(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033972
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】外観検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/89 20060101AFI20230306BHJP
G01N 21/85 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G01N21/89 T
G01N21/85 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139987
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000209751
【氏名又は名称】池上通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷本 尚之
(72)【発明者】
【氏名】藤永 悠介
(72)【発明者】
【氏名】込谷 太一
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB08
2G051BA08
2G051BB11
2G051BC02
2G051CA04
2G051CB01
2G051CC07
2G051CD07
2G051DA06
(57)【要約】
【課題】無理なく検査対象物を移動させつつ回転させて全面の外観検査を実現することにより、簡易かつ安価に高速処理することのできる外観検査装置を提供すること。
【解決手段】球状の鋼球Bの外観検査を行う外観検査装置であって、鋼球を傾斜するレール11で自重により転動させて回転移動可能に支持する移送ユニット10と、レール上を移動する鋼球の異なる回転角度での外面を120°毎に撮像して該全面を漏れなく撮影する撮影ユニット30と、撮影ユニットの撮像画像を画像処理して鋼球の全面の外観を検査する検査ユニットと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状または円柱状あるいは楕円球状の検査対象物の外観検査を行う外観検査装置であって、
前記検査対象物を傾斜構造で支持しつつ自重により転動させて回転移動させる移送ユニットと、前記傾斜構造上を移動する前記検査対象物の異なる回転角度での外面を撮像して該検査対象物の全面を漏れなく撮影する撮影ユニットと、前記撮影ユニットの撮像画像を画像処理して前記検査対象物の全面の外観を検査する検査ユニットと、を備えることを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記移送ユニットの前記傾斜構造は、前記検査対象物を転動可能に2点で接触支持するレールとして機能するように、一定幅で離隔しつつ平行に延長されている一対の延長構造により構築されて、当該一対の延長構造を1組以上備えていることを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記移送ユニットの前記延長構造は、延長方向の傾斜を一定の直線形状、下流側程段階的に傾斜角度を大きくする多段傾斜形状、あるいは、下流側程徐々に大きく傾斜する湾曲形状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記移送ユニットは、少なくとも前記傾斜構造の全体または前記撮影ユニットによる撮像タイミングに前記検査対象物を支持する範囲が大気中または液体中に設置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記撮影ユニットは、前記移送ユニットの前記傾斜構造上を移動する前記検査対象物の撮像する外面を覆って間接照明する球形状、半球形状、円柱形状または半割円柱形状の反射面を有する照明機器を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の外観検査装置。
【請求項6】
前記撮影ユニットは、前記検査対象物に閃光を照射して当該検査対象物の外面を撮像することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の外観検査装置。
【請求項7】
前記撮影ユニットは、均一な単色光または所定の模様を浮き上がらせる不均一な単色光を前記検査対象物の外面に照射して当該検査対象物の外面を撮像することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の外観検査装置。
