(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033997
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】産業用制御装置の出力モジュール
(51)【国際特許分類】
G05B 9/02 20060101AFI20230306BHJP
G05B 19/05 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G05B9/02 A
G05B19/05 N
G05B19/05 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140020
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内沢 里保
【テーマコード(参考)】
5H209
5H220
【Fターム(参考)】
5H209DD20
5H209GG20
5H209HH22
5H209JJ03
5H209JJ09
5H220BB09
5H220CC06
5H220CX05
5H220JJ07
5H220JJ12
5H220JJ17
5H220JJ28
(57)【要約】
【課題】診断時に負荷への動力が遮断されることなく、また、負荷への出力が0の場合でも、出力回路をオフする能力を診断することが可能な出力モジュールを提供する。
【解決手段】出力回路は、互いに並列に接続される2つ以上の切替スイッチと、各切替スイッチに対応してそれぞれ設けられ、各切替スイッチの機能診断に用いられる機能診断用電圧を印加する個別電源と、各切替スイッチに対応して設けられ、機能診断用電圧が印加されたことによって切替スイッチを印加電流が流れたか否かを示す電流信号を制御部に出力する電流検出部と、を備える。制御部は、機能診断の対象となる診断対象スイッチとは別の少なくとも一つの任意の切替スイッチを閉状態としたまま、電流検出部による電流信号に基づいて少なくとも診断対象スイッチの開制御が正常に機能するか否かの判断を含む機能診断を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源からの電力が供給される負荷に接続する出力回路と、前記出力回路の動作を制御する制御部と、を備え、前記負荷への前記主電源からの前記電力の供給を制御する産業用制御装置の出力モジュールであって、
前記出力回路は、
前記主電源から前記負荷への前記電力の供給と遮断とを切り替える切替スイッチであって、互いに並列に接続される2つ以上の切替スイッチと、
前記主電源とは別に各前記切替スイッチに対応してそれぞれ設けられ、各前記切替スイッチの機能診断に用いられる機能診断用電圧を印加する個別電源であって、各前記切替スイッチが並列接続される分岐点と、対応する前記切替スイッチと、の間に設けられる個別電源と、
各前記切替スイッチに対応して設けられ、前記機能診断用電圧が印加されたことによって前記切替スイッチを印加電流が流れたか否かを示す電流信号を前記制御部に出力する電流検出部と、を備え、
前記制御部は、
複数の前記切替スイッチのうち、前記機能診断の対象となる診断対象スイッチとは別の少なくとも一つの任意の前記切替スイッチを閉状態としたまま、
前記電流検出部による前記電流信号に基づいて少なくとも前記診断対象スイッチの開制御が正常に機能するか否かの判断を含む前記機能診断を実行する産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項2】
前記制御部は、
前記機能診断において、前記診断対象スイッチを開状態とし、前記診断対象スイッチに対応する前記個別電源により前記機能診断用電圧を印加したときに、前記診断対象スイッチに対応する前記電流検出部からの前記電流信号を読み取り、
前記診断対象スイッチを前記印加電流が流れていないと判定される場合には、前記診断対象スイッチの前記開制御が正常に機能すると診断し、
前記診断対象スイッチを前記印加電流が流れたと判定される場合には、前記診断対象スイッチの前記開制御が正常に機能しないと診断する請求項1に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項3】
前記制御部は、
前記機能診断において、前記診断対象スイッチを閉状態とし、前記診断対象スイッチに対応する前記個別電源により前記機能診断用電圧を印加したときに、前記診断対象スイッチに対応する前記電流検出部からの前記電流信号を読み取り、
前記診断対象スイッチを前記印加電流が流れたと判定される場合には、前記診断対象スイッチの閉制御が正常に機能すると診断し、
前記診断対象スイッチを前記印加電流が流れていないと判定される場合には、前記診断対象スイッチに対応する前記電流検出部が故障していると判断する請求項1または請求項2に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項4】
前記個別電源が印加する前記機能診断用電圧による前記印加電流の値は、前記主電源が供給する電流値よりも大きい請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項5】
各前記個別電源と、各前記個別電源に対応する各前記切替スイッチと、の間には、個別スイッチが設けられている請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項6】
前記制御部は、
前記診断対象スイッチに対応する前記個別電源により前記機能診断用電圧を印加する際に、前記個別スイッチを予め定められた一定時間だけ閉状態として、前記診断対象スイッチにパルス状の前記印加電流を流す請求項5に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項7】
