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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033931
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/42 20060101AFI20230306BHJP
   B60R 13/04 20060101ALI20230306BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20230306BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20230306BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20230306BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20230306BHJP
   B29C 45/37 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B29C33/42
B60R13/04 Z
B29C45/14
B29C33/12
B29C45/26
B29C45/27
B29C45/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139909
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】木村 文彦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 康二
(72)【発明者】
【氏名】中野 倫之
(72)【発明者】
【氏名】神尾 建一
【テーマコード(参考)】
3D023
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
3D023AA03
3D023AC27
3D023AD05
4F202AD08
4F202AD16
4F202AD17
4F202AE06
4F202AH17
4F202AM32
4F202CA11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CB13
4F202CK12
4F202CK90
4F202CQ01
4F206AD08
4F206AD16
4F206AE06
4F206AH17
4F206JA07
4F206JB12
4F206JN25
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】第一部材と第二部材との接合強度を向上できる樹脂成形品を提供する。
【解決手段】第一部材5と、樹脂製の第二部材6と、が一体的に成形された樹脂成形品1である。樹脂成形品1は、第二部材6により形成され、第一部材5の外縁部8の少なくとも一部に対して外方に位置する延出部9を有する。樹脂成形品1は、延出部9に配置され、成形時に溶融樹脂原料が流入した部分であるゲート部11を有する。第一部材5は、延出部9と接してゲート部11からの溶融樹脂原料の流れ方向に沿う外縁部8に面積拡大部13を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と、樹脂製の第二部材と、が一体的に成形された樹脂成形品であって、
前記第二部材により形成され、前記第一部材の外縁部の少なくとも一部に対して外方に位置する延出部と、
この延出部に配置され、成形時に溶融樹脂原料が流入した部分であるゲート部と、を有し、
前記第一部材は、前記延出部と接して前記ゲート部からの前記溶融樹脂原料の流れ方向に沿う外縁部に面積拡大部を有する
ことを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
面積拡大部は、ゲート部からの溶融樹脂原料の流れ方向に対し交差する方向に延びる凹部である
ことを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品。
【請求項3】