【請求項8】
前記撮影ユニットは、前記検査対象物の外面をエリアセンサカメラにより撮像することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の外観検査装置。
【請求項9】
前記撮影ユニットは、前記傾斜構造上を移動する前記検査対象物の全面を漏れなく撮影するように、当該検査対象物の異なる回転角度毎の撮像画像を前記エリアセンサカメラにより撮像することを特徴とする請求項8に記載の外観検査装置。
【請求項10】
前記撮影ユニットは、前記傾斜構造上を移動する前記検査対象物の当該移動方向に対する両側方の外面の反射光を前記エリアセンサカメラに向かうように反射して導光する導光部材を備えて撮像することを特徴とする請求項9に記載の外観検査装置。
【請求項11】
前記撮影ユニットは、前記移送ユニットの前記傾斜構造の直上に配置されて、前記傾斜構造上を移動する前記検査対象物の前記両側方の外面を含む異なる回転角度毎の撮像画像を1台の前記エリアセンサカメラにより1回の撮影で撮像することを特徴とする請求項10に記載の外観検査装置。
【請求項12】
前記撮影ユニットは、前記移送ユニットの少なくとも前記傾斜構造の全体または前記撮影ユニットによる撮像タイミングに前記検査対象物を支持する範囲と共に、該検査対象物を照明する照明光および当該検査対象物の反射光の光路が大気中または液体中に位置するように設置されていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の外観検査装置。
【請求項13】
前記検査ユニットは、前記傾斜構造上を移動する前記検査対象物の異なる回転角度毎での外面の複数の撮像画像を用いて当該検査対象物の全面を外観検査することを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の外観検査装置。
【請求項14】
前記検査対象物の複数個を収納して前記移送ユニットに当該検査対象物を1つずつ連続して供給する供給ユニットを備え、
前記供給ユニットは、収容箇所から前記検査対象物を前記移送ユニットに向けて転動速度を加減速させつつ供給するように傾斜角の変化する多段で複数個を流入可能な幅のV字溝形状の傾斜面を有することを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の外観検査装置。
【請求項15】
前記移送ユニットを通過して排出される前記検査対象物を前記検査ユニットによる検査結果に応じて分別する排出ユニットを備え、
前記排出ユニットは、前記移送ユニット上の前記検査対象物を分別先毎に回収する回収機構を有することを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の全面を撮影して画像処理により検査する外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理速度の向上に伴って各種製品の外観検査を高速処理することが実用化されており、例えば、移動する検査対象物に照明光を照射しつつ、その検査対象物からの反射光による撮影映像を画像処理することによって、良品と外観不良品とを仕分けることが行われている。
【0003】
この種の外観検査装置による検査対象物としては、例えば、ベアリング(軸受け)に内蔵される鋼製のボール(以下では単に鋼球という)を外観検査して品質の良否を判断することが行われている。特許文献1には、回転する一対のローラ間に挟まれつつ接触回転する検査対象の鋼球を全面の外観検査後に、次の鋼球に入れ替える装置が記載されている。特許文献2、3には、回転する一対のローラ間の一方の外周面に形成されている螺旋状の送り溝内に鋼球を収納して他方の外周面との間で支持しつつ接触回転させることによって、複数の鋼球を送り溝により送り方向に案内させつつ全面の外観検査をする装置が記載されている。
【0004】
ところで、このような外観検査装置では、光学的に検査対象の良否を判定することから、その撮影映像の品質向上が重要であり、高精度な撮影映像の実現が処理速度の高速化や信頼性向上に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-83756号公報
【特許文献2】特開2000-338050号公報
【特許文献3】特開平6-331338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の外観検査装置にあっては、鋼球を定点で接触回転させて入れ替え交換することから、処理スピード自体を高速化することが難しい。同様に、特許文献2、3に記載の外観検査装置にあっては、鋼球を螺旋状の送り溝で案内しつつ接触回転させて移動させているので、摩擦等による発熱などの不都合が発生して高速化することが難しい。
