(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033962
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】潤滑油用粘度指数向上剤およびその用途
(51)【国際特許分類】
C10M 143/14 20060101AFI20230306BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20230306BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20230306BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20230306BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20230306BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20230306BHJP
C10N 40/26 20060101ALN20230306BHJP
【FI】
C10M143/14
C10N20:00 Z
C10N20:02
C10N20:00 A
C10N30:00 A
C10N40:04
C10N40:25
C10N40:26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139964
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 瑛弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 周平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅貴
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104CA14C
4H104CB14A
4H104EA02C
4H104EA04C
4H104EB05
4H104EB07
4H104LA11
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA41
4H104PA42
4H104PA45
(57)【要約】 (修正有)
【課題】透明性を維持しつつ、低温粘度に優れる潤滑油用粘度指数向上剤、潤滑油用添加剤組成物および潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、下記要件を有するプロピレン・環状オレフィン共重合体を含むことを特徴とする潤滑油用粘度指数向上剤に係る。
(x-1)プロピレン由来の構成単位の含有割合が75モル%以上、100モル%未満の範囲である。
(x-2)環状オレフィンが特定の構造を有する。
(x-3)示差走査型熱量計で測定したガラス転移温度(Tg)が0℃以上である。
(x-4)示差走査型熱量計で測定した融点(Tm)が0℃から160℃の間で観測されない。
(x-5)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.65~2.5dl/gの範囲である。
(x-6)13C-NMRにより算出したトリアドタクティシティが以下の範囲である。
mm分率が0%<mm<25%であり、かつrr分率が30%<rr<60%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(x-1)~(x-6)を有するプロピレン・環状オレフィン共重合体(X)を含むことを特徴とする潤滑油用粘度指数向上剤:
(x-1)プロピレン由来の構成単位の含有割合が75モル%以上、100モル%未満の範囲である。
(x-2)環状オレフィンが一般式(I)で表される構造を有する。
(x-3)示差走査型熱量計で測定したガラス転移温度(Tg)が0℃以上である。
(x-4)示差走査型熱量計で測定した融点(Tm)が0℃から160℃の間で観測されない。
(x-5)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.65~2.5dl/gの範囲である。
(x-6)
13C-NMRにより算出したトリアドタクティシティが以下の範囲である。
mm分率が0%<mm<25%であり、かつ
rr分率が30%<rr<60%である。
【化1】
〔式中、R
1~R
6は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、あるいはR
1とR
2、R
3とR
4、R
5とR
6でそれぞれ炭素数1~2のアルキリデン基を形成していてもよい。〕
【請求項2】
前記プロピレン・環状オレフィン共重合体(X)の環状オレフィンが、テトラシクロドデセンである請求項1に記載の潤滑油用粘度指数向上剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプロピレン・環状オレフィン共重合体(X)を1~50質量%、および基油(B)を50~99質量%〔ただし、前記(X)および(B)の質量%は、添加剤組成物中の(X)および(B)の合計量に基づいて算出される。〕を含有する潤滑油用添加剤組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載のプロピレン・環状オレフィン共重合体(X)と、潤滑油基油(B)とを含む潤滑油組成物であり、潤滑油組成物100質量%中、前記プロピレン・環状オレフィン共重合体(X)を0.01~30質量%含有する潤滑油組成物。