前記分岐点と、各前記個別電源と、の間にそれぞれ設けられ、各前記個別電源から前記負荷に向かう電流を抑制するダイオードを、さらに備える請求項1~請求項6のうちいずれか一項に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、産業用制御装置の出力モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されるように、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などの産業用制御装置では、その産業用制御装置の動作全般を制御するCPUモジュールから与えられる指令に基づいて所定の出力制御を行う出力モジュールが設けられている。
【0003】
出力モジュールは、上記出力制御として、例えば外部に接続される負荷に対する電力の供給を制御する。このような出力制御を行う出力モジュールは、電源電圧が与えられる負荷に接続する出力回路と、出力回路の動作を制御する制御部と、を備えている。そして、その出力回路としては、負荷への電力供給を遮断する切替スイッチと、切替スイッチを流れた電流信号を制御部へ返すリードバック用の電流検出部と、を備えるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PLCの出力モジュールでは、機能安全の観点から、出力回路が負荷に対する電力供給を遮断するための能力、つまり出力回路をオフするための能力が適切に機能しているかどうかを検証する出力診断が必要である。
【0006】
この出力診断では、まず切替スイッチを開け、電流検出回路からのリードバック値を読み取り、電流が流れていないことを確認した後、切替スイッチを閉じるようにしている。しかし、この出力モジュールでは、診断の際に、切替スイッチをオフするため、負荷に対する電力供給が停止してしまう。
【0007】
なお、出力回路において、PLCとしての出力制御の多重化を図るために、複数の切替スイッチを備えるものもある。この構成では、一つの切替スイッチを閉じて、負荷への動力の流れを確保した状態で、他の切替スイッチを順番に開いて、各スイッチを順番に機能診断することは可能である。しかし、この構成であっても、負荷自体への出力が0の場合には、切替スイッチをオフにしてもリードバック値が0mAであるため、出力回路をオフする能力があるのか否かを判定することができなかった。
【0008】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、診断時に負荷への動力が遮断されることなく、また、負荷への出力が0の場合でも、出力回路をオフする能力を診断することが可能な出力モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本開示の一形態によれば、産業用制御装置の出力モジュールが提供される。この産業用制御装置の出力モジュールは、主電源からの電力が供給される負荷に接続する出力回路と、前記出力回路の動作を制御する制御部と、を備え、前記負荷への前記主電源からの前記電力の供給を制御する産業用制御装置の出力モジュールであって、前記出力回路は、前記主電源から前記負荷への前記電力の供給と遮断とを切り替える切替スイッチであって、互いに並列に接続される2つ以上の切替スイッチと、前記主電源とは別に各前記切替スイッチに対応してそれぞれ設けられ、各前記切替スイッチの機能診断に用いられる機能診断用電圧を印加する個別電源であって、各前記切替スイッチが並列接続される分岐点と、対応する前記切替スイッチと、の間に設けられる個別電源と、各前記切替スイッチに対応して設けられ、前記機能診断用電圧が印加されたことによって前記切替スイッチを印加電流が流れたか否かを示す電流信号を前記制御部に出力する電流検出部と、を備え、前記制御部は、複数の前記切替スイッチのうち、前記機能診断の対象となる診断対象スイッチとは別の少なくとも一つの任意の前記切替スイッチを閉状態としたまま、前記電流検出部による前記電流信号に基づいて少なくとも前記診断対象スイッチの開制御が正常に機能するか否かの判断を含む前記機能診断を実行する。
この形態の産業用制御装置の出力モジュールによれば、出力回路は、並列接続された切替スイッチと、切替スイッチに対応して切替スイッチと分岐点との間に設けられる個別電源と、切替スイッチに対応して設けられる電流検出部と、を備えている。そして、制御部により少なくとも一つの任意の切替スイッチが閉状態とされたまま、電流検出部による電流信号に基づいて少なくとも診断対象スイッチの開制御が正常に機能するか否かの判断を含む機能診断を実行する。「診断対象スイッチの開制御が正常に機能する」、ということは、緊急時において負荷の動作を非常停止するときに、出力回路を正常にオフできるということを意味する。このような切替スイッチの機能診断に際して、上記形態によれば、診断対象以外の少なくとも一つの任意の切替スイッチは閉状態のままであるため、負荷への動力が遮断されることがない。
また、個別電源により機能診断用電圧を印加して、診断対象スイッチを印加電流が流れたか否かを示す電流信号に基づいて診断が行われるため、負荷に電力を供給する主電源の出力が0の場合でも、機能診断が可能である。すなわち、本構成によれば、診断時に負荷への動力が遮断されることなく、また、負荷への出力が0の場合であっても、出力回路をオフする機能診断を実行することができる。
(2)上記形態の産業用制御装置の出力モジュールにおいて、前記制御部は、前記機能診断において、前記診断対象スイッチを開状態とし、前記診断対象スイッチに対応する前記個別電源により前記機能診断用電圧を印加したときに、前記診断対象スイッチに対応する前記電流検出部からの前記電流信号を読み取り、前記診断対象スイッチを前記印加電流が流れていないと判定される場合には、前記診断対象スイッチの前記開制御が正常に機能すると診断し、前記診断対象スイッチを前記印加電流が流れたと判定される場合には、前記診断対象スイッチの前記開制御が正常に機能しないと診断する。
