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特開2023-34041ソーラーシェアリングにおける作物栽培方法及びソーラーシェアリング用作物栽培ハウス
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  • 特開-ソーラーシェアリングにおける作物栽培方法及びソーラーシェアリング用作物栽培ハウス 図1
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  • 特開-ソーラーシェアリングにおける作物栽培方法及びソーラーシェアリング用作物栽培ハウス 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034041
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ソーラーシェアリングにおける作物栽培方法及びソーラーシェアリング用作物栽培ハウス
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/22 20060101AFI20230306BHJP
   A01G 9/20 20060101ALI20230306BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A01G9/22
A01G9/20 B
A01G7/00 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140102
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】518204453
【氏名又は名称】ネクストイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健男
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
【Fターム(参考)】
2B022DA01
2B022DA05
2B029AA02
2B029KB01
2B029KB05
2B029KB10
2B029LA03
2B029MA01
(57)【要約】
【課題】
作物の栽培面積を広く確保するだけでなく、太陽光発電パネルの下側の栽培空間の温度上昇を抑えこともできるソーラーシェアリングにおける作物栽培方法を提供する。
【解決手段】
複数枚の太陽光発電パネルを列状に並べて構成される太陽光発電パネル列10を、前記列に垂直な方向に隙間を隔てながら繰り返し配置し、太陽光発電パネルの下側の栽培空間αで作物1を栽培するソーラーシェアリングにおける作物栽培方法において、隣り合う太陽光発電パネル列10の隙間を、少なくともその上面が光反射素材で形成された隙間用屋根材30で覆い、前記隙間に到達した太陽光が、隙間用屋根材30の上面で反射して太陽光発電パネルの受光面に入射するようにした。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の太陽光発電パネルを列状に並べて構成される太陽光発電パネル列を、前記列に垂直な方向に隙間を隔てながら繰り返し配置し、
太陽光発電パネルの下側の栽培空間で作物を栽培するソーラーシェアリングにおける作物栽培方法であって、
隣り合う太陽光発電パネル列の隙間を、少なくともその上面が光反射素材で形成された隙間用屋根材で覆い、
前記隙間に到達した太陽光が、隙間用屋根材の上面で反射して太陽光発電パネルの受光面に入射するようにした
ことを特徴とするソーラーシェアリングにおける作物栽培方法。
【請求項2】
太陽光発電パネルを、水平面に対して傾斜させ、
隙間用屋根材を、水平面に対して太陽光発電パネルとは逆向きに傾斜させる
請求項1記載のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法。
【請求項3】
隙間用屋根材として、通気部と非通気部とが繰り返し形成され、その非通気部が光反射素材で形成された光反射部とされたものを用いる請求項1又は2記載のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法。
【請求項4】
隙間用屋根材として、遮光ネットに光反射性を有する金属テープ又は金属フィルムを取り付けたものを用いる請求項3記載のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法。
【請求項5】
複数枚の太陽光発電パネルを列状に並べて構成される太陽光発電パネル列が、前記列に垂直な方向に隙間を隔てながら繰り返し配置され、
太陽光発電パネルの下側の栽培空間で作物を栽培するソーラーシェアリング用作物栽培ハウスであって、
隣り合う太陽光発電パネル列の隙間が、少なくともその上面が光反射素材で形成された隙間用屋根材で覆われ、
