(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003405
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】仏衣用飾り襟及び仏衣用飾り襟の装着方法
(51)【国際特許分類】
A41D 1/00 20180101AFI20221228BHJP
A47G 33/00 20060101ALI20221228BHJP
A41D 27/18 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
A41D1/00 101C
A47G33/00 Q
A41D27/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099950
(22)【出願日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2021103709
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594068619
【氏名又は名称】大栄繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085246
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 清一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智美
【テーマコード(参考)】
3B030
3B035
【Fターム(参考)】
3B030BA07
3B030BB03
3B030BB04
3B030BC04
3B035AA11
3B035AB07
3B035AB20
3B035AC19
3B035AC21
3B035AC22
3B035AC24
3B035AD03
3B035AD04
3B035AD06
3B035AD13
3B035AD17
3B035AD18
3B035AD19
3B035AD20
(57)【要約】
【課題】故人の年齢や性別に関わらず個人を個性的に表現できる仏衣用飾り襟を提供する。
【解決手段】半襟部形成と伊達襟部形成に兼用して用いることのできる仏衣用飾り襟である。帯状を呈する襟本体2を具え、襟本体2の全長は、伊達襟部3を構成できる長さに設定されている。襟本体2は、その幅方向の所要部位を折り曲げ部として襟本体2の延長方向に折り曲げることができる。襟本体2の表面部5と裏面部6の夫々は、その長手中央線の両側の区画部分7,7が、所要の意匠が施された装飾面部9とされている。これら四つの装飾面部9a,9b,9c,9dの意匠は別異である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仏衣とは別体である仏衣用飾り襟であって、帯状を呈する襟本体を有し、該襟本体は、その幅方向の所要部位を折り曲げ部として該襟本体の延長方向に折り曲げることが可能となされており、前記襟本体の表面部と裏面部の夫々は、その長手方向線の両側の区画部分が、所要の意匠が施された装飾面部とされており、これら四つの装飾面部の意匠が別異であることを特徴とする仏衣用飾り襟。
【請求項2】
仏衣とは別体であり、少なくとも半襟部を形成するために用いることのできる仏衣用飾り襟であって、帯状を呈する襟本体を有し、該襟本体は、その幅方向の所要部位を折り曲げ部として該襟本体の延長方向に折り曲げることが可能となされており、前記襟本体の表面部と裏面部の夫々は、その長手方向線の両側の区画部分が、所要の意匠が施された装飾面部とされており、これら四つの装飾面部の意匠が別異であることを特徴とする仏衣用飾り襟。
【請求項3】
仏衣とは別体であり、半襟部の形成と伊達襟部の形成に兼用できる仏衣用の飾り襟であって、
帯状を呈する襟本体を有し、該襟本体の全長は、該伊達襟部を形成できる長さに設定されており、
該襟本体は、その幅方向の所要部位を折り曲げ部として該襟本体の延長方向に折り曲げることが可能となされており、