この形態の産業用制御装置の出力モジュールによれば、診断対象スイッチを開状態とし、診断対象スイッチに対応する個別電源により機能診断用電圧を印加することにより、診断対象スイッチを印加電流が流れていない場合には、開制御が正常に機能すると診断することができ、診断対象スイッチを印加電流が流れた場合には、開制御が正常に機能しないと診断することができる。
(3)上記形態の産業用制御装置の出力モジュールにおいて、前記制御部は、前記機能診断において、前記診断対象スイッチを閉状態とし、前記診断対象スイッチに対応する前記個別電源により前記機能診断用電圧を印加したときに、前記診断対象スイッチに対応する前記電流検出部からの前記電流信号を読み取り、前記診断対象スイッチを前記印加電流が流れたと判定される場合には、前記診断対象スイッチの閉制御が正常に機能すると診断し、前記診断対象スイッチを前記印加電流が流れていないと判定される場合には、前記診断対象スイッチに対応する前記電流検出部が故障していると判断する。
この形態の産業用制御装置の出力モジュールによれば、診断対象スイッチを閉状態とし、診断対象スイッチに対応する個別電源により機能診断用電圧を印加することにより、診断対象スイッチを印加電流が流れた場合には、閉制御が正常に機能すると診断することができ、診断対象スイッチを印加電流が流れていないと判定される場合には、診断対象スイッチに対応する電流検出部が故障していると判断することができる。すなわち、切替スイッチの開閉機能に加えて、電流検出部の故障を検出することができる。
(4)上記形態の産業用制御装置の出力モジュールにおいて、前記個別電源が印加する前記機能診断用電圧による前記印加電流の値は、前記主電源が供給する電流値よりも大きい。この形態の産業用制御装置の出力モジュールによれば、個別電源から供給される機能診断用電圧による印加電流の値は、主電源から供給される電力による電流値よりも大きいため、機能診断用電圧により印加電流の電流信号を明確に読み取ることができ、機能診断を容易かつ正確に行うことができる。
(5)上記形態の産業用制御装置の出力モジュールにおいて、各前記個別電源と、各前記個別電源に対応する各前記切替スイッチと、の間には、個別スイッチが設けられている。この形態の産業用制御装置の出力モジュールによれば、機能診断時に電流を流すか否かを、個別スイッチにより切り替えることができ、機能診断時の電流制御を安定して行うことができる。
(6)上記形態の産業用制御装置の出力モジュールにおいて、前記制御部は、前記診断対象スイッチに対応する前記個別電源により前記機能診断用電圧を印加する際に、前記個別スイッチを予め定められた一定時間だけ閉状態として、前記診断対象スイッチにパルス状の前記印加電流を流す。この形態の産業用制御装置の出力モジュールによれば、診断対象スイッチの機能診断に際して、パルス状の電流を個別スイッチの切り替えにより制御できるため、安定した電流制御を行うことができる。
(7)上記形態の産業用制御装置の出力モジュールにおいて、前記分岐点と、各前記個別電源と、の間にそれぞれ設けられ、各前記個別電源から前記負荷に向かう電流を抑制するダイオードを、さらに備える。この形態の産業用制御装置の出力モジュールによれば、ダイオードにより、個別電源から負荷に向かう電流が抑制される。すなわち、電流の逆流を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1実施形態におけるPLCの出力モジュールの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】出力モジュールが実行する切替スイッチの機能診断処理を含む各処理において、切替スイッチおよび個別スイッチの開閉状態、リードバック信号の期待値を示すテーブルである。
【
図3】第1実施形態の出力モジュールが実行する切替スイッチの機能診断処理の流れを表すメインフローチャートである。
【
図4】第1切替スイッチの機能診断における詳細処理を示すフローチャートである。
【
図5】第2切替スイッチの機能診断における詳細処理を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の第2実施形態におけるPLCの出力モジュールの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。
A.第1実施形態:
A1.PLC1および、PLC1の出力モジュール3の構成:
第1実施形態について、
図1~
図5を参照して説明する。まず、PLCの構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本開示の第1実施形態におけるPLCの出力モジュール3の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、産業用制御装置であるPLC1は、その動作全般を制御するCPUモジュール2と、出力モジュール3と、図示しない入力モジュールなどを備えている。PLC1は、出力モジュール3に接続される外部の負荷4の動作を制御する。負荷4としては、例えば流量制御弁の駆動装置などである。CPUモジュール2および出力モジュール3を含めたPLC1を構成する各モジュールは、バス通信ラインを介して、それぞれの間で通信可能に構成されている。
【0013】
出力モジュール3は、CPUモジュール2から与えられる指令に基づいて負荷4に対する動力、より具体的には電源電圧Vaの供給を制御する。出力モジュール3は、出力回路5、制御部6、および負荷4を接続する2つの接続端子7,8を備えるデジタル出力モジュールである。
【0014】
出力回路5は、D/Aコンバータ11、2つの切替スイッチ(第1切替スイッチSwA,第2切替スイッチSwB)、2つの電流検出抵抗器(第1抵抗器12,第2抵抗器13)、2つの個別電源(第1個別電源14,第2個別電源15)、および2つの個別スイッチ(第1個別スイッチSwCa,第2個別スイッチSwCb)を備えている。D/Aコンバータ11は、負荷4の上流に設けられ、本実施形態において、負荷4にメインの電力を供給する主電源として機能する。
