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特開2023-3406UPE測定による持続的酸化ストレスおよび即時黒化評価方法
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  • 特開-UPE測定による持続的酸化ストレスおよび即時黒化評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003406
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】UPE測定による持続的酸化ストレスおよび即時黒化評価方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20221228BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20221228BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
A61B5/00 M
G01N33/50 Q
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100095
(22)【出願日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2021104484
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100130845
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 伸一
(72)【発明者】
【氏名】土田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】先山 奈津紀
【テーマコード(参考)】
2G045
4C117
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB09
4C117XA01
4C117XB13
4C117XD05
4C117XE42
(57)【要約】
【課題】被験者の肌における酸化ストレスおよび黒化の評価方法を提供すること。
【解決手段】被験者の肌のL*値および/またはメラニンインデックスを測定することにより酸化ストレスおよび黒化およびb*値変化の評価を行う。また、被験者の肌に紫外線を照射した際に生じるUPE(バイオフォトン)を測定することにより、酸化ストレスおよび黒化の評価を行う。このような評価系は、酸化ストレスおよび黒化を抑制する物質のスクリーニングにも応用できる。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の肌の酸化ストレスを評価する方法であって、
該被験者の肌のL*値および/またはメラニンインデックスを測定する工程、
測定されたL*値および/またはメラニンインデックスを以下の式:
aL × exp(bL×L*)(ここで、L*はL*値、aLおよびbLは任意の値である。)
または、
aM × exp(bM×MI)(ここで、MIはメラニンインデックス値、aMは任意の値であり、bMは任意の値である。)
に代入した結果にもとづき、該被験者の肌の酸化ストレスを評価する工程
を含む、方法。
【請求項2】
被験者の肌の黒化しやすさを評価する方法であって、
該被験者の肌に紫外線を照射する工程、
紫外線照射直後からその300秒後までのUPE測定値の第1の積算値を得る工程、
紫外線照射直後からその5~15分後までのUPE測定値の第2の積算値を得る工程、
該第1の積算値と該第2の積算値の比率を得る工程
を含み、得られた該比率が該被験者の肌の黒化しやすさの指標となる、方法。
【請求項3】
被験者の肌の持続的酸化ストレス感受性を評価する方法であって、
該被験者の肌に紫外線を照射する工程、
紫外線照射直後からその300秒後までのUPE測定値の第1の積算値を得る工程、
紫外線照射から30分~2時間後に5~15分間のUPE測定値の第2の積算値を得る工程、
該第1の積算値と該第2の積算値の比率を得る工程
を含み、得られた該比率が該被験者の肌の持続的酸化ストレス感受性の指標となる、方法。
【請求項4】
被験者の肌の一次黒化のしやすさを評価する方法であって、
該被験者の肌のL*値を測定する工程、
測定されたL*値を以下の式:
aL × L* + bL
(ここで、L*はL*値、aLおよびbLは任意の値である。)
に代入した結果にもとづき、該被験者の肌の一次黒化のしやすさを評価する工程
を含む、方法。
【請求項5】
被験者の肌の持続型即時黒化のしやすさを評価する方法であって、
該被験者の肌のL*値を測定する工程、
測定されたL*値を以下の式:
aL × L* + bL
(ここで、L*はL*値、aLおよびbLは任意の値である。)
に代入した結果にもとづき、該被験者の肌の持続型即時黒化のしやすさを評価する工程
を含む、方法。
【請求項6】
被験者の肌への紫外線照射後に生じるb*値の変化を評価する方法であって、
該被験者の肌のL*値を測定する工程、
測定されたL*値を以下の式:
ab × L* + bb
(ここで、L*はL*値、abは任意の値であり、およびbbは任意の値である。)
に代入した結果にもとづき、該被験者の肌への紫外線照射後に生じるb*値の変化を評価する工程
を含む、方法。
【請求項7】
皮膚組織における持続的酸化ストレスを抑制する物質または組成物のスクリーニング方法であって、
該物質または組成物を該皮膚組織に接触させる前または接触させた後に、該皮膚組織に紫外線を照射する工程、
紫外線照射から所定時間の経過後に該皮膚組織におけるUPEを測定する工程、および
測定されたUPEの値を標準値と比較する工程
を含み、測定されたUPEの値が標準値に比べて低いことが、持続的酸化ストレスの抑制の指標となる、方法。
【請求項8】
前記所定時間が、紫外線照射の少なくとも30分後である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記所定時間が、紫外線照射の1時間後~3時間後までの範囲である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
皮膚組織における初期酸化ストレスを抑制する物質または組成物のスクリーニング方法であって、
該物質または組成物を該皮膚組織に接触させる前または接触させた後に、該皮膚組織に紫外線を照射する工程、
紫外線照射から所定時間の経過後に該皮膚組織におけるUPEを測定する工程、および
測定されたUPEの値を標準値と比較する工程
を含み、測定されたUPEの値が標準値に比べて低いことが、初期酸化ストレスの抑制の指標となる、方法。
【請求項11】
前記所定時間が、紫外線照射直後~その20分後までの範囲である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
皮膚組織における即時黒化を抑制する物質または組成物のスクリーニング方法であって、
該物質または組成物を該皮膚組織に接触させる前または接触させた後に、該皮膚組織に紫外線を照射する工程、
紫外線照射から所定時間の経過後に該皮膚組織におけるUPEを測定する工程、および
測定されたUPEの値を標準値と比較する工程
を含み、測定されたUPEの値が標準値に比べて低いことが、即時黒化の抑制の指標となる、方法。
【請求項13】
前記所定時間が、紫外線照射の照射直後~20分後までの範囲である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
UPEが所定期間の測定値の積算値として測定される、請求項7~13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
紫外線がUVAである、請求項7~14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
