(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034083
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 6/18 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B65D6/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140160
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 寿敏
【テーマコード(参考)】
3E061
【Fターム(参考)】
3E061AA02
3E061AB09
3E061CA02
3E061CA12
3E061DA01
3E061DB17
(57)【要約】
【課題】構成部材同士の間への収容物の挟み込みが起こりにくい容器を提供すること。
【解決手段】樹脂製の複数の構成部材を組み合わせて箱状をなさしめた容器1において、複数の構成部材のうち第1構成部材5と第2構成部材6との突き合わせ箇所に、第1構成部材と第2構成部材とが内外方向に重複して存在する重複区間Lが設けられており、第2構成部材の内壁面のうち重複区間に隣接する区間に段差形状部10が形成されており、 段差形状部は、第1構成部材の内壁面50に対して段差をなしている部分であることとした。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の複数の構成部材を組み合わせて箱状をなさしめた容器であって、
前記複数の構成部材のうち第1構成部材と第2構成部材との突き合わせ箇所に、前記第1構成部材と前記第2構成部材とが内外方向に重複して存在する重複区間が設けられており、
前記第2構成部材の内壁面のうち前記重複区間に隣接する区間に段差形状部が形成されており、
前記段差形状部は、前記第1構成部材の内壁面に対して段差をなしている部分である容器。
【請求項2】
請求項1に記載の容器であって、
前記重複区間では、前記第2構成部材が前記第1構成部材の外側に位置しており、
前記段差形状部は、前記第1構成部材の内壁面に対して外側に向かって凹んだ部分である容器。
【請求項3】
請求項2に記載の容器であって、
前記段差形状部の内部側開口位置における開口幅が3mm以上である容器。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の容器であって、
前記第2構成部材の内壁面は、
前記第1構成部材の内壁面より凹んでいる部分である凹面部と、
前記凹面部よりも内側に向かって出っ張っている通常部と、
前記通常部と前記凹面部との間に位置する境界部とを有し、
前記段差形状部は、前記第1構成部材の先端面と、前記凹面部と、前記境界部とで構成され、上下方向に延在している容器。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか1つに記載の容器であって、
前記段差形状部は、内部側に向かって広がった傾斜形状をなしている容器。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の容器であって、
前記複数の構成部材に、容器の底面部を構成するものと容器の側壁部を構成するものとが含まれ、
前記第1構成部材と前記第2構成部材との少なくとも一方は、容器の側壁部を構成するものであり、
前記第1構成部材と前記第2構成部材との少なくとも一方が、容器の底面部に対する移動が可能な可動部材であり、
前記第1構成部材の一部と前記第2構成部材の一部とが接触している接触状態と、前記第1構成部材および前記第2構成部材の前記接触状態での接触箇所が離間している離間状態とに変位可能な容器。
【請求項7】
請求項4に記載の容器であって、
前記第1構成部材の外壁面側における前記重複区間以外の部分に、前記第2構成部材と対向する第1対向面が形成されており、
前記第2構成部材に、前記第1対向面と対向する第2対向面が形成されており、
前記第1対向面と前記第2対向面との間に隙間があり、
前記段差形状部の内部側開口位置における開口幅が、前記隙間のクリアランス寸法の3倍以上であり、