【請求項5】
プロピレン・環状オレフィン共重合体(X)以外の無灰分散剤を、潤滑油組成物100質量%中、0~0.1質量%の量で含有する請求項4に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
流動点降下剤(C)を、潤滑油組成物100質量%中、0.05~5質量%の量で含有する請求項4または5に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油用粘度指数向上剤、当該潤滑油用粘度指数向上剤を含む潤滑油用添加剤組成物および潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
石油製品は、一般に温度が変わると粘度が大きく変化する、いわゆる粘度の温度依存性を有する。例えば、自動車に用いられる潤滑油では、粘度の温度依存性が小さい(すなわち、粘度指数が高い)ことが好ましい。そこで潤滑油には、粘度の温度依存性を小さくする目的で、潤滑油基油に可溶なある種のポリマーが粘度調整剤(粘度指数向上剤ともいう)として用いられている。
【0003】
潤滑油用粘度指数向上剤としてはエチレン・α-オレフィン共重合体が広く用いられており、潤滑油の性能バランスをさらに改善するため種々の改良がなされている(例えば、特許文献1参照)。また、潤滑油用粘度指数向上剤としてプロピレン・α-オレフィン共重合体を用いることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
近年、自動車への環境負荷低減要求が高まる中で、自動車の燃費向上が強く求められている。特にエンジン油による省燃費化の一つの方策として、低温から高温の幅広い温度範囲における粘性抵抗の低減が挙げられる。
【0005】
エンジンオイル用粘度調整剤(VM:Viscosity Modifyierの略)として、省燃費性向上を目的として高粘度指数のVMが求められている。VMを高粘度指数化する方法の一つとして、低温(40℃)領域において潤滑油を低粘度化するため、VMの凝集力を高くする方法がある。しかし、同時に配合油の透明性が良好であることも求められている。低温での凝集力を改善するには、VMと基油などオイルとの相溶性をこれまでより低くすることが考えられるが、透明性の点からは相溶性を維持する必要があり、これらの物性を両立することが課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/101206号
【特許文献2】特表2013-506036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、透明性を維持しつつ、低温粘度に優れる潤滑油用粘度指数向上剤、潤滑油用添加剤組成物および潤滑油組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記要件(x-1)~(x-6)を有するプロピレン・環状オレフィン共重合体(X)を含むことを特徴とする潤滑油用粘度指数向上剤に係る。
(x-1)プロピレン由来の構成単位の含有割合が75モル%以上、100モル%未満の範囲である。
(x-2)環状オレフィンが一般式(I)で表される構造を有する。
(x-3)示差走査型熱量計で測定したガラス転移温度(Tg)が0℃以上である。
(x-4)示差走査型熱量計で測定した融点(Tm)が0℃から160℃の間で観測されない。
(x-5)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.65~2.5dl/gの範囲である。
(x-6)13C-NMRにより算出したトリアドタクティシティが以下の範囲である。
mm分率が0%<mm<25%であり、かつ
rr分率が30%<rr<60%である。
【0009】
【化1】
〔式中、R
1~R
6は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、あるいはR
1とR
2、R
3とR
4、R
5とR
6でそれぞれ炭素数1~2のアルキリデン基を形成していてもよい。〕
【発明の効果】
【0010】
本発明のプロピレン・環状オレフィン共重合体(X)を含む潤滑油用粘度指数向上剤は、基油(B)などのオイルへの溶解性に優れ、また、ペレット化(造粒化)が可能であるので、ハンドリング性に優れる。
【0011】
また、本発明の潤滑油用添加剤組成物および潤滑油組成物は、プロピレン・環状オレフィン共重合体(X)を含むので、低温領域(-40℃)における凝集力が高いので良好な低温粘度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《プロピレン・環状オレフィン共重合体(X)》
本発明の潤滑油用粘度指数向上剤に含まれるプロピレン・環状オレフィン共重合体(X)〔以下、「共重合体(X)」と呼称する場合がある。〕は、下記要件(x-1)~(x-6)を有する。
【0013】
要件(x-1)
共重合体(X)を構成するプロピレン由来の構成単位の含有割合が75モル%以上、100モル%未満、好ましくは77~95モル%〔ただし、プロピレン由来の構成単位と環状オレフィン由来の構成単位の合計量を100モル%とする。〕の範囲である。
プロピレン由来の構成単位の含有割合が75モル%未満の共重合体は、基油(B)との相溶性が低く、白濁・析出の原因となる虞がある。