前記襟本体の表面部と裏面部の夫々は、その長手方向線の両側の区画部分が、所要の意匠が施された装飾面部とされており、これら四つの装飾面部の意匠が別異であることを特徴とする仏衣用飾り襟。
【請求項4】
請求項2記載の仏衣用飾り襟が半襟部を形成するために用いられる場合、仰臥状態の遺体の首に回して首の下側で交差させることによって上下重なり状態に装着された前記襟本体の、上側に位置する一方の端側の部分は、遺体に仏衣が着せられた状態で該仏衣の内側に配置され、且つ該仏衣が帯で締められることによって該仏衣を介して遺体側に押し付けられるようになされると共に、該一方の端側の部分の下端側部分が、前記帯よりも前記仏衣の裾側に位置するようになされており、該下端側部分が、前記一方の端側の部分を所要方向に手で引っ張るための把持部とされていることを特徴とする仏衣用飾り襟。
【請求項5】
請求項3記載の仏衣用飾り襟が半襟部形成のために用いられる場合、仰臥状態の遺体の首に回して首の下側で交差させることによって上下重なり状態に装着された前記襟本体の、上側に位置する一方の端側の部分は、遺体に仏衣が着せられた状態で該仏衣の内側に配置され、且つ該仏衣が帯で締められることによって該仏衣を介して遺体側に押し付けられるようになされると共に、該一方の端側の部分の下端側部分が、前記帯よりも前記仏衣の裾側に位置するようになされており、該下端側部分が、前記一方の端側の部分を所要方向に手で引っ張るための把持部とされていることを特徴とする仏衣用飾り襟。
【請求項6】
請求項2又は3記載の仏衣用飾り襟を仰臥状態の遺体の首に回して首の下側で交差させ、上下重なり状態に装着された前記襟本体の、上側に位置する一方の端側の部分を、該仰臥状態での正面視で、仏衣の裾側に向けて右方向に或いは左方向に直線状に傾いて延長した状態に配置し、該仏衣の帯を締めた状態で、該一方の端側の部分の下端側部分を該帯よりも該仏衣の裾側に位置させ、該下端側部分を手で把持して該一方の端側の部分を所要方向に引っ張ることを特徴とする仏衣用飾り襟の装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は仏衣用飾り襟に関するものであり、又、仏衣用飾り襟の装着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺体を覆うための従来の仏衣は白色無地の着物(白装束)であることが一般的であり個性に乏しく、故人の個性を効果的に表現することは難しかった。そこで、故人の個性を尊重し得る仏衣を提供せんとして、仏衣の襟部分に着眼し、該襟部分に図柄模様を刺繍で形成してなる仏衣が特許文献1で提供されている。又、襟部分に家紋や宗紋等の絵や図柄、模様等を染めによって表した仏衣が特許文献2で提供されている。
【0003】
しかしながら、これらの図柄模様等を、着用者毎に個別に仏衣に形成することは仏衣の製造コストの上昇が大きいために、一般に普及させるには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-148677号
【特許文献2】特開平8-52392号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、故人の年齢や性別に関わらず個人を個性的に表現でき、しかも葬儀という厳粛な雰囲気の中にも華やかさを演出でき、その上、多様なデザインの半襟部や伊達襟部をコスト低減を図って提供し得る仏衣用飾り襟の提供を課題とするものである。
【0006】
又本発明は、半襟部の形成と伊達襟部の形成に兼用できる経済性を有した仏衣用飾り襟の提供を課題とするものである。更に、該仏衣用飾り襟を半襟部形成のために用いた場合は、納棺時等に着崩れして半襟の形態が乱れたときに、遺体を極力動かすことなく、該乱れを容易且つ確実に修正できる仏衣用飾り襟の提供を課題とするものである。
【0007】
更に本発明は、本発明に係る仏衣用飾り襟を用いて半襟部や伊達襟部を容易且つ見栄えよく形成でき、又、納棺時等において半襟部や伊達襟部の形態が乱れたときに、遺体を極力動かすことなく、該乱れを容易且つ確実に修正することのできる仏衣用飾り襟の装着方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明は以下の手段を採用する。
