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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033917
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】生コンクリートの強度予測システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20230306BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230306BHJP
   G01N 3/00 20060101ALN20230306BHJP
【FI】
G01N33/38
G06Q10/04
G01N3/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139882
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】工藤 正智
(72)【発明者】
【氏名】早野 博幸
【テーマコード(参考)】
2G061
5L049
【Fターム(参考)】
2G061AA02
2G061AB10
2G061BA01
2G061CA08
2G061DA11
2G061EC02
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】品質検査前に生コンクリートの強度を高い精度で予測可能な生コンクリートの強度予測システムを提供する。
【解決手段】複数の学習済みモデルが記憶録される記憶部と、予測用入力データの入力を受け付けるデータ入力部と、生コンクリートの強度予測情報を含むデータを出力するデータ出力部とを備え、複数の学習済みモデルは、一次強度予測情報を導出する第一学習済みモデルと、二次強度予測情報を導出する第二学習済みモデルと、三次強度予測情報を導出する第三学習済みモデルとを含み、予測用入力データとして、予測対象の生コンクリートの配合関連情報、製造関連情報、及び品質関連情報が入力される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
教師データに基づく機械学習により生成された複数の学習済みモデルが記憶される記憶部と、
予測用入力データの入力を受け付けるデータ入力部と、
前記複数の学習済みモデルによって導出される生コンクリートの強度予測情報を含むデータを出力するデータ出力部とを備え、
前記複数の学習済みモデルは、第一教師データに基づく機械学習により生成された、一次強度予測情報を導出する第一学習済みモデルと、第二教師データに基づく機械学習により生成された、二次強度予測情報を導出する第二学習済みモデルと、第三教師データに基づく機械学習により生成された、三次強度予測情報を導出する第三学習済みモデルとを含み、
前記第一教師データは、生コンクリートの配合に関連する情報である配合関連情報を含む第一学習用入力データと、生コンクリートの強度情報を含む第一学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記第二教師データは、前記第一学習済みモデルが導出した一次強度予測情報、及び生コンクリートの製造に関連する情報である製造関連情報を含む第二学習用入力データと、生コンクリートの強度情報を含む第二学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記第三教師データは、前記第二学習済みモデルが導出した二次強度予測情報、及び打設後であって、予測しようとする時期よりも前に得られる生コンクリートの強度に関連する情報である品質関連情報を含む第三学習用入力データと、生コンクリートの強度情報を含む第三学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記予測用入力データとして、予測対象の生コンクリートの前記配合関連情報、前記製造関連情報、及び前記品質関連情報が入力されることを特徴とする生コンクリートの強度予測システム。
【請求項2】
前記複数の学習済みモデルのうちの少なくとも一つの学習済みモデルに対応する教師データにおいて、生コンクリートの製造場所、打設現場、又は運搬経路における環境に関連する情報である環境関連情報を含む学習用入力データと、学習用出力データとが関連付けられており、
前記予測用入力データとして、予測対象の生コンクリートに関する環境関連情報が入力されることを特徴とする請求項1に記載の生コンクリートの強度予測システム。
【請求項3】
生コンクリートの内部の温度情報、生コンクリートの打設後の硬化体の内部の温度情報、生コンクリートの周辺の温度情報、又は生コンクリートの打設後の硬化体の周辺の温度情報を取得し、前記データ入力部に対して取得した温度情報を含むデータを、前記品質関連情報として前記データ入力部に入力する温度センサを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の生コンクリートの強度予測システム。
【請求項4】
前記データ出力部は、出力するデータに含める生コンクリートの強度予測情報について、前記一次強度予測情報、前記二次強度予測情報、及び前記三次強度予測情報から選択可能に構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の生コンクリートの強度予測システム。
【請求項5】
前記複数の学習済みモデルは、重み付け学習用入力データと、重み付け学習用出力データとを関連付けてなる複数の教師データに基づく機械学習により生成された、前記予測用入力データに含まれる各情報に対して、生コンクリートの強度予測に対する寄与度に応じた重み付けをする係数を決定するための重み付け用学習済みモデルをさらに含み、
前記重み付け学習用入力データは、前記一次強度予測情報、前記二次強度予測情報、及び前記三次強度予測情報のうちの少なくとも一つを含み、
