(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034106
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】加熱調理器用トッププレート
(51)【国際特許分類】
F24C 15/10 20060101AFI20230306BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F24C15/10 B
H05B6/12 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140187
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100136777
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 純子
(72)【発明者】
【氏名】平井 千恵
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐
(72)【発明者】
【氏名】頭川 武央
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA62
(57)【要約】
【課題】高強度かつ低熱膨張性を示す結晶化ガラスを基板に使用し、耐久性が高く、かつ白色を呈する調理器用トッププレートを提供する。
【解決手段】Li
2O-Al
2O
3-SiO
2を主成分とし、遷移元素を含む結晶化ガラス基板と、前記結晶化ガラス基板の下面に設けられ、屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上であって、空隙を含有する1以上の明度向上層を含むと共に、青色顔料を含む基板色改善層と、強度向上部材を有する、加熱調理器用トッププレート。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li2O-Al2O3-SiO2を主成分とし、遷移元素を含む結晶化ガラス基板と、
前記結晶化ガラス基板の下面に設けられ、屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上であって、空隙を含有する1以上の明度向上層を含むと共に、青色顔料を含む基板色改善層と、
強度向上部材を有する、加熱調理器用トッププレート。
【請求項2】
前記明度向上層が前記青色顔料を含む、請求項1に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項3】
前記結晶化ガラス基板と前記基板色改善層の間に、前記強度向上部材として密着性向上層を有する、請求項1または2に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項4】
前記明度向上層を複数有し、一の明度向上層と隣接する他の明度向上層の間に、前記強度向上部材として密着性向上層を有する、請求項1~3のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項5】
前記密着性向上層は、一層以上のガラス薄膜である、請求項3または4に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項6】
前記密着性向上層は、前記明度向上層と空隙率あるいは/および材料組成が異なる空隙含有層である、請求項3または4に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項7】
前記明度向上層と、強度向上部材としての密着性向上層とのうちの1以上に、反射材と光輝材のうちの1以上が含まれる、請求項1~6のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項8】
前記反射材と光輝材のうちの1以上は、マイカ、シリカ、金属酸化物、アルミニウムフレーク、ガラス粒子、ガラスフレーク、金属蒸着層を有するガラスフレーク、および金属酸化物層を有するマイカよりなる群から選択される1種以上である、請求項7に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項9】
前記基板色改善層中に、前記強度向上部材としてのフィラーを含む、請求項1~8のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項10】
前記明度向上層中に、前記強度向上部材としてのフィラーを含む、請求項1~9のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項11】
前記フィラーは、金属、金属酸化物、セラミックス、金属塩、ガラス、シリカ、マイカ、タルク、クレー、ゼオライト、有機物材料、およびそれらの複合物、ならびに、それらの表面にカップリング材、活性基、反応基、有機物および金属酸化物の少なくとも1つが結合、吸着または蒸着した材料よりなる群から選択される1以上で構成されている、請求項9または10に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項12】
前記基板色改善層は、前記明度向上層で形成されている請求項1~11のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項13】
前記基板色改善層は、前記明度向上層の下面に設けられた、白色顔料、または白色顔料と前記青色顔料を含む色調調整層を有する、請求項1~11のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項14】
前記基板色改善層は、前記結晶化ガラス基板と前記明度向上層の間に設けられた、白色顔料、または白色顔料と前記青色顔料を含む色調調整層を有する、請求項1~11および13のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項15】
前記色調調整層は、密着性向上層でもある請求項14に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項16】
前記密着性向上層は、一層以上のガラス薄膜である、請求項15に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項17】
前記密着性向上層は、明度向上層と空隙率あるいは/および材料組成が異なる空隙含有層である、請求項15に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項18】
前記色調調整層に、反射材と光輝材のうちの1以上が含まれる、請求項13~17のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項19】
前記反射材と光輝材のうちの1以上は、マイカ、シリカ、金属酸化物、アルミニウムフレーク、ガラス粒子、ガラスフレーク、金属蒸着層を有するガラスフレーク、および金属酸化物層を有するマイカよりなる群から選択される1種以上である、請求項18に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項20】
前記基板色改善層の下面に遮光層を有する、請求項1~19のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項21】
前記基板色改善層と遮光層の間に、前記強度向上部材として密着性向上層を有する、請求項20に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項22】
前記明度向上層は、中空粒子、多孔質材料、および、粒子と粒子の間に空隙を有する構造よりなる群から選択される1以上を含む空隙含有層、または、
前記結晶化ガラス基板の下面に、空隙を確保できるように凹凸が形成されてなる空隙含有層である、請求項1~21のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項23】
前記明度向上層は、
前記結晶化ガラス基板と前記色調調整層の間に、空隙を確保できるようにスペーサーが設けられた空隙含有層、または、
前記色調調整層の上面に、空隙を確保できるように凹凸が形成されてなる空隙含有層である、請求項13~22のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器用トッププレートに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導加熱式調理器、発熱体から放射される赤外線によって加熱する電熱式調理器等の、加熱調理器のトッププレートには、透明な耐熱ガラスが基盤として用いられる。そして、該耐熱ガラス基板の下面、すなわち耐熱ガラス基板の調理面とは反対側の面に、遮光性の着色層を設けることで、顧客のニーズに合わせた色調の加熱調理器を実現している。
【0003】
従来、前記耐熱ガラス基板として、石英ガラス基板、ホウケイ酸ガラス基板、結晶化ガラス基板等が使用されている。近年は、強度が高くかつ熱膨張率の抑えられた結晶化ガラス基板が多く用いられている。
【0004】
前記結晶化ガラスを基板に用いたトッププレートとして、例えば、基板ガラス本来の強度を失うことなく、意匠性を高めた電磁調理器用ガラストッププレートが提案されている。例えば特許文献1には、透明低膨張ガラスからなる基板ガラスの裏面に、ガラス組成物からなるマット装飾用ガラスを1層又は複数層積層し、さらに、光沢層あるいは遮光層を1層又は複数層積層してなり、上記基板ガラスの線熱膨張係数と、上記マット装飾用ガラスの線熱膨張係数を特定した電磁調理器用ガラストッププレートが開示されている。また、特許文献2には、透明低膨張ガラスからなる基板ガラスにおける調理面とは反対側の面である裏側面に、TiO2、CeO2、ZrO2のうち1種以上を主成分とすると共に、厚みが20~300nmである高反射膜を積層し、該高反射膜上にパール調材料を含有するパール調層を積層し、さらに、該パール調層上に遮光層を積層した調理器用ガラストッププレートが開示されている。
【0005】
更に、特許文献3には、質感と、表示の視認性を両立した調理器用ガラストッププレートとして、基板ガラスに遮光部と透光性の表示部とが設けられ、該表示部の下方に表示体が配置され、上記基板ガラスは、平滑な面よりなる調理面と粗面化面よりなる裏側面とを有し、上記遮光部は、上記基板ガラスの裏側面に遮光層を積層することにより設けられ、上記表示部は、上記基板ガラスの裏側面に透明中間層を介して透光性板を接着することにより設けられ、更に上記透光性板は、少なくとも透明中間層と面しない露出する面が平滑である、調理器用ガラストッププレートが開示されている。
【0006】