【0015】
出力回路5は、電源電圧Vaが供給される負荷4に接続している。なお、以下の説明において、2つの切替スイッチSwA,SwBを特に区別しないときには、単に「切替スイッチSwA,SwB」といい、2つの個別電源14,15を特に区別しないときには、単に「個別電源14,15」という。同様に、2つの個別スイッチSwCa,SwCbを特に区別しないときには、単に「個別スイッチSwCa,SwCb」といい、2つの電流検出抵抗器12,13を特に区別しないときには、単に「抵抗器12,13」という。
【0016】
負荷4は、D/Aコンバータ11の下流に設けられる第1接続端子7と第2接続端子8との間に接続されている。各切替スイッチSwA,SwB、各抵抗器12,13、各個別電源14,15、および各個別スイッチSwCa,SwCbは、いずれも負荷4(第2接続端子8)の下流側に設けられている。各切替スイッチSwA,SwBは、出力回路5と負荷4との間を電気的に接続又は遮断するためのスイッチであって、負荷4の下流において介して互いに並列に接続されている。
【0017】
並列接続の分岐点Pより下流であって、第1切替スイッチSwAの上流には第1ダイオード16が設けられている。同様に、分岐点Pより下流であって、第2切替スイッチSwBの上流には第2ダイオード17が設けられている。ダイオード16,17は、個別電源14,15から負荷4に向かう電流を抑制する。
【0018】
各個別電源14,15は、一定の電流を出力する定電流源であり、例えば外部の電源モジュールから分圧された分圧電圧を出力することで電流を流すことが可能な回路である。第1個別電源14は、第1ダイオード16の下流であって、第1切替スイッチSwAの上流に設けられている。第2個別電源15は、第2ダイオード17の下流であって、第2切替スイッチSwBの上流に設けられている。
【0019】
第1個別スイッチSwCaは、第1個別電源14と第1切替スイッチSwAとの間に設けられている。第1個別スイッチSwCaは、第1個別電源14と第1切替スイッチSwAとの間を電気的に接続又は遮断するためのスイッチである。第2個別スイッチSwCbは、第2個別電源15と第2切替スイッチSwBとの間に設けられている。第2個別スイッチSwCbは、第2個別電源15と第2切替スイッチSwBとの間を電気的に接続又は遮断するためのスイッチである。なお、上記各スイッチSwA,SwB,SwCa,SwCbは、例えばMOSFETなどのトランジスタである。また、上記各スイッチSwA,SwB,SwCa,SwCbは、例えば機械式のリレーなどであってもよい。各スイッチSwA,SwB,SwCa,SwCbは、制御部6から与えられる2値の制御信号に従ってオンオフされる。
【0020】
第1抵抗器12は、第1切替スイッチSwAの下流において第1切替スイッチSwAとグランド(0V)との間に接続されている。第2抵抗器13は、第2切替スイッチSwBの下流において第2切替スイッチSwBとグランド(0V)との間に接続されている。各抵抗器12,13は、電流が流れることで電圧を生じる。その電圧は、後述する出力回路5の機能診断のためのリードバック信号として機能する機能診断用電圧Vbとして、制御部6に与えられる。各抵抗器12,13は、所謂リードバック回路であり「電流検出部」に相当する。また、リードバック信号である機能診断用電圧Vbは、対応する各切替スイッチSwA,SwBを電流が流れたか否かを示す「電流信号」に相当する。本実施形態では、電流信号として電流が流れたことを示す情報を用いる。
【0021】
以上の構成において、第1切替スイッチSwAに対して、第1個別電源14、第1個別スイッチSwCa、および第1抵抗器12がそれぞれ対応している。第2切替スイッチSwBに対して、第2個別電源15、第2個別スイッチSwCb、および第2抵抗器13がそれぞれ対応している。個別電源14,15は、対応する切替スイッチSwA,SwBの後述する機能診断において、機能診断用電圧Vbを印加する。各個別スイッチSwCa,SwCbは、対応する各個別電源14,15から各切替スイッチSwA,SwBに、機能診断時以外に不用意に電流が流れないように開閉制御される。
【0022】
制御部6は、例えば、図示しないCPU、ROM,RAM、その他の入出力ポート等を含むマイクロコンピュータであり、出力回路5の動作全般を制御する。具体的には、制御部6は、各スイッチSwA,SwB,SwCa,SwCbの開閉動作を制御する。また、制御部6は、外付けされる図示しないA/Dコンバータを有しており、このA/Dコンバータにより、各抵抗器12,13から機能診断用電圧Vbの値を読み取り、電流値を演算する。また、制御部6のCPUが、ROMに記憶されたプログラムを読み出して、後述する出力回路5の機能診断を実行する。
【0023】
図2は、出力モジュール3が実行する切替スイッチSwA,SwBの機能診断処理を含む各処理において、切替スイッチSwA,SwBおよび個別スイッチSwCa,SwCbの開閉状態、リードバック信号の期待値を示すテーブルである。
図2において「1.初期化」の横欄に示すように、本実施形態では、負荷4の通常運転時には、第1切替スイッチSwAは閉(Close)とされ、第2切替スイッチSwBは開(Open)とされる。すなわち、第1切替スイッチSwAは、負荷4の通常運転時にメインとして使用されるスイッチであり、第2切替スイッチSwBは、各切替スイッチSwA,SwBの後述する機能診断時に使用されるスイッチである。
【0024】
また、負荷4の通常運転時には、各個別スイッチSwCa,SwCbは開とされ、機能診断を行うときのみ、機能診断対象となる切替スイッチSwA,SwB(以下、「診断対象スイッチ」ともいう)に対応する個別スイッチSwCa,SwCbが閉とされる。なお、機能診断における、各スイッチSwA,SwB,SwCa,SwCbの開閉動作の詳細については以下に詳述する。
【0025】