前記重み付け学習用出力データは、前記強度予測情報が導出された生コンクリートの実際に測定された強度に関する情報である強度測定値情報を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の生コンクリートの強度予測システム。
【請求項6】
前記配合関連情報、前記製造関連情報、及び前記品質関連情報のうちの、少なくとも一つの情報を、生コンクリートの製造工場における情報管理システムから取得することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の生コンクリートの強度予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コンクリートの強度を予測するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
生コンクリートの重要な特性の一つとして、コンクリート圧縮強度(以下、単に「圧縮強度」という。)がある。圧縮強度は、構造物を設計するにあたって、構造決定の基準や、型枠の脱型を行うタイミングを決定するための基準として用いられる。
【0003】
生コンクリートの圧縮強度は、上述したように、設計基準として用いられる重要な指標である。このため、生コンクリートは、一般的に打設後から所定に日数が経過した時に、要求される圧縮強度が発現しているかどうかを確認するための検査が実施される。この検査によって所定の基準を満たしていないと判定された場合、当該検査を行った生コンクリートは既に打設されているため、当該生コンクリートを使用した構造物に対して補強工事を行う必要がある。
【0004】
また、生コンクリートの圧縮強度の検査は、打設したコンクリートそのものではなく、品質管理用の試験体を用いて行われることが一般的でありながら、当該試験体の管理方法等は統一されてはいなかった。さらに、打設した生コンクリートと、実際に検査対象となる試験体とでは、保存される環境が異なることから、品質検査時の圧縮強度が異なってしまう場合が想定される。
【0005】
そこで、近年では、試験体を別途準備するのではなく、製造工場から出荷される時に、生コンクリートの配合データに基づいて、打設後から所定の日数が経過した時の圧縮強度を予測する試みがなされている。例えば、下記特許文献1には、所定の計算式を用いて、水セメント比(C/W)やスランプ値等から、打設後の生コンクリートの圧縮強度を推定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-98055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生コンクリートの圧縮強度は、水セメント比(C/W)が所定の範囲内であれば、時間経過に対して線形性を示すことが知られており、生コンクリートの圧縮強度の予測には、セメント種類ごとに求められた線形近似式が用いられている。
【0008】
ところが、実際に製造される生コンクリートは、製造時のミキサでの練り混ぜ方や、打設現場の環境が異なるため、水和反応の進み方がそれぞれの条件下で異なる。このため、生コンクリートの時間経過による圧縮強度は、実際には生コンクリートの配合に関する情報に基づく線形近似式に従って発現せず、精度よく予測することが難しかった。
【0009】
なお、生コンクリートの強度は、圧縮強度以外にも曲げ強度やヤング率等もあり、曲げ強度等、さらには、標準水中養生強度や現場水中養生強度等も含めて高い精度で予測できることも期待されている。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、品質検査前に生コンクリートの強度を高い精度で予測可能な生コンクリートの強度予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の生コンクリートの強度予測システムは、
教師データに基づく機械学習により生成された複数の学習済みモデルが記憶される記憶部と、
予測用入力データの入力を受け付けるデータ入力部と、
前記複数の学習済みモデルによって導出される生コンクリートの強度予測情報を含むデータを出力するデータ出力部とを備え、
前記複数の学習済みモデルは、第一教師データに基づく機械学習により生成された、一次強度予測情報を導出する第一学習済みモデルと、第二教師データに基づく機械学習により生成された、二次強度予測情報を導出する第二学習済みモデルと、第三教師データに基づく機械学習により生成された、三次強度予測情報を導出する第三学習済みモデルとを含み、
前記第一教師データは、生コンクリートの配合に関連する情報である配合関連情報を含む第一学習用入力データと、生コンクリートの強度情報を含む第一学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記第二教師データは、前記第一学習済みモデルが導出した一次強度予測情報、及び生コンクリートの製造に関連する情報である製造関連情報を含む第二学習用入力データと、生コンクリートの強度情報を含む第二学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記第三教師データは、前記第二学習済みモデルが導出した二次強度予測情報、及び打設後であって、予測しようとする時期よりも前に得られる生コンクリートの強度に関連する情報である品質関連情報を含む第三学習用入力データと、生コンクリートの強度情報を含む第三学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記予測用入力データとして、予測対象の生コンクリートの前記配合関連情報、前記製造関連情報、及び前記品質関連情報が入力されることを特徴とする。
【0012】
本発明の品質予測システムで用いられる配合関連情報は、打設後の生コンクリートにおける水和反応がどのように進展し、時間経過によってどの程度の強度が発現するかを予測するための要素として用いられる。配合関連情報の具体的な内容については、「発明を実施するための形態」の項目において例示列挙して説明される。
【0013】