また特許文献4には、美観性に優れた調理器用トッププレートとして、酸化チタンを含む透明結晶化ガラス基板と、前記透明結晶化ガラス基板の裏面に形成され、可視波長域における少なくとも一部の波長域の光を反射させる反射膜と、前記透明結晶化ガラス基板と前記反射膜との間に、可視波長域において、波長が長くなるに従って光透過率が漸減する色調補正膜とを備え、前記反射膜と前記色調補正膜とは、可視波長域において、前記色調補正膜と前記透明結晶化ガラス基板との間の界面における平均光反射率が、前記色調補正膜と前記反射膜との間の界面における平均光反射率よりも低くなるように構成された調理器用トッププレートが開示されている。
【0007】
特許文献5には、電磁誘導加熱装置を備えた調理器のトッププレートとして用いられ、低膨張透明結晶化ガラス板からなる調理器用トッププレートであって、低膨張透明結晶化ガラス板の調理面側の一部又は全部に緻密な無機顔料層からなる装飾層が形成され、加熱装置側の一部又は全部に多孔質の無機顔料層からなる遮光層が形成されてなることを特徴とする調理器用トッププレートが開示されている。また特許文献6には、透明な低膨張結晶化ガラスからなるガラスプレートの表面に,無機顔料粉末40~90重量%とガラスフラックス10~60重量%とからなる多孔質の遮光層を設けてなり,且つ,隣接する無機顔料粉末同士,又は無機顔料粉末とガラスプレートとの間は,上記ガラスフラックスを溶融,固化してなるガラスにより接着してなることを特徴とする遮光性ガラスプレートが開示されている。
【0008】
特許文献7には、装飾層を有するガラス、又はガラス・セラミック製品を製造する方法であって、少なくとも1つの装飾用顔料をゾル・ゲル結合剤と混合し、そして該ゾル・ゲル結合剤と混合された前記顔料を、アニーリングにより前記製品の前記ガラス、又はガラス・セラミック基板上で硬化して、多孔性セラミック様構造を有する装飾層を形成する方法が開示されている。
【0009】
特許文献8には、機械的強度の補強されたガラスセラミックプレートまたはガラスプレートとして、ほぼ平行な2つ主面を有するプレートの形態にある、ガラスセラミックまたはガラスの基板、および2つの主面の少なくとも一方に固定された、耐高温性である少なくとも一種類の(コ)ポリマーを含む少なくとも1つの層または多孔質のシリカベースの無機マトリクスを備え、ガラスセラミックまたはガラスの基板の厚さが4mm未満であるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008-16318号公報
【特許文献2】特開2008-215651号公報
【特許文献3】特開2008-267633号公報
【特許文献4】特開2011-208820号公報
【特許文献5】特開2003-168548号公報
【特許文献6】特開平10-273342号公報
【特許文献7】特表2008-536791号公報
【特許文献8】特表2007-530405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記結晶化ガラスは、強度特性には優れているものの、ガラス自体が黄色味を帯びている。この結晶化ガラスは、Li2O-Al2O3-SiO2を主成分とし、結晶化のためにTi、Zr等の遷移元素が添加される。この遷移元素が上記黄色味の原因といわれている。結晶化ガラス基板の下面に設ける着色層が濃い色調の場合、結晶化ガラス基板が黄色味を帯びていてもほとんど問題ない。しかし顧客のニーズとして、白色の調理器用トッププレートが求められ得る。従来のホウケイ酸ガラスを基板に使用する場合、基板の下面に設ける着色層を白色とすることで白色の調理器用トッププレートを実現できた。しかし結晶化ガラスを基板に使用する場合、着色層を白色としても、結晶化ガラス基板を介して視認される色調は黄色味を帯び、白色の調理器用トッププレートを実現することが困難であった。
【0012】
特許文献1~3および特許文献5は、意匠性としてマット調、または金属光沢等の質感を高めるものであって、特に白色の調理器用トッププレートの実現を課題とするものでない。また、特許文献4は、美観性に優れた調理器用トッププレートを開示しているが、特に困難な白色の調理器用トッププレートの実現を課題とするものではない。更に特許文献6~8は、調理器用トッププレートの特に機械的強度を高めたものであって、特に白色の調理器用トッププレートの実現を課題とするものでない。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するものであって、高強度かつ低熱膨張性を示す結晶化ガラスを基板に使用し、白色を呈する調理器用トッププレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの要旨によれば、Li2O-Al2O3-SiO2を主成分とし、遷移元素を含む結晶化ガラス基板と、前記結晶化ガラス基板の下面に設けられ、屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上であって、空隙を含有する1以上の明度向上層を含むと共に、青色顔料を含む基板色改善層と、強度向上部材を有する、加熱調理器用トッププレートが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高強度かつ低熱膨張性を示す結晶化ガラスを基板に使用し、耐久性が高く、かつ白色を呈する調理器用トッププレートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図3】
図3は、別の予備実験結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、別の予備実験試料の模式断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図15】
図15は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図16】
図18は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図18】
図18は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【
図19】
図19は、本発明の別の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、高強度かつ低熱膨張性を示す、Li2O-Al2O3-SiO2を主成分とし、遷移元素を含む結晶化ガラスを、基板に使用することを前提に、従来のホウケイ酸ガラス基板に白色塗料を塗布した場合の色調に近い、白色の加熱調理器用トッププレートを実現すべく鋭意研究を行った。その結果、加熱調理器用トッププレートとして、Li2O-Al2O3-SiO2を主成分とし、遷移元素を含む結晶化ガラス基板と、前記結晶化ガラス基板の下面に設けられた、屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上であって、空隙を含有する1以上の明度向上層を含むと共に、青色顔料を含む基板色改善層と、強度向上部材とを有するようにすればよいことを見出し、本発明に想到した。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、本発明に想到した経緯を含め、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
本発明者は、まず黄色味から白色へ色調を補正する手段について検討するため、
図1に示す通り、結晶化ガラス基板2の下面(裏面)に、黄色味の補色である青色顔料を着色層に占める体積割合で10%配合した着色層9を設けた予備実験試料を作製し、色調を確認した。
図1において、反射光10は、結晶化ガラス基板2と着色層9の界面で反射した光を示す。この
図1の構成により黄色味は抑制されるものの、反射光10が弱く明度が下がり、灰色を呈する結果となった。
【0020】
本発明者は、上記黄色味から白色へ色調を補正しつつ、加熱調理器用トッププレートの強度の向上を目的に更に検討を行った。そしてその結果、前述の通り、加熱調理器用トッププレートとして、
図2に示す通り、
・Li
2O-Al
2O
3-SiO
2を主成分とし、遷移元素を含む結晶化ガラス基板92と、
・前記結晶化ガラス基板の下面に設けられ、
屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上であって、空隙を含有する1以上の明度向上層を含むと共に、青色顔料を含む基板色改善層(
図2では、中空ガラス95を含有する明度向上層93を示す)と、
・強度向上部材(
図2では、後述する密着性向上層97を示す)とを有するようにすればよいことを見出した。以下、本実施形態に係る加熱調理器用トッププレートを構成する基板色改善層、強度向上部材、結晶化ガラス基板についてまず説明する。
【0021】
[基板色改善層]
基板色改善層は、結晶化ガラス基板の下面に設けられ、屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上であって、空隙を含有する1以上の明度向上層を含むと共に、青色顔料を含む。基板色改善層に含まれる明度向上層と青色顔料について説明する。
【0022】
(明度向上層)
前記基板色改善層は、明度向上層を含む。明度向上層の構成を検討するにあたり、まず、予備実験として次の実験を行った。ケント紙の明度と、ケント紙上に結晶化ガラス基板(ネオセラムN-0)を乗せた場合の明度をそれぞれ測定し、その差を求めた。また、結晶化ガラス基板(ネオセラムN-0)の下面(裏面)に白色塗料(十条ケミカル(白色))を印刷して白色層を形成した試料、結晶化ガラス基板(ネオセラムN-0)の下面に青色顔料を含む塗料(十条ケミカル(白色100:青色2)を印刷して青白色層を形成した試料を用意し、各試料の下面(裏面)と表面のそれぞれの明度を測定した。その結果を
図3に示す。
【0023】
図3から次のことが分かった。すなわち、白色紙(ケント紙)に結晶化ガラス基板(ネオセラムN-0)を乗せた場合の明度は、ケント紙のみの明度から31.4低下した。これに対し、結晶化ガラス基板の下面に白色塗料を直接印刷した場合の明度は、白色塗料のみの明度から44.9も低下した。なお、結晶化ガラス基板の下面に青白色塗料を直接印刷した場合の明度も、青白色塗料のみの明度から43.5も低下した。これらの実験結果から、ケント紙に結晶化ガラス基板(ネオセラムN-0)を乗せた場合、ケント紙と結晶化ガラス基板(ネオセラムN-0)との間に空気層があり、この空気層により結晶化ガラス基板に塗料を直接印刷した場合よりも明度が高くなったと考えられる。この結果から、結晶化ガラス基板と色調調整層との間に、空気層、またはこの空気層と同様に明度を向上できる層を設けることが有効であることを見出した。
【0024】
更に、上記空気層有無の違いによる明度の違いについて検討したところ、
