
【0038】
図8に示すように、中間壁部24には、コイル組立体40が中間壁部24の表面24a側へ移動することを規制する保持片31が設けられている。保持片31は、中間壁部24に一体成形されている。保持片31は、延在部32と、係合部としての爪形状部33とを有している。延在部32は、保持部30(図9参照)よりも裏面24b側から、表面24a側へ向かって延びている。また、爪形状部33は、延在部32の先端部に設けられており、コイル組立体40が係合可能となっている。これにより、コイル組立体40が表面24a側へ抜け出ることが防止される。
【0039】
中間壁部24には、裏面24b側に窪む凹部26(図4も参照)が設けられている。そして、保持片31の延在部32は、凹部26の底面から表面24a側へ向かって突設されている。延在部32と、該延在部32に対してコイル組立体40とは反対側に位置する中間壁部24の壁面との間には、所定の空間Sが形成されている。
【0040】
爪形状部33は、延在部32の先端部からコイル組立体40の中心軸に近付く方向に突出して設けられている。コイル組立体40の中心軸と爪形状部33との最短距離は、コイル組立体40の外径の半分(半径)よりも小さく設定されている。
【0041】
爪形状部33は、コイル組立体40の端面に当接可能な当接面34を有している。当接面34は、ハウジング21の前面(基体1への取付け面)21eに平行に形成されている。また、爪形状部33は、ガイド面35を有している。このガイド面35は、延在部32の延在方向において爪形状部33の先端側から当接面34に向かうに従ってコイル組立体40の中心軸に近付く方向に傾斜している。すなわち、ガイド面35は、後から前に向かうに従って延在部32から離れる方向に傾斜している。
【0042】
保持片31は、コイル組立体40を中心にして該コイル組立体40の周囲に複数配置されている。図4に示すように、本実施形態では、1つのコイル組立体40に対して保持片31が2つ設けられている。この場合、2つの保持片31が設けられる各位置の間の周方向の角度は、コイル組立体40の安定した保持の観点から、90~180度であることが好ましい。また、この角度が180度であること、すなわち2つの保持片31が互いに対向するように配置されていることがより好ましい。
【0043】
図8および図9は、ハウジング21のカバー部材22が取り付けられる後側を上に位置させた状態を示している。この状態では、重力によって、図9に示すように、コイル組立体40のターミナル46が保持部30に当接して裏面24b側への移動が規制されている。また、この状態で、図8に示すように、保持片31の爪形状部33と、コイル組立体40との間には、所定のクリアランスCが形成されている。
【0044】
コイル組立体40は、図8に示すように、巻線が券回されたボビン41と、ボビン41を囲繞し磁路を形成するヨーク42とを備える。ヨーク42は、ヨーク本体42aと、ヨーク本体42aの上面に装着されて係止されるヨークトップ42bとから構成される。
【0045】
コイル組立体40の軸方向端部には、図4図7に示すように、後から見て略矩形状を呈するターミナル46が設けられている。ターミナル46には、一対のターミナル端子47が設けられている。各ターミナル端子47は、ヨーク本体42a内の巻線と電気的に接続されている。各ターミナル端子47には、接続端子として機能するスプリングコンタクト(図示せず)がそれぞれ取り付けられる。各スプリングコンタクトは、導電性材料から形成されたコイルばねであり、制御基板P(図2参照)に向けて延在し、制御基板Pの端子(図示せず)に弾発的に接触して電気的に接続される。
【0046】
ターミナル46の外側の角部48,48は、図4図7に示すように、後から見て、中間壁部24の表面24a側に位置するコイル装着孔25の開口縁部に設けられた保持部30に掛かるように突出している。つまり、組み付け時に、中間壁部24の表面24a側からコイル装着孔25にコイル組立体40を挿入すると、保持部30にターミナル46の角部48,48が当接して中間壁部24にコイル組立体40が載置される。
【0047】
次に、ハウジング21の基体1への組付時の作用について説明する。
まず、図7に示すように、コイル組立体40がハウジング21の中間壁部24に装着される。その際には、中間壁部24の表面24a側から、コイル組立体40がコイル装着孔25に向けて前方に移動させられる。
【0048】
コイル組立体40がコイル装着孔25に近付くと、コイル組立体40の底面または側面が中間壁部24に設けられた保持片31の爪形状部33のガイド面35に当接する。これにより、コイル組立体40がガイド面35に沿って案内される。さらにコイル組立体40がコイル装着孔25に向けて移動させられると、爪形状部33のガイド面35に加えられる力によって、爪形状部33がコイル組立体40の径方向外側に移動する。これにより、延在部32が曲げ変形させられて、保持片31の先端側が押し広げられる。このように保持片31の先端側が押し広げられた状態で、コイル組立体40がコイル装着孔25に挿入される。そして、コイル組立体40が爪形状部33を通過した時点で、爪形状部33に加えられる力が除去されるため、延在部32の弾性によって、爪形状部33がコイル組立体40の径方向内側に移動する。これにより、押し広げられていた保持片31の先端側が径方向内側に縮小して元に戻る。この結果、図8に示すように、爪形状部33の当接面34がコイル組立体40の端面に対向させられる。したがって、保持片31によって、コイル組立体40が中間壁部24の表面24a側へ移動することが規制される。