製造関連情報は、製造される生コンクリートにおける水和反応が進行する速度等に寄与する情報であって、打設後の生コンクリートにおける水和反応がどのように進展し、時間経過によってどの程度の強度が発現するかを予測するための要素として用いられる。
【0014】
品質関連情報は、打設後の所定の材齢(例えば、材齢1日、3日、7日、14日等)における、生コンクリートの圧縮強度、曲げ強度、ヤング係数等の情報を含む。また、品質関連情報は、現場水中養生や標準水中養生による強度の情報も含む。
【0015】
本発明の強度予測システムは、まず、配合関連情報と、実際に発現した生コンクリートの強度との関係性に基づいて学習した第一学習済みモデルによって、予測対象となる生コンクリートの配合関連情報から、実際に生コンクリートに発現した強度に関連する一次強度予測情報を導出する。
【0016】
そして、本発明の強度予測システムは、データ入力部に製造関連情報が入力されると、第二学習済みモデルが、製造関連情報に基づいて第一学習済みモデルが出力した一次強度予測情報を修正し、二次強度予測情報を導出する。当該修正が行われることにより、強度予測システムによる生コンクリートの強度予測は、製造関連情報のうちの生コンクリートの強度発現に影響を及ぼす、例えば、ミキサでの練り混ぜ時間等の情報によるズレも含めた予測となる。
【0017】
そして、本発明の強度予測システムは、データ入力部に品質関連情報が入力されると、第三学習済みモデルが、品質関連情報に基づいて第二学習済みモデルが出力した二次強度予測情報を修正し、三次強度予測情報を導出する。当該修正が行われることにより、強度予測システムによる生コンクリートの強度予測は、実際の強度発現に関する途中経過の情報によって修正される。つまり、強度予測システムは、二次強度予測情報に基づく強度の予測と、実際に発現している生コンクリートの強度とがどの程度乖離しているのかという情報に基づいて、二次強度予測情報をさらに修正した三次強度予測情報を出力する。
【0018】
つまり、本発明の強度予測システムは、生コンクリートの配合関連情報のみならず、生コンクリートの強度発現に影響する要素となる、製造関連情報、及び品質関連情報を加味した予測ができ、より高い精度で生コンクリートの強度発現を予測することができる。また、本発明の強度予測システムは、各学習済みモデルが出力した強度予測情報を、製造関連情報、品質関連情報に基づいて、前段の学習済みモデルが導出した強度予測情報を修正しながら強度発現を予測する構成であることから、各学習済みモデルが導出する強度予測情報を解析することで、どの情報が生コンクリートの強度発現に大きく影響しているかを、容易に解析することができる。
【0019】
上記強度予測システムは、
前記複数の学習済みモデルのうちの少なくとも一つの学習済みモデルに対応する教師データにおいて、生コンクリートの製造場所、打設現場、又は運搬経路における環境に関連する情報である環境関連情報を含む学習用入力データと、学習用出力データとが関連付けられており、
前記予測用入力データとして、予測対象の生コンクリートに関する環境関連情報が入力されても構わない。
【0020】
環境関連情報は、打設された生コンクリートが予測しようとする時期までに、どのような環境下に曝されるかを特定するための要素として用いられる。
【0021】
気温や湿度は、生コンクリートの水和反応に進行に影響を及ぼすため、強度の予測に影響を及ぼす要素となる。したがって、上記構成とすることで、本発明の強度予測システムは、より高い精度で生コンクリートの強度を予測することができる。
【0022】
上記強度予測システムは、
生コンクリートの内部の温度情報、生コンクリートの打設後の硬化体の内部の温度情報、生コンクリートの周辺の温度情報。又は生コンクリートの打設後の硬化体の周辺の温度情報を取得し、前記データ入力部に対して取得した温度情報を含むデータを、前記品質関連情報として前記データ入力部に入力する温度センサを備えていても構わない。
【0023】
本明細書における「周辺」とは、生コンクリートの表面からの離間距離が1km以下の領域をいう。
【0024】
生コンクリートは、水和反応の進行に伴い発熱するという特徴を有するため、積算温度を計測することで強度を予測することができる。したがって、上記構成とすることで、本発明の強度予測システムは、より高い精度で生コンクリートの強度を予測することができる。
【0025】
上記強度予測システムにおいて、
前記データ出力部は、出力するデータに含める生コンクリートの強度予測情報について、前記一次強度予測情報、前記二次強度予測情報、及び前記三次強度予測情報から選択可能に構成されていても構わない。
【0026】
上記構成とすることで、それぞれのユーザが、データ出力部から出力させる情報が参照したい情報となるように切り替えることができる。例えば、製造現場の担当者や管理者は、配合関連情報に基づく予測情報を参照して、各原料の配合の割合等を再調整するかどうかを判断したい場合があるため、データ出力部から一次強度予測情報が出力されるように切り替えることができる。また、打設現場の管理者や生コンクリートの製造工場の管理者等は、製造工程の把握や製造工程に問題が無いかどうかを確認したい場合があるため、データ出力部から全ての強度予測情報が出力されるように切り替えることができる。
【0027】
上記強度予測システムにおいて、
前記複数の学習済みモデルは、重み付け学習用入力データと、重み付け学習用出力データとを関連付けてなる複数の教師データに基づく機械学習により生成された、前記予測用入力データに含まれる各情報に対して、生コンクリートの強度予測に対する寄与度に応じた重み付けをする係数を決定するための重み付け用学習済みモデルをさらに含み、
前記重み付け学習用入力データは、前記一次強度予測情報、前記二次強度予測情報、及び前記三次強度予測情報のうちの少なくとも一つを含み、
前記重み付け学習用出力データは、前記強度予測情報が導出された生コンクリートの実際に測定された強度に関する情報である強度測定値情報を含んでいても構わない。
【0028】
上記強度予測システムは、
前記配合関連情報、前記製造関連情報、及び前記品質関連情報のうちの、少なくとも一つの情報を、生コンクリートの製造工場における情報管理システムから取得するように構成されていても構わない。