【0007】
そこで、本発明は、無理なく検査対象物を移動させつつ回転させて全面の外観検査を実現することにより、簡易かつ安価に高速処理することのできる外観検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する外観検査装置の発明の一態様は、球状または円柱状あるいは楕円球状の検査対象物の外観検査を行う外観検査装置であって、前記検査対象物を傾斜構造で支持しつつ自重により転動させて回転移動させる移送ユニットと、前記傾斜構造上を移動する前記検査対象物の異なる回転角度での外面を撮像して該検査対象物の全面を漏れなく撮影する撮影ユニットと、前記撮影ユニットの撮像画像を画像処理して前記検査対象物の全面の外観を検査する検査ユニットと、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
このように本発明の一態様によれば、球状、円柱状、楕円球状の検査対象物は、重力方向と平行な断面形状において円形となる外面を有していることから、その円形外面を接触支持させつつ回転させて転動させることができる。このため、検査対象物は、傾斜上に載せるだけで自重により転動して回転移動させることができ、傾斜上を移動する検査対象物の異なる回転角度毎に外面を撮像することにより全面を漏れなく撮影して外観検査することができる。
【0010】
したがって、傾斜構造を備えるだけで検査対象物を無理なく自重により転動させて全面を撮影することができ、その傾斜支持箇所に応じた速度で外観検査処理を連続的に行うことができる。この結果、簡易かつ安価に高速処理することのできる外観検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る外観検査装置を示す図であり、各構成ユニットを示す概略全体構成図である。
【
図2】
図2は、各構成ユニット間の関係性を示す概念システム図である。
【
図3】
図3は、そのうちの移送ユニットと撮影ユニットのレイアウトを示す概念図であり、(a)はその立面図、(b)はその平面図、(c)はその検査対象物の移送方向から見た正面図である。
【
図4】
図4は、そのうちの移送ユニットにより移動される検査対象物に対する撮影ユニットにおける照明光と反射光の光路を示す説明図である。
【
図5】
図5は、そのうちの撮影ユニットによる撮像画像を示す図であり、(a)~(c)は異なるタイミングでの撮影画像図である。
【
図6】
図6は、そのうちの供給ユニットの機能を説明する平面図である。
【
図7】
図7は、そのうちの排出ユニットの機能を説明する立面図である。
【
図8】
図8は、その排出ユニットの不良品検査時の回収動作を説明する機能図である。
【
図9】
図9は、その排出ユニットの異常発生時の復旧動作を説明する機能図である。
【
図10】
図10は、その第1の他の態様における移送ユニットを示す概念立面図である。
【
図11】
図11は、その第2の他の態様における移送ユニットを示す概念立面図である。
【
図12】
図12は、その第3の他の態様における撮影ユニットを示す概念図であり、(a)はその立面図、(b)はその検査対象物の移送方向から見た正面図である。
【
図13】
図13は、その第4の他の態様における撮影ユニットによる撮像画像を示す撮影画像図である。
【
図14】
図14は、その第5の他の態様における供給ユニットを示す斜視図である。
【
図15】
図15は、その排出ユニットの検査対象物の供給動作を説明する機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1~
図9は本発明の一実施形態に係る外観検査装置を示す図である。
【0013】
図1において、外観検査装置1は、各種軸受に利用されるボールベアリング内に収容される鋼球Bを検査対象物として、連続的に外観検査により良否判定する機能を備えている。外観検査装置1は、検査対象物の鋼球Bを連続して検査位置に移動させる移送ユニット10と、移送ユニット10により移動される鋼球Bの外周面の全面を連続的に撮影する撮影ユニット30と、撮影ユニット30の撮影した鋼球Bの撮像画像を画像処理して連続的に良否判定をする検査ユニット50と、連続処理する鋼球Bの複数個を順次に移送ユニット10に供給する供給ユニット60と、その移送ユニット10により移動されつつ連続的に検査されて排出される鋼球Bを検査結果の良否判定に応じて分別して回収する排出ユニット70と、を具備して鋼球Bを連続処理可能にシステム化されている。