第一部材は、面積拡大部によってゲート部から遠いほど外縁部の表面積が大きくなるように設定されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部材と第二部材とが一体的に成形された樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の室内静粛性の観点から、不織布素材を用いた樹脂成形品が用いられることがある。例えば自動車の車体のホイールハウスの内側に取り付けられるフェンダプロテクタとして、吸音性を有する不織布を合成樹脂と一体成形することで、車両走行時に発生する騒音が車室内に伝播されることを抑制したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような不織布と合成樹脂との複合素材においては、不織布と合成樹脂との接合強度を確保することが望まれる。この点、不織布と合成樹脂との接合部分を凹凸状に形成したものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-13538号公報 (第4-9頁、図1-5)
【特許文献2】国際公開第2009/034906号 (第7-17頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不織布に対して合成樹脂を一体成形する場合、合成樹脂を成形する際の不織布の縁部と溶融樹脂原料の流れ方向との関係によって、不織布と合成樹脂との接合強度が異なるため、不織布と合成樹脂との接合強度に強弱のむらが生じやすい。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、第一部材と第二部材との接合強度を向上できる樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の樹脂成形品は、第一部材と、樹脂製の第二部材と、が一体的に成形された樹脂成形品であって、前記第二部材により形成され、前記第一部材の外縁部の少なくとも一部に対して外方に位置する延出部と、この延出部に配置され、成形時に溶融樹脂原料が流入した部分であるゲート部と、を有し、前記第一部材は、前記延出部と接して前記ゲート部からの前記溶融樹脂原料の流れ方向に沿う外縁部に面積拡大部を有するものである。
【0008】
請求項2記載の樹脂成形品は、請求項1記載の樹脂成形品において、面積拡大部は、ゲート部からの溶融樹脂原料の流れ方向に対し交差する方向に延びる凹部であるものである。
【0009】
請求項3記載の樹脂成形品は、請求項1または2記載の樹脂成形品において、第一部材は、面積拡大部によってゲート部から遠いほど外縁部の表面積が大きくなるように設定されているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の樹脂成形品によれば、溶融樹脂原料の流れ方向に応じて設定された面積拡大部によって第一部材と第二部材との接合強度を向上できる。
【0011】
請求項2記載の樹脂成形品によれば、請求項1記載の樹脂成形品の効果に加えて、第一部材と第二部材との接合強度をより向上できる。
【0012】
請求項3記載の樹脂成形品によれば、請求項1または2記載の樹脂成形品の効果に加えて、外縁部の位置毎の第一部材と第二部材との接合強度を均一化し、接合強度のむらを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態の樹脂成形品の一部を拡大して示す平面図である。
図2】同上樹脂成形品の斜視図である。
図3】同上樹脂成形品の面積拡大部の例を(a)ないし(j)に示す説明図である。
図4】(a)は本発明の第一実施例を示す説明図、(b)は第一比較例を示す説明図、(c)は第二実施例を示す説明図、(d)は第二比較例を示す説明図である。
図5図4(a)ないし図4(d)の特性データ及び試験結果の例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1及び図2において、1は樹脂成形品である。樹脂成形品1は、例えば自動車などの車両に用いられる車両用のものである。本実施の形態において、樹脂成形品1としては、保護部材であるフェンダプロテクタ(フェンダライナ)を例に挙げて説明する。すなわち、本実施の形態の樹脂成形品1は、車両用外装材であり、例えば自動車などの車両のホイールハウスの内側にてフェンダパネルに取り付けられてタイヤの上方などを覆い、タイヤがはね上げた泥や小石などから車体の他の部分を保護するものである。樹脂成形品1は、インサート部である本体部2を有する。本実施の形態において、本体部2は、概略としてタイヤの湾曲に沿う円弧状またはアーチ状に湾曲した面形状に形成されている。本体部2には、上部の一側部に切欠部2aが形成されている。切欠部2aには、タイヤを保持する部分あるいは懸架装置などの車両部材が配置される。
【0016】
なお、以下、上下方向、左右方向、及び、前後方向については、樹脂成形品1を車体側に取り付けた状態での車両の直進時における前進方向を基準として説明する。
【0017】
