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特開2023-33913冷凍システムおよび冷凍システムの制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033913
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】冷凍システムおよび冷凍システムの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/70 20180101AFI20230306BHJP
   F24F 11/54 20180101ALI20230306BHJP
   A01G 9/24 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F24F11/70
F24F11/54
A01G9/24 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139866
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000108890
【氏名又は名称】株式会社ダイキンアプライドシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊能 利郎
【テーマコード(参考)】
2B029
3L260
【Fターム(参考)】
2B029SA01
2B029SE01
2B029TA05
3L260AB01
3L260BA05
3L260CA12
3L260CA13
3L260CB63
3L260CB64
3L260EA07
3L260FA03
3L260FA06
3L260FB01
(57)【要約】
【課題】室内空気の温度と湿度を適切に調節できる冷凍システムの制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、複数の冷凍装置を備えた冷凍システムを制御する。制御装置は、取得動作と、第1制御動作と、第2制御動作とを行う。取得動作において、制御装置は、温度センサ及び湿度センサの計測値を取得する。第1制御動作において、制御装置は、温度センサの計測値が目標温度範囲に入るように、冷凍システムの冷却能力を調節する。第2制御動作において、制御装置は、温度センサの計測値が目標温度範囲に入っているときに、湿度センサの計測値が上記目標湿度範囲に入るように、冷凍システムの冷却能力を調節する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空気を冷却する冷却運転をそれぞれが行う複数の冷凍装置(31~34,41~44)を備えた冷凍システム(10)を制御する制御装置(20)であって、
室内空気の温度を計測する温度センサ(15)の計測値と、室内空気の湿度を計測する湿度センサ(16)の計測値とを取得する取得動作と、
上記温度センサ(15)の計測値が目標温度範囲から外れているときに、上記冷凍システム(10)の冷却能力を、上記温度センサ(15)の計測値が上記目標温度範囲に入るように調節する第1制御動作と、
上記温度センサ(15)の計測値が上記目標温度範囲に入っており、且つ上記湿度センサ(16)の計測値が目標湿度範囲から外れているときに、上記冷凍システム(10)の冷却能力を上記湿度センサ(16)の計測値が上記目標湿度範囲に入るように調節する第2制御動作とを行う
冷凍システムの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置(20)において、
上記第1制御動作と上記第2制御動作の一方または両方において、上記冷却運転を実行する冷凍装置(31~34,41~44)の定格冷却能力の合計が変化するように、複数の上記冷凍装置(31~34,41~44)のうち上記冷却運転を実行する冷凍装置(31~34,41~44)の組み合わせを変更することによって、上記冷凍システム(10)の冷却能力を調節する
冷凍システムの制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置(20)において、
上記第1制御動作と上記第2制御動作の一方または両方において、複数の上記冷凍装置(31~34,41~44)のうち上記冷却運転を実行する冷凍装置(31~34,41~44)の台数を変更することによって、上記冷凍システム(10)の冷却能力を調節する
冷凍システムの制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の制御装置(20)において、
複数の上記冷凍装置(31~34,41~44)のそれぞれについて、上記冷却運転を開始させる順位と、上記冷却運転を休止させる順位とを予め記憶する
冷凍システムの制御装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一つに記載の制御装置(20)において、
昼間の環境を模した明期と、夜間の環境を模した暗期とを実現可能な植物工場の空気調和を行う冷凍システム(10)の制御を行うように構成され、
上記明期における上記目標湿度範囲を、第1湿度以上で第2湿度以下の範囲とし、
上記暗期における上記目標湿度範囲を、第3湿度以下の範囲とする
冷凍システムの制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一つに記載の制御装置(20)と、
室内空気を冷却する冷却運転をそれぞれが行う複数の冷凍装置(31~34,41~44)とを備える
冷凍システム。
【請求項7】
請求項6に記載の冷凍システム(10)において、
複数の上記冷凍装置(31~34,41~44)のそれぞれは、冷却運転の休止中に、吸い込んだ室内空気を室内へ吹き出す送風動作を継続する
冷凍システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍システムおよび冷凍システムの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の冷凍装置を備えた冷凍システムが知られている。特許文献1には、この冷凍システムの一種である空調システムが開示されている。
【0003】