【0014】
この外観検査装置1は、
図2に示すように、検査ユニット50が装置全体を統括制御する制御部としての機能を備えるように構築されており、この検査ユニット50が撮影ユニット30、供給ユニット60および排出ユニット70との間で駆動信号や映像信号などを含む各種信号Sを送受可能に接続されて連携動作するようになっている。要するに、外観検査装置1は、検査ユニット50が統括制御して連携動作させることにより、検査対象物の鋼球Bを供給ユニット60から移送ユニット10を経由させて排出ユニット70に受け渡すとともに、その移送ユニット10で移動する鋼球Bに撮影ユニット30が照明光ILを照射しつつその反射光RLを受け取ることにより撮像画像を取得して外観検査処理を実行する。
【0015】
本実施形態の外観検査装置1は、大気中において、移送ユニット10が検査対象物の鋼球Bを簡易かつスムーズに連続的に高速移動させる構造を備えて、供給ユニット60および排出ユニット70による鋼球Bの効率の良い供給および排出を有効に機能させると共に、撮影ユニット30が高速移動する鋼球Bの効率の良い撮影処理を可能にして、検査ユニット50による良否判定までの迅速な外観検査処理を実現している。
【0016】
移送ユニット10は、
図3に示すように、鋼球Bの直径よりも狭い間隔幅で離隔する一対の直線形状の角棒11a、11bが平行のまま一方向に延長されてレール11として機能するように構築されており、このレール11は、供給ユニット60から排出ユニット70に向かう方向に延長されて水平に対する所定角度αで下る傾斜延長構造を維持するように設置されている。
【0017】
これにより、移送ユニット10のレール11は、角棒11a、11bが複数個の鋼球Bの外周面の2カ所に接触する状態で転動可能に支持することができ、その鋼球Bは、自重により下がる方向に回転して移動することが許容される。このため、移送ユニット10は、供給ユニット60から供給される鋼球Bをレール11上に転動可能に受け取って、その鋼球Bを自重により回転移動させて排出ユニット70に受け渡すことができる。このとき、鋼球Bは、自重により転動回転して、供給ユニット60に近い上流側から排出ユニット70に接近する下流側に向かって加速しつつ移動することになり、上流側よりも下流側ほど高速回転移動して、前後の間隔が広くなる。このことから、この移送ユニット10のレール11は、撮影ユニット30による撮影条件に最適な回転量と回転速度で鋼球Bが安定して転動回転移動するように傾斜角度αや角棒11a、11bの離隔間隔を決定すればよく、できるだけレール11の角棒11a、11b間から鋼球Bが露出するように設置するのが好適である。
【0018】
ここで、本実施形態では、別部材の角棒11a、11bで傾斜するレール11を構成する場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、鋼球Bの外周面を転動自在に2点接触して支持する傾斜延長機構を構成すればよく、例えば、直線形状の一対の丸棒に代えてもよく、また、傾斜する一部材の上面に断面U字形状で直線状に連続する溝を形成して、その開口縁の角により転動自在に2点接触支持するようにしてもよい。また、このレール11は、1組に限らず、2組以上を並列状態に設置してもよく、また、放射状あるいは不規則状態など非並列状態に設置してもよい。
【0019】
撮影ユニット30は、
図3および
図4に示すように、移送ユニット10のレール11上を転動回転する鋼球Bが内部を通過するように設置されている照明機器31を備えており、この照明機器31は、内部を移動する鋼球Bの外周面に安定した光量の照明光ILを照射して照明するようになっている。撮影ユニット30は、照明機器31と共に、その鋼球Bの外周面からの反射光RLを入光(入射)されて撮像画像を取得するカメラ33と、その反射光RLを導光されて全反射することによりカメラ33に入光する一対のプリズム35と、レール11上を転動して照明機器31内に回転移動する鋼球Bを検出する変位センサ37と、を備えて構築されている。この撮影ユニット30は、そのレール11途中の3カ所に配置されて、それぞれで鋼球Bの外周面の撮像画像を撮影するようになっている。
【0020】
照明機器31は、球形状に形成されての中心点を鋼球Bが通過可能に移送ユニット10のレール11を挿通させる開口31aが対称位置に形成されており、内面全面が光を拡散反射する反射面31rに形成されているとともに、そのレール11の直下の最下部に広角方向に照明光ILを出射して照明する光源32が設置されている。ここで、レール11の角棒11a、11b間では、設置する図示しないベース部材が存在するので、上下方向に光が通過することが制限されて直上に位置するカメラ33に光源32からの照明光ILが直接入光してしまうことはない。