前記凹面部のうち前記重複区間以外の部分の幅方向寸法が前記隙間のクリアランス寸法より大きい容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の樹脂製の構成部材を組み合わせて箱状をなさしめた容器が使用されている。特許文献1に記載されている「折り畳みコンテナ」もその一例である。同文献の容器では、側壁を構成する部材と、そのすぐ下の部材(底部を構成する部材)との間に隙間を設けている。側壁を可倒のものとしておりその開閉動作をスムースに行えるようにするためである。さらに、底部を構成する部材から上方に向けて凸部を設けるとともに、側壁を構成する部材には下方に向けて凸部を設けている。両凸部は内外方向に重複している。隙間を通して何らかの異物が容器内に侵入してくるのを防ぐためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術には、次のような問題点があった。樹脂製の構成部材は、成形技術上の問題および素材樹脂の特性の問題により、不可避的に成形品の寸法にある程度のばらつきが出る。そのため、上記の隙間が、個体によっては設計上の想定より大きくなる場合がある。このように大きめの隙間を有する容器では、収容物が隙間に入り込んでしまうことがある。収容物の形状によっては、その一部が隙間に挟み付けられた状態となることもある。この場合、挟み付けられた収容物の取り出しに難がある。
【0005】
本開示技術の課題とするところは、構成部材同士の間への収容物の挟み込みが起こりにくい容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における容器は、樹脂製の複数の構成部材を組み合わせて箱状をなさしめたものであって、複数の構成部材のうち第1構成部材と第2構成部材との突き合わせ箇所に、第1構成部材と第2構成部材とが内外方向に重複して存在する重複区間が設けられており、第2構成部材の内壁面のうち重複区間に隣接する区間に段差形状部が形成されており、段差形状部は、第1構成部材の内壁面に対して段差をなしている部分である。
【0007】
上記態様における容器では、第1構成部材と第2構成部材との重複区間に隣接して段差形状部が配置されることで、第1構成部材と第2構成部材との突き合わせ箇所付近に両構成部材間の間隔の狭い隙間ができないようにしている。これにより、構成部材同士の間への収容物の挟み込みが起こりにくい構造としている。
【0008】
上記態様における容器では、重複区間では、第2構成部材が第1構成部材の外側に位置しており、段差形状部は、第1構成部材の内壁面に対して外側に向かって凹んだ部分であることが望ましい。これにより、第1構成部材と第2構成部材との突き合わせ箇所付近における内面側には、凹状の段差形状部が存在しているので、段差形状部の空間により、収容物の挟み込みが防止される。
【0009】
段差形状部が凹状である態様の容器ではさらに、段差形状部の内部側開口位置における開口幅が3mm以上であることが望ましい。このように段差形状部の開口寸法が大きいと、収容物の挟み付けが起こりにくい。
【0010】
段差形状部が凹状である態様の容器ではまた、第2構成部材の内壁面は、第1構成部材の内壁面より凹んでいる部分である凹面部と、凹面部よりも内側に向かって出っ張っている通常部と、通常部と凹面部との間に位置する境界部とを有し、段差形状部は、第1構成部材の先端面と、凹面部と、境界部とで構成され、上下方向に延在していることが望ましい。このように画定された段差形状部の空間により、収容物の挟み付けが防止される。
【0011】
段差形状部が凹状である態様の容器ではさらに、段差形状部は、内部側に向かって広がった傾斜形状をなしていることが望ましい。段差形状部のこのような形状もまた、収容物の挟み込みを防止する上で有利である。
【0012】
上記のいずれかの態様の容器ではまた、複数の構成部材に、容器の底面部を構成するものと容器の側壁部を構成するものとが含まれ、第1構成部材と第2構成部材との少なくとも一方は、容器の側壁部を構成するものであり、第1構成部材と第2構成部材との少なくとも一方が、容器の底面部に対する移動が可能な可動部材であり、第1構成部材の一部と第2構成部材の一部とが接触している接触状態と、第1構成部材および第2構成部材の接触状態での接触箇所が離間している離間状態とに変位可能であることが望ましい。これにより、容器の側壁部を構成する構成部材同士での突き合わせ箇所における収容物の挟み込みが防止される。
【0013】
段差形状部が凹面部等により構成される態様の容器ではさらに、第1構成部材の外壁面側における重複区間以外の部分に、第2構成部材と対向する第1対向面が形成されており、第2構成部材に、第1対向面と対向する第2対向面が形成されており、第1対向面と第2対向面との間に隙間があることが望ましい。この隙間により、第1構成部材と第2構成部材との突き合わせを良好に行うことができる。さらに、段差形状部の内部側開口位置における開口幅が、隙間のクリアランス寸法の3倍以上であることが望ましい。さらに、凹面部のうち重複区間以外の部分の幅方向寸法が隙間のクリアランス寸法より大きいことが望ましい。このように段差形状部の奥側の位置でも空間の寸法が大きいことで、収容物の挟み付けがより確実に防止される。