【0049】
また、図9に示すように、コイル組立体40のコイル装着孔25への挿入により、ターミナル46の角部48,48が中間壁部24に設けられた保持部30に当接する。これにより、裏面24b側への抜け落ちが防止される状態に、コイル組立体40が中間壁部24に一時的に保持される。
【0050】
このようにして、各コイル組立体40は、ハウジング21にサブアッシー化される。この状態でハウジング21の後側を上に位置させた場合、図8に示すように、各コイル組立体40は、重力によって前側に寄せられ、ハウジング21の前面21eよりも幾分前方に突出する状態に保持される。一方、各コイル組立体40は、重力に抗して、ハウジング21の前面21eと略面一になるようにコイル装着孔25の軸方向に移動可能である。
【0051】
電子制御ユニット2を基体1に取り付ける際には、基体1に取り付けられた各電磁弁8が対応するコイル組立体40に挿通されるように、基体1に対して電子制御ユニット2が位置決めされる。そして、ボルト21aを用いて、基体1に電子制御ユニット2が取り付けられる。
【0052】
図10は、ハウジング21を基体1に組み付けた後の図4のA-A線に沿う断面図である。図11は、ハウジング21を基体1に組み付けた後の図4のB-B線に沿う断面図である。
【0053】
図10図11に示すように、基体1に対してハウジング21を組み付けた状態では、各コイル組立体40は、保持片31の延在部32の先端部に設けられた爪形状部33に係合する。すなわち、コイル組立体40は、基体1からの反力を受けて後方に僅かに移動させられ、コイル組立体40の端面が爪形状部33の当接面34に当接する。このとき、各コイル組立体40は、保持片31の弾性力によって基体1に向けて付勢され、保持片31の爪形状部33と基体1との間にはさみ込まれて固定される。すなわち、各コイル組立体40は、基体1の後面1aに対して付勢力をもって当接しつつ、ハウジング21の前面21eと略面一となる状態に保持される。これにより、各電磁弁8の所定の位置に各コイル組立体40が配置されることとなる。
【0054】
一方、保持片31を外側に撓ませながらコイル組立体40を後方へ押すことで、コイル組立体40の取外しを容易に行うことができる。これにより、ハウジング21またはコイル組立体40の交換が可能となる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の電子制御ユニット2では、ハウジング21の中間壁部24には、保持片31と、保持部30とが設けられている。保持片31は、コイル組立体40が中間壁部24の表面24a側へ移動することを規制し、保持部30は、コイル組立体40が中間壁部24の裏面24b側へ移動することを規制する。保持片31は、中間壁部24に一体成形されている。また、保持片31は、保持部30よりも裏面24b側から、表面24a側へ向かって延びる延在部32と、延在部32の先端部に設けられコイル組立体40が係合可能な係合部としての爪形状部33とを有している。
【0056】
このような本実施形態では、コイル組立体40は、保持部30によって裏面24b側への移動が規制されるとともに、延在部32を有する保持片31によって表面24a側への移動が規制される。つまり、コイル組立体40がハウジング21の中間壁部24に、十分な弾性変形のための長さを持つ延在部32を有する保持片31を介して容易かつ確実に保持される。これにより、中間壁部24からのコイル組立体40の脱落を防ぐことができる。したがって、本実施形態によれば、ハウジング21にコイル組立体40を保持させたサブアッシーを形成できるので、組付作業性に優れる電子制御ユニット2が得られる。
【0057】
本実施形態は、中間壁部24に保持片31および保持部30が直接設けられる構造である。したがって、コイル組立体40の固定のための板ばね等の金属部品が不要となる。このことは、抜け止め構造の簡単化、小型軽量化に繋がり、ハウジング21のサイズダウン、コストダウンに寄与する。また、例えばハウジング21の周壁部23等を用いたコイル組立体40の装着手段を採用する必要がない。したがって、例えば、周壁部23等から離れた位置にコイル組立体40が配置されるレイアウトであっても、保持片31および保持部30を用いて容易にコイル組立体40を保持することができる。
【0058】
また、本実施形態では、コイル組立体40が係合可能な係合部は、延在部32の先端部からコイル組立体40の中心軸に近付く方向に突出して設けられた爪形状部33である。そして、爪形状部33は、コイル組立体40の端面に当接可能な当接面34を有している。この構成では、爪形状部33の当接面34をコイル組立体40の端面に対して当接可能に対向させることによって、コイル組立体40を面で確実に保持することができる。
【0059】
また、本実施形態では、爪形状部33は、延在部32の延在方向において爪形状部33の先端側から当接面34に向かうに従ってコイル組立体40の中心軸に近付く方向に傾斜するガイド面35を有している。この構成では、コイル組立体40のハウジング21への装着時に、コイル組立体40が保持片31を外側に撓ませながらガイド面35に沿って案内される。これにより、コイル組立体40の端面が爪形状部33の当接面34に対向する位置にスムーズに導かれる。したがって、組付作業性がより向上する。
【0060】
また、本実施形態では、保持片31は、コイル組立体40を中心にして該コイル組立体40の周囲に複数配置されている。この構成では、コイル組立体40をより安定して中間壁部24に保持することができる。
