IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NECディスプレイソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電子機器及びコネクタ誤接続検出方法 図1
  • 特開-電子機器及びコネクタ誤接続検出方法 図2
  • 特開-電子機器及びコネクタ誤接続検出方法 図3
  • 特開-電子機器及びコネクタ誤接続検出方法 図4
  • 特開-電子機器及びコネクタ誤接続検出方法 図5A
  • 特開-電子機器及びコネクタ誤接続検出方法 図5B
  • 特開-電子機器及びコネクタ誤接続検出方法 図5C
  • 特開-電子機器及びコネクタ誤接続検出方法 図6A
  • 特開-電子機器及びコネクタ誤接続検出方法 図6B
  • 特開-電子機器及びコネクタ誤接続検出方法 図6C
  • 特開-電子機器及びコネクタ誤接続検出方法 図7
  • 特開-電子機器及びコネクタ誤接続検出方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034092
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】電子機器及びコネクタ誤接続検出方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/18 20060101AFI20230306BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230306BHJP
   F24F 11/88 20180101ALI20230306BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20230306BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G06F1/18 J
H05K7/20 J
F24F11/88
F24F11/89
G06F1/20 B
G06F1/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140171
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】300016765
【氏名又は名称】シャープNECディスプレイソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敦史
【テーマコード(参考)】
3L260
5E322
【Fターム(参考)】
3L260BA57
3L260DA15
5E322AB10
5E322BB03
5E322BB04
5E322EA11
(57)【要約】
【課題】複数の冷却ファンを駆動するケーブルのコネクタの誤接続を防止できるようにした電子機器を提供する。
【解決手段】複数の冷却ファンを正常に接続した状態で、複数の冷却ファンを順に停止させたときの各温度センサ毎の温度変化をレファレンスデータとして予め記憶した記憶部と、複数の冷却ファンを順番に停止させるように駆動するファン制御部と、複数の冷却ファンを順番に停止させている間に、複数の温度センサ毎の温度変化を取得する取得部と、取得部で取得した複数の温度センサ毎の温度変化のデータと、記憶部に記憶されているレファレンスデータとを比較する比較部と、比較部での比較結果に応じて複数の冷却ファンのコネクタ誤接続が発生しているか否かを判定する判定部とを備える。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の各部の冷却を行う複数の冷却ファンと、前記機器の各部の温度を計測する複数の温度センサとを有する電子機器であって、
前記複数の冷却ファンを正常に接続した状態で、前記複数の冷却ファンを順に停止させたときの各温度センサ毎の温度変化をレファレンスデータとして予め記憶した記憶部と、
前記複数の冷却ファンを順番に停止させるように駆動するファン制御部と、
前記複数の冷却ファンを順番に停止させている間に、前記複数の温度センサ毎の温度変化を取得する取得部と、
前記取得部で取得した前記複数の温度センサ毎の温度変化のデータと、前記記憶部に記憶されているレファレンスデータとを比較する比較部と、
前記比較部での比較結果に応じて前記複数の冷却ファンのコネクタ誤接続が発生しているか否かを判定する判定部と
を備えた電子機器。
【請求項2】
更に、前記冷却ファンの誤接続を検出した場合、前記誤接続を検出したことを表示する表示部を備えるようにした請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記比較部は、前記レファレンスデータに許容値を加算して判定条件を設定し、前記判定部は、前記取得部で取得した前記複数の温度センサ毎の温度変化のデータが前記判定条件を満足するか否かにより前記複数の冷却ファンのコネクタ誤接続が発生しているか否かを判定する