【0014】
要件(x-2)
共重合体(X)を構成する環状オレフィンが一般式(I)で表される構造を有する。
【0015】
【化2】
〔式中、R
1~R
6は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、あるいはR
1とR
2、R
3とR
4、R
5とR
6でそれぞれ炭素数1~2のアルキリデン基を形成していてもよい。〕
【0016】
本発明に係る上記一般式(I)で表される構造を有する環状オレフィンは、具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセン誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン誘導体、ヘプタシクロ-5-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-5-ヘンエイコセン誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン誘導体、トリシクロ[4.4.0.12,5]-3-ウンデセン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ペンタデセン誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]-4-エイコセン誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.03,8.02,10.012,21.014,19]-5-ペンタコセン誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ヘキサデセン誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ヘンエイコセン誘導体、ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]-5-ヘキサコセン誘導体、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセン誘導体、およびシクロペンタジエン-アセナフチレン付加物などが挙げられる。
【0017】
これら環状オレフィンの中でもテトラシクロドデセンが剛直な骨格のため基油(B)との相溶性を下げる効果があり、適度な嵩高さのためプロピレンとの共重合が可能であり、油溶性の共重合体を得ることができる。
【0018】
要件(x-3)
示差走査型熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が0℃以上、好ましくは20~120℃の範囲である。
【0019】
Tgが上記範囲を満たす重合体は、常温付近でガラス状の固体として扱うことができ、高温(基油の低沸成分が蒸発しない程度)で基油(B)に溶解することが容易である。
本発明に係る共重合体(X)のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した。
【0020】
示差走査熱量計(DSC)での測定方法は以下のとおりである。
インジウム標準にて較正したSII社製示差走査型熱量計(DSC7020)を用いた。約10mgになるようにアルミニウム製DSCパン上に測定試料を秤量する。蓋をパンにクリンプして密閉雰囲気下とし、サンプルパンを得る。サンプルパンをDSCセルに配置し、リファレンスとして空のアルミニウムパンを配置する。DSCセルを窒素雰囲気下にて30℃(室温)から、250℃まで10℃/分で昇温する(第一昇温過程)。次いで、250℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを70℃まで冷却する(降温過程)。降温過程で得られるエンタルピー曲線の変曲点(上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点)での接線と温度を保持していたときの吸熱量との交点をガラス転移点(Tg)とした。
【0021】
要件(x-4)
示差走査型熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が0℃から160℃の間で観測されない。
【0022】
融点が上記範囲内にないことにより、配合油中で共重合体が結晶化せず、結晶析出による白濁が生じない。
本発明に係る共重合体(X)の融点(Tm)および結晶融解熱量(ΔH)の測定は、以下の条件で測定した。
【0023】
SII社製示差走査型熱量計(DSC7020)を用いて、約10mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度10℃/分で250℃まで昇温し、その温度で5分間保持した。さらに降温速度10℃/分で70℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した。この2度目の昇温の際に観測される吸熱ピークを融解ピークとし、その融解ピークが現れる温度を融点(Tm)として求めた。また、融解熱量ΔHは前記融解解ピークの面積を算出して求めた。なお融解ピークが多峰性の場合は、全体の融解ピークの面積を算出して求めた。
【0024】
要件(x-5)
135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.65~2.5dl/g、好ましくは0.80~1.50dl/gの範囲である。
