(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033953
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子
(51)【国際特許分類】
B81B 3/00 20060101AFI20230306BHJP
H03H 9/24 20060101ALI20230306BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20230306BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20230306BHJP
H10N 30/06 20230101ALI20230306BHJP
【FI】
B81B3/00
H03H9/24 Z
H01L41/09
H01L41/047
H01L41/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139946
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】山田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】川合 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 淳平
【テーマコード(参考)】
3C081
5J108
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081BA03
3C081BA22
3C081BA45
3C081BA48
3C081BA55
3C081BA72
3C081CA02
3C081CA14
3C081CA40
3C081CA42
3C081DA03
3C081DA11
3C081DA26
3C081DA27
3C081EA21
5J108AA09
5J108BB08
5J108FF05
5J108KK02
(57)【要約】
【課題】目的とする共振周波数に合わせ込めて、所望の特性にできる構造を有したMEMS振動子を提供する。
【解決手段】開口部11が形成されていると共に開口部11の周囲を囲む周壁を構成する台座部12を備えた基材10と、基材10の一面側において、開口部11の少なくとも一部と対応する部分に形成された下部電極20と、下部電極20の上に形成された圧電膜30と、圧電膜30の上に形成された金属ガラス40と、を有している。そして、下部電極20、圧電膜30および金属ガラス40を含んでメンブレンが構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部(11)が形成されていると共に該開口部の周囲を囲む周壁を構成する台座部(12)を備えた基材(10)と、
前記基材の一面側において、前記開口部の少なくとも一部と対応する部分に形成された下部電極(20)と、
前記下部電極の上に形成された圧電膜(30)と、
前記圧電膜の上に形成された金属ガラス(40)と、を有し、
前記下部電極、前記圧電膜および前記金属ガラスを含んでメンブレンが構成されている、MEMS振動子。
【請求項2】
前記金属ガラスが前記開口部を全域覆って配置されている、請求項1に記載のMEMS振動子。
【請求項3】
前記金属ガラスが前記開口部のうちの一部のみを覆って配置されている、請求項1に記載のMEMS振動子。
【請求項4】
前記金属ガラスは、2箇所以上において、前記開口部と前記台座部との境界線と重なって配置されている、請求項3に記載のMEMS振動子。
【請求項5】
前記開口部は、前記基材の一面に対する法線方向を中心軸方向として形成されており、
前記金属ガラスは、前記中心軸を中心として前記メンブレンを等分割するように配置されている、請求項3または4に記載のMEMS振動子。
【請求項6】
前記金属ガラスの上に上部電極(50)を有し、
前記下部電極、前記圧電膜および前記金属ガラスに加えて、前記上部電極を含んでメンブレンが構成されている、請求項1ないし5のいずれか1つに記載のMEMS振動子。
【請求項7】
前記金属ガラスが上部電極(50)としても機能する、請求項1ないし5のいずれか1つに記載のMEMS振動子。
【請求項8】
前記下部電極の少なくとも一部がシリコンで構成されている、請求項1ないし7のいずれか1つに記載のMEMS振動子。
【請求項9】
前記金属ガラスには、該金属ガラスを厚み方向において貫通させた穴(41)が形成されている、請求項1ないし8のいずれか1つに記載のMEMS振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS構造の半導体装置にて構成されるMEMS振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、弾性率の高い金属ガラスをメンブレン材料に使用することで、MEMSセンサの特性向上を図ることが提案されている。具体的には、特許文献1では、シリコンで構成される基板の上に金属ガラスをスパッタで作製し、その後、金属ガラス上に圧電膜を成膜するという構造としている。
