IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニパルス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-荷役助力装置 図1
  • 特開-荷役助力装置 図2
  • 特開-荷役助力装置 図3
  • 特開-荷役助力装置 図4
  • 特開-荷役助力装置 図5
  • 特開-荷役助力装置 図6
  • 特開-荷役助力装置 図7
  • 特開-荷役助力装置 図8
  • 特開-荷役助力装置 図9
  • 特開-荷役助力装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003399
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】荷役助力装置
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/18 20060101AFI20221228BHJP
   B66D 3/20 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
B66D3/18 E
B66D3/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098689
(22)【出願日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2021104188
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄
(57)【要約】
【課題】荷役作業の改善を図った荷役助力装置の提供。
【解決手段】係止部5aと、吊索部4と、重量検出部12と、位置検出部13と、制御部10と、昇降作動部18と、モータ部11と、操作指令部20と、を備えた荷役助力装置1であって、 係止部5aは荷役物を係止し、昇降作動部18は吊索部4の巻取り又は繰出しを行い、モータ部11は機械的に接続された昇降作動部18を駆動し、位置検出部13は吊索部4の繰出し値を検出して送信し、 重量検出部12はモータ部11を固定する部材に固定されて係止部5aを吊下げ支持して係止部5aに加わる重量値を検出して送信し、吊索部4の一端部には構造物に取り付け可能な吊下げ部材3が設けられ、制御部10は、操作指令部20からの指令により重量値と繰出し値とを基に荷役物をバランスするようにモータ部11を制御する。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係止部と、吊索部と、重量検出部と、制御部と、昇降作動部と、モータ部と、操作指令部と、を備えた荷役助力装置であって、
前記係止部は荷役物を係止し、
前記昇降作動部は前記吊索部の巻取り又は繰出しを行い、
前記モータ部は機械的に接続された前記昇降作動部を駆動し、
前記重量検出部は前記モータ部を固定する部材に固定され、前記係止部を吊下げ支持して前記係止部に加わる重量値を検出して送信し、
前記吊索部の一端部には構造物に取り付け可能な吊下げ部材が接続され、
前記制御部は、前記操作指令部からの指令により前記重量値を基に前記荷役物をバランス状態にするように前記モータ部を制御することを特徴とする荷役助力装置。
【請求項2】
電池部をさらに備え、
前記制御部は、前記吊索部の繰出し時には前記モータ部に発生する回生エネルギを用いて前記電池部へ充電を行う充電部を有することを特徴とする請求項1に記載の荷役助力装置。
【請求項3】
床面にて自由に移動可能にする車輪をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷役助力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、令和3年6月23日付けの出願を基礎とする国内優先権主張の出願である。本発明は、建築工事現場や劇場等における照明、音響機器の仮設現場等などにも用いることができる荷役助力装置であって、例えば荷役物を昇降させる際にモータによるアシストで重量バランスさせ僅かな操作力で上下移動させる荷役助力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から工業製品の組立てを行う工場では、大きな重量を有する工具、作業用機器、製品、半完成品などを昇降させる荷役装置を使用している。一方、建築工事現場や劇場等における照明、音響機器の仮設現場等において、荷役装置本体が荷役物を支持して共に昇降する逆吊り型が一部で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-072386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこのような逆吊り型荷役装置は、昇降は手動であったり、特許文献1に開示されているように単に電動モータで昇降を行うものであったりするため、精密な位置決めを伴う荷役作業には不向きであって改善の余地があった。