特許文献1の空調システムは、植物工場の栽培室の空気調和を行う。空調システムを構成する複数の空調機は、栽培室から吸い込んだ空気を冷却して栽培室へ送り返す。空調システムは、栽培室の温度に応じて冷却能力を調節する。また、各空調機において、空気を冷却すると、空気の温度が低下すると同時に、空気中の水分が凝縮する。そのため、空調システムは、室内空気の冷却と除湿の両方を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-250028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1の空調システムを含む冷凍システムは、室内空気の冷却と除湿の両方を行う。冷凍システムの除湿能力は、冷凍システムが発揮する冷却能力に応じて変化する。具体的には、冷凍システムの冷却能力を増やすと冷凍システムの除湿能力も増え、冷凍システムの冷却能力を減らすと冷凍システムの除湿能力も減る。
【0006】
しかし、空調対象空間において、冷却負荷が高いときに除湿負荷が高くなるとは限らず、冷却負荷が低いときに除湿負荷が低くなるとは限らない。そのため、空調対象空間の冷却負荷に応じて冷凍システムの冷却能力を調節すると、空調対象空間の湿度を適切に調節できないおそれがあった。
【0007】
本開示の目的は、室内空気の温度と湿度を適切に調節できる冷凍システムの制御装置と、それを備えた冷凍システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、室内空気を冷却する冷却運転をそれぞれが行う複数の冷凍装置(31~34,41~44)を備えた冷凍システム(10)を制御する制御装置(20)を対象とする。制御装置(20)は、室内空気の温度を計測する温度センサ(15)の計測値と、室内空気の湿度を計測する湿度センサ(16)の計測値とを取得する取得動作と、上記温度センサ(15)の計測値が目標温度範囲から外れているときに、上記冷凍システム(10)の冷却能力を、上記温度センサ(15)の計測値が上記目標温度範囲に入るように調節する第1制御動作と、上記温度センサ(15)の計測値が上記目標温度範囲に入っており、且つ上記湿度センサ(16)の計測値が目標湿度範囲から外れているときに、上記冷凍システム(10)の冷却能力を上記湿度センサ(16)の計測値が上記目標湿度範囲に入るように調節する第2制御動作とを行う。
【0009】
第1の態様では、制御装置(20)が第1制御動作と第2制御動作とを行う。第2制御動作において、制御装置(20)は、温度センサ(15)の計測値が目標温度範囲に入っているときに、湿度センサ(16)の計測値が目標湿度範囲に入るように冷凍システム(10)の冷却能力を調節する。そのため、冷凍システム(10)によって、室内空気の温度と湿度を適切に調節することができる。
【0010】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、制御装置(20)が、上記第1制御動作と上記第2制御動作の一方または両方において、上記冷却運転を実行する冷凍装置(31~34,41~44)の定格冷却能力の合計が変化するように、複数の上記冷凍装置(31~34,41~44)のうち上記冷却運転を実行する冷凍装置(31~34,41~44)の組み合わせを変更することによって、上記冷凍システム(10)の冷却能力を調節する。
【0011】
第2の態様において、制御装置(20)が“複数の冷凍装置(31~34,41~44)のうち冷却運転を実行する冷凍装置(31~34,41~44)の組み合わせ”を変更すると、“冷却運転を実行する冷凍装置(31~34,41~44)の定格冷却能力の合計”が変化し、その結果、冷凍システム(10)の冷却能力が変化する。
【0012】
本開示の第3の態様は、上記第1の態様において、制御装置(20)が、上記第1制御動作と上記第2制御動作の一方または両方において、複数の上記冷凍装置(31~34,41~44)のうち上記冷却運転を実行する冷凍装置(31~34,41~44)の台数を変更することによって、上記冷凍システム(10)の冷却能力を調節する。
【0013】
第3の態様において、制御装置(20)が“複数の冷凍装置(31~34,41~44)のうち冷却運転を実行する冷凍装置(31~34,41~44)の台数”を変更すると、冷凍システム(10)の冷却能力が変化する。
【0014】
本開示の第4の態様は、上記第3の態様において、制御装置(20)が、複数の上記冷凍装置(31~34,41~44)のそれぞれについて、上記冷却運転を開始させる順位と、上記冷却運転を休止させる順位とを予め記憶する。
【0015】
第4の態様において、制御装置(20)は、予め記憶する順位に基づいて冷凍装置(31~34,41~44)に冷却運転を開始させ又は休止させることによって、冷却運転を行う冷凍装置(31~34,41~44)の台数を変更する。
【0016】
本開示の第5の態様は、上記第1~第4のいずれか一つの態様において、昼間の環境を模した明期と、夜間の環境を模した暗期とを実現可能な植物工場の空気調和を行う冷凍システム(10)の制御を行うように構成され、上記明期における上記目標湿度範囲を、第1湿度以上で第2湿度以下の範囲とし、上記暗期における上記目標湿度範囲を、第3湿度以下の範囲とする。
【0017】
第5の態様の制御装置では、明期と暗期のそれぞれについて、目標湿度範囲が個別に設定される。
【0018】
本開示の第6の態様は、空調システム(10)を対象とし、上記第1~第5のいずれか一つの態様の制御装置(20)と、室内空気を冷却する冷却運転をそれぞれが行う複数の冷凍装置(31~34,41~44)とを備える。
【0019】
第6の態様では、制御装置(20)と複数の冷凍装置(31~34,41~44)とによって冷凍システム(10)が構成される。
【0020】
本開示の第7の態様は、上記第6の態様において、複数の上記冷凍装置(31~34,41~44)のそれぞれは、冷却運転の休止中に、吸い込んだ室内空気を室内へ吹き出す送風動作を継続する。
【0021】
第7の態様では、冷凍システム(10)を構成する各冷凍装置(31~34,41~44)が、冷却運転の休止中に送風動作を行う。冷凍装置(31~34,41~44)の冷却運転中に生じた凝縮水の一部は、送風動作中に室内空気と共に室内空間へ送り返される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態1の空調システムが設置された栽培室の平面図である。