即ち、本発明に係る仏衣用飾り襟の第1の態様は、仏衣とは別体である仏衣用飾り襟であって、帯状を呈する襟本体を有する。該襟本体は、その幅方向の所要部位を折り曲げ部として該襟本体の延長方向に折り曲げることが可能となされている。そして、前記襟本体の表面部と裏面部の夫々は、その長手方向線の両側の区画部分が、所要の意匠が施された装飾面部とされており、これら四つの装飾面部の意匠が別異であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る仏衣用飾り襟の第2の態様は、仏衣とは別体であり、少なくとも半襟部を形成するために用いることのできる仏衣用飾り襟であって、帯状を呈する襟本体を有する。該襟本体は、その幅方向の所要部位を折り曲げ部として該襟本体の延長方向に折り曲げることが可能となされている。そして、前記襟本体の表面部と裏面部の夫々は、その長手方向線の両側の区画部分が、所要の意匠が施された装飾面部とされており、これら四つの装飾面部の意匠が別異であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る仏衣用飾り襟の第3の態様は、仏衣とは別体であり、半襟部の形成と伊達襟部の形成に兼用できる仏衣用の飾り襟であって、帯状を呈する襟本体を有し、該襟本体の全長は、該伊達襟部を形成できる長さに設定されている。該襟本体は、その幅方向の所要部位を折り曲げ部として該襟本体の延長方向に折り曲げることが可能となされている。そして、前記襟本体の表面部と裏面部の夫々は、その長手方向線の両側の区画部分が、所要の意匠が施された装飾面部とされており、これら四つの装飾面部の意匠が別異であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る仏衣用飾り襟の第4の態様は、前記第2の態様に係る仏衣用飾り襟が半襟部を形成するために用いられる場合、仰臥状態の遺体の首に回して首の下側で交差させることによって上下重なり状態に装着された前記襟本体の、上側に位置する一方の端側の部分は、遺体に仏衣が着せられた状態で該仏衣の内側に配置され、且つ該仏衣が帯で締められることによって該仏衣を介して遺体側に押し付けられるようになされている。そして、該一方の端側の部分の下端側部分が、前記帯よりも前記仏衣の裾側に位置するようになされており、該下端側部分が、前記一方の端側の部分を所要方向に手で引っ張るための把持部とされていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る仏衣用飾り襟の第5の態様は、前記第3態様に係る仏衣用飾り襟が半襟部形成のために用いられる場合、仰臥状態の遺体の首に回して首の下側で交差させることによって上下重なり状態に装着された前記襟本体の、上側に位置する一方の端側の部分は、遺体に仏衣が着せられた状態で該仏衣の内側に配置され、且つ該仏衣が帯で締められることによって該仏衣を介して遺体側に押し付けられるようになされている。そして、該一方の端側の部分の下端側部分が、前記帯よりも前記仏衣の裾側に位置するようになされており、該下端側部分が、前記一方の端側の部分を所要方向に手で引っ張るための把持部とされていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る仏衣用飾り襟の装着方法は、前記第2態様又は前記第3の態様に係る仏衣用飾り襟を仰臥状態の遺体の首に回して首の下側で交差させ、上下重なり状態に装着された前記襟本体の、上側に位置する一方の端側の部分を、該仰臥状態での正面視で、仏衣の裾側に向けて右方向或いは左方向に直線状に傾いて延長した状態に配置し、該仏衣の帯を締めた状態で、該一方の端側の部分の下端側部分を該帯よりも該仏衣の裾側に位置させ、該下端側部分を手で把持して該一方の端側の部分を所要方向に引っ張ることを特徴とするものである。
【0014】