【0005】
このような問題に鑑みて、本発明は、荷役作業の改善を図った荷役助力装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る荷役助力装置は、上記の目的を達成するために、
係止部と、吊索部と、重量検出部と、位置検出部と、制御部と、昇降作動部と、モータ部と、操作指令部と、を備えた荷役助力装置であって、
係止部は荷役物を係止し、
昇降作動部は吊索部の巻取り又は繰出しを行い、
モータ部は機械的に接続された昇降作動部を駆動し、
位置検出部は吊索部の繰出し値を検出して送信し、
重量検出部はモータ部を固定する部材に固定されて係止部を吊下げ支持して係止部に加わる重量値を検出して送信し、
吊索部の一端部には構造物に取り付け可能な吊下げ部材が接続され、
制御部は、操作指令部からの指令により重量値と繰出し値とを基に荷役物をバランスするようにモータ部を制御するように構成されている。
【0007】
また、電池部をさらに備え、
制御部は、吊索部の繰出し時にはモータ部に発生する回生エネルギを用いて電池部へ充電を行う充電部を有している。
【0008】
また、床面にて自由に移動可能にする車輪をさらに備えている。
【0009】
また、モータ部は、電磁ブレーキを含んで構成されている。
【0010】
また、制御部は、位置検出部から所定の時間連続して同じ繰出し値を受信した場合、電磁ブレーキによる昇降作動部の保持を行う電磁ブレーキ保持部を有している。
【0011】
また、床面に置かれていることを検出する接地検出部をさらに備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の荷役助力装置によれば、荷役作業の改善を図った荷役助力装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の正面模式図と左側面模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の制御構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の充電時の構成を示した模式図である。
図4】本発明の実施形態に係る荷役物と吊具を示した模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いて行う荷役作業を示した模式図である。
図6】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いて行う荷役作業を示した模式図である。
図7】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いて行う荷役作業を示した模式図である。
図8】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いて行う荷役作業を示した模式図である。
図9】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いて行う荷役作業を示した模式図である。
図10】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いて行う荷役作業を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る荷役助力装置について、図面を基に詳細な説明を行う。図1(a)は本発明の実施形態の一例である荷役助力装置1の左側面模式図であって、図1(b)は正面模式図である。図1(a)及び図1(b)は、いずれも内部構造が判るようにカバー2を切断した模式図で表している。
【0015】