【0029】
「生コンクリート工場における情報管理システム」とは、生コンクリートの製造工場において導入されるシステムであって、生コンクリートの製造、出荷、運搬等に関する情報を管理するためのシステムである。本明細書において、「情報管理システム」については、大規模な管理システムに限らず、例えば、生コンクリートに関する情報のデータベースが構成され、適宜必要な情報を読み出すことができるだけの簡易なシステム等をも想定されている。
【0030】
上記構成とすることで、本発明の強度予測システムは、生コンクリートの強度の予測を繰り返すたびに、より影響が大きい要素を見い出し、次第に当該要素を重視した予測が行われるように学習済みモデルが自動的に最適化される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、品質検査前に生コンクリートの強度を高い精度で予測可能な生コンクリートの強度予測システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】生コンクリートの品質予測システムの一実施態様の模式的な全体構成図である。
図2】メインサーバの一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
図3】メインサーバ内で行われる各データの入出力の詳細を図示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の生コンクリートの強度予測システムについて、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の個数は、実際の個数と必ずしも一致していない。
【0034】
本発明の生コンクリートの強度予測システムは、後述される生コンクリートの配合関連情報、製造関連情報、及び品質関連情報を含む学習用入力データと、生コンクリートの強度情報を含む学習用出力データとを関連付けてなる複数の教師データに基づく機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、生コンクリートの強度を予測するシステムである。
【0035】
本発明の強度予測システムに搭載される学習済みモデルは、第一学習済みモデル、第二学習済みモデル、及び第三学習済みモデルからなる。そして、各学習済みモデルに適用される学習用入力データに含まれる各情報は、それぞれ適用される学習済みモデルに対して、第一学習用入力データ、第二学習用入力データ、及び第三学習用入力データに分類される。そして、それぞれの学習済みモデルから導出される強度予測情報は、一次強度予測情報、二次強度予測情報、三次強度予測情報として分類される。
【0036】
本実施形態において、第一学習用入力データは配合関連情報、第二学習用入力データは製造関連情報、第三学習用入力データは品質関連情報である。最初に、配合関連情報、製造関連情報、及び品質関連情報の詳細と、これらの情報と生コンクリートの強度との関係性について説明する。なお、各学習用入力データは、環境関連情報を含んでいてもよいため、ここで、環境関連情報についても併せて説明する。
【0037】
[配合関連情報]
配合関連情報は、具体的には、水セメント比(W/C)、セメント種類、混和剤種類、混和剤量、及び単位水量が挙げられる。本発明に用いられる第一学習済みモデルに適用される配合関連情報は、上記の各配合関連情報のうちの一種だけを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
配合関連情報は、製造される生コンクリートにおける水和反応が進行する速度等に寄与する情報であって、打設後の生コンクリートにおける水和反応がどのように進展し、時間経過によって強度がどのように変化するかを予測するための要素となる。このため、生コンクリートの強度の予測値に関連する強度予測情報は、配合関連情報と関連付けることができる。
【0039】
したがって、配合関連情報を含む第一学習用入力データ、強度予測情報を含む学習用出力データとして機械学習を行って生成された生コンクリートの強度を予測するための第一学習済みモデルを適用することで、製造される生コンクリートの強度を予測することができる。
【0040】
なお、上記以外の配合関連情報としては、セメントクリンカーの原料に関するデータ、セメントクリンカーの焼成条件に関するデータ、セメントの粉砕条件に関するデータ等を用いることができるがこれに限られない。また、配合関連情報は、セメント製造における配合関連の情報の他に、骨材や水等の生コンクリートに配合されるものにおける、配合関連の情報であってもよく、さらには、骨材や水等の生コンクリートの配合割合を決定するために考慮される、生コンクリートの出荷日や出荷時刻等の情報であってもよい。例えば、コンクリートの設計強度、単位水量、単位セメント量、セメント密度、セメント比表面積、粗骨材種類、単位粗骨材量、細骨材種類、単位細骨材量、骨材密度、粗粒率、細骨材率、粒度分布、細骨材&粗骨材の密度、吸水率、含水率、表面水率、最大寸法、セメントの化学組成、鉱物組成、粒度分布、ふるい試験残分量、色調や、セメントに含まれる各鉱物の鉱物学的性質及び結晶学的性質や、セメントに含まれる石膏の半水化率等の、セメント全体に関するデータも用いることができる。また、特に、設計スランプ値を好適に用いることができる。設計スランプ値の情報は、荷卸し時スランプ値との相関が高いため、特に、他の配合関連情報が少なかった場合に、設計スランプ値を配合関連情報として用いることにより、より精度よく荷卸し時スランプ値を予測することができる。
【0041】
[製造関連情報]
製造関連情報は、具体的には、ミキサ種類、ミキサ形式、練り混ぜ時間、練り混ぜ音、電力負荷値、練り混ぜ時の生コンクリートの温度、ミキサ内温湿度等が挙げられる。第二学習済みモデルに適用される製造関連情報は、上記の各製造関連情報のうちの一種だけを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
