(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033906
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】冷却水系統設備の制御装置、冷却水系統設備、冷却塔の制御装置及び冷却塔
(51)【国際特許分類】
F28F 27/00 20060101AFI20230306BHJP
F28C 1/02 20060101ALI20230306BHJP
F28B 9/06 20060101ALI20230306BHJP
F01K 9/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F28F27/00 501E
F28F27/00 501A
F28F27/00 501B
F28C1/02
F28B9/06
F01K9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139857
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】391019658
【氏名又は名称】株式会社中部プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】宮本 拓治
(72)【発明者】
【氏名】富川 正宏
(72)【発明者】
【氏名】今村 敏也
(72)【発明者】
【氏名】小島 久幸
(72)【発明者】
【氏名】平田 有史
(57)【要約】
【課題】冷却水系統設備の省エネルギー効果を向上させる。
【解決手段】
冷却水系統設備30Bは、熱負荷に対して冷却水を循環させる冷却水ポンプ45と、熱を放散する冷却塔ファン41を有し、復路管を通って帰還する戻り冷却水を、大気と熱交換することにより冷却して、往路管より前記熱負荷に供給する冷却塔31と、を備える。
冷却水系統設備30Bの制御装置200は、前記冷却塔ファン41又は前記冷却水ポンプ45のうち一方の補機を制御する第1制御部210を備える。
前記第1制御部210は、前記冷却塔31の冷却能力を示す冷却指数を、大気の湿球温度と冷却塔入口冷却水温度に基づいて、算出する第1演算部230と、前記一方の補機の回転数指令値を、前記冷却指数に基づいて、決定する第2演算部240と、前記一方の補機の回転数指令値を、熱負荷の変動に応じて、補正する第1補正部250と、を備える。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水系統設備の制御装置であって、
前記冷却水系統設備は、
熱負荷に対して冷却水を循環させる冷却水ポンプと、
熱を放散する冷却塔ファンを有し、復路管を通って帰還する戻り冷却水を、大気と熱交換することにより冷却して、往路管より前記熱負荷に供給する冷却塔と、を備え、
前記制御装置は、
前記冷却塔ファン又は前記冷却水ポンプのうち一方の補機を制御する第1制御部を備え、
前記第1制御部は、
前記冷却塔の冷却能力を示す冷却指数を、大気の湿球温度と冷却塔入口冷却水温度に基づいて算出する第1演算部と、
前記一方の補機の回転数指令値を、前記冷却指数に基づいて決定する第2演算部と、
前記一方の補機の回転数指令値を、熱負荷の変動に応じて補正する第1補正部と、を備える、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却水系統設備の制御装置であって、
前記冷却塔ファン又は前記冷却水ポンプのうち他方の補機の回転数を、冷却塔入口冷却水温度の目標温度に対する偏差に基づいて制御する第2制御部を備える、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の冷却水系統設備の制御装置であって、
前記第1補正部は、熱負荷の基準値に対する大きさの比率を熱負荷補正係数として算出し、前記回転数指令値を、前記熱負荷補正係数に基づいて補正する、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の冷却水系統設備の制御装置であって、
前記第1補正部は、前記回転数指令値に、前記熱負荷補正係数の平方根を乗算して補正する、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の冷却水系統設備の制御装置であって、
熱負荷は、
発電機を駆動する蒸気タービンから復水器に排気される蒸気であり、
前記第1補正部は、熱負荷の変動を、前記発電機の発電量を用いて推定する、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項6】
請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の冷却水系統設備の制御装置であって、
前記第1制御部の制御対象は、前記冷却塔ファンであり、
前記冷却水ポンプの回転数が可変である場合、
前記第1補正部は、熱負荷の変動を、冷却塔出入口冷却水温度差と冷却水ポンプの回転数の積を用いて推定する、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項7】
請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の冷却水系統設備の制御装置であって、
前記第1制御部の制御対象は、前記冷却塔ファンであり、
前記冷却水ポンプの回転数が一定である場合、
前記第1補正部は、熱負荷の変動を、冷却塔出入口冷却水温度差を用いて推定する、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項8】
熱負荷を冷却する冷却水系統設備であって、
熱負荷に対して冷却水を循環させる冷却水ポンプと、
熱を放散する冷却塔ファンを有し、復路管を通って帰還する戻り冷却水を、大気と熱交換することにより冷却して、往路管より前記熱負荷に供給する冷却塔と、
請求項1~請求項7のうちいずれか一項に記載の制御装置と、を備えた、冷却水系統設備。
【請求項9】
熱負荷に冷却水を供給する冷却塔の制御装置であって、
前記冷却塔は、熱を放散する冷却塔ファンを有し、復路管を通って帰還する戻り冷却水を、大気と熱交換することにより冷却して、往路管より熱負荷に供給する構成であり、
