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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003412
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】冷却塔
(51)【国際特許分類】
   F28F 25/12 20060101AFI20221228BHJP
   F28C 1/02 20060101ALI20221228BHJP
   F28F 25/02 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
F28F25/12
F28C1/02
F28F25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101107
(22)【出願日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021104253
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000164553
【氏名又は名称】空研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】安井 洋
(72)【発明者】
【氏名】有満 正男
(72)【発明者】
【氏名】大楠 孝行
(72)【発明者】
【氏名】猪口 義巳
(72)【発明者】
【氏名】土屋 敦嗣
(72)【発明者】
【氏名】柳原 智久
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勲
(72)【発明者】
【氏名】絹笠 祐太
(72)【発明者】
【氏名】前田 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】今道 章文
(72)【発明者】
【氏名】濱口 時永
(72)【発明者】
【氏名】高階 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】プリンズ ジョナサン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】古賀 翔聖
(72)【発明者】
【氏名】横山 大史郎
(72)【発明者】
【氏名】半田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】橋口 拓真
(57)【要約】
【課題】 外気との熱交換を経て冷却された水が吸込口等を通じて外部に流出するのを防いで、損失を減らすと共に、冷却塔周囲への水飛散による悪影響を抑えられる、冷却塔を提供する。
【解決手段】 冷却塔塔体における吸込口11の上側に略樋状の案内部18を設けて、塔体内面近傍を流下する水を案内部18で受けて、その下方の吸込口近傍位置に達しないようにし、水が吸込口近くをそのまま通過する状態を生じさせないことから、吸込口11の近くに達した水が外部からの風の影響で流されたり、下部水槽50の吸込口11に近い箇所に落ちた水が跳ね返るなどして、水が吸込口11の外に出て飛散するのを防止できる。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却塔塔体内の熱交換部に対し散水しつつ、送風機による誘引通風で熱交換部の下方から上向きに外気を流通させ、熱交換部で少なくとも外気と散水された水との熱交換を行わせる向流型の冷却塔において、
塔体における熱交換部の存在する範囲より下側に位置する外気の吸込口に対し、当該吸込口の上側の塔体内面から内方に突出し、且つ塔体内面に沿って横方向に連続するように設けられる略樋状の案内部を備え、
当該案内部が、上方から流下した水を受け、長手方向の端部に水を案内し、
前記案内部の長手方向端部に案内された水を、案内部より下側に位置する塔体の一部に沿わせてさらに下方に流下させることを
特徴とする冷却塔。
【請求項2】
前記請求項1に記載の冷却塔において、
前記塔体が、方形断面形状の中空部を取り囲む角形筒状とされ、四つの側面のうちいずれかの隣り合う二側面を少なくとも含む二つ以上の側面における下部に吸込口をそれぞれ設けられてなり、
前記塔体における、隣り合う二つの側面の各吸込口間に位置するコーナー部の内側部位に、当該コーナー部から他のコーナー部に向かう対角線の方向に所定長さ連続する気流制御板を設け、
当該気流制御板に、前記案内部の長手方向端部に案内された水を沿わせて流下させることを