図4(a)に示す通り、結晶化ガラス基板(ネオセラムN-0)2に塗料を直接印刷して白色の着色層11Aを形成した場合、結晶化ガラス基板2の屈折率は1.54であり、白色の着色層11Aの屈折率が約1.5~1.6であり、両者の屈折率はほぼ同じであるか近かった。これに対して、
図4(b)に示す通り、白色紙(ケント紙)11Bに結晶化ガラス基板(ネオセラムN-0)2を乗せた場合、白色紙(ケント紙)11Bと結晶化ガラス基板2との間に薄く空気層12が存在し、この空気層12の屈折率が1.0であり、結晶化ガラス基板2の屈折率との差が、前記
図4(a)の場合よりも大きかった。本発明者は、上記空気層12の屈折率に近づくよう結晶化ガラス基板2との屈折率の差を設けることと、この結晶化ガラス基板2との屈折率の差が大きいことが、明度の向上に寄与していることを見出し、屈折率を制御した明度向上層を設けることを見出すに至った。
【0025】
前記明度向上層の屈折率は、前述のとおり、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である。これにより、結晶化ガラス基板2と明度向上層3の界面での反射率を、前記
図1の構成における反射光よりも高めることができ、明度を向上させることができる。その結果、白色、つまりホウケイ酸ガラスに白色塗料を塗布した場合の色調に近づけることができる。明度向上層の屈折率は、例えば更に、(結晶化ガラス基板の屈折率+0.3)以上、更に(結晶化ガラス基板の屈折率+0.4)以上、より更に(結晶化ガラス基板の屈折率+0.5)以上とすることができる。前記明度向上層の屈折率は、結晶化ガラス基板よりも小さいことが好ましい。明度向上層の屈折率が、結晶化ガラス基板よりも小さく、好ましくは空気層の屈折率1.0に近くなるほど、結晶化ガラス基板内に入光し、結晶化ガラス基板内で全反射して取り出し難い青色光を、結晶化ガラス基板の外へ取り出しやすくなり、結晶化ガラス基板内で全反射する青色光が低減できると考えられる。その結果、加熱調理器用トッププレートの明度をより向上できると共に、黄色味を抑えて白色度を高めることができると考えられる。
【0026】
前記明度向上層の屈折率と結晶化ガラス基板の屈折率の差は、絶対値で示される値であり、「明度向上層の屈折率>結晶化ガラス基板の屈折率」と「明度向上層の屈折率<結晶化ガラス基板の屈折率」のいずれの場合も含まれる。
【0027】
なお、前記明度向上層と結晶化ガラス基板の屈折率の差が大きすぎると、明度向上層を通過する光の透過量が少なくなりやすい。例えば前記明度向上層の下面に色調調整層を設ける場合、該色調調整層に到達する光が少なくなり、色調調整層による色の補正効果が小さくなりやすい。色調調整層による色の補正効果を高めるべく、色調調整層の色を濃くすると、かえって明度が下がりやすい傾向にある。これらの観点から、明度向上層と色調調整層の界面での光の反射率を好ましくは20%以下に抑える場合には、前記明度向上層と結晶化ガラス基板の屈折率の差を1.0以下とすることが好ましい。
【0028】
本実施形態では、上記明度向上層の屈折率は、前述のとおり、前記結晶化ガラス基板よりも小さいことが好ましい。上記明度向上層の屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さい場合、結晶化ガラス基板の屈折率よりも0.1以上小さいことがより好ましく、結晶化ガラス基板の屈折率よりも0.3以上小さいことが更に好ましい。上記明度向上層の屈折率は、最も好ましくは空気層の屈折率と同じ1.0である。
【0029】
上記明度向上層の屈折率は、明度向上層が均一な材料の場合、アッベ屈折計または分光エリプソメーターをもちいて求めることができる。上記明度向上層が後述の通り空隙を有する場合、明度向上層の屈折率は、次の様にして求めることができる。すなわち、空隙を形成するための中空材料などのバルク材料の屈折率をアッベ屈折計または分光エリプソメーターで求めた屈折率n1と、空隙を含む明度向上層の断面を電子顕微鏡で観察することで求めた空隙率φ1から、以下の式で明度向上層の屈折率n2を求めることができる。
n2=n1×(1-φ1)
【0030】
前記明度向上層は、上記屈折率の規定を満たせばよい。明度向上層を形成する材料として、ガラス成分等の無機材料と溶剤とを主成分として含む無機塗料と、有機樹脂と溶剤とを主成分として含む有機塗料とが挙げられる。前記有機塗料に含まれる有機樹脂として、シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂等の変性シリコーン樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられ、耐熱性確保の観点からはシリコーン樹脂が好ましい。明度向上層が、後述の通り、例えば青色顔料等の顔料を含む場合、前記無機塗料または有機塗料に、青色無機顔料等の無機顔料が含まれうる。
【0031】
前記明度向上層の屈折率を達成する手段として、空隙を含有する1以上の明度向上層を設ける。つまり、明度向上層が空隙含有層で形成されるか、明度向上層が空隙含有層を含むようにする。明度向上層が空隙含有層を有することで、明度向上層の屈折率を結晶化ガラス基板よりも小さくしやすい。空隙の含有は、例えば断面の観察(走査電子顕微鏡(SEM)像等)で確認することができる。前記空隙の割合は、明度向上層に占める体積比率で、好ましくは10%以上とすることで、上記屈折率を容易に実現することができる。前記比率は、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上、より更に好ましくは60%超である。一方、加熱調理器用トッププレートの強度を確保する観点からは、前記比率を、好ましくは90%以下とすることができる。前記比率は、上記強度を確保する観点からは、より好ましくは60%以下である。
【0032】
前記明度向上層は、
・中空粒子、多孔質材料、および、粒子と粒子の間に空隙を有する構造よりなる群から選択される1以上を含む空隙含有層、または、
・前記結晶化ガラス基板の下面に、空隙を確保できるように凹凸が形成されてなる空隙含有層であってもよい。基板色改善層が色調調整層を含む場合、前記結晶化ガラス基板と前記色調調整層の間に、空隙を確保できるようにスペーサーが設けられた空隙含有層、または、前記色調調整層の上面に、空隙を確保できるように凹凸が形成されてなる空隙含有層であってもよい。
【0033】
前記空隙含有層は、空隙を有する粒子として中空粒子、多孔質材料で形成された粒子(多孔質粒子)を多数含むものであってもよい。また、前記粒子と粒子の間に空隙を有する構造は、複数の中実粒子/中空粒子が重なりあったときに形成される粒子と粒子の間の空隙を有する構造である。詳細には、前記粒子と粒子の間に空隙を有する構造は、例えば、中実粒子として例えば、ガラス粒子、セラミック粒子、シリカ粒子等を、結着材を用いて明度向上層を形成する際に、粒子間を結着材で埋めることなく、粒子の接点等を結着材で結着させることにより形成することができる。該構造によれば、中空粒子を用いなくとも空隙を有する構造を形成できる。この場合、粒子が中空でないため塗膜の強度を高めることが可能である。前記中実粒子の平均粒子径は、例えば10nm~100μmである。また、ガラス粒子の材質は特に限定されず、結晶化ガラス粒子、ホウケイ酸ガラス粒子、ソーダガラス粒子等が挙げられる。
【0034】
前記空隙を有する粒子として、球状体、筒状体等の中空粒子を積層させることが挙げられる。前記中空粒子は密閉、非密閉を問わない。前記密閉である場合、空隙内の圧力は大気圧であってもよいし、真空に近くてもよい。前記中空粒子として中空ガラス、ガラスビーズ、中空アルミナ、中空シリカ等の中空セラミック、中空ポリマー粒子等が挙げられる。前記中空ポリマーとして、耐熱性に優れた例えばシリコーン樹脂で形成されたものが挙げられる。前記中空粒子は透明であることが好ましく、無色透明、または本実施形態の効果を損なわない範囲で有色透明であってもよい。前記空隙を有する粒子として、平均粒子径が、例えばメジアン径(d50)で10nm~100μmのものが挙げられる。
【0035】
明度向上層に占める空隙を有する粒子の割合は、上記明度向上層に占める空隙の割合を満たすようにすればよく、特に限定されない。明度向上層に占める空隙を有する粒子の割合は、例えば体積比率で10~99%とすることができる。
【0036】
前記中空粒子として、中空ガラスが好ましい。前記中空ガラスとして、例えば市販品を用いることができる。該市販品として、3M社製グラスバブルズ、ポッターズ・バロティーニ株式会社製中空ガラス、太平洋セメント製セルスフィアーズ、日鉄鉱業株式会社製シリナックス(登録商標)等が挙げられる。
【0037】
前記多孔質材料として、多孔質ガラス粒子、多孔質セラミック粒子等の多孔質粒子が挙げられる。多孔質粒子を用いる代わりに、多孔質形成用のガラス材料、セラミック材料と、高温で発泡する例えばポリマー材料とを含む混合材料を、結晶化ガラス基板上に塗布し、例えば焼成により、上記ポリマー材料を発泡させて多孔質を形成してもよい。
【0038】
前記多孔質材料は、上記空洞を有する材料に限られず、例えばガラス、セラミック等の繊維が集合することで空隙が形成されたものであってもよい。ガラス繊維の集合体として、例えば綿状のガラスウールが挙げられる。
【0039】
前記中空粒子等の粒子を用いる場合、粒子間の接着のために、前記空隙含有層(明度向上層)は、結着材として、粉末ガラスを含むガラスペースト、透明インキが含まれていてもよい。前記明度向上層に含まれる結着材の割合は、例えば明度向上層に占める体積比率で0.1%以上、90%以下の範囲内とすることができ、更には0.5%以上、10%以下の範囲内とすることができる。前記結着材として、例えば日本電気硝子株式会社製ガラスペースト、AGC株式会社製ガラスフリット、ガラスペースト、帝国インキ製造株式会社製耐熱性クリアインキ等が挙げられる。
【0040】
前記中空粒子を用いて明度向上層を形成した例として、例えば
図5に示す通り、結晶化ガラス基板72と、明度向上層73として、多数の中空ガラス75と青色顔料を含む層とが積層された構成を有する加熱調理器用トッププレート71が挙げられる。
図5には図示していないが、明度向上層73の下面に、例えば遮光層等が形成されていてもよい。なお、
図5~
図11および
図13~19では、明度向上層等の形態の説明を目的としており、強度向上部材は図示していない。
【0041】
前記中空粒子を用いて明度向上層を形成した例として、後述する色調調整層を有する場合、例えば
図6に示す通り、結晶化ガラス基板22と、明度向上層23として中空ガラス25を含む層と、色調調整層24として白色顔料層とを有する加熱調理器用トッププレート21が挙げられる。前記明度向上層23として、中空ガラス含有層に代えて、前述した多孔質セラミック粒子、ガラスウール、ガラス繊維のうちの1以上を含む層を形成してもよい。または、中空ガラスとともに、多孔質セラミック粒子、ガラスウール、ガラス繊維のうちの1以上を含む層を形成してもよい。