図2図2は、実施形態1の空調システムを構成する空調機の概略構成図である。
図3図3は、実施形態1の制御装置の構成を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態1の制御装置が行う制御動作を示すフロー図である。
図5図5は、実施形態1の制御装置が記憶する空調機の順位を示す表である。
図6図6は、明期の栽培室における室内空気の温度と湿度の経時変化を示すグラフである。
図7図7は、暗期の栽培室における室内空気の温度と湿度の経時変化を示すグラフである。
図8図8は、実施形態2の制御装置が行う制御動作を示すフロー図である。
図9図9は、実施形態の変形例1の制御装置が記憶する空調機の順位を示す表である。
図10図10は、実施形態の変形例2の制御装置が記憶する空調機の組み合わせを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
《実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態の冷凍システムは、植物工場の栽培室(100)の空気調和を行う空調システム(10)である。この空調システム(10)は、冷凍装置である空調機(31~34,41~44)と、制御装置(20)とを備える。
【0024】
-栽培室-
本実施形態の空調システム(10)が設置される栽培室(100)について説明する。
【0025】
図1に示すように、栽培室(100)には複数の栽培棚(101)が設置される。栽培棚(101)には、野菜などの栽培対象物が設けられる。図示しないが、栽培室(100)には照明器具が設置される。栽培室(100)では、照明器具の発光量を調節することによって、昼間の環境を模した明期と、夜間の環境を模した暗期とが人工的に作り出される。
【0026】
-空調システム-
図1に示すように、空調システム(10)は、大容量空調機(41~44)と小容量空調機(31~34)とを四台ずつ備える。大容量空調機(41~44)及び小容量空調機(31~34)の台数は、単なる一例である。大容量空調機(41~44)の台数と小容量空調機(31~34)の台数は、互いに異なっていてもよい。
【0027】
空調システム(10)は、温度センサ(15)と、湿度センサ(16)と、制御装置(20)とを備える。温度センサ(15)及び湿度センサ(16)の計測値は、制御装置(20)に入力される。
【0028】
-空調機-
大容量空調機(41~44)は、定格冷房能力(定格冷却能力)が14kWの空調機である。小容量空調機(31~34)は、定格冷房能力(定格冷却能力)が8kWの空調機である。各空調機(31~34,41~44)の定格冷房能力の値は、単なる一例である。
【0029】
〈空調機の構成〉
図2に示すように、各空調機(31~34,41~44)は、室外機(50)と室内機(55)とを一台ずつ備える。なお、各空調機(31~34,41~44)は、複数台の室内機(55)を備えていてもよい。
【0030】
各空調機(31~34,41~44)において、室外機(50)と室内機(55)は、一対の連絡配管(60)によって接続される。各空調機(31~34,41~44)は、室外機(50)と室内機(55)の間で冷媒を循環させることによって、冷凍サイクルを行う。
【0031】
各空調機(31~34,41~44)の室内機(55)は、天井設置型の室内機である。各空調機(31~34,41~44)の室内機(55)は、室内熱交換器(56)と、室内ファン(57)と、吸込温度センサ(58)とを備える。室内機(55)は、栽培室(100)の室内空気を吸い込み、室内熱交換器(56)を通過した室内空気を栽培室(100)へ吹き出す。室内熱交換器(56)は、室内空気を冷媒と熱交換させる。吸込温度センサ(58)は、室内熱交換器(56)を通過する前の室内空気の温度を計測する。
【0032】
各空調機(31~34,41~44)の室外機(50)には、圧縮機(51)と個別制御器(52)とが設けられる。各空調機(31~34,41~44)では、その個別制御器(52)に、その吸込温度センサ(58)の計測値Tsが入力される。個別制御器(52)は、吸込温度センサ(58)の計測値Tsに基づいて、圧縮機(51)の運転容量(具体的には、回転速度)を調節する。また、個別制御器(52)は、吸込温度センサ(58)の計測値Tsに基づいて、後述する冷却運転と待機運転を相互に切り換える。
【0033】
図1に示すように、栽培室(100)では、向かい合った壁面のそれぞれの近傍に、大容量空調機(41~44)の室内機(55)と小容量空調機(31~34)の室内機(55)とが二台ずつ設置される。図1に示す栽培室(100)では、左側の壁面の近傍に、第1大容量空調機(41)及び第2大容量空調機(42)の室内機(55)と、第1小容量空調機(31)及び第2小容量空調機(32)の室内機(55)とが設置される。また、図1に示す栽培室(100)では、右側の壁面の近傍に、第3大容量空調機(43)及び第4大容量空調機(44)の室内機(55)と、第3小容量空調機(33)及び第4小容量空調機(34)の室内機(55)とが設置される。
【0034】
〈空調機の運転動作〉
各空調機(31~34,41~44)は、冷却運転と待機運転とを行う。
【0035】
冷却運転中の空調機(31~34,41~44)では、室外機(50)の圧縮機(51)が作動し、冷凍サイクルが行われる。また、冷却運転中の空調機(31~34,41~44)では、室内ファン(57)が作動し、室内熱交換器(56)が蒸発器として機能する。
【0036】
蒸発器として機能する室内熱交換器(56)では、室内空気が冷媒によって冷却される。その結果、室内熱交換器(56)では、室内空気の温度が低下すると共に、室内空気中の水蒸気が凝縮して凝縮水が生成する。室内熱交換器(56)において生成した凝縮水は、栽培室(100)の外部へ排出される。このように、蒸発器として機能する室内熱交換器(56)では、室内空気の冷却と除湿とが行われる。
【0037】
待機運転中の空調機(31~34,41~44)では、室外機(50)の圧縮機(51)が停止し、冷凍サイクルが休止する。また、待機運転中の空調機(31~34,41~44)では、室内ファン(57)が作動し、室内熱交換器(56)が休止する。待機運転中の空調機(31~34,41~44)において、室内熱交換器(56)における室内空気の冷却と除湿は行われない。また、待機運転中の空調機(31~34,41~44)は、室内ファン(57)を作動させることによって、室内機(55)が栽培室(100)から吸い込んだ室内空気を栽培室(100)へ送り返す送風動作を行う。