特徴とする冷却塔。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の冷却塔において、
冷却塔における下部水槽で、水槽内の過剰量の水を溢水させて槽外へ排出するオーバーフロー管が、水の入口部を、上方の熱交換部の下面に面しない配置で、且つ前記案内部の長手方向端部から流下する水及び案内部から溢れて長手方向端部以外から流下する水の到達しない所定箇所に配設されることを
特徴とする冷却塔。
【請求項4】
前記請求項3に記載の冷却塔において、
当該冷却塔が、塔体内の前記熱交換部としての充てん材に対し上方から循環水を散水し、充てん材で外気と循環水との熱交換を行わせる開放式とされてなり、
散水される循環水の供給部が、塔体上部外側に配設され、
塔体外側の循環水の供給部の所定部位から分岐されるブローダウン用の排水管が配設され、
当該排水管が、塔体外部から下部水槽の前記オーバーフロー管に接続されることを
特徴とする冷却塔。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載の冷却塔において、
冷却塔における下部水槽内に配設される、多孔質材製のシート体を備え、
当該シート体が、下面側に水に浮く性質の浮体を一又は複数取り付けられ、下部水槽内の水に浮いて水面に位置し、且つ、水面の上下変動に追随して上下移動可能とされることを
特徴とする冷却塔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環使用する液相の熱媒体を熱交換部で空気と熱交換させて冷却する冷却塔に関し、特に向流型の小型冷却塔に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場や空気調和設備などで循環使用する水などの液相の熱媒体の冷却を目的として屋外に設置される冷却塔では、冷却塔内部の熱交換部において、ファン(送風機)の作動に伴って外部から取込まれる空気(外気)と熱媒体とを、直接あるいは間接的に熱交換させ、冷却を行う仕組みとなっている。
【0003】
このうち、小型の冷却塔は、丸形の塔体に収められた巻回構造の充てん材に対し、その上方の散水部から循環水を散水すると共に、下方から外気を導入して、熱交換を行わせる、向流型の装置とされることが多かった。
このような従来の向流型の冷却塔の例として、実開平6-55079号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6-55079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の向流型の冷却塔は、前記特許文献に示される構成を有しており、散水部から散水された水と、塔体下部の吸込口から導入されて上方に向かう外気とが、対向する流れとなって熱交換を行うことから、熱交換の効率は比較的高いものとなっていたが、近年、より一層の効率向上を求められている。
【0006】
しかし、従来の丸形の冷却塔は、巻回式の充てん材構造の関係で、冷却能力を大きくしようとすると充てん材の巻回量が増大する分、設置面積も大きくなり、コンパクトな形態を維持できなくなるなど、構造上の制約が大きく、効率向上に係る改良の余地が乏しいものであった。
【0007】
また、従来の丸形の冷却塔では、充てん材における塔体内面近傍の部位を通過した循環水が、下部水槽と衝突するのに伴う水跳ねで吸込口から外部に飛び出したり、外から冷却塔の吸込口を通じて吹き込んだ強い横風が、充てん材と下部水槽間で流下する水を横に押し流し、この押し流された循環水が吸込口から冷却塔外に流出するおそれがあるという課題を有していた。
【0008】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、外気との熱交換を経て冷却された水が吸込口等を通じて外部に流出するのを防いで、熱交換における損失を減らすと共に、冷却塔周囲への水飛散に伴う悪影響を抑えられる、冷却塔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る冷却塔は、冷却塔塔体内の熱交換部に対し散水しつつ、送風機による誘引通風で熱交換部の下方から上向きに外気を流通させ、熱交換部で少なくとも外気と散水された水との熱交換を行わせる向流型の冷却塔において、塔体における熱交換部の存在する範囲より下側に位置する外気の吸込口に対し、当該吸込口の上側の塔体内面から内方に突出し、且つ塔体内面に沿って横方向に連続するように設けられる略樋状の案内部を備え、当該案内部が、上方から流下した水を受け、長手方向の端部に水を案内し、前記案内部の長手方向端部に案内された水を、案内部より下側に位置する塔体の一部に沿わせてさらに下方に流下させるものである。