本体部2の端部には、樹脂部である取付部3が一体的に形成されている。取付部3は、樹脂成形品1を車体側に取り付けるものである。本実施の形態において、取付部3は、樹脂成形品1の前端部から前方に延出されている。
【0018】
そして、樹脂成形品1は、第一部材5と第二部材6とが一体的に成形されて構成されている。本実施の形態において、第一部材5と第二部材6とにより本体部2が構成され、第二部材6により取付部3が構成されている。
【0019】
第一部材5は、本実施の形態において、通気性を有する多孔質部材である。第一部材5は、シート状または板状に形成されている。第一部材5は、吸音性を有し、土砂、小石、水などの衝突により生じるチッピング音やスプラッシュ音などの衝突音、あるいは、路面とタイヤとの摺接によって生じるパターンノイズやロードノイズなどの擦過音などを吸音するように構成されている。第一部材5は、主として本体部2に面状に拡がって配置されている。すなわち、本実施の形態において、第一部材5は、樹脂成形品1の湾曲形状に沿って湾曲する面状となっている。また、第一部材5は、湾曲する方向に長手状に形成されている。第一部材5は、樹脂成形品1の本体部2の後部側において、チッピング音に対する遮音部を構成し、上部において、エンジンルーム内に対する遮音部を構成している。また、第一部材5は、樹脂成形品1の本体部2の製品面の一部に配置されている。第一部材5を構成する素材は、例えば硬質の不織布である。
【0020】
第二部材6は、熱可塑性合成樹脂により形成された合成樹脂部材である。第二部材6は、剛性を有する。
【0021】
第二部材6は、第一部材5の外縁部8に対し付着または一部含浸されて位置する。すなわち、第二部材6は、第一部材5の外縁部8の少なくとも一部よりも外方に延出する延出部9を構成している。延出部9は、第一部材5の外縁部8に対し、所定以上の幅を有して形成されている。延出部9は、第一部材5の外縁部8において、第一辺部である長辺部8aに沿って位置する第一延出部9aと、第二辺部である短辺部8bに沿って位置する第二延出部9bと、を有する。
【0022】
第一延出部9aは、本体部2の左右両側部をなす湾曲状の部分である。すなわち、延出部9の少なくとも一部は、第一部材5と一体に本体部2を構成する。第一延出部9aは、第一部材5の外縁部8の両長辺部8aに沿って前後方向に長手状に延びて配置されている。
【0023】
また、第二延出部9bは、取付部3と連なる部分である。第二延出部9bは、両第一延出部9aの端部間に亘り、第一部材5の外縁部8の両短辺部8bに沿って左右方向に配置されている。つまり、第二延出部9bは、第一延出部9aと交差する方向に延びている。第二延出部9bは、第一延出部9aよりも短く形成されている。
【0024】
さらに、本実施の形態において、第二部材6は、第一部材5の一部を覆う補強ビード10を構成している。補強ビード10は、第二部材6の成形用の溶融樹脂原料の流動性及び樹脂成形品1の剛性を確保するための部分である。補強ビード10は、本体部2に位置する。補強ビード10は、細長い線状に形成されている。図示される例では、補強ビード10は、第一延出部9a,9a間に位置する第一ビード部10aと、第一延出部9a,9a間を連結する第二ビード部10bと、を有する格子状となっている。第一ビード部10aは、第一延出部9a,9aの中間部に位置し、樹脂成形品1の湾曲に沿って前後に細長い棒状に形成されている。また、第二ビード部10bは、第一延出部9a,9aを連結して左右方向に延びる細長い棒状に形成されている。
【0025】
そして、第二部材6は、成形型の内部の空間部であるキャビティにゲートから射出成形された溶融樹脂原料の固化によって第一部材5と一体成形されている。そのため、樹脂成形品1には、成形型のゲートに対応するゲート部11が形成されている。すなわち、ゲート部11は、成形型のゲート跡である。ゲート部11は、延出部9に設定されている。本実施の形態において、ゲート部11は、第一延出部9aに設定された第一ゲート部11aと、第二延出部9bに設定された第二ゲート部11bと、を有する。
【0026】
第一ゲート部11aは、第一部材5の外縁部8の長辺部8aに対向して位置する。第一ゲート部11aは、本体部2の上端部にて第一延出部9aに配置されている。
【0027】
第二ゲート部11bは、第一部材5の外縁部8の短辺部8bに対向して位置する。第二ゲート部11bは、本体部2の前端部、本実施の形態では取付部3にて第二延出部9bに配置されている。
【0028】
そして、ゲート部11が配置される延出部9と接する第一部材5の外縁部8において、ゲート部11からの溶融樹脂原料の長手方向に沿う部分には、面積拡大部13が設定されている。例えば、外縁部8において、少なくとも一方の長辺部8aに面積拡大部13が設定されている。なお、外縁部8において、各長辺部8a及び各短辺部8bに面積拡大部13が設定されていてもよい。