【発明の効果】
【0014】
本構成によれば、構成部材同士の間への収容物の挟み込みが起こりにくい容器が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1の容器の構成部材を分離した状態を示す斜視図である。
【
図3】短辺壁部材のみを内向きに倒した状態で示す容器の斜視図である。
【
図4】短辺壁部材および長辺壁部材をいずれも内向きに倒した状態で示す容器の斜視図である。
【
図5】長辺壁部材のうち開閉部材を外向きに倒した状態で示す容器の斜視図である。
【
図6】開閉部材を固定部材から分離した状態を内面側から見て示す部分斜視図である。
【
図7】開閉部材を固定部材から分離した状態を外面側から見て示す部分斜視図である。
【
図8】長辺壁部材と短辺壁部材との合わせ箇所付近を内側斜め上方から見て示す部分斜視図である。
【
図9】長辺壁部材と短辺壁部材との合わせ箇所付近を短辺壁部材の外側斜め上方から見て示す部分斜視図である。
【
図10】段差形状部付近を上方から見て示す部分平面図である。
【
図11】
図10に示されるもののうち固定部材のみを示す部分平面図である。
【
図12】
図10に示されるもののうち可動部材のみを示す部分平面図である。
【
図14】段差形状部の形状の変形例(その1)を示す部分平面図である。
【
図15】段差形状部の形状の変形例(その2)を示す部分平面図である。
【
図16】段差形状部の形状の変形例(その3)を示す部分平面図である。
【
図17】段差形状部の形状の変形例(その4)を示す部分平面図である。
【
図18】
図1の一部分を拡大して示す斜視図である。
【
図19】
図18に示されるものを水平面で切開して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態に係る容器1は、
図1に示すように上方が開口した略直方体の箱状のものである。容器1は、樹脂製の複数の構成部材を組み合わせて構成されている。複数の構成部材とは、底面部材2、短辺壁部材3、長辺壁部材4、の3種類である。容器1において、底面部材2は底面部を、短辺壁部材3は短辺の側壁部を、長辺壁部材4は長辺の側壁部を、それぞれ構成する。
図2に、各構成部材を分離した状態を示す。これらの各構成部材はいずれも、樹脂の成型品である。
【0017】
容器1における短辺壁部材3および長辺壁部材4は、可倒式になっている。
図3に示すようにまず2枚の短辺壁部材3を内向きに倒し、その後に2枚の長辺壁部材4も内向きに倒して
図4の状態とすることができる。長辺壁部材4はさらに、固定部材5と可動部材6とに分かれている。
【0018】
図5に示すように容器1を、可動部材6のみを外向きに倒した状態に変位させることができる。
図5における可動部材6は、
図1の状態と比較して外側に移動した開状態にある。これに対して
図1における可動部材6は閉状態にある。より具体的には、開状態での可動部材6は、その下辺7をヒンジ軸として外向きに倒されている。このため、可動部材6の縦辺8と固定部材5の縦辺9とが離間している離間状態にある。可動部材6は、容器1の底面部に対する移動が可能なものである。可動部材6は、
図6、
図7に示すように、固定部材5から完全に分離することもできる。固定部材5および可動部材6はいずれも、容器1における長辺の側壁部を構成する部材である。
【0019】
長辺壁部材4と短辺壁部材3との合わせ箇所付近を内側斜め上方から見ると、
図8に示されるようになっている。
図9はこの箇所をやや異なる角度から見た図である。
図8および
図9に示されるように、可動部材6を閉じた状態における長辺壁部材4の内面側では、固定部材5と可動部材6との突き合わせ箇所に、段差形状部10が形成されている。段差形状部10について、
図10~
図12により説明する。
【0020】
図10に示されるように、固定部材5と可動部材6との突き合わせ箇所には、固定部材5と可動部材6とが内外方向に重複して存在する重複区間Lが存在する。重複区間Lでは、可動部材6が固定部材5より外側に位置している。固定部材5が第1構成部材に相当し、可動部材6が第2構成部材に相当する。
