(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033937
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ツール交換装置
(51)【国際特許分類】
B25J 17/02 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B25J17/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139926
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000145611
【氏名又は名称】株式会社コガネイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹林 悠
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707ES03
3C707GS04
3C707GS19
3C707HS27
(57)【要約】
【課題】簡単な構造のツール交換装置を提供する。
【解決手段】ツール交換装置10は、電動モータ31が組み込まれるマスターユニット11と、操作機器が設けられ、マスターユニット11に向けて突出するロックピン42が取り付けられたツールユニット12と、記マスターユニット11に設けられ、電動モータ31のシャフト32により回転駆動されるカム部材33と、カム部材33の回転中心軸を横切る方向に移動自在にマスターユニット11に設けられるロック部材47と、を有し、ロック部材47は、カム部材33によりロックピン42の係合溝56に係合するロック位置と、係合溝56から離れる解放位置と、に移動する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータが組み込まれるマスターユニットと、
操作機器が設けられ、前記マスターユニットに向けて突出するロックピンが取り付けられたツールユニットと、
前記マスターユニットに設けられ、前記電動モータのシャフトにより回転駆動されるカム部材と、
前記カム部材の回転中心軸を横切る方向に移動自在に前記マスターユニットに設けられるロック部材と、を有し、
前記ロック部材は、前記カム部材により前記ロックピンの係合溝に係合するロック位置と、前記係合溝から離れる解放位置とに移動する、ツール交換装置。
【請求項2】
請求項1に記載のツール交換装置において、
前記マスターユニットは、前記ツールユニットの突き当て面が突き当てられる装着面を備えた支持プレートを有し、前記カム部材は前記支持プレートに回転自在に支持され、前記支持プレートに前記ロックピンが貫通する貫通孔を設けた、ツール交換装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のツール交換装置において、
前記カム部材は前記ロック部材のカム接触面に接触して前記ロック部材を前記解放位置に駆動する解放面と、前記解放面の半径よりも小径のロック面とを有し、前記ロック面が前記カム接触面に対向すると前記係合溝に前記ロック部材を係合させるばね部材を前記ロック部材に設けた、ツール交換装置。
【請求項4】
請求項3に記載のツール交換装置において、
前記カム部材は長軸半径のカム面からなる解放面と、長軸半径に対して回転方向にずれた位置の短軸半径のカム面からなるロック面とを有する、ツール交換装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のツール交換装置において、
前記カム部材を介して相互に対向するように2つの前記ロック部材を前記マスターユニットに設けた、ツール交換装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のツール交換装置において、
前記カム部材に設けられたガイド孔と、
前記マスターユニットに取り付けられ、前記ガイド孔に入り込むガイドピンと、を有し、
前記ガイドピンが前記カム部材の回転を規制する、ツール交換装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のツール交換装置において、
前記ロック部材は2本の前記ロックピンの前記係合溝にそれぞれ係合する2つの係合部を有する、ツール交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツールユニットが着脱自在に装着されるツール交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアームを操作してワークの加工等の操作を行うために、移動装置としてのロボットアームにはツール交換装置が装着される。ツール交換装置はロボットアームに装着されるマスターユニットとマスターユニットに着脱自在に装着されるツールユニットとを備えている。ツールユニットには、ワークを加工したり、ワークや治具を搬送したりするツールやハンド等の操作機器が設けられている。ワークや治具に対する操作の種類に応じて操作機器が相違した複数のツールユニットが支持台に配置されており、ツール交換装置のマスターユニットには操作に応じて何れかのツールユニットが装着される。