【0038】
〈個別制御器の制御動作〉
個別制御器(52)は、吸込温度センサ(58)の計測値Tsに基づいて、圧縮機(51)の運転容量を調節する。この制御動作について説明する。
【0039】
個別制御器(52)は、吸込温度センサ(58)の計測値Tsが目標温度範囲となるように、圧縮機(51)の運転容量を調節する。目標温度範囲は、温度T1以上、温度T2以下の範囲である。温度T1は、明期では例えば25℃に設定され、暗期では例えば15℃に設定される。温度T2は、温度T1よりも所定値(例えば、1℃)だけ高い値に設定される。
【0040】
吸込温度センサ(58)の計測値Tsが温度T1よりも低い場合(Ts<T1)、個別制御器(52)は、圧縮機(51)の運転容量を引き下げる。吸込温度センサ(58)の計測値Tsが温度T2よりも高い場合(Ts>T2)、個別制御器(52)は、圧縮機(51)の運転容量を引き上げる。
【0041】
個別制御器(52)は、吸込温度センサ(58)の計測値Tsに基づいて、冷却運転と待機運転を相互に切り換える。この制御動作について説明する。
【0042】
冷却運転中に、圧縮機(51)の運転容量が最小値であり、且つ吸込温度センサ(58)の計測値Tsが温度T1よりも低い(Ts<T1)状態が所定時間(例えば、数分間)にわたって継続すると、個別制御器(52)は、空調機(31~34,41~44)の運転状態を冷却運転から待機運転に切り換える。また、待機運転中に、吸込温度センサ(58)の計測値Tsが温度T2よりも高い(Ts>T2)状態が所定時間(例えば、数分間)にわたって継続すると、個別制御器(52)は、空調機(31~34,41~44)の運転状態を待機運転から冷却運転に切り換える。
【0043】
-温度センサ、湿度センサ-
図1に示すように、温度センサ(15)及び湿度センサ(16)は、栽培室(100)に設置される。温度センサ(15)は、栽培室(100)の室内空気の温度を計測する。湿度センサ(16)は、栽培室(100)の室内空気の相対湿度を計測する。
【0044】
なお、図1における温度センサ(15)及び湿度センサ(16)の設置位置は、単なる一例である。温度センサ(15)及び湿度センサ(16)は、栽培室の室内空気の温度と湿度を適切に計測できる位置に設置される。
【0045】
-制御装置の構成-
図3に示すように、制御装置(20)は、制御基板上に搭載されたマイクロコンピュータ(21)と、マイクロコンピュータ(21)を動作させるためのソフトウエアを格納するメモリーデバイス(22)とを備える。メモリーデバイス(22)は、半導体メモリである。
【0046】
制御装置(20)には、温度センサ(15)及び湿度センサ(16)の計測値が入力される。制御装置(20)は、温度センサ(15)及び湿度センサ(16)の計測値に基づいて、空調システム(10)の冷房能力(冷却能力)を調節する。制御装置(20)は、空調システム(10)の各空調機(31~34,41~44)に対して、切換信号を個別に出力する。
【0047】
切換信号は、空調機(31~34,41~44)の運転状態を冷却運転と待機運転の一方から他方へ切り換えることを指示する信号である。空調機(31~34,41~44)は、冷却運転を実行中に切換信号を受信すると、冷却運転を終了して待機運転を開始する。また、空調機(31~34,41~44)は、待機運転を実行中に切換信号を受信すると、待機運転を終了して冷却運転を開始する。
【0048】
-制御装置の制御動作の概要-
制御装置(20)は、空調システム(10)の実質定格能力を変更することによって、空調システム(10)の冷房能力を調節する。この明細書において、空調システム(10)の実質定格能力は、空調システム(10)の構成する空調機(31~34,41~44)のうち、冷却運転を実行中の空調機の定格冷房能力の合計である。
【0049】
制御装置(20)は、第1制御動作と第2制御動作とを行う。
【0050】
第1制御動作において、制御装置(20)は、温度センサ(15)の計測値が目標温度範囲から外れているときに、空調システム(10)の冷却能力を、温度センサ(15)の計測値が目標温度範囲に入るように調節する。目標温度範囲は、温度T1以上、温度T2以下の範囲である。制御装置(20)において設定された目標温度範囲は、空調機(31~34,41~44)の個別制御器(52)において設定された目標温度範囲と同じである。
【0051】
第2制御動作において、制御装置(20)は、温度センサ(15)の計測値が目標温度範囲に入っており、且つ湿度センサ(16)の計測値が目標湿度範囲から外れているときに、空調システム(10)の冷却能力を湿度センサ(16)の計測値が目標湿度範囲に入るように調節する。
【0052】
目標湿度範囲は、湿度H1以上、湿度H2以下の範囲である。目標湿度範囲は、例えば70%RH±15%RHの範囲である。この場合、湿度H1は55%RHに設定され、湿度H2は85%RHに設定される。明期の目標湿度範囲と、暗期の目標湿度範囲は、同じとしている。ただし、明期の目標湿度範囲と、暗期の目標湿度範囲は、異なっていてもよい。
【0053】
-制御装置の制御動作の詳細1-
制御装置(20)が空調システム(10)の冷房能力を調節する制御動作について、図4のフロー図を参照しながら説明する。制御装置は、図4に示す制御動作を、所定の時間毎(例えば、5分毎)に繰り返し行う。
【0054】
図4のフロー図において、ステップST1の処理が制御装置(20)の取得動作であり、ステップST2からステップST5までの処理が制御装置(20)の第1制御動作であり、ステップST6からステップST9までの処理が制御装置(20)の第2制御動作である。
【0055】
〈ステップST1〉
先ず、制御装置(20)は、ステップST1の処理を行う。ステップST1の処理において、制御装置(20)は、温度センサ(15)の計測値Trと、湿度センサ(16)の計測値Hrとを取得する。
【0056】
〈ステップST2〉
次に、制御装置(20)は、ステップST2の処理を行う。ステップST2の処理において、制御装置(20)は、“温度センサ(15)の計測値Trが温度T1よりも低い(Tr<T1)”という条件の成否を判断する。この条件が成立した場合、制御装置(20)は、ステップST3の処理を行う。一方、この条件が成立しない場合、制御装置(20)は、ステップST4の処理を行う。
