(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034090
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】離脱防止装置及びその爪部材
(51)【国際特許分類】
F16L 21/08 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
F16L21/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140169
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】笠原 太郎
【テーマコード(参考)】
3H015
【Fターム(参考)】
3H015FA04
(57)【要約】
【課題】爪部材や収納凹部を破損させることなく、挿口管の受口側に対する抜出しを確実に防止する離脱防止装置、及びその爪部材を提供する。
【解決手段】挿口管11に対して受口側に内周方向を向いて開口形成された収納凹部16と、収納凹部16内に傾動可能に収納された爪部材200とを有する離脱防止装置15であって、収納凹部16内には、爪部材200の一方の側壁を支持して傾動させる支持壁16aが周方向に延設されており、爪部材200の側壁若しくは支持壁16aは、周方向の端部側に凹部16bが形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿口管に対して受口側に内周方向を向いて開口形成された収納凹部と、該収納凹部内に傾動可能に収納された爪部材とを有する離脱防止装置であって、
前記収納凹部内には、前記爪部材の一方の側壁を支持して傾動させる支持壁が周方向に延設されており、前記爪部材の前記側壁若しくは前記支持壁は、周方向の端部側に凹部が形成されていることを特徴とする離脱防止装置。
【請求項2】
前記凹部は、周方向の終端に向かって深く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の離脱防止装置。
【請求項3】
前記凹部はテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の離脱防止装置。
【請求項4】
前記凹部は周方向の両端部側に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の離脱防止装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記爪部材の前記側壁の内径側若しくは前記支持壁の内径側に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の離脱防止装置。
【請求項6】
挿口管に対して受口側に内周方向を向いて開口形成された収納凹部内に傾動可能に収納された爪部材であって、
前記爪部材の少なくとも一方の側壁は、周方向の端部側に凹部が形成されていることを特徴とする爪部材。
【請求項7】
前記凹部は、前記爪部材に形成された係止爪の背面側に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の爪部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿口管に対して受口側に内周方向を向いて開口形成された収納凹部と、該収納凹部内に傾動可能に収納された爪部材とを有する離脱防止装置、及びその爪部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の離脱防止装置は、分割部材であって、挿口管の挿口部の周方向に沿って弧状に形成され、該挿口部の外周面と係止する係止部と、挿口部の外周面に向けて開口し係止部を内部に収納する収納凹部と、を備え、係止部が、収納凹部の内底面に押圧されることで、挿口部の外周面に食い込み、両口管の相対移動を防止している。
【0003】
この種の離脱防止装置において、挿口部の外周面と係止する爪を有する係止部(爪部材)が収納凹部の内壁に当接することで傾動し、爪が挿口部の外周面に食い込むことで、軸方向において両方向とも移動防止しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-242798号公報(第6頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の離脱防止装置にあっては、挿口管が受口側に対して相対的に抜け出そうとするときに、それに伴って挿口管の外周面と係止する爪部材が受口側に形成された収納凹部内にて傾動するが、爪部材の一方の側壁が収納凹部の支持壁に当たることで、それ以上の傾動が阻止され、爪部材の爪が挿口管に強力に食い込んで挿口管の抜け出しが防止される。しかしながら、爪部材は挿口管の外周部に食い込ませるために、挿口管の周方向に沿って円弧状に形成されているので、爪部材が挿口管の動きに連れて傾動したときに、収納凹部の支持壁に最初に当たるのは、爪部材の側壁の周方向の両端部であり、爪部材の側壁の周方向の両端部に応力が集中し、また、対向する収納凹部の支持壁の周方向の両端部に相当する部分にも応力が集中することから、爪部材や収納凹部が破損してしまう虞がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、爪部材や収納凹部を破損させることなく、挿口管の受口側に対する抜け出しを確実に防止する離脱防止装置、及びその爪部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の離脱防止装置は、