図10では、固定部材5および可動部材6の上側が容器1の外側であり、下側が内側つまり容器1の収容空間である。段差形状部10は重複区間Lに隣接している。より詳細には、容器1を平面視で見た場合に長辺壁部材4の幅方向において重複区間Lに隣接している。段差形状部10は、重複区間Lに対して可動部材6の側にある。
【0021】
固定部材5は
図11に示すように、内壁面50と、第1凸部51と、外側部52とを有している。内壁面50は、固定部材5における容器1の収容空間に面する面である。第1凸部51は、固定部材5の厚み方向の一部に設けられた、可動部材6に向かって突出する形状の部位である。第1凸部51は、固定部材5の厚み全体の中でも内側寄りの位置に形成されている。外側部52は、固定部材5における容器1の外側に面する部位である。
【0022】
固定部材5にはさらに、先端面53、外側面54、第1対向面55が形成されている。先端面53は、第1凸部51の先端の面である。先端面53は、
図10に現れている範囲内では固定部材5全体の中でも可動部材6側の最先端の面である。外側面54は、第1凸部51の外側の面である。第1対向面55は、第1凸部51より厚み方向外側の部分における可動部材6に対向する面である。
【0023】
可動部材6は
図12に示すように、通常部60と、凹面部61と、境界部62と、第2対向面63とを有している。通常部60は、可動部材6における容器1の収容空間に面する面である。凹面部61は、固定部材5の内壁面50より凹んだ部分である。凹面部61は、通常部60より凹んだ部分でもある。境界部62は、通常部60と凹面部61との間に位置する部分である。第2対向面63は、凹面部61より厚み方向外側において
図10中で固定部材5と対向する面である。通常部60は、固定部材5の内壁面50と略同一面となっている。
【0024】
通常部60と凹面部61と境界部62とはいずれも、容器1の収容空間に面する内壁面である。その中でも通常部60は、もっとも面積が広く、前述の段差形状部10以外の部分である。凹面部61は
図10中では、その一部が固定部材5の外側面54に接しており、残部のみが収容空間に面している。可動部材6のうち凹面部61の背後の部分を第2凸部64という。第2凸部64は、可動部材6のうち厚み方向に外側寄りの範囲にて固定部材5に向かって突出する形状の部位である。
【0025】
図10中の重複区間Lに存在しているのは、固定部材5のうち第1凸部51、および可動部材6のうち第2凸部64である。重複区間Lでは、第1凸部51の外側に第2凸部64が存在している。第1凸部51の外側の外側面54と、第2凸部64の内側の凹面部61とは接している。
図10中の段差形状部10を構成するのは、可動部材6の凹面部61および境界部62と、固定部材5の先端面53である。これにより、固定部材5の内壁面50より凹んだ部分である段差形状部10が構成されている。段差形状部10は、
図8、
図9に見るように上下方向に延在して設けられている。
図10中で固定部材5の第1対向面55と可動部材6の第2対向面63とは、間に隙間Cを置いて対面している。
【0026】
図5に示した開状態では、可動部材6が倒されていることにより、第1凸部51の外側の外側面54と、第2凸部64の内側の凹面部61とが離間している。この開状態においても、底面部材2の上に収容物を積載することができる。その後に可動部材6を立てて
図1の閉状態とすることで、容器1の収容空間に収容物を収容した状態とすることができる。
【0027】
その際に本形態の容器1では、固定部材5と可動部材6との突き合わせ箇所における収容物の挟み込みが起こりにくいという利点がある。突き合わせ箇所に前述の段差形状部10が形成されるからである。閉状態にしたときに段差形状部10があるということは、固定部材5の先端面53と可動部材6の境界部62との間に有意なスペースがあり、狭い隙間の箇所が存在しないということである。このため、小サイズの収容物や柔軟な収容物であっても、先端面53と境界部62との間に挟み込まれてしまうということがない。もし、閉状態にしたときに先端面53と境界部62とが接触するかまたはごく近接する設定になっていると、可動部材6を閉じたときに収容物が先端面53と境界部62との間に挟み付けられてしまうおそれがある。しかし本形態の容器1ではそのようなおそれはない。
【0028】
本形態の容器1でも、閉状態では、第1凸部51の外側の外側面54と第2凸部64の内側の凹面部61とが重複区間Lの範囲内では接触する接触状態にある。しかしながらここに収容物が挟み込まれる確率は著しく低い。外側面54と凹面部61との間の空間は、底面部材2の上に収容された収容物からみて、第1凸部51を超えた向こう側の空間だからである。むしろ、外側面54と凹面部61とが接触していることにより、収容空間への外部からの異物の進入を防止できていることの利点の方が大きい。