前記隙間に到達した太陽光が、隙間用屋根材の上面で反射して太陽光発電パネルの受光面に入射するようにした
ことを特徴とするソーラーシェアリング用作物栽培ハウス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農地で作物を栽培しながら、その農地で太陽光発電を行うソーラーシェアリングにおける作物栽培方法と、この作物栽培方法に好適に用いることができるソーラーシェアリング用作物栽培ハウスとに関する。
【背景技術】
【0002】
農地に設置した架台上に太陽光発電パネルを設置し、その太陽光発電パネルの下側の地面で作物を栽培するソーラーシェアリングは、架台の設置が農地転用に当たるとして、かつては認められていなかった。しかし、近年、農林水産省が農地転用の規制を緩めたことに伴い、ソーラーシェアリングを行う農家が増えつつある。このソーラーシェアリングにより、農地の収益性が高まり、農業に従事する人の減少や、耕作放棄地の増加に歯止めがかかることが期待されている。
【0003】
しかし、太陽光発電においては、複数枚の太陽光発電パネルを列状に並べて構成される太陽光発電パネル列を、その列に垂直な方向に隙間を隔てた状態で繰り返し配置することが一般的である。このため、太陽光発電パネルの下側の地面には、太陽光発電パネル列の影が縞状に形成され、強く光が当たる部分と、殆ど光が当たらない部分とができる。また、太陽光発電パネル列の下側の地面には、雨が殆ど当たらないものの、太陽光発電パネル列の隙間の下側の地面には、雨がよく当たる。したがって、作物の成長具合に大きな差が生ずるおそれがある。このため、従来のソーラーシェアリングでは、太陽光発電パネルの下側のスペースでしか作物を栽培することができず(隣り合う太陽光発電パネル列の隙間となる箇所では作物を栽培することができず)、栽培面積を広く確保できないという問題があった。
【0004】
このような実状に鑑みて、本出願人は、隣り合う太陽光発電パネル列の隙間を屋根材で覆うことを考えた(例えば、特許文献1の図1における、隣り合う太陽光発電パネル列10の隙間に設けられた屋根用面材30を参照。)。これにより、太陽光発電パネルの下側のスペースと、隣り合う太陽光発電パネル列の隙間の下側となる箇所とにおいて、日照条件や降水条件を均一化し、その栽培空間で作物を均一に成長させることができる。したがって、作物の栽培面積を広く確保することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-010632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、隣り合う太陽光発電パネル列の隙間を屋根材で覆うと、屋根材が太陽光を吸収して高温になり、その屋根材からの輻射熱で栽培空間の温度が高くなるという欠点があった。このため、夏等の暑い時期には、栽培空間で人が作業しにくくなるという問題がある。また、屋根材の施工にはコストがかかるところ、その屋根材を、日除けや雨除けとして利用するだけでなく、その屋根材に他の機能を追加して、さらなる経済性を追求したいという要望もあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、作物の栽培面積を広く確保するだけでなく、太陽光発電パネルの下側の栽培空間の温度上昇を抑えこともできるソーラーシェアリングにおける作物栽培方法を提供するものである。また、隣り合う太陽光発電パネル列の隙間の覆う屋根材を有効に活用して、太陽光発電パネルによる発電量を増大させることもできるソーラーシェアリングにおける作物栽培方法を提供することも本発明の目的である。さらに、これらの作物栽培方法で好適に用いることができるソーラーシェアリング用作物栽培ハウスを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
複数枚の太陽光発電パネルを列状に並べて構成される太陽光発電パネル列を、前記列に垂直な方向に隙間を隔てながら繰り返し配置し、
太陽光発電パネルの下側の栽培空間で作物を栽培するソーラーシェアリングにおける作物栽培方法であって、
隣り合う太陽光発電パネル列の隙間を、少なくともその上面が光反射素材で形成された隙間用屋根材で覆い、
前記隙間に到達した太陽光が、隙間用屋根材の上面で反射して太陽光発電パネルの受光面に入射するようにした
ことを特徴とするソーラーシェアリングにおける作物栽培方法
を提供することによって解決される。
【0009】
本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法では、隣り合う太陽光発電パネル列の隙間を隙間用屋根材で覆うため、太陽光発電パネルの下側のスペースと、隣り合う太陽光発電パネル列の隙間の下側となる箇所とにおいて、日照条件や降水条件を均一化し、その栽培空間で作物を均一に成長させることができる。したがって、作物の栽培面積を広く確保することが可能になる。
【0010】