該仏衣用飾り襟の装着方法は、前記仏衣用飾り襟を、半襟部の形成と伊達襟部を形成する場合に応用できると共に、形態の乱れた該半襟部、該伊達襟部の該乱れを修正する場合に応用できる。これらの場合において、首の下側で交差して前記重なり状態にある部分を、後述するように押えることは、常に必要となるものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る仏衣用飾り襟によるときは、故人の年齢や性別に関わらず、故人を個性的に表現でき、しかも葬儀という厳粛な雰囲気の中にも華やかさを演出でき、その上、多様なデザインをコスト低減を図って提供できる。
【0016】
又本発明は、半襟部の形成と伊達襟部の形成に兼用して用いることもできる経済性を有した仏衣用飾り襟を提供できる。又、該仏衣用飾り襟を半襟部を形成するために用いた場合は、納棺時等に着崩れして半襟部の形態が乱れたときも、遺体を極力動かすことなく、該乱れを容易且つ確実に修正することのできる仏衣用飾り襟を提供できる。
【0017】
又本発明は、本発明に係る仏衣用飾り襟を用いて半襟部や伊達襟部を容易且つ見栄えよく形成でき、又、納棺時等に半襟部や伊達襟部の形態が乱れたときに、遺体を極力動かすことなく、該乱れを容易且つ確実に修正することのできる仏衣用飾り襟の装着方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る仏衣用飾り襟を示す平面図である。
【
図2】本発明に係る仏衣用飾り襟を屈曲状態で説明する説明図である。
【
図3】本発明に係る仏衣用飾り襟の表面部と裏面部の構成を説明する斜視図である。
【
図4】本発明に係る仏衣用飾り襟の襟本体を折り曲げ部で折り曲げる工程を説明する説明図である。
【
図5】本発明に係る仏衣用飾り襟を製造するために用いる基布の構成を説明する平面図である。
【
図6】本発明に係る仏衣用飾り襟を製造するために用いる基布の構成を説明する部分平面図である。
【
図7】本発明に係る仏衣用飾り襟を用いて半衿部を形成する要領を説明する説明図である。
【
図8】半襟部を形成して仏衣が着付けられた状態を示す正面図である。
【
図9】本発明に係る仏衣用飾り襟を用いて形成された半襟部の一例を示す正面図である。
【
図10】本発明に係る仏衣用飾り襟を用いて形成された半襟部の他の例を示す正面図である。
【
図11】本発明に係る仏衣用飾り襟を用いて形成された伊達襟部を示す正面図である。
【
図12】本発明に係る仏衣用飾り襟を遺体の首に巻いた状態を示す正面図である。
【実施例0019】
図1~6において本発明に係る仏衣用飾り襟1は、仏衣とは別体であり、帯状を呈する襟本体2を有し、該襟本体2は、その幅方向の所要部位を折り曲げ部3(
図4)として該襟本体2の延長方向に折り曲げることが可能となされている。そして前記襟本体2の表面部5と裏面部6の夫々は、
図3に示すように、その長手方向線L1,L2の両側の区画部分7,7が、所要の意匠が施された装飾面部9とされており、これら四つの装飾面部9a,9b,9c,9dの意匠が別異とされている。該仏衣用飾り襟1は、本実施例においては、半襟部10(
図9~10)の形成と伊達襟部11(
図11)の形成に兼用できるものであり、該襟本体2の全長は、該伊達襟部11を形成できる長さに設定されている。以下、これを具体的に説明する。
【0020】
前記仏衣用飾り襟1は、前記のように、前記襟本体2の幅方向の所要部位を前記折り曲げ部3(
図4)として該襟本体2の延長方向に折り曲げることにより、半襟部10の形成と伊達襟部11(
図11)の形成に兼用できるものである。帯状を呈する前記襟本体2の幅と長さは、このことを考慮して設定されるものである。本実施例は、大人の遺体に使用される仏衣用飾り襟1に係るものであり、該襟本体2の幅L3(
図1)が100mm程度で、長さL4(
図1)が1170mm程度に設定されている。
図2においては、該仏衣用飾り襟1を、その表面部5とその裏面部6の構成を同時に示すために屈曲状態で表している。
【0021】
又該襟本体2は本実施例においては、ポリエステル製の布地を用いて形成され、