挿口管に対して受口側に内周方向を向いて開口形成された収納凹部と、該収納凹部内に傾動可能に収納された爪部材とを有する離脱防止装置であって、
前記収納凹部内には、前記爪部材の一方の側壁を支持して傾動させる支持壁が周方向に延設されており、前記爪部材の前記側壁若しくは前記支持壁は、周方向の端部側に凹部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、挿口管の動きによって収納凹部内の爪部材が支持壁に対して傾動開始から傾動終了にかけて、爪部材の側壁と収納凹部の支持壁とが凹部によって端部側での当接を可能な限り回避して、周方向の中央側でより長く支持させることで、爪部材の側壁と収納凹部の支持壁との両端部の応力集中による破損を防止できる。
【0008】
前記凹部は、周方向の終端に向かって深く形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、爪部材の側壁と収納凹部の支持壁との両端部の当接を遅くすることができるので、爪部材の側壁と収納凹部の支持壁との周方向の両端部の応力集中による破損を防止できる。
【0009】
前記凹部はテーパ状に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、凹部がテーパ状の面で形成されるので、製造が容易である。
【0010】
前記凹部は周方向の両端部側に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、少なくとも、周方向の両端部側に凹部が形成されていれば、爪部材の側壁と収納凹部の支持壁との周方向の両端部が最初に当接することはないので、爪部材の側壁と収納凹部の支持壁との周方向の両端部の応力集中による破損を防止できる。
【0011】
前記凹部は、前記爪部材の前記側壁の内径側若しくは前記支持壁の内径側に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、爪部材が傾動したときのみに凹部が機能する。
【0012】
挿口管に対して受口側に内周方向を向いて開口形成された収納凹部内に傾動可能に収納された爪部材であって、
前記爪部材の少なくとも一方の側壁は、周方向の端部側に凹部が形成されていることを特徴としていることを特徴としている。
この特徴によれば、挿口管の動きによって収納凹部内の爪部材が支持壁に対して傾動開始から傾動終了にかけて、爪部材の側壁と収納凹部の支持壁とが凹部によって端部側での当接を可能な限り回避して、周方向の中央側でより長く支持させることで、爪部材の側壁と収納凹部の支持壁との両端部の応力集中による破損を防止できる。
【0013】
前記凹部は、前記爪部材に形成された係止爪の背面側に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、係止爪と反対側の側面に凹部が形成されるので、爪部材を傾動させやすくなり、係止爪が挿口管に深く食い込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例における流体管の設置状況を示す平面図である。
【
図2】(a)は流体管の離脱防止装置を示す一部断面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図3】実施例1における従来型の爪部材の(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は(a)のH-H断面図である。
【
図4】実施例1における収納凹部の(a)は
図2(a)のD-D断面図、(b)は(a)のI-I断面図、(c)は(a)のJ-J断面図である。
【
図6】実施例1における本発明の収納凹部及び従来型の爪部材の
図2(b)のB-B断面図であり、(a)は爪部材をボルトにより押し込む前の拡大図、(b)は爪部材をボルトにより押し込んで挿口管に接した状態の拡大図(
図2(a)の一点鎖線囲い部Eの拡大図)、(c)~(e)は爪部材の傾動状況を経時的に示した拡大図である。
【
図7】実施例1における本発明の収納凹部及び従来型の爪部材の
図2(b)のG-G断面図であり、(a)は爪部材をボルトにより押し込む前の拡大図、(b)は爪部材をボルトにより押し込んで挿口管に接した状態の拡大図、(c)~(e)は爪部材の傾動状況を経時的に示した拡大図である。
【
図8】実施例1における収納凹部及び爪部材の動きを管軸の径方向から見た説明図であり、(a)~(d)は爪部材の傾動状況を経時的に示したものである。