ようにした請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
機器の各部の冷却を行う複数の冷却ファンと、前記機器の各部の温度を計測する複数の温度センサとを有する電子機器のコネクタ誤接続検出方法であって、
前記複数の冷却ファンを正常に接続した状態で、前記複数の冷却ファンを順に停止させたときの各温度センサ毎の温度変化を示すデータをレファレンスデータとして予め記憶しておく工程と、
前記複数の冷却ファンを順番に停止させるように駆動する工程と、
前記複数の冷却ファンを順番に停止させている間に、前記複数の温度センサ毎の温度変化を取得する工程と、
当該取得した前記複数の温度センサ毎の温度変化のデータと、前記記憶されているレファレンスデータとを比較する工程と、
前記比較の結果に応じて前記冷却ファンのコネクタ誤接続が発生しているか否かを判定する工程と
を含むコネクタ誤接続検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及びコネクタ誤接続検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シネマプロジェクタのように興行目的で用いられるプロジェクタは、使用される環境から大型の機体であることが多く、冷却性能をために多数の冷却ファンを備えている。これらのファンには制御用のケーブルを有している。ファンを制御する制御部とファンを接続するケーブルにはコネクタが用いられるが、部品の共通化によるコスト低下や同型のファンが複数用いられることから、コネクタには全て同型のものが使用される。
【0003】
生産工場においてコネクタの接続は手動で行われるが、同型のコネクタであることから予めコネクタの導線にシールなどで接続先の番号等の印が付けられ、コネクタ誤接続を防止している。しかしながら、人の手で行われている作業であることから、コネクタの誤接続は発生する。また、特許文献1には、複数台備えられたファンを回転させるファンモータへの配線が間違っていても、特定のファンを回転できるように制御するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-193900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コネクタの誤接続が発生しているプロジェクタでは、ファンの制御部は既定の回転数にさえ達していれば異常であることを検知できず、違う型のファンを回して本来の冷却性能が得られなくなり、異常な状態となる可能性がある。異常な状態のまま生産工程を終えたプロジェクタは、その後の検査工程に置いて温度異常などが発生するため、再度生産工程へと戻されたうえで、分解し原因の調査を行う必要があるため、生産の効率を大幅に低下させる原因となる。また、仮に異常な状態で生産・検査工程をすり抜けたプロジェクタがユーザの手に渡り、運用された場合も、温度異常などの現象が発生し、興行前や興行中にプロジェクタがシャットダウンした場合、それらの興行に大きな損害を与えることになる。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明は、複数の冷却ファンを駆動するケーブルのコネクタの誤接続を防止できるようにした電子機器及びコネクタ誤接続検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電子機器は、機器の各部の冷却を行う複数の冷却ファンと、前記機器の各部の温度を計測する複数の温度センサとを有する電子機器であって、前記複数の冷却ファンを正常に接続した状態で、前記複数の冷却ファンを順に停止させたときの各温度センサ毎の温度変化をレファレンスデータとして予め記憶した記憶部と、前記複数の冷却ファンを順番に停止させるように駆動するファン制御部と、前記複数の冷却ファンを順番に停止させている間に、前記複数の温度センサ毎の温度変化を取得する取得部と、前記取得部で取得した前記複数の温度センサ毎の温度変化のデータと、前記記憶部に記憶されているレファレンスデータとを比較する比較部と、前記比較部での比較結果に応じて前記複数の冷却ファンのコネクタ誤接続が発生しているか否かを判定する判定部とを備える。
【0008】
本発明の一態様に係るコネクタ誤接続検出方法は、機器の各部の冷却を行う複数の冷却ファンと、前記機器の各部の温度を計測する複数の温度センサとを有する電子機器のコネクタ誤接続検出方法であって、前記複数の冷却ファンを正常に接続した状態で、前記複数の冷却ファンを順に停止させたときの各温度センサ毎の温度変化を示すデータをレファレンスデータとして予め記憶しておく工程と、前記複数の冷却ファンを順番に停止させるように駆動する工程と、前記複数の冷却ファンを順番に停止させている間に、前記複数の温度センサ毎の温度変化を取得する工程と、当該取得した前記複数の温度センサ毎の温度変化のデータと、前記記憶されているレファレンスデータとを比較する工程と、前記比較の結果に応じて前記冷却ファンのコネクタ誤接続が発生しているか否かを判定する工