図3に示すように、相互が密着する第1の布地12と第2の布地13を有した、扁平袋状をなしている。そして、該第1の布地12の外側の面部が前記表面部5を構成し、該第2の布地13の外側の面部が前記裏面部6を構成している。なお本発明で、該表面部5とは、該襟本体2の対向する面部の何れか一方を指し、該裏面部6とは、その他方を指すものである。
【0022】
かかる構成を有する該表面部5と該裏面部6の夫々は、その長手方向線L1,L2の両側部分としての前記区画部分7,7を有している。本実施例においては、該長手方向線L1,L2は長手中央線L1,L2として構成されている。該長手中央線L1,L2とは、前記表面部5と前記裏面部6の、夫々の幅方向で見た中心点を通る長手方向線である。
【0023】
これら四つの区画部分7, 7,7,7は、本実施例においては等幅であり、その幅L5(
図3)は50mmに設定されている。そして、これら四つの区画部分7,7,7,7の夫々は、所要の意匠が施された前記装飾面部9a,9b,9c,9dとされており、これら四つの該装飾面部の意匠は別異である。
【0024】
本実施例においては、これら四つの装飾面部9a,9b,9c,9dの夫々は全体が一色に着色されており、又、これら四つの装飾面部の色は全て異なる。例えば、前記表面部5では、一方の前記装飾面部9aが紫色に着色され、他方の装飾面部9bが茶色に着色されている。又、前記裏面部6では、一方の前記装飾面部9cが黄色に着色され、他方の装飾面部9dが赤色に着色されている。そして、これら全ての装飾面部9a,9b,9c,9dには、同一パターンの連続線模様14(
図2)が付されている。従って、これら四つの装飾面部の意匠は別異である。なお本実施例においては、前記長手中央線L1,L2は、色の境界として表されており輪郭線は表示されていない。
【0025】
前記仏衣用飾り襟1の製造工程の一例を
図5~6に基づいて説明すれば、横方向に長い長方形状を呈する所要サイズの基布15(
図5~6)の一面部16の全体に前記連続線模様17(
図6)を付し、且つ、該一面部16にその一側縁16aからその他側縁16bに向けて略等幅で順に、黄色、紫色、茶色、赤色の着色を施こして、四つの着色部19a,19b,19c,19dを形成する。なお、該連続線模様14と該着色部19a,19b,19c,19dは、例えば熱転写で同時に形成できる。その後、該一面部16を内側にして、黄色の前記着色部19aの外縁部分20と赤色の前記着色部19dの外縁部分21を重ね合わせて筒状を形成し、該重なり部分を縫製する。このように該重なり部分を縫製する関係上、該黄色の着色部19aと該赤色の着色部19dの幅は、前記紫色の着色部19b及び前記茶色の着色部19cの幅(共に50mmの幅)よりも稍大きく形成されている。そして、前記外縁部分20,21相互を重ね合わせた状態で、その長さ方向の両端の重なり部分を、例えば角部分等の一部分に途切れ部を形成して縫製する。その後、該途切れ部で表替えして前記仏衣用飾り襟1(
図1~2)を得る。
【0026】
このようにして構成された仏衣用飾り襟1は、
図1~3に基づいて前記したように、前記表面部5と前記裏面部6の夫々の前記長手中央線L1,L2(
図3)の両側の区画部分7,7が、所要の意匠が施された前記装飾面部9a,9b,9c,9d(
図2~3)とされており、前記襟本体2は、
図4に示すように、その幅方向の前記所要部位を前記折り曲げ部3として該襟本体2の延長方向F(
図1)に折り曲げることが可能となされている。従って、該折り曲げの部位を各種に変更することにより、1本の仏衣用飾り襟1で多様な襟デザインを構成できることとなる。
【0027】
かかる構成を有して多様な襟デザインを形成できる該仏衣用飾り襟1は、前記したように半襟部10の形成と伊達襟部11の形成に兼用できるのであるが、次に該仏衣用飾り襟1を、半襟部10を形成するために用いた場合について
図4、
図7~8に基づいて説明する。
【0028】
先ず
図4に示すように、前記仏衣用飾り襟1の前記襟本体2を、前記折り曲げ部3で折り曲げることによって、2色の柄が並列して表された状態とする。その後、