製造関連情報は、練り混ぜ中の生コンクリートの硬さや流動性を確認できる要素であり、製造される生コンクリートにおける水和反応が進行する速度等に寄与する情報であって、打設後の生コンクリートにおける水和反応がどのように進展し、時間経過によって強度がどのように変化するかを予測するための要素となる。
【0043】
したがって、製造関連情報を含む第二学習用入力データと、強度予測情報を含む学習用出力データとによって機械学習が行われて生成された第二学習済みモデルが適用された品質予測システムは、生コンクリートの強度をより高い精度で予測することができる。
【0044】
なお、上記以外の製造関連情報としては、空気量、各材料の温度、保管する場所(容器)の温湿度、バッチャーデータ(加温・冷却装置種類、貯蔵水温度、貯蔵骨材温度、貯蔵セメント温度、計量瓶形式、吐出量、最大吐出圧力等)、塩化物含有量、ひび割れ抵抗性、動弾性係数、動せん断弾性係数、動ポアソン比、硬化体空隙量、及び空隙径分布、耐久性、色調、生コンクリート中の各材料の分離状況、流動性、レオロジーに関する値(塑性粘度、降伏値等)、生コンクリート中の塩化物含有量等を用いることができる。
【0045】
[品質関連情報]
品質関連情報は、打設後であって、予測しようとする時期よりも前に得られる生コンクリートの強度等に関連する情報である。つまり、予測時期である28日材齢よりも、前の所定の材齢(例えば、材齢1日、3日、7日、14日等)における、生コンクリートの圧縮強度、曲げ強度、ヤング係数等が挙げられる。第三学習済みモデルに適用される品質関連情報は、上記の各品質関連情報のうちの一種だけを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。加えて、品質関連情報には、生コンクリートの内部、生コンクリートの打設後の硬化体の内部、又は、周辺の温度情報も含まれる。なお、生コンクリートの打設後の硬化体とは、少なくとも生コンクリートの状態よりは硬化が進んでいるものを意味し、共用の基準となる強度まで達する程度に硬化しているものに限られない。
【0046】
品質関連情報は、打設後から所定に時間が経過した時の生コンクリートの実際の強度が、第一学習済みモデル、及び第二学習済みモデルで導出した強度予測情報に対してどの程度異なっているかを特定し、予測とのズレを補正するための要素となる。
【0047】
したがって、品質関連情報を含む学習用入力データと、強度予測情報を含む学習用出力データとによって機械学習が行われて生成された第三学習済みモデルが適用された強度予測システムは、生コンクリートの強度をより高い精度で予測することができる。
【0048】
[環境関連情報]
環境関連情報は、具体的には、打設現場における日射量、風速、風向き、天候、気温、湿度、標高又は生コンクリートの製造場所における天候、湿度、標高、外気温等である。特に、製造場所の外気温は、生コンクリートの強度予測に用いる情報として好適である。また、他に適用可能な環境関連情報としては、アジテータ車が走行する経路の天候、湿度、標高、外気温等、すなわち、生コンクリートの運搬経路における環境に関連する情報が挙げられる。アジテータ車内の温度や、アジテータ車が走行する経路の天候等の運搬中の環境関連情報は、その取得に特別な手段が必要であるが、製造場所での外気温を用いることにより、比較的簡易な方法で、環境関連情報が取得できる。各学習済みモデルに適用される環境関連情報は、上記の各環境関連情報のうちの一種だけを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
環境関連情報は、打設後の生コンクリートがどのような環境下に曝されるかを特定するための要素となる。つまり、生コンクリートの水和反応の進行が、外気温等の影響を受けて早くなるのか遅くなるのか等を把握するための要素となる。
【0050】
したがって、環境関連情報を含む学習用入力データと、強度予測情報を含む学習用出力データとによって機械学習が行われて生成された学習済みモデルが適用された品質予測システムは、生コンクリートの強度をより高い精度で予測することができる。
【0051】
以上より、第一学習済みモデル、第二学習済みモデル、及び第三学習済みモデルが適用された品質予測システムは、配合関連情報に基づく線形近似による予測するよりも高い精度で、生コンクリートの強度を予測することができる。
【0052】
さらに、環境関連情報を含む学習用入力データと、強度予測情報を含む学習用出力データとによって機械学習を行って生成された学習済みモデルが適用された品質予測システムは、生コンクリートの強度をより高い精度で予測することができる。
【0053】
また、上記の配合関連情報、製造関連情報、及び品質関連情報のうち、少なくとも一つの情報を、生コンクリート工場における既存の情報管理システムから取得する構成としても構わない。具体的には、既存の生コンクリート工場における、生コンクリートを出荷時に通常使用する、指定した材料の配合情報を管理するシステムから、上記の配合関連情報を取得してもよい。また、生コンクリートの出荷時に試料を採取し、試験体を作成して得られたと、所定の材齢(例えば、材齢1日、3日、7日、14日等)における、生コンクリートの圧縮強度、曲げ強度、ヤング係数等のデータが入力され、それを記憶し管理する情報管理システムから、上記の品質関連情報を取得してもよい。さらに、生コンクリートの練り混ぜ時の状況を管理する管理システムから、練り混ぜ時間、練り混ぜ音、電力負荷値、練り混ぜ時の生コンクリートの温度、ミキサ内温湿度等の製造関連情報を取得してもよい。なお、上記の情報管理システムは、配合関連情報、製造関連情報、及び品質関連情報の取得方法に関する一例であって、各関連情報の取得方法を限定するものではない。
【0054】
各学習済みモデルの学習に用いる教師データのサンプルの数は、学習用入力データから荷卸し時スランプ情報を導出するために必要な特徴量を抽出し、さらに予測精度を高める観点から、好ましくは100以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは10,000以上、さらに好ましくは50,000以上、特に好ましくは100,000以上である。さらに、各学習済みモデルにおける学習回数は、予測精度を高める観点から、好ましくは1,000回以上、より好ましくは8,000回以上、特に好ましくは10,000回以上であるが、特に限定されない。例えば、学習データとして質の高い1つのサンプルのみを教師データとして採用しても構わない。