標準値が、紫外線を照射していないことを除き同一の条件で測定した皮膚組織である、請求項7~15のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の肌を評価する方法に関する。より詳細には、被験者の肌の酸化ストレス、または黒化のしやすさを評価する方法に関する。また、本発明は、物質もしくは組成物のスクリーニング方法にも関し、より詳細には、酸化ストレスを抑制する物質もしくは組成物、または黒化を抑制する物質もしくは組成物のスクリーニング方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
UPE(Ultraweak photon emission)とは、生体から放射される微弱な発光であり、生体内での生化学反応に伴う発光現象である。エネルギー代謝を始めとする、主に活性酸素が関与する生化学反応過程で放射される発光であり、そのメカニズムも多岐にわたる。またUPEはバイオフォトン、生物フォトン、生体極微弱発光、生体極微弱化学発光などと呼ばれることもある。
【0003】
すなわち、UPEによる発光は主に、生化学反応過程における酸化還元反応により産生されるエネルギーにより生じる。特にUPEによる発光は、活性酸素やフリーラジカルの生成を伴う生化学反応において生じ、実際の発光は、生体を構成する多様な物質の酸化的修飾過程で生じる分子の励起による。
【0004】
生体における活性酸素の産生は、生体内における代謝過程や、紫外線、放射線、薬剤、環境汚染物質などの外的要因が引き起こす酸化ストレスと深く関連している。また、生体における活性酸素の産生によるUPEの増加は、酸化ダメージなどのストレスと関連しており、例えば紫外線などの電磁波の照射によって皮膚の酸化が進むと、UPEの放出量が増加する。特に外部刺激によって増加したUPEは遅延発光と呼ばれる。
【0005】
紫外線(UV)が皮膚に与える影響の一環として、角質層や表皮に対する紫外線の透過率を測定した研究結果が報告されている(非特許文献1)。紫外線は、その波長によりUVA(320~400nm)とUVB(280~320nm)に分類されている。
【0006】
また、特許文献1には、被験者の皮膚に紫外線を照射し、照射後の所定期間内に検出されるバイオフォトンの量を用いて肌ダメージを判定する工程を含む、肌ダメージの判定方法が開示されている。特許文献2には、被験者の皮膚に紫外線を照射し、該照射後の所定期間内に検出されるバイオフォトンの量を用いて紫外線感受性を判定する工程を含む、紫外線感受性の判定方法が開示されている。
【0007】
一方、UPEを計測する技術として、超高感度CCD(Charge Coupled Device、電荷結合素子)を用いた方法が紹介されており(非特許文献2)、光電子増倍管(PMT)を備えたフォトンカウンターを用いた方法も紹介されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2020/204183
【特許文献2】特開2019-120704
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Photochemistry and Photobiology Vol. 40, No. 4, pp. 485-494, 1984
【非特許文献2】Electrochemistry, 82(4), 294-298 (2014)
【非特許文献3】J Photochem Photobiol B. 2014 Oct 5;139:63-70. doi: 10.1016/j.jphotobiol.2013.10.003. Epub 2013 Oct 26.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の目的の1つは、被験者の肌を評価する方法、特に、被験者の肌の酸化ストレスを評価する方法、被験者の肌の黒化しやすさを評価する方法、被験者の肌の持続的酸化ストレス感受性を評価する方法、被験者の肌の一次黒化(即時黒化)のしやすさを評価する方法、被験者の肌の持続型即時黒化のしやすさを評価する方法、または被験者の肌への紫外線照射後に生じるb*値の変化を評価する方法を提供することである。また、本発明の別の目的の1つは、物質または組成物のスクリーニング方法、特に、皮膚組織における持続的酸化ストレスを抑制する物質もしくは組成物のスクリーニング方法、皮膚組織における初期酸化ストレスを抑制する物質もしくは組成物のスクリーニング方法、または皮膚組織における即時黒化を抑制する物質もしくは組成物のスクリーニング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、皮膚色の異なる皮膚組織に対してUVAを照射し、照射後のUPE(バイオフォトン)を測定し、2時間後までその影響を観察した。また、同時に皮膚色も測定し、UVA照射で皮膚色が変化するかどうかを評価した。その結果、(1)色の濃い皮膚でも即時黒化を起こし、皮膚色が濃いほどより即時黒化度合が高いこと、(2)どんな皮膚色でも大小あるが酸化ストレスを受け、明るい肌ほどより酸化ストレスを受けること、(3)特に明るい肌では酸化ストレスはUVA照射約2時間後まで続くこと(残存している酸化ストレスは「持続的酸化ストレス」とも表現できる)、および(4)皮膚のL値変化は初期UPEの変化率と相関することを見出した。皮膚組織の酸化ストレスを非破壊で評価することは難しいが、UPE評価ではそれが可能である。また、UPE測定では経時変化を追うことができ、言わば酸化ストレス状態をモニターできる。また、非破壊かつ皮膚組織で評価できるため、細胞実験では達成できない色の異なる皮膚に対する酸化ストレス評価が可能となる。
【0012】
本開示は上記の知見に基づくものであり、以下の側面を含む。
【0013】
[態様1] 被験者の肌の酸化ストレスを評価する方法であって、
該被験者の肌のL*値および/またはメラニンインデックスを測定する工程、
測定されたL*値および/またはメラニンインデックスを以下の式:
aL × exp(bL×L*)
(ここで、L*はL*値、aLおよびbLは任意の値である。)
または、
aM × exp(bM×MI)
(ここで、MIはメラニンインデックス値、aMは任意の値であり、bMは任意の値である。)
に代入した結果にもとづき、該被験者の肌の酸化ストレスを評価する工程
を含む、方法。
[態様2] 被験者の肌の黒化しやすさを評価する方法であって、
該被験者の肌に紫外線を照射する工程、
紫外線照射直後からその0.1~300秒後までのUPE測定値の第1の積算値を得る工程、
紫外線照射直後からその5~15分後までのUPE測定値の第2の積算値を得る工程、
該第1の積算値と該第2の積算値の比率を得る工程
を含み、得られた該比率が該被験者の肌の黒化しやすさの指標となる、方法。
[態様3] 被験者の肌の持続的酸化ストレス感受性を評価する方法であって、
該被験者の肌に紫外線を照射する工程、
紫外線照射直後からその30~90秒後までのUPE測定値の第1の積算値を得る工程、
紫外線照射から30分~2時間後に8~12分間のUPE測定値の第2の積算値を得る工程、
該第1の積算値と該第2の積算値の比率を得る工程
を含み、得られた該比率が該被験者の肌の持続的酸化ストレス感受性の指標となる、方法。
[態様4] 被験者の肌の一次黒化のしやすさを評価する方法であって、
該被験者の肌のL*値を測定する工程、
測定されたL*値を以下の式:
aL × L* + bL
(ここで、L*はL*値、aLおよびbLは任意の値である。)
に代入した結果にもとづき、該被験者の肌の一次黒化のしやすさを評価する工程
を含む、方法。
[態様5] 被験者の肌の持続型即時黒化のしやすさを評価する方法であって、
被験者の肌のL*値を測定する工程、
測定されたL*値を以下の式:
aL × L* + bL
(ここで、L*はL*値、aLおよびbLは任意の値である。)