A2.切替スイッチの機能診断処理について:
次に、上記出力モジュール3の制御部6が実行する切替スイッチSwA,SwBの機能診断処理について、
図2~
図5を参照して説明する。
図3は、第1実施形態の出力モジュール3が実行する切替スイッチSwA,SwBの機能診断処理の流れを表すメインフローチャートである。
図4は、第1切替スイッチSwAの機能診断における詳細処理を示すフローチャートである。
図5は、第2切替スイッチSwBの機能診断における詳細処理を示すフローチャートである。
【0026】
PLC1の出力モジュール3では、機能安全の観点から、出力回路5が負荷4に対する動力を遮断するための能力、つまり出力回路5をオフするための能力が適切に機能しているかどうかを定期的に検証する出力診断を実行する。本実施形態では、この出力診断を、2つの切替スイッチSwA,SwBがそれぞれオフできることを順に確認することで行う。診断では、切替スイッチSwA,SwBが例えば接点の溶着等により閉状態で固着してしまい、オープン指令信号を受けても、クローズ状態のままになっており開制御が正常に機能しないという故障(以下「クローズ故障」ともいう。)を検出する。
【0027】
本実施形態では、負荷4へ電力供給を継続しつつ、各切替スイッチSwCa,SwCbの機能診断を実行する。
図3に示す機能診断フローが開始される前の、負荷4の通常運転状態における各スイッチSwA,SwB,SwCa,SwCbの開閉状態は、先に説明したように、
図2において「1.初期化」の横欄に示すように、第1切替スイッチSwAは閉、第2切替スイッチSwB、第1個別スイッチSwCa、および第2個別スイッチSwCbはいずれも開とされている。
【0028】
通常運転では、第1切替スイッチSwAのみが閉とされることで、出力回路5がオンされており、D/Aコンバータ11からの電源電圧Vaが負荷4に供給される。このとき、電流は、「D/Aコンバータ11→負荷4→第1切替スイッチSwA→第1抵抗器12」という経路で流れる。なお、D/Aコンバータ11の出力は、機能診断中を含む機能診断の前後において、オフであってもオンであってもどちらでもよい。本実施形態では、2つの切替スイッチSwA,SwBのうち、通常メインとして使用される第1切替スイッチSwAから、第1切替スイッチSwA、第2切替スイッチSwBの順で機能診断を行う。
【0029】
図3に示すように、機能診断処理が開始されると、まず、ステップ10(以下、ステップを「S」と省略する。)において、第1切替スイッチSwAのテスト(診断)準備が行われ、S20において、第1切替スイッチSwAの機能テストが実行される。次に、S30において、第2切替スイッチSwBのテスト準備が行われ、S40において、第2切替スイッチSwBの機能テストが実行される。なお、S20における第1切替スイッチSwAの機能テスト時には、第1切替スイッチSwAが「診断対象スイッチ」に相当し、S40における第2切替スイッチSwBの機能テスト時には、第2切替スイッチSwBが「診断対象スイッチ」に相当する。
【0030】
以下、機能診断処理についてさらに詳細に説明する。S10の第1切替スイッチSwAのテスト準備では、
図2において「2.SwAのテスト準備」の横欄に示すように、第1切替スイッチSwAが開とされ、第2切替スイッチSwBが閉とされる。なお、「1.初期化」から「2.SwAのテスト準備」の間には、ごく一時的に両方の切替スイッチSwA,SwBが閉とされる。「2.SwAのテスト準備」の処理において、第2切替スイッチSwBのみが閉とされることで、出力回路5はオンされた状態が維持されて、D/Aコンバータ11からの電源電圧Vaが負荷4に供給され続ける。このとき、電流は、「D/Aコンバータ11→負荷4→第2切替スイッチSwB→第2抵抗器13」という経路で流れる。
【0031】
次に、
図4を参照して、第1切替スイッチSwAの機能テストについて説明する。
図4に示すように、まず、S21において、第1個別スイッチSwCaが予め定められた一定時間だけ閉とされて、第1個別電源14からパルス状の電流(以下、「パルス電流」という)が入力される。このS21の処理の際、
図2において「3.SwAのOpen機能テスト」の横欄に示すように、第1切替スイッチSwAおよび第2個別スイッチSwCbが開であり、第2切替スイッチSwBおよび第1個別スイッチSwCaが閉となっている。
【0032】
第1個別電源14により入力されたパルス電流は、第1切替スイッチSwAが閉であれば、「第1個別スイッチSwCa→第1切替スイッチSwA→第1抵抗器12」という経路で流れる。なお、「パルス電流」は、「印加電流」に相当する。次に、S22において、パルス入力が見えないか否かが判断される。「パルス入力が見えないか否か」の判断は、より具体的には、第1抵抗器12によりリードバック信号として制御部6に与えられた機能診断用電圧Vbから電流値が演算されることにより、機能診断用電圧Vbに基づくパルス電流値がリードバック信号に表れているか否かを判断することにより行われる。
【0033】
ここで、通常運転におけるD/Aコンバータ11からの電圧により流れる電流値は4mA~20mA程度であるのに対して、個別電源14,15からの機能診断用電圧Vbにより流れる電流値は60mA程度と大きく設定されてる。このため、何らかの理由でメイン電流においてパルス電流が含まれた場合であっても、その電流値は機能診断用電圧Vbによる電流値よりも明らかに小さいため、機能診断による印加電流と混同されることがない。
【0034】
S22において、パルス入力が見えない場合(S22:YES)には、S23に進み、オープン機能が正常である、すなわち、第1切替スイッチSwAは「開制御が正常に機能している」と判断される。これは、第1切替スイッチSwAが正しく開となっていれば、第1個別電源14からのテスト用の印加電流(以下、「テスト電流」ともいう)は第1切替スイッチSwAおよび第1抵抗器12には流れず、パルス電流は見えない状態が正しく、リードバック信号の期待値と一致しているためである。