【0055】
次に、本発明の強度予測ステムで用いられる学習済みモデルを作成するための機械学習の方法について説明する。本発明の強度予測ステムで用いられる学習済みモデルを作成するための機械学習の方法としては、例えば、ニューラルネットワーク、線形回帰、決定木、サポートベクター回帰、アンサンブル法、サポートベクターマシン、判別分析、単純ベイズ法、最近傍法等が挙げられる。これらの方法は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
これらの方法の中でも、より高い精度で品質を予測することができる観点から、ニューラルネットワークによる機械学習が選択されることが好ましい。ニューラルネットワークは、より高い精度で品質を予測することができる観点から、入力層と出力層の間に一つ以上の中間層を有する階層型のニューラルネットワークが好適である。
【0057】
ニューラルネットワークの例としては、三次元畳み込みニューラルネットワーク(3DCNN:3D Convolutional Neural Network)等の畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)や、深層ニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)や、再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)や、長期・短期記憶(LSTM:Long Short-Term memory)ニューラルネットワーク(LSTMを用いて再帰型ニューラルネットワークを改良したもの)等が挙げられる。
【0058】
これらの中でも、画像認識の分野において優れた性能を有する、畳み込みニューラルネットワーク(中間層として、畳み込み層やプーリング層等を有するニューラルネットワーク)がより好適である。畳み込みニューラルネットワークは、画像データから特徴量を検出し、該特徴量を用いて、分類又は回帰を行うことが可能な予測モデルを作成することができる。畳み込みニューラルネットワークにおける、畳み込み層とプーリング層の組み合わせからなる層の数は、より高い精度で予測をすることができる観点から、好ましくは二つ以上、より好ましくは三つ以上である。
【0059】
また、機械学習を行うためのツールとしては、例えば、Google社が開発したソフトウェアライブラリである「TensorFlow(登録商標)」や、IBM社が開発したシステムである「IBM Watson(登録商標)」等を用いることができる。
【0060】
次に、強度予測システム1の具体的な構成について説明する。
【0061】
本発明の生コンクリートの強度予測システム1の第一実施形態の構成について説明する。図1は、生コンクリートの強度予測システム1の一実施態様の模式的な全体構成図である。強度予測システム1は、図1に示すように、メインサーバ10と、当該メインサーバ10とネットワーク接続された、データサーバ20と、操作用端末30と、複数の参照用端末40とで構成されている。なお、メインサーバ10にネットワーク接続されるデータサーバ20、操作用端末30、参照用端末40のそれぞれの数は任意であって、それぞれ有線又は無線でデータ通信を行うように接続されている。
【0062】
第一実施形態におけるメインサーバ10は、作業者が操作用端末30を操作して動作開始の操作を行うと、予測動作を開始する。そして、学習済みモデルに適用する情報を含む予測用入力データが、データサーバ20又は操作用端末30からメインサーバ10に入力されると、メインサーバ10内で所定の処理が行われて、生コンクリートの強度の予測値に関連する情報である強度予測情報がメインサーバ10から出力される。メインサーバ10から出力された強度予測情報を含む出力データは、各参照用端末40に送信される。そして、各参照用端末40は、メインサーバ10から出力された当該出力データから得られる生コンクリートの強度の予測値をそれぞれの表示装置50に表示する。
【0063】
なお、第一実施形態の各参照用端末40は、図1に示すように、表示装置50と別体のデスクトップ型PCであるが、ノートPC、スマートフォン、タブレット等の表示装置50が一体的に構成されている端末であっても構わない。また、各参照用端末40は、操作用端末30としての機能を兼ねていても構わない。
【0064】
図2は、メインサーバ10の第一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。図2に示すように、第一実施形態におけるメインサーバ10は、データ入力部11と、データ出力部12、演算処理部13とを備える。
【0065】
図3は、メインサーバ10内で行われる各データの入出力の詳細を図示したブロック図である。図3に示すように、演算処理部13は、第一演算処理部13aと、第二演算処理部13bと、第三演算処理部13cとを備えており、それぞれの演算処理部(13a,13b,13c)は、第一記憶部14aと、第二記憶部14bと、第三記憶部14cとを備えている。
【0066】
なお、図3に図示されているメインサーバ10は、説明の便宜のために演算処理部と記憶部が三つの組に分けられた構成で図示されているが、メインサーバ10は、各演算処理部(13a,13b,13c)が一つのCPUやMPU等の演算処理ユニット、各記憶部(14a,14b,14c)が一つのフラッシュメモリやハードディスク等のメモリで構成されて、演算処理部13を構成していても構わない。
【0067】
第一記憶部14aは、第一教師データに基づく機械学習により生成された第一学習済みモデルM1が記録されている。第二記憶部14bは、第二教師データに基づく機械学習により生成された第二学習済みモデルM2が記録されている。第三記憶部14cは、第三教師データに基づく機械学習により生成された第三学習済みモデルM3が記録されている。