前記制御装置は、
前記冷却塔の冷却能力を示す冷却指数を、大気の湿球温度と冷却塔入口冷却水温度に基づいて、算出する第1演算部と、
前記冷却塔ファンの回転数指令値を、前記冷却指数に基づいて、決定する第2演算部と、
前記冷却塔ファンの回転数指令値を、熱負荷の変動に応じて、補正する第1補正部と、を備える、冷却塔の制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の冷却塔の制御装置であって、
前記第1補正部は、熱負荷の変動を、冷却塔出入口冷却水温度差を用いて推定する、冷却塔の制御装置。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の冷却塔の制御装置であって、
前記第1補正部による補正後の回転数指令値を、冷却塔入口冷却水温度の目標温度に対する偏差に基づいて補正する、第2補正部を備える、冷却塔の制御装置。
【請求項12】
熱を放散する冷却塔ファンと、
請求項9~請求項11のうちいずれか一項に記載の制御装置と、を備えた、冷却塔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水系統設備を省エネルギー化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱負荷の冷却に冷却塔を用いた冷却水設備が多く用いられている。
【0003】
冷却塔を用いた冷却水設備における冷却水系統(以下「冷却水系統設備」という)は、
図1に示すように、冷却塔ファン41を設置した冷却塔31と、熱負荷QLと冷却塔31の間に冷却媒体である冷却水を循環する冷却水ポンプ45と、から構成されている。
【0004】
冷却塔31は、水の気化熱により水温を下げる原理であり、散水した水に冷却塔ファン41により大気を送風し、水の気化を促すことで、熱放散を行っている。
【0005】
冷却塔31は、その冷却原理より熱の放散先である大気の状態(大気湿球温度)により、その冷却能力は大きく変化する。
【0006】
冷却塔31は、冷却能力が低下する高湿球温度帯においても、対象の最大熱負荷を熱放散できるように設計するのが一般的である。
【0007】
大気の湿球温度は、
図2のグラフに示すように、夏季は25℃程度まで上昇するのに対して、冬季は5℃程度まで低下する。そのため、冷却水系統設備は、年間の大半をオーバスペック状態で運転することとなり、無駄なエネルギー消費となりやすい。
【0008】
限られたエネルギーを有効に活用し、持続可能な社会を実現するために、無駄なエネルギー消費を無くす省エネルギーが課題となっており、大気状態において変動する冷却塔31の冷却能力に見合うように、冷却水系統の補機である冷却塔ファン41や冷却水ポンプ45の消費エネルギーを制御することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
冷却塔31の冷却能力は、「冷却塔入口冷却水温度」と「大気の湿球温度」の温度差が大きいほど、向上する。そのため、特許文献1に係る冷却水系統設備の発明では、「冷却塔入口冷却水温度」と「大気湿球温度」の温度差を、「冷却指数ΔTq」として定義し、冷却塔31の冷却能力を推定した。
【0011】
図3は特許文献1に係る冷却水系統設備のシステム構成図である。特許文献1において、制御装置700は、冷却塔ファン41の回転数を、冷却指数ΔTqに基づいて、プログラム制御する。
【0012】
冷却塔ファン41の回転数を、冷却塔31の冷却指数ΔTqに応じて制御することで、冷却塔31の冷却能力に見合った回転数制御が可能となり、省エネルギー効果は大きい。しかし、熱負荷QLの変動が考慮されていないため、冷却塔ファン41の消費エネルギーを更に削減し、省エネルギー効果を向上できる余地があった。
【0013】
また、冷却塔ファン41に限らず、冷却水ポンプ45の回転数を制御する場合も同様の課題があり、更に、冷却水系統設備を復水器以外の熱負荷の冷却に用いる場合も、冷却塔ファン41や冷却水ポンプ45の消費エネルギーを削減して、省エネルギー効果向上させることが望ましい。
【0014】
本発明の一態様は、冷却水系統設備の省エネルギー効果を向上させる、技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
冷却水系統設備は、熱負荷に対して冷却水を循環させる冷却水ポンプと、熱を放散する冷却塔ファンを有し、復路管を通って帰還する戻り冷却水を、大気と熱交換することにより冷却して、往路管より前記熱負荷に供給する冷却塔と、を備える。
【0016】
冷却水系統設備の制御装置は、前記冷却塔ファン又は前記冷却水ポンプのうち一方の補機を制御する第1制御部を備える。
【0017】
前記第1制御部は、前記冷却塔の冷却能力を示す冷却指数を、大気の湿球温度と冷却塔入口冷却水温度に基づいて算出する第1演算部と、前記一方の補機の回転数指令値を、前記冷却指数に基づいて決定する第2演算部と、前記一方の補機の回転数指令値を、熱負荷の変動に応じて補正する第1補正部と、を備える。尚、他方の補機の回転数は、どのような方法で制御してもよい。制御対象が制御目標値に一致するようにフィードバック制御してもよいし、それ以外の方法で制御してもよい。
【0018】
本技術は、冷却水系統設備の制御方法、冷却塔の制御装置、制御方法に適用することが出来る。また、冷却水系統設備の制御プログラムや冷却塔の制御プログラムにも適用することが出来る。
【発明の効果】
【0019】
本技術は、冷却水系統設備の省エネルギー効果を、向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】冷却指数と冷却ファンの回転数の積と、冷却指数との関係を示す図
【
図7】冷却指数と冷却塔ファンの回転数指令値の関係を示すグラフ
【
図8】相対湿度xと乾湿温度差ΔTaの関係を示すグラフ
【
図9】乾球温度Taに対する1次項Pと定数項Qをまとめた図表
【
図11】湿球温度-ファン回転数の関係を示すグラフ
【
図13】湿球温度-ファン動力差の関係を示すグラフ
【
図14】ΔT(熱負荷変動)とΔTqの関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