【0057】
〈ステップST3〉
温度センサ(15)の計測値Trが温度T1よりも低いときは、空調システム(10)の冷房能力が栽培室(100)の冷房負荷に比べて大きすぎると判断できる。そこで、ステップST3の処理において、制御装置(20)は、空調システム(10)の実質定格能力を減らすための処理を行う。この処理の詳細については後述する。
【0058】
〈ステップST4〉
ステップST4の処理において、制御装置(20)は、“温度センサ(15)の計測値Trが温度T2よりも高い(Tr>T2)”という条件の成否を判断する。この条件が成立した場合、制御装置(20)は、ステップST5の処理を行う。一方、この条件が成立しない場合、制御装置(20)は、ステップST6の処理を行う。
【0059】
〈ステップST5〉
温度センサ(15)の計測値Trが温度T2よりも高いときは、空調システム(10)の冷房能力が栽培室(100)の冷房負荷に比べて小さすぎると判断できる。そこで、ステップST5の処理において、制御装置(20)は、空調システム(10)の実質定格能力を増やすための処理を行う。この処理の詳細については後述する。
【0060】
〈ステップST6〉
ステップST3の条件とステップST4の条件の両方が成立しない場合、温度センサ(15)の計測値Trは、目標温度範囲に入っている(T1≦Tr≦T2)。そこで、ステップST6の処理において、制御装置(20)は、“湿度センサ(16)の計測値Hrが湿度H1よりも低い(Hr<H1)”という条件の成否を判断する。この条件が成立した場合、制御装置(20)は、ステップST7の処理を行う。一方、この条件が成立しない場合、制御装置(20)は、ステップST8の処理を行う。
【0061】
〈ステップST7〉
湿度センサ(16)の計測値Hrが湿度H1よりも低いときは、空調システム(10)の除湿能力が栽培室(100)の除湿負荷に比べて大きすぎると判断できる。そこで、ステップST7の処理において、制御装置(20)は、空調システム(10)の実質定格能力を減らすための処理を行う。この処理の詳細については後述する。
【0062】
〈ステップST8〉
ステップST8の処理において、制御装置(20)は、“湿度センサ(16)の計測値Hrが湿度H2よりも高い(Hr>H2)”という条件の成否を判断する。この条件が成立した場合、制御装置(20)は、ステップST9の処理を行う。一方、この条件が成立しない場合、制御装置(20)は、図4のフロー図に示す制御動作を終了する。
【0063】
〈ステップST9〉
湿度センサ(16)の計測値Hrが温度H2よりも高いときは、空調システム(10)の除湿能力が栽培室(100)の除湿負荷に比べて小さすぎると判断できる。そこで、ステップST9の処理において、制御装置(20)は、空調システム(10)の実質定格能力を増やすための処理を行う。この処理の詳細については後述する。
【0064】
-制御装置の制御動作の詳細2-
本実施形態の制御装置(20)は、空調システム(10)の構成する空調機(31~34,41~44)のうち冷却運転を行う空調機の台数を変更することによって、空調システム(10)の実質定格能力を変更する。
【0065】
制御装置(20)のメモリーデバイス(22)は、図5に示す各空調機(31~34,41~44)の順位を記憶する。本実施形態の制御装置(20)では、小容量空調機(31~34)に比較的低い順位が割り当てられ、大容量空調機(41~44)に比較的高い順位が割り当てられる。制御装置(20)は、メモリーデバイス(22)が記憶する各空調機(31~34,41~44)の順位に基づいて選択した空調機(31~34,41~44)に対して、切換信号を送信する。制御装置(20)から切換信号を受信した空調機(31~34,41~44)は、その運転状態を冷却運転と待機運転の一方から他方へ切り換える。
【0066】
〈制御装置の低減処理〉
図4のステップST3及びステップST7の処理において、制御装置(20)は、空調システム(10)の実質定格能力を減らすための低減処理を行う。この低減処理について説明する。
【0067】
低減処理において、制御装置(20)は、冷却運転を実行中の空調機(31~34,41~44)を特定する。次に、制御装置(20)は、冷却運転を実行中の空調機(31~34,41~44)のうち、図5に示す順位が最も低い空調機を特定し、その特定した空調機(31~34,41~44)に対して切換信号を出力する。切換信号を受信した空調機(31~34,41~44)は、冷却運転を終了して待機運転を開始する。その結果、空調システム(10)では、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数が減少し、空調システム(10)の実質定格能力が減少する。
【0068】
第1小容量空調機(31)及び第2小容量空調機(32)が待機運転を実行中であり、残りの空調機(33,34,41~44)が冷却運転を実行中である場合を例に、低減処理について説明する。この場合の低減処理において、制御装置(20)は、冷却運転を実行中の空調機(33,34,41~44)のうち順位が最も低い第3小容量空調機(33)を特定する。そして、制御装置(20)は、第3小容量空調機(33)に対して切換信号を出力する。第3小容量空調機(33)は、制御装置(20)から切換信号を受信すると、冷却運転を終了して待機運転を開始する。
【0069】
制御装置(20)が低減処理を行うと、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数が減少する。その結果、空調システム(10)全体の冷房能力と除湿能力が減少する。
【0070】
〈制御装置の増加処理〉
図4のステップST5及びステップST9の処理において、制御装置(20)は、空調システム(10)の実質定格能力を増やすための増加処理を行う。この増加処理について説明する。
【0071】
増加処理において、制御装置(20)は、待機運転を実行中の空調機(31~34,41~44)を特定する。次に、制御装置(20)は、待機運転を実行中の空調機(31~34,41~44)のうち、図5に示す順位が最も高い空調機を特定し、その特定した空調機(31~34,41~44)に対して切換信号を出力する。切換信号を受信した空調機(31~34,41~44)は、待機運転を終了して冷却運転を開始する。その結果、空調システム(10)では、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数が増加し、空調システム(10)の実質定格能力が増加する。