【0068】
第一教師データは、生コンクリートの配合に関連する情報である配合関連情報を含む第一学習用入力データと、生コンクリートの強度情報を含む第一学習用出力データとが関連付けられたデータである。第二教師データは、前記第一学習済みモデルが導出した一次強度予測情報、及び製造関連情報を含む第二学習用入力データと、生コンクリートの強度情報を含む第二学習用出力データとが関連付けられたデータである。前記第三教師データは、前記第二学習済みモデルが導出した二次強度予測情報、及び品質関連情報を含む第三学習用入力データと、生コンクリートの強度情報を含む第三学習用出力データとが関連付けられたデータである。
【0069】
なお、生コンクリートの強度情報とは、第一学習済みモデル、第二学習済みモデル、第三学習済みモデルにおいて用いられる強度情報である。本実施形態において、生コンクリートの強度情報は、以下で説明される第一強度情報、第二強度情報、第三強度情報に区別される。第一強度情報、第二強度情報、第三強度情報は、この順に、強度情報としての信頼性が向上するものである。
【0070】
第一強度情報は、生コンクリートの設計時の配合関連情報から導かれる情報であり、実際に生コンクリートが混練される前に得られる情報である。
【0071】
第二強度情報は、生コンクリートが実際に混練された後、打設現場へ搬送され到着するまでの期間において得られる情報であり、生コンクリートが硬化する前において得られる情報である。
【0072】
第三強度情報は、打設現場に打設された生コンクリートの試験体から得られる情報であり、例えば、試験体作成後の所定の材齢(例えば、材齢1日、3日、7日、14日等)における生コンクリートの圧縮強度、曲げ強度、ヤング係数等の情報である。
【0073】
なお、当該試験体は、生コンクリートの製造工場において作成され、当該製造工場にて強度測定された情報であってもよく、打設現場にて作成されたものから得られた情報であってもよい。
【0074】
第一実施形態におけるデータ入力部11は、データサーバ20又は操作用端末30から送信される、第一学習済みモデルM1に適用するために予測用入力データd1(第一実施形態では、予測用の生コンクリートの配合関連情報、製造関連情報、品質関連情報)の入力を受け付ける。なお、第一学習済みモデルM1に適用するための予測用の生コンクリートの配合関連情報、製造関連情報、品質関連情報は、一つの予測用入力データd1に含まれていてもよく、それぞれ別の予測用入力データd1に含まれていても構わない。
【0075】
データ入力部11は、予測用入力データの入力を受け付けると、各演算処理部(13a,13b,13c)に入力するための演算用入力データ(d11,d12,13)を生成して、各演算処理部(13a,13b,13c)に対して出力する。
【0076】
なお、本実施形態においては、演算用入力データd11は、配合関連情報を含むデータ、演算用入力データd12は、製造関連情報を含むデータ、演算用入力データd13は、品質関連情報を含むデータである。
【0077】
そして、本実施形態におけるデータ入力部11は、配合関連情報、製造関連情報、品質関連情報のいずれかの情報が入力されると、適用する学習用モデルでの処理が行われる演算処理部(13a,13b,13c)に対して演算用入力データ(d11,d12,d13)として順次出力する。
【0078】
データ出力部12は、演算処理部13から出力された演算用出力データ(d21,d22,d23)が入力されると、図2に示すように、参照用端末40が受信可能な送信用データd2を入力された演算出力データ(d21,d22,d23)に基づいて生成して、各参照用端末40に対して送信用データd2を送信する。
【0079】
なお、本実施形態におけるデータ出力部12は、入力された演算用出力データ(d21,d22,d23)を順次参照用端末40に対して出力するように構成されているが、参照用端末40から指定された演算出力データ(d21,d22,d23)のみを参照用端末40に対して出力するように構成されていても構わない。
【0080】
第一演算処理部13aは、データ入力部11から出力される演算用入力データd11が入力されると、第一記憶部14aに記録されている第一学習済みモデルM1を読み出し、第一学習済みモデルM1に対して演算用入力データd11を適用する。
【0081】
第一演算処理部13aは、第一学習済みモデルM1による演算処理を実行し、演算用入力データd11に基づいて導出される一次強度予測情報を含む演算用出力データd21をデータ出力部12、及び第二演算処理部13bに対して出力する。
【0082】
第二演算処理部13bは、データ入力部11から出力される演算用入力データd12と、第一演算処理部13aから出力される演算用出力データd21が入力されると、第二記憶部14bに記録されている第二学習済みモデルM2を読み出し、第二学習済みモデルM2に対して演算用入力データd12と演算用出力データd21を適用する。
【0083】
第二演算処理部13bは、第二学習済みモデルM2による演算処理を実行し、演算用入力データd12、及び演算用出力データd21に基づいて導出される二次強度予測情報を含む演算用出力データd22をデータ出力部12、及び第三演算処理部13cに対して出力する。
【0084】
第三演算処理部13cは、データ入力部11から出力される演算用入力データd13と、第二演算処理部13bから出力される演算用出力データd22が入力されると、第三記憶部14cに記録されている第二学習済みモデルM3を読み出し、第三学習済みモデルM3に対して演算用入力データd13と演算用出力データd22を適用する。
【0085】
第三演算処理部13cは、第三学習済みモデルM3による演算処理を実行し、演算用入力データd13、及び演算用出力データd22に基づいて導出される三次強度予測情報を含む演算用出力データd23をデータ出力部12に対して出力する。
【0086】
第一実施形態で学習用入力データ、及び予測用入力データとして採用した情報は、以下である。
【0087】
【表1】
【0088】