に代入した結果にもとづき、該被験者の肌の持続型即時黒化のしやすさを評価する工程
を含む、方法。
[態様6] 被験者の肌への紫外線照射後に生じるb*値の変化を評価する方法であって、
該被験者の肌のL*値を測定する工程、
測定されたL*値を以下の式:
ab × L* + bb
(ここで、L*はL*値、abおよびbbは任意の値である。)
に代入した結果にもとづき、該被験者の肌への紫外線照射後に生じるb*値の変化を評価する工程
を含む、方法。
[態様7] 皮膚組織における持続的酸化ストレスを抑制する物質または組成物のスクリーニング方法であって、
該物質または組成物を該皮膚組織に接触させる前または接触させた後に、該皮膚組織に紫外線を照射する工程、
紫外線照射から所定時間の経過後に該皮膚組織におけるUPEを測定する工程、および
測定されたUPEの値を標準値と比較する工程
を含み、測定されたUPEの値が標準値に比べて低いことが、持続的酸化ストレスの抑制の指標となる、方法。
[態様8] 前記所定時間が、紫外線照射の少なくとも30分後である、態様7記載の方法。
[態様9] 前記所定時間が、紫外線照射の1時間後~3時間後までの範囲である、態様7記載の方法。
[態様10] 皮膚組織における初期酸化ストレスを抑制する物質または組成物のスクリーニング方法であって、
該物質または組成物を該皮膚組織に接触させる前または接触させた後に、該皮膚組織に紫外線を照射する工程、
紫外線照射から所定時間の経過後に該皮膚組織におけるUPEを測定する工程、および
測定されたUPEの値を標準値と比較する工程
を含み、測定されたUPEの値が標準値に比べて低いことが、初期酸化ストレスの抑制の指標となる、方法。
[態様11] 前記所定時間が、紫外線照射直後~その20分後までの範囲である、態様10記載の方法。
[態様12] 皮膚組織における即時黒化を抑制する物質または組成物のスクリーニング方法であって、
該物質または組成物を該皮膚組織に接触させる前または接触させた後に、該皮膚組織に紫外線を照射する工程、
紫外線照射から所定時間の経過後に該皮膚組織におけるUPEを測定する工程、および
測定されたUPEの値を標準値と比較する工程
を含み、測定されたUPEの値が標準値に比べて低いことが、即時黒化の抑制の指標となる、方法。
[態様13] 前記所定時間が、紫外線照射の照射直後~20分後までの範囲である、態様12記載の方法。
[態様14] UPEが所定期間の測定値の積算値として測定される、態様7~13のいずれか1項記載の方法。
[態様15] 紫外線がUVAである、態様7~14のいずれか1項記載の方法。
[態様16] 標準値が、紫外線を照射していないことを除き同一の条件で測定した皮膚組織である、態様7~15のいずれか1項記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、皮膚組織のL*値とUPE測定値との関係を表すグラフを示している。
図2図2は、皮膚組織のメラニンインデックス値とUPE測定値との関係を表すグラフを示している。
図3図3は、皮膚組織のL*値とUPE測定値との関係を表すグラフを示している。
図4図4は、L*値と皮膚組織への紫外線照射による即時黒化のしやすさとの関係を表すグラフを示している。
図5図5は、L*値と皮膚組織への紫外線照射によるb*値の変化との関係を表すグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示に従う実施態様について詳細に説明する。本開示に従う実施態様は、以下に限定されるものではなく、その効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施されうる。
【0016】
[被験者の肌の酸化ストレスを評価する方法]
本発明による一部の実施態様は、被験者の紫外線曝露時の肌の酸化ストレスを評価する方法に関する。一部の実施態様において、本開示に従う評価方法は、(i)被験者の肌のL*値および/またはメラニンインデックスを測定する工程、(ii)測定されたL*値および/またはメラニンインデックス(MI)を以下の式:
aL × exp(bL×L*) (式1)
(ここで、L*はL*値、aLおよびbLは任意の値である。「exp」は指数関数を表す。)
または、
aM × exp(bM×MI) (式2)
(ここで、MIはメラニンインデックス値、aMは任意の値であり、bMは任意の値である。)
に代入した結果にもとづき、紫外線曝露時の該被験者の肌の酸化ストレスを評価する工程を含む。被験者の肌のL*値、b*値および/またはメラニンインデックスの測定は、例えば、測色計を用いて数値として得ることができる。または、被験者の肌の画像を取得して、その画像をもとにL*値、b*値および/またはメラニンインデックスを測定してもよい。高い酸化ストレス評価値が示された被験者に対しては、そのような被験者の皮膚に適したスキンケア製品を提案することができる。
【0017】
本発明者らは、図1のグラフに示されているように、被験者の肌のL*値が高いほど、紫外線照射後に生じるUPEの測定値が高くなること、すなわち、皮膚の酸化ストレスが高いことを見出した。よって、被験者の肌のL*値にもとづき、紫外線曝露によって受ける被験者の肌の酸化ストレスを評価することができる。酸化ストレスを評価するための計算式は、例えば、以下のように表されうる:
酸化ストレス評価値 = aL × exp(bL×L*) (式3)
ここで、初期酸化ストレス(照射直後のUPE強度[10min積算])を評価する場合には、aLは例えば2219.8またはその付近の値、例えば2000~2400、2100~2300、2150~2250、または2210~2230の範囲に含まれる値とすることができ、bLは0.049またはその付近の値、例えば0.045~0.055、0.046~0.054、0.047~0.053、または0.048~0.052の範囲に含まれる値とすることができるが、これらに限定はされない。また、持続型酸化ストレス(照射2時間後のUPE強度[10min積算])を評価する場合には、aLは例えば124.08またはその付近の値、例えば112~136、116~132、120~128、または122~126の範囲に含まれる値とすることができ、bLは0.0673またはその付近の値、例えば0.0610~0.0730、0.0625~0.0715、0.0640~0.0700、または0.0660~0.0680の範囲に含まれる値とすることができるが、これらに限定はされない。当業者は目的に応じて、これらのパラメータを適宜設定することができる。評価は例えば、一定の基準値との比較により行うことができる。または評価値を何段階かに層別化して評価を行ってもよい。
【0018】
また同様に、本発明者らは、図2のグラフに示されているように、被験者の肌のメラニンインデックス(MI)が低いほど、紫外線照射後に生じるUPEの測定値が高くなること、すなわち、皮膚の酸化ストレスが高いことを見出した。よって、被験者の肌のメラニンインデックス(MI)にもとづき、紫外線曝露によって受ける被験者の肌の酸化ストレスを評価することができる。酸化ストレスを評価するための計算式は、例えば、以下のように表されうる:
酸化ストレス評価値 = aM × exp(bM×MI) (式4)
ここで、初期酸化ストレス(照射直後のUPE強度[10min積算])を評価する場合には、aMは例えば193054またはその付近の値、例えば174000~212300、180000~200000、185000~195000、または192500~193500の範囲に含まれる値とすることができ、bMは-1.408またはその付近の値、例えば-1.550~-1.250、-1.500~-1.300、-1.440~-1.360、または-1.420~-1.380の範囲に含まれる値とすることができるが、これらに限定はされない。また、持続型酸化ストレス(照射2時間後のUPE強度[10min積算])を評価する場合には、aMは例えば38545またはその付近の値、例えば34690~42400、36000~41000、37500~39500、または38500~38600の範囲に含まれる値とすることができ、bMは-1.592またはその付近の値、例えば-1.750~-1.430、-1.700~-1.480、-1.660~-1.520、または-1.620~-1.560の範囲に含まれる値とすることができるが、これらに限定はされない。当業者は目的に応じて、これらのパラメータを適宜設定することができる。評価は例えば、一定の基準値との比較により行うことができる。または評価値を何段階かに層別化して評価を行ってもよい。