図6には図示していないが、色調調整層24の下面に、例えば後述する遮光層等が形成されていてもよい。
【0042】
前記空隙含有層は、後述する色調調整層を有する場合、結晶化ガラス基板と色調調整層の間にスペーサーを設けて中空層を形成したものであってもよい。例えば
図7に示す通り、結晶化ガラス基板32と、色調調整層34として水色ガラス塗料層と、前記結晶化ガラス基板32と色調調整層34の間にスペーサー35を設けることで、中空層36の形成された明度向上層33とを有する加熱調理器用トッププレート31が挙げられる。前記スペーサーのサイズ、配置は、上記空隙の割合を満たしていれば特に限定されない。前記スペーサーの材質として、例えばガラス、セラミックが挙げられる。好ましくは透明のものがよい。また、
図7には図示していないが、色調調整層34の下面に、例えば機械的強度の更なる向上等を目的に、後述する第2ガラス基板等が形成されていてもよい。
【0043】
前記空隙含有層は、後述する色調調整層を有する場合、前記結晶化ガラス基板の下面または前記色調調整層の上面に設けられた凹凸領域であってもよい。例えば、明度を高める観点からは、結晶化ガラス基板2の下面を十分に粗面化し、該粗面化により形成された凹凸領域を明度向上層(空隙含有層)とし、該粗面化処理された面に色調調整層を設けた実施形態とすることも考えられる。例えば
図8に示す通り、結晶化ガラス基板42と、色調調整層44として形成された水色ガラス塗料層と、該色調調整層44の上面に凹凸を設けることで形成された、結晶化ガラス基板42と色調調整層44の間の明度向上層43とを有する加熱調理器用トッププレート41が挙げられる。
図8には図示していないが、色調調整層44の下面に、例えば機械的強度の更なる向上等を目的に、後述する第2ガラス基板等が形成されていてもよい。
【0044】
また、別の実施形態として、後述する色調調整層を有する場合、例えば
図9に示す通り、表面に凹凸を有する結晶化ガラス基板52と、色調調整層54としての水色ガラス塗料層と、結晶化ガラス基板52と色調調整層54の間の明度向上層53とを有する加熱調理器用トッププレート51が挙げられる。
図9には図示していないが、色調調整層54の下面に、例えば機械的強度の更なる向上等を目的に、後述する第2ガラス基板等が形成されていてもよい。
【0045】
前記凹凸の程度は、好ましくは空隙割合を満たすよう空隙が形成されていれば特に限定されず、Raの範囲は特に問わない。
【0046】
明度向上層が、上記結晶化ガラス基板または色調調整層の表面に凹凸が設けられることによって形成された空隙含有層である場合、明度向上層の領域は、凹凸を設けた結晶化ガラス基板と色調調整層のそれぞれの断面において、最大山高さ(Rp)と最大谷深さ(Rv)の和である最大高さ(Rz)の範囲をいう。
【0047】
前記明度向上層は、接する結晶化ガラス基板と同様に低熱膨張性を示すことが好ましい。これらの観点から、明度向上層は、ガラス成分等の無機材料と溶剤とを主成分として含む無機塗料で形成され、ガラス成分を主成分とすることが好ましい。前記明度向上層は、例えば結晶化ガラス基板に近い成分組成とすることがより好ましく、例えば、Li2O-Al2O3-SiO2を主成分とし、結晶化ガラス基板を構成するガラスの組成における、SiO2,A12O3,Li2O,TiO2,ZrO2,P2O5,BaO,Na2O+K2O,As2O3等の、バッチ原料における比率を変更することで、明度向上層の成分組成を調整することが挙げられる。
【0048】
また、明度向上層に、例えば、中空粒子、多孔質粒子、ガラス粒子などが多く含まれる場合、それらを結着させるための結着材を、上記粒子の熱膨張性と近い熱膨張性を有する材料とすることが挙げられる。上記結着材として、例えば、SiO2、Al2O3、B2O3、ZnO、P2O5、Li2O、Na2O+K2O、Bi2O3、CaO、MgO、BaO、TiO2、ZrO2、SnO2等のうち、1以上のバッチ原料を含むガラス系結着材を用いることが可能である。また、上記化合物の酸化数はこれに限られない。
【0049】
本明細書において、例えば前記「Li2O-Al2O3-SiO2を主成分とし」とは、
(a)ガラスの原料に占めるこれらの酸化物の割合、または、
(b)ガラス中のLi、Al、Siを各単独酸化物に換算して求められる合計酸化物量の、ガラスに占める割合
の少なくともいずれかが、50質量%以上であることをいう。
【0050】
基板色改善層が色調調整層を有する場合、前記明度向上層は色調調整層を視認できればよい。前記明度向上層は、前記色調調整層を視認する観点から、透明または半透明であることが好ましい。前記半透明とは、可視光の透過率が20%以上、80%以下であることをいう。つまり明度向上層の「透明性」とは、可視光の透過率が20%以上であることをいう。
【0051】
本実施形態において、明度向上層は、空隙含有層であって、かつガラス成分を主成分とし、透明または半透明であることが特に好ましい。
【0052】
前記明度向上層の厚さを調整することにより、上記結晶化ガラス基板との屈折率の差を制御してもよい。明度向上層の厚さは、明度向上効果をより高める観点から、800nm以上とすることが好ましい。明度向上層の厚さは、1μm以上とすることがより好ましい。また、明度向上層の厚さは、例えば1mm以下、例えば500μm以下、更に例えば100μm以下、更に例えば80μm以下とすることができ、例えば明度向上層の剥離およびクラック等をより抑制する観点から、前記明度向上層の厚さを、例えば50μm以下とすることができる。
【0053】
前記明度向上層の形成方法の一例として、例えばガラス組成物を含有するペースト等の無機塗料を、スクリーン印刷等により塗布し、乾燥させてから、550~900℃の範囲、例えば更に700~900℃の範囲内で焼き付けることが挙げられる。前記明度向上層の形成方法の他の例として、有機塗料を塗布した場合は、乾燥させてから、250~400℃の範囲内で焼き付けることが挙げられる。なお、例えば明度向上層と色調調整層を無機塗料等の無機材料で形成した場合、明度向上層形成後の色調調整層の形成時に、例えば700~900℃で焼き付けるため、明度向上層形成時の上記焼き付けは省略することができる。
【0054】
前記明度向上層として空隙含有層を形成する場合、空隙含有層の形成方法として次の方法が挙げられる。空隙含有層の形成に中空粒子等の粒子を用いる場合、一例として、例えば該中空粒子と結着材を含むペーストを、スクリーン印刷等により塗布し、乾燥させてから、明度向上層形成時または色調調整層形成時に、使用する材料に応じて上記温度で焼き付けることが挙げられる。
【0055】
空隙含有層の形成に発泡材料を用い、多孔質層を形成する場合、ガラス材料、セラミック材料と、高温で発泡する例えばポリマー材料とを含む混合材料を、結晶化ガラス基板上にスクリーン印刷等により塗布し、乾燥させてから、明度向上層形成時または色調調整層形成時に、使用する材料に応じて上記温度で焼き付けることにより、上記ポリマー材料を発泡させて、多孔質の明度向上層を形成することができる。
【0056】
空隙含有層の形成にスペーサーを用いる場合、結晶化ガラス基板上に、接着剤を介して、所望の間隔でスペーサーを配置し、更に接着剤を介して色調調整層を積層させて、前記明度向上層として中空層を設けることが挙げられる。
【0057】
前記結晶化ガラスの下面に凹凸を設ける場合、前記結晶化ガラスの下面の粗面化が挙げられる。前記結晶化ガラスの下面に凹凸を設ける目的として、反射率の向上、空隙含有層の形成などが挙げられる。上記反射率の向上を目的とする場合、前記粗面化は、例えば結晶化ガラス基板の下面の表面粗さRaが0.1μm以上となるように行うことが挙げられる。なお、表面粗さRaが大きくなるほど明度は向上するが、反射率を高めるため、Raを波長レベルの大きさ、すなわちサブミクロン程度のサイズとする観点、および結晶化ガラス基板の衝撃に対する耐久性を維持する観点からは、前記表面粗さRaは小さい方が好ましく、例えば10μm以下とすることが好ましい。一方、空隙含有層の形成を目的とする場合、前述の通り、好ましくは空隙割合を満たすよう空隙が形成されていればよく、Raの範囲は特に問わない。
【0058】
前記粗面化処理の方法は、物理的方法と化学的方法に分けられる。物理的方法として、砥石として、炭化ケイ素(SiC)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、ダイヤモンド(C)等を用いて、サンドブラスト、研磨剤を用いた遊離砥粒研磨等が挙げられる。化学的方法として、例えばフッ酸を含むエッチング液に浸漬する方法が挙げられる。
【0059】
前記色調調整層の上面に凹凸を設ける場合、その方法は特に限定されない。例えば、後述の通り、機械的強度を確保するため第2ガラス基板を用い、第2ガラス基板に凹凸を設け、その凹凸に沿って色調調整層を形成することで、凹凸を有する色調調整層を形成することが挙げられる。
【0060】
前記基板色改善層は、前記明度向上層で形成されていることが挙げられる。すなわち、前記基板色改善層は、後述する色調調整層を有さず、前記明度向上層のみで形成されていてもよい。
【0061】
(基板色改善層に含まれる青色顔料)
前記基板色改善層は、青色顔料を含む。本実施形態の加熱調理器用トッププレートは、前記基板色改善層が、前述の通り屈折率の制御された明度向上層を有し、かつ青色顔料を含んでいればよく、その具体的態様については限定されない。よって、青色顔料は、前記基板色改善層を構成する明度向上層に含まれていてもよいし、基板色改善層を構成する、明度向上層以外の層に含まれていてもよい。明度向上層以外の層として、後述する色調調整層を含む場合、明度向上層にのみ青色顔料を含み、色調調整層には、青色顔料以外の顔料、例えば白色顔料等を含みうる。または、色調調整層にのみ青色顔料を含み、明度向上層には、青色顔料以外の顔料、例えば白色顔料等を含みうる。または、青色顔料が明度向上層と色調調整層の両方に含まれる場合もある。前記青色顔料が明度向上層に含まれる場合、青色顔料は、明度向上層の透明性を維持できる範囲内で含まれうる。前記青色顔料が、明度向上層に含まれる場合、基板色改善層は明度向上層のみで形成されていてもよい。
【0062】
前記青色顔料として、青色無機顔料が挙げられ、例えば、紺青(フェロシアン化第二鉄)、群青、コバルト系無機顔料(Co-Al系、Co-Al-Si系、Co-Zn-Si系)、V-Zr-Si系無機顔料(ターコイズブルー)、マンガン系無機顔料等の青色無機顔料が挙げられる。また前記白色顔料として、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の白色無機顔料が挙げられる。前記青色顔料、白色顔料の市販品として、例えば、三ツ星製ハイカラー、帝国インキ製造株式会社製XGL-HFスクリーンインキ、奥野製薬工業株式会社製装飾用ガラスカラーHZシリーズ等が挙げられる。更には、色調調整のために、赤色顔料として、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄等の赤色無機顔料を含んでいてもよい。着色用の顔料は、所望の色調を得るように任意の割合で混合することが可能である。なお、顔料は、ここに挙げたものに限定されない。