また、本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培では、隙間用屋根材の上面を光反射素材で形成し、隣り合う太陽光発電パネル列の隙間に到達した太陽光が、隙間用屋根材の上面で反射して太陽光発電パネルの受光面に入射するようにしている。このため、それぞれの太陽光発電パネルの受光量を増大させ、それぞれの太陽光発電パネルの発電量を増大させることができる。また、太陽光の熱を隙間用屋根材で反射し、栽培空間の温度が上昇しにくくすることもできる。
【0011】
本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培においては、
太陽光発電パネルを、水平面に対して傾斜させ、
隙間用屋根材を、水平面に対して太陽光発電パネルとは逆向きに傾斜させる
ことが好ましい。
これにより、隙間用屋根材の上面に到達した光が太陽光発電パネルにさらに入射しやすくして、太陽光発電パネルの発電量をさらに増大させることが可能になる。
【0012】
本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培において、隙間用屋根材は、少なくともその上面が光反射素材で形成されたものであれば、特に限定されないが、通気部と非通気部とが繰り返し形成され、その非通気部が光反射素材で形成された光反射部とされたものを用いることが好ましい。例えば、遮光ネットに光反射性を有する金属テープ又は金属フィルムを取り付けたものを隙間用屋根材として好適に用いることができる。このように、隙間用屋根材に通気部を設けることで、隙間用屋根材を通じて、作物の栽培空間に外気が導入することができる。したがって、栽培空間の温度上昇をさらに抑えやすくして、栽培空間を涼しく保ちやすくなる。
【0013】
本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培においては、栽培空間(太陽光発電パネル及び隙間用屋根材の下側の空間)で栽培される作物に補助光を照射するための照明装置を、栽培空間に設けることもできる。これにより、栽培空間において、光飽和点が低い作物(レタスやキノコ類等)だけでなく、光飽和点が高い作物(トマト等)を栽培することも可能になる。したがって、ソーラーシェアリングでありながら、幅広い種類の作物を栽培することが可能になる。
【0014】
本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法において、上記の照明装置を採用する場合には、照明装置を、光源に発光ダイオード(LED)を用いたものとすることも好ましい。これにより、照明装置を長寿命なものとして、光源の交換頻度を減らし、照明装置のメンテナンスコストを抑えることが可能になる。また、照明装置を省電力のものとして、電気代を抑えることも可能になる。また、照明装置60に、光導管を用いることも好ましい。これにより、効率的に配光を行い、照明装置をより省電力化することができる。
【0015】
本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法において、上記の照明装置を採用する場合には、照明装置を、三原色の光源が組み合わされて、それぞれの色の光源の照度を独立して制御することが可能なものとし、調光手段を、照明装置の光源の照度を色ごとに調節するものとすることも好ましい。これにより、照明装置から照射される光の色を、例えば、朝の光と昼の光とで変化させるといったこと等ができるようになり、作物の育成スピードをより厳密に管理することが可能になる。
【0016】
また、本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法では、栽培空間の側方を壁用面材で囲うこともできる。これにより、屋外設備でありながら、栽培空間を外部から閉鎖された状態とし、工場栽培のような管理栽培を行うこと(ソーラーシェアリングの栽培工場化)が可能になる。それにもかかわらず、設備としては、非常に簡素で導入コストやランニングコストが安いため、小規模な農地でも採算をとることができる。したがって、一般的な農家でも導入することが可能である。加えて、大雨や強風による作物への被害を防ぎ、作物の収量を安定させることも可能である。
【0017】
さらに、本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法では、むき出しの地面で作物を栽培する(培地として土壌を利用する)こともできる。このため、培地として土壌を利用することに慣れている一般的な農家がそれまでの経験で得た知識を活用することができる。したがって、栽培工場化されたソーラーシェアリングの導入に対する農家の心理的な負担を軽減することも可能になる。
【0018】