図7に示すように、遺体に着せられている前記仏衣22が前開きの状態Aで、折り曲げ状態にある該仏衣用飾り襟1の前記襟本体2を遺体の首に回して首の下側で交差させて上下重なり状態とすることによって半襟部10を形成する。そして、該襟本体2の、上側に位置する一方の端側の部分23を、仰臥状態にある遺体の該仰臥状態での正面視で、該仏衣22の裾側に向けて右方向に直線状に傾いて延長した状態に配置し、該一方の端側の部分23の下端側部分25が、
図7に示すように、該仏衣22の帯26(
図7~8)よりも該仏衣22の裾側に位置するようになす。
図7においては、該帯26の位置を一点鎖線で示している。この状態で、
図8に示すように、該一方の端側の部分23を、該仏衣22の、前記正面視で右の前身頃22aの内側に配置し、該仏衣22を左前に着せた状態で該帯26を締める。この状態で、該下端側部分25は、前記一方の端側の部分23を所要方向に手で引っ張るための把持部27となる。
【0029】
このように形成された半襟部10においては
図8~9に示すように、前記襟本体2が、並列状態にある前記2色の柄28,28を前記仏衣22の首回りの襟部29の側縁30から突出させて、該襟部29の内側部分31に安定状態に重ねられた状態となる。該突出させる2色の柄の幅は、例えば
図9に示すように、該仏衣22の前記襟部29の首側から該襟部29の先側交差部29aに向けて徐々に幅広となるように左右バランスよく設定する。このように半襟部10を形成する際、例えば
図7~8に示す状態において、前記把持部27を所要方向に引っ張って前記一方の端側の部分23を適度に張った状態とすることにより、該半襟部10の形態を整え易い。
【0030】
次に、このようにして構成された半襟部10によって得られる襟デザインの多様性についてより詳しく説明すると共に、納棺時等に着崩れして該半襟部10の形態が乱れたときの乱れ修正方法について説明する。
【0031】
先ず、半襟部10によって得られる襟デザインの多様性について説明する。
図9に示す半襟部10にあっては、前記襟本体2が、
図4に示すように、その幅方向の所要部位を前記折り曲げ部3として該襟本体2の延長方向に折り曲げられている。即ち、該襟本体2の両側縁32,33が、該襟本体2の幅方向で稍位置ずれした状態で折り曲げられている。従って、形成された半襟部10(
図8~9)にあっては、2色の柄28,28が並列状態に表れる。並列状態に表れるこの2色の柄28,28は、該襟本体2をその表側で折り曲げるか、その裏側で折り曲げるかによって、或いは、前記襟本体2の該両側縁32,33を位置ずれさせる量の設定によって、色と幅の組み合わせによる多様な襟デザインを構成できる。このように、1本の仏衣用飾り襟1で多様な襟デザインを構成できることから、故人の年齢や性別に合わせた個性を表現でき、又その個性にあわせて華やかな感じを抱かせる襟元を形成できる。加えて、かかる複数の柄表現によって着物を重ね着しているように見せることもできる。
【0032】
次に、納棺時に半襟部10の形態が乱れたときの該乱れを修正する方法について説明する。納棺時等において半襟部10の形態が乱れたときは、該半襟部10の上下重なり状態にある部分34(
図8~9)を、一方の手で押さえて安定させた状態で、他方の手を、前記仏衣22の裾側の合わせ目から仏衣内側に差し入れて前記把持部27(
図7)を把持し、該把持部27を所要方向に引っ張ることによって、前記半襟部10の形態の乱れを短時間で直すことができる。かかる引張り操作は、直線状を呈している前記一方の端側の部分23(
図7~8)が前記帯26によって押し付けられて安定状態にあるため、該把持部27の引張り操作を容易且つ確実に行うことができる。これによって、遺体を極力動かすことなく、換言すれば、遺体の損傷を極力招くことなく、前記半襟部10の形態の乱れを修正できる。そして、この修正した状態は、前記帯26の締め付け作用によって安定的に保持されることとなる。該修正する方法は、本発明に係る前記仏衣用飾り襟の装着方法の一態様である。
【0033】