【0021】
これにより、照明機器31は、移送ユニット10のレール11上を転動する鋼球Bを、回転を妨げられることなく内部に移動させて通過させることができ、その内部では光源32の出射する照明光ILを内面全面の反射面31rで拡散反射させて照射して鋼球Bの外周面を照明することができる。
【0022】
この照明機器31は、光源32の真上の上方に開口31bが形成されて、カメラ33がレール11上を転動回転する鋼球Bを撮影するように配置されており、その開口31bには、転動する鋼球Bの外周面で反射する反射光RLを導光可能に一対のプリズム35がそのレール11脇の左右に位置するように設置されている。一対のプリズム35は、カメラ33に鋼球Bの反射光RLが直接入光するのを妨げないように、その鋼球Bの真上の反射光RLの光路空間を確保するように所定間隔で離隔する状態で配置されている。
【0023】
そして、照明機器31は、高強度かつ瞬間的な単色光、例えば、白色光の閃光を出射する光源32を搭載しており、レール11上を転動回転して通過する鋼球Bに光源32からの閃光を照射して外周面で反射させるようになっている。照明機器31は、その鋼球Bの外周面の反射光RLが直接、また一対のプリズム35を介してカメラ33に入光するようにして高品質な撮像画像の撮影を実現している。なお、光源32は、白色光を出射するタイプに限るものではなく、例えば、白色光に限らず、他の赤色、緑色、青色や他の色を発光するタイプでもよく、鋼球Bの画像処理に適した映像を撮像可能にするのが好適である。
【0024】
この撮影ユニット30は、照明機器31で閃光照明される、レール11上で転動回転する鋼球Bの外周面を瞬間的に撮像するために、カメラ33として、所謂、エリアセンサカメラが選択されて設置されている。
【0025】
また、プリズム35は、レール11上を転動回転する鋼球Bの移動方向に対する直交方向に離隔する位置に2つ一組で設置されており、その鋼球Bの外周面の反射光RLをその直交方向に全反射させて上方に位置するカメラ33に入光させるように配置されている。このプリズム35は、内側下斜面(入射面)35dから入射される鋼球Bの反射光RLを外側側面35sで全反射させた後に内側上斜面35uで再度全反射させることによって上部天面35tからカメラ33に向けて導光する光路として機能するように形成されて設置されている。なお、このプリズム35では鋼球Bの反射光RLを2度全反射することにより反転画像にすることなく正対画像をカメラ33に入光して撮像させる。
【0026】
これにより、撮影ユニット30は、光源32により照明されつつレール11上を回転移動する鋼球Bの反射光RLを、プリズム35を介すことなく直下の方向から直接、カメラ33に入光させるのに加えて、その鋼球Bの回転移動方向に対してカメラ33の左右側に配置されているプリズム35内で2度全反射させた後にそのカメラ33に入光させることができる。
【0027】
そして、撮影ユニット30は、照明機器31の上流側の開口31aの手前に変位センサ37が設置されて、レール11上を転動回転して照明機器31内に進入してカメラ33により撮影される鋼球Bを検出するようになっている。この撮影ユニット30は、その鋼球Bの検出情報に基づいて生成された検査ユニット50からの駆動信号Sを受け取って、カメラ33直下のタイミングに同期させるように光源32を閃光発光させることによって鋼球Bの外周面を撮像して外観検査用の画像Vを取得する。ここで、この変位センサ37は、直下を回転移動して通過する鋼球Bの外周面の位置(変位)を検出するようになっており、後述するように検出(制御)ユニット50は、その検出情報を変位センサ37から受け取って、例えば、鋼球Bの移動速度やカメラ33の直下に位置するタイミングを算出取得することにより、各ユニット30、60、70を統括制御する駆動信号Sを送って、鋼球Bを適宜に供給して排出回収しつつ、その鋼球Bを閃光照明して高品質な撮像画像を最適なタイミングに撮影することを実現する。
【0028】
また、撮影ユニット30は、移送ユニット10のレール11における供給ユニット60から排出ユニット70までの間の3カ所に配置されている。この撮影ユニット30は、カメラ33のそれぞれの撮影画面内に先行および後続の鋼球Bが入り込んで撮像してしまうことがない程度に離隔されており、また、その鋼球Bが回転角度の120°ずれたタイミングで撮影する位置を通過するようにそれぞれ配置されている。この撮影ユニット30は、レール11上を転動回転する鋼球Bの移動速度や移動量に応じてセッティングすればよく、例えば、演算してシミュレーションなどすることにより最適箇所に配置すればよい。