【
図9】従来型における収納凹部及び爪部材の動きを管軸の径方向から見た参考図であり、(a)~(d)は爪部材の傾動状況を経時的に示したものである。
【
図10】実施例2における本発明の爪部材の説明図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)はL-L断面図、(e)はM-M断面図である。
【
図12】実施例2における従来型の収納凹部及び本発明の爪部材の
図2(b)のG-G断面図であり、(a)は爪部材をボルトにより押し込む前の拡大図、(b)は爪部材をボルトにより押し込んで挿口管に接した状態の拡大図、(c)~(e)は爪部材の傾動状況を経時的に示した拡大図である。
【
図13】変形例1の爪部材を示す一部断面図であり、(a)~(d)は爪部材の傾動状況を経時的に示したものである。
【
図14】変形例2の爪部材を示す一部断面図であり、(a)~(d)は爪部材の傾動状況を経時的に示したものである。
【
図15】変形例3の離脱防止装置を示す一部断面図である。
【
図16】変形例4の離脱防止装置を示す一部断面図である。
【
図17】変形例5の離脱防止装置を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る離脱防止装置及びその爪部材を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
実施例1に係る離脱防止装置につき、
図1から
図9を参照して説明する。
図1及び
図2(a)に示されるように、本発明における流体管は、地中に埋設された上水道用の配管であって、受口管としての水道管2(曲管)の受口部5と、挿口管としての水道管11(直管)の端部に形成されている挿口部12とが水密的に接続された接続箇所が構成されている。また、流体管に隣接してガス管4が設置されている。
【0017】
本実施例の流体管は、上水が管内を
図1の白抜矢印方向に流下するようになっている。また、水道管2は管軸Cに沿って所定に曲がる屈曲部3を有している。このような屈曲部3若しくは直線部において、流体管の内部流体の水圧や水流による不平均力或いは地震等による予測し得ない外力が作用して、例えば受口部5と挿口部12との接続が外れて内部流体が漏出したり、流体管が移動して例えば隣接されたガス管4等に当接する虞が生じていた。
【0018】
図1~
図2に示されるように、水道管2、11は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、管の内周面がモルタル層で被覆されている。尚、
図2(b)における上半分では、
図2(a)で示される離脱防止具15の直径方向に対して中心軸より傾斜して延びる部分の断面が図示されている。
【0019】
また、本発明に係る流体管は、ダクタイル以外の鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂層、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0020】
また、本実施例では流体管内の流体は、本実施例の上水に限らず、例えば、工業用水、農業用水、下水等の他、水以外の液体でも良いし、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。なお、
図1に示す流体管の設置態様はあくまでも一例であり、本発明の離脱防止装置は、種々の流体管の設置態様に適用することができる。
【0021】
図2(a)に示されるように、受口管としての水道管2は、受口形状の受口部5と該受口部5の端部に設けられるフランジ5aとを有している。挿口管としての水道管11は、受口部5に挿入される挿口部12を有している。
【0022】
また、受口管としての水道管2及び挿口管としての水道管11は、受口部5の内周面と挿口部12の外周面との間に全周に亘って配置された環状のシール材(図示せず)を介して挿嵌されている。また、挿口部12の外周面には、一体あるいは複数に分割された円弧状の部材を接続してなる環状の押輪22が外嵌設置されている。この押輪22は、フランジ5a側に突出する押圧部22aを有している。
【0023】
押輪22は、フランジ5aに対して複数のT頭ボルトナット23を締結して連結されている。この締結に伴って押輪22とフランジ5aとを接近させることにより、押圧部22aによって押圧されるシール材(図示せず)が受口部5の内周面と挿口部12の外周面とに密着して、受口管としての水道管2及び挿口管としての水道管11は密封状に接続される。
【0024】
また、
図2(a)に示されるように、押輪22は、径方向に螺挿されているボルト24が螺進されて、その内周部に配置されている爪部材(図示せず)が水道管11の外周面に食い込むことで、水道管11に固定されている。これら押輪22の爪部材(図示せず)及びボルト24は、周方向に8等配されており、その外径側には、後述する離脱防止具15の腕部15bが配置される。
【0025】
図1~