【0010】
このように本発明によれば、塔体における吸込口の上側に略樋状の案内部を設けて、塔体内面近傍を流下する水を案内部で受けて、その下方の吸込口近傍位置に達しないようにし、水が吸込口近くをそのまま通過する状態を生じさせないことにより、吸込口の近くに達した水が外部からの風の影響で流されたり、下部水槽の吸込口に近い箇所に落ちた水が跳ね返るなどして、水が吸込口の外に出て飛散するのを防止できる。
【0011】
また、仮に案内部で受ける水量が増大し、案内部から水が溢れる状態となっても、案内部の長手方向端部以外では突出する先端側から水が滴ることとなり、案内部が塔体の内方に突出する分、水は吸込口から離れた箇所を進行して、吸込口の近くに達することはなく、案内部の長手方向端部から流下させる場合と同様に、吸込口の外への水の飛散を抑えられる。
【0012】
また、本発明に係る冷却塔は必要に応じて、前記塔体が、方形断面形状の中空部を取り囲む角形筒状とされ、四つの側面のうちいずれかの隣り合う二側面を少なくとも含む二つ以上の側面における下部に吸込口をそれぞれ設けられてなり、前記塔体における、隣り合う二つの側面の各吸込口間に位置するコーナー部の内側部位に、当該コーナー部から他のコーナー部に向かう対角線の方向に所定長さ連続する気流制御板を設け、当該気流制御板に、前記案内部の長手方向端部に案内された水を沿わせて流下させるものである。
【0013】
このように本発明によれば、角形の塔体における隣り合う二つの側面にそれぞれ吸込口が設けられて、二つの吸込口が隣り合う状態で、隣り合う吸込口間のコーナー部内側に気流制御板が設けられ、案内部の長手方向端部に案内された水がこの案内部から流下すると、塔体の一部をなす気流制御板に沿って下方に向うようにすることにより、コーナー部から塔体内方へ延伸配置される気流制御板に対し、案内部端部から水が最短距離で到達してこの気流制御板に沿うこととなり、水が水滴として吸込口の近くを流れる状態が生じにくい上、各コーナー部内側の気流制御板で、ある吸込口から他の吸込口に横風が通り抜けようとするのを阻止でき、こうした吸込口間を通り抜ける横風で水が押し流される事態も防ぐことができ、吸込口を通じての水の冷却塔外への飛散をより確実に抑えられる。
【0014】
また、本発明に係る冷却塔は必要に応じて、冷却塔における下部水槽で、水槽内の過剰量の水を溢水させて槽外へ排出するオーバーフロー管が、水の入口部を、上方の熱交換部の下面に面しない配置で、且つ前記案内部の長手方向端部から流下する水及び案内部から溢れて長手方向端部以外から流下する水の到達しない所定箇所に配設されるものである。
【0015】
このように本発明によれば、下部水槽内の水の過剰分を溢流させ排出する下部水槽のオーバーフロー管の入口部を、熱交換部から流下してきた水や案内部で一旦受け止められてから流下してくる水の到達しない所定箇所に配置し、下部水槽に一旦溜まった水以外がオーバーフロー管に入らないようにすることにより、熱交換後の水が下部水槽に到達せずにオーバーフロー管に入り、オーバーフロー管を通じて外部に排水されるのを防ぎ、熱交換した後の水の過剰な流出を抑えて熱交換効率の低下を防止できる。
【0016】
また、本発明に係る冷却塔は必要に応じて、当該冷却塔が、塔体内の前記熱交換部としての充てん材に対し上方から循環水を散水し、充てん材で外気と循環水との熱交換を行わせる開放式とされてなり、散水される循環水の供給部が、塔体上部外側に配設され、塔体外側の循環水の供給部の所定部位から分岐されるブローダウン用の排水管が配設され、当該排水管が、塔体外部から下部水槽の前記オーバーフロー管に接続されるものである。
【0017】
このように本発明によれば、散水される循環水を送給する塔体外側の供給部の所定部位から分岐されるブローダウン用の排水管を設け、排水管を塔体外から下部水槽のオーバーフロー管に接続し、ブローダウンのために排水管を通じて取り出した水をオーバーフロー管の排水と合流させて排出することにより、ブローダウンとして排出する循環水の一部を熱交換前の循環水から取り出すことができ、塔体内でブローダウンに係る取水を行う場合のように、排出する水には不要となる熱交換を行わずに済み、効率低下を招くことなくブローダウン実行による循環水の水質維持が図れる。また、ブローダウンのために取り出した水の排出に、オーバーフロー管に接続されている既設の排水経路を用いることで、ブローダウンに伴う排水のために管路を新たに配設せずに済み、コストを抑えられる。