冷却水系統設設備の概要を説明する。
冷却水系統設備は、熱負荷に対して冷却水を循環させる冷却水ポンプと、熱を放散する冷却塔ファンを有し、復路管を通って帰還する戻り冷却水を、大気と熱交換することにより冷却して、往路管より前記熱負荷に供給する冷却塔と、を備える。
【0022】
冷却水系統設備の制御装置は、前記冷却塔ファン又は前記冷却水ポンプのうち一方の補機を制御する第1制御部を備える。
【0023】
前記第1制御部は、前記冷却塔の冷却能力を示す冷却指数を、大気の湿球温度と冷却塔入口冷却水温度に基づいて算出する第1演算部と、前記一方の補機の回転数指令値を、前記冷却指数に基づいて決定する第2演算部と、前記一方の補機の回転数指令値を、熱負荷の変動に応じて補正する第1補正部と、を備える。
【0024】
この構成では、冷却水系統の補機の消費エネルギーを、冷却塔の冷却能力と熱負荷の変動に応じて制御でき、冷却水系統を省エネルギー化することが出来る。
【0025】
以下に、冷却塔ファン及び冷却ポンプの最適回転数について、説明する。
【0026】
図3に示す冷却水系統において、発電設備が定格出力している状態では、蒸気タービン10の排気熱量(熱負荷QL)は一定である。蒸気タービン10の排気熱量(熱負荷QL)が一定の条件で、復水器20の器内温度を一定に制御するには、復水器20の熱交換量を一定に制御する必要がある。
【0027】
復水器20の熱交換量は、復水器出入口冷却水温度差ΔT32(出口冷却水温度HWTと入口冷却水温度LWTの差)と冷却水流量Fの積に比例するため、ΔT32×F=一定である。また、冷却水流量Fと冷却水ポンプ45の回転数Prpmは比例するため、下記の(X1)式となる。
【0028】
ΔT32×Prpm=一定・・・(X1)
【0029】
図4は、蒸気タービン排気熱量(熱負荷QL)が一定の条件で、復水器20の器内温度(真空)を一定に制御している場合において、復水器出入口冷却水温度差ΔT
32に対するΔTq×Frpmの運転実績値を示すグラフであり、縦軸をΔT
32、横軸をΔTq×Frpmとしている。
【0030】
図4に示すように、ΔT
32と、ΔTq×Frpmは、おおむね比例するため、次式となる。
【0031】
k1×(ΔTq×Frpm)=ΔT32・・・(X2)
k1は比例定数である。
【0032】
(X1)式、(X2)式より、(X3)式が得られる。
ΔT32×Prpm=k1×(ΔTq×Frpm)×Prpm=一定
ΔTq×Frpm×Prpm=一定=定数A・・・・(X3)
【0033】
運転データまたは冷却塔仕様書から、冷却塔ファン41の回転数Frpm=100%、冷却水ポンプ45の回転数Prpm=100%における冷却塔入口冷却水温度(=復水器出口冷却水温度)、湿球温度を基準値として、(X3)式に代入して、定数Aを算出する。
【0034】
定数Aは、基準値における冷却指数ΔTqとなり、これをΔTq0とする。ΔTq0を、(X3)式に代入すると、以下の(X4)式が得られる。
【0035】
ΔTq×Frpm×Prpm=ΔTq0・・・・(X4)
ΔTq0は、基準となる冷却指数(以下、「基準冷却指数」という)であり、冷却塔ファン41、冷却水ポンプ45共に、100%回転時の冷却指数ΔTqである。
【0036】
熱負荷QLが一定の場合、冷却指数ΔTq、ファン回転数Frpm%、ポンプ回転数Prpm%について、(1)式の関係が成り立つ。これは、上記の通り、冷却水系統設備の運転実績値のデータ(
図4)により、検証されており、復水器用の冷却水系統設備に限らず、他の用途に使用する場合にも、適用できる。
【0037】
ΔTq0=ΔTq×Frpm%×Prpm%=一定・・・(1)
【0038】
Frpm%は、ファン回転数Frpmの定格回転数(100%)に対する割合、Prpm%は、ポンプ回転数Prpmの定格回転数(100%)に対する割合である。「ファン」は冷却塔ファン41、「ポンプ」は冷却水ポンプ45である。
【0039】
ファン動力Pf、ポンプ動力Ppは、一般的に、それぞれの回転数の3乗に比例するため、冷却水系統の補機合計動力Pは次のとおりである。ここで、ファン100%回転数時のファン動力をPf0、ポンプ100%回転数時のポンプ動力をPp0とする。{^}の記号は累乗を示す。
【0040】
Pf=Pf0×Frpm%^3
Pp=Pp0×Prpm%^3
P=Pf+Pp・・・(2)
【0041】
(1)式からPrpm%=△Tq0/△Tq/ Frpm%となり、これを(2)式に代入すると、下記に示すように、Pは、Frpm%の関数として、表すことが出来る。
P=Pf0×Frpm%^3+Pp0×(△Tq0/△Tq/ Frpm%)^3・・・(2-1)
【0042】
Pが最小になるように、(2-1)式を微分して極小点となるFrpm%を求めることで、(3)式で示すように、Pを最小とするファンの最適回転数Frpm%が得られる。
【0043】
同様の方法で、(4)式で示すように、Pを最小とするポンプの最適回転数Prpm%が得られる。
【0044】
Frpm%=(Pp0/Pf0)^(1/6)×(ΔTq0/ΔTq)^(1/2)・・・(3)
Prpm%=(Pf0/Pp0)^(1/6)×(ΔTq0/ΔTq)^(1/2)・・・(4)
【0045】
熱負荷QLが変動する場合、熱負荷QLは、熱負荷基準値QL0を用いて、次式で表すことができる。ここで、「熱負荷基準値QL0」は、(3)式または(4)式において、ファン、ポンプ最適回転数となる時の熱負荷QLである。
【0046】
QL=kq×QL0
kq=QL/QL0・・・(5)
(kq:熱負荷補正係数)
【0047】
そして、(X3)式より、冷却指数ΔTqは、熱負荷QLに比例するため、熱負荷QLにおける基準冷却指数はkq×ΔTq0となる。尚、(X3)式の定数Aは、熱負荷QLに比例する関係がある。
【0048】
基準冷却指数がkq×ΔTq0の時のファン、ポンプの最適回転数を(1)式と(2)式から求めると、以下の通りである。Frpmkq%はファンの最適回転数、Prpmkq%はポンプの最適回転数である。
【0049】
Frpmkq%=(Pp0/Pf0)^(1/6)×(kq×ΔTq0/ΔTq)^(1/2)
Frpmkq%=kq^(1/2)×Frpm%・・・・(3-1)