【0003】
ロボットハンド用の開閉チャックが特許文献1に記載されている。この開閉チャックは物品の把持や移動等の操作を行うフィンガーを有し、物品の種類に応じてフィンガーが交換される。フィンガーを固定するためのストッパがケーシングに設けられており、フィンガーはスプリングのばね力によりストッパにより固定される。ストッパをばね力に抗して手動で押し込むと、ストッパによるフィンガーの固定が解除され、フィンガーを交換することができる。
【0004】
特許文献2はロボットのアームと交換工具との間に設けられるフローティング装置を開示している。このフローティング装置は、ロボットアームに連結される固定プレートとこれに装着される従動プレートとを有し、従動プレートには、ツールプレートが着脱自在に装着される。ツールプレートの結合軸が挿入される装着口が従動プレートに設けられ、装着口に挿入された結合軸をロックするためのロック機構が従動プレートに設けられている。ロック機構は、油圧式のシリンダとロックプレートとを備え、シリンダのアクチュエータが上昇しているときには、ロックプレートはスプリングの付勢力によってアンロック状態となり、ツールプレートを従動プレートから分離することができる。一方、アクチュエータが下降すると、結合軸の溝に嵌まり、ツールプレートはロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-82245号公報
【特許文献2】特開昭63-300885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される開閉チャックのように、物品を把持するフィンガーを手動操作によって交換するのでは、作業者はフィンガーの交換に手間がかかり、作業者を介在させたくない環境での使用には不向きである。一方、特許文献2に記載されるように、作動流体によりアクチュエータを駆動する装置においては、装置が大型化したり、配管等を配置したりする必要があり、装置が煩雑になる。
【0007】
本発明の目的は、簡単な構造のツール交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のツール交換装置は、電動モータが組み込まれるマスターユニットと、操作機器が設けられ、前記マスターユニットに向けて突出するロックピンが取り付けられたツールユニットと、前記マスターユニットに設けられ、前記電動モータのシャフトにより回転駆動されるカム部材と、前記カム部材の回転中心軸を横切る方向に移動自在に前記マスターユニットに設けられるロック部材と、を有し、前記ロック部材は、前記カム部材により前記ロックピンの係合溝に係合するロック位置と、前記係合溝から離れる解放位置とに移動する。
【発明の効果】
【0009】
ツール交換装置は、電動モータが組み込まれるマスターユニットと、マスターユニットに向けて突出するロックピンが取り付けられたツールユニットとを有し、電動モータにより回転移動するカム部材により、ロック部材をロックピンに係合するロック位置と、係合溝から離れる解放位置とに移動するようにしたので、簡単な構造のツール交換装置によってツールユニットをマスターユニットに対して着脱自在に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】操作機器としての電動ハンドが装着されたツールユニットとロボットアームに装着されたマスターユニットとを備えた一実施の形態であるツール交換装置の外観を示す正面図である。
【
図2】
図1に示されたツール交換装置の縦断面図である。
【
図3】マスターユニットからツールユニットを取り外した状態におけるツール交換装置を示す断面図である。
【
図6】
図2におけるB-B線断面図であり、(A)はカム部材がロックピンに係合したロック位置を示し、(B)はカム部材がロックピンから離れた解放位置を示す。
【
図7】
図2におけるC部拡大断面図であり、(A)はカム部材のロック位置を示し、(B)はカム部材の解放位置を示す。
【
図8】
図6に示されたロックピンの頭部を二点鎖線で示す断面図であり、(A)はカム部材がロックピンに係合したロック位置を示し、(B)はカム部材がロックピンから離れた解放位置を示す。
【
図9】他の実施の形態であるツール交換装置における