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷却ファンを順に停止したときに得られる温度センサ毎の温度変化量とレファレンスデータとを比較することで、停止させているファンのコネクタが正常な接続状態であるかを判断し、誤接続が生じていた場合それを作業者に通知することで、生産工程における効率低下と、市場への不具合品流出防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る電子機器としてのプロジェクタの概要を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係るプロジェクタにおいて検出モードに設定したときの制御部の機能ブロック図である。
図3】各冷却ファンを停止させたときの温度変化を示すグラフである。
図4】各冷却ファンを停止させたときの温度変化の傾きを算出するときの説明図である。
図5A】本発明の実施形態に係るプロジェクタにおけるレファレンスデータの説明図である。
図5B】本発明の実施形態に係るプロジェクタにおけるレファレンスデータの説明図である。
図5C】本発明の実施形態に係るプロジェクタにおけるレファレンスデータの説明図である。
図6A】本発明の実施形態に係るプロジェクタにおける検出モードでの処理の説明図である。
図6B】本発明の実施形態に係るプロジェクタにおける検出モードでの処理の説明図である。
図6C】本発明の実施形態に係るプロジェクタにおける検出モードでの処理の説明図である。
図7】本発明の実施形態に係るプロジェクタにおける検出モードでの処理を示すフローチャートである。
図8】本発明による電子機器の基本構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電子機器としてのプロジェクタ1の概要を示すブロック図である。
【0012】
図1において、制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等からなり、プロジェクタ1の各部の制御を行う。本実施形態では、制御部11は検出モードが設定できる。検出モードに設定すると、制御部11は、冷却ファン13-1~13-n(nは任意の整数)のコネクタ16が正常に接続されているかを検出する処理を行う。
【0013】
記憶部12は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。本実施形態では、記憶部12は、冷却ファン13-1~13-nの接続状態を検出するためのレファレンスデータを記憶している。
【0014】
冷却ファン13-1~13-nはプロジェクタ1の各部に設けられ、制御部11の制御の下に、プロジェクタ1の各部の冷却を行う。各冷却ファン13-1~13-nは、外気温度計測用の温度センサから得られる値をもとに決められた回転数で回転し、プロジェクタ1の機体内を正常な温度で保つよう動作する。
【0015】
温度センサ14-1~14-m(mは任意の整数)は、プロジェクタ1の各部に設けられ、プロジェクタ1の各部の温度を計測する。温度センサ14-1~14-mとしては、プロジェクタ1内の温度を計測するセンサに加え、プロジェクタ1の配置される環境温度を計測する外気温度計測用のセンサが存在する。
【0016】
表示部15は、入力映像信号に基づく光学像を生成し、スクリーンに表示させる。また、表示部15は、映像信号の他に、各種の設定状態や調整状態、警告等を表示することができる。本実施形態では、表示部15は、検出モードにより冷却ファン13-1~13-nのコネクタ誤接続が生じていることを検出すると、警告を表示する。表示部15としては、液晶方式、DLP(Digital Light Processing)方式等、各種のものがあるが、どのような方式のものであっても良い。
【0017】
上述のように、本実施形態に係るプロジェクタ1には、複数の冷却ファン13-1~13-nが設けられている。制御部11と冷却ファン13-1~13-nとの間は、コネクタ16を介してケーブルで接続されている。部品の共通化によるコスト低下や同型のファンが複数用いられることから、コネクタ16には全て同型のものが使用されると、コネクタ16の誤接続が発生することがある。そこで、本実施形態に係るプロジェクタ1では、コネクタ16の誤接続を検出するために検出モードが用意されている。この検出モードは制御盤から作業者が開始できるようにし、生産工程にてプロジェクタ1の組み立てが完了した後に、冷却ファン13-1~13-nのコネクタ誤接続確認工程として実行される。
【0018】
記憶部12は、冷却ファン13-1~13-nの接続状態を検出するためのレファレンスデータを記憶している。このレファレンスデータは、冷却ファン13-1~13-nのコネクタ16を正常に接続した状態で、冷却ファン13-1~13-nを1つずつ停止させたときの各温度センサ14-1~14-mの温度変化の傾きから生成される。検出モードでは、制御部11は、冷却ファン13-1~13-nを1つずつ順番に停止させている間に、各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化を取得し、取得した各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化の傾きのデータと、記憶部12に記憶されているレファレンスデータとを比較することで、コネクタ誤接続が発生しているか否かを判定する。