極限粘度[η]が上記範囲内あることにより、基油(B)に対して、増粘性を有し、溶解性に優れる。
【0025】
要件(x-6)
13C-NMRにより算出したトリアドタクティシティが以下の範囲である。
mm分率が0%<mm<25%であり、かつrr分率が30%<rr<60%である。
【0026】
本発明に係る共重合体(X)のトリアドタクティシティは、該共重合体の13C-NMRスペクトルおよび下記数式(1)により、頭-尾結合したプロピレン単位3連鎖部の第2単位目の側鎖メチル基の強度(面積)比として求められる。
rr分率(%)=PPP(rr)×100/
{PPP(mm)+PPP(mr)+PPP(rr)}・・(1)
(式中、PPP(mm)、PPP(mr)、PPP(rr)は、それぞれ13C-NMRスペクトルの下記シフト領域で観察される頭-尾結合したプロピレン単位3連鎖部の第2単位目の側鎖メチル基の面積である。)
【0027】
【0028】
このようなPPP(mm)、PPP(mr)、PPP(rr)は、それぞれ下記構造の頭-尾結合したプロピレン3単位連鎖を示す。
【0029】
【0030】
なおスペクトル中の各炭素ピークは、文献(Polymer,30,1350(1989) )を参考にして帰属することができる。
トリアドタクティシティの測定は、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX-500型NMR測定装置を用い、120℃で13C-NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。
【0031】
本発明に係る共重合体(X)は、とくに限定はされないが、SP値が16.0~18.8の範囲であると好ましい(SP値の算出法は実施例に後述の通り)。
本発明の共重合体(X)を含む潤滑油用粘度指数向上剤を潤滑油用添加剤組成物、あるいは潤滑油組成物として用いる場合、潤滑油用添加剤組成物、あるいは潤滑油組成物には、通常、後述の基油(B)と混合して得られる。
【0032】
基油(B)のSP値は同様の方法で推算すると通常、15.9~16.0であるので、SP値が上記の範囲の共重合体(X)は、SP値が近似しているので、相溶性に優れ、潤滑油用添加剤組成物、あるいは潤滑油組成物の透明性が良好になるので好ましい。
【0033】
《プロピレン・環状オレフィン共重合体(X)の製造方法》
本発明に係るプロピレン・環状オレフィン共重合体(X)は、種々公知の製造方法、例えば、バナジウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム等の遷移金属を含有する化合物と、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物およびイオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種とを含む触媒を用いて、プロピレンと上記環状オレフィンを共重合することにより製造することができる。より具体的には、特開2000-264925号公報により製造し得る。
【0034】
<潤滑油用粘度指数向上剤>
本発明の潤滑油用粘度指数向上剤は、上記プロピレン・環状オレフィン共重合体(X)を含む組成物であり、通常、上記プロピレン・環状オレフィン共重合体(X)のみ、あるいは下記基油(B)に希釈した状態で用いてもよい。
【0035】
基油(B)に希釈して用いる場合は、通常、上記プロピレン・環状オレフィン共重合体(X)を1~50質量%の範囲で含む。
本発明の潤滑油用粘度指数向上剤は、上記プロピレン・環状オレフィン共重合体(X)を含むので、ハンドリング性に優れる。
【0036】
<潤滑油用添加剤組成物>
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、上記プロピレン・環状オレフィン共重合体(X)を1~50質量%、好ましくは1~20質量%、および基油(B)を50~99質量%、好ましくは80~99質量%〔ただし、前記(X)および(B)の質量%は、添加剤組成物中の(X)および(B)の合計量に基づいて算出される。〕を含有する組成物である。
【0037】
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、通常、後述する流動点降下剤(C)およびその他の成分(添加剤)は含まないかあるいは必要に応じて後述する抗酸化剤を0.01~1質量%、好ましくは0.05~0.5質量%の範囲で含有することが一般的である。
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、上記共重合体(X)を上記範囲で含むので、ハンドリング性に優れる。
【0038】
《基油(B)》
本発明の潤滑油用添加剤組成物の主成分である基油(B)は、好ましくは下記要件(B-1)を満たす。
【0039】
〔要件(B-1)〕
100℃動粘度が1~50mm2/sの範囲にある。
本発明に係る基油(B)としては、鉱物油;および、ポリα-オレフィン、ジエステル類、ポリアルキレングリコールなどの合成油が挙げられる。
【0040】
本発明に係る基油(B)としては、鉱物油または鉱物油と合成油とのブレンド物を用いてもよい。ジエステル類としては、ポリオールエステル、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケートなどが挙げられる。
【0041】