Prpmkq%=(Pf0/Pp0)^(1/6)×(kq×ΔTq0/ΔTq)^(1/2)
Prpmkq%=kq^(1/2)×Prpm%・・・・(4-1)
【0050】
すなわち、ファン、ポンプとも、熱負荷基準値QL0における最適回転数に、「kq^(1/2)」を掛け合せることで、熱負荷QLにおける最適回転数とすることができる。
【0051】
熱負荷QLは、冷却塔出入口冷却水温度差ΔTと冷却水流量Fの積となり、(7)式よりkqを求める。ΔT0はQL0時の冷却塔出入口冷却水温度差ΔT、F0はQL0時の冷却水流量Fである。
【0052】
QL=ΔT×F・・・(6)
kq=(ΔT×F)/(ΔT0×F0)・・・(7)
【0053】
そのため、冷却塔入口冷却水温度HWT、冷却塔出口冷却水温度LWT及び冷却水流量Fを測定すれば、熱負荷補正係数kqを求めることができ、(3-1)式、(4-1)式から、ファンおよびポンプの最適回転数を求めることができる。
【0054】
また、熱負荷補正係数kqは、(7)式に限らず、冷却水系統設備の用途や補機の制御内容によって、別の指標を用いて求めることが可能である。
【0055】
<実施形態1>
1.冷却水系統設備の構成
図5は、汽力発電設備1の復水器20を冷却する冷却水系統設備30Aの構成を示すブロック図である。汽力発電設備1は、例えば、定格出力7000[kw]程度の小型バイオマス発電設備である。
【0056】
汽力発電設備1は、蒸気を発生するボイラ(図略)と、蒸気タービン10と、蒸気タービン10により発電する発電機15と、熱交換器である復水器20と、復水器20に冷却媒体である冷却水を供給する冷却水系統設備30Aを含む。
【0057】
蒸気タービン10から復水器20の器内に排出された蒸気は、復水器20を流れる冷却水と熱交換して水に戻ることで、復水器20の器内は真空に維持される。復水器20の真空を維持することで、蒸気タービン10の回転が安定し、発電機15の発電効率の維持が可能である。
【0058】
復水器20は、器内温度計21を有している。器内温度計21は、復水器20の器内温度EXT、つまり復水器内の排蒸気温度を計測する。
【0059】
冷却水系統設備30Aは、冷却塔31と、往路管32と、復路管33と、、2つの補機として冷却塔ファン41及び冷却水ポンプ45を含む。
【0060】
冷却水は、冷却塔31から往路管32を通って、復水器20に供給される。復水器20で蒸気と熱交換した戻り冷却水は、復水器20から復路管33を通って、冷却塔31に戻る。
【0061】
冷却塔31に帰還した戻り冷却水は、気化しやすいように、冷却塔内にてシャワーリングされ、大気と熱交換して一部が蒸発する。水分蒸発に伴い発生する気化熱を外気に放出することで、戻り冷却水は冷却される。その際に、水分蒸発を促進するため、冷却塔31は、熱を放散する冷却塔ファン41を有している。
【0062】
冷却塔ファン41を駆動する駆動モータ42は、VVVF(可変電圧可変周波数制御装置)43により、回転数を制御することが出来る。駆動モータ42の回転数制御により、冷却塔ファン41の風量を任意に調整することが出来る。
【0063】
冷却水ポンプ45は往路管32に位置する。冷却水ポンプ45を駆動する駆動モータ46は、VVVF47により、回転数を制御することが出来る。駆動モータ46の回転数制御により、冷却水流量Fを任意に調整することが出来る。
【0064】
冷却塔31には、大気温度計51と相対湿度計52とが設けられている。大気温度計51は乾球温度計であり、大気の乾球温度Taを計測し、相対湿度計52は、相対湿度xを計測する。
【0065】
また、往路管32と復路管33には、水温計53、54が設けられている。水温計53は、往路管32のうち復水器20の入口部分にあって、復水器入口冷却水温度(冷却塔出口冷却水温度)LWTを計測する。水温計54は、復路管33のうち冷却塔31の入口部分にあって、冷却塔入口冷却水温度HWTを計測する。これら各計器21、51~54の計測値は、以下に説明する制御装置100に入力される。
【0066】
以下、冷却水系統設備30Aの制御装置100について、
図6を参照して説明する。制御装置100は、第1制御部110と、第2制御部180を有している。
【0067】
第1制御部110は、冷却塔31の冷却能力に基づいて、冷却塔ファン41の回転数をプログラム制御する。第1制御部110は、
図6に示すように、湿球温度演算部120、第1演算部130、第2演算部140及び第1補正部150を含む。
【0068】
湿球温度演算部120は、大気の乾球温度Taと相対湿度xから、大気の湿球温度WBTを演算する回路である。湿球温度WBTの計測原理は、後に説明する。
【0069】
第1演算部130は、(8)式で示すように、冷却塔入口冷却水温度HWT(戻り冷却水の温度)から湿球温度演算部120より出力される大気の湿球温度WBTを減算して、冷却塔31の冷却能力を表す冷却指数ΔTqを算出する。第1演算部130は、例えば、差分器より構成することが出来る。
【0070】
ΔTq=HWT-WBT・・・(8)
【0071】
冷却塔入口冷却水温度HWT(戻り冷却水の温度)は、水温計54による実測値が好ましいが、予測値(推定値)でもよい。例えば、特許文献1に開示されているように、復水器器内温度を一定値にフィードバック制御する場合、HWTは復水器器内温度よりも約3℃程度低い一定の値になるため、その数値を用いてもよい。この場合、水温計54を省いてもよい。
【0072】
第2演算部140は、熱負荷QL0において、冷却指数ΔTqに対応する回転数指令値Frpm_0を、(3)式に従って算出するプログラムを有しており、冷却指数ΔTqから回転数指令値Frpm_0を、決定する。
図7に示す相関特性Lvは、(3)式をグラフ化したものであり、例えば、冷却指数ΔTqが「A」の場合、回転数指令値Frpm_0は、「B」に決定される。
【0073】
第2演算部140は、冷却指数ΔTqに対応する回転数指令値Frpm_0を、(3)式に従って算出するものであれば、関数発生器を用いた構成でもよいし、参照テーブルを用いた構成でもよい。
【0074】