図2に示されるように、離脱防止具15は、例えば本実施例のように、押輪22を介し密封状に接続された受口管としての水道管2及び挿口管としての水道管11が管軸方向に抜け出すことを防止するものであって、ダクタイル鋳鉄製の複数の分割体を周方向に配置してボルトナット9a、9bにより連結されることで環状に形成されている。
【0026】
より詳しくは離脱防止具15は、挿口管としての水道管11に固定される基部15aと、基部15aから押輪22及び受口部5のフランジ5aを跨ぐように軸方向に延びる腕部15bとから構成されている。また基部15aは、本実施例では上下に2つの分割体を周方向に配置してボルトナット9aにより連結されることで環状に形成され、同様に腕部15bは、上下に2つの分割体を周方向に配置してボルトナット9bにより連結されることで環状に形成されている。更にこれら基部15aと腕部15bは、T頭ボルトナット17により連結されている。尚、本実施例の離脱防止具15の基部15a及び腕部15bは、それぞれ2つの分割体から構成されているが、3つの分割体、または4つ以上の分割体により環状に形成されていてもよい。また離脱防止具15の基部15a及び腕部15bは、本実施例のように軸方向に別体に限られず、一体に構成されてもよい。また、離脱防止具15の腕部15bの管軸方向の端部が、受口部5のフランジ5aよりも小径の内径を有する鉤部に形成されており、フランジ5aと周方向に沿って当接することで、管軸Cの一方向(図示左方向)への移動が防止されるようになっている。
【0027】
図2に示されるように、基部15aの内周部には、爪部材200を挿嵌・固定するための複数の爪室としての収納凹部16が周方向に所定間隔離間して配置されている。また、基部15aには、各収納凹部16に連通するように径方向にボルト7が螺挿されており、外径側からボルト7を螺進させることにより、各収納凹部16内に収納された後述する爪部材200を内径方向に押圧させることができる。
【0028】
図2(b)に示されるように、収納凹部16は、周方向に所定間隔に設けられた仕切壁15cにより区画されることで、周方向に沿って本実施例では8箇所形成され、各々の収納凹部16は、ボルト7を螺合するボルト孔6に連通している。また、夫々の収納凹部16内には、爪部材200が仕切壁15cとゴム体18を介して接続された状態で嵌合されている。尚、収納凹部及び爪部材の数量については、本実施例に限られず、流体管の周方向に沿って設けられていればよい。
【0029】
また、各々の爪部材200は、略同形状であって、挿口部12の周方向に亘って複数配置されており、
図2(b)に示されるように、周方向に略対称形状であり、ボルト7により爪部材200における周方向の略中央位置が内径方向に押圧されるようになっている。
【0030】
また、
図6(a)~(e)に示されるように、爪部材200は、ボルト7の螺挿により挿口部12の外周面に向かって押圧されることで、係止爪200aが挿口部12の外周面に食込んで係止され、後述のように水道管11の管軸C方向の移動を防止する。また、爪部材200が収納された収納凹部16の管軸C方向における左右両側に、空隙K及び空隙K’が形成されている。
【0031】
更に、
図4に示されるように、収納凹部16における挿口部12の抜け出し側の内側面の外径側には、径方向すなわち挿口部12の外周面に対し略直交する方向に支持壁16aが形成されるとともに、この支持壁16aの内径側には、挿口部12側の開口に向かってテーパ状に拡開する方向に傾斜する凹部としてのテーパ面16bが形成されている。
【0032】
次に、本発明の収納凹部16に収納される、実施例1における爪部材200について説明する。
図3に示されるように、爪部材200は、従来型の爪部材であり、正面視で略円弧状であり、収納凹部16の支持壁16aと当接する側壁200cは、周方向の中央部及び周方向の両端部を含めて一様の平坦面であり、挿入方向側の側壁200dから内径方向に延出し挿口部12の外周面と係止する係止爪200aを有している。また後述するように、係止爪200aが収納凹部16にて傾動し、挿口部12の外周面に食込むことで、離脱防止具15が挿口部12に固定するようになっている。
【0033】
図4に示されるように、収納凹部16の周方向の両端部に形成されている凹部として形成されるテーパ面16bは、支持壁16aに対して一様の角度で傾斜した傾斜面であり、
図4(a)で示されるように、支持壁16aとテーパ面16bとの境界線16cは、略直線状に形成されていることで、テーパ面16bは、周方向の中央側よりも終端に向かって漸次深くテーパ状に形成されている。なお、
図4(a)で示した実施例は、テーパ面16bが一方の端部から他方の端部まで連続して設けられているが、
図5に示す変形例の収納凹部16’のように、互いに離間したテーパ面16b’、テーパ面16b’を周方向の両端部に近い領域にのみ設けてもよい。
【0034】
次に、水道管2,11に対し外力が作用した際の爪部材200の動作について、収納凹部16及び爪部材200の周方向の中央側を示す
図6を参照して順に説明する。
図6は、本発明の収納凹部及び従来型の爪部材の