【0029】
段差形状部10の詳細について、
図13によりさらに説明する。
図13中、段差形状部10の付近に、第1対向面55と第2対向面63との対向箇所がある。その隙間Cは、1mm以上あることが望ましい。その理由は、固定部材5および可動部材6の寸法公差にある。これらがいずれも樹脂の成型品であるため、設計上その程度のクリアランス寸法を設けておかないと、個体によっては可動部材6を閉じることができない場合があるからである。
【0030】
段差形状部10についてもある程度の寸法があることが好ましい。ただしその理由は、隙間Cの場合と異なり、前述のように収容物の挟み込みの防止である。段差形状部10に求められる寸法は、幅方向の寸法であり、
図13中では左右方向の寸法である。段差形状部10の幅方向寸法には、内部側開口位置における寸法と、外部側位置における寸法との2通りがある。
【0031】
内部側開口位置における寸法とは、段差形状部10における収容空間側の開口幅のことである。
図13中では、先端面53の内部側端部Pから、境界部62と通常部60との境目Sまでの開口幅Fのことである。開口幅Fは、3mm以上あることが望ましい。または、隙間Cの3倍以上あることが望ましい。
【0032】
外部側位置における寸法とは、段差形状部10における奥側の位置つまり容器外部寄りの位置での幅のことである。
図13中ではこれは、凹面部61のうち重複区間L以外の部分の幅である。つまり、先端面53の外部側端部Qから、凹面部61と境界部62との境目Rまでの幅Eのことである。幅Eは、隙間Cより大きいことが望ましい。
【0033】
段差形状部10はまた、内部側に向かって広がった傾斜形状をなしていることが望ましい。
図13中ではこのことは、境界部62が、収容空間の方を向いた傾斜面となっていることにより実現されている。このようにして本形態の容器1では、固定部材5と可動部材6との突き合わせ箇所における収容物の挟み込みが起こりにくい構成が実現されている。それでいて収容空間への外部からの異物の進入も防止している。
【0034】
段差形状部10の形状は、
図13に示したものには限られない。
図14~
図17にその変形例を示す。
図14は、可動部材6の内面のほぼ全体を凹面部61としたものである。通常部60と凹面部61とを略同一面にしたものと考えてもよい。
図15は、境界部62を傾斜面ではなく垂直面としたものである。
図16は、境界部62ばかりでなく固定部材5の先端面53も収容空間の方を向いた傾斜面としたものである。
図17は、境界部62を垂直面としつつ、先端面53の少なくとも一部を収容空間の方を向いた傾斜面としたものである。これらのものでも、固定部材5と可動部材6との突き合わせ箇所における収容物の挟み込みを抑止しつつ、収容空間への外部からの異物の進入も防止している。
図16の段差形状部10および
図17の段差形状部10では、内部側に向かって広がった形状である点も達成している。
【0035】
ここまでの説明では、段差形状部10に係わる第1構成部材および第2構成部材がいずれも、容器1における長辺の側壁部を構成する部材であった。しかし本開示技術の特徴は、容器1における他の箇所への適用も可能である。その例として、底面部材2と短辺壁部材3との突き合わせ箇所への適用例を
図18および
図19により説明する。
【0036】
図18は、
図1中の範囲Mを拡大した図である。そこには、底面部材2と短辺壁部材3と長辺壁部材4との3面のコーナー付近が描かれている。ここで着目するのは、短辺壁部材3の下側の箇所である。そこには土手部20が存在しており、土手部20は底面部材2の一部分である。
図18で見ると、土手部20に部分的に凹んでいる段差形状部21が2箇所形成されている。段差形状部21と段差形状部21との間に見えているのは、隙間カバー22という部材である。隙間カバー22は、底面部材2の一部分でも短辺壁部材3の一部分でもない独立の部材である。隙間カバー22も、容器1の樹脂製の構成部材の1つである。
【0037】
容器1を
図18中のA-Aレベルの水平面で切断したときの切断面より下の部分を、
図19に示す。A-Aレベルは、底面部材2と短辺壁部材3との突き合わせレベルよりやや下のレベルである。
図19中にハッチングを付して示されている部分は、切断により現れた面である。
図19中に現れているものの大部分は、底面部材2の一部分である。