【0029】
これにより、3組の撮影ユニット30は、
図5(a)~
図5(c)のそれぞれに示すように、3カ所のカメラ33毎による1つの撮影画像IMG1~IMG3中において、回転方向に120度ずつずれて鋼球Bの周縁側を回転方向に前後側と重なる状態にして、上方と左右側方との計3方向から撮像した下方のレール11を含む映像を取得して画像処理することができる。
【0030】
ここで、
図5のカメラ33毎による撮影映像IMG1~IMG3は、レール11上を転動回転して移動する鋼球Bの上面映像Vuと、左右側方からの斜め映像Vs1、Vs2とが1画面中に入れられて撮像化されている。なお、図中の「-120°」、「0°」、「+120°」は鋼球Bの相対的な回転角度(回転量)を説明表示しているものであり、画像中に含まれるものではない。また、上面映像Vu中にはレール11を表示するが、斜め映像Vs1、Vs2中のレール11は簡易に分かりやすく表示するために省略している。
【0031】
ここで、撮影画像IMG1~IMG3は、後述するように、「-120°」、「0°」、「+120°」の回転角度毎に同一の鋼球Bを異なるタイミングでそれぞれ撮影した撮像画像を一旦記憶保持して全周全面の外観検査を行う際に読み出して全体の良否判定をする場合を一例として表示して説明するが、これに限るものではない。例えば、別個の鋼球Bの回転角度毎に外観検査を行って一旦一部判定結果を鋼球B毎に対応付けして記憶保持した後に、同一の鋼球Bに対応する一部判定結果を読み出して全周全面での良否判定をするようにしてもよい。また、本実施形態では、3回の撮影で鋼球B1~B3の全周全面を撮像する場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、不正確な要素を含んでしまうが180°毎の2回の撮影でもよく、あるいは、4回以上の撮影でより正確に画像処理することができるようにしてもよい。
【0032】
供給ユニット60は、複数個の部品を1つずつ送り出す、所謂、パーツフィーダ61により構成されている。パーツフィーダ61は、凹空間61s内に大量の鋼球Bをこぼれないように収容して、検査ユニット50から受け取る駆動信号Sに応じて振動することにより、その鋼球Bを渦巻き状に周回する外周壁面62側に沿うように進行させつつ、その外周壁面62の内側の傾斜面63を徐々に狭くすることにより、その鋼球Bを1つずつ供給経路64から送り出して、レール11上に受け渡すようにして供給する。
【0033】
排出ユニット70は、
図7に示すように、移送ユニット10のレール11の下流側端部11Dから間隔を開けた位置に配置されて、さらに離隔するほど下がる方向に傾斜する斜面を有して不図示のストッパ駆動により保持または解放されるシャッタ71と、このシャッタ71の斜面に連続するように傾斜する中継部材72と、この中継部材72よりもさらに下流側の下方に位置して外観検査で良品判定された鋼球Bを収容(回収)する良品回収容器73と、レール11の下流側端部11Dを通過する鋼球Bの外周面による変位(位置)を検出する変位センサ75と、そのレール11の下流側端部11Dとシャッタ71の上流側端部71Uとの間の不良分別空間79に向けて流体、例えば、圧搾空気を噴出する不良分別ノズル77とを備えて、検査ユニット50による外観検査の良否判定に応じて鋼球Bを分別して回収する回収機構として構築されている。
【0034】
この排出ユニット70は、例えば、変位センサ75の検出情報を受け渡される検査ユニット50がレール11を転動回転して高速移動する鋼球Bの良品判定をする場合には、駆動信号Sを送出することがなく、その良品鋼球Bをレール11から高速のままシャッタ71上に自由落下させて中継部材72を介して良品回収容器73内に収容(回収)する。また、排出ユニット70は、例えば、変位センサ75の検出情報を受け取った検査ユニット50から外観検査による不良判定に応じた駆動信号Sを受け取った場合には、不良分別ノズル77がレール11から落下する不良判定された鋼球Bの通過するタイミングに圧搾空気を噴出させて吹き付けさせることにより、その不良鋼球Bをシャッタ71手前の隙間の不良分別空間79に落下させて分別する。また、排出ユニット70は、検査ユニット50が何らかの異常発生によって鋼球Bの検査処理不能と判断された場合には、シャッタ71が不図示のストッパ駆動により保持が解除されて下方に回動することによって、下方の未検査品回収空間78を解放してレール11上を外観検査されることなく転動回転して来る鋼球Bを落下させて回収する。