図2(b)のB-B断面図であり、先ず
図6(a)は、爪部材200がボルト7の螺挿により押し込まれる前の状態を示している。
図6(b)に示されるように、爪部材200は、ボルト7の螺挿により挿口部12の外周面に向かって押圧されることで、通常時では係止爪200aが挿口部12の外周面に食込んで係止される。この位置において、地震等の不測の外力若しくは水道管11内の水圧等による不平均力が発生することで、
図6(c)に示されるように、水道管11の挿口部12が管軸Cの一方向(図示白抜矢印方向)に移動するとともに、挿口部12の外周面に係止していた爪部材200が、その図示上部がボルト7の先端部との当接を維持して、管軸Cの一方向(図示白抜矢印方向)に空隙K分移動する。この移動により、上述した空隙Kが埋り、爪部材200の図示右側に空隙K”が形成される。
【0035】
更に、離脱防止具15が、管軸Cの一方向(図示左方向)に所定長さ移動し、離脱防止具15の腕部15bの鉤部が受口部5のフランジ5aと当接する。次に、
図6(d)に示されるように、管軸Cの一方向に空隙K分移動した爪部材200が、その図示上部がボルト7の先端部との当接を維持して、収納凹部16の支持壁16aと当接し、さらに離脱防止具15を管軸Cの一方向に押圧する。
【0036】
そして、
図6(d)及び(e)に示されるように、爪部材200の図示上部がボルト7の先端部と当接状態を維持し、爪部材200の係止爪200aが水道管11の外周面に対して傾動する。このように、挿口部12に爪部材200の係止爪200aが係止し、爪部材200が収納された収納凹部16を反力として利用して係止爪200aが挿口部12の外周面に食込むことで、水道管11が離脱防止具15に対し管軸Cの図示左方向に相対移動する。すなわち水道管11が抜け出すことを防止できる。
【0037】
特に、
図6(e)に示されるように、爪部材200が収納凹部16内にて傾動することで、収納凹部16の支持壁16a及びボルト7の先端部を利用して反力を取り、係止爪200aが挿口部12の外周面に食込み易くなるため、水道管11の移動を確実に防止できる。また、爪部材200が、所定長を有する空隙Kを利用して傾動し易くなり、係止爪200aが挿口部12の外周面に容易に食込んで、更に水道管11の移動防止効果が高まる。
【0038】
次に、上記した爪部材200の動作について、収納凹部16及び爪部材200の周方向の端部側を示す
図7を参照して順に説明する。
図7は、本発明の収納凹部及び従来型の爪部材の
図2(b)のG-G断面図であり、
図7(a)は、
図6(a)と同様に、爪部材200がボルト7の螺挿により押し込まれる前の状態を示している。
図6(a)との違いは、収納凹部16の支持壁16aの内径側に位置するテーパ面16bが、周方向の中央部側から周方向の両端部に近づくほど、径方向に漸次広い領域で形成されている点である。
図7(b)に示されるように、爪部材200は、ボルト7の螺挿により挿口部12の外周面に向かって押圧され、
図7(c)に示されるように、水道管11の移動とともに、挿口部12の外周面に係止していた爪部材200が、ボルト7の先端部との当接を維持して、空隙K分移動する。
【0039】
そして、
図7(d)及び(e)に示されるように、爪部材200が収納凹部16内で傾動する。ここで収納凹部16の支持壁16aが、従来のように、一様の平坦面で構成されているものであれば、爪部材200は挿口部12の周方向に沿って円弧状に形成されているので、爪部材200が挿口部12の動きに連れて傾動したときに、収納凹部16の支持壁16aに最初に当接するのは、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cのうち、周方向の両端部であり、このとき周方向の中央部は支持壁16aに当接することなく離間する(
図9(d)参照)。よって、爪部材200の側壁の周方向の両端部に、支持壁16aとの当接による応力が集中し、また、対向する収納凹部16の支持壁16aの周方向の両端部の当接部分にも応力が集中して、爪部材200や収納凹部16が破損してしまう虞がある。これに対し、本発明の収納凹部16の支持壁16aは、一様の平坦面ではなく、少なくとも周方向の両端部に凹部としてのテーパ面16bを形成しているので、
図7(d)に示されるように爪部材200が傾動し始めた傾動開始状態では、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cの周方向の両端部は、収納凹部16の支持壁16aに当接することがなく、
図7(e)に示されるように、爪部材200が傾動し終えた傾動終了状態において、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cが周方向の中央部及び両端部の全面に亘って、収納凹部16のテーパ面16bの略全面に当接する(