【0019】
[L*、b*値、メラニンインデックス等の取得]
被験者の肌のL*値、b*値および/またはメラニンインデックスの測定は、例えば、測色計を用いて数値として得ることができる。または、被験者の肌の画像を取得して、その画像をもとにL*値、b*値および/またはメラニンインデックスを測定してもよい。また、L*値、b*値、メラニンインデックスなどのパラメータは、例えば、特許第6138745号(「シミ評価装置、およびシミ評価プログラム」)に記載の方法および装置を用いて取得することもできる。
【0020】
上記のパラメータの取得方法について、被験者の顔の肌画像を得る例を簡単に述べると、まず、例えば拡散照明ボックスとデジタルカメラとから構成される顔画像取得システム等により、被検者の顔画像を撮影し、取得された顔画像から、特定される部位(例えば、目の周りや頬等)の肌画像を取得する。顔画像取得システムとしては、本出願人の登録実用新案第3170125号に記載された装置等を用いることが可能である。
【0021】
上述した画像取得システムにより撮影される画像は、例えば拡散光を照射することにより肌表面の反射や影の影響等を抑えることが可能であり、撮影された部位の皮膚の「色」を計測し、肌の色情報を取得することが可能である。
【0022】
前述の特許第6138745号に記載の装置は、取得された肌画像に対して画像処理を実行し、例えば、肌画像のうち、指定された解析領域の色彩データLab値、メラニン成分、ヘモグロビン成分等の色素成分を算出することができる。また、特許第6138745号に記載の装置は、解析領域をメラニン成分やヘモグロビン成分等の色素成分の分布状態へと変換することができる。例えば肌の色情報として顔画像取得システムにより撮影されたRGB表色系RGB値や、RGB表色系から変換されたXYZ表色系XYZ値等を取得することで、メラニン成分やヘモグロビン成分等の色素成分の分布状態へと変換することができる。
【0023】
また、特許第3798550号公報等の手法を用いて、皮膚の反射スペクトルからランベルトベールの法則における透過率を皮膚の反射率に置き換えた吸光度モデルおよび皮膚の構成成分の吸光係数スペクトルの重回帰分析を行い、皮膚中の成分量を求めることができる。さらに、特許第3727807号公報等の手法を用いて、例えば皮膚の測色値と皮膚中の成分量を重回帰分析して重回帰式を予め求め、重回帰式を用いて皮膚の測色値から皮膚中のメラニン成分やヘモグロビン成分等の量を求めることができる。
【0024】
[被験者の肌の黒化しやすさを評価する方法]
本発明による一部の実施態様は、被験者の肌の黒化しやすさを評価する方法に関する。一部の実施態様において、本開示に従う評価方法は、被験者の肌に紫外線を照射する工程、紫外線照射直後からその0.1~300秒後までのUPE測定値の第1の積算値を得る工程、紫外線照射直後からその5~15分後までのUPE測定値の第2の積算値を得る工程、第1の積算値と第2の積算値の比率を得る工程を含み、ここで得られた比率が被験者の肌の黒化しやすさの指標となる。肌が黒化しやすいと評価された被験者に対しては、そのような被験者の皮膚に適したスキンケア製品を提案することができる。
【0025】
本発明者らは、図3の左下のグラフに示されているように、被験者の皮膚への紫外線照射後のごく初期のUPE(1分程度)と初期UPE(10分程度)の積算値の比率から被験者の皮膚の黒化しやすさを評価できることを見出した。例えば、紫外線照射の直後(例えば照射70秒後)からUPE測定を開始し、測定開始から1分間または10分間の測定の積算値を用いることができる。図3の左下のグラフは、紫外線照射後10分間のUPEの積算値を紫外線照射後1分間のUPEの積算値で割った値が小さいほど、L*値の低下が大きい、つまり黒化しやすいことを示している。なお、ここでは紫外線照射後1分および10分間の積算値を使用しているが、それぞれ紫外線照射後0.1~300秒間(例えば、1秒間、10秒間、30秒間、60秒間、90秒間、120秒間、150秒間、180秒間など)および5~15分間(例えば、5分間、8分間、10分間、12分間、15分間など)の積算値も同様に使用可能である。UPEを測定する被験者の肌は、被験者から採取した皮膚組織であってもよい。被験者の肌の黒化しやすさの指標としては、例えば、5.0以下の積算値比であれば黒化しやすいと評価する、などの基準を設けることが考えられるが、これに限定はされない。例えば、4.0~4.5、4.5~5.0、5.0~5.5で層別化して評価することなども考えられる。評価の仕方は、当業者により任意に設定されうる。
【0026】
[UPEの測定]
上述のとおり、UPEによる発光は主に、生化学反応過程における酸化還元反応により産生されるエネルギーにより生じる。特にUPEによる発光は、活性酸素やフリーラジカルの生成を伴う生化学反応において生じ、実際の発光は、生体を構成する多様な物質の酸化的修飾過程で生じる分子の励起による。
【0027】
UPEを用いた酸化ストレス評価には、電磁波としては、電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線などが用いられうるが、好ましくは、紫外線または495nm以下の波長の可視光の照射が用いられる。被験者に与えるダメージの観点からは、より長い波長の電磁波の使用が好ましい。一部の実施態様においては、測定のためにUVA(320~400nm)またはUVB(280~320nm)の紫外線、またはそれらの混合紫外線が用いられる。また、一部の実施態様においては、UVA(320~400nm)の使用が特に好ましい。一部の実施態様においては、測定のために495nm以下の波長の可視光、例えば、420nm、430nm、440nm、450nm、または460nmの可視光も用いられうる。
【0028】
電磁波照射装置は、電磁波の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、UVを用いる場合にはUV光源と、所望される波長のみを通過するフィルターにより構成されうる。電磁波照射装置は、適当な波長範囲の電磁波を発することが可能な照射源を備えていれば特に限定されず、照射源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ウッドランプ、蛍光検査灯、LED等が挙げられる。紫外線照射器としては、例えば、デルマレイ-200(村中医療器株式会社、日本)などが使用されうる。UVAの照射源としては、FL20SBL(東芝、日本)などが使用されうる。430nmの可視光の照射源としては、光反応用LED光源(朝日分光株式会社、日本)などが使用されうる。照射する電磁波の強度は特に限定されないが、例えば、1mW/cm2以上、2mW/cm2以上、10mW/cm2以上、または30mW/cm2以上であり、また、例えば、100mW/cm2以下、150mW/cm2以下、または50mW/cm2以下でありうる。照射時間は、照射する紫外線の強度などを考慮して適宜決定されうるが、例えば5~600秒間、5~480秒間、5~240秒間でありうる。照射電磁波強度と照射時間により決定される電磁波照射量(照射エネルギー)は、例えば、300~8000mJ/cm2、500~5000mJ/cm2、または1000~2500mJ/cm2でありうる。
【0029】