鉱物油は、一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級がある。一般に0.5~10%のワックス分を含む鉱物油が使用される。例えば、水素分解精製法で製造された流動点の低い、粘度指数の高い、イソパラフィンを主体とした組成の高度精製油を用いることもできる。40℃における動粘度が10~200mm2/sの鉱物油が一般的に使用される。
【0042】
鉱物油は、前述のように一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級があり、本等級はAPI(米国石油協会)分類で規定される。表2に各グループに分類される潤滑油基剤の特性を示す。
【0043】
【表2】
*1:ASTM D445(JIS K2283)に準じて測定
*2:ASTM D3238に準じて測定
*3:ASTM D4294(JIS K2541)に準じて測定
*4:飽和炭化水素分が90vol%未満でかつ硫黄分が0.03重量%未満
または飽和炭化水素分が90vol%以上でかつ硫黄分が0.03重量
%を超える鉱物油もグループIに含まれる。
【0044】
表2におけるポリα-オレフィンは、少なくとも炭素原子数10以上のα-オレフィンを原料モノマーの一種として重合して得られる炭化水素系のポリマーであって、1-デセンを重合して得られるポリデセンなどが例示される。
【0045】
基油(B)としては、グループ(II)またはグループ(III)に属する鉱物油、またはグループ(IV)に属するポリα-オレフィンが好ましい。グループ(I)よりもグループ(II)およびグループ(III)の方が、ワックス濃度が少ない傾向にある。グループ(II)またはグループ(III)に属する鉱物油の中でも100℃における動粘度が1~50mm2/sのものが好ましい。
【0046】
<潤滑油組成物>
本発明の潤滑油組成物は、上記プロピレン・環状オレフィン共重合体(X)と、基油(B)とを含む潤滑油組成物であり、潤滑油組成物100質量%中、前記プロピレン・環状オレフィン共重合体(X)を0.01~30質量%、好ましくは0.01~5質量%含有する組成物である。
本発明の潤滑油組成物は、共重合体(X)および基油(B)に加え、無灰分散剤、流動点降下剤(C)、および、その他の成分(添加剤)を含む。
【0047】
《無灰分散剤》
本発明の潤滑油組成物に含まれる成分の一つである無灰分散剤は、比較的分子量の大きい炭化水素鎖に付いた極性基によって特徴付けられる。典型的な無灰分散剤として、スクシンイミド分散剤としても知られる、N置換長鎖アルケニルスクシンイミドなどのような窒素含有分散剤が挙げられる。スクシンイミド分散剤は米国特許第4,234,435号および第3,172,892号にさらに充分に記載されている。無灰分散剤の他のもう一つのクラスは、グリセロール、ペンタエリスリトールやソルビトールなどの多価脂肪族アルコールとヒドロカルビルアシル化剤との反応によって調製される高分子量エステルである。このような材料は米国特許第3,381,022号により詳細に記載されている。無灰分散剤の他のもう一つのクラスはマンニッヒ塩基である。これらは、高分子量のアルキル置換フェノール、アルキレンポリアミン、およびホルムアルデヒドなどのようなアルデヒドの縮合によって形成される材料であり、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
本発明の潤滑油組成物が、無灰分散剤を含む場合は、潤滑油組成物100質量%中、0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下である。
【0048】
《流動点降下剤(C)》
本発明の潤滑油組成物は、さらに流動点降下剤(C)を含有してもよい。流動点降下剤(C)の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、潤滑油組成物100質量%中に通常0.05~5質量%、好ましくは0.05~3質量%、より好ましくは0.05~2質量%、さらに好ましくは0.05~1質量%の量で含有される。
【0049】
本発明の潤滑油組成物が含有してもよい流動点降下剤(C)としては、アルキル化ナフタレン、メタクリル酸アルキルの(共)重合体、アクリル酸アルキルの(共)重合体、フマル酸アルキルと酢酸ビニルの共重合体、α-オレフィンポリマー、α-オレフィンとスチレンの共重合体などが挙げられる。特に、メタクリル酸アルキルの(共)重合体、アクリル酸アルキルの(共)重合体を用いてもよい。
【0050】
<その他の成分(添加剤)>
また、本発明の潤滑油組成物は、上記共重合体(X)および上記基油(B)以外の他の成分(添加剤)が含まれていてもよい。他の成分としては、後述する材料のいずれか1以上が任意に挙げられる。
【0051】
本発明の潤滑油組成物が、添加剤を含有する場合の含有量は特に限定されないが、基油(B)と添加剤との合計を100質量%とした場合に、添加剤の含有量としては、通常0質量%を超え、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。また、添加剤の含有量としては、通常40質量%以下であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0052】