本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法において、壁用面材は、面状(板状又はシート状等)の部材であれば特に限定されない。例えば、半透明のナミイタ等、光を拡散する面材(光拡散面材)を用いると、壁用面材に当たった太陽の光を拡散しながら栽培空間に導き入れることが可能になり、栽培空間を柔らかな光で均一に照射することが可能になる。また、壁用面材として、透明なアクリル板やビニールシート等、それに当たった光の大部分を透過する面材(透光面材)を用いると、栽培空間に多くの光を導き入れることが可能になる。さらに、壁用面材として、遮光プレートや遮光シートや遮光ネット等、光を遮る面材(遮光面材)を用いると、照明装置からの光のみで作物を栽培することが可能になる。
【0019】
しかし、壁用面材は、上記の隙間用屋根材と同様、少なくともその外面が光反射素材で形成されたものを用いることが好ましい。これにより、太陽光の熱を壁用面材で反射し、栽培空間の温度が上昇しにくくすることができる。この場合において、壁用面材として、通気部と非通気部とが繰り返し形成され、その非通気部が光反射素材で形成された光反射部とされたもの(例えば、遮光ネットに光反射性を有する金属テープ又は金属フィルムを取り付けたもの)を用いることが好ましい点についても、上記の隙間用屋根材と同様である。
【0020】
本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法においては、栽培空間で栽培される作物に水を供給するための潅水手段を設けることも好ましい。というのも、本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法のように、隣り合う太陽光発電パネル列の隙間を隙間用屋根材で覆うと、栽培空間には雨が降り注がない状態となる。この点、栽培空間に潅水手段を設けることで、作物に水を供給するだけでなく、作物に供給する水の量を厳密に管理することも可能になるからである。
【0021】
本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法においては、栽培空間の温度又は湿度を調節するための空調手段を設けることも好ましい。というのも、本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法では、隙間用屋根材と壁用面材とで栽培空間を閉鎖した状態にする場合もあるところ、この場合において、栽培空間に空調手段を設けることで、栽培空間の温度や湿度を厳密に管理することが可能になるからである。この構成は、季節作物を本来の収穫期とは異なる時期に収穫する場合に特に好適に採用することができる。
【0022】
本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法(特に、上記の照明装置を設置する場合)においては、太陽光発電パネルが発電した電力を蓄えるためのバッテリーを設けることも好ましい。これにより、照明装置から作物に照射される補助照明の電力をピークシフトするだけでなく、電気代を安く抑えることも可能になる。例えば、太陽が出ている間は、照明装置をオフにするか暗くするかして、作物に照射される光が主に隙間用屋根材等を透過してくる光となるようにするとともに、日没からの数時間を、バッテリーに蓄えられた電力で照明装置が明るく点灯するようにすることもできる。日没から数時間も経過すると、商用電力は割安な深夜料金となるため、深夜料金となる時間に、照明装置の駆動電力を商用電力に切り替えることで、電気代を抑えながら最大で24時間作物に光を照射することができる。このとき、作物に光を照射する時間帯や光量をコントロールすると、作物の育成スピードを管理して、作物の市場への出荷時期をコントロールできるようになり、よりアクティブな農業を実現することが可能になる。この構成は、将来的に、太陽光発電の売電価格が買電価格を下回った場合や、太陽光発電設備の償却が終わった場合に好適に採用することができる。
【0023】
また、上記課題は、
複数枚の太陽光発電パネルを列状に並べて構成される太陽光発電パネル列が、前記列に垂直な方向に隙間を隔てながら繰り返し配置され、
太陽光発電パネルの下側の栽培空間で作物を栽培するソーラーシェアリング用作物栽培ハウスであって、
隣り合う太陽光発電パネル列の隙間が、少なくともその上面が光反射素材で形成された隙間用屋根材で覆われ、
前記隙間に到達した太陽光が、隙間用屋根材の上面で反射して太陽光発電パネルの受光面に入射するようにした
ことを特徴とするソーラーシェアリング用作物栽培ハウス
を提供することによっても解決される。
このソーラーシェアリング用作物栽培ハウスは、上記のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法において好適に用いることができるものとなっている。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によって、作物の栽培面積を広く確保するだけでなく、太陽光発電パネルの下側の栽培空間の温度上昇を抑えこともできるソーラーシェアリングにおける作物栽培方法を提供することが可能になる。また、隣り合う太陽光発電パネル列の隙間の覆う屋根材を有効に活用して、太陽光発電パネルによる発電量を増大できるソーラーシェアリングにおける作物栽培方法を提供することも可能になる。さらに、これらの作物栽培方法で好適に用いることができるソーラーシェアリング用作物栽培ハウスを提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法で作物を栽培している様子を示した図である。