【0072】
第1小容量空調機(31)及び第2小容量空調機(32)が待機運転を実行中であり、残りの空調機(33,34,41~44)が冷却運転を実行中である場合を例に、低減処理について説明する。この場合の低減処理において、制御装置(20)は、待機運転を実行中の空調機(31,32)のうち順位が最も高い第2小容量空調機(32)を特定する。そして、制御装置(20)は、第2小容量空調機(32)に対して切換信号を出力する。第2小容量空調機(32)は、制御装置(20)から切換信号を受信すると、待機運転を終了して冷却運転を開始する。
【0073】
制御装置(20)が増加処理を行うと、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数が増加する。その結果、空調システム(10)全体の冷房能力と除湿能力が増加する。
【0074】
-栽培室の温度と湿度の変化-
栽培室(100)の温度と湿度(相対湿度)の変化について、図6及び図7を参照しながら説明する。図6は明期の栽培室(100)を対象とし、図7は暗期の栽培室(100)を対象とする。
【0075】
〈明期〉
明期は、栽培対象物に光合成を行わせる時間帯である。明期の栽培室(100)では、栽培対象物の光合成の光源として用いられる全ての照明器具が点灯するため、照明器具の発熱量が多く、冷房負荷が大きい。そのため、栽培室(100)が明期の場合、空調システム(10)では、冷却運転を実行している空調機(31~34,41~44)の台数が比較的多い。冷却運転を実行している空調機(31~34,41~44)の台数が多いほど、空調システム(10)の除湿能力は高くなる。そのため、明期の栽培室(100)では、湿度が低くなりすぎるおそれがある。栽培室(100)の湿度が低くなり過ぎると、栽培対象物の光合成による蒸散が不足し、栽培対象物の発育障害を招くおそれがある。
【0076】
図6に示すように、明期の栽培室(100)では、温度センサ(15)の計測値Trと、湿度センサ(16)の計測値Hrとが次第に低下してゆく。明期の栽培室(100)では冷房負荷が高いため、時刻t1において、温度センサ(15)の計測値Trが温度T1に達する前に、湿度センサ(16)の計測値Hrが湿度H1に達する。そこで、制御装置(20)は、図4のステップST7の処理(低減処理)を行い、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数を減らす。
【0077】
冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数が減ると、空調システムの冷房能力と除湿能力が減少するため、温度センサ(15)の計測値Trと、湿度センサ(16)の計測値Hrとが次第に上昇する。そして、時刻t2では、湿度センサ(16)の計測値Hrが湿度H2に達する前に、温度センサ(15)の計測値Trが温度T2に達する。そこで、制御装置(20)は、図4のステップST5の処理(増加処理)を行い、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数を増やす。
【0078】
冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数が増えると、温度センサ(15)の計測値Trと、湿度センサ(16)の計測値Hrとが次第に低下してゆく。そして、時刻t3では、温度センサ(15)の計測値Trが温度T1に達する前に、湿度センサ(16)の計測値Hrが湿度H1に達する。そこで、制御装置(20)は、図4のステップST7の処理(低減処理)を行い、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数を減らす。
【0079】
冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数が減ると、空調システム(10)の冷房能力と除湿能力が減少するため、温度センサ(15)の計測値Trと、湿度センサ(16)の計測値Hrとが次第に上昇する。そして、時刻t4では、湿度センサ(16)の計測値Hrが湿度H2に達する前に、温度センサ(15)の計測値Trが温度T2に達する。そこで、制御装置(20)は、図4のステップST5の処理(増加処理)を行い、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数を増やす。
【0080】
このように、本実施形態の制御装置(20)が所定の制御動作を行うことにより、明期の栽培室(100)の湿度Hrが湿度H1以上に保たれる。その結果、栽培対象物の光合成による蒸散が充分に行われ、栽培対象物の発育障害を回避することができる。
【0081】
〈暗期〉
暗期は、栽培対象物に光合成を行わせない時間帯である。暗期の栽培室(100)では、栽培対象物の光合成の光源として用いられる照明器具が消灯するため、照明器具の発熱量が少なく、冷房負荷が小さい。そのため、栽培室(100)が暗期の場合、空調システム(10)では、冷却運転を実行している空調機(31~34,41~44)の台数が比較的少ない。冷却運転を実行している空調機(31~34,41~44)の台数が少ないほど、空調システム(10)の除湿能力は低くなる。そのため、暗期の栽培室(100)では、湿度が高くなりすぎるおそれがある。栽培室(100)の湿度が高くなり過ぎると、結露の発生や、それに伴うカビの発生などが起こるおそれがある。
【0082】
図7に示すように、暗期の栽培室(100)では、温度センサ(15)の計測値Trと、湿度センサ(16)の計測値Hrとが次第に低下してゆく。暗期の栽培室(100)では冷房負荷が低く、空調システム(10)の除湿能力が低くなっているため、時刻t1において、湿度センサ(16)の計測値Hrが湿度H1に達する前に、温度センサ(15)の計測値Trが温度T1に達する。そこで、制御装置(20)は、図4のステップST3の処理(低減処理)を行い、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数を減らす。
【0083】
冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数が減ると、空調システム(10)の冷房能力と除湿能力が減少するため、温度センサ(15)の計測値Trと、湿度センサ(16)の計測値Hrとが次第に上昇する。そして、時刻t2では、温度センサ(15)の計測値Trが温度T2に達する前に、湿度センサ(16)の計測値Hrが湿度H2に達する。そこで、制御装置(20)は、図4のステップST9の処理(増加処理)を行い、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数を増やす。
【0084】
冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数が増えると、温度センサ(15)の計測値Trと、湿度センサ(16)の計測値Hrとが次第に低下してゆく。そして、時刻t3では、湿度センサ(16)の計測値Hrが湿度H1に達する前に、温度センサ(15)の計測値Trが温度T1に達する。そこで、制御装置(20)は、図4のステップST3の処理(低減処理)を行い、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数を減らす。
【0085】
冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数が減ると、空調システム(10)の冷房能力と除湿能力が減少するため、温度センサ(15)の計測値Trと、湿度センサ(16)の計測値Hrとが次第に上昇する。そして、時刻t4では、温度センサ(15)の計測値Trが温度T2に達する前に、湿度センサ(16)の計測値Hrが湿度H2に達する。そこで、制御装置(20)は、図4のステップST9の処理(増加処理)を行い、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数を増やす。
【0086】
このように、本実施形態の制御装置(20)が所定の制御動作を行うことにより、暗期の栽培室(100)の湿度Hrが湿度H2以下に保たれる。その結果、結露の発生や、それに起因するカビの発生を回避することができる。
【0087】
-実施形態1の特徴(1)-
本実施形態の制御装置(20)は、温度センサ(15)の計測値Trが目標温度範囲に入っているときに、湿度センサ(16)の計測値Hrが目標湿度範囲に入るように、冷却運転を実行する空調機(31~34,41~44)の台数を調節する。そのため、栽培室(100)の明期と暗期の両方において、栽培室(100)内の室内空気の温度と湿度を適切に調節することができる。
【0088】
-実施形態1の特徴(2)-
本実施形態の冷凍システム(10)では、各空調機(31~34,41~44)が、待機運転において送風動作を行う。
【0089】
ここで、空調機(31~34,41~44)の運転状態が冷却運転から待機運転に切り換わったと仮定する。冷却運転中の空調機(31~34,41~44)では、室内機(55)の室内熱交換器(56)において空気中の水分が凝縮する。そのため、冷却運転が終了した直後の室内熱交換器(56)には、凝縮水が付着している。空調機(31~34,41~44)の運転状態が冷却運転から待機運転に切り換わっても、室内機(55)の室内熱交換器(56)を室内空気が通過し続ける。そして、冷却運転の終了時に室内熱交換器(56)に付着していた凝縮水は、再び気化して室内空気と共に栽培室(100)へ送り返される。
【0090】
上述したように、温度センサ(15)の計測値Trが目標温度範囲に入っている状態で湿度センサ(16)の計測値Hrが湿度H1を下回ると、制御装置(20)が切換信号を出力することによって、所定の空調機(31~34,41~44)の運転状態を冷却運転から待機運転に切り換える。そのとき、冷却運転中に室内熱交換器(56)に付着していた凝縮水が、待機運転中に再び気化して室内空気と共に栽培室(100)へ送り返される。従って、本実施形態によれば、栽培室(100)の室内空気の湿度を速やかに上昇させることができる。
【0091】
《実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態の冷凍システムは、実施形態1と同様に、植物工場の栽培室(100)の空気調和を行う空調システム(10)である。
【0092】
本実施形態の空調システム(10)は、制御装置(20)が実施形態1と異なる。本実施形態の制御装置(20)では、植物工場が明期であるときの目標湿度範囲と、植物工場が暗期であるときの目標湿度範囲とが異なる。ここでは、本実施形態の制御装置(20)について、実施形態1の制御装置(20)と異なる点を説明する。
【0093】
-明期における制御装置の制御動作-
本実施形態の制御装置(20)において、明期における目標湿度範囲は、実施形態1の目標湿度範囲と同様に、第1湿度H1以上、第2湿度H2以下の範囲である。植物工場が明期であるときに本実施形態の制御装置(20)が行う制御動作は、実施形態1の制御装置(20)が行う制御動作(図4のフロー図に示す制御動作)と同じである。
【0094】
-暗期における制御装置の制御動作-
本実施形態の制御装置(20)において、暗期における目標湿度範囲は、第3湿度H3以下の範囲である。つまり、暗期の目標湿度範囲では、上限値だけが設定され、下限値は設定されない。第3湿度H3は、第2湿度H2と同じであってもよいし、第2湿度H2と異なっていてもよい。
【0095】
暗期において、本実施形態の制御装置(20)は、図8のフロー図に示す制御動作を行う。本実施形態の制御装置(20)では、図4のステップST6及びステップST7の処理が省略され、図4のステップST8の処理に代えてステップST10の処理が行われる。図8のステップST1~ステップST5とステップST9の処理は、図4のステップST1~ステップST5とステップST9の処理と、それぞれ同じである。
【0096】
本実施形態の制御装置(20)は、温度センサ(15)の計測値Trが目標温度範囲に入っている場合(T1≦Tr≦T2)に、ステップST10の処理を行う。本実施形態の制御装置(20)が行う第2制御動作は、ステップST10及びステップST9の処理である。
【0097】
ステップST10の処理において、制御装置(20)は、“湿度センサ(16)の計測値Hrが第3湿度H3よりも高い(Hr>H3)”という条件の成否を判断する。この条件が成立した場合、制御装置(20)は、ステップST9の処理を行う。一方、この条件が成立しない場合、制御装置(20)は、図8のフロー図に示す制御動作を終了する。