図8(d)参照)。このようにテーパ面16bを形成することにより、少なくとも爪部材200の傾動開始状態では、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cと収納凹部16の支持壁16aとの周方向の両端部において当接させることなく、すなわち側壁200cと収納凹部16の支持壁16aとの当接のタイミングを遅くすることができるので、爪部材200の側壁200cと収納凹部16の支持壁16aとの周方向の両端部における局所的な応力集中による破損を防止できる。
【0040】
また、このように、少なくとも、周方向の両端部側にテーパ面16bまたは変形例としてテーパ面16b’(
図5参照)が形成されていれば、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cと収納凹部16の支持壁16aとの周方向の両端部が最初に当接することはないので、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cと収納凹部16の支持壁16aとの周方向の両端部における局所的な応力集中による破損を防止できる。
【0041】
また、
図4(a)に示されるように、支持壁16aとテーパ面16bとの境界線16cは、略直線状に形成されているため、この境界線16cを中心に爪部材200を傾動させることができるばかりか、爪部材200の傾動終了状態において、爪部材の抜け出し方向の側壁200cと収納凹部16のテーパ面16bとを周方向に沿って広い面で接触させることができる。
【0042】
なお、傾動状況によっては、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cの周方向の中央部と周方向の両端部を含めて全面が、収納凹部16の支持壁16aの全面に当接するものに限られず、周方向の中央部側の一部領域、若しくは両端部側の一部領域が当接する場合もあり得る。このように、挿口部12の動きによって収納凹部16内の爪部材200が支持壁16aに対して傾動開始から傾動終了にかけて、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cと収納凹部16の支持壁16aとが凹部によって端部側での局所的な当接を可能な限り回避して、周方向の中央側も含むより広い領域で、傾動開始から傾動終了にかけて長く支持させることで、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cと収納凹部16の支持壁16aとの周方向の両端部の局所的な応力集中による破損を防止できる。
【0043】
また、テーパ面16bが支持壁16aの内径側に形成されているので、爪部材200が傾動したときのみにテーパ面16bが支持面として機能する。また、収納凹部16の支持壁16aとの周方向の両端部がテーパ状の面(テーパ面16b)で形成されるので、製造が容易である。
【0044】
次に、本発明に係る爪部材の動きについて、従来型の爪部材の動きと比較して説明する。先ず、従来の爪部材の動きについて説明すると、
図9に示されるように、支持壁160aのみが形成された従来型の収納凹部160の内部に従来型の爪部材200が収納されている。
図9(a)は、水道管11の移動とともに、挿口部12の外周面に係止していた爪部材200が、ボルト7の先端部との当接を維持して、空隙K分移動して、爪部材200の抜け出し方向側の一様の側壁200cが収納凹部160の一様の支持壁160aに当接した状態であり、爪部材200は傾動前の状態を示している。
図9(b)は、爪部材200が、収納凹部160の支持壁160aに当接した状態を維持して、水道管11の移動に追従しようとするので、爪部材200の係止爪200aが水道管11の外周面に向かって食い込むように傾動する状態を示している。このとき、
図9(b)に示されているように、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cの周方向の両端部のみが収納凹部160の支持壁160aに当接し、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cの周方向の中央部は収納凹部160の支持壁160aに当接しないので、爪部材200の側壁の周方向の両端部に応力が集中し、また、対向する収納凹部160の支持壁160aの周方向の両端部の相当する部分にも応力が集中する。
図9(c)~(d)は、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cの周方向の両端部のみが収納凹部160の支持壁160aに当接した状態を維持して、さらに爪部材200が順次傾動した状態を示すものであり、爪部材200の側壁の周方向の両端部にさらに応力が集中し、また、対向する収納凹部160の支持壁160aの周方向の両端部の相当する部分にもさらに応力が集中して、爪部材200や収納凹部160が破損してしまう虞がある。
【0045】
これに対して、本発明の爪部材の動きについて説明すると、
図8に示されるように、本発明の支持壁16a及びテーパ面16bが形成された収納凹部16の内部に爪部材200が収納されている。
図8(a)は、前述した
図6(c)、