荷役助力装置1は、本体部9と、操作指令部20と、を含んで構成されている。本体部9内には、ベース部材19aがあって、この上面にブラケット19bを介してモータ部11、位置検出部13、昇降作動部18が配置されている。ベース部材19aは剛性の高い金属の板であってその上面には、制御部10、電池部15、2次側変圧器16が載置されている。一方、ベース部材19aの下面には重量検出部12を介してカバー2及び係止軸ホルダ5bが固定されている。またベース部材19aの下には支持部材31bを介して車輪31aが取り付けられている。
【0016】
ブラケット19bは、ベース部材19aの上面に不図示のボルトなどで固定された金属部材であって、モータ部11をボルトで固定している。またブラケット19bは、リンクチェーン4の通過位置を案内規制する部分を有している場合がある。
【0017】
モータ部11は、例えば減速機とモータと電磁ブレーキを含んでいる。このモータは例えば交流サーボモータであるがこれに限るものではない。このモータ部11は、負荷側には減速機が設けられている。
【0018】
この減速機はモータの回転速度を所定の速度に減速している。減速機は例えば波動歯車減速機である。波動歯車減速機は、ウェーブジェネレータと、フレクスプラインと、サーキュラスプラインとを有している。ウェーブジェネレータは、楕円状のカムの外周に薄肉のボールベアリングが嵌め込まれ、全体が楕円形状をしている。ベアリングの内輪は楕円カムに固定されていて、外輪はボールを介して弾性変形する。フレクスプラインは、外周に多数の外歯が形成され、ウェーブジェネレータに外嵌されて、ウェーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なものである。サーキュラスプラインは、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えている。そして動力は、モータと連結したウェーブジェネレータからフレクスプラインに回転出力として繋げた出力軸へ取り出されて伝達される。このモータ部11の減速機に例えば波動歯車減速機のようなバックラッシが微小なものを使用することで、モータの正逆回転切り換えを頻繁に行って昇降を行う時に、切り換え時の制御不能な領域をなくし、スムーズな操作感を実現できる。なお減速機は波動歯車減速機に限るものではない。
【0019】
電磁ブレーキは、モータの回転を止めて保持するものであって、例えば無励磁作動形で、通電が断たれた時にブレーキがかかるものが好ましい。
【0020】
位置検出部13はモータ部11の反負荷側に連結されている。位置検出部13はモータの回転角位置を検出する。位置検出部13は例えばアブソリュートエンコーダであって、光学式にてモータの回転角位置を検出して位置値を本体部9の制御部10へ送信する。したがってこの位置検出部13は、吊下げフック3の本体部9からの繰出し値を検出することができる。本実施形態では、位置検出部13はモータ部11の反負荷側に配置したがこれに限らず、減速機の出力である出力軸や昇降作動部18に設けられても良く、また両方に設けられても良い。さらに位置検出部13は、光学式に限らず磁気式や静電容量式等であっても良い。
【0021】
昇降作動部18は、駆動源のモータ部11からの動力の伝達によって回転する回転部材を含んで構成される。本実施形態では昇降作動部18の回転部材は中空円柱の形状であって、中空部で出力軸と繋がっていて、リンクチェーン4を巻回し、リンクチェーン4の巻き上げ及び繰り出しを行う。リンクチェーン4は昇降作動部18の外側円柱面に設けられたポケット溝に嵌入されておおよそ180度ほど巻回される。本実施形態では吊索部は、吊下げフック3に繋がって昇降作動部18に巻回されるものにリンクチェーン4を用いたが、これに限らずワイヤロープであっても良い。ワイヤロープを使用した時は、昇降作動部18はドラム形状で、ワイヤロープはその一端が昇降作動部18に固定されて巻回される。
【0022】
リンクチェーン4は吊索部であって、半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交差して交互に連接されたものである。リンクチェーン4の一端部は吊下げ部材である吊下げフック3に接続されていて、他端部(無負荷側)はチェーン収納部17に収納されている。
【0023】
吊下げ部材の吊下げフック3は、リンクチェーン4の一端に接続され、本実施形態では本体部9を吊上げる部材で、汎用性のある形状のフックである。吊下げフック3は、例えば建物内の高所の梁や、図5における構造物に設けられたレール42を走行する移動ブロック41などに吊下げて使用される。
【0024】