UPEイメージングの撮影装置としては、電荷結合素子カメラを使用することができる。また、電荷結合素子カメラとしては、冷却CCDカメラであることが好ましい。例えば、UPEイメージングの撮影装置を暗室で用いることにより、ヒト生体の顔全体についてUPEを測定することができる。また、電荷結合素子カメラに代えて、光電子増倍管(PMT)を備えたフォトンカウンターを用いて、UPE強度を測定することもできる。UPE強度の算出には、例えば、オープンソースソフトウェアのImageJなどといった画像解析ソフトを用いることができる。
【0030】
一部の実施態様において、UPEは所定期間の測定値の積算値として測定される。積算期間は例えば、10秒間、15秒間、30秒間、45秒間、60秒間、90秒間、2分間、3分間、5分間、8分間、10分間、12分間、15分間、20分間、25分間、または30分間でありうるが、これらに限定はされない。
【0031】
一部の実施態様において、使用される紫外線はUVAでありうるが、これに限定はされない。
【0032】
[被験者の肌の持続的酸化ストレス感受性を評価する方法]
本発明による一部の実施態様は、被験者の肌の持続的酸化ストレス感受性を評価する方法に関する。一部の実施態様において、本開示に従う評価方法は、被験者の肌に紫外線を照射する工程、紫外線照射直後からその0.1~300秒後(例えば、1秒後、10秒後、30秒後、60秒後、90秒後、120秒後、150秒後、180秒後など)までのUPE測定値の第1の積算値を得る工程、紫外線照射から30分~2時間後(例えば2時間後)に5~15分間(例えば、5分間、8分間、10分間、12分間、15分間など)のUPE測定値の第2の積算値を得る工程、第1の積算値と第2の積算値の比率を得る工程を含み、ここで得られた比率が被験者の肌の持続的酸化ストレス感受性の指標となる。肌が持続的酸化ストレス感受性であると評価された被験者に対しては、そのような被験者の皮膚に適したスキンケア製品を提案することができる。
【0033】
本発明者らは、図3の右上のグラフに示されているように、被験者の皮膚への紫外線照射後の初期のUPE(1分程度)と、紫外線照射から30分~2時間後のUPE(10分程度)の積算値の比率から、被験者の肌の持続的酸化ストレス感受性、つまり、持続的な酸化ストレスの残りやすさを評価できることを見出した。本開示の文脈において、「持続的酸化ストレス」とは、紫外線照射約30分後(例えば1~3時間後)にも持続しているような、残存性の酸化ストレスのことを言う。図3の右上のグラフは、紫外線照射直後(紫外線照射から70秒後にUPE測定を開始)からその110~120分後のUPEの積算値を紫外線照射後1分間のUPEの積算値で割った値により、持続的酸化ストレスを評価でき、それが紫外線照射前の肌のL*とも相関することを示している(つまり、肌のL*値が大きいほど、酸化ストレスが持続しやすい)。なお、ここでは紫外線照射から110~120分後の積算値と紫外線照射直後10分間の積算値を使用しているが、それぞれ紫外線照射から30分~2時間後(例えば2時間後)における5~15分間(例えば、5分間、8分間、10分間、12分間、15分間など)のUPE測定値および紫外線照射直後からその0.1~300秒後(例えば、1秒後、10秒後、30秒後、60秒後、90秒後、120秒後、150秒後、180秒後など)までのUPE測定値も同様に使用可能である。UPEを測定する被験者の肌は、被験者から採取した皮膚組織であってもよい。持続的酸化ストレス感受性の指標としては、例えば、1.0以上の積算値比であれば、持続的酸化ストレス感受性である、つまり、酸化ストレスが持続されやすいと評価する、などの基準を設けることが考えられるが、これに限定はされない。例えば、0~0.5、0.5~1.0、1.0~1.5で層別化して評価することなども考えられる。評価の仕方は、当業者により任意に設定されうる。
【0034】
一部の実施態様において、使用される紫外線はUVAでありうるが、これに限定はされない。
【0035】
[被験者の肌の一次黒化のしやすさを評価する方法]
本発明による一部の実施態様は、被験者の肌の一次黒化(即時黒化)のしやすさを評価する方法に関する。一部の実施態様において、本開示に従う評価方法は、被験者の肌のL*値を測定する工程、測定されたL*値を以下の式:
aL × L* + bL (式5)
(ここで、L*はL*値、aLおよびbLは任意の値である。)
に代入した結果にもとづき、被験者の肌の一次黒化のしやすさを評価する工程を含む。パラメータのaLおよびbLを適切に設定することによって、一次黒化が生じた後のL*値あるいはb*値を推定することも可能である。なお、本開示においては、「一次黒化」という場合には、紫外線照射直後に明らかになる黒化を指し、紫外線照射後2時間前後に明らかになる「持続型即時黒化」と区別する。また、本開示において、「一次黒化」と「即時黒化」は同義であり、交換可能に用いられる。一次黒化が生じやすいと評価された被験者に対しては、そのような被験者の皮膚に適したスキンケア製品を提案することができる。
【0036】
本発明者らは、図4の左のグラフに示されているように、紫外線照射前の被験者の肌のL*値が低いほど、紫外線照射後に一次黒化が生じやすいこと(紫外線照射後のL*値の変化が大きいこと)を見出した。よって、被験者の肌のL*値にもとづき、被験者の肌における一次黒化のしやすさを評価することができる。一次黒化のしやすさを評価するための計算式は、例えば、以下のように表されうる:
一次黒化のしやすさの評価値 = aL × L* + bL (式6)
ここで、aLおよびbLは任意の値とすることができるが、適切に調整することによって、一次黒化が生じた後のL*値を推定することも可能である。当業者は目的に応じて、これらのパラメータを適宜設定することができる。評価は例えば、一定の基準値との比較により行うことができる。または評価値を何段階かに層別化して評価を行ってもよい。例えば、即時黒化(一次黒化)のしやすさ[L*値変化率の逆数]を評価する場合、aLは-0.0018またはその付近の値、例えば-0.0022~-0.0014、-0.0021~-0.0015、-0.0020~-0.0016、または-0.0019~-0.0017の範囲に含まれる値とすることができ、bLは1.1578またはその付近の値、例えば1.0420~1.2740、1.1000~1.2160、1.1500~1.1660、または1.1570~1.1590の範囲に含まれる値とすることができるが、これらに限定はされない。
【0037】
また、本発明者らは、図5の左のグラフに示されているように、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、紫外線照射直後の皮膚組織のb*値を紫外線照射前の皮膚組織のb*値で割った値との間に、有意性のあるレベルではないものの比例的な傾向があることを見出した。よって、被験者の肌のL*値から、紫外線照射により生じるb*値(黄み)の変化を評価することができる。このような即時型のb*値(黄み)の変化を評価するための計算式は、例えば、以下のように表されうる:
b*値(黄み)の変化の評価値 = ab × L* + bb (式7)
ここで、abおよびbbは任意の値とすることができるが、適切に調整することによって、紫外線照射後のb*値を推定することも可能である。abは例えば0.00230またはその付近の値、例えば0.00200~0.00260、0.00210~0.00250、0.00220~0.00240、または0.00225~0.00235の範囲に含まれる値とすることができ、bbは0.8445またはその付近の値、例えば0.7600~0.9300、0.7900~0.9000、0.8200~0.8700、または0.8500~0.8400の範囲に含まれる値とすることができるが、これらに限定はされない。当業者は目的に応じて、これらのパラメータを適宜設定することができる。評価は例えば、一定の基準値との比較により行うことができる。または評価値を何段階かに層別化して評価を行ってもよい。
【0038】