【0019】
つまり、冷却ファン13-1~13-nの中で一部のファンが停止すると、プロジェクタ1内の空気が正常な動きをしなくなるため、温度センサ14-1~14-mの一部のセンサでは、正常時とは異なる温度変化が計測される。このとき、冷却ファン13-1~13-nの接続状態が正常であれば、停止している冷却ファン13-1~13-nと、各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化との間に、所定の対応関係がある。ところが、コネクタ16の誤接続があると、正常時とは異なる冷却ファンが停止されることになるため、停止させている冷却ファン13-1~13-nと、各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化との関係が正常時とは異なってくる。
【0020】
図2は、本実施形態に係るプロジェクタ1において検出モードに設定したときの制御部11の機能ブロック図である。
【0021】
図2に示すように、制御部11は、ファン制御部111と、取得部112と、比較部113と、判定部114とを備える。ファン制御部111は、複数の冷却ファン13-1~13-nを順番に停止させるように駆動する。取得部112は、複数の冷却ファン13-1~13-nを順番に停止させている間に、複数の温度センサ14-1~14-m毎の温度変化を取得する。比較部113は、取得部112で取得した複数の温度センサ14-1~14-m毎の温度変化のデータと、記憶部12に記憶されているレファレンスデータとを比較する。判定部114は、比較部113での比較結果に応じて複数の冷却ファン13-1~13-nのコネクタ誤接続が発生しているか否かを判定する。
【0022】
次に、本発明の実施形態に係るプロジェクタ1におけるレファレンスデータの生成について説明する。
【0023】
レファレンスデータは、冷却ファン13-1~13-nのコネクタ16の接続状態を正常な状態として、冷却ファン13-1~13-nを1つずつ順番に停止させ、停止している間に各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化を取得し、温度変化の傾きを求めることで生成される。
【0024】
すなわち、先ず、制御部11は、冷却ファン13-1を停止させて各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化の計測を行い、計測開始時の各温度センサ14-1~14-mの温度計測値と、所定時間経過後(例えば10分間経過後)の各温度センサ14-1~14-mの温度計測値を取得する。そして、制御部11は、計測開始時の各温度センサ14-1~14-mの温度計測値と、所定時間経過後の各温度センサ14-1~14-mの温度計測値とから、冷却ファン13-1を停止させたときの各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化の傾きを算出し、レファレンスデータとして記憶部12に保存する。
【0025】
次に、制御部11は、冷却ファン13-2を停止させて各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化の計測を行い、計測開始時の各温度センサ14-1~14-mの温度計測値と、所定時間経過後の各温度センサ14-1~14-mの温度計測値を取得する。そして、制御部11は、計測開始時の各温度センサ14-1~14-mの温度計測値と、所定時間経過後の各温度センサ14-1~14-mの温度計測値とから、冷却ファン13-2を停止させたときの各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化の傾きを算出し、レファレンスデータとして記憶部12に保存する。
【0026】
以下、同様に、制御部11は、冷却ファン13-1~13-nを1つずつ順に停止させて各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化の計測を行う。そして、制御部11は、計測開始時の各温度センサ14-1~14-mの温度計測値と、所定時間経過後の各温度センサ14-1~14-mの温度計測値を取得し、各冷却ファン13-1~13-nを停止させたときの各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化の傾きを算出し、レファレンスデータとして記憶部12に保存する。
【0027】
なお、レファレンスデータは、実験等により予め生成しておき、生産時にこの実験等により得られたデータを各機器の記憶部12に記憶させる。