図2】隣り合う太陽光発電パネル列の隙間に到達した太陽光が、隙間用屋根材の上面で反射して太陽光発電パネルの受光面に入射している様子を示した図である。
図3】隙間用屋根材を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる構成は、飽くまで好適な一実施態様に過ぎず、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更することができる。図1は、本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法で作物1を栽培している様子を示した図である。
【0027】
本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法は、図1に示すように、地面2から所定の高さに支持された複数の太陽光発電パネル列10の下側におけるむき出しの地面2で作物1を栽培するものとなっている。それぞれの太陽光発電パネル列10は、複数枚の太陽光発電パネルを横方向(図1の紙面に垂直な方向)や縦方向(図1の太陽光発電パネル列10の傾斜に沿った方向)に並べて構成されている。本実施形態においては、上下方向に立てた複数本の支柱21や複数本の桟22等の構造材を組み合わせることにより構成した架台20の上側に、太陽光発電パネル列10を設置している。
【0028】
太陽光発電パネル列10は、それを構成する太陽光発電パネルの受光面(上面)が水平となる状態で配してもよいが、本発明のソーラーシェアリングに係る設備を北半球に設置する場合には、通常、太陽光発電パネルの受光面(上面)が南向きに傾斜される。一方、設備を南半球に設置する場合には、通常、太陽光発電パネルの受光面(上面)が北向きに傾斜される。これにより、太陽3からの光が太陽光発電パネル列10を構成するそれぞれの太陽光発電パネルの受光面(上面)に垂直に近い角度で入射するようにして、太陽光発電パネルの発電量を増大させることができる。また、太陽光発電パネルの受光面(上面)を雨水が流れ落ちやすくして、太陽光発電パネルの表面にゴミ等が付着しにくくすることも可能になる。太陽光発電パネルの受光面(上面)の傾斜角度θ(後掲する図2を参照。)は、設備を設置する場所の緯度等によっても異なるが、日本においては、概ね10~40°の範囲とされる。
【0029】
それぞれの太陽光発電パネル列10は、後側(北側)の太陽光発電パネル列10の受光面(上面)に、前側(南側)の太陽光発電パネル列10の影が形成されないように、前後方向(南北方向)に隣り合う太陽光発電パネル列10の間には、隙間(幅Wで示される隙間)が設けられる。前後方向に隣り合う太陽光発電パネル列10の隙間の幅Wは、太陽光発電パネルの受光面(上面)の傾斜角度θ図2)によっても異なる。すなわち、傾斜角度θが小さい場合(0°に近い場合)には、前後方向に隣り合う太陽光発電パネル列10の隙間の幅Wを狭くすることができ、傾斜角度θが大きい場合(90°に近い場合)には、前後方向に隣り合う太陽光発電パネル列10の隙間の幅Wを広くする必要が生じる。本実施形態において、前後方向に隣り合う太陽光発電パネル列10の隙間の幅Wは、それぞれの太陽光発電パネル列10の前後方向の幅Wと略等しくしている。
【0030】
前後方向に隣り合う太陽光発電パネル列10の隙間は、隙間用屋根材30で覆われて塞がれている。このため、作物1を栽培する栽培空間αの上方は、この隙間用屋根材30と、太陽光発電パネル列10を構成する太陽光発電パネルとによって覆われた状態となっている。これにより、太陽光発電パネル列10の下側のスペースと、隣り合う太陽光発電パネル列の隙間の下側となる箇所とにおいて、日照条件や降水条件を均一化することができる。このため、太陽光発電パネル列10の下側のスペースだけでなく、隣り合う太陽光発電パネル列の隙間の下側となる箇所でも、作物1を栽培できるようになり、作物1の栽培面積を広く確保することができる。
【0031】
本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法では、この隙間用屋根材30として、少なくともその上面が光反射性で形成されたものを用いる。これにより、図2に示すように、隣り合う太陽光発電パネル列10の隙間に到達した太陽光を、隙間用屋根材30の上面で反射させ、太陽光発電パネル列10を構成する太陽光発電パネルの受光面(上面)に入射させることができる。図2は、隣り合う太陽光発電パネル列10の隙間に到達した太陽光が、隙間用屋根材30の上面で反射して太陽光発電パネルの受光面に入射している様子を示した図である。