[被験者の肌の持続型即時黒化のしやすさを評価する方法]
本発明による一部の実施態様は、被験者の肌の持続型即時黒化のしやすさを評価する方法に関する。一部の実施態様において、本開示に従う評価方法は、被験者の肌のL*値を測定する工程、測定されたL*値を以下の式:
aL × L* + bL (式8)
(ここで、L*はL*値、aLおよびbLは任意の値である。)
に代入した結果にもとづき、被験者の肌の持続型即時黒化のしやすさを評価する工程を含む。パラメータのaLおよびbLを適切に設定することによって、持続型即時黒化が生じた後のL*値あるいはb*値を推定することも可能である。なお、本開示においては、「持続型即時黒化」という場合には、紫外線照射後2~24時間前後に明らかになる黒化を指し、紫外線照射後10分程度で明らかになる「一次黒化」と区別する。持続型即時黒化が生じやすいと評価された被験者に対しては、そのような被験者の皮膚に適したスキンケア製品を提案することができる。
【0039】
本発明者らは、図4の右のグラフに示されているように、紫外線照射前の被験者の肌のL*値が低いほど、紫外線照射後に持続型即時黒化が生じやすいこと(紫外線照射後のL*値の変化が大きいこと)を見出した。よって、被験者の肌のL*値にもとづき、被験者の肌における持続型即時黒化のしやすさを評価することができる。持続型即時黒化のしやすさを評価するための計算式は、例えば、以下のように表されうる:
持続型即時黒化のしやすさの評価値 = aL × L* + bL (式9)
ここで、aLは任意の値であり、bLは任意の値とすることができるが、適切に調整することによって、持続型即時黒化が生じた後のL*値を推定することも可能である。当業者は目的に応じて、これらのパラメータを適宜設定することができる。評価は例えば、一定の基準値との比較により行うことができる。または評価値を何段階かに層別化して評価を行ってもよい。例えば、即時黒化(一次黒化)のしやすさ[L*値変化率の逆数]を評価する場合、aLは-0.0019またはその付近の値、例えば-0.0023~-0.0015、-0.0022~-0.0016、-0.0021~-0.0017、または-0.0020~-0.0018の範囲に含まれる値とすることができ、bLは1.1611またはその付近の値、例えば1.0450~1.2770、1.0900~1.2300、1.1200~1.2000、1.1500~1.1700、または1.1550~1.1650の範囲に含まれる値とすることができるが、これらに限定はされない。
【0040】
また、本発明者らは、図5の右のグラフに示されているように、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、紫外線照射から2時間後の皮膚組織のb*値を紫外線照射前の皮膚組織のb*値で割った値との間に比例関係があることを見出した。よって、被験者の肌のL*値から、紫外線照射により生じる持続型即時黒化およびb*値(黄み)の変化を評価することができる。このような持続型のb*値(黄み)の変化を評価するための計算式は、例えば、以下のように表されうる:
b*値(黄み)の変化の評価値 = ab × L* + bb (式10)
ここで、abおよびbbは任意の値とすることができるが、適切に調整することによって、紫外線照射後のb*値を推定することも可能である。abは例えば0.0058またはその付近の値、例えば0.0052~0.0064、0.0054~0.0062、0.0056~0.0060、または0.0057~0.0059の範囲に含まれる値とすることができ、bbは0.597またはその付近の値、例えば0.530~0.670、0.550~0.650、0.570~0.630、0.580~0.620、または0.590~0.610の範囲に含まれる値とすることができるが、これらに限定はされない。当業者は目的に応じて、これらのパラメータを適宜設定することができる。評価は例えば、一定の基準値との比較により行うことができる。または評価値を何段階かに層別化して評価を行ってもよい。
【0041】
[皮膚組織における持続的酸化ストレスを抑制する物質または組成物のスクリーニング方法]
本発明による一部の実施態様は、皮膚組織における持続的酸化ストレスを抑制する物質または組成物のスクリーニング方法に関する。一部の実施態様において、本開示に従うスクリーニング方法は、物質または組成物を該皮膚組織に接触させる前または接触させた後に、皮膚組織に紫外線を照射する工程、紫外線照射から所定時間の経過後に皮膚組織におけるUPEを測定する工程、および測定されたUPEの値を標準値と比較する工程を含み、ここで、測定されたUPEの値が標準値に比べて低いことが、持続的酸化ストレスの抑制の指標となる。
【0042】
本開示の文脈において、「持続的酸化ストレス」とは、上記のように、紫外線照射約2時間後にも持続しているような、残存性の酸化ストレスのことを言う。一部の実施態様において、紫外線照射から所定時間の経過後に皮膚組織におけるUPEを測定する工程における、前記所定時間は、紫外線照射の1時間後~3時間後までの範囲、例えば、紫外線照射の1時間後、1.5時間後、2時間後、2.5時間後、または3時間後でありうるが、これらに限定はされない。
【0043】
一部の実施態様において、UPEは所定期間の測定値の積算値として測定される。積算期間は例えば、10秒間、15秒間、30秒間、45秒間、60秒間、90秒間、2分間、3分間、5分間、8分間、10分間、12分間、15分間、20分間、25分間、または30分間でありうるが、これらに限定はされない。
【0044】
一部の実施態様において、使用される紫外線はUVAでありうるが、これに限定はされない。
【0045】
[皮膚組織]
一部の実施態様において、スクリーニングに使用する皮膚組織は、生体から単離された皮膚組織、または培養された皮膚組織でありうる。単離された皮膚組織は、例えば美容整形術の際に切除された皮膚組織から調製された市販のものであってもよい。ヒトの皮膚組織試料は、例えば、Biopredic International社(フランス)、Analytical Biological Services(米国)等から購入して利用可能である。皮膚組織を構成しうる培養表皮細胞としては、例えば、表皮角化細胞(ケラチノサイト)が挙げられる。培養された皮膚組織には、例えば3次元皮膚モデルも含まれ、例えば、EpiDerm(商標)(MatTek Corporation社)、EpiSkin (SkinEthic社)、RHE (SkinEthic社)、Labcyteエピモデル(J-TEC社)等を購入して利用可能である。一部の実施態様において、好ましい皮膚組織はヒトの皮膚組織および皮膚細胞である。一部の実施態様において、皮膚組織は、表皮または真皮である。
【0046】
[試験対象となる物質または組成物]
一部の実施態様において、試験対象となる物質または組成物は、例えば、低分子化合物、高分子ポリマー、タンパク質、ペプチド、抗体、酵素、核酸、糖鎖、脂質などの任意の物質、およびそれらを含む組成物でありうる。試験対象となる物質または組成物の一例としては、抗酸化物質が挙げられる。用いられうる抗酸化物質としては、例えばビタミンC、ビタミンE、βカロテン、アスタキサンチンなど、およびそれらの誘導体が挙げられる。また、植物エキス組成物の中には抗酸化作用を示すことが知られているものがある。そのような植物エキス組成物としては、一例として、アロエエキス、イチョウエキス、ウーロン茶エキス、ウコンエキス、ウコン根茎エキス、ウスバサイシン根茎/根エキス、エーデルワイスエキス、オリーブ葉エキス、加水分解シルク末、カワラヨモギエキス、カワラヨモギ花エキス、カンゾウエキス、キイチゴエキス、クチナシエキス、クワエキス、ゲンチアナ根エキス、ゲンノショウコエキス、チャエキス、コーヒーエキス、ゴマエキス、コメヌカエキス、ゴレンシ葉エキス、サイシンエキス、サクラ葉エキス、シロキクラゲ多糖体、スターフルーツ葉エキス、セイヨウノコギリソウエキス、セージエキス、セージ葉エキス、センキュウエキス、トウモロコシエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、パセリエキス、ブドウ種子エキス、ベニバナエキス、ボタンエキス、マグワ根皮エキス、マドンナリリー根エキス、メマツヨイグサ種子エキス、ユリエキス、ルイボスエキス、ローズマリーエキスなどが挙げられる。また、試験対象となる物質または組成物の一例として、化粧料、基材、医薬品、サンスクリーンを挙げることもできる。