グリップ6は、吊下げフック3とリンクチェーン4との接続部を覆うように固定されて設けられた中空円筒状の部材である。作業者はグリップ6を握って、リンクチェーン4を本体部9から繰り出すことができる。
【0025】
チェーン収納部17はリンクチェーン4の他端の無負荷側を収納する箱形状の部材であって、その上面にはリンクチェーン4の通過のための開口部を有する。そして案内ローラ30は例えばスプロケット状の部材であって、昇降作動部18及びチェーン収納部17へのリンクチェーン4の送り出しを円滑にするため、リンクチェーン4を巻きつけて案内するものである。
【0026】
電池部15は、制御部10へ、及び制御部10を介してモータ部11、位置検出部13、重量検出部12などに電力を供給する二次電池である。
【0027】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の記憶装置及び入出力装置を備えて、本体部9全体の制御を行う。制御部10の詳細については後述する。
【0028】
接地検出部32は例えば光電型の距離検出センサであって、ベース部材19aの下面に設置され、本体部9が床43に接地されているかどうかを検出して制御部10へ検出信号を送信する。接地検出部32はこれに限らず、車輪31aが床43に着地若しくは離れているかどうかを検出できれば良い。
【0029】
2次側変圧器16は、送電装置61から一次側変圧器60を介して給電を受けるためのものである(図2参照)。2次側変圧器16で受けた電力は制御部10内の整流回路などを経て、各電子部品に供給されると共に、電池部15の充電に使用される。なお2次側変圧器16は、本実施形態では板状の部材で板面がベース部材19aと垂直になるようにベース部材19aの上面に固定されているがこれに限らず、ベース部材19a下面に板面がベース部材19aと平行になるように配置して、床43の天面に設置された一次側変圧器60及び送電装置61から電力の供給を受けても良い。
【0030】
重量検出部12は、所謂ロードセルであって起歪体と起歪体に貼られた歪みゲージを備えている。重量検出部12の上部はベース部材19aの下面に固定され、重量検出部12の下部は係止軸ホルダ5b及びカバー2に固定されている。起歪体は係止軸ホルダ5b及びカバー2に加わる鉛直方向の力及び重量を検出できるように弾性変形する形状を有している。歪みゲージは重量に応じて起歪体に生ずる歪みを電気信号に変換するホイートストーンブリッジ回路に組み込まれ、重量検出部12は係止軸ホルダ5b及びカバー2に加わる鉛直方向の重量(力)を検出して、重量値を制御部10へ送信する。なお重量検出部12は、歪みゲージ方式に限らず、静電容量式、磁歪式であっても良い。
【0031】
係止部は、係止部材5aと係止軸ホルダ5bとを含んで構成され、荷役物を係止する部材である。本実施形態では、係止部材5aは軸形状で、U字型形状の係止軸ホルダ5bに挿入固定されて、共に金属材料である。係止部はこれに限るものではなく、吊下げフック3のようなフックとチェーン等で構成しても良い。
【0032】
カバー2は、本体部9内部の部品を覆って保護するものであり、重量検出部12に固定されている。そしてカバー2は、ベース部材19aに固定されているものではなく、重量検出部12の係止軸ホルダ5bが固定されている側に固定されている。したがってカバー2は、ベース部材19aに固定されている部材には干渉しないように、隙間を保っている。カバー2には作業者が操作を容易にするためにハンドル8a、ハンドル8bが設けられている場合がある。操作用のハンドルはこれに限らずカバー2の任意の箇所に取り付けられている。
【0033】
操作指令部20は、荷役助力装置1を遠隔にて操作するためのものであって、本実施形態では電波によって通信している。操作指令部20は、操作指令部20に収容されている電池によって駆動される。操作指令部20は、操作手段として例えばバランス釦22、保持釦23、巻取釦24及び繰出釦25を有している。操作の内容詳細については後述する。
【0034】
図2は本発明の実施形態に係る荷役助力装置1の電子回路のブロック構成図である。荷役助力装置1は、本体部9と操作指令部20とを含んで構成されている。
【0035】