【0018】
また、本発明に係る冷却塔は必要に応じて、冷却塔における下部水槽内に配設される、多孔質材製のシート体を備え、当該シート体が、下面側に水に浮く性質の浮体を一又は複数取り付けられ、下部水槽内の水に浮いて水面に位置し、且つ、水面の上下変動に追随して上下移動可能とされるものである。
【0019】
このように本発明によれば、下部水槽に、透水性のある多孔質材製のシート体を浮体の浮力で水に浮く状態として配設し、下部水槽における水面の上下移動にシート体を追随可能として、シート体を常に水面に位置させることにより、充てん材を通過して下部水槽に流下する水は、下部水槽の水面に達する前にシート体に接し、これに浸透してから水面に向かう状態となり、水槽内水位の変化に関わりなく、上方から流下する水の勢いをシート体で緩和でき、水が水面に達した場合の発生音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る冷却塔の概略斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る冷却塔の正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る冷却塔の平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る冷却塔の側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る冷却塔における塔体内部への散水用パイプ配設状態説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る冷却塔における案内部及び気流制御板の配置状態説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係る冷却塔における案内部を含む要部の概略断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る冷却塔における下部水槽内部のオーバーフロー管配置状態説明図である。
図9】本発明の一実施形態に係る冷却塔における下部水槽内部の他のオーバーフロー管配置状態説明図である。
図10】本発明の一実施形態に係る冷却塔における下部水槽内部のシート体上下移動状態説明図である。
図11】本発明の一実施形態に係る冷却塔における散水部からの散水状態説明図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る冷却塔における下部水槽内部構造説明図である。
図13】本発明の他の実施形態に係る冷却塔における内部のカバー配設状態説明図である。
図14】本発明の他の実施形態に係る冷却塔における防護体のスライド状態説明図である。
図15】本発明の他の実施形態に係る冷却塔の概略構成図である。
図16】本発明の他の実施形態に係る冷却塔における突出板配置状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る冷却塔を前記図1ないし図11に基づいて説明する。本実施形態においては、向流型(カウンターフロータイプ)として、誘引通風用の送風機の下方に設けられた充てん材を挟んで上側に散水部、下側に空気の吸込口が設けられる小型の冷却塔の例について説明する。
【0022】
前記各図に示すように、本実施形態に係る冷却塔1は、熱媒体である循環水と外部の空気とを内部に通過させる塔体10と、熱交換部として循環水と空気との熱交換に係る接触を促す充てん材20と、塔体10の上部側面に配設されて循環水を一時的に貯留可能な水分配タンク30と、充てん材20の上側に配設されて水分配タンク30から循環水を供給され、この循環水を充てん材20各部へ散水する散水部40と、充てん材20下側に配設されて充てん材20を通過した循環水を回収する下部水槽50と、塔体10の上部に配設されて充てん材20の各充てん材シート21間に誘引通風で外部の空気を通す送風機70とを備える構成である。
【0023】
本実施形態に係る冷却塔1は、塔体10内の熱交換部としての充てん材20に対し上方の散水部40から循環水を散水し、充てん材20で外気と循環水との熱交換を行わせる開放式冷却塔である。散水部40に対しては、水分配タンク30を含む塔体10上部外側の循環水の供給部から、循環水が継続して供給される。
【0024】