【0047】
物質または組成物の皮膚組織への適用は、任意の方法によって行われうる。一部の実施態様においては、物質または組成物は、例えば皮膚組織に塗布されうる。また、一部の実施態様においては、培養液中に物質または組成物を含めることにより、培養皮膚組織への適用が行われうる。なお、一部の実施態様において、本開示に従うスクリーニング方法は、物質または組成物を皮膚組織に適用した後、紫外線を照射する前または後に、物質または組成物を取り除く工程をさらに含んでいてもよい。このような工程を行うことにより、微弱なUPEが、適用された試験物質により減弱されることを防ぐことができる。
【0048】
UPEの値の標準値は、例えば、試験する物質または組成物を接触させていない皮膚組織、あるいは紫外線を照射していないことを除き同一の条件で測定した皮膚組織で測定されるUPEの値でありうる。標準値の設定は、当業者であれば適宜行うことができる。例えば、測定されたUPEの値が標準値に比べて10%以上低い場合に、持続的酸化ストレスの抑制が生じていると評価することができるが、これに限定はされない。
【0049】
[皮膚組織における持続的酸化ストレスを抑制する物質または組成物のスクリーニング方法]
本発明による一部の実施態様は、皮膚組織における持続的酸化ストレスを抑制する物質または組成物のスクリーニング方法に関する。一部の実施態様において、本開示に従うスクリーニング方法は、物質または組成物を該皮膚組織に接触させる前または接触させた後に、皮膚組織に紫外線を照射する工程、紫外線照射から所定時間の経過後に皮膚組織におけるUPEを測定する工程、および測定されたUPEの値を標準値と比較する工程を含み、ここで、測定されたUPEの値が標準値に比べて低いことが、持続的酸化ストレスの抑制の指標となる。
【0050】
本開示の文脈において、「持続的酸化ストレス」とは、上記のように、紫外線照射約2時間後にも持続しているような、残存性の酸化ストレスのことを言う。一部の実施態様において、紫外線照射から所定時間の経過後に皮膚組織におけるUPEを測定する工程における、前記所定時間は、紫外線照射の1時間後~3時間後までの範囲、例えば、紫外線照射の1時間後、1.5時間後、2時間後、2.5時間後、または3時間後でありうるが、これらに限定はされない。
【0051】
一部の実施態様において、UPEは所定期間の測定値の積算値として測定される。積算期間は例えば、10秒間、15秒間、30秒間、45秒間、60秒間、90秒間、2分間、3分間、5分間、8分間、10分間、12分間、15分間、20分間、25分間、または30分間でありうるが、これらに限定はされない。
【0052】
一部の実施態様において、使用される紫外線はUVAでありうるが、これに限定はされない。
【0053】
[皮膚組織における初期酸化ストレスを抑制する物質または組成物のスクリーニング方法]
本発明による一部の実施態様は、皮膚組織における初期酸化ストレスを抑制する物質または組成物のスクリーニング方法に関する。一部の実施態様において、本開示に従うスクリーニング方法は、物質または組成物を皮膚組織に接触させる前または接触させた後に、皮膚組織に紫外線を照射する工程、紫外線照射から所定時間の経過後に皮膚組織におけるUPEを測定する工程、および測定されたUPEの値を標準値と比較する工程を含み、ここで、測定されたUPEの値が標準値に比べて低いことが、初期酸化ストレスの抑制の指標となる。
【0054】
本開示の文脈において、「初期酸化ストレス」とは、紫外線照射直後から10分程度以内に明らかになる酸化ストレスのことを言う。一部の実施態様において、紫外線照射から所定時間の経過後に皮膚組織におけるUPEを測定する工程における、前記所定時間は、紫外線照射の5分後~15分後までの範囲までの範囲、例えば、紫外線照射の5分後、8分後、10分後、12分後、または15分後でありうるが、これらに限定はされない。
【0055】
一部の実施態様において、UPEは所定期間の測定値の積算値として測定される。積算期間は例えば、10秒間、15秒間、30秒間、45秒間、60秒間、90秒間、2分間、3分間、5分間、8分間、10分間、12分間、15分間、20分間、25分間、または30分間でありうるが、これらに限定はされない。
【0056】
一部の実施態様において、使用される紫外線はUVAでありうるが、これに限定はされない。
【0057】
UPEの値の標準値は、例えば、試験する物質または組成物を接触させていない皮膚組織、あるいは紫外線を照射していないことを除き同一の条件で測定した皮膚組織で測定されるUPEの値でありうる。標準値の設定は、当業者であれば適宜行うことができる。例えば、測定されたUPEの値が標準値に比べて10%以上低い場合に、初期酸化ストレスの抑制が生じていると評価することができるが、これに限定はされない。
【0058】
[皮膚組織における即時黒化を抑制する物質または組成物のスクリーニング方法]
本発明による一部の実施態様は、皮膚組織における即時黒化を抑制する物質または組成物のスクリーニング方法に関する。一部の実施態様において、本開示に従うスクリーニング方法は、物質または組成物を皮膚組織に接触させる前または接触させた後に、皮膚組織に紫外線を照射する工程、紫外線照射から所定時間の経過後に皮膚組織におけるUPEを測定する工程、および測定されたUPEの値を標準値と比較する工程を含み、ここで、測定されたUPEの値が標準値に比べて低いことが、即時黒化の抑制の指標となる。
【0059】
本開示の文脈において、単に「即時黒化」(または「一次黒化」)と言う場合には、紫外線照射後10分程度までに明らかになる黒化を指し、紫外線照射後2~24時間前後に明らかになる「持続型即時黒化」と区別する。一部の実施態様において、紫外線照射から所定時間の経過後に皮膚組織におけるUPEを測定する工程における、前記所定時間は、紫外線照射の照射直後~20分後までの範囲、例えば、紫外線照射の1分後、2分後、3分後、5分後、8分後、10分後、12分後、または15分後でありうるが、これらに限定はされない。
【0060】
一部の実施態様において、UPEは所定期間の測定値の積算値として測定される。積算期間は例えば、10秒間、15秒間、30秒間、45秒間、60秒間、90秒間、2分間、3分間、5分間、8分間、10分間、12分間、15分間、20分間、25分間、または30分間でありうるが、これらに限定はされない。
【0061】
一部の実施態様において、使用される紫外線はUVAでありうるが、これに限定はされない。
【0062】
UPEの値の標準値は、例えば、試験する物質または組成物を接触させていない皮膚組織、あるいは紫外線を照射していないことを除き同一の条件で測定した皮膚組織で測定されるUPEの値でありうる。標準値の設定は、当業者であれば適宜行うことができる。例えば、測定されたUPEの値が標準値に比べて10%以上低い場合に、即時黒化の抑制が生じていると評価することができるが、これに限定はされない。
【0063】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば本発明の構成要件の追加、削除および置換を行うことができる。
【実施例0064】
実施例1:皮膚組織試料におけるUPEおよび皮膚色の測定