要するに本実施例に係る発明によるときは、半衿部10の形態の乱れを修正するのに、該半襟部10を直接に手直しするのではなく、該半衿部10から前記仏衣の裾側に離れて配置されている前記把持部27を把持して前記乱れを直すことができるため、前記形態の乱れを、体裁よくしかも短時間で確実に修正できることとなる。
【0034】
図10は、半襟部10の他の態様を示している。該半襟部10は、前記仏衣用飾り襟1の前記4色の内の1色の所要幅の部分が前記仏衣22の首回りの襟部29の側縁30から突出されると共に、該仏衣用飾り襟1の残余部分は、広げられた状態で或いは適宜に折り畳まれた状態で、該仏衣22の内側部分31に重ねられている。この場合も、
図7~9に基づいて説明したと同様にして、前記半襟部10を形成するために前記襟本体2を所要に配置するのであるが、納棺時等に該半襟部10の形態が乱れたときは、前記と同様の要領により設けた前記把持部27を適当な方向に引張り操作することによって、前記半襟部10の形態の乱れを体裁よくしかも短時間で確実に修正できることとなる。
【0035】
図11は、前記仏衣用飾り襟1を伊達襟部11を形成するために使用した場合を示すものであり、同図においては、前記襟本体2が、その幅方向の所要部位を折り曲げ部3(
図4)として該襟本体2の延長方向に折り曲げられており、該襟本体2の前記両側縁32,33が該襟本体2の幅方向で稍位置ずれして、2色の柄28,28が並列状態に表されている。そしてかかる仏衣用飾り襟1が、前記と同様の要領によって、半襟状の部分を形成するように、前記襟本体2が、前記仏衣22の首回りの襟部29の内側部分31に重ねられている。且つ、前記2色の柄28,28が、正面視で、前記仏衣22の直線状を呈する左の襟部35aの直線状側縁37に沿って下方に延長状態となるように、前記襟本体2が該左の襟部35aの内側部分39に重ねられている。かかる伊達襟部11を形成する要領が、
図7~8に基づいて説明した前記半襟部10を形成する要領と相違するのは次の点である。
【0036】
即ち、前記仏衣用飾り襟1を前記半襟部10を形成するために使用する際は、前記仏衣22の裾側に向けて正面視で右方向に直線状に傾いて延長する前記一方の端側の部分23を仏衣22の内側(前記仏衣22の前記前身頃22a(
図8)の内側)に配置することによって、該一方の端側の部分23が、露出しないようにしている。これに対して、前記仏衣用飾り襟1を前記伊達襟部11を形成するために使用する際は、
図11に示すように、前記仏衣22の裾側に向けて正面視で右方向に直線状に傾いて延長する前記一方の端側の部分23を、前記仏衣22の左の襟部35aと右の前身頃22aとの間に挟んだ状態とし、並列状態にある前記2色の柄28,28を該左の襟部35aの側縁37から突出させている。そして、該一方の端側の部分23の下端側の部分は、前記仏衣22が帯で締められた状態で、該帯よりも該仏衣22の裾側に位置するようになされている。
【0037】
なお前記仏衣用飾り襟1を伊達襟部11を形成するために用いる場合、前記襟本体2を折り曲げないで、前記装飾面部9の一つを前記仏衣22の襟部から所要幅突出させた状態とし、残余の部分を該仏衣の内側に配置することもできる。
【0038】
このように前記仏衣用飾り襟1を伊達襟部11を形成するために用いた場合も、該仏衣用飾り襟1を前記半襟部10を形成するために用いる場合と同様に、故人の年齢や性別に合わせた個性を表現でき、又その個性にあわせて華やかな感じを抱かせる襟を形成できる。加えて、かかる複数の柄表現によって着物を重ね着しているように見せることもできる。
【0039】
なおこのように形成された伊達襟部11の形態が納棺時等に乱れたときは、次のようにして該乱れを修正できる。即ち、納棺時等において伊達襟部11の形態が乱れたときは、該伊達襟部11の上下重なり状態にある部分42(
図11)を、一方の手で押さえて安定させた状態で、該伊達襟部11の前記下端側の部分を他方の手で把持し、該把持部27を所要方向に引っ張ることによって、該伊達襟部11の形態の乱れを短時間で直すことができる。かかる引張り操作は、直線状を呈している前記一方の端側の部分23(