【0003】
一方、金属ガラスをアニールすることで、金属ガラスに生じる応力をアニール温度に依存した応力に制御することが知られている。これを利用し、応力測定後に個別にアニールを実施することで、金属ガラスに生じる応力のばらつきを低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、金属ガラス上に圧電膜を配置していることから、例えば圧電膜として窒化アルミニウム(AlN)を用いる場合、成膜温度が350℃以上で金属ガラスのアニール温度を超えてしまう。このため、金属ガラスをアニールして応力を制御することができず、応力ばらつきを低減することができない。具体的には、MEMS振動子を製造する場合であれば、金属ガラスをアニールして目的とする共振周波数に合わせ込むことができず、所望の特性とすることができない。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、目的とする共振周波数に合わせ込めて、所望の特性にできる構造を有したMEMS振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のMEMS振動子は、開口部(11)が形成されていると共に該開口部の周囲を囲む周壁を構成する台座部(12)を備えた基材(10)と、基材の一面側において、開口部を覆って形成された下部電極(20)と、下部電極の上に形成された圧電膜(30)と、圧電膜の上に形成された金属ガラス(40)と、を有し、下部電極、圧電膜および金属ガラスを含んでメンブレンが構成されている。
【0008】
このように、金属ガラスの上に圧電膜を形成するのではなく、圧電膜の上に金属ガラスを形成した構造のMEMS振動子としている。このため、圧電膜の成膜温度以上の温度が金属ガラスに対して印加されないようにできる。したがって、金属ガラスを形成した後に、目的とする特性に合わせて、アニール処理を行うことで、その共振周波数に合わせ込むことができる。よって、所望の特性にできる構造を有したMEMS振動子とすることが可能となる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかるMEMS振動子の断面図である。
【
図3A】
図1に示すMEMS振動子の製造工程中の様子を示した断面図である。
【
図3B】
図3Aに続くMEMS振動子の製造工程中の様子を示した断面図である。
【
図3C】
図3Bに続くMEMS振動子の製造工程中の様子を示した断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態にかかるMEMS振動子の断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態にかかるMEMS振動子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるMEMS振動子について説明する。本実施形態で説明するMEMS振動子は、例えば超音波トランスデューサーなどに適用される。以下、本実施形態にかかるMEMS振動子について、
図1~
図2を参照して説明する。なお、
図1および
図2に示すMEMS振動子1は、例えば超音波トランスデューサーにおける素子部分を示したものであり、図示しない配線構造や制御部などが備えられて、超音波トランスデューサーが構成される。
【0013】
MEMS振動子1は、MEMS技術を用いて形成されたもので、
図1に示すように、基材10上に、下部電極20、圧電膜30、金属ガラス40および上部電極50を備えることでメンブレンが形成された構成とされている。
【0014】
基材10は、例えばシリコン(Si)によって構成されており、下部電極20などが配置される一面側を表面、その反対側を裏面としたSi基板によって構成されている。
図2に示すように、基材10は、上面形状が四角形状、ここでは正方形状とされており、内部に開口部11が形成されており、開口部11の周囲を囲む周壁によって構成される台座部12を備えた構造とされている。開口部11は、一方向、具体的には基材10の一面に対する法線方向を中心軸方向として、基材10を裏面側から中心軸方向に孔開けすることによって形成されている。ここでは、基材10の裏面から中心軸を中心として円柱形状に孔開けされることで開口部11が形成されている。開口部11の寸法については任意であるが、メンブレンの目的とする共振周波数に対応した寸法に設計されている。