図8と同様部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示されるように、ツール交換装置10は、マスターユニット11とこのマスターユニット11に装着されるツールユニット12とを有している。マスターユニット11は、移動装置としてのロボットアーム13に装着される。ツールユニット12には、操作機器としての電動ハンド14が取り付けられている。図示しない支持台には、複数のツールユニット12が配置されており、産業用ロボットにより行われる作業に対応したツールユニット12がロボットアーム13によりマスターユニット11に装着される。
【0012】
マスターユニット11側のコネクタ15がマスターユニット11に設けられ、ツールユニット12側のコネクタ16がツールユニット12に設けられている。コネクタ15は信号線17によりロボット制御部に配置されたコントローラ18に接続され、コネクタ16は信号線19により電動ハンド14に接続されている。ツール交換装置10はロボットアーム13により所定の移動経路を移動して電動ハンド14を搬送する。電動ハンド14はワーク等を把持する2つのフィンガー20を有しており、フィンガー20は相互に接近離反移動可能となっている。所定の位置における電動ハンド14のフィンガー20によるワーク等の把持と、把持したワーク等の解放動作は、コントローラ18からの信号により電動ハンド14を制御することにより行われる。
【0013】
図2~
図4においては、マスターユニット11がロボットアーム13から分離され、電動ハンド14がツールユニット12から取り外された状態のツール交換装置10が示されている。
図2~
図4に示されるように、マスターユニット11はモータ収容室21が形成された円柱形状のユニット本体22と、このユニット本体22の先端面23に取り付けられる支持プレート24とを有している。
図4および
図5に示されるように、ユニット本体22に支持プレート24を取り付けるために、ユニット本体22には2つのねじ取付孔25が形成され、ねじ取付孔25に対応させて支持プレート24にねじ孔25aが形成されている。ねじ取付孔25にはユニット本体22の背面側からねじ部材としてのボルト26が挿入され、ボルト26のねじ部がねじ孔25aにねじ結合される。これにより、支持プレート24はユニット本体22に締結される。
【0014】
ユニット本体22をロボットアーム13に取り付けるために、ユニット本体22には4つのねじ取付孔27が形成され、ねじ取付孔27に対応させて支持プレート24にはねじ取付孔27aが形成されている。ねじ部材としてのボルト28の頭部がねじ取付孔27aの前面側の大径孔部に配置されて、
図5に示されるように、ボルト28がねじ取付孔27を貫通して、ロボットアーム13にねじ結合される。これにより、マスターユニット11はロボットアーム13に締結される。
【0015】
このように、支持プレート24はボルト26によりユニット本体22の先端面23に突き当てられて締結され、支持プレート24の先端面がツールユニット12に対向してツールユニット12が装着される装着面29を構成する。なお、それぞれのボルト26,28は、
図4においては図示省略されている。
【0016】
電動モータ31がモータ収容室21内に組み込まれている。電動モータ31のシャフト32はユニット本体22の先端面23から突出し、シャフト32は楕円形の板カムからなるカム部材33に連結されている。
図4に示されるように、カム部材33は支持プレート24に形成されたカム収容部34に配置され、シャフト32の回転中心軸Oを中心に電動モータ31により回転駆動される。シャフト32の回転をカム部材33に伝達するために、回転中心軸Oに対して直角方向に延びる連結孔33aがカム部材33に形成され、連結孔33aに係合する連結部32aがシャフト32の先端に設けられている。
【0017】
図2および
図3に示されるように、ツールユニット12の径方向中央部にはテーパ部を有する嵌合孔35が形成され、この嵌合孔35に嵌合する嵌合部36がマスターユニット11の支持プレート24に設けられており、嵌合部36は装着面29よりも前方に突出している。
図2に示されるように、嵌合部36を嵌合孔35に嵌合させることにより、ツールユニット12はマスターユニット11に対して高精度で芯出しされる。
【0018】
カム部材33に設けられた軸部37を回転自在に支持する支持孔38が嵌合部36に形成されており、カム部材33は支持プレート24のカム収容部34に回転自在に支持されている。なお、軸受を介して嵌合部36の支持孔38に軸部37を支持するようにしてもよい。支持プレート24には、
図4に示されるように、ロック部材収容部39がカム収容部34に連なってカム収容部34の両側に形成されている。
【0019】
図4に示されるように4つのねじ孔41がツールユニット12に形成されている。それぞれのねじ孔41に、
図2および