第1補正部150は、第2演算部140の決定した回転数指令値Frpm_0を、熱負荷QLの変動に応じて補正する。この実施形態では、熱負荷QLは、蒸気タービン10から復水器20の器内に排出された蒸気であり、熱負荷QLは、発電機15の発電機出力kWに連動して、変動する。そのため、回転数指令値Frpm_0を、発電機15の発電機出力kWの変動に応じて補正する。
【0075】
第1補正部150は、除算器151、シグナルジェネレータ152、根号算出器153及び乗算器155を備える。
【0076】
除算器151には、発電機15から発電機出力kWが入力され、シグナルジェネレータ152から発電機出力基準値kW0が入力される。発電機出力基準値kW0は、例えば、発電機15の定格出力である。発電機出力基準値kW0は、熱負荷基準値QL0に対応する発電機出力である。除算器151は、「発電機出力kW」の「発電機出力基準値kW0」に対する比率を、熱負荷補正係数kqとして算出する。
【0077】
kq=kW/kW0・・・(9)
【0078】
根号算出器153は、熱負荷補正係数kqから、その平方根Kを算出する。
【0079】
K=√kq・・・(10)
【0080】
乗算器155は、回転数指令値Frpm_0に対して熱負荷補正係数kqの平方根Kを乗算して、VVVF43に出力する。
【0081】
Frpm_1=Frpm_0×K・・・(11)
Frpm_1は、補正後の回転数指令値である。
【0082】
これにより、冷却塔ファン41のモータ42の回転数は、VVVF43により、回転数指令値Frpm_1に制御される。つまり、冷却塔ファン41の回転数Frpmは、冷却塔31の冷却能力に応じて制御され、更に、熱負荷(発電機出力)QLの変動に連動して変化する。
【0083】
尚、第1補正部150はリアルタイムで補正を実行する。
【0084】
第2制御部180は、復水器20の器内温度EXTが目標器内温度EXT0に一致するように、冷却水ポンプ45の回転数Prpmをフィードバック制御する。第2制御部180は、差分器181と、比例積分器185を有している。
【0085】
差分器181には、設定器190から、復水器20の目標器内温度EXT0が入力される。設定器190は目標温度EXT0の手動入力が可能である。
【0086】
また、差分器181には、器内温度計21により計測される復水器20の器内温度EXTの計測値が入力される。差分器181は、器内温度計21により計測される器内温度EXTから目標器内温度EXT0を減算して、復水器20の器内温度EXTの目標温度EXT0に対する偏差を算出する。
【0087】
比例積分器185は、差分器181の出力する偏差の比例成分と累積成分に基づいて回転数指令値Prpmを算出し、冷却水ポンプ45のVVVF47に出力する。
【0088】
これにより、冷却水ポンプ45のモータ46の回転数は、VVVF47により、回転数指令値Prpmに制御されるため、復水器20の器内温度EXTを目標器内温度EXT0に一致させることが出来る。
【0089】
尚、第2制御部180は、復水器20の器内温度EXTを目標器内温度EXT0にフィードバック制御する場合に限らず、復水器20の器内圧力(絶対圧)を目標器内圧力にフィードバック制御する構成でもよい。
【0090】
2.湿球温度WBTの演算原理
図8は、乾球温度Taに対する相対湿度xと乾湿温度差ΔTaの関係を示すグラフであり、横軸は相対湿度x[%]、縦軸は乾湿温度差ΔTab[℃]である。乾湿温度差ΔTaは、乾球温度Taから湿球温度WBTを引いた値である。
【0091】
ΔTa=Ta-WBT・・・(12)
【0092】
図8に示すL1~L7は、各乾球温度5℃~35℃について、相対湿度xと乾湿温度差ΔTaの関係を示す近似直線である。各近似直線L1~L7は、以下の1次近似式で表すことができる。
【0093】
ΔTa=Px+Q・・・(13)
Pは近似直線Lの1次項(直線の傾き)、Qは近似直線の定数項、xは相対湿度である。
【0094】
図9は、各乾球温度Taについて、1次近似式ΔTaの1次項Pと定数項Qをまとめた図表である。1次項Pは負の値であり、大きさ(絶対値)は乾球温度が高い程、大きい。また、定数項Qは正の値であり、大きさ(絶対値)は乾球温度が高い程、小さい。
【0095】
(12)式と(13)式より、湿球温度WBTは、以下の(14)式で、算出することができる。
【0096】
WBT=Ta-ΔTa=Ta-(Px+Q)・・・(14)
【0097】
湿球温度演算部120は、大気の乾球温度Taと相対湿度xから、(14)式に基づいて、大気の湿球温度WBTを演算する。「P」、「Q」のデータは、メモリ等に記憶しておき、乾球温度Taに対応する値を読み出して使用してもよいし、乾球温度Taから計算で求めてもよい。計算方法は、「特開2020-134230」に開示の方法を用いることが出来る。尚、湿球温度WBTは、湿球温度計の計測値を用いてもよい。
【0098】
3.効果説明
この構成では、冷却塔ファン41の回転数を、大気状態により変化する冷却指数ΔTqを用いて制御することで、冷却塔31の冷却能力に応じた運転が可能となり、冷却塔ファン41の消費エネルギーを削減することが出来る。
【0099】
この構成では、冷却塔ファン41の回転数を、発電機出力kWの変動に応じて補正することで、発電機出力kWに応じた運転が可能である。そのため、冷却塔ファン41の消費エネルギーを更に削減することができ、冷却水系統設備30Aを省エネルギー化することが出来る。
【0100】
<実施形態2>
実施形態1では、冷却水系統設備30Aを用いて、蒸気タービン10から復水器20に排気される蒸気を冷却する例を示した。実施形態2では、冷却水系統設備30Bを復水器20以外の用途に使用する場合について説明する。
【0101】
冷却水系統設備を復水器20(蒸気の冷却)以外の用途に用いる場合、復水器器内温度に代わるフィードバック制御対象を選定する必要がある。フィードバック制御の対象として、「冷却塔出口冷却水温度LWT」と「冷却塔入口冷却水温度HWT」が考えられるため、省エネルギー化の観点から、どちらが適しているか、検討を行った。
【0102】
冷却塔設計条件は、
図10に示す通りである。
・冷却塔設計条件を、基準値として、動力削減効果について、試算した。
・制御の操作対象は冷却塔ファンの回転数とした。
・試算は、フィードバック制御対象をHWTとLWTで実施した。
・以降、制御対象HWTを「HWT制御」、制御対象LWTを「LWT制御」とする。