【0015】
下部電極20は、例えばプラチナ(Pt)やアルミニウム(Al)、金(Au)、チタン(Ti)等の単層膜もしくは複数の積層膜で構成された金属膜によって構成されている。下部電極20は、基材10の表面側一面において、開口部11の少なくとも一部と対応する部分に形成され、本実施形態では開口部11を覆うように形成されている。つまり、下部電極20は、台座部12の外周端から内終端に至り、さらに開口部11内の全域に至るように形成され、本実施形態の場合、上面形状が四角形状となっている。
【0016】
圧電膜30は、下部電極20の上、かつ、金属ガラス40の下に形成されており、下部電極20と同様に、基材10の表面側一面において、開口部11を覆うように形成されている。つまり、圧電膜30も、台座部12の外周端から内終端に至り、さらに開口部11内の全域に至るように形成され、本実施形態の場合、上面形状が四角形状となっている。圧電膜30は、例えばAlNやチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、等の圧電材料によって構成されている。
【0017】
金属ガラス40は、圧電膜30の上に形成されており、本実施形態では、少なくとも開口部11を全域覆って、開口部11と台座部12との境界線に至るように形成されている。金属ガラス40は、下部電極20と同様に、基材10の表面側一面において、開口部11を覆うように形成されていても良く、本実施形態の場合はそのような構成とされている。また、金属ガラス40を基材10の外縁まで至らない位置、つまり基材10のうちの外縁より内側の位置で止まるように延設しても良い。
【0018】
金属ガラス40は、金属元素を主成分とする非結晶性の合金で、ガラス転移が観察されるアモルファス金属である。金属ガラス40は、原材料は金属であるが、溶融状態から例えば高速で冷却すると、ガラスと同様に原子が不規則に配列したアモルファス状態で固体化し、アモルファス金属とも呼ばれる。金属ガラス40の材質については、上記特性が得られるものであれば任意である。例えば、ニッケル(Ni)とニオブ(Nb)およびジルコニウム(Zr)を含むNi-Nb-Zr合金やパラジウム(Pd)と銅(Cu)とSiを含むPd-Cu-Si合金などを金属ガラス40として用いることができる。
【0019】
上部電極50は、金属ガラス40の上に形成されており、開口部11と対応する位置に形成され、開口部11内もしくは開口部11のほぼ全域を覆うように形成されている。上部電極50についても、基材10の一面側の全域を覆うように形成されていても良いが、少なくとも開口部11の一部を覆うように形成されていれば良い。上部電極50は、例えば下部電極20と同じ材料で構成可能である。
【0020】
なお、
図1、
図2中には示していないが、上記したように図示しない配線構造や制御部が備えられる。これにより、超音波が印加されてメンブレンが振動したときに圧電膜30での圧電効果に基づいて下部電極20と上部電極50との間に発生する電位差を外部に取り出すことが可能となっている。また、下部電極20と上部電極50との間に超音波振動用の電位差を印加し、圧電膜30の圧電効果に基づいてメンブレンを振動させ、外部に超音波を出力することが可能となっている。このため、MEMS振動子1にて超音波の送受信の一方もしくは双方を行うことができる超音波トランスデューサーを構成することができる。
【0021】
このように構成されたMEMS振動子1では、金属ガラス40の上に圧電膜30を形成するのではなく、圧電膜30の上に金属ガラス40を形成した構造になっている。このため、圧電膜30の成膜温度、例えば圧電膜30をAlNで構成するのであれば350℃以上の温度が金属ガラス40に対して印加されないようにできる。したがって、金属ガラス40を形成した後に、目的とする共振周波数に合わせて、アニール温度やアニール時間を調整することで、その共振周波数に合わせ込むことができる。よって、所望の特性にできる構造を有したMEMS振動子1とすることが可能となる。
【0022】
続いて、上記のような構造のMEMS振動子1の製造方法について、
図3A~
図3Cを参照して説明する。
【0023】
まず、
図3Aに示すように、ウェハ状の基材10に対して下部電極20、圧電膜30、金属ガラス40および上部電極50を順に成膜する。金属ガラス40や上部電極50については、成膜後に、必要に応じてフォトエッチングによりパターニングして所望形状にする。これにより、
図3Aの構造が製造される。例えば、基材10をSi、下部電極20および上部電極50をPt、圧電膜30をAlN、金属ガラス40をNi-Nb-Zr合金で構成している。下部電極20および上部電極50については数十nm~数μmの厚み、圧電膜30については数μmの厚み、金属ガラス40については数十nm~十数μmの厚みとしている。このような構成とする場合、アニール処理前の初期状態では、金属ガラス40の応力により圧縮応力が発生し、