本体部9の制御部10は本体部9全体の制御を行っている。制御部10は、演算部10bとしてCPU(Central Processing Unit)、記憶部10aとしてROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有する。制御部10は、モータ部11を駆動する駆動回路を含んでいる。そして制御部10は、重量検出部12から重量検出部12に加わる重量値を受信し、位置検出部13からモータ部11の回転角の位置値を受信し、接地検出部32から本体部9の接地状態の信号を受信し、本体送受信部14と信号の送受信を行う。制御部10は、電池部15から電力の供給を受けると共に、電池部15へ電力の供給を行って充電する充電部10dを有している。制御部10は、モータ部11から回生エネルギを取り出す回生部10cを含んでいる。回生部10cで回収した余剰エネルギは電力に変換されて充電部10dによって電池部15の充電に使用される。本体送受信部14と本体部9の制御部10とは有線で繋がっていて、極めて短い時間間隔で高速に信号の送受信を行う。制御部10は、本体部9に設けられた2次側変圧器16を介して、送電装置61と一次側変圧器60から非接触で電力を受信する回路も有している。制御部10は、モータ部11の電磁ブレーキにてモータ部11の回転を止めて保持する電磁ブレーキ保持部10eを含んでいる。
【0036】
本体送受信部14は、操作指令部20の操作指令送受信部26と無線にて通信を行う。本体送受信部14及び操作指令送受信部26は無線通信を行う電子回路で構成され、電波による送信器と受信器を有する他、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有する場合がある。
【0037】
操作指令制御部21は操作指令部20全体の制御を行っている。操作指令制御部21は各操作手段(操作釦)による操作指令を受けて、操作の指令信号を操作指令送受信部26へ送信する。そして操作指令送受信部26は操作指令制御部21から受信した操作の指令を、本体送受信部14へ無線にて送信する。この指令を含んだ信号には、操作指令部20と本体部9とのペアリングを行う操作指令部20の識別情報が付与されている。
【0038】
次いで操作指令部20に設けられている操作手段である各操作釦の役割について説明する。各操作釦は例えばモーメンタリ動作のプッシュスイッチであって、押している期間中はONとなって離すと自己復帰でOFFになる。作業者がバランス釦22を押すと操作指令部20からバランス指令が送信され、制御部10はこれを受信して本体部9をバランス状態へ移行を開始する。すなわち制御部10は、重量検出部12が昇降作動部18に加わる重量値を検出して出力した重量値を記憶部10aへ登録重量として記憶し、演算部10bによって登録重量と昇降作動部18に加わる重量との差をゼロにする制御値を演算して、モータ部11を制御する。この制御を本発明ではバランス制御と言い、このバランス制御中の本体部9及び荷役物44の状態をバランス状態と言う。換言すると、本体部9の制御部10は、登録した重量で生じるリンクチェーン4のテンションと、重量検出部12で検出した重量で生じるリンクチェーン4のテンションとが同じになるように制御値を演算してモータ部11を制御することがバランス制御である。そして作業者がこのバランス制御中に荷役物44へ鉛直下向きの外力を加えると、昇降作動部18に加わる重量が大きくなることから、本体部9の制御部10はこれを登録重量へ近づけるように制御値を演算し、リンクチェーン4を繰り出す方向にモータ部11を制御し、本体部9及び荷役物44は下降する。一方、作業者がこのバランス制御中に荷役物44へ鉛直上向きの外力を加えると、昇降作動部18に加わる重量が小さくなることから、本体部9の制御部10はこれを登録重量へ近づけるように制御値を演算し、リンクチェーン4を巻き上げる方向にモータ部11を制御し、本体部9及び荷役物44は上昇する。そして作業者が外力の印加をやめると、重量検出部12が検出する重量が登録重量と等しくなるので本体部9及び荷役物44は静止した状態となる。なおこの制御値は例えば加速度を含むものである。
【0039】
一方で、作業者が保持釦23を押すと、制御部10は保持指令を受信し、昇降作動部18を現在位置にて保持、すなわち本体部9の昇降位置を保つようにモータ部11を制御する。保持の方法は、制御部10がモータ部11へトルクを保つように指令しても良いし、電磁ブレーキを使用しても良い。電磁ブレーキを使用した場合、電磁ブレーキが無励磁作動形であれば、電磁ブレーキの励磁を切ることでモータ部11に繋がった昇降作動部18の回転がロックされ、リンクチェーン4の繰り出しが止められる。
【0040】