【0028】
また、後に説明するように、冷却ファン13-1~13-nの変化量は外気温により異なるため、レファレンスデータの生成は、推奨使用範囲で環境温度を変更して、各外気温度で実行される。
【0029】
図3は、冷却ファン13-1を停止させたときの温度変化を示すグラフである。図3において、横軸は時間を示し、縦軸は温度変化を示す。曲線A1~曲線Amが温度センサ14-1~14-mの変化を示している。このように、冷却ファン13-1~13-nのコネクタ16の接続状態を正常な状態であれば、冷却ファン13-1を停止させると、温度センサ14-2の計測値が大きく変化する。
【0030】
図4は、冷却ファン13-1を停止させたときの温度変化の傾きを算出するときの説明図である。図4に示すように、図3に示した温度変化特性の計測値から、計測開始時の各温度センサ14-1~14-mの温度計測値と、所定時間経過後(例えば10分間経過後)の各温度センサ14-1~14-mの温度計測値が取得される。そして、これらの計測値の温度変化量から、冷却ファン13-1を停止させたときの各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化の傾きが求められる。
【0031】
図5A図5Cは、本発明の実施形態に係るプロジェクタ1におけるレファレンスデータの説明図である。
【0032】
冷却ファン13-1~13-nを1つずつ停止させ、各温度センサ14-1~14-mの温度計測値を取得することで、冷却ファン13-1~13-nを停止させたときの各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化が取得できる。図5A図5Cに示すように、これらの計測値の温度変化量から、冷却ファン13-1、13-2、…、13-nを停止させたときの各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化の傾きが求められ、レファレンスデータとして記憶部12に保存される。
【0033】
更に、冷却ファン13-1~13-nの変化量は、外気温により異なる。そこで、推奨使用範囲で温度を変更して、各外気温度で、冷却ファン13-1~13-nを停止させたときの各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化の傾きが求められ、レファレンスデータとして記憶部12に保存される。この例では、図5A図5Cに示すように、レファレンスデータは、外気温度T1、T2、…、Tp(pは任意の整数)毎に用意される。
【0034】
次に、本発明の実施形態に係るプロジェクタ1における検出モードでの処理について説明する。
【0035】
検出モードに設定されると、制御部11は、冷却ファン13-1~13-nを1つずつ順番に停止させ、冷却ファン13-1~13-nが1つずつ停止している間に各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化を取得し、温度変化の傾きを算出する。そして、制御部11は、各冷却ファン13-1~13-nを停止して取得された各冷却ファン13-1~13-nの温度変化の傾きと、記憶部12に保存されている冷却ファン13-1~13-nを停止させたときのレファレンスデータとを比較することで、冷却ファン13-1~13-nにコネクタ誤接続が発生しているか否かを判定する。
【0036】
なお、実際に比較を行う際、温度変化の微妙な差から、取得した温度変化の傾きとレファレンスデータの値とが全く同じ値になることは難しいため、実際の判定には、正常時に保存された値に許容範囲±αを加算して閾値とし、取得した温度変化の傾きとレファレンスデータの値との差が許容値範囲内に収まっている場合はコネクタの誤接続は発生しておらず、許容範囲外の値が計測された際に誤接続が発生していると判断する。
【0037】
また、冷却ファン13-1~13-nの制御は、外気温により異なるため、取得した温度変化の傾きとレファレンスデータとを比較する場合には、外気温に応じたデータで比較する必要がある。
【0038】
図6A図6Cは、本発明の実施形態に係るプロジェクタ1における検出モードでの処理の説明図である。
【0039】
一例として、冷却ファン13-1のコネクタが冷却ファン13-3に接続されている場合について説明する。この場合、制御部11は冷却ファン13-1を停止させようとしたとき、実際には、冷却ファン13-3が停止する。図6Aは、このように冷却ファン13-1のコネクタが冷却ファン13-3に接続されている状態で、冷却ファン13-1を停止させて各温度センサ14-1~14-mの計測値を取得したものである。図6Aに示すように、取得した各温度センサ14-1~14-mの温度計測値から、温度変化の傾きを算出すると、「-0.03」、「-0.03」、「-0.01」、「0.04」、「0.36」のデータが得られる。
【0040】