図19に示されるように底面部材2の土手部20には、袋状のヒンジ受け部23が形成されている。ヒンジ受け部23は、容器1の内部側および上方に向かって開口した箇所である。ただしヒンジ受け部23の内部側の開口は、隙間カバー22により閉鎖されている。ヒンジ受け部23の上方側の開口は、短辺壁部材3により閉鎖されている。隙間カバー22は、土手部20におけるヒンジ受け部23またはその周囲に取り付けられている。ヒンジ受け部23の内部には、ヒンジ部30が存在している。ヒンジ部30は、底面部材2の一部分ではなく、短辺壁部材3の一部分である。隙間カバー22を取り付けた状態で、ヒンジ部30を中心にして短辺壁部材3を内部側に倒し込み、
図3に示した状態とすることができるものである。
【0038】
隙間カバー22を土手部20に取り付ける代わりにヒンジ部30に取り付ける構成とすることもできる。この構成の場合にも、隙間カバー22を取り付けた状態で、ヒンジ部30を中心にして短辺壁部材3を内部側に倒し込み、
図3に示した状態とすることができる。隙間カバー22はまた、ヒンジ受け部23の内部側の開口と、上方の開口の少なくとも一部とを閉鎖するように構成されたものであってもよい。
【0039】
図19に示されるように、土手部20にはその一部分として、凹面部24が設けられている。凹面部24は、ヒンジ受け部23における容器1の内部側に、その開口範囲を一部限定するように設けられている。凹面部24はまた、土手部20の内壁面のうち凹面部24以外の部分に対して段差をなしている。隙間カバー22には、第1凸部25が設けられている。
図19に示されるように容器1では、第1凸部25の一部と凹面部24の一部とが内外方向に重複して存在している。その重複区間では、容器1の内外方向に対して、凹面部24が第1凸部25の外側に位置しており、凹面部24の内側面と第1凸部25の外側面とが接触している。これにより、土手部20と隙間カバー22との突き合わせ箇所に段差形状部21が形成されている。段差形状部21も、土手部20と隙間カバー22との間への収容物の挟み込みの防止に貢献している。同様に、底面部材2における長辺側の土手部26と隙間カバー27(
図18参照)との間にも段差形状部を設けることができる。
【0040】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、容器1を構成する樹脂製の複数の構成部材の突き合わせ箇所に重複区間を設けて両構成部材が内外方向に重複して存在するようにしている。そして重複区間に隣接して段差形状部が形成されるようにしている。これにより、構成部材同士の間への収容物の挟み込みが起こりにくい容器1が実現されている。
【0041】
なお、本実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、前記形態では、内壁面50に対して段差をなしている部分である段差形状部10、段差形状部21はいずれも、容器1の収容空間から見て、他の部分に対して凹んでいる形状の部分であることとした。このようなものに限らず、収容空間から見て他の部分に対して凸状をなすように構成された段差形状部であってもよい。
【0042】
固定部材5と可動部材6との突き合わせ箇所、底面部材2と隙間カバー22との突き合わせ箇所に限らず、例えば短辺壁部材3と長辺壁部材4との突き合わせ箇所など、どの構成部材間の突き合わせ箇所についても、段差形状部の適用が可能である。
図1に示した各部材に加えて蓋部材を有する場合には、蓋部材と他の構成部材間の突き合わせ箇所についても、段差形状部の適用が可能である。
図18に示した土手部20の段差形状部21がない構成であってもよい(
図5、
図8参照)。
【0043】
本形態に係る容器1は、短辺壁部材3、長辺壁部材4をいずれも可倒式(
図3、
図4参照)のものとして具体化したものである。しかしこれに限らず、短辺壁部材3、長辺壁部材4の少なくとも一方を、底面部材2に対して着脱自在な組み立て式の容器として具体化することも可能である。あるいは、短辺壁部材3、長辺壁部材4の少なくとも一方を、底面部材2とは別部材であるが一旦取り付けた後は取り外さない構成の容器として具体化することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 容器 24 凹面部 60 通常部
2 底面部材 25 第1凸部 61 凹面部
3 短辺壁部材 26 土手部 62 境界部
4 長辺壁部材 50 内壁面 63 第2対向
5 固定部材 51 第1凸部 64 第2凸部
6 可動部材 52 外側部 C 隙間
10 段差形状部 53 先端面 L 重複区間
21 段差形状部 54 外側面
22 隙間カバー 55 第1対向面