皮膚色の異なる皮膚組織を用意し皮下脂肪を取り除いた。UVA照射前の皮膚組織のUPE(バイオフォトン)を測定し、次に皮膚組織の角層側からUVAを6.0mW/cm2の強度で30分間照射し、照射70秒後にUPEの測定を開始し、1秒おきのフォトンカウント値を2時間後まで測定し、その影響を観察した。UVA照射で誘発されたUPEのフォトンカウント値はUVA照射前のUPEを差し引いて算出した。UVA照射時は乾燥を防ぐために、PBS(-)を浸漬させたキムワイプの上に皮膚組織をのせた。またUPEは光電子増倍管 [PMT] R2257P (浜松ホトニクス)を組み込んだフォトンカウンティング装置(東北電子産業)を用いて測定し、皮膚の角層側を検出器に向けてセットし測定した。皮膚色は分光測色計CM-700d(KONICA MINOLTA)を用い、UVA照射前、UVA照射直後、UVA照射2時間後に皮膚の角層側から測定し、UVA照射で皮膚色が変化するかどうかを評価した。
【0065】
実施例2:皮膚のL * 値と紫外線照射後に生じるUPEとの関係
図1は、皮膚組織のL*値とUPE測定値との関係を表すグラフを示している。UVA照射70秒後から120分後までの皮膚組織のUPEを記録した。左のグラフは、測定した12サンプルの各皮膚組織のL*(横軸)と最初の10分間に記録されたUPEの積算値(縦軸)との関係を示している。このグラフから、L*の値が大きいほど、UPEの値も大きい、すなわち、酸化ストレスが高いことがわかる。また、右のグラフは、測定した12サンプルの各皮膚組織のL*(横軸)と最後の10分間に記録されたUPEの積算値(縦軸)との関係を示している。このグラフからも、L*の値が大きいほど、UPEの値も大きい、すなわち、酸化ストレスが高いことがわかる。特に、UVAの照射から120分後にも、有意なUPE、すなわち酸化ストレスが観察され、それがL*に依存的であることは予想外の驚くべき知見である。このように長く続く酸化ストレスは、持続的酸化ストレス(persistent oxidative stress)とも表現できる。
【0066】
実施例3:皮膚のL * 値と紫外線照射後に生じるUPEとの関係
図2は、皮膚組織のメラニンインデックスとUPE測定値との関係を表すグラフを示している。UVA照射70秒後から120分後までの皮膚組織のUPEを記録した。左のグラフは、測定した12サンプルの各皮膚組織のメラニンインデックス値(横軸)と最初の10分間に記録されたUPEの積算値(縦軸)との関係を示している。このグラフから、メラニンインデックスの値が大きいほど、UPEの値が小さくなる、すなわち、酸化ストレスが少ないことがわかる。また、右のグラフは、測定した12サンプルの各皮膚組織のメラニンインデックス(横軸)と最後の10分間に記録されたUPEの積算値(縦軸)との関係を示している。このグラフからも、メラニンインデックスの値が大きいほど、UPEの値が小さい、すなわち、酸化ストレスが少ないことがわかる。よって、被験者の肌のメラニンインデックスから、紫外線照射により生じる酸化ストレスを評価することが可能であることがわかる。
【0067】
実施例4:皮膚のL * 値と紫外線照射後に生じるUPEとの関係
図3は、皮膚組織のL*値とUPE測定値との関係を表すグラフを示している。12サンプルの皮膚組織にUVA照射70秒後から120分後までのUPEを記録した。左上のグラフは、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、UPE測定開始直後から10分間のUPE積算値をUPE測定開始直後から1分間のUPE積算値で割った値との関係を示している。このグラフからは、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、UPE測定開始直後から10分間のUPE積算値をUPE測定開始直後から1分間のUPE積算値で割った値との間に統計学的に有意ではないものの比例関係があることが見て取れる。左下のグラフは、紫外線照射から2時間後のL*値と紫外線照射前の皮膚組織のL*値との差と、UPE測定開始直後から10分間のUPE積算値をUPE測定開始直後から1分間のUPE積算値で割った値との関係を示している。このグラフからは、紫外線照射から2時間後のL*値と紫外線照射前の皮膚組織のL*値との比と、UPE測定開始直後から10分間のUPE積算値をUPE測定開始直後から1分間のUPE積算値で割った値との間に比例関係があることが見て取れる。よって、紫外線照射直後から約10分間のUPE積算値を紫外線照射直後から1分間のUPE積算値で割った値を算出することにより、被験者の肌の黒化しやすさを評価することが可能であることが理解される。
【0068】
右上のグラフは、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、UPE測定開始後110分後から120分後までのUPE積算値をUPE測定開始直後から1分間のUPE積算値で割った値との関係を示している。このグラフからは、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、UPE測定開始後110分後から120分後までのUPE積算値をUPE測定開始直後から1分間のUPE積算値で割った値との間に比例関係があることが見て取れる。右下のグラフは、紫外線照射から2時間後のL*値と紫外線照射前の皮膚組織のL*値との比と、UPE測定開始後110分後から120分後までのUPE積算値をUPE測定開始直後から1分間のUPE積算値で割った値との関係を示している。このグラフには特段、比例関係は見出されない。
【0069】
実施例5:紫外線照射後のL * 値およびb * 値と紫外線照射前のL * 値との関係
図4は、紫外線照射後の皮膚組織のL*値と即時黒化のしやすさとの関係を表すグラフを示している。左のグラフは、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、紫外線照射直後の皮膚組織のL*値を紫外線照射前の皮膚組織のL*値で割った値との関係を示している。このグラフからは、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、紫外線照射直後の皮膚組織のL*値を紫外線照射前の皮膚組織のL*値で割った値との間に比例関係があることが見て取れる。右のグラフは、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、紫外線照射から2時間後の皮膚組織のL*値を紫外線照射前の皮膚組織のL*値で割った値との関係を示している。このグラフからは、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、紫外線照射から2時間後の皮膚組織のL*値を紫外線照射前の皮膚組織のL*値で割った値との間に比例関係があることが見て取れる。
【0070】
図5の左のグラフは、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、紫外線照射直後の皮膚組織のb*値を紫外線照射前の皮膚組織のb*値で割った値との関係を示している。このグラフからは、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、紫外線照射直後の皮膚組織のb*値を紫外線照射前の皮膚組織のb*値で割った値との間に、有意性のあるレベルではないものの比例的な傾向があることが見て取れる。よって、被験者の肌のL*値から、紫外線照射により生じるb*値(黄み)の変化を評価することが可能であることがわかる。右のグラフは、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、紫外線照射から2時間後の皮膚組織のb*値を紫外線照射前の皮膚組織のb*値で割った値との関係を示している。このグラフからは、紫外線照射前の皮膚組織のL*値と、紫外線照射から2時間後の皮膚組織のb*値を紫外線照射前の皮膚組織のb*値で割った値との間に比例関係があることが見て取れる。よって、被験者の肌のL*値から、紫外線照射により生じる持続型即時黒化およびb*値(黄み)の変化を評価することが可能であることがわかる。

図1
図2
図3
図4
図5