図3に示されるように、ロックピン42のねじ部43がねじ結合される。ツールユニット12の背面はマスターユニット11の装着面29に突き当てられる突き当て面44であり、突き当て面44に密着する大径部45がロックピン42に設けられている。ねじ部43がねじ孔41にねじ結合されると、大径部45は突き当て面44に密着する。それぞれのロックピン42はツールユニット12の突き当て面44から突出しており、ツールユニット12がマスターユニット11に装着されると、それぞれのロックピン42の突出部は、支持プレート24に形成された貫通孔46を貫通してロック部材収容部39に突出する。貫通孔46はロック部材収容部39に開口しており、ロックピン42の大径部45は貫通孔46の内部に挿入される。
【0020】
ロック部材47がそれぞれのロック部材収容部39に配置され、支持プレート24には、相互に対向するように2つのロック部材47が設けられている。カム収容部34とロック部材収容部39は、支持プレート24に形成された溝つまり凹部により一体的に連なって形成されている。それぞれのロック部材47は、
図4に示されるように、シャフト32の回転中心軸Oに対して直角方向に交差して延びる径方向軸Rの方向に移動自在である。つまり、ロック部材47は回転中心軸Oを横切る方向に移動自在である。
【0021】
図5は
図3におけるA-A線断面図である。
図6は
図2におけるB-B線断面図であり、
図6(A)はカム部材がロックピンに係合したロック状態を示し、
図6(B)はカム部材がロックピンから離れた解放状態を示す。
図7は
図2におけるC部拡大断面図であり、
図7(A)はカム部材のロック位置を示し、
図7(B)はカム部材の解放位置を示す。
【0022】
図5に示されるのように、ロック部材47の移動を案内するために、相互に対向するガイド面48によりその間にロック部材収容部39が形成されており、両側のガイド面48はカム部材33の外径よりも大径のカム収容部34の内面52に連なっている。相互に対向するガイド面48は、ロック部材収容部39の端壁を形成する端壁面53により連なっている。
【0023】
それぞれのロックピン42の突出部は、
図7に示されるように、頭部54を有し、頭部54と大径部45との間の小径軸部55により、ロックピン42に係合溝56が形成される。頭部54が貫通するピン貫通孔57がそれぞれのロック部材47に形成されている。
【0024】
図5に示されるように、ピン貫通孔57はロックピン42の頭部54よりも大径の大径円弧面62aと、これに連なって対向する小径円弧面62bとを有している。小径円弧面62bは、ロックピン42の小径軸部55の外径に対応した曲率半径であり、大径円弧面62aに対してロック部材47の移動方向にずれている。ピン貫通穴57の大径円弧面62aに対向する円弧面58がロック部材47に形成されており、円弧面58は大径円弧面62aに対してロック部材47の移動方向にずらして設けられている。小径円弧面62bの大径円弧面62aに対するロック部材の移動方向のずれは、円弧面58のずれの方が大きい。円弧面58の回転中心軸Oに沿う方向の厚みは、
図7に示されるように、ロック部材47の厚みよりも薄く、円弧面58とピン貫通孔57との間は段差面となっている。この段差面は頭部54の小径軸部55側に接触して係合溝56に係合する係合部59を構成している。ユニット本体22の先端面23と係合部59との間には、
図7に示されるように、頭部54が入り込むロック用空間61が設けられている。
【0025】
図8は
図6に示されたロックピン42の頭部54を二点鎖線で示す断面図であり、小径円弧面62bは大径円弧面62aに対してロック部材47の移動方向にずれているので、
図8(A)に示されるように、ロック部材47をカム部材33に向けて相互に接近移動させると、ロックピン42の頭部54はロック用空間61に入り込んで、係合溝56がロック部材47の係合部59に係合する。一方、
図8(B)に示されるように、ロック部材47を
図8(A)に示される位置よりも相互に離反移動させると、ロックピン42の頭部54は、ピン貫通孔57の大径円弧面62aの内側になり、頭部54はピン貫通孔57を通過できる。
【0026】
図6(A)および
図7(A)に示されるように、ロック部材47をカム部材33に接近させる方向に移動させると、係合部59は係合溝56に係合して頭部54に当接するロック位置になる。このときには、頭部54はロック用空間61内に入り込む。これに対して、
図6(B)および
図7(B)に示されるように、ロック部材47をカム部材33から離す方向、つまり径方向外方に移動させると、係合部59は係合溝56から離れる解放位置になる。
【0027】
圧縮コイルばねからなるばね部材63が、それぞれのロック部材47に形成されたばね室64に設けられている。ばね部材63によりそれぞれのロック部材47には、カム部材33に接近する方向、つまり係合部59が係合溝56に係合する方向のばね力が加えられている。