【0063】
青色顔料を含まない層は、例えば、白色顔料が含まれていればよい。この場合、顔料として白色顔料のみが含まれていてもよいし、または、白色顔料とともに白色以外の顔料が含まれていてもよい。
【0064】
[強度向上部材]
本実施形態に係る加熱調理器用トッププレートは、更に強度向上部材を有する。強度向上部材は、加熱調理器用トッププレートの強度、耐久性を高めるために必要な部材である。強度向上とは、結晶化ガラス基板と基板色改善層の間、隣接する各層の間の密着性を向上させること、あるいは明度向上層等の基板色改善層の塗膜強度を向上させることを含む。強度向上部材を設けることにより、加熱調理器用トッププレートを構成する各層の強度、各層間の密着性が高められ、結果として、加熱調理器用トッププレート全体としての強度、耐久性が高められる。更に、上記各層の強度の向上、各層間の密着性の向上によって、加熱調理器用トッププレートが振動、外部からの衝撃を受けた場合であっても、各層が剥離し難く、結晶化ガラス基板と明度向上層等の熱膨張係数の差がある場合でも、各層間の密着性が高く剥離し難く、その結果、加熱調理器用トッププレートの耐久性・耐熱性が向上する。更には、より膜厚の厚い明度向上層を形成した場合であって熱が加わったとき、熱応力が大きくなり、明度向上層と結晶化ガラス基板または他の層との間で剥離が生じやすくなるが、強度向上部材を設けることにより、そのような剥離が生じ難い。よって、明度向上層をより厚く形成することで、加熱調理器用トッププレートの明度をより向上できるなど、色調をより容易に調整できる。
【0065】
強度向上部材は、加熱調理器用トッププレートの強度、耐久性を高められるものであればよい。その形態の一つとして、加熱調理器用トッププレートを構成する結晶化ガラス基板と基板色改善層の間、隣接する各層の間に、密着性向上層を設けること、加熱調理器用トッププレートを構成するいずれかの層にフィラーを含有させることが挙げられる。以下、強度向上部材として密着性向上層を設ける態様と、強度向上部材としてフィラーを設ける態様について説明する。
【0066】
〔密着性向上層〕
前記結晶化ガラス基板と前記基板色改善層の間に、前記強度向上部材として密着性向上層を有してもよく、および/または、前記明度向上層を複数有し、一の明度向上層と隣接する他の明度向上層の間に、前記強度向上部材として密着性向上層を有していてもよい。
【0067】
前記密着性向上層は、一層以上のガラス薄膜であるか、明度向上層と空隙率あるいは/および材料組成が異なる空隙含有層であることが好ましい。密着性向上層を構成する材料として、主成分がLi2O-Al2O3-SiO2等であるガラス材が挙げられる。または、明度向上層が、中空ガラス、ガラスビーズ、および多孔質材料などで形成されている場合、密着性向上層を構成する材料として、明度向上層を構成する上記中空ガラス等の材料の熱膨張係数に近い材料を用いることができる。よって、明度向上層に含まれる中空ガラスが、例えばホウケイ酸ガラス系である場合、Li2O-Al2O3-SiO2よりも大きな熱膨張係数の材料を密着性向上層に使用してもよい。フィラーを構成する材料も用いることができる。密着性向上層の厚さは、明度向上層と同等かそれよりも薄いことが好ましい。密着性向上層には、シリコーン等の有機結着材などの添加物が含まれていてもよい。
【0068】
密着性向上層として空隙含有層を形成する場合、空隙含有層の空隙の割合は、密着性向上層に接する一方の層または基板の空隙率と、他方の層または基板の空隙率の間であることが好ましい。例えば、結晶化ガラス基板と、空隙を有する明度向上層との間に、密着性向上層として空隙含有層を設ける場合、空隙の割合が明度向上層の空隙率よりも小さい空隙含有層を形成することで、空隙率の変化が緩和されて、基板と明度向上層の熱膨張率の差の影響による層間の剥離をより少なくし、膜強度を高めることができる。一方、結晶化ガラス基板と、明度向上層に用いる粒子あるいは結着材との熱膨張差が大きい場合等には、密着性向上層として、明度向上層よりも大きい空隙率の空隙含有層を形成することで応力緩和を図り、強度を高めることも可能である。
【0069】
密着性向上層の形成方法として、上記ガラスまたは有機結着材を含むペーストを、スクリーン印刷等により塗布し、乾燥させてから焼付け、あるいは乾燥させてから、明度向上層形成時または色調調整層形成時に、それらの層を形成する材料と共に焼成することが挙げられる。
【0070】
密着性向上層を形成した加熱調理器用トッププレートの例として、前述の
図2の加熱調理器用トッププレート91Aの他、
図10が挙げられる。
図2の加熱調理器用トッププレートの密着性向上層97は、薄膜ガラス等の充填層であるのに対し、
図10の加熱調理器用トッププレート91Bの密着性向上層97Bは、中空ガラス5を有する層である。この
図10の通り、密着性向上層に中空ガラスが含まれることによって、結晶化ガラス基板と明度向上層の間の密着性を高め、加熱調理器用トッププレート全体の強度を高めるとともに、加熱調理器用トッププレートの白色化を容易に達成することが可能となるため好ましい。
【0071】
後述する遮光層を、基板色改善層の下面に設ける場合、基板色改善層と遮光層を十分密着させるために、前記基板色改善層と遮光層の間に強度向上部材として密着性向上層を設けてもよい。
【0072】
〔フィラー〕
前記基板色改善層中に、前記強度向上部材としてのフィラーを含んでいてもよい。前記フィラーは基板色改善層を構成する明度向上層と、基板色改善層を構成する、例えば色調調整層などの明度向上層以外の層とのうちの1以上に含まれうる。前記明度向上層中に、前記強度向上部材としてのフィラーを含むことが好ましい。
【0073】
前記フィラーの材質、形状、サイズおよび含有量は特に問わず、所望の強度に応じて適宜決定することができる。前記フィラーは、金属、金属酸化物、セラミックス、金属塩、ガラス、シリカ、マイカ、タルク、クレー、ゼオライト、有機物材料、およびそれらの複合物、ならびに、それらの表面にカップリング材、活性基、反応基、有機物および金属酸化物の少なくとも1つが結合、吸着または蒸着した材料よりなる群から選択される1以上で構成されていることが好ましい。使用しうるフィラーとして、例えば、材質が、
・アルミニウム、チタン等の金属、
・アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛等の金属酸化物
・上記アルミナ等の金属酸化物を含むセラミックス
・炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属塩、
・ガラス、シリカ、マイカ、タルク、クレー、ゼオライト、有機物材料、および
・それらの複合物、
ならびに、
・それらの表面にカップリング材、活性基、反応基、有機物および金属酸化物の少なくとも1つが結合、吸着または蒸着した材料
よりなる群から選択される1以上でありうる。同じ材質であって、異なる形状、異なる粒径等のサイズのものを併せて用いてもよい。
【0074】
フィラーの形状として、粒子状、角状、棒状、枝状、針状、薄板状、鱗片状、繊維状、テトラポット状、多孔質であることが挙げられる。強度を確保できる限りにおいて中空粒子であってもよい。フィラーのサイズは、特に限定されず、目標とする層の強度を勘案して適宜決定すればよい。フィラーのサイズとして、例えば平均粒径が10nm~100μmであることが挙げられる。さらに好ましくは100nm~50μmの範囲であることが挙げられる。繊維状等の形状で長手と短手の長さが大きく異なる場合、短手の長さが上記サイズであればよい。基板色改善層中、特に明度向上層に含まれる含有量は、0~50体積%、さらに好ましくは0~30体積%の範囲とすることができる。
【0075】
フィラーを基板色改善層中に含む加熱調理器用トッププレートの例として、
図11が挙げられる。
図11の加熱調理器用トッププレート101は、基板色改善層である明度向上層103中に、フィラー108が含まれた例である。この
図11の通り、基板色改善層中にフィラーが含まれることによって、基板色改善層(
図11の場合は明度向上層)の強度を高めることができる。
【0076】
フィラーは、上記
図11に示す通り明度向上層中に含まれる以外に、基板色改善層として設けうる色調調整層に含まれていてもよい。この場合、色調調整層と明度向上層の少なくともいずれかにフィラーが含まれている形態が挙げられる。
【0077】
フィラーと後述する光輝材および/または反射材が併せて一つの層に含まれていてもよい。また、前記光輝材および/または反射材と、前述のフィラーは、兼用したものであってもよい。すなわち、同じ材質、形状のものを、色調調整の役割と、層の強度向上とを兼ねて用いてもよい。
【0078】
(色調調整層)
前記基板色改善層は、前記明度向上層以外の層として、色調調整層を含んでいてもよい。明度向上層が青色顔料を含まない場合、前記色調調整層に青色顔料を含めることができる。明度向上層が青色顔料を含む場合、前記色調調整層の青色顔料の含有の有無は問わず、前記色調調整層は、青色顔料を含んでいてもよいし、青色顔料を含まなくてもよい。すなわち、前記基板色改善層は、前記明度向上層の下面に設けられた、白色顔料、または白色顔料と前記青色顔料を含む色調調整層を有していてもよい。および/または、前記基板色改善層は、前記結晶化ガラス基板と前記明度向上層の間に設けられた、白色顔料、または白色顔料と前記青色顔料を含む色調調整層を有していてもよい。
【0079】
顔料の種類、配合量および色調等は設計者が任意に選択できる。色調の調整方法として、青色顔料の種類の選択の他、青色顔料と白色顔料を含む混合顔料における各顔料の比率を制御すること等が挙げられる。例えば下記の、顔料を含む塗料を用いることが挙げられる。また、顔料の他に中空ガラス粒子、多孔性材料などの空隙含有粒子、ガラス粒子、シリカ粒子、セラミック粒子等を含むことも可能である。
【0080】
色調調整層を構成するための塗料として、ガラス成分等の無機材料と溶剤と前記無機顔料とを主成分として含む無機塗料と、有機樹脂と溶剤と前記無機顔料とを主成分として含む有機塗料とが挙げられる。前記有機塗料に含まれる有機樹脂として、シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂等の変性シリコーン樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられ、耐熱性確保の観点からはシリコーン樹脂が好ましい。
【0081】