これに対して、図5A図5Cに示したように、記憶部12には、冷却ファン13-1~13-nを停止させたときの各温度センサ14-1~14-mの温度変化の傾きがレファレンスデータとして記憶されている。検出モードで冷却ファン13-1を停止させたときには、冷却ファン13-1~13-nを停止させたときの各温度センサ14-1~14-mのレファレンスデータの中から、図5Aに示す冷却ファン13-1を停止させたときの各温度センサ14-1~14-mの温度変化の傾きがレファレンスデータとして読み出される。なお、実際には、図5Aに示す冷却ファン13-1を停止させたときの各温度センサ14-1~14-mの温度変化の傾きの中から、外気温度T1~Tpの何れか対応するデータを読み出す必要がある。
【0041】
図6Bは、記憶部12から読み出した冷却ファン13-1を停止させたときの各温度センサ14-1~14-mのレファレンスデータである。このレファレンスデータから、冷却ファン13-1を停止させたときの各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化の傾きとして、「0.01」、「0.52」、「-0.01」、「0.01」、「0.03」のデータが得られる。
【0042】
コネクタの誤接続があるか否かは、図6Aに示した取得データの温度変化の傾きと、図6Bに示したレファレンスデータの温度変化の傾きとを比較することにより判定できる。ここでは、比較結果の判定条件として、許容範囲(α=±0.1)を加算して閾値とする。
【0043】
冷却ファン13-1を停止させたときの各温度センサ14-1~14-mのレファレンスデータは、「0.01」、「0.52」、「-0.01」、「0.01」、「0.03」である。これらのデータに許容範囲(α=±0.1)を加えて判定条件を生成すると、図6Cに示すように、各温度センサ14-1~14-mの判定条件は、「-0.09以上0.11以下」、「0.42以上0.62以下」、「-0.11以上0.09以下」、「-0.09以上0.11以下」、「-0.07以上0.13以下」となる。
【0044】
冷却ファン13-1を停止させたときの各温度センサ14-1~14-mの取得データが判定条件内にあれば、判定結果は「OK」となり、判定条件を外れていれば、判定結果は「NG」となる。冷却ファン13-1を停止させて取得された温度センサ14-1~14-mの温度変化の傾きは、「-0.03」、「-0.03」、「-0.01」、「0.04」、「0.36」である。
【0045】
温度センサ14-1の取得データの温度変化の傾き「-0.03」は判定条件「-0.09以上0.11以下」を満たしているので、判定結果は「OK」となる。温度センサ14-2の取得データの温度変化の傾き「-0.30」は判定条件「0.42以上0.62以下」を満たしていないので、判定結果は「NG」となる。以下、温度センサ14-3の取得データの判定結果は「OK」となり、温度センサ14-4の取得データの判定結果は「OK」となり、温度センサ14-mの取得データの判定結果は「NG」となる。この判定結果から制御部11は冷却ファン13-1のコネクタに異なったファンが接続されていることを検出する。
【0046】
以上のようにして、冷却ファン13-1~13-nのコネクタの誤接続を検出した場合、制御部11は検出モードを終了し、表示部15に対して誤接続を検出したことを表示し、作業者に対して冷却ファンのコネクタの接続状態を確認するよう促す。誤接続を修復した後に再度検出モードを実行することで、制御部11は再度冷却ファン13-1~13-nまでの計測処理を行うため、全ての冷却ファン13-1~13-nのコネクタの誤接続検出が可能になる。
【0047】
図7は、本発明の実施形態に係るプロジェクタ1における検出モードでの処理を示すフローチャートである。
【0048】
(ステップS101)冷却ファン13-1~13-nの接続状態を確認する場合、制御部11は検出モードを開始する。
【0049】
(ステップS102)制御部11は、全ての冷却ファン13-1~13-nを回転させ安定した外気温が計測できるまでの一定時間(例えば10分間)、そのまま待機して動作を継続する。
【0050】
(ステップS103)制御部11は、外気温度を取得して記憶する。すなわち、温度センサ14-1~14-mには、プロジェクタ1の配置される環境温度を計測する外気温度計測用のセンサが存在する。制御部11は、温度センサ14-1~14-m中の外気温度計測用のセンサから外気温度を取得する。
【0051】
(ステップS104)制御部11は、ファン番号iを「i=1」に初期化する。ファン番号iは、複数の冷却ファン13-1~13-nを識別する番号である。以下、ファン番号「i」の冷却ファンは、冷却ファン13-iとして記述する。
【0052】
(ステップS105)制御部11は、ファン番号iに対応する冷却ファン13-iを停止させる。
【0053】
(ステップS106)制御部11は、ファン番号iに対応する冷却ファン13-iを停止させている状態で、温度センサ14-1~14-mの温度変化を計測する。
【0054】