作業者が巻取釦24若しくは繰出釦25を押すと、制御部10はこれを受けてモータ部11を制御して、昇降作動部18を回転させる。作業者は巻取釦24若しくは繰出釦25を連続的に押すことで、モータ部11により昇降作動部18を連続的に回転させることができる。本体部9が保持状態及びバランス状態いずれにあっても、作業者が巻取釦24若しくは繰出釦25を押すと、リンクチェーン4の巻取り若しくは繰出しを行い、押した巻取釦24若しくは繰出釦25から手を離すと保持状態に戻る。
【0041】
図3は発明の実施形態に係る荷役助力装置1の本体部9の電池部15へ充電を行う際の構成の模式図である。作業者は本体部9に設けられたハンドル8aを押して、送電装置61に取り付けられている一次側変圧器60と、本体部9内の2次側変圧器16とが対向して所定の距離になるように本体部9を移動させる。すると送電装置61側に設けられた検出器によって、送電装置61は本体部9の存在を検出し、本体部9へ電力を送信する。非接触電力送信は、電磁誘導方式、磁界共鳴方式などのいずれであっても良い。なお一次側変圧器60と2次側変圧器16とが対向するようにカバー2の一部は切り欠かれていてここには樹脂が嵌め込まれている。また送電装置61と一次側変圧器60とが床面に埋め込まれ、2次側変圧器16がベース部材19a下面に設けられて、送電を行う変形であっても良い。また送電装置61から直接ケーブルで制御部10へ送電することも可能である。
【0042】
図4は本発明の実施形態に係る荷役物と吊具を示した模式図である。図4(b)は図4(a)の右側面図である。荷役物44は例えば円柱棒状の部材であって、床43に置かれている。吊具45はフック45aと荷役物ホルダ45bとで構成される。荷役物ホルダ45bは、断面が矩形の中空部材であってその一辺の一部が開口していて荷役物44を保持する。そしてフック45aが、荷役物ホルダ45bの開口部に対向した辺に取り付けられている。フック45aは荷役物ホルダ45bに取り付けられていて、係止部材5aに係止できる形状である。吊具45は、作業者が荷役物44に対してその円柱軸方向に移動させることによって、荷役物44を荷役物ホルダ45bへ挿入することができ、吊具45の上部に位置するフック45aを持ち上げることで荷役物44を保持することができる。
【0043】
図5から図10は、作業者が本発明の実施形態に係る荷役助力装置1を用い、荷役物44を扱う一連の作業状態を表した模式図である。図5は、荷役物44に対して本体部9が移動している時の模式図である。レール42は作業構内の天井等に水平方向に設けられた軌道レールである。移動ブロック41はレール42に沿って略水平方向に移動可能な部材であって、吊下げフック3を係止して使用することができる。
【0044】
作業者はハンドル8aを操作して、係止部材5aがフック45aに係合する位置まで本体部9を床43面で移動させる。すると図6の状態となって、荷役物44は本体部9の下部に位置し、フック45aは係止部材5aに当接する。この状態で荷役助力装置1の電源が入っていなければモータ部11の電磁ブレーキが昇降作動部18を保持している。作業者が本体部9の不図示の電源スイッチをONにすると、制御部10が起動する。
【0045】
次いで作業者は、本体部9の天面に設けられた自在繰出釦7を押す。すると制御部10は、自在繰出釦7が押されたことを検出してモータ部11の電磁ブレーキを解除し、作業者がグリップ6を持って吊下げフック3を引っ張り上げることが自在となるように制御する。モータ部11は減速機を有していること、リンクチェーン4が金属で重量も相応あることから、制御部10が単にモータ部11の電磁ブレーキを解除しただけでは、作業者がグリップ6を持って昇降作動部18を回転させて吊下げフック3を引っ張り上げるのは困難である。制御部10は、作業者がリンクチェーン4の引っ張り上げを止めた場合その位置を保持しても良いし、常に僅かにリンクチェーン4を巻き戻す力を昇降作動部18に常時発生させても良い。但し制御部10は、自在繰出釦7を有効とするのは、接地検出部32によって本体部9が床43に接地していることを検出している場合のみである。また作業者が繰出釦25を持続的に押しながら、グリップ6を持って繰り出されて来るリンクチェーン4を引っ張っても良いが、両手での作業が必要になる。
【0046】