前記色調調整層を、無機塗料を用いて形成する場合、前記色調調整層は、前記顔料の他、ガラス成分が含まれうる。前記色調調整層は、結晶化ガラス基板と同様に低熱膨張性を示すものが好ましい。この観点から色調調整層はガラス成分等の無機材料と溶剤とを主成分として含む無機塗料で形成され、ガラス成分を主成分とすることが好ましい。前記色調調整層は、例えば結晶化ガラス基板に近い成分組成とすることがより好ましく、例えば、結晶化ガラス基板を構成するガラスの組成における、SiO2,A12O3,Li2O,TiO2,ZrO2,P2O5,BaO,Na2O+K2O,As2O3等の、バッチ原料における比率を変更することで、色調調整層の成分組成を調整することが挙げられる。または、明度向上層が、中空ガラス、ガラスビーズ、および多孔質材料などで形成されている場合、色調調整層を構成する材料として、明度向上層を構成する上記中空ガラス等の材料の熱膨張係数に近い材料を用いることができる。色調調整層を構成する材料として、更に、例えば、SiO2、Al2O3、B2O3、ZnO、P2O5、Li2O、Na2O+K2O、Bi2O3、CaO、MgO、BaO、TiO2、ZrO2、Sn2O等のうち1以上を含むガラス系結着材を用いることも可能である。
【0082】
前記色調調整層の厚さは、結晶化ガラス基板の黄色味の解消効果を十分高めるため、例えば0.1μm以上とすることができる。また前記色調調整層の厚さは、例えば100μm以下、例えば50μm以下とすることができ、前記色調調整層の剥離およびクラック等をより抑制する観点から、前記色調調整層の厚さは、例えば10μm以下とすることができる。
【0083】
前記色調調整層の形成方法の一例として、例えば無機塗料を用いて色調調整層を形成する場合、前記顔料と、ガラス成分と、エチルセルロース系樹脂またはニトロセルロース系樹脂を含むバインダーとを混合してペースト化し、明度向上層の下面、すなわち明度向上層の結晶化ガラス基板側と反対側の面に対し、スクリーン印刷により塗布し、乾燥させてから550~900℃で焼き付けることが挙げられる。前記色調調整層の形成方法の他の例として、有機塗料を塗布した場合は、乾燥させてから、250~400℃の範囲内で焼き付けることが挙げられる。明度向上層とともに、色調調整層を形成する場合、明度向上層をスクリーン印刷等により塗布し、乾燥させ、次いで、色調調整層をスクリーン印刷等により塗布し、乾燥させてから、上記温度で焼成する方法を採用することができる。
【0084】
本発明者は、色調調整層を設ける場合に、色調調整層で色調を調整することによって、従来のホウケイ酸ガラス基板に白色塗料を塗布した場合の色調を実現することを目的に、下記の通り予備実験を行った。
【0085】
色調調整層を模擬して、白色紙(ケント紙:こな雪210、株式会社ジツタ製)と、顔料を表1に示す配合比で配合して得られた塗料を前記と同じ白色紙に印刷した、青白色の印刷紙とをそれぞれ用意した。そして白色紙、各青白色の印刷紙のそれぞれの上に、結晶化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN-0)を置いたサンプルの、結晶化ガラス基板の表面側の色測定を行った。色測定は、分光測色計(コニカミノルタ製CM-2600d)を用い、得られたサンプルの色調を表色系Lab値として測定した。また、目標とするホウケイ酸ガラス基板の下面を白色インクで印刷した基材(以下(ホウケイ酸ガラス+白色インク)基材という)との色差も測定した。その結果を表1に示す。
【0086】
【0087】
更に、表1の結果をもとに、(ホウケイ酸ガラス+白色インク)基材との色差をグラフ化した図を
図12に示す。
図12において明度は紙面に垂直な方向で表される。また、
図12における■は、(ホウケイ酸ガラス+白色インク)基材の値を示しており、この■に近いほど好ましい。
図12に示された結果から、表1のNo.1の結晶化ガラス基板+ケント紙(
図12の◆)の色調は、目標値とする■からかなり離れていた。これに対して、表1のNo.2~4の通り、結晶化ガラス基板(ネオセラムN-0)の下面に青白色の印刷紙を配置させた場合、目標値とする■に十分近くなった。この結果から、若干青色、すなわち、
図12において下方向に位置する配色とすることで、白く見えやすいことがわかった。
【0088】
本発明の一実施形態として、好ましくは、屈折率が前記結晶化ガラス基板よりも小さい明度向上層を設けることによって、色調調整層に占める青色顔料の割合を低減することができ、例えば色調調整層に占める体積比率で5%以下とすることができる。それにより、明度の向上、黄色味の抑制をより容易に実現することができる。
【0089】
本発明の別の一実施形態として、反射率の高い加熱調理器用トッププレートを実現する場合、例えば結晶化ガラス基板と明度向上層の界面での反射率が70%以上である場合、色調調整層に到達する光は入射光の30%以下であり少ない。このような場合、結晶化ガラスの黄色味を確実に解消して白色に近づける観点から、色調調整層を濃い青色とすることが好ましい。例えば色調調整層単独のLab値でb値が-1より小さい青色を選択すること、青色顔料とともに混合する白色顔料の割合を低減すること等が挙げられる。
【0090】
色調調整層を有する実施形態として、例えば
図13に示す通り、結晶化ガラス基板62と、明度向上層63として中空ガラス65および青色顔料を含む層と、色調調整層64として形成された白色有機塗料層とが積層された構成を有する加熱調理器用トッププレート61が挙げられる。
図13には図示していないが、色調調整層64の下面に、例えば遮光層等が形成されていてもよい。
【0091】
また、色調調整層は、明度向上層の下方に形成する以外に、前述の通り結晶化ガラス基板と明度向上層の間に設けてもよく、この場合、色調調整層が、結晶化ガラス基板と明度向上層の間と、明度向上層の下方との複数個所に設けられていてもよい。
【0092】
また、色調調整層は、密着性向上層でもありうる。例えば、結晶化ガラス基板と明度向上層の間に色調調整層を設けた場合、該色調調整層は、結晶化ガラス基板と明度向上層の間の密着性向上層として作用しうる。また、明度向上層の下方に遮光層が設けられ、明度向上層と遮光層の間に色調調整層を設けた場合、該色調調整層は、明度向上層と遮光層の間の密着性向上層として作用しうる。
【0093】
〔光輝材・反射材〕
前記明度向上層(空隙のみで構成されている場合を除く)と、強度向上部材としての密着性向上層とのうちの1以上に、反射材と光輝材のうちの1以上が含まれていてもよい。および/または、基板色改善層が色調調整層を有し、この色調調整層に反射材と光輝材のうちの1以上が含まれていてもよい。
図14は、明度向上層3に反射材と光輝材のうちの1以上(「光輝材および/または反射材」ともいう)5が含まれる場合を示している。
図15は、明度向上層113の下の色調調整層114に、光輝材および/または反射材5が含まれる加熱調理器用トッププレート111Aの模式断面図である。また
図16は、結晶化ガラス基板112と明度向上層113の間に位置する色調調整層114に、光輝材および/または反射材5が含まれる加熱調理器用トッププレート111Bの模式断面図である。なお、これらの図は、光輝材および/または反射材が含まれる位置を説明するための図であって、強度向上部材は図示していない。光輝材および/または反射材が強度向上部材を兼ねていてもよい。
【0094】
前記光輝材および/または反射材として、マイカ、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛などの金属酸化物、アルミニウム、ガラス、これらの表面に金属又は金属酸化物が被覆されたもの、および、高分子フィルムに金属又は金属化合物が真空蒸着されたのち粉末化されたものよりなる群から選択される1種以上が挙げられる。これらのうち、マイカ、シリカ、上記金属酸化物、アルミニウムフレーク、ガラス粒子、ガラスフレーク、金属蒸着層を有するガラスフレーク、および金属酸化物層を有するマイカよりなる群から選択される1種以上が好ましい。前記ガラス粒子は、例えば自反射ガラスビーズであってもよい。
【0095】
光輝材および/または反射材5の形状として、球状、角状、棒状、枝状、薄片状であることが挙げられる。光輝材および/または反射材5のサイズは、特に限定されず、目標とする反射率を勘案して適宜決定すればよい。光輝材および/または反射材5のサイズとして、例えば平均粒径が0.1μm~100μmであることが挙げられる。光輝材および/または反射材5の明度向上層3に占める割合も、特に限定されず、目標とする反射率を勘案して適宜決定できる。
【0096】
前記光輝材および/または反射材5として、例えばマイカ等の表面に金属又は金属酸化物が被覆された、パールマイカ等を、明度向上層3の透明性を維持できる範囲内で少量加えれば、反射特性を高めつつ、色調の調整の補助もできるため好ましい。
【0097】
[結晶化ガラス基板]
本発明では、Li2O-Al2O3-SiO2を主成分とし、遷移元素を含む結晶化ガラス基板を用いる。前記基板を構成するガラスとして、例えばβ-石英、β-スポジュメン、チタン酸アルミニウム、コーディエライト等の低膨張結晶を1種以上含むものが好ましい。更には、β-石英固溶体またはβ-スポジュメン固溶体を主結晶とするものがより好ましい。
【0098】
前記結晶化ガラスは、負の膨張特性を示すβ-石英固溶体結晶と、正の膨張特性を示す残存するガラス層とが打ち消しあって、結晶化ガラス全体の熱膨張係数を低く抑えることができる。なお、低熱膨張性として、例えば熱膨張係数の絶対値が30×10-7/℃以下であることが挙げられる。
【0099】
結晶化ガラス基板の厚さは、例えば3mm~10mmとすることができる。前記結晶化ガラス基板の屈折率は、例えば約1.4~2.0である。
【0100】
〔結晶化ガラス基板の下面の粗面化〕
本発明の一実施形態として、結晶化ガラス基板の下面、すなわち、結晶化ガラス基板の調理側と反対側の面を粗面化することによって、光の乱反射を生じさせて反射率を高め、結果として明度を高めることができる。
【0101】
前記粗面化は、反射率を高めることを目的とする場合、例えば結晶化ガラス基板の下面の表面粗さRaが0.1μm以上となるように行う。なお、表面粗さRaが大きくなるほど明度は向上するが、結晶化ガラス基板の衝撃に対する耐久性を維持する観点からは、前記表面粗さRaは小さい方が好ましく、例えば10μm以下とすることが好ましい。
【0102】
前記粗面化処理の方法は、物理的方法と化学的方法に分けられる。物理的方法として、砥石として、炭化ケイ素(SiC)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、ダイヤモンド(C)等を用いて、サンドブラスト、研磨剤を用いた遊離砥粒研磨等が挙げられる。化学的方法として、例えばフッ酸を含むエッチング液に浸漬する方法が挙げられる。
【0103】
図17は、本発明の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
図17において、結晶化ガラス基板2と明度向上層3との界面は粗面化処理面6である。