【0061】
また、本実施形態では、中間壁部24には、裏面24b側に窪む凹部26が設けられており、延在部32は、凹部26の底面から表面24a側へ向かって突設されている。延在部32を凹部26の底面から立ち上がらせることによって、コンパクトな構成でも保持片31の延在部32の長さを十分に確保することができる。このため、保持片31の延在部32は、十分に弾性変形し得る。
【0062】
また、本実施形態では、延在部32と、該延在部32に対してコイル組立体40とは反対側に位置する中間壁部24の壁面との間には、所定の空間Sが形成されている。この構成では、延在部32がコイル組立体40の径方向外側に変形するためのスペースを十分確保することができる。したがって、例えばコイル組立体40をハウジング21に保持させるときに、保持片31の延在部32を径方向外側に十分に変形させながらコイル組立体40をハウジング21に容易に装着させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、コイル組立体40が保持部30に当接して裏面24b側への移動が規制されている状態で、保持片31の爪形状部33と、コイル組立体40との間には、所定のクリアランスCが形成されている。この構成では、コイル組立体40やハウジング21の寸法精度のばらつきをクリアランスCによって吸収できるため、コイル組立体40を保持部30と保持片31とで中間壁部24に確実に保持することができる。一方、ハウジング21を基体1に組み付ける場合、コイル組立体40を基体1に当接させてコイル組立体40を爪形状部33側に寄せることで、クリアランスCが無くなる。これにより、コイル組立体40を爪形状部33に確実に係合させることができる。したがって、コイル組立体40は、保持片31の弾性力によって基体1に向けて付勢され、保持片31の爪形状部33と基体1との間にはさみ込まれて確実に固定され得る。
【0064】
また、本実施形態に係るブレーキ制御装置は、電子制御ユニット2と、ブレーキ液路が形成された基体1と、を備える。そして、基体1に裏面24b側が対向するように基体1に対してハウジング21が組み付けられており、保持片31の弾性力によってコイル組立体40が基体1に向けて付勢されている。本実施形態によれば、組付作業性に優れるブレーキ制御装置が得られる。
【0065】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。また、前記実施形態の構成の一部について、追加、削除、置換をすることができる。
【0066】
例えば、前記した実施形態では、車輪ブレーキのホイールシリンダに付与するブレーキ液圧を適宜制御することでアンチロックブレーキ制御や挙動安定化制御等の制御を行うブレーキ制御装置が例示されている。ただし、本発明に係るブレーキ制御装置は、これに限定されるものではなく、例えば、ブレーキシステム用入力装置に適用されてもよい。
【0067】
なお、ブレーキシステム用入力装置は、基体内に、ブレーキペダルの踏力によってブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダを有している。この他、基体内には、ブレーキペダルに擬似的な操作反力を付与するストロークシミュレータ等を設けることができる。ブレーキシステム用入力装置が適用されるブレーキシステムとして、原動機の起動時に作動するバイ・ワイヤ(By Wire)式のものと原動機の停止時などに作動する油圧式のものとの双方を備えるものが挙げられる。
【0068】
また、前記した実施形態では、1つのコイル組立体40に対して保持片31が2つ設けられているが、これに限定されるものではない。1つのコイル組立体40に対して保持片31が1つまたは3つ以上設けられるように構成されもよい。
【0069】
また、前記した実施形態では、保持部30は、コイル装着孔25の開口縁部において、表面24aよりも後方に僅かに突出して設けられているが、これに限定されるものではなく、表面24aと同一面であってもよい。また、コイル組立体40のターミナル46が保持部30に当接して裏面24b側への移動が規制されているが、これに限定されるものではなく、コイル組立体40の他の部位が保持部30に当接するようにしてもよい。
【0070】
また、前記した実施形態では、爪形状部33のガイド面35は、傾斜した平面で構成されているが、これに限定されるものではなく、曲面、あるいは平面と曲面の組合わせで構成されていてもよい。
【0071】
また、前記した実施形態では、1つの凹部26の底面に1つまたは2つの保持片31が立設されているが、凹部26の底面を広く形成して1つの凹部26の底面に3つ以上の保持片31が立設されていてもよい。
【0072】
また、前記した実施形態では、複数のコイル装着孔25のうちのいくつかは互いに部分的に重なっているが、これに限定されるものではなく、各コイル装着孔25が互いに分離独立して設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 基体
2 電子制御ユニット
21 ハウジング
24 中間壁部
24a 表面(一面)
24b 裏面(他面)
26 凹部
30 保持部
31 保持片
32 延在部
33 爪形状部(係合部)
34 当接面
35 ガイド面
40 コイル組立体
46 ターミナル
C クリアランス
S 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11