【0032】
これにより、太陽光発電パネル列10を構成するそれぞれの太陽光発電パネルの受光量を増大させ、太陽光発電パネルの発電量を増大させることができる。また、太陽光の熱を隙間用屋根材30で反射し、栽培空間αの温度が上昇しにくくすることもできる。本実施形態においては、それぞれの隙間用屋根材30を、太陽光発電パネル列10を構成する太陽光発電パネルとは逆向き(北向き)に傾斜させている。これにより、隙間用屋根材30の上面に到達した太陽光が太陽光発電パネルに入射しやすくなる。また、隙間用屋根材30に落ちた雨水が隙間用屋根材30の上面を流れ落ちるようになる。隙間用屋根材30と太陽光発電パネル列10とが落ち込む境界部分には、雨樋40を設けており、隙間用屋根材30や太陽光発電パネル列10から流れ落ちる雨水をこの雨樋40で受けることができるようにしている。雨樋40に落ちた雨水は、図示省略の雨水貯留槽に流れ込むようになっている。
【0033】
隙間用屋根材30の水平面に対する傾斜角度θ図2)は、特に限定されない。しかし、隙間用屋根材30の傾斜角度θを小さくしずぎる(0°に近づけすぎる)と、隙間用屋根材30の上面に当たった太陽光が上方に反射されやすくなり、太陽光発電パネルの受光面(上面)に入射しにくくなるおそれがある。このため、隙間用屋根材30の傾斜角度θは、10°以上とすることが好ましい。隙間用屋根材30の傾斜角度θは、20°以上とすることがより好ましく、30°以上とすることがさらに好ましい。
【0034】
ただし、隙間用屋根材30の傾斜角度θを大きくしすぎる(90°に近づけすぎる)と、太陽光が隙間用屋根材30の上面に当たりにくくなる。また、隣り合う太陽光発電パネル列10の隙間の幅W図1)が狭くなり、太陽光発電パネルの受光面(上面)に日影が形成されやすくなる。このため、隙間用屋根材30の傾斜角度θは、60°以下とすることが好ましい。隙間用屋根材30の傾斜角度θは、50°以下とすることがより好ましく、40°以下とすることがさらに好ましい。隙間用屋根材30の傾斜角度θは、θ+θが45°以上135°以下となる範囲で決定すると好適である。
【0035】
隙間用屋根材30は、少なくともその上面が光反射素材で形成されたものであれば、特に限定されない。本実施形態においては、図3に示すように、隙間用屋根材30として、通気部30bと非通気部30aとが繰り返し形成され、その非通気部30aが光反射素材で形成された光反射部となるものを用いている。図3は、隙間用屋根材30を拡大して示した図である。本実施形態においては、光反射性を有する金属テープ32を、遮光ネット31に所定の隙間を開けながら繰り返し貼り付けたものを隙間用屋根材30として用いている。光反射部を形成する金属テープ32としては、テープ基材に、アルミニウムを蒸着したものを用いている。これにより、隙間用屋根材30を、遮光性や光反射性だけでなく、通気性を有するものとすることができる。このため、隙間用屋根材30の通気部30bを通じて、栽培空間αに外気を導入することができる。したがって、栽培空間αの温度上昇をさらに抑えやすくなる。
【0036】
ところで、本実施形態においては、図1に示すように、栽培空間αの側方を壁用面材50で覆っている。図1においては、西側を覆う壁用面材50(図1の紙面奥側に位置する壁用面材50(同図において網掛けハッチングで示した部分))のみを図示しているが、栽培空間αの東側(図1の紙面手前側)や、栽培空間αの南側(図1の紙面の左側)や、栽培空間αの北側(図1の紙面の右側)等も、同様に壁用面材50で覆っている。このため、栽培空間αは、その周囲を壁用面材50で囲まれた状態となっている。壁用面材50は、面状(板状又はシート状等)の部材であれば特に限定されないが、本実施形態においては、隙間用屋根材30と同じ素材(その外面を光反射素材で形成した面材であって、通気部と非通気部とを繰り返し設けたもの)で壁用面材50を形成している。これにより、太陽光の熱を壁用面材50で反射させ、栽培空間αの温度上昇を抑えるだけでなく、壁用面材50の通気部を通じて栽培空間αに外気を導入することも可能になる。したがって、栽培空間αをより涼しく保つことが可能になる。
【0037】
また、栽培空間αには、図1に示すように、複数の照明装置60を設けることもできる。一般的なソーラーシェアリングでは、栽培する作物1が光飽和点の低いものに制限されるところ、照明装置60からの光(補助光)を作物1に照射することで、光飽和点が高い作物1を栽培することも可能になる。照明装置60は、白熱電球や蛍光灯を用いてもよいが、寿命や省電力等を考慮すると、発光ダイオード(LED)を光源とするものを用いることが好ましい。この場合には、照明装置60を、赤色の発光ダイオードと、青色の発光ダイオードと、緑色の発光ダイオードとが組み合わされたものとすることもできる。この照明装置60は、各色の発光ダイオードの照度を独立して制御することができ、朝の光や昼の光等の微妙な変化を再現することができるものとなっている。したがって、作物1の育成スピードを厳密に管理することが可能となっている。照明装置60には、光導管を用いることも好ましい。これにより、効率的に配光を行い、照明装置60をより省電力化することができる。