図7~8)が前記帯によって押し付けられて安定状態にあるため、該把持部27の引張り操作を容易且つ確実に行うことができる。これによって、遺体を極力動かすことなく、換言すれば、遺体の損傷を極力招くことなく、前記伊達襟部11の形態の乱れを修正できる。そして、この修正した状態は、前記帯の締め付け作用によって安定的に保持されることとなる。該修正する方法は、本発明に係る前記仏衣用飾り襟の装着方法の一態様である。
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
(2)本発明に係る仏衣用飾り襟1が子供の遺体に使用されるときは、前記襟本体の幅L3を例えば80mm程度に設定することができ、その長さL4を例えば850mm程度に設定することができる。この場合においても、「前記表面部5と前記裏面部6の夫々の長手方向線」は、長手中央線とは限らず、前記表面部5と前記裏面部6の幅方向でみた中心点から、該表面部5と該裏面部6の側縁側に所要量偏倚した点を通る長手方向の線として設定できる。
(3)前記長手方向線は、前記表面部5と前記裏面部6の長手方向に直線状に延長する線である他、前記長手方向に延長する線であるならば、波線状やジグザグ状等を呈する線であってもよく、又、これらの組み合わせからなる線であってもよい。そして、これらの線は、別異色の境界として表されても、所要色の輪郭線として表されてもよい。
(7)帯状を呈する前記襟本体2は、前記した布地の他、不織布や和紙等の紙を用いて構成することもできる。そして、これらの襟本体2は、前記した偏平な筒状を呈する2枚重ねのものではなく、比較的厚手の1枚もののシート状片を以って構成されることもある。この場合は、該襟本体2の表面部5とその裏面部6の夫々の、長手方向線の両側の前記区画部分7,7が、所要の意匠が施された前記装飾面部9、9とされる。
(8)本発明は、「襟本体2は、その幅方向の所要部位を折り曲げ部として該襟本体2の延長方向に折り曲げることが可能となされている」なる構成要件を採用している。この折り曲げは、前記襟本体2の長手方向と平行に折り曲げることには特定されず、該長手方向に対して傾斜する状態で折り曲げることを含む。そして、該折り曲げは該襟本体2の全長に亘って行われるとは限らず、例えば該襟本体の端部側においては折り曲げられていない状態となることも含む。
(9)前記仏衣用飾り襟1を、前記仏衣22に半襟部10を形成するために装着する場合において、或いは伊達襟部11を形成するために該仏衣22に装着する場合において、前記襟本体2の折り曲げ状態をより安定化させるために必要であるならば、該襟本体2の端部側等の所要部位を両面粘着テープや面ファスナー等の止着具で止着することもできる。
(10)前記装飾面部9は、前記区画部分7に所要の意匠が施されて構成されている。該意匠としては、前記実施例で示されている、着色部に前記連続線模様が付されたものには特定されず、葬儀にふさわしい各種態様の意匠を採用できる。
例えば、単色だけの意匠や、グラデーションを有する着色模様からなる意匠、図柄、文字、或いは、これらの組み合わせからなる意匠、これらに色を施した意匠等であってもよい。そして、これらの意匠は、熱転写やスクリーン印刷、オフセット印刷等の公知のプリント手法によって形成できる他、刺繍で施してもよい。
該意匠は、平面的なものとは限らず立体的なものであってもよい。又、前記区画区分に絞りや皺を付して凹凸感をもたせた意匠や、エンボス加工で凹凸感をもたせた意匠であってもよい。更には、レース生地や織物生地、編物生地、前記した不織布や和紙等を素材とし、これら単体或いはこれらの組み合わせからなるものの外観を生かした意匠であってもよい。
本発明において、四つの装飾面部9a,9b,9c,9dの意匠が別異である態様には、該四つの装飾面部9a,9b,9c,9dに施されている意匠が、部分的には共通してはいても全体として見たときに異なる場合を含む。
このように、四つの装飾面部に施されている意匠を多彩に設定できることから、1本の仏衣用飾り襟1で多様な襟デザインを構成でき、故人の年齢や性別に合わせた個性を効果的に表現できる。