・制御設定値(基準値)は、HWT制御はHWT0、LWT制御はLWT0とした。
・両制御について、熱負荷QLが変動した場合の比較を行った。
【0103】
図11はファン回転数のグラフ、
図12はファン動力のグラフ、
図13はHWT制御とLWT制御のファン動力差を示すグラフである。尚、横軸は湿球温度である。
【0104】
本試算では、熱負荷QLの変動による影響を確認するため、熱負荷QLに相当する温度差ΔTを、5~10℃の幅にて、1℃刻みで変化させている。ΔT=HWT-LWTである。
【0105】
ΔTが基準値である8℃よりも低い場合、HWT制御の方がLWT制御に比べてファン回転数、動力は低い結果が得られた。これは、
図14に示すように、HWT制御の方がLWT制御に比べて、冷却指数ΔTqが大きいからと考えることが出来る。
【0106】
ΔTが基準値である8℃の場合、HWT制御とLWT制御のファン回転数、動力は同値となった。
【0107】
ΔTが基準値である8℃よりも高い場合、HWT制御の方がLWT制御に比べてファン回転数、動力は高い結果が得られた。これは、ΔTが高くなることでHWTがHWT0よりも高くなり、冷却指数ΔTqがHWT制御よりも増加するためである。
【0108】
HWT制御とLWT制御のファン動力差は、
図13に示すように、熱負荷QLに相当するΔTが小さくなるほどマイナスとなり、さらに、湿球温度が高くなるほどマイナスとなる。
【0109】
冷却塔31の設計条件(基準値)は、熱負荷QLが最も大きくなるケースとしている場合が一般的であり、この実施形態でも、同様の設定条件(QL0=最大熱負荷)とする。そのため、HWT制御とする方が動力削減効果は大きくなる。従って、この実施形態では、フィードバック制御対象をHWT、つまり冷却塔入口冷却水温度(戻り冷却水温度)とする。
【0110】
尚、熱負荷QLによっては、熱交換器入口冷却水温度を一定にすることが必要となる場合もあり、そのような用途に本技術を用いる場合、フィードバック制御対象をLWT、つまり冷却塔出口冷却水温度(冷却水温度)にすることも可能である。
【0111】
図15は冷却水系統設備30Bのシステム構成図、
図16は制御装置200のブロック図である。
【0112】
冷却水系統設備30Bは、冷却塔31と、往路管32と、復路管33と、2つの補機として冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45を含む。
【0113】
VVVF43は、冷却塔ファン41の制御用、VVVF47は、冷却水ポンプ45の制御用である。
【0114】
図15に示すように、熱交換器500には、往路管32と復路管33が接続されており、冷却塔31より供給される冷却水が、熱交換器500にて相手側の流体(冷却対象物)と熱交換することで、相手側の流体を冷却する。そして、熱交換器500から戻り冷却水は、冷却塔31にて大気と熱交換して一部が気化することにより、冷却される。
【0115】
冷却水系統設備30Bには、計器類として、大気温度計51、相対湿度計52、水温計53及び水温計54が設けられている。大気温度計51は乾球温度計であり、冷却塔周囲の大気の乾球温度Taを計測し、相対湿度計52は、冷却塔周囲の相対湿度xを計測する。
【0116】
水温計53は、往路管32のうち冷却塔31の出口部分にあって、冷却塔出口冷却水温度LWTを計測する。
【0117】
水温計54は、復路管33のうち冷却塔31の入口部分にあって、冷却塔入口冷却水温度HWTを計測する。これら各計器51~54の計測値は、以下に説明する制御装置200に入力される。
【0118】
制御装置200は、
図16に示すように、第1制御部210と、第2制御部280を有している。
【0119】
第1制御部210は、冷却塔31の冷却能力に基づいて、冷却塔ファン41の回転数Frpmをプログラム制御する。
【0120】
第1制御部210は、湿球温度演算部220、第1演算部230、第2演算部240及び第1補正部250を含む。
【0121】
湿球温度演算部220は、大気の乾球温度Taと相対湿度xから、大気の湿球温度WBTを演算する。
【0122】
第1演算部230は、(8)式で示すように、冷却塔入口冷却水温度HWTから大気の湿球温度WBTを減算して、冷却塔31の冷却能力を表す冷却指数ΔTqを算出する。第1演算部230は、例えば、差分器より構成することが出来る。
【0123】
尚、この実施形態では、HWTをフィードバック制御するため、HWTは実測値を使用せず、目標値HWT0を用いる。
【0124】
第2演算部240は、冷却塔ファン41の回転数指令値Frpm_0を算出するプログラムを保持しており、第1演算部230により算出した冷却指数ΔTqから、冷却塔ファン41の回転数指令値Frpm_0を決定する。Frpm_0は、熱負荷QL0において、冷却指数ΔTqに対応した回転数指令値(最適値)である。
【0125】
第1補正部250は、第2演算部240の決定した回転数指令値Frpm_0を、熱負荷QLの変動に応じて補正する。
【0126】
熱負荷QLは、すでに説明したように、「冷却塔出入口冷却水温度差ΔT」と「冷却水流量F」の積により、表すことが出来る。
QL=ΔT×F
【0127】
冷却水ポンプ45の回転数が可変である場合、冷却水流量Fは、冷却水ポンプ45の回転数Prpmに連動して変化する。そのため、この実施形態では、「ΔT×Prpm」の変動に応じて、冷却塔ファン41の回転数指令値Frpm_0を補正する。冷却水流量Fは、冷却水ポンプ45の回転数Prpmではなく、水量計による計測値を用いてもよい。
【0128】
第1補正部250は、差分器251、乗算器253、除算器255、シグナルジェネレータ256、根号算出器257及び乗算器259を備える。
【0129】
差分器251には、水温計54により計測される冷却塔入口冷却水温度HWTと、水温計53により計測される冷却塔出口冷却水温度LWTが入力される。
【0130】
差分器251は、冷却塔入口冷却水温度HWTから冷却塔出口冷却水温度LWTを減算して、冷却塔出入口冷却水温度差ΔTを算出する。
【0131】
ΔT=HWT-LWT・・・(15)
【0132】