図3Aに示したように、メンブレンとなる部分が中央部側に収縮した状態になっていた。
【0024】
この後、アニール処理を200~400℃で数十分から数時間、例えば300℃で1時間行う。これにより、金属ガラス40に発生していた圧縮応力が緩和されて、例えば引張応力に変わり、
図3Bに示すようにメンブレンとなる部分の収縮が解消して全体的に平面に近い状態になる。
【0025】
そして、基材10の裏面に開口部11の形成予定位置が開口するフォトマスクを形成したのち、ドライエッチングすることで、
図3Cに示すように基材10に開口部11を形成する。これにより、開口部11と対応する位置に、下部電極20、圧電膜30、金属ガラス40および上部電極50によるメンブレンが構成される。この後、スクライブラインに沿ってダイシングカットすることで、
図1および
図2に示したMEMS振動子1を製造できる。
【0026】
なお、ここでは初期状態の際に圧縮応力が発生した場合にアニール処理によって引張応力に変わる場合を例に挙げた。これは応力の形態の一例を挙げたものであり、必ずしもこの形態になる訳ではない。すなわち、メンブレンの目標とする共振周波数が得られる応力となるように、金属ガラス40に発生する応力を調整できれば良い。例えば、初期状態の際に引張応力が発生した場合にアニール処理によって圧縮応力に変わるようにしても良い。また、初期状態の際に圧縮応力が発生した場合にアニール処理によって圧縮応力を弱めるようにしても良い。
【0027】
以上説明したように、本実施形態では、金属ガラス40の上に圧電膜30を形成するのではなく、圧電膜30の上に金属ガラス40を形成した構造のMEMS振動子1としている。このため、圧電膜30の成膜温度以上の温度が金属ガラス40に対して印加されないようにできる。したがって、金属ガラス40を形成した後に、目的とする共振周波数に合わせて、アニール処理を行うことで、その共振周波数に合わせ込むことができる。よって、所望の特性にできる構造を有したMEMS振動子1とすることが可能となる。
【0028】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して金属ガラス40の形状を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0029】
図4および
図5に示すように、本実施形態では、金属ガラス40がメンブレンの全面には配置されておらず、メンブレンの一部にのみ配置された構造とされている。
【0030】
具体的には、金属ガラス40が2箇所以上で開口部11と台座部12との境界線に重なるように配置されている。本実施形態では、金属ガラス40を長方形の短冊状で構成し、金属ガラス40の長手方向の一端と他端が開口部11と台座部12との境界線に重なるように金属ガラス40を配置している。このように、金属ガラス40が少なくとも2箇所で開口部11と台座部12との境界線に重なるよう配置されていると、アニール処理により金属ガラス40で発生した応力を制御するという効果をより有効に得ることができる。
【0031】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1、第2実施形態に対して金属ガラス40の形状を変更したものであり、その他については第1、第2実施形態と同様であるため、第1、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、ここでは第2実施形態のように金属ガラス40をメンブレンの一部にのみ配置される形状とする場合を例に挙げるが、第1実施形態のようにメンブレンの全面を覆うように金属ガラス40を配置する場合にも適用できる。
【0032】
図6および
図7に示すように、本実施形態の金属ガラス40には、金属ガラス40を厚み方向に貫通させた複数の穴41が形成されている。複数の穴41がアレイ状に配置されており、金属ガラス40がメッシュ状の形状とされている。このように、金属ガラス40に穴41を形成することもできる。金属ガラス40を穴の開けた形状とする場合、その分、金属ガラス40の重量を軽量化できる。これにより、MEMS振動子1の設計自由度を向上することが可能となる。
【0033】
なお、ここでは、複数の穴41をアレイ状に配置することで金属ガラス40をメッシュ状の形状としたが、穴41の形成される形状や数および配置場所については任意であるし、金属ガラス40が必ずしもメッシュ状でなくても良い。すなわち、目的とするメンブレンの共振周波数特性に合わせて、穴41の形状や数および配置場所を適宜設定すれば良い。