【0035】
一方、S22において、パルス入力が見える場合(S22:NO)には、S24に進み、クローズ故障である、すなわち、第1切替スイッチSwAは「開制御が正常に機能しない」と診断される。パルス入力が見えるということは、第1個別電源14からのテスト電流が第1切替スイッチSwAおよび第1抵抗器12を流れたことを意味し、第1切替スイッチSwAは、開指令を受けたにも関わらず開となっていないと考えられるためである。
【0036】
なお、このS24での判断に際して、第1抵抗器12が故障しており、正しい電流信号が送信されなかったということも可能性としては考えられ得る。しかし、機能診断が実行される直前の通常運転時において、第1抵抗器12によるリードバック機能は正常に使用されていたことが前提であり、また、上記構成をとる出力モジュール3において第1抵抗器12については独自の機能診断が別に行われていることが一般的である。その点、第1切替スイッチSwAのオープン機能テストは、本機能診断で始めて行うものであるため、故障の可能性としては、第1抵抗器12よりも第1切替スイッチSwAに起因するものである可能性が極めて高い。以上のことから、S24では、第1切替スイッチSwAはクローズ故障状態であると判断される。
【0037】
S23において、オープン機能が正常であると判断された後は、S25において、第1切替スイッチSwAにクローズ指令信号が与えられる。次に、S26において、再び第1個別電源14からパルス電流が入力される。このS26の処理の際、
図2において「4.SwAのClose機能テスト」の横欄に示すように、第1切替スイッチSwA、第2切替スイッチSwB、および第1個別スイッチSwCaが閉、第2個別スイッチSwCbが開となっている。
【0038】
次に、S27において、パルス入力が見えるか否かが判断される。S27において、パルス入力が見える場合(S27:YES)には、S28に進み、第1切替スイッチSwAは故障なし、すなわち、S23での開制御が正常であるともに第1切替スイッチSwAは「閉制御が正常に機能している」と判断される。これは、第1切替スイッチSwAが正しく閉となっていれば、第1個別電源14からのテスト電流は第1切替スイッチSwAおよび第1抵抗器12に流れて、パルス電流が見える状態が正しく、リードバック信号の期待値と一致しているためである。
【0039】
一方、S27において、パルス入力が見えない場合(S27:NO)には、S29に進み、第1抵抗器12が故障していると診断される。パルス入力が見えないということは、第1個別電源14からのテスト電流が第1切替スイッチSwAおよび第1抵抗器12を流れていないことを意味するため、第1抵抗器12からの電流信号が間違っていると考えられるためである。
【0040】
なお、このS29での判断に際して、第1抵抗器12の故障ではなく、第1切替スイッチSwAが正しく閉とならなかった、すなわち開状態で固着していること(「オープン故障」ともいう)が、可能性としては考えられ得る。しかし、機能診断が実行される直前の通常運転時において、第1切替スイッチSwAは閉状態で正常に使用されていたことが前提であるため、開状態での固着の可能性は極めて低い。
【0041】
また、機能安全の面では、機能診断開始後にたとえオープン故障が生じたとしても、クローズ故障が生じていないのであれば、緊急時のオフ機能は正しく行われるため、オープン故障の診断結果とするメリットが少ない。なお、第1切替スイッチSwAがオープン故障を生じた場合には、機能診断後に第1切替スイッチSwAを閉じ再び負荷4を通常運転させようとした際に、動力がオフとなり負荷4を駆動することができないため、このときに、明らかに第1切替スイッチSwAのオープン故障を検出することが可能である。
【0042】
また、S29での判断に際して、さらに別の可能性として、第1個別スイッチSwCaが正しく閉となっておらず、実際にテスト電流が流れていない可能性も考えられ得る。しかし、そもそも個別スイッチSwCa,SwCbは、切替スイッチSwA,SwBの機能診断時のみに開閉されるスイッチであり、切替スイッチSwA,SwBと比較すると使用頻度が低く、故障の可能性は極めて低い。
【0043】
本機能診断において、出力モジュール3を構成する各構成部材の故障の可能性および診断の優位性をまとめると、高いものから順に、
1.切替スイッチSwA,SwBのクローズ故障(開制御の異常)、
2.抵抗器12,13の電流信号の故障、
3.切替スイッチSwA,SwBのオープン故障(閉制御の異常)、
4.個別スイッチSwCa,SwCbの故障、
となっている。
【0044】
以上の基準から、本実施形態では、S29において、第1抵抗器12が故障しているものと判断される。S24、S28,S29の各診断がなされた後は、それぞれ本処理ルーチンを終了する。なお、S29の処理による第1抵抗器12の故障の場合には、別の機能診断により第1抵抗器12の機能を再度チェックし、ここで仮に第1抵抗器12が正常であるという判断が出た場合には、第1切替スイッチSwAのクローズ故障であると判断してもよい。
【0045】
以上のように、第1切替スイッチSwAの機能診断が終了したら、次に、上記第1切替スイッチSwAの機能診断と略同様にして第2切替スイッチSwBの機能診断が実行される。
図3に示すS30における第2切替スイッチSwBのテスト準備では、第2切替スイッチSwBが開とされる。なお、
図2において、第2切替スイッチSwBのテスト準備(S30)後の各スイッチSwA,SwB,SwCa,SwCbの開閉状態については省略しているが、第2切替スイッチSwBのテスト準備(S30)後には、第1切替スイッチSwAは閉、それ以外のスイッチは全て開とされている。
【0046】
第2切替スイッチSwBの機能診断が開始されると、
図5に示すように、まず、S41において、第2個別スイッチSwCbが閉とされて、第2個別電源15からパルス電流が入力される。このS41の処理の際、