【0029】
面積拡大部13は、外縁部8における第一部材5の単位長さ当たりの表面積を拡大することで、第二部材6に対する第一部材5の接合強度(引張強度)を向上するものである。
【0030】
面積拡大部13の形状は、任意に設定してよいが、例えば図3(a)に示すように、U字状に切り欠かれた凹部でもよいし、図3(b)に示すように、外縁部8側から第一部材5の内方へと徐々に幅狭となる三角形の先端を円形状とした凹部でもよいし、図3(c)に示すように、外縁部8側から第一部材5の内方へと徐々に幅広となる三角形状の凹部でもよいし、図3(d)に示すように、外縁部8側から第一部材5の内方へと徐々に幅狭となる三角形状としてもよいし、図3(e)に示すように、外縁部8から内方へと延びるスリットでもよいし、図3(f)に示すように、スリットの先端を円形状とした凹部でもよい。
【0031】
さらに、面積拡大部13は、図3(a)ないし図3(f)に示す例のように外縁部8から外方に連通して開口されているものに限らず、図3(g)に示すように、外縁部8の内部を円形状に打ち抜いた形状でもよいし、図3(h)に示すように、多数の円形状のピン穴が形成されているものでもよい。これらの場合、溶融合成樹脂は、その射出・含浸圧力によって面積拡大部13に入り込むことが可能である。
【0032】
また、面積拡大部13は、外縁部8を加工したものに限らず、図3(i)に示すように、第一部材5の裁断時の外縁部8の不揃いな凹凸でもよい。
【0033】
さらに、面積拡大部13のこれらの形状については、第一部材5の面方向に形成されていてもよいし、図3(j)に示すように、第一部材5の厚み方向に形成されていてもよい。
【0034】
また、面積拡大部13は、一つの形状のみに限定されるものではなく、必要に応じて例えば上記の図3(a)ないし図3(j)のいずれかを組み合わせて用いるなどしてもよい。
【0035】
そして、図1に示すように、面積拡大部13は、ゲート部11から遠いほど外縁部8の表面積が大きくなるように設定されている。すなわち、面積拡大部13は、ゲート部11から離れるほど配設ピッチが小さくなるように、あるいは、凹凸や開口の面積が大きくなるように、形成されている。
【0036】
好ましくは、面積拡大部13は、ゲート部11からの溶融樹脂原料の流れ方向に対して交差、より好ましくは直交する方向に延びて形成されている。本実施の形態においては、第一ゲート部11aと対向する第一部材5の外縁部8の長辺部8aにおいて、面積拡大部13が左右方向に延びるように形成されていることが好ましい。
【0037】
そして、樹脂成形品1を製造する際には、予め所定の形状に裁断された第一部材5を成形型にセットして保持し、閉型して溶融樹脂原料をゲートから成形型内部のキャビティに射出、充填する。
【0038】
このとき、ゲート部11を形成する成形型のゲートから第一部材5の外縁部8に向かって射出された溶融樹脂原料は、キャビティから放射状に流れ出した後、この外縁部8に沿って流れる。そのため、図1の複数の矢印に示すように、ゲート部11から遠いほど、溶融樹脂原料の外縁部8への入射角度が鋭角(外縁部8に対して平行な方向)に近づいていく。
【0039】
例えば、第一ゲート部11aとなるゲートから射出された溶融樹脂原料は、キャビティから放射状に流れ出した後、主として第一部材5の長手方向である前後方向に拡がるように流れていく。つまり、ゲート部11の第一ゲート部11aとなるゲートから射出された溶融樹脂原料は、第一ゲート部11aから前後方向に遠ざかった位置ほど、図2中の矢印A1に示すように、第一部材5の外縁部8の長辺部8aに平行な方向に流れることとなる。
【0040】
一方、第二ゲート部11bとなるゲートから射出された溶融樹脂原料は、キャビティから放射状に流れ出した後、主として第一部材5の短手方向に拡がるように流れていく。つまり、ゲート部11の第二ゲート部11bとなるゲートから射出された溶融樹脂原料は、第二ゲート部11bから図2中の矢印A2に示すように流れ、長辺部8aに沿う位置においては、第一部材5の外縁部8の長辺部8aに平行な方向に流れることとなる。
【0041】
そこで、第一部材5の外縁部8の長辺部8aに沿う位置に形成された面積拡大部13に溶融樹脂原料が入り込むことで、溶融樹脂原料と第一部材5との接触面積が確保され、溶融樹脂原料が冷却により固化されて形成される第二部材6と第一部材5との接合強度(引張強度)が各部で均一化されて、第一部材5と第二部材6とが強固に一体化された樹脂成形品1が成形される。
【0042】
成形された樹脂成形品1は、脱型された後、ばりなどを取り、必要に応じて表面処理や装飾などを施すことで完成する。
【0043】