【0098】
このように、暗期において、本実施形態の制御装置(20)は、温度センサ(15)の計測値Trが目標温度範囲に入っている状態(T1≦Tr≦T2)において、湿度センサ(16)の計測値Hrが第1湿度H1を下回っても、空調システム(10)の実質定格能力を減らすための低減処理を行わない。
【0099】
-実施形態2の特徴-
暗期では、栽培対象物が光合成や光合成に伴う蒸散を行わないため、栽培室(100)の潜熱負荷が比較的小さい。従って、制御装置(20)が増加処理を行うことによって空調システム(10)の除湿能力が増加すると、栽培室(100)の湿度が急激に低下するおそれがある。そのため、暗期において制御装置(20)が実施形態1の制御動作を行うと、空調機(31~34,41~44)の圧縮機が頻繁に発停し、圧縮機が故障する可能性が高くなる。
【0100】
一方、暗期では栽培対象物が蒸散を行わないため、栽培室(100)の湿度が低くなっても、栽培対象物の生育に及ぼす悪影響は小さい。
【0101】
そこで、本実施形態の制御装置(20)では、暗期の目標湿度範囲において下限値を設定しないことで、湿度センサ(16)の計測値Hrが目標湿度範囲を外れることによって制御装置(20)が増加処理を行う頻度を減らしている。そのため、本実施形態によれば、暗期における空調機(31~34,41~44)の圧縮機の発停回数を削減でき、圧縮機が故障する可能性を低減できる。
【0102】
《その他の実施形態》
上述した実施形態1及び2については、下記のような変形例が考えられる。
【0103】
-第1変形例-
実施形態1,2の制御装置(20)は、低減動作および増加動作において、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数を複数台ずつ変更するように構成されていてもよい。
【0104】
例えば、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の台数を二台ずつ増減させる場合、制御装置(20)のメモリーデバイス(22)は、図9に示すような各空調機(31~34,41~44)の順位を記憶する。図9では、対になった二台の空調機(31~34,41~44)に対して一つの順位が付与されている。
【0105】
本変形例の制御装置(20)は、低減処理において、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)のうち順位が最も低いグループの空調機に対して、切換信号を出力する。また、本変形例の制御装置(20)は、増加処理において、待機運転を行う空調機(31~34,41~44)のうち順位が最も高いグループの空調機に対して、切換信号を出力する。
【0106】
-第2変形例-
実施形態1,2の制御装置(20)は、低減動作および増加動作において、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の組み合わせを変更するように構成されていてもよい。
【0107】
本変形例の制御装置(20)のメモリーデバイス(22)は、図10に示すような空調機(31~34,41~44)の組み合わせの表を記憶する。図10に示す表では、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)と待機運転を行う空調機(31~34,41~44)の組み合わせが、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)の定格冷房能力の合計が小さい順に並んでいる。なお、図10では、冷却運転を行う空調機(31~34,41~44)に丸印が付され、待機運転を行う空調機(31~34,41~44)には印が付されていない。
【0108】
例えば、全ての小容量空調機(31~34)が待機運転を実行中であり、全ての大容量空調機(41~44)が冷却運転を実行中であると仮定する(図10の16番の組み合わせを参照)。
【0109】
この場合、低減処理を行う制御装置(20)は、冷却運転を行う空調機を、15番の組み合わせに変更する。具体的に、制御装置(20)は、第1小容量空調機(31)、第2小容量空調機(32)、第3小容量空調機(33)、第1大容量空調機(41)、及び第2大容量空調機(42)に冷却運転を実行させ、残りの空調機(34,43,44)に待機運転を実行させる。
【0110】
また、この場合、増加処理を行う制御装置(20)は、冷却運転を行う空調機を、17番の組み合わせに変更する。具体的に、制御装置(20)は、第1小容量空調機(31)、第2小容量空調機(32)、第1大容量空調機(41)、第2大容量空調機(42)、及び第3大容量空調機(43)に冷却運転を実行させ、残りの空調機(33,34,44)に待機運転を実行させる。
【0111】
-第3変形例-
実施形態1,2の空調システム(10)を構成する複数台の空調機(31~34,41~44)は、それぞれの定格冷房能力が同じであってもよい。
【0112】
-第4変形例-
実施形態1,2の空調システム(10)は、温度センサ(15)と湿度センサ(16)を複数ずつ備えていてもよい。この場合は、一つずつの温度センサ(15)と湿度センサ(16)が対になり、対になった温度センサ(15)と湿度センサ(16)が栽培室(100)の異なる位置に設置される。
【0113】
-第5変形例-
実施形態1,2の空調システム(10)の設置対象は、栽培室(100)に限定されない。本実施形態の空調システム(10)は、例えば食品工場に設置され、食品工場の作業空間の空気調和を行うように構成されていてもよい。
【0114】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。また、明細書および特許請求の範囲の「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上説明したように、本開示は、冷凍システムおよび冷凍システムの制御装置について有用である。
【符号の説明】
【0116】
10 空調システム(冷凍システム)
15 温度センサ
16 湿度センサ
20 制御装置
31~34 小容量空調機(冷凍装置)
41~44 大容量空調機(冷凍装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10