図2において「5.SwBのOpen機能テスト」の横欄に示すように、第2切替スイッチSwBおよび第1個別スイッチSwCaが開であり、第1切替スイッチSwAおよび第2個別スイッチSwCbが閉となっている。
【0047】
入力されたパルス電流は、第2切替スイッチSwBが閉であれば、「第2個別スイッチSwCb→第2切替スイッチSwB→第2抵抗器13」という経路で流れる。次に、S42において、パルス入力が見えないか否かが判断される。S42において、パルス入力が見えない場合(S42:YES)には、S43に進み、オープン機能が正常である、すなわち、第2切替スイッチSwBは「開制御が正常に機能している」と判断される。これは、第2切替スイッチSwBが正しく開となっていれば、第2個別電源15からのテスト電流は第2切替スイッチSwBおよび第2抵抗器13には流れず、パルス電流は見えない状態が正しく、リードバック信号の期待値と一致しているためである。
【0048】
一方、S42において、パルス入力が見える場合(S42:NO)には、S44に進み、クローズ故障である、すなわち、第2切替スイッチSwBは「開制御が正常に機能しない」と診断される。パルス入力が見えるということは、第2個別電源15からのテスト電流が第2切替スイッチSwBおよび第2抵抗器13を流れたことを意味し、第2切替スイッチSwBは、開指令を受けたにも関わらず開となっていないと考えられるためである。
【0049】
なお、このS44での判断に際して、第2抵抗器13が故障しており、正しい電流信号が送信されなかったということも可能性としては考えられ得る。しかし、前述の第1切替スイッチSwAの機能診断において、メイン電流を負荷4に流すために第2切替スイッチSwBを閉としており、このときに第2抵抗器13のリードバック機能は正常に使用されていたことが前提である。その点、第2切替スイッチSwBのオープン機能テストは、本機能診断で始めて行うものであるため、故障の可能性としては、第2抵抗器13よりも第2切替スイッチSwBに起因するものである可能性が極めて高い。以上のことから、S44では、第2切替スイッチSwBはクローズ故障状態であると判断される。
【0050】
S43において、オープン機能が正常であると判断された後は、S45において、第2切替スイッチSwBにクローズ指令信号が与えられる。次に、S46において、再び第2個別電源15からパルス電流が入力される。このS46の処理の際、
図2において「6.SwBのClose機能テスト」の横欄に示すように、第1切替スイッチSwA、第2切替スイッチSwB、および第2個別スイッチSwCbが閉、第1個別スイッチSwCaが開となっている。
【0051】
次に、S47において、パルス入力が見えるか否かが判断される。S47において、パルス入力が見える場合(S47:YES)には、S48に進み、第2切替スイッチSwBは故障なし、すなわち、S43での開制御が正常であるともに第2切替スイッチSwBは「閉制御が正常に機能している」と判断される。これは、第2切替スイッチSwBが正しく閉となっていれば、第2個別電源15からのテスト電流は第2切替スイッチSwBおよび第2抵抗器13に流れて、パルス電流が見える状態が正しく、リードバック信号の期待値と一致しているためである。
【0052】
一方、S47において、パルス入力が見えない場合(S47:NO)には、S49に進み、第2抵抗器13が故障していると診断される。パルス入力が見えないということは、第2個別電源15からのテスト電流が第2切替スイッチSwBおよび第2抵抗器13を流れていないことを意味するため、第2抵抗器13からの電流信号が間違っていると考えられるためである。
【0053】
なお、このS49での判断に際して、第2抵抗器13の故障ではなく、第2切替スイッチSwBが正しく閉とならなかった、すなわち開状態で固着したオープン故障であることが、可能性としては考えられ得る。しかし、第1切替スイッチSwAの機能診断(
図4)において、第2切替スイッチSwBを閉状態とすることで負荷4が正常に稼働していたことが前提であるため、開状態での固着の可能性は極めて低い。
【0054】
また、第2個別スイッチSwCbが正しく閉となっておらず、実際に印加電流が流れていない可能性も考えられ得るが、この点については、上記詳述した故障の可能性および診断の優位性の観点から、可能性は極めて低い。以上のことから、本実施形態では、S49において、第2抵抗器13が故障しているものと判断される。S44、S48,S49の各診断がなされた後は、それぞれ本処理ルーチンを終了する。
【0055】
A3.効果:
(1)以上説明したように、上記第1実施形態のPLC1の出力モジュール3によれば、各切替スイッチSwA,SwBの機能診断に際して、診断対象ではない方の切替スイッチSwA,SwBは閉状態とされるため、負荷4への動力が遮断されることがない。また、診断時には、診断対象スイッチSwA,SwBに対応する個別電源14,15により機能診断用電圧Vbを印加することにより、診断対象スイッチをテスト電流が流れたか否かに基づいて行われるため、負荷4に電力を供給する主電源としてのD/Aコンバータ11の出力が0の場合でも、機能診断が可能である。すなわち、診断時に負荷4への動力が遮断されることなく、さらに、負荷4への出力が0の場合であっても、出力回路5をオフする能力を診断することができる。
【0056】
(2)上記第1実施形態では、各切替スイッチSwA,SwBの機能診断において、S29およびS49において、各抵抗器12,13の故障を判定するようにしている。すなわち、複数設けられた切替スイッチSwA,SwBの開閉パターンおよび機能診断用電圧Vbの印加パターンを設定することで、故障の可能性および診断の優位性に基づき、出力回路5のどこで故障したのかを把握すること、つまり故障箇所を特定することができる。
【0057】