乗算器253は、冷却塔出入口冷却水温度差ΔTと冷却水ポンプ45の回転数指令値Prpmの積を算出して、除算器255に出力する。また、シグナルジェネレータ256は、基準値ΔT0と基準値Prpm0の積を除算器255に出力する。ΔT0は、熱負荷QL0における温度差ΔT(基準値)であり、Prpm0は、熱負荷QL0における冷却水ポンプ45の回転数指令値Prpm(基準値)である。
【0133】
除算器255は、乗算器253の入力値ΔT×Prpmと、シグナルジェネレータ356の入力値ΔT0×Prpm0に基づいて、以下の(16)式より、熱負荷補正係数kqを算出する。
【0134】
kq=ΔT×Prpm/(ΔT0×Prpm0)・・・(16)
【0135】
根号算出器257は、熱負荷補正係数kqからその平方根Kを算出する。
K=√kq・・・(17)
【0136】
乗算器259は、第2演算部240にて決定した回転数指令値Frpm_0に対して、熱負荷補正係数kqの平方根Kを乗算して、VVVF43に出力する。
【0137】
Frpm_1=Frpm_0×K・・・(18)
Frpm_1は、冷却塔ファンの補正後の回転数指令値である。
【0138】
これにより、冷却塔ファン41のモータの回転数は、VVVF43により、回転数指令値Frpm_1に制御される。
【0139】
尚、第1補正部250はリアルタイムで補正を実行する。
【0140】
第2制御部280は、冷却塔入口冷却水温度HWTが目標温度HWT0に一致するように、冷却水ポンプ45の回転数Prpmをフィードバック制御する。第2制御部280は、差分器281と、比例積分器285を有している。
【0141】
差分器281には、設定器290から冷却塔入口冷却水温度HWTの目標温度HWT0が入力される。設定器290は目標温度HWT0の手動入力が可能である。
【0142】
また、差分器281には、水温計54により計測される冷却塔入口冷却水温度HWTの計測値が入力される。差分器281は、冷却塔入口冷却水温度HWTから目標温度HWT0を減算して、冷却塔入口冷却水温度HWTの目標温度HWT0に対する偏差を算出する。
【0143】
比例積分器285は、差分器281の出力する偏差の比例成分と累積成分とから、回転数指令値Prpmを決定して、VVVF47に出力する。
【0144】
これにより、冷却水ポンプ45のモータの回転数は、VVVF47により、回転数指令値Prpmに制御されるため、冷却塔入口冷却水温度HWTを目標温度HWT0に一致させることが出来る。
【0145】
この実施形態では、冷却塔ファン41の回転数を、熱負荷QLの変動に応じて補正することで、熱負荷QLに応じた運転(ファン回転数制御)が可能である。そのため、冷却塔ファン41の消費エネルギーを更に削減することができ、冷却水系統設備30Bを省エネルギー化することが出来る。
【0146】
また、この実施形態では、冷却塔入口冷却水温度HWTをフィードバック対象としているので、冷却塔出口冷却水温度LWTをフィードバック対象とする場合に比べて、熱負荷QLがQL0(最大熱負荷)以下の条件下で、冷却塔ファン41の消費エネルギーを削減できる。そのため、冷却水系統設備30Bを、より一層省エネルギー化することが出来る。
【0147】
<実施形態3>
実施形態2では、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の回転数を制御する場合について説明を行った。実施形態3では、冷却塔単体で、冷却塔ファン41の回転数Frpmのみ制御する場合について説明を行う。
【0148】
図17は冷却水系統設備30Cのシステム構成図、
図18は制御装置300のブロック図である。
【0149】
冷却水系統設備30Cは、冷却塔31と、往路管32と、復路管33と、2つの補機として冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45を含む。
【0150】
図17に示すように、熱交換器500には、往路管32と復路管33が接続されており、冷却塔31より供給される冷却水が、熱交換器500にて相手側の流体と熱交換することで、相手側の流体を冷却する構成となっている。
【0151】
また、冷却水系統設備30Cには、計器類として、大気温度計51、相対湿度計52、水温計53、水温計54及び水量計55が設けられている。
【0152】
水量計55は、往路管32にあって、冷却塔31から熱交換器500に供給される冷却水の水量を計測する。これら各計器51~55の計測値は、以下に説明する制御装置300に入力される。
【0153】
制御装置300は、冷却塔31の冷却能力に基づいて、冷却塔ファン41の回転数Frpmをプログラム制御する。
【0154】
制御装置300は、
図18に示すように、湿球温度演算部320、第1演算部330、第2演算部340、第1補正部350及び第2補正部360を含む。
【0155】
湿球温度演算部320は、大気の乾球温度Taと相対湿度xから、大気の湿球温度WBTを演算する。
【0156】
第1演算部330は、(8)式で示すように、冷却塔入口冷却水温度HWTから大気の湿球温度WBTを減算して、冷却塔31の冷却能力を表す冷却指数ΔTqを算出する。第1演算部330は、例えば、差分器より構成することが出来る。
【0157】
第2演算部340は、冷却塔ファン41の回転数指令値Frpm_0を算出するプログラムを保持しており、冷却指数ΔTqから、冷却塔ファン41の回転数指令値Frpm_0を決定する。Frpm_0は、熱負荷QL0において、冷却指数ΔTqに対応した回転数指令値(最適値)である。
【0158】
第1補正部350は、第2演算部340の算出した回転数指令値Frpm_0を、熱負荷QLの変動に応じて補正する。第1補正部350は、差分器351、乗算器353、除算器355、シグナルジェネレータ356及び乗算器359を備える。
【0159】
差分器351には、水温計54により計測される冷却塔入口冷却水温度HWTと、水温計53により計測される冷却塔出口冷却水温度LWTが入力される。
【0160】
差分器351は、冷却塔入口冷却水温度HWTから冷却塔出口冷却水温度LWTを減算して、冷却塔出入口冷却水温度差ΔTを算出する。
【0161】