【0035】
そして、検査ユニット50は、CPUやメモリ等により構成されて、予め格納準備されている制御プログラムを実行することによって、不図示の操作パネルや外部接続される各種装置から入力される入力設定情報や各ユニット30、60、70との間でやり取りする検出情報等と共に、撮影ユニット30のカメラ33から受け取る撮像画像に基づいて移送ユニット10のレール11上を転動回転して移動する鋼球Bの外観検査をして良否判定をする。
【0036】
この検査ユニット50は、鋼球Bの外観検査による良否判定結果に応じた駆動信号Sを生成出力することにより、その鋼球Bの外観検査と同時に、供給ユニット60から鋼球Bを適宜に追加供給するとともに、排出ユニット70において良否判定に応じた鋼球Bの良品回収容器73または不良分別空間79への振り分け分別回収を実行させる駆動信号Sを生成出力するようになっている。
【0037】
ここで、撮影ユニット30の照明機器31が閃光照明してカメラ33が撮影するレール11上の鋼球Bは、
図5に示す120°毎の撮影画像IMG1~IMG3中に、上面映像Vuと左右の斜め映像Vs1、Vs2とで上方の半球以上の外面の撮像画像が撮影されて検査ユニット50に受け渡される。検査ユニット50は、3組の撮影ユニット30毎の変位センサ37の鋼球Bの変位情報から移動速度と移動位置とを算出して個別に把握し、個々に120°毎の撮影画像IMG1~IMG3を対応付けして記憶保持する。この検査ユニット50は、外観検査処理する際には、鋼球B毎に対応する120°毎の撮影画像IMG1~IMG3を読み出して、それぞれの上面映像Vuと左右の斜め映像Vs1、Vs2について合成することなく、その鋼球Bの外面全面について漏れなく、歪や色調などが正常品とすることのできる範囲内か否かを比較して良否判定し、上述の判定結果として鋼球B毎に対応付けして記憶保持し、排出ユニット70における鋼球Bの分別処理を実行する駆動信号Sを生成して出力する。
【0038】
このように、本実施形態の外観検査装置1において、移送ユニット10は、動力を必要とすることなく、複数の鋼球Bをレール11上に自重により転動させて回転移動させることができ、撮影ユニット30は、その鋼球Bを120°毎に撮影して漏れなく、その外面全面の撮像画像を取得することができ、検査ユニット50は、その鋼球Bの漏れのない撮像画像を用いて高品質な外観処理を行って良否判定をすることができる。
【0039】
したがって、鋼球Bの外観検査を高速処理することのできる簡易かつ安価な外観検査装置1を提供することができる。
【0040】
ここで、本実施形態の第1の他の態様としては、
図10に示すように、移送ユニット10における供給ユニット60からの鋼球Bの供給直後付近の受け渡し領域Raのレール11rが所定角度α1で傾斜しており、その受け渡し領域Raよりも下流側に位置して鋼球Bを効果的に自重により転動回転させて加速移動させることにより前後間隔を広げる撮影領域Paのレール11pはその傾斜角度α1よりも大きな所定角度α2(≫α1)で傾斜するように形成されて設置されている。これにより、レール11上の鋼球Bは、供給ユニット60に近い受け渡し領域Raのレール11rから撮影領域Paのレール11pに入ると直ちに積極的に大きく加速移動して前後の間隔を広くしつつ、撮影ユニット30により個々に信頼性高く分かれた状態で撮影することができ、高品質な撮像画像を検査ユニット50に提供してエラーの発生のない外観検査を実現することができる。
【0041】
本実施形態の第2の他の態様としては、
図11に示すように、移送ユニット10のレール21において、上流側の受け渡し領域Raから下流側の撮影領域Paに行くほど、鋼球Bを転動回転可能に支持する箇所の接線方向の傾斜角度が大きくなる湾曲面21rに形成されている。これにより、この他の態様でも、レール21の湾曲面21r上の鋼球Bは、供給ユニット60に近い受け渡し領域Raから撮影領域Pa側に進むほど積極的に大きく加速移動して前後の間隔を広くしつつ、撮影ユニット30により個々に信頼性高く分かれた状態で撮影することができ、高品質な撮像画像を検査ユニット50に提供してエラーの発生のない外観検査を実現することができる。
【0042】
本実施形態の第3の他の態様としては、
図12に示すように、一対のプリズム35が離隔することなく、鋼球Bの真上の反射光RLの光路を遮蔽して直接入光しないように設置されている。これにより、撮影ユニット30は、カメラ33に一対のプリズム35で全反射して入光する鋼球Bの外面の上方を左右の斜め映像Vs1、Vs2により撮影して取得することができ、外観検査で上面映像Vuを含めて処理することを割愛して簡易かつ高速に処理することができる。