(ステップS107)制御部11は、所定時間(例えば10分)経過したか否かを判定する。制御部11は、所定時間経過していなければ(ステップS107:No)、ステップS106にリターンし、温度センサ14-1~14-mの温度変化の計測を続け、所定時間経過したら(ステップS107:Yes)、処理をステップS108に進める。
【0055】
(ステップS108)制御部11は、計測開始時の温度センサ14-1~14-mの温度と、所定時間経過後(例えば10分経過後)の温度センサ14-1~14-mとの温度変化から、冷却ファン13-iを停止させたときの各温度センサ14-1~14-m毎の温度変化の傾きを算出して記憶する。
【0056】
(ステップS109)制御部11は、ファン番号iの冷却ファン13-iを停止させたときのレファレンスデータに許容値を加えて判定条件を生成し、取得したファン番号iの冷却ファン13-iを停止させたときの温度センサ14-1~14-mの温度変化の傾きが判定条件を満足するか否かを判定する。これにより、取得したファン番号iの冷却ファン13-iを停止させたときの温度センサ14-1~14-mの温度変化の傾きと、ファン番号iの冷却ファン13-iを停止させたときのレファレンスデータとを比較して、コネクタ誤接続が発生しているか否かが判定できる。
【0057】
(ステップS110)ステップS109で比較結果が判定条件を満足する場合には(ステップS109:Yes)、制御部11は、ファン番号iに対応する冷却ファン13-iの誤接続はないと判断し、処理をステップS111に進める。
【0058】
(ステップS111)制御部11は、ファン番号iが最終値nであるか否かを判定し、ファン番号iが最終値nでなければ(ステップS110:No)、処理をステップS112に進める。ファン番号iが最終値nなら(ステップS110:Yes)、処理を終了する。
【0059】
(ステップS112)制御部11は、ファン番号iをインクリメントして、処理をステップS105にリターンする。
【0060】
ステップS105からステップS112を繰り返すことで、制御部11は、ファン番号i「i=1、2、3、…、n」に対応する冷却ファン(冷却ファン13-1、13-2、13-3、…、13-n)を停止させたときの温度センサ14-1~14-mの温度変化の傾きと、冷却ファン(冷却ファン13-1、13-2、13-3、…、13-n)を停止させたときの各温度センサ14-1~14-mのレファレンスデータとを比較し、判定条件を満足するか否かを判定する処理を行う。そして、ステップS109で判定条件を満足する場合には(ステップS109:Yes)、制御部11は、ファン番号i「i=1、2、3、…、n」に対応する冷却ファン(冷却ファン13-1、13-2、13-3、…、13-n)の誤接続はないと判断する。
【0061】
(ステップS113)ステップS109で、比較結果が判定条件を満足しない場合(ステップS109:No)、制御部11は、ファン番号iのファン(冷却ファン13-iのコネクタ誤接続を検出する。
【0062】
(ステップS114)制御部11は、ファン番号iの冷却ファン13-iのコネクタ誤接続が発生していることを表示部15に表示させて、処理を終了する。
【0063】
なお、上述の実施形態では、プロジェクタを例に説明したが、本発明は、プロジェクタに限らず、複数の冷却ファンと複数の温度センサを有する各種の電子機器に用いることができる。
【0064】
図8は、本発明による電子機器の基本構成を示す概略ブロック図である。本発明による電子機器500は、機器の各部の冷却を行う複数の冷却ファンと、機器の各部の温度を計測する複数の温度センサとを有する電子機器であって、記憶部510と、ファン制御部511と、取得部512と、比較部513と、判定部514とを備える。記憶部510は、複数の冷却ファンを正常に接続した状態で、複数の冷却ファンを順に停止させたときの各温度センサ毎の温度変化をレファレンスデータとして予め記憶している。ファン制御部511は、複数の冷却ファンを順番に停止させるように駆動する。取得部512は、複数の冷却ファンを順番に停止させている間に、複数の温度センサ毎の温度変化を取得する。比較部513は、取得部512で取得した複数の温度センサ毎の温度変化のデータと、記憶部510に記憶されているレファレンスデータとを比較する。判定部514は、比較部613での比較結果に応じて複数の冷却ファンのコネクタ誤接続が発生しているか否かを判定する。
【0065】
上述した実施形態におけるプロジェクタ1の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0066】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0067】
11…制御部,12…記憶部,13-1~13-n…冷却ファン、14-1~14-m…温度センサ、15…表示部、16…コネクタ、510…記憶部、111,511…ファン制御部、112,512…取得部、113,513…比較部、114,514…判定部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8