乗算器353は、差分器351により算出した温度差ΔTと、水量計55により計測される冷却水流量Fの積を演算して、除算器355に出力する。シグナルジェネレータ356は、基準値ΔT0と基準値F0の積を除算器355に出力する。ΔT0は、熱負荷QL0における温度差ΔT(基準値)であり、F0は、熱負荷QL0における冷却水流量F(基準値)である。
【0162】
除算器355は、乗算器353の入力値ΔT×Fとシグナルジェネレータ356の入力値ΔT0×F0に基づいて、以下の(19)式より、熱負荷補正係数kqを算出する。
【0163】
kq=ΔT×F/(ΔT0×F0)・・・(19)
【0164】
乗算器359は、冷却塔ファン41の回転数指令値Frpm_0に対して、熱負荷補正係数kqを乗算して出力する。
【0165】
Frpm_1=Frpm_0×kq・・・(20)
Frpm_1は、冷却塔ファン41の熱負荷補正後の回転数指令値である。
【0166】
第2補正部360は、冷却塔入口冷却水温度HWTの目標温度HWT0に対する偏差に基づいて、補正後の回転数指令値Frpm_1を、更に補正する。第2補正部360は、差分器361と、比例積分器365及び加算器367を有している。
【0167】
差分器361は、冷却塔入口冷却水温度HWTとその目標温度HWT0から、冷却塔入口冷却水温度HWTの目標温度HWT0に対する偏差を算出する。目標温度HWT0は、設定器290の設定値を用い、冷却塔入口冷却水温度HWTは水温計54の計測値を用いる。設定器290は目標温度HWT0の手動入力が可能である。
【0168】
比例積分器365は、乗算器361の出力する偏差の比例成分と累積成分とに基づいて、冷却塔ファン41の回転数指令値Frpm_1の補正量ΔFを演算する。
【0169】
加算器367は、回転数指令値Frpm_1に対して補正量ΔFを加算して、回転数指令値Frpm_2を生成し、VVVF43に出力する。
Frpm_2=Frpm_1+ΔF・・・(21)
【0170】
これにより、冷却塔ファン41のモータは、冷却指数ΔTqから算出した回転数指令値Frpm_0に対して、「熱負荷QLの変動分」と「HWTの偏差分」の補正が加わった回転数指令値Frpm_2に制御される。
【0171】
以上により、冷却塔ファン41の回転数Frpmを、熱負荷QLの変動に応じて変化させつつ、冷却塔入口冷却水温度HWTが目標温度HWT0に一致するようにフィードバック制御することが出来る。
【0172】
<実施形態4>
実施形態3では、「冷却塔出入口冷却水温度差ΔT」と「冷却水流量F」とに基づいて熱負荷QLを算出した。そして、熱負荷QLを基準値QL0と比較して、熱負荷補正係数kqを算出した。
【0173】
QL=ΔT×F
kq=QL/QL0
QL0は、最大熱負荷(熱負荷QLの基準値)である。
【0174】
冷却水ポンプ45の回転数Prpmが一定など、「冷却水流量Fがほぼ一定」とみなせる場合、「冷却塔出入口冷却水温度差ΔT」のみから、熱負荷補正係数kqを算出することが出来る。
【0175】
kq=ΔT/ΔT0・・・(22)
ΔT0は、QL0時の温度差(ΔTの基準値)である。
【0176】
図19は、冷却塔ファン41を制御する制御装置400のブロック図である。制御装置400は、湿球温度演算部320、第1演算部330、第2演算部340、第1補正部450及び第2補正部360を備えており、制御装置300に対して第1補正部450のみ相違する。
【0177】
第1補正部450は、差分器451、除算器455、シグナルジェネレータ456及び乗算器459を備える。
【0178】
差分器451には、水温計54により計測される冷却塔入口冷却水温度HWTと、水温計53により計測される冷却塔出口冷却水温度LWTが入力される。差分器451は、冷却塔入口冷却水温度HWTから冷却塔出口冷却水温度LWTを減算して、冷却塔出入口冷却水温度差ΔTを算出する。
【0179】
差分器451は、算出した温度差ΔTを除算器455に出力する。シグナルジェネレータ456は、基準値ΔT0を除算器455に出力する。
【0180】
除算器455は、「差分器451の入力値ΔT」と「シグナルジェネレータ456の入力値ΔT0」に基づいて、上記の(22)式より、熱負荷補正係数kqを算出する。
【0181】
乗算器459は、第2演算部340にて決定した冷却塔ファン41の回転数指令値Frpm_0に対して、熱負荷補正係数kqを乗算して、回転数指令値Frpm_1を算出する。
【0182】
この構成では、実施形態3に比べて、第1補正部450を簡素化することが出来る。また、水量計55を省くことが出来る。
【0183】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0184】
(1)実施形態1では、冷却塔ファン41の回転数を冷却塔31の冷却指数ΔTqに応じてプログラム制御し、冷却水ポンプ45の回転数をフィードバック制御した。冷却塔ファン41の回転数をフィードバック制御し、冷却水ポンプ45の回転数を冷却塔31の冷却指数ΔTqに応じてプログラム制御してもよい。実施形態2も同様である。
【0185】
また、フィードバック制御は、制御目標値に対する偏差を小さくするように補機を制御するものであれば、カスケードタイプの制御でもよい。
【0186】
(2)実施形態2では、冷却塔入口冷却水温度HWTを制御対象に選定し、冷却水ポンプ45の回転数をフィードバック制御した。冷却塔出口冷却水温度LWTを制御対象に選定し、冷却水ポンプ45の回転数をフィードバック制御してもよい。また、冷却塔ファン41の回転数をフィードバック制御する場合(実施形態3)も同様である。
【0187】
(3)実施形態1では、冷却塔31の冷却指数ΔTqを、冷却塔入口冷却水温度HWTと大気の湿球温度WBTの温度差HWT-WBTを用いて表した。冷却塔31の冷却指数ΔTqは、冷却塔入口冷却水温度HWTと大気の湿球温度WBTとに基づいて、特定されていれば、2つの温度HWT、WBTの温度差以外の方法で、特定されていてもよい。
【0188】
30A、30B、30C 冷却水系統設備
31 冷却塔
32 往路管
33 復路管
41 冷却塔ファン
45 冷却水ポンプ
100、200、300、400 制御装置
110、210 第1制御部
130、230、330 第1演算部
140、240、340 第2演算部
150、250、350、450 第1補正部
360 第2補正部
180、280 第2制御部