図17の加熱調理器用トッププレート1は、結晶化ガラス基板2の下面を粗面化処理した後、粗面化処理面6に、明度向上層3が形成されたものである。
図17では、前記結晶化ガラス基板2と明度向上層3との界面での反射が、前記
図2よりも大きくなり、明度をより高めることができる。
【0104】
図18は、本発明の一実施形態として示す加熱調理器用トッププレートの模式断面図である。
図18の実施形態では、結晶化ガラス基板2と明度向上層3との界面が粗面であり、かつ明度向上層3に、前記
図14の実施形態と同様に、光輝材および/または反射材5が分散している。
図18の加熱調理器用トッププレート1は、結晶化ガラス基板2の下面を粗面化処理した後、粗面化処理面6に、光輝材および/または反射材5を含む明度向上層3が形成されたものである。この
図18では、前記結晶化ガラス基板2と明度向上層3との界面での反射、および明度向上層3中の光輝材および/または反射材5による光の乱反射により、前記
図2、
図14および
図17よりもさらに反射が大きくなり、明度をより更に高めることができる。
【0105】
(遮光層)
本実施形態の加熱調理器用トッププレートにおいて、必要に応じて、前記基板色改善層の下面に遮光層を有していてもよい。詳細には、必要に応じて、前記基板色改善層として明度向上層または色調調整層の下面に遮光層を有していてもよい。前記遮光層は、例えば耐熱塗料を色調調整層の下面に塗布して形成されうる。耐熱塗料としては、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂もしくはこれらの複合体を含む耐熱樹脂に、着色用の無機顔料を加えて混合したものを用いることができる。または、前記色調調整層の下面に、耐熱性を考慮して、結晶化ガラス基板に近い成分であるSiO2、Al2O3、Li2O等を主成分とするガラス質成分と、遮光のための顔料として黒色無機顔料(Fe2O3系、MnO2系、CuO系、Co2O3系等の金属酸化物顔料)とを含んだインクを塗布した層を必要に応じて設けてもよい。
【0106】
前述の通り、基板色改善層の下面に遮光層を設ける場合、基板色改善層と遮光層の間に、前記強度向上部材として密着性向上層を有することで、基板色改善層と遮光層の密着性を高めることができる。
【0107】
(第2ガラス基板)
本実施形態の加熱調理器用トッププレートにおいて、加熱調理器用トッププレートの最表面を構成する結晶化ガラス基板とは別に、第2ガラス基板として、強化ガラス基板、結晶化ガラス基板を、前記基板色改善層の下面、詳細には明度向上層または色調調整層の下面に、必要に応じて更に形成してもよい。
【0108】
前記第2ガラス基板は、その上面を、前述の結晶化ガラス基板の粗面化と同様の方法で、粗面化してもよい。前述の通り、色調調整層の上面に凹凸を設ける方法として、第2ガラス基板の上面を粗面化して凹凸を設け、その凹凸に沿って色調調整層(水色ガラス塗料層)を形成して、上面に凹凸を有する色調調整層を形成することができる。例えば
図19に示す通り、凹凸を有する第2ガラス基板85の上面に設けられた、上面に凹凸を有する色調調整層84と、結晶化ガラス基板82との間に、空隙含有層として明度向上層83の形成された加熱調理器用トッププレート81を形成することができる。
【実施例0109】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0110】
〔試料の作製〕
(実施例1)
結晶化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN-0、厚さ4mm)の表面に、第一層の形成のために、ガラス成分:Li2O-Al2O3-SiO2を主成分とし、溶剤を含むペーストを、スクリーン印刷した。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#325であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行った。
【0111】
次いで、第二層の形成のために、
・粒子径約3μmの中空ガラスを1.1g、
・結着材として、ガラス成分:Li2O-Al2O3-SiO2を主成分とし溶剤を含むペーストを0.5g、
・ガラス成分を含む青色無機塗料を0.1g、および
・オイル適宜
を混錬して得られたペーストを用意した。該ペーストを、上記焼成前の第一層の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#100であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、600~700℃で10分間焼成して、結晶化ガラス基板の表面に、第一層(約20μm)と第二層(約40μm)がこの順に積層した試料を得た。
【0112】
(実施例2)
第一層の形成のために、
・粒子径約3μmの中空ガラス:0.4g、
・結着材として、ガラス成分:Li2O-Al2O3-SiO2を主成分とし溶剤を含むペースト:0.5g、
・青色無機塗料:0.1g、および
・オイル適宜
を混錬して得られたペーストを用意した。該ペーストを、結晶化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN-0、厚さ4mm)の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#325であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行った。
【0113】
次いで、第二層の形成のために、
・粒子径約3μmの中空ガラスを1.1g、
・結着材として、ガラス成分:Li2O-Al2O3-SiO2を主成分とし溶剤を含むペーストを0.5g、
・ガラス成分を含む青色無機塗料を0.1g、および
・オイル適宜
を混錬して得られたペーストを用意した。上記焼成前の第一層の上面に該ペーストを用いてスクリーン印刷を行った。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#100であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、600~700℃で10分間焼成して、結晶化ガラス基板の表面に、第一層(約20μm)と第二層(約40μm)がこの順に積層した試料を得た。
【0114】
(実施例3)
第一層の形成のために、
・粒子径約3μmの中空ガラス:1.1g
・結着材として、ガラス成分:SiO2-B2O3-ZnOを主成分とし溶剤を含むペースト:0.5g
・青色無機塗料:0.1g、および
・オイル適宜
を混錬して得られたペーストを用意した。該ペーストを、結晶化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN-0、厚さ4mm)の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#100であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、580~680℃で10分間焼成して、第一層として明度向上層を得た。
【0115】
次いで、第二層の形成のために、有機塗料(シリコーン系)と酸化チタンをベースとした材料を混錬して得られたペーストを用意した。上記焼成して得られた第一層の上面に該ペーストを用いてスクリーン印刷を行った。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#100であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、280℃で1時間の焼成を行って、結晶化ガラス基板の表面に、第一層、第二層がこの順に積層した試料を得た。
【0116】
(実施例4)
第一層の形成のために、
・粒子径約1~2μmのガラスビーズ:3g、
・結着材として、ガラス成分:SiO2-B2O3-ZnOを主成分とし溶剤を含むペースト:0.5g、
・青色無機塗料:0.1g、および
・オイル適宜
を混錬して得られたペーストを用意した。該ペーストを、結晶化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN-0、厚さ4mm)の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#100であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、580~680℃で10分間焼成した。
【0117】
次いで、第二層の形成のために、有機塗料(シリコーン系)と酸化チタンをベースとした材料を混錬して得られたペーストを用意した。上記焼成して得られた第一層の表面に該ペーストを用いてスクリーン印刷を行った。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#180であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、280℃で1時間の焼成を行って、結晶化ガラス基板の表面に、第一層、第二層が順に積層した試料を得た。
【0118】
(実施例5-1)
層形成のために、
・粒子径約3μmの中空ガラス:1.1g、
・結着材として、ガラス成分:SiO2-B2O3-ZnOを主成分とし溶剤を含むペースト:0.5g、
・青色無機塗料:0.1g、
・マイカの周囲を酸化チタンで被覆した薄板状材料(パール材):0.1g、および
・オイル適宜
を混錬して得られたペーストを用意した。該ペーストを、結晶化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN-0、厚さ4mm)の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#100であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、580~780℃で10分間焼成して、結晶化ガラス基板の表面に、パール材を有する明度向上層が形成された試料を得た。
【0119】
(実施例5-2)
上記実施例5-1の試料の明度向上層の表面に、第二層の形成のために、有機塗料(シリコーン系)と酸化チタンをベースとした材料を混錬して得られたペーストを用意した。上記実施例5-1と同様に形成した第一層の表面に該ペーストを用いてスクリーン印刷を行った。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#180であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、280℃で1時間の焼成を行って、結晶化ガラス基板の表面に、第一層、第二層が順に積層した試料を得た。
【0120】
(実施例6)
層形成のために、
・粒子径約2μmの中空ガラス:1.1g、