図7(c)に対応するものであり、水道管11の移動とともに、挿口部12の外周面に係止していた爪部材200が、ボルト7の先端部との当接を維持して、空隙K分移動して、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cの周方向の中央部が収納凹部16の支持壁16aの周方向の中央部に当接した状態であり、爪部材200は傾動前の状態を示している。
図8(b)は、前述した
図6(d)、
図7(d)に対応するものであり、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cの周方向の中央部が、収納凹部16の支持壁16aの周方向の中央部に当接した状態を維持して、水道管11の移動に追従しようとするので、爪部材200の係止爪200aが水道管11の外周面に向かって食い込むように傾動する状態を示している。このとき、
図8(b)に示されているように、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cの周方向の両端部は、収納凹部16の支持壁16aの周方向の両端部に形成されているテーパ面16bに入り込むだけで、収納凹部16の支持壁16aに当接することはないので、爪部材200の側壁の周方向の両端部における応力集中や、対向する収納凹部16の支持壁16aの周方向の両端部の相当する部分における応力集中が生じることはない。
図8(c)~(d)は、前述した
図6(e)、
図7(e)に対応するものであり、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cの周方向の中央部が、収納凹部16の支持壁16aの周方向の中央部に当接した状態を維持して、さらに爪部材200が順次傾動した状態を示している。この場合においても、爪部材200の抜け出し方向側の側壁200cの周方向の両端部は、収納凹部16の支持壁16aの周方向の両端部に形成されているテーパ面16bに入り込むので、爪部材200の側壁の周方向の両端部における応力集中や、対向する収納凹部16の支持壁16aの周方向の両端部の相当する部分における応力集中が生じることはない。
また、収納凹部116の内側面に、実施例1のテーパ面16bに相当するテーパ面116bとは別に、開口に向かって拡開する拡開テーパ面116c、116dが形成されており、このようにすることで、開口に向かって拡開する拡開テーパ面116c、116dを利用して爪部材120が傾動し易くなる。
尚、収納凹部116の内側面に、上述した拡開テーパ面116c,116dが形成されているに限られず、例えば、収納凹部116の内側面に、管軸C方向に膨出する膨出部が設けられていてもよい。このようにすることで、爪部材120が、水道管11とともに管軸C方向に移動しようとして膨出部と当接し、第1係止爪120a若しくは第2係止爪120bが、膨出部を支点として容易に傾動するため、挿口部12の外周面に食込んで水道管11を係止出来る。更に、内側面に、上述した拡開テーパ面116c,116dが形成されており、かつ膨出部が設けられていてもよい。このようにすることで、係止爪120aが、より傾動し易くなる。
特に図示しないが、水道管11が上述した管軸Cの一方向(図示左方向)と逆に、管軸Cの他方向(図示右方向)に移動する場合にも、爪部材120は上述と同様に動作し、第2係止爪120bが傾動することで、挿口部12の外周面に食込んで水道管11を係止する。
また、第1係止爪120aと第2係止爪120bとが、管軸Cに直交する面Dを中心として管軸C方向に略対称形状であることにより、管軸Cに沿って両方向とも同程度の離脱防止機能、移動防止機能を発揮させることが出来る。
以上に説明したように、実施例の離脱防止装置において、挿口部12に対して受口側に内周方向を向いて開口形成された収納凹部16(160)と、該収納凹部16内に傾動可能に収納された爪部材200(20)とを有する離脱防止装置であって、前記収納凹部16(160)内には、前記爪部材200(20)の一方の側壁200(20)cを支持して傾動させる支持壁16(160)aが周方向に延設されており、前記収納凹部16の前記支持壁16aまたは前記爪部材20の前記側壁20cには、周方向の端部側にテーパ面16b(テーパ面20e)が形成されているので、挿口部12の動きによって収納凹部16(160)内の爪部材200(20)が支持壁16(160)aに対して傾動開始から傾動終了にかけて、爪部材200(20)の側壁200(20)cと収納凹部16(160)の支持壁16(160)aとがテーパ面16bまたはテーパ面20eによって端部側での当接を可能な限り回避して、周方向の中央側でより長く支持させることで、爪部材200(20)の側壁200(20)cと収納凹部16(160)の支持壁16(160)aとの両端部の応力集中による破損を防止できる。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
また、変形例5の押輪522は周方向に一体に形成されたものであるが、必ずしもこれに限られず、本発明の離脱防止装置が適用される流体管に設けられる押輪は、例えば周方向に分割された構造であってもよい。