【0043】
本実施形態の第4の他の態様としては、
図13に示すように、撮影ユニット30を1組のみにして、3つの鋼球B1~B3が120°ずつ回転移動するタイミングに、上面映像Vuと左右の斜め映像Vs1、Vs2とを1画面の撮影画像IMG中に入れて同時に撮影するように、照明機器31とプリズム35とをレール11の延長方向に長めしてカメラ33により撮影するようにしている。これにより、1組の撮影ユニット30で鋼球Bを3個ずつ撮影して、3つの撮影画像IMGから鋼球B1~B3毎の上面映像Vuと左右の斜め映像Vs1、Vs2とを用いて、1つの鋼球B毎の外観検査をして良否判定をすることができ、同一の鋼球Bを特定する処理をする必要のない簡易なシステム構成にすることができる。
【0044】
本実施形態の第5の他の態様としては、
図14に示すように、供給ユニット60として、大量の鋼球Bを収容するバッファ枠65と、このバッファ枠65下部の開口65aから流出する複数個の鋼球Bを受け取るように振動・停止することによって、移送ユニット10のレール11に向けて鋼球Bを降下させて徐々に1つずつに整列させる、多段で傾斜角の異なるトラフ坂66とを備えて構成されている。ここで、最上位の第1トラフ坂66aは、バッファ枠65の開口65aから鋼球Bをスムーズに受け取るように下流程広くなる断面V字溝形状に形成され、次の第2トラフ坂66bは、第1トラフ坂66aと同程度に広めの上流側から下流側ほど狭く絞られる断面V字溝形状に形成され、次の第3トラフ坂66cは、第2トラフ坂66bと同様に広めの上流側から下流側ほど狭く絞られる断面V字溝形状に形成され、次の第4トラフ坂66dは、直前の第3トラフ坂66cの下流側の狭い出口の断面V字溝から1つずつ鋼球Bを受け取って整列させるように断面U字溝に形成されている。これにより、
図15に示すように、この他の態様の供給ユニット60でも、多段で傾斜角の異なるトラフ坂66を適宜に振動させることによって、その傾斜角を利用して降下速度に緩急をつけて積極的に鋼球Bを降下させつつ第4トラフ坂66dで1つずつに整列させてレール11上に受け渡すことができる。
【0045】
ここで、上述実施形態では、球状の鋼球Bを一例にして説明するが、球状に限るものではなく、例えば、円柱状あるいは楕円球状の検査対象物でも、その断面円形の外周面の2カ所を接触支持させることにより、転動回転自在に保持することができ、自重により転動させて回転移動させることもできる。
【0046】
さらに、上述実施形態における照明機器31は、球形の内周面を反射面31rにする場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、例えば、円柱状の反射面にして、レール11の長手方向に均一な照明光を照射するようにしてもよい。さらに、その球形や円柱状の反射面を半分にして、半球状(ドーム状)や半割円柱形状(トンネル状)の反射面にしてレール11の両側方に光源を配置するようにしてもよい。
【0047】
また、検査ユニット50は、鋼球Bの外面が反射する白色光の反射光を撮影ユニット30のカメラ33に入光させて外観検査する場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、例えば、光源または反射面に模様を付して不均一な単色光を鋼球Bに照射することにより、その外面に模様を投影するようにして、その投影画像の歪みの有無を利用して外観検査をするようにしてもよい。
【0048】
また、移送ユニット10や撮影ユニット30は、大気中に設置する場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、液体中に浸漬させて検査対象物を転動回転させるようにしてもよく、例えば、絶縁オイル中に浸漬させるなどして、静電気や酸化等の影響などを回避するようにしてもよい。
【0049】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0050】
1……外観検査装置
10……移送ユニット
11、21……レール
30……撮影ユニット
31……照明機器
31r……反射面
32……光源
33……カメラ
35……プリズム
37、75……変位センサ
50……検査ユニット
60……供給ユニット
70……排出ユニット
B、B1~B3……鋼球
IL……照明光
RL……反射光
Vs1、Vs2……斜め映像
Vu……上面映像