このような添加剤の一つが清浄剤である。エンジン潤滑の分野で用いられる従来の清浄剤の多くは、塩基性金属化合物(典型的にはカルシウム、マグネシウムやナトリウムなどのような金属をベースとする、金属水酸化物、金属酸化物や金属炭酸塩)が存在することによって、潤滑油に塩基性またはTBNを付与する。このような金属性の過塩基性清浄剤(過塩基性塩や超塩基性塩ともいう)は、通常、金属と、該金属と反応する特定の酸性有機化合物との化学量論に従って中和のために存在すると思われる量を超える金属含有量によって特徴づけられる単相(single phase)均一ニュートン系(homogeneous Newtonian systems)である。過塩基性の材料は、酸性の材料(典型的には、二酸化炭素などのような無機酸や低級カルボン酸)を、酸性の有機化合物(基質ともいう)および化学量論的に過剰量の金属塩の混合物と、典型的には、酸性の有機基質にとって不活性な有機溶媒(例えば鉱物油、ナフサ、トルエン、キシレンなど)中で、反応させることによって、典型的には調製される。フェノールやアルコールなどの促進剤が、任意に少量存在する。酸性の有機基質は、通常、ある程度の油中の溶解性を付与するために、充分な数の炭素原子を有するだろう。
【0053】
このような従来の過塩基性材料およびこれらの調製方法は、当業者に周知である。スルホン酸、カルボン酸、フェノール、リン酸、およびこれら二種以上の混合物の塩基性金属塩を作製する技術を記載している特許としては、米国特許第2,501,731号;第2,616,905号;第2,616,911号;第2,616,925号;第2,777,874号;第3,256,186号;第3,384,585号;第3,365,396号;第3,320,162号;第3,318,809号;第3,488,284号;および第3,629,109号が挙げられる。サリキサレート[salixarate]清浄剤は米国特許第6,200,936号および国際公開第01/56968号に記載されている。サリゲニン清浄剤は米国特許第6,310,009号に記載されている。
【0054】
潤滑油組成物中の典型的な清浄剤の量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常1~10質量%、好ましくは1.5~9.0質量%、より好ましくは2.0~8.0質量%である。なお、該量はすべて、油がない(すなわち、それらに従来供給される希釈油がない)状態をベースにする。
【0055】
上記無灰分散剤の他に、ポリマー分散剤、多価分散性添加剤が挙げられる。
上記無灰分散剤などの分散剤は、様々な物質のいずれかと反応させることによって後処理がされていてもよい。これらとしては、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、炭化水素で置換された無水コハク酸類、ニトリル類、エポキシド類、ホウ素化合物類、およびリン化合物類があげられる。このような処理を詳述する参考文献が、米国特許第4,654,403号に載っている。本発明の組成物中の分散剤の量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、典型的には、1~10質量%、好ましくは1.5~9.0質量%、より好ましくは2.0~8.0質量%となり得る(すべて、油がない状態をベースとする)。
【0056】
別の成分としては抗酸化剤である。抗酸化剤はフェノール性の抗酸化剤を包含し、これは、2~3個のt-ブチル基を有するブチル置換フェノールを含んでいてもよい。パラ位は、ヒドロカルビル基または2個の芳香環を結合する基によって占有されてもよい。後者の抗酸化剤は米国特許第6,559,105号により詳細に記載されている。抗酸化剤は、ノニレート化された[nonylated]ジフェニルアミンなどのような芳香族アミンも含む。他の抗酸化剤としては、硫化オレフィン類、チタン化合物類、およびモリブデン化合物類が挙げられる。例えば米国特許第4,285,822号には、モリブデンと硫黄を含む組成物を含む潤滑油組成物が開示されている。抗酸化剤の典型的な量は、具体的な抗酸化剤およびその個々の有効性にもちろん依存するだろうが、例示的な合計量は、0.01~5質量%、好ましくは0.15~4.5質量%、より好ましくは0.2~4質量%となり得る。さらに、1以上の抗酸化剤が存在していてもよく、これらの特定の組合せは、これらを組み合わせた全体の効果に対して、相乗的でなり得る。
【0057】
増粘剤(ときに粘度指数改良剤または粘度調整剤ともいう)は、潤滑油添加剤組成物に含まれてもよい。増粘剤は通常ポリマーであり、ポリイソブテン類、ポリメタクリル酸エステル類、ジエンポリマー類、ポリアルキルスチレン類、エステル化されたスチレン-無水マレイン酸共重合体類、アルケニルアレーン共役ジエン共重合体類およびポリオレフィン類、水添SBR(スチレンブタジエンラバー)、SEBS(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)等が挙げられる。分散性および/または抗酸化性も有する多機能性増粘剤は公知であり、任意に用いてもよい。
【0058】
添加剤の他のもう一つは、磨耗防止剤である。磨耗防止剤の例として、チオリン酸金属塩類、リン酸エステル類およびそれらの塩類、リン含有のカルボン酸類・エステル類・エーテル類・アミド類;ならびに亜リン酸塩などのようなリン含有磨耗防止剤/極圧剤が挙げられる。特定の態様において、リンの磨耗防止剤は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常0.01~0.2質量%、好ましくは0.015~0.15質量%、より好ましくは0.02~0.1質量%、さらに好ましくは0.025~0.08質量%のリンを与える量で存在してもよい。