【0028】
カム部材33は回転中心軸Oを中心に90度の範囲において往復回転され、カム部材33の往復回転運動を案内し、カム部材33の回転を規制するために、ガイドピン65が支持プレート24に取り付けられ、ガイドピン65が挿入されるガイド孔66がカム部材33に円弧形状に形成されている。
【0029】
楕円形のカム部材33の外周面からなるカム面67は、
図6に示されるように、直径がD1の大径面67aと、この直径D1に対して回転方向に90度ずれた位置における短い直径である直径D2の小径面67bとを有しており、大径面67aと小径面67bの間は漸次外径が変化している。大径面67aは解放面を形成し、小径面67bはロック面を形成している。直径D2がロック部材47の移動方向である径方向軸Rに沿う方向となるように、電動モータ31によりカム部材33を回転させると、ロック面を構成する小径面67bは、
図6(A)に示されるように、それぞれのロック部材47の内面に形成されたカム接触面68から離れる。これにより、
図7(A)のように、ロック部材47はばね部材63のばね力により係合溝56に係合するロック位置になる。このときには、ガイドピン65はガイド孔66の一方の端面に当接する。
【0030】
したがって、
図1に示されるように、ツールユニット12の突き当て面44がマスターユニット11の装着面29に突き当てられ、4本のロックピン42の頭部54がロック部材47のピン貫通孔57を通過した状態のもとで、ロック部材47がロック位置になると、ツールユニット12は4本のロックピン42によりマスターユニット11に締結される。
【0031】
これに対して、
図6(B)に示されるように、直径D2よりも大径の直径D1がロック部材47の移動方向である径方向軸Rに沿う方向となるように、電動モータ31を逆方向に回転させてカム部材33を、
図6(A)に示した位置よりも時計方向に90度回転させると、解放面としての大径面67aは、
図6(B)に示されるように、それぞれのロック部材47のカム接触面68を押し付けて、ロック部材47をばね力に抗して相互に離反させる方向に移動する。これにより、
図7(B)のように、ロック部材47は係合溝56と係合部59の係合を解除する解放位置に駆動される。このときには、ガイドピン65はガイド孔66の他方の端面に当接する。
【0032】
したがって、ロック部材47が解放位置に駆動されると、ロックピン42によるツールユニット12のマスターユニット11に対する締結が解除され、ツールユニット12をマスターユニット11から取り外すことができる。さらに、取り外されたツールユニット12とは相違した別のツールユニットをマスターユニット11に装着することができる。
【0033】
上述したツール交換装置10によりワークの加工や搬送等の操作を行う場合には、移動装置としてのロボットアームの先端に装着されたマスターユニット11に対してツールユニット12を装着する。ツールユニット12は図示しない支持台に複数配置されており、ツール交換装置を用いた操作に適合させて、特定のツールユニット12がマスターユニット11に装着される。
【0034】
ツールユニット12をマスターユニット11に装着するには、
図6(B)および
図7(B)に示されように、カム部材33により2つのロック部材47を相互に離反させる方向に移動させる。これにより、ロックピン42の頭部54がロック部材47のピン貫通孔57を通過できるように、ピン貫通孔57は支持プレート24の貫通孔46と同軸状となる。この状態のもとで、ロボットアーム13によりマスターユニット11をツールユニット12に接近させて、ツールユニット12のロックピン42の頭部54をピン貫通孔57の位置に位置決めしてピン貫通孔57を通過させる。
【0035】
さらに、電動モータ31によりカム部材33を反時計方向に90度回転させると、
図6(A)および
図7(A)に示されるように、ロック部材47はばね力によりロック位置に駆動される。これにより、ロック部材47はロックピン42の係合部59が係合溝56に係合し、ツールユニット12はマスターユニット11にロックピン42により締結される。この状態のもとで、ロボットアーム13によりツールユニット12を操作させて所定の作業を行うことができる。操作部材として電動ハンド14がツールユニット12に装着された場合には、電動ハンド14によりワークを把持し、ロボットアーム13によりワークは搬送される。
【0036】
ツールユニット12をマスターユニット11から取り外す場合には、カム部材33を
図6(A)および
図7(A)に示すロック位置から、
図6(B)および
図7(B)に示す解放位置に回転させる。
【0037】
このように、カム部材33を電動モータ31により回転させることによって、ツールユニット12をマスターユニット11に締結したり、締結時と逆方向に回転させることによって締結を解除したりするようにしたので、ツール交換装置10を簡単な構造とすることができる。