【0038】
照明装置60は、専ら商用電源により点灯されるようにしてもよいが、将来的に、太陽光発電の売電価格が買電価格を下回った場合や、太陽光発電設備の償却が終わった場合には、太陽光発電パネル列10が発電した電力をできるだけ用いるようにした方が経済的である。ただし、太陽光発電パネル列10が発電した電力を逐次的に用いるようにすると、太陽光発電パネル列10が発電している間(太陽3が出ている間)しか照明装置60を点灯することができない。このため、本実施形態においては、太陽光発電パネル列10が発電した電力を、図示省略のバッテリーに蓄えることができるようにするとともに、このバッテリーに蓄えた電力を適宜用いることで、照明装置60を点灯するようにしている。これにより、照明装置60から作物1に照射される補助照明の電力をピークシフトするだけでなく、電気代を安く抑えることもできるようにしている。
【0039】
具体的には、太陽3が出ている間は、照明装置60を消灯(若しくは低めの照度で点灯)し、作物1に照射される光が主に隙間用屋根材30や壁用面材50を透過してくる光となるようにするとともに、日没からの数時間を、上記のバッテリーに蓄えられた電力で照明装置60が点灯(若しくは太陽3が出ているときよりも高めの照度で点灯)するようにするようにし、商用電源の電気代が割安な深夜料金となる時間帯になると、照明装置60の駆動電力を商用電源に切り替えるようにしている。このような照明装置60の駆動電力の切り替えや、照明装置60の照度の制御は、図示省略のコントローラによって行われる。照明装置60を、上記のように複数色の発光ダイオードの照度を独立して制御できるものとした場合における各色の発光ダイオードの照度の制御もこのコントローラによって行われる。これにより、作物1の育成スピードを管理して、作物1の市場への出荷時期をコントロールしやすくなり、よりアクティブな農業を実現することが可能になる。
【0040】
上記のコントローラは、予め定められた時間に応じて、照明装置60の駆動電力の切り替えや、照度の制御を行うものとしてもよい。しかし、日の出の時間や日没の時間は、季節や場所によって変化する。また、時間に基づく制御のみでは、曇りや雨等の日照不足の状態を判別することができず、その結果、作物1への光が不足する虞もある。この点、栽培空間αの照度を検出するための照度検出手段(図示省略)を設けて、この照度検出手段が検出した栽培空間αの照度に応じて照明装置60の切り替えや照度を制御するようにすることもできる。これにより、作物1へ照射される光の量をより厳密に制御することが可能になる。
【0041】
ところで、本実施形態の作物栽培方法では、栽培空間αが太陽光発電パネル列10や隙間用屋根材30や壁用面材50で閉鎖された状態となるため、栽培空間αに雨水が降り注がない状態となっており、そのままでは、作物1に十分な水分を供給できない状態となっている。このため、成長に水分をあまり必要としない一部の作物1を栽培する場合を除いて、人工的に潅水を行う必要がある。したがって、本実施形態においては、栽培空間αで栽培される作物1に水4を供給するための潅水手段70を設けている。これにより、作物1に水を供給するだけでなく、その水の量を厳密に管理することも可能となっている。潅水手段70は、専ら水道水を利用するものであってもよいが、上述した雨水貯留槽に蓄えられた雨水を利用することや、井戸水を利用することで、水道水を節約することが可能になる。
【0042】
また、栽培空間αに図示省略の空調手段を設けることで、栽培空間αの温度や湿度を調節することも可能である。これにより、作物1の育成スピードをより管理しやすくなる。将来的に、太陽光発電の売電価格が買電価格を下回った場合や、太陽光発電設備の償却が終わった場合には、上記の照明装置60と同様、この空調手段を、太陽光発電パネル列10が発電した電力で駆動するようにすると、電気代を節約することができる。
【0043】
以上で説明した本発明のソーラーシェアリングにおける作物栽培方法では、各種の作物を栽培することが可能である。椎茸やキノコやレタス等、光飽和点が低い作物だけでなく、トマト等、光飽和点が高い作物を栽培することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 作物
2 地面
3 太陽
4 水
10 太陽光発電パネル群
20 架台
21 支柱
22 桟
30 隙間用屋根材
30a 非通気部
30b 通気部
31 遮光ネット
32 金属テープ(又は金属フィルム)
40 雨樋
50 壁用面材
60 照明装置
70 潅水手段
α 栽培空間
θ 太陽光発電パネルの受光面(上面)の傾斜角度
θ 隙間用屋根材の傾斜角度
図1
図2
図3