このように、一実施の形態によれば、第一部材5の外縁部8において、延出部9と接してゲート部11からの溶融樹脂原料の流れ方向に沿う位置に面積拡大部13を有することで、溶融樹脂原料の流れ方向に応じて設定された面積拡大部13によって第一部材5と第二部材6との接合強度を向上できる。
【0044】
また、面積拡大部13を、ゲート部11からの溶融樹脂原料の流れ方向に対し交差する方向に延びる凹部とすることで、第一部材5と第二部材6との接合強度をより向上できる。
【0045】
なお、面積拡大部13は、例えば図3(b)、図3(c)、あるいは、図3(f)に示すように、第一部材5の内側の少なくとも一部に、第一部材5の外側より相対的に面積が大きい部分を有する形状とすることで、第一部材5と第二部材6との接合において、アンカー効果の増加が期待できる。また、図3(e)に示すスリット形状の面積拡大部13の場合には、その角度を溶融樹脂原料の流れ方向に逆らう角度に傾斜させることで、第一部材5と第二部材6との接合において、アンカー効果の増加が期待できる。
【0046】
さらに、面積拡大部13によって、第一部材5の外縁部8の表面積がゲート部11から遠いほど大きくなるように設定されているため、ゲート部11から遠く溶融樹脂原料の流れ方向と平行に近くなる位置ほど第一部材5と第二部材6(溶融樹脂原料)との接触長さを大きくできるので、外縁部8の位置毎の第一部材5と第二部材6との接合強度を均一化し、局所的に接合強度が弱い弱部が形成されることを抑制して、接合強度のむらを抑制できる。
【0047】
そして、通気性を有する不織布である第一部材5と剛性を有する樹脂製の第二部材6とを一体成形しているため、吸音性と剛性とを両立した樹脂成形品1を提供できる。
【0048】
なお、一実施の形態において、樹脂成形品1としては、車両用外装材であるアンダーカバーなど、防音性が求められる各種の車両用外装材にも適用可能である。
【0049】
また、樹脂成形品1は、車両用外装材以外の任意の外装材として用いることが可能である。
【実施例0050】
本発明の実施例及び比較例について説明する。
【0051】
実施例及び比較例においては、第一部材5に対して溶融樹脂原料を流す方向と面積拡大部13の方向との関係を変えて、引張強度を測定した。
【0052】
図4(a)に示す第一実施例及び図4(b)に示す第一比較例は、それぞれゲート部11から第一部材5の外縁部8に対して垂直な方向に溶融樹脂原料が流れる場合を示す。すなわち、第一実施例及び第一比較例においては、図中に矢印で示す溶融樹脂原料の流れ方向に対し、外縁部8が直交する方向に直線状に延びており、第一実施例では面積拡大部13が溶融樹脂原料の流れ方向に平行な方向に延びている。
【0053】
また、図4(c)に示す第二実施例及び図4(d)に示す第二比較例は、それぞれゲート部11から第一部材5の外縁部8に対して平行な方向に溶融樹脂原料が流れる場合を示す。すなわち、第二実施例及び第二比較例においては、図中に矢印で示す溶融樹脂原料の流れ方向に対し、外縁部8が平行な方向に直線状に延びており、第二実施例では面積拡大部13が溶融樹脂原料の長手方向に垂直な方向に延びている。
【0054】
これらの特性データ及び試験結果の例を図5の表に示す。
【0055】
図5の表に示すように、溶融樹脂原料の流れ方向に対して外縁部8が垂直な第一実施例及び第一比較例は、溶融樹脂原料の流れ方向に対して外縁部8が平行な第二実施例及び第二比較例よりも引張強度が大きかった。
【0056】
また、第一実施例は第一比較例に対し、第二実施例は第二比較例に対し、それぞれ接触面の長さ及び引張強度が増加した。
【0057】
さらに、溶融樹脂原料の流れ方向に対して面積拡大部13が直交する方向に延びる第二実施例は、溶融樹脂原料の流れ方向に対して面積拡大部13が平行な方向に延びる第一実施例と比較して、引張強度のアップ率が大きかった。
【0058】
この結果、外縁部8が溶融樹脂原料の流れ方向に対して交差する方向に沿っている方が平行な方向に沿っているより引張強度を大きくできること、面積拡大部13によって引張強度を大きくできること、及び、面積拡大部13を溶融樹脂原料の流れ方向に対して交差する方向に形成すると溶融樹脂原料の流れ方向に対して平行な方向に形成するよりも引張強度をより大きくできること、がそれぞれ示された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、自動車のフェンダプロテクタ、アンダーカバーなどの車両用外装材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 樹脂成形品
5 第一部材
6 第二部材
8 外縁部
9 延出部
11 ゲート部
13 面積拡大部
図1
図2
図3
図4
図5