(3)上記第1実施形態では、個別電源14,15からの機能診断用電圧Vbにより流れる電流値は、通常運転におけるD/Aコンバータ11からの電源電圧Vaにより流れる電流値よりも大きく設定されている。このため、診断時にメイン電流においてパルス電流的なものが仮に流れた場合であっても、その電流値は機能診断用電圧Vbによる電流値よりも明らかに小さいため、テスト用電流と混同されることがない。また、テスト電流が小さいと、例えば仮にメイン電流の逆流により、テスト電流が切替スイッチSwA,SwBとは反対側に吸われてしまった場合に、テスト電流の信号を検出できない可能性がある。その点、主電源としてのD/Aコンバータ11よりも大きな電流を個別電源14,15によって流すことで、上記の問題を回避できる。以上により、機能診断時におけるパルス入力が見えるか否かの判断(S22,S27、S42、S47)を容易かつ正確に行うことができる。
【0058】
(4)上記第1実施形態では、各個別電源14,15と各個別電源14,15に対応する各切替スイッチSwA,SwBとの間に、個別スイッチSwCa,SwCbを設けている。このため、機能診断用の電流を流すか否かを個別電源14,15の下流で切り替えることができるため、個別スイッチSwCa,SwCbを有さず常に電流が流れている場合と比較して、安定した電流制御を行うことができる。また、個別電源14,15の消費電力を極力抑制することができる。
【0059】
B.第2実施形態:
次に、本開示の第2実施形態について、
図6を参照して説明する。第2実施形態のPLC1の出力モジュール3は、電流検出部として第2抵抗器13を有さず、1つの抵抗器(第1抵抗器12)のみを有する点において、上記第1実施形態と異なっている。第2実施形態のPLC1の出力モジュール3におけるその他の構成は、第1実施形態のPLC1の出力モジュール3と同じであるので、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
図6に示すように、第1抵抗器12は、並列接続された各切替スイッチSwA,SwBの下流における並列接続の合流点P1とグランド(0V)との間に接続されている。第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様の機能診断処理が実行される。なお、第2実施形態では、S49の処理(
図5参照)において、「第2抵抗器」は「第1抵抗器」に置き換えて実行される。
【0061】
第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、「1.初期化」から「2.SwAのテスト準備」の間には、一時的に両方の切替スイッチSwA,SwBが閉とされる。このとき、電源電圧Vaにより負荷4に流れる電流は、「D/Aコンバータ11→負荷4→第1切替スイッチSwAおよび第2切替スイッチSwB→第1抵抗器12」という経路で流れる。
【0062】
第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第2実施形態によれば、「1.初期化」から「2.SwAのテスト準備」の間において負荷4に流れる電流を測定する際に、第1抵抗器12から一つのリードバック信号を検出することで演算できるため、複数の抵抗器から複数のリードバック信号を検出して演算する場合と比較して、演算処理が容易であり、かつ精度良く電流値を算出することができる。また、出力モジュール3において、構成部材点数を削減でき、装置構成を容易にすることができる。
【0063】
C.他の実施形態:
(C1)上記第1実施形態では、第1切替スイッチSwAから順に機能診断を行ったが、第2切替スイッチSwBの機能診断を先に行ってもよい。また、各切替スイッチSwA,SwBの機能診断において、Open機能テストを先に実行したが、Close機能テストを先に実行してもよい。
【0064】
(C2)上記第1実施形態では、各切替スイッチSwA,SwB、各抵抗器12,13、各個別電源14,15、および各個別スイッチSwCa,SwCbは、いずれも負荷4の下流側に設けたが、上流側、すなわちD/Aコンバータ11と負荷4との間に設けてもよい。
【0065】
(C3)上記第1実施形態では、D/Aコンバータ11をメインの主電源とし、出力モジュール3内に設けたが、これに代えて、出力モジュール3の外部に設けられる別電源を負荷4の上流に接続するようにしてもよい。
【0066】
(C4)上記第1実施形態では、切替スイッチSwA,SwBを2つ設けたが、切替スイッチの数は、3つ以上の複数であってもよい。切替スイッチが3つ以上の場合の機能診断では、診断対象スイッチとは別の少なくとも一つの任意の切替スイッチを閉状態とすることで実行できる。また、出力モジュール3において、制御部6を複数設けてもよい。
【0067】
(C5)上記第1実施形態では、第1切替スイッチSwAを、負荷4の通常運転時に出力回路5をオンとするために用いるメインのスイッチとしたが、必ずしも1つの切替スイッチをメインとして使用する必要はない。例えば、複数の切替スイッチを、通常運転時に交替で用いるようにしてもよい。
【0068】
(C6)上記第1実施形態において、各個別スイッチSwCa,SwCbを設けなくてもよい。この場合、個別電源14,15自体をオフからオンへとスイッチングすることにより、機能診断用の電流を流すようにしてもよい。また、テスト用の印加電流は、パルス電流でなくてもよい。
【0069】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…PLC、2…CPUモジュール、3…出力モジュール、4…負荷、5…出力回路、6…制御部、7…第1接続端子、8…第2接続端子、11…D/Aコンバータ、12…第1抵抗器(電流検出抵抗器)、13…第2抵抗器(電流検出抵抗器)、14…第1個別電源、15…第2個別電源、16…第1ダイオード、17…第2ダイオード、P…分岐点、P1…合流点、SwA…第1切替スイッチ、SwB…第2切替スイッチ、SwCa…第1個別スイッチ、SwCb…第2個別スイッチ、Va…電源電圧、Vb…機能診断用電圧