図7は、作業者はグリップ6を持って吊下げフック3を引っ張り上げて、吊下げフック3を移動ブロック41に係止させた時の状態を示す。そして作業者は、操作指令部20の巻取釦24を押し続ける。すると徐々に本体部9は上昇して床43から離れ、係止部材5aがフック45aを鉛直方向に係止し、荷役物44は床43から離れ、本体部9と荷役物44は宙吊り状態となる(図8)。作業者が、操作指令部20の巻取釦24を押すのをやめると、制御部10はその位置で本体部9すなわち昇降作動部18を保持状態とする。そして次いで作業者が、操作指令部20のバランス釦22を押すと、制御部10は、重量検出部12から係止部材5aに加わる重量信号を受信して、重量値を記憶部10aに記憶し、この重量値を基にバランス制御を開始する。本体部9がバランス状態になった場合、作業者がカバー2、ハンドル8a、ハンドル8b、荷役物44のいずれかに鉛直上下いずれかの方向の外力を加えると、この外力を重量検出部12が検出して、制御部10は記憶されている重量値とこの外力による重量の差を基に本体部9と荷役物44の昇降の制御を実行する。すなわち作業者がカバー2、ハンドル8a、ハンドル8b、荷役物44のいずれかから手を離して外力を加えるのをやめると、本体部9と荷役物44とは速やかに停止する。作業者がカバー2、ハンドル8a、ハンドル8b、荷役物44のいずれかに鉛直上下方向の外力を加えるとこの外力に応じて本体部9と荷役物44とは上昇若しくは下降する。
【0047】
本体部9がバランス状態のままで、所定の時間以上同じ位置となっている場合には、制御部10はバランス状態を解除して保持状態へ移行する。また本体部9が保持状態で一定時間以上経過した時は、モータ部11内の電磁ブレーキによって昇降作動部18を保持する。これらは本体部9が電池部15による駆動であるので消費電力を抑えるためである。
【0048】
その後作業者は、保持釦23を押して本体部9を保持状態にして、荷役物44を水平方向に押し、荷役物ホルダ45bから解放して所定の場所に移載する(図9)。この後も吊具45は係止部材5aに係止されたままである。よって作業者が操作指令部20のバランス釦22を押すと、荷役物44の無い吊具45のみの重量を記憶部10aは記憶して、制御部10は新たなバランス状態にて本体部9を制御する。よって作業者は、ハンドル8bなどを操作して、本体部9を下降させることができる。作業者は、本体部9が床43に着地する付近まで下降させ(図10)、次いで繰出釦25を押し続けて吊具45と本体部9を下降させて床43に着地させる。本体部9が床43に着地すると、吊具45は本体部9から外すことができる。
【0049】
引き続き吊下げフック3を移動ブロック41に係止させて作業を続ける場合は、本体部9を移動させて、吊具45を新たな荷役物44に取り付け、吊具45を係止部材5aに係止させ、同様の作業を行う。もし異なる場所で作業を行うのであれば作業者は、自在繰出釦7を押して吊下げフック3を移動自在にして移動ブロック41から外し、巻取釦24を連続的に押して、リンクチェーン4を巻取る。そして作業者は、ハンドル8aなどを操作して本体部9を次の作業場所へ移動する。
【0050】
以上説明したように本発明の荷役助力装置によれば、比較的重量が大きい荷役助力装置本体を予め高所に取り付ける必要が無く、荷役作業の改善を図った荷役助力装置の提供を提供できる。
【0051】
本発明を好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の活用例として、荷役物の移動を助力して行う荷役機械への適用が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 :荷役助力装置
2 :カバー
3 :吊下げフック(吊下げ部材)
4 :リンクチェーン(吊索部)
5a :係止部材
5b :係止軸ホルダ
6 :グリップ
7 :自在繰出釦
8a、8b :ハンドル
9 :本体部
10 :制御部
10a :記憶部
10b :演算部
10c :回生部
10d :充電部
10e :電磁ブレーキ保持部
11 :モータ部
12 :重量検出部
13 :位置検出部
14 :本体送受信部
15 :電池部
16 :2次側変圧器
17 :チェーン収納部
18 :昇降作動部
19a :ベース部材
19b :ブラケット
20 :操作指令部
21 :操作指令制御部
22 :バランス釦
23 :保持釦
24 :巻取釦
25 :繰出釦
26 :操作指令送受信部
30 :案内ローラ
31a :車輪
31b :支持部材
32 :接地検出部
41 :移動ブロック
42 :レール
43 :床
44 :荷役物
45 :吊具
45a :フック
45b :荷役物ホルダ
60 :一次側変圧器
61 :送電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10