【0034】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0035】
(1)例えば、上記各実施形態では、金属ガラス40と上部電極50とを別々の構成としたが、金属ガラス40にて上部電極50の役割を兼ねるようにすることもできる。このようにすれば、上部電極50を金属ガラス40と別部材で構成する場合と比較して、上部電極成膜が必要無くなるため、コストダウンが可能となる。
【0036】
金属ガラス40と上部電極50とを別々に形成する場合、アニール処理による応力の制御を行うのに金属ガラス40を少なくとも2箇所で開口部11と台座部12との境界線に重なるようにするのが効果的である。一方、上部電極50については、開口部11内に形成されるメンブレンの少なくとも一部に形成されていれば良く、開口部11と台座部12との境界線に重なっていなくても良い。ただし、メンブレンの共振周波数特性などを加味して、金属ガラス40や上部電極50がメンブレンの中心に対して回転対称にレイアウトされていると好ましい。
【0037】
これに対して、金属ガラス40で上部電極50の役割も兼ねる場合、アニール処理によって応力を制御するのに効果的となるように、金属ガラス40が少なくとも2箇所で開口部11と台座部12との境界線に重なるようにするとよい。
【0038】
(2)また、上記実施形態では、下部電極20についてPtなどの金属材料を用いて形成したが、少なくとも一部をSi、つまりn型もしくはp型不純物をSiに対して高濃度にドープした不純物層によって構成することもできる。
【0039】
例えば、基材10の上に一般的に行われているMOS工程により、絶縁膜とポリシリコンを順に成膜し、ポリシリコンに対して不純物をドープすることで不純物層を構成して下部電極20とする。そして、開口部11を形成する際に下部電極20が残るようにエッチングすることで、Siで下部電極20を構成することが可能となる。
【0040】
また、基材10の表面側の表層部を不純物層にて構成される下部電極20とし、開口部11を形成する際に下部電極20が残るようにすることで、Siで下部電極20を構成するようにしても良い。
【0041】
さらに、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いて、活性層側を薄膜としつつ、不純物を高濃度にドープして不純物層を構成し、これを下部電極20としても良い。その場合、活性層と支持層との間に配置される埋込酸化膜が除去されるまで開口部11を形成しても良いし、埋込み酸化膜もメンブレンの一部となるように残しても良い。
【0042】
(3)さらに、上記各実施形態では、開口部11をMEMS振動子1の上面から見た形状が円形状となるようにしてメンブレン形状が円形状となるようにしたが、六角形状や八角形状などの正多角形状であっても良い。
【0043】
この場合でも、第2、第3実施形態のように、金属ガラス40が2箇所以上で開口部11と台座部12との境界線に重なるように配置されるようにすると良い。これにより、アニール処理により金属ガラス40で発生した応力を制御するという効果をより有効に得ることができる。すなわち、メンブレン形状を円形状とする場合と多角形状とする場合、いずれの場合も、開口部11の中心軸を中心としてメンブレンを等分割するように金属ガラス40が配置されるのが好ましい。
【0044】
例えば、メンブレン形状が正n角形である場合、金属ガラス40により、正n角形をn分割もしくはnの倍数や約数で分割するようにレイアウトすれば良い。一例を挙げると、メンブレン形状が八角形である場合にn分割するのであれば、メンブレン中心から径方向の八方向に放射した形状で金属ガラス40をレイアウトする。メンブレン形状が八角形である場合に、nの倍数で分割するのであればメンブレン中心から径方向の16方向に放射した形状、nの約数で分割するのであればメンブレン中心から径方向の四方向もしくは二方向に放射した形状で金属ガラス40をレイアウトする。四方向の場合は金属ガラス40が十字形状となり、二方向の場合は金属ガラス40が長方形状になる。
【0045】
また、必ずしも開口部11の中心軸を中心としてメンブレンを等分割するように金属ガラス40を配置する必要は無く、例えば開口部11の中心軸から金属ガラス40を2方向に円設したL字形状としても良い。
【0046】
また、上記各実施形態において、各部の数や材質については一例を挙げたに過ぎない。例えば、金属ガラス40を二本など複数本のストライプ状として配置したり、開口部11の中心軸を中心として放射状に分割した複数本を配置した構造とされていても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 MEMS振動子
10 基材
11 開口部
12 台座部
20 下部電極
30 圧電膜
40 金属ガラス
41 穴
50 上部電極