・ガラス繊維:0.5g、
・結着材として、シリコーン樹脂を主成分とし溶剤を含むペースト:0.5g、
・青色有機塗料:0.15g、および
・オイル適宜
を混錬して得られたペーストを用意した。該ペーストを、結晶化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN-0、厚さ4mm)の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#100であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、280℃で1時間焼成して、結晶化ガラス基板の表面に、上記層が形成された試料を得た。
【0121】
(実施例7)
第一層の形成のために、
・粒子径約3μmの中空ガラス:2g、
・シリカ粉末(一次粒子径数十nm):0.3g、
・結着材として、ガラス成分:SiO2-B2O3-ZnOを主成分とし溶剤を含むペースト:1g、
・青色無機塗料:0.2g、および
・オイル適宜
を混錬して得られたペーストを用意した。該ペーストを、結晶化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN-0、厚さ4mm)の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#100であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行って、焼成前の第一層を得た。この焼成前の第一層の表面に、第二層を、上記第一層と同様にして形成してから、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、580~680℃で10分間焼成して、結晶化ガラス基板の表面に、第一層、第二層を順に積層した試料を得た。
【0122】
(実施例8)
第一層の形成のために、
・粒子径約3μmの中空ガラス:1.1g
・結着材として、ガラス成分:SiO2-B2O3-ZnOを主成分とし溶剤を含むペースト:0.5g
・青色無機塗料:0.1g、および
・オイル適宜
を混錬して得られたペーストを用意した。該ペーストを、結晶化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN-0、厚さ4mm)の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#100であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行って焼成前の第一層を得た。
【0123】
次いで、第二層の形成のために、
・粒子径約3μmの中空ガラス:0.8g、
・結着材として、ガラス成分:SiO2-B2O3-ZnOを主成分とし溶剤を含むペースト:0.5g、および
・オイル適宜
を混錬して得られたペーストを用意した。上記焼成前の第一層の表面に該ペーストを用いてスクリーン印刷を行った。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#325であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、580~680℃で10分間焼成して、第一層と第二層の積層を得た。
【0124】
次いで、第三層の形成のために、有機塗料(シリコーン系)と酸化チタンをベースとした材料を混錬して得られたペーストを用意した。上記焼成して得られた第二層の表面に該ペーストを用いてスクリーン印刷を行った。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#325であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、280℃で1時間の焼成を行って、結晶化ガラス基板の表面に、第一層、第二層および第三層がこの順に積層した試料を得た。
【0125】
(実施例9)
層形成のために、
・粒子径約35μm、および粒子径約10μmのガラスビーズ:6g、
・結着材として、ガラス成分:SiO2-B2O3-ZnOを主成分とし溶剤を含むペースト:0.5g、および
・青色無機塗料:0.1g
を混錬して得られたペーストを用意した。該ペーストを、結晶化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN-0、厚さ4mm)の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#100であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、580~680℃で10分間焼成して、試料を得た。
【0126】
(比較例1)
第一層の形成のために、
・粒子径約3μmの中空ガラス:1.1g、
・結着材として、ガラス成分:SiO2-B2O3-ZnOを主成分とし溶剤を含むペースト:0.5g、
・青色無機塗料:0.1g、および
・オイル適宜
を混錬して得られたペーストを用意した。該ペーストを、結晶化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN-0、厚さ4mm)の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#100であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行い、次いで、580~680℃で10分間焼成して試料を得た。
【0127】
(比較例2)
第一層の形成のために、
・粒子径約3μmの中空ガラス:1.1g、
・結着材として、ガラス成分:SiO2-B2O3-ZnOを主成分とし溶剤を含むペースト:0.5g、
・青色無機塗料:0.1g、および
・オイル適宜
を混錬して得られたペーストを用意した。該ペーストを、結晶化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN-0、厚さ4mm)の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷時のメッシュはメッシュ数#100であった。スクリーン印刷後、160℃で10分間の乾燥を行って焼成前の第一層を得た。次いで焼成前の第一層の表面に、第二層作成のため、前記第一層と同様にしてペーストをスクリーン印刷し、その後、160℃で10分間の乾燥を行った。そして、580~680℃で10分間焼成して、結晶化ガラス基板の表面に第一層、第二層の形成された試料を得た。
【0128】
〔評価〕
上記作製した試料を用いて、下記の評価を行った。
【0129】
(明度向上層の屈折率)
分光エリプソメーターを用い、前述の方法で屈折率を求めた。明度向上層が空隙含有層である場合、前述の通り、空隙の割合に応じて屈折率を求めた。その結果、結晶化ガラス基板の屈折率が、1.54であるのに対し、いずれの例も、明度向上層の屈折率は結晶化ガラス基板よりも小さかった。これらの結果から、明度向上層を空隙含有層とすることにより、屈折率が空気層の屈折率1.0により近くなり、前述の通り、結晶化ガラス基板内の光取り出し率が高まり、更なる明度の向上と黄色味の抑制が実現可能であることがわかる。なお、明度向上層が塗布された膜であって屈折率の測定が困難な場合等、例えば膜をエネルギー分散型X線分析(EDX)、波長分散型X線分析(WDX)、蛍光X線分析、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析、あるいはNMR(核磁気共鳴)、X線光電子分光(XPS)等で分析し、そこから推定される材料組成と近い材料組成の屈折率(文献値でもよい)と、空隙の割合から、明度向上層の屈折率を概算してもよい。
【0130】
(L値の測定)
上記の通り得られたサンプルの結晶化ガラス基板を最表面として色測定を行った。色測定は、色彩色差計(コニカミノルタ製CR410)を用いて、色空間L*a*b*を測定した。その結果、明度を示すL値は、表2に示す通りであった。この結果から、結晶化ガラス基板の下面に、明度向上層として中空ガラスを有する層を含む基板色改善層を設けることによって、結晶化ガラス基板の下面に、有機塗料で形成された色調調整層を直接形成した場合よりも、明るさを十分に高めることができたことがわかる。
【0131】
【0132】
(密着性の評価(碁盤目評価))
カッターを用い、間隔1mmで100マスの碁盤目状に切れ込みを入れた後、セロハンテープを張り付けた。その後、セロハンテープを張り付けてから引き剥がした。このセロハンテープの貼り付けと引き剥がしを合計3回行った。そして3回目のセロハンテープ引き剥がし後の碁盤目の塗膜が、比較例1の結果よりも多く残った場合を、密着性に優れると評価した。その結果、いずれの実施例も、比較例1よりも碁盤目の塗膜が多く残り、密着性に優れる結果となった。なお、実施例5-2は、実施例5-1よりも碁盤目の塗膜が多く残り、密着性により優れる結果となった。
【0133】
実施例1では、結晶化ガラス基板と明度向上層との間に密着性向上層としてガラス層を設けることにより、結晶化ガラス基板と明度向上層との間の密着性が向上し、全体の強度が向上した。実施例2は、結晶化ガラス基板と明度向上層(第二層)との間に、フィラー(中空ガラス)濃度が異なる第一層を設けることにより、強度を向上させた例である。また、第一層に中空ガラスを入れることにより、実施例1よりも明度が向上した。実施例3では、色調調整層(第二層)にフィラー(酸化チタン)を含むことにより膜強度を向上させた例である。また、第二層成分(有機樹脂、酸化チタン)が第一層の表層部に一部しみ込むことで密着性が向上したことも考えられる。実施例2の応用例として、第一層を2層形成することにより、明度をより向上させることも考えられる。
【0134】
実施例4は、色調調整層(第二層)にフィラー(酸化チタン)を含めることで膜強度を向上させた例である。実施例5-1は、フィラー(薄板状材料)を添加することにより、膜強度の向上を図った例である。実施例5-2は、色調調整層(第二層)にフィラー(酸化チタン)を含むことにより膜強度を向上させた例である。
【0135】
実施例6は、明度向上層にフィラー(ガラス繊維)を入れることにより、強度向上を図った例である。実施例7は、粒径の異なる粒子を入れることにより、隙間を埋める補強効果で強度を向上させた例である。実施例8では、明度向上層と色調調整層(第三層)の間に結着材がより多い層を設けることにより、基板色改善層との密着性がより改善された。実施例9は、粒径の異なる粒子を入れることにより、隙間を埋める補強効果で強度向上を図った例である。
以上のように本発明は、高強度かつ低熱膨張性を示す結晶化ガラスを基板に使用し、白色を呈する調理器用トッププレートを提供できる。よって、一般家庭の食卓、調理台等、または業務用の厨房等で使用される、卓上型、据え置き型または組込型の、白色を呈する加熱調理器を提供できる。