【0038】
カム部材33のカム面67は、回転中心軸Oからの半径がD1の2分の1の長軸半径の大径面67aと、この大径面67aの長軸半径に対して回転方向に90度ずれた位置における直径D2の2分の1の短軸半径の小径面67bとを有しており、カム部材33は同時に2つのロック部材47を駆動することができる。ただし、2つのロック部材47を設けることなく、単一のロック部材47によっても、ツールユニット12をロックピン42によりマスターユニット11に締結する状態と、締結を解除する状態とに切り換えることができる。その場合には、1つの大径面67aと1つの小径面67bとを備えたカム面67とすることができ、大径面67aと小径面67bとをカム部材33の回転方向に180度ずらして形成することもできる。また、ロック部材47は2本のロックピン42をロックするようにしているが、1つのロック部材47により1本のロックピン42をロックするようにしてもよい。
【0039】
図9は他の実施の形態であるツール交換装置における
図7と同様部分を示す断面図であり、
図9においては、
図8に示された部材と共通性を有する部材には同一の符号が付されており、
図8と同様に、係合部59とピン貫通孔57を示すために、ロックピン42の頭部54が仮想線で示されている。
【0040】
図9に示されるように、ロック部材47に形成される係合部59は、上述した場合と相違してピン貫通孔57に対してカム部材33側に設けられている。したがって、2つのロック部材47を相互に接近させると、
図9(A)に示されるように、ロック部材47の係合部59はロックピン42の頭部54に接触しない解放位置になる。これに対して、2つのロック部材47を相互に離反させると、
図9(B)に示されるように、ロック部材47の係合部59はロックピン42の頭部54に接触するロック位置になる。
【0041】
ばね部材63は上述した場合と同様に、ばね室64内に装着されてばね部材63の一端面はばね室64の底面に当接し、他端面は端壁面53に当接している。したがって、ばね部材63はロックピン42の係合溝56からロック部材47の係合部59を解放させる方向にばね力を加える。
【0042】
カム部材33のカム面67の大径面67aは、2つのロック部材47のカム接触面68を押し付けて、
図9(B)に示すように、ロック部材47をロック位置に駆動するロック面を構成する。一方、カム面67の小径面67bは、2つのロック部材47のカム接触面68から離れて、
図9(A)に示すように、ロック部材47を解放位置に駆動する解放面を構成する。
【0043】
図9に示す形態のマスターユニット11においても、2つのロック部材47を設けることなく、単一のロック部材47とすることができる。また、ロック部材47は2本のロックピン42をロックするようにしているが、1つのロック部材47により1本のロックピン42をロックするようにしてもよい。
【0044】
カム部材33は板カムにより形成されており、外周面をカム面67として、ロック部材47のカム接触面68にカム面67を接触させるようにしている。ただし、カム部材33としては、板カムに限定されることなく、確動カムを用いることができる。確動カムとしては、例えば、ロック部材47に溝または突起の一方を形成し、カム部材33にロック部材47の溝または突起と噛み合う溝または突起を設けた形態とすることができる。その場合には、ばね部材63は不要となる。
【0045】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、ツール交換装置をロボットアームに装着した場合について説明したが、ロボットアームに限られず、ツールユニットを移動する部材を備えた移動装置であれば、本発明のツール交換装置を適用することができる。また、実施の形態においては、電動ハンド14がツールユニット12に取り付けられているが、作業機器としては、電動ハンド14に限られることなく、治具や工具が取り付けられたツールユニット12をマスターユニット11に装着することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 ツール交換装置
11 マスターユニット
12 ツールユニット
13 ロボットアーム
14 電動ハンド
21 モータ収容室
22 ユニット本体
24 支持プレート
29 装着面
31 電動モータ
33 カム部材
34 カム収容部
39 ロック部材収容部
42 ロックピン
44 突き当て面
45 大径部
46 貫通孔
47 ロック部材
54 頭部
55 小径軸部
56 係合溝
57 ピン貫通孔
58 円弧面
59 係合部
61 ロック用空間
63 ばね部材
65 ガイドピン
66 ガイド孔
67 カム面
67a 大径面
67b 小径面
68 カム接触面