【0059】
多くの場合、上記磨耗防止剤はジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDP)である。典型的なZDPは、11質量%のP(オイルがない状態をベースに算出)を含んでもよく、好適な量として0.09~0.82質量%を挙げてもよい。リンを含まない磨耗防止剤としては、ホウ酸エステル類(ホウ酸エポキシド類を含む)、ジチオカルバメート化合物類、モリブデン含有化合物類、および硫化オレフィン類が挙げられる。
【0060】
潤滑油組成物に任意に用いてもよい他の添加剤としては、上述した極圧剤、磨耗防止剤のほか、摩擦調整剤、色安定剤、錆止め剤、金属不活性化剤および消泡剤が挙げられ、それぞれ従来公知の量で用いてもよい。
【0061】
<潤滑油組成物の製造方法>
本発明の潤滑油組成物は、従来公知の方法で、任意に他の所望する成分とともに、共重合体(X)および基油(B)を混合することにより調製することができる。共重合体(X)は、取扱いが容易なため、基油(B)中の濃縮物として任意に供給してもよい。
【0062】
<潤滑油組成物の用途>
本発明の潤滑油組成物は、例えば、自動車用エンジンオイル、大型車両用ディーゼルエンジン用の潤滑油、船舶用ディーゼルエンジン用の潤滑油、二行程機関用の潤滑油、自動変速装置用およびマニュアル変速機用の潤滑油、ギア潤滑油ならびにグリース等として、多様な公知の機械装置のいずれにも注油することができる。
【実施例0063】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた潤滑油用粘度指数向上剤に含まれるプロピレン・環状オレフィン共重合体を含む重合体は、以下の製造例で得られた重合体を用いた。
【0064】
製造例で用いた触媒は下記の化合物を用いた。
触媒:Macromolecules1998,31,2395.記載の方法に従って合成した(tert-ブチルアミド)ジメチル(フルオレニル)シランチタニウムジメチルを触媒として用いた。
【0065】
(1)プロピレン単独重合体
〔製造例1〕
乾燥した内容積2.0Lの耐圧オートクレーブを十分に窒素置換し、脱水精製したシクロヘキサン/ヘキサン(9/1)混合溶液750mL、トリイソブチルアルミニウムをアルミニウム原子換算で0.1mmolを窒素気流下に順次挿入した。次いで50℃に昇温し、プロピレン分圧が0.1MPaGとなるようプロピレンを供給し、その状態を保持した。その後、触媒を0.001mmol加え、引き続きトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.004mmol加え重合を開始した。内温50℃を維持しながら、プロピレン分圧が0.1MPaGを保持するようにプロピレンを供給し、5分間重合を行った。所定の時間経過後、プロピレンの供給を止め、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。反応物を少量の塩酸を含む3リットルのアセトン/メタノール(3/1)混合溶媒中に加えてポリマーを析出させた。同溶媒で洗浄後、130℃にて10時間減圧乾燥し、プロピレン単独重合体13.5gを得た。
【0066】
(2)プロピレン・環状オレフィン共重合体(X-1)
〔製造例2〕
乾燥した内容積2.0Lの耐圧オートクレーブを十分に窒素置換し、脱水精製したシクロヘキサン/ヘキサン(9/1)混合溶液750mL、テトラシクロドデセン(TD)20mmol、トリイソブチルアルミニウムをアルミニウム原子換算で0.5mmolを窒素気流下に順次挿入した。次いで50℃に昇温し、プロピレン分圧が0.1MPaGとなるようプロピレンを供給し、その状態を保持した。その後、触媒を0.005mmol加え、引き続きトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.02mmol加え重合を開始した。内温50℃を維持しながら、プロピレン分圧が0.1MPaGを保持するようにプロピレンを供給し、10分間重合を行った。所定の時間経過後、プロピレンの供給を止め、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。反応物を少量の塩酸を含む3リットルのアセトン/メタノール(3/1)混合溶媒中に加えてポリマーを析出させた。同溶媒で洗浄後、130℃にて10時間減圧乾燥し、プロピレン・環状オレフィン共重合体(X-1)2.76gを得た。
【0067】
(3)プロピレン・環状オレフィン共重合体(X-2)
〔製造例3〕
テトラシクロドデセンを40mmolとした以外は製造例2と同様の操作を行い、プロピレン・環状オレフィン共重合体(X-2)1.14gを得た。
【0068】
(4)プロピレン・環状オレフィン共重合体(X-3)
〔製造例4〕
テトラシクロドデセンを160mmol、トリイソブチルアルミニウムをアルミニウム原子換算で2.0mmol、プロピレン分圧を0.2MPaG、触媒を0.02mmol、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.08mmolとした以外は製造例2と同様の操作を行い、プロピレン・環状オレフィン共重合体(X-3)3.76gを得た。
【0069】
(5)プロピレン・環状オレフィン共重合体
〔製造例5〕