ここで、上記の各情報に基づいて学習した学習済みモデル(M1,M2,M3)を適用した強度予測システム1が、どのぐらいの精度で荷卸し時スランプ値、及びスランプフローを予測できるかを確認した検証実験について説明する。
【0089】
(実施例1)
実施例1は、上述した生コンクリートの強度予測システム1によって、製造したコンクリートの標準水中養生28日コンクリート強度を予測する。
【0090】
(参考例1)
参考例1は、配合関連情報に基づく線形近似式によって予測する。参考例1として採用した線形近似式は、蓄積されたデータに基づいて比較的高精度で生コンクリートの強度を予測できるように検討された式を採用している。
【0091】
(参考例2)
参考例2は、予測用入力データに、予測対象の生コンクリートに関する品質関連情報を含めないことを除いて、実施例1と同様である。
【0092】
それぞれの出力データ数は、1,043とした。
【0093】
第一学習済みモデルM1の生成は、深層ニューラルネットワーク(DNN)を適用し、学習ライブラリはTensor Flow(登録商標)を使用し、学習回数は、200,000回行った。
【0094】
予測強度値が実際の強度値に対して許容誤差範囲に収まる場合を正解として、正解率を確認した。なお、許容誤差範囲は、±5.0%、±10.0%の二つのパターンで確認した。ここでの許容誤差範囲は、許容誤差範囲をE,予測強度値をP、実際の強度値をRとした時にE=(R-P)/Rで算出される数値である。
【0095】
結果は、以下のようになった。
【0096】
【表2】
【0097】
コンクリートの圧縮強度試験は、一回の試験結果が発注時指定される呼び強度に対して正解率が85%以上であること、三回の試験結果の平均値が指定された呼び強度以上であることが定められている(JIS A 1108規格)。当該規格を安定して遵守するためには、正解率が、少なくとも誤差範囲±10%の場合においては90%以上、誤差範囲±15.0%の場合においては95%以上であることが望ましい。
【0098】
上記結果より、本発明の強度予測システム1は、配合関連情報に基づいた線形近似式による標準水中養生28日コンクリート強度の予測よりも精度が高いことが確認される。また、本発明の強度予測システム1は、標準水中養生7日コンクリート強度を適用して生コンクリートの強度を予測することで、より高い精度で予測できることが確認される。
【0099】
予測の精度については、本発明の強度予測システム1は、標準水中養生28日コンクリート強度を、誤差範囲±10.0%の場合において95%以上の精度で予測できることが確認される。
【0100】
以上より、強度予測システム1は、配合関連情報と、製造関連情報に加え、品質関連情報に基づいて学習した学習済みモデルを適用することで、従来の配合関連情報に基づく線形近似式による予測よりも高い精度で生コンクリートの強度を予測することができる。
【0101】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0102】
〈1〉 本実施形態の強度予測システム1では、環境関連情報が適用されていないが、いずれかの学習済みモデル(M1,M2,M3)が、環境関連情報を含む学習用入力データによる機械学習で生成され、対応する演算用入力データ(d11,d12,d13)に環境関連情報が含まれるように構成されていても構わない。
【0103】
上記構成とすることで、強度予測システム1は、打設現場における天候や気温、湿度等の情報を加味した強度の予測ができるため、より高い精度での生コンクリートの強度予測が可能となる。
【0104】
〈2〉 強度予測システム1は、強度を予測する対象の生コンクリートの内部に配置されて生コンクリートの内部の温度情報を取得し、データ入力部11に対して取得した当該温度情報を含むデータを入力する温度センサを備えていても構わない。
【0105】
上記構成とすることで、強度予測システム1は、生コンクリートの水和反応に由来する積算温度を計測することで生コンクリートの強度を予測することができる。したがって、上記構成とすることで、強度予測システム1は、より高い精度で生コンクリートの強度を予測することができる。
【0106】
なお、生コンクリートの温度情報を取得する温度センサは、強度を予測する対象の生コンクリートの打設後の硬化体の内部の温度情報、強度を予測する対象の生コンクリートの周辺の温度情報、又は生コンクリートの打設後の硬化体の周辺の温度情報を取得するように構成されていても構わない。さらに、当該温度情報は、例えば、打設現場における天候情報、気温や湿度の情報等を、気象庁のデータベース等から取得しても構わない。
【0107】
〈3〉 強度予測システム1の記憶部14には、生コンクリートの強度予測情報を含む重み付け学習用入力データと、予測用生コンクリートの実際に測定された強度に関する情報である強度測定値情報を含む重み付け学習用出力データとを関連付けてなる複数の教師データに基づく機械学習により生成された、重み付け用学習済みモデルが記録されていても構わない。重み付け用学習済みモデルは、予測用入力データに含まれる各情報に対して強度予測に対する寄与度に応じた重み付けをする係数を決定するための学習済みモデルである。
【0108】
上記構成とすることで、強度予測システム1は、生コンクリートの強度の予測を繰り返すたびに、より影響が大きい要素を見い出し、次第に当該要素を重視した予測が行われるように学習済みモデルが自動的に最適化される。
【0109】
〈4〉 上述した強度予測システム1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0110】
1 : 強度予測システム
10 : メインサーバ
11 : データ入力部
12 : データ出力部
13 : 演算処理部
13a : 第一演算処理部
13b : 第一演算処理部
13c : 第一演算処理部
14 : 記憶部
14a : 第一記憶部
14b : 第一記憶部
14c : 第一記憶部
20 : データサーバ
30 : 操作用端末
40 : 参照用端末
50 : 表示装置
M1 : 第一学習済みモデル
M2 : 第二学習済みモデル
M3 : 第三学習済みモデル
図1
図2
図3