テトラシクロドデセンを300mmol、プロピレン分圧を0.3MPaGとした以外は製造例4と同様の操作を行い、プロピレン・環状オレフィン共重合体2.61gを得た。
【0070】
実施例および比較例で用いた潤滑油用粘度指数向上剤に含まれるプロピレン・環状オレフィン共重合体を含む重合体の物性は、以下の方法で測定した。
【0071】
[プロピレン含有量]
(測定装置)
ブルカー・バイオスピン社製AVANCEIIIcryo-500型核磁気共鳴装置
(測定条件)
測定核:13C(125MHz)、測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅:45°(5.00μ秒)、ポイント数:64k、観測範囲:250ppm(-55~195ppm)、繰り返し時間:5.5秒、積算回数:128回、測定溶媒:1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2、試料濃度:ca.60mg/0.6mL、測定温度:120℃、ウインドウ関数:exponential(BF:1.0Hz)、ケミカルシフト基準:1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2(128.0ppm)。
【0072】
[SP値(Hansen)]
本明細書中におけるSP値は、ハンセン溶解度パラメータを指し、Hansen Solubility Parameter A User's Handbook(Charles M. Hansen 著、 CRC Press; 1stEdition)に従い、下記式によって算出された値を指す。
δ=((δD)2+(δP)2+(δH)2)1/2
〔式中、δは、SP値(即ち、ハンセン溶解度パラメータ)を表し、δDは、分散項を表し、δPは、極性項を表し、δHは、水素結合項を表す。〕
【0073】
[mm分率、rr分率]
上記記載の方法で測定した。
[極限粘度[η]]
上記記載の方法で測定した。
【0074】
[ガラス転移温度(Tg)]
上記記載の方法で測定した。
[融点(Tm)、結晶融解熱量(ΔH)]
上記記載の方法で測定した。
【0075】
[粘度指数]
ASTM D445に基づいて測定した潤滑油組成物の40℃および100℃における動粘度(KV)の結果を用いてASTM D2270に基づいて粘度指数(VI)を算出した。
[MR粘度@-40℃]
潤滑油組成物のMR粘度(-40℃)を、ASTM D4648に基づいて測定する。
【0076】
〔実施例1〕
上記の製造例2で得られたプロピレン・環状オレフィン共重合体(X-1)を潤滑油用粘度調整剤として用いて、潤滑油組成物を調製した。潤滑油組成物の100℃における動粘度が8.0mm2/s程度になるように、プロピレン・環状オレフィン共重合体の配合量を調整した。
【0077】
配合組成は以下のとおりである。
APIグループ(III)基油(「Yubase-4」、SK Lubricants社製、100℃における動粘度:4.21mm2/s、粘度指数:123)
添加剤*:8.64質量%
流動点降下剤:0.3質量%
(ポリメタクリレート「ルブラン165」、東邦化学工業社製)
共重合体:表3に示すとおり。
合計 100.0(質量%)
注(*)添加剤=CaおよびNaの過塩基性清浄剤、N含有分散剤、アミン性[aminic]およびフェノール性の酸化防止剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛類、摩擦調整剤、および消泡剤を含む従来のGF-5用エンジン油用添加剤パッケージ。
得られた潤滑油用粘度指数向上剤および潤滑油組成物の物性を上記記載の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0078】
〔実施例2〕
実施例1で用いたプロピレン・環状オレフィン共重合体(X-1)に替えて、上記製造例3で得られたプロピレン・環状オレフィン共重合体(X-2)を用いる以外は、実施例1と同様に行い、潤滑油組成物を得た。
得られた潤滑油用粘度指数向上剤および潤滑油組成物の物性を上記記載の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0079】
〔実施例3〕
実施例1で用いたプロピレン・環状オレフィン共重合体(X-1)に替えて、上記製造例4で得られたプロピレン・環状オレフィン共重合体(X-3)を用いる以外は、実施例1と同様に行い、潤滑油組成物を得た。
得られた潤滑油用粘度指数向上剤および潤滑油組成物の物性を上記記載の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0080】
〔比較例1〕
実施例1で用いたプロピレン・環状オレフィン共重合体(X-1)に替えて、上記製造例1で得られたプロピレン単独重合体を用いる以外は、実施例1と同様に行い、潤滑油組成物を得た。
得られた潤滑油用粘度指数向上剤および潤滑油組成物の物性を上記記載の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0081】
〔比較例2〕
実施例1で用いたプロピレン・環状オレフィン共重合体(X-1)に替えて、上記製造例5で得られたプロピレン・環状オレフィン共重合体を用いる以外は、実施例1と同様に行い、潤滑油組成物を得た。
得られた潤滑油用粘度指数向上剤および潤滑油組成物の物性を上記記載の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0082】