前記塔体10は、方形又は矩形断面形状の筒内空間を取り囲む角形筒状とされ、四つの側面における下部に外気の吸込口11をそれぞれ設けられると共に、上部に塔体内で熱交換した後の外気を排出する排出口12を設けられる構成である。
【0025】
そして、塔体10の内部には、充てん材20の存在する範囲より下側に位置する各吸込口11に対し、これら吸込口11の上側で一部の循環水の流れを変える案内部18が設けられる構成である。加えて、少なくとも吸込口11が存在する範囲における塔体コーナー部の内側部位には、外部から吸込口11に流入する横風の影響を抑える気流制御板19が設けられる構成である。
【0026】
この塔体10は、金属製の柱材及び梁材を組み合わせてなる枠体16、及び、この枠体16にねじ止め等で取り付けられて各側面をなすFRP製の外板17で形成されるものである。
【0027】
塔体10の各外板17は、角形の塔体各面でいずれも塔体内部の充てん材20が存在する範囲を超える大きさとして配設される。これら外板17については、塔体他部分に対し着脱可能とすることもでき、その場合、外板17の取り外し状態では、塔体外からの充てん材20の取り扱いを可能とする開放部分を生じさせることとなる。
【0028】
各外板17の下縁部は、塔体10における枠体16の一部をなす梁材における上方への起立部分の内側に配置され、循環水が外板17の内側に達して流下しても、塔体10の外側に循環水が漏れないようにされる。こうした外板17が枠体16より内方に配置される箇所では、塔体外側から外板17を枠体16に取付可能とするために、枠体16におけるねじ止め用の貫通孔と重なる外板17の所定部位にねじ止め用のナットを一体化するようにしてもよい。
この他、外板17は、単なる平板状に形成したものに限らず、外面又は内面にリブ等の凹凸部を設けて補強を図るようにしてもよい。
【0029】
塔体10上部における水分配タンク30のある側とは反対側となる側面には、散水部40に対する作業用の開口部13が設けられる。この開口部13は、塔体10の外から作業者が散水部40に対するメンテナンス等の作業を行える程度の大きさとされる。
【0030】
そして、塔体10に対して、開口部13を開閉可能とする蓋状のカバー部15が着脱可能に配設される。
なお、カバー部は、塔体10側面に連結された扉状として、塔体10から取り外さずに開口部13を開閉可能とすることもできる。この場合、カバー部は、開口部13を開放した状態で、少なくとも作業者が散水部40に対する作業を行うのに支障がない箇所に位置していることはいうまでもない。
【0031】
前記案内部18は、略樋状に形成され、塔体10の内部のうち、各吸込口11の上側で塔体内面から内方に突出し、且つ塔体内面に沿って横方向に連続するように設けられる構成である。
【0032】
この案内部18は、塔体10の横方向に一致する長手方向の両端部を、他の案内部と重ならないように斜めに切り落とした形状とされる。これにより案内部18は、吸込口11の上側で、上方から流下した水を受け、長手方向の端部に水を案内し、この端部から水を案内部18より下側に位置する塔体の一部、具体的には、気流制御板19に沿わせてさらに下方に流下させることとなる。
【0033】
前記気流制御板19は、板状体として形成され、塔体10の側面同士が交わる各コーナー部における、吸込口11が存在する範囲の内側部位に、起立状態で、且つ、コーナー部から他のコーナー部に向かう対角線に沿うようにして配設される構成である。
【0034】
各コーナー部に配設される気流制御板19は、コーナー部の隅に位置する塔体10の枠体16に取り付けられ、いずれもコーナー部から他のコーナー部に向かう対角線の方向に所定長さ連続するものの、塔体10の中心には達しておらず、他の気流制御板との間に隙間が介在する状態となっている。すなわち、吸込口11が存在する範囲の塔体10の中心部は、気流制御板のない空間となっており、各吸込口から流入した外気の流通を許容する。
そして、気流制御板19は、案内部18における長手方向端部の下方に位置しており、この案内部18の端部から流下する水を表面に沿わせてさらに下方に導くことができる。
【0035】
前記充てん材20は、多数の略矩形板状の充てん材シート21を積層状態で一体化して形成され、充てん材シート21間を空気及び水が上下方向に通過可能な向きとして、塔体10内に一段又は上下に複数段重ねて設けられる構成である。
【0036】
この充てん材20は、前記送風機70及び散水部40の下方で且つ塔体下部の外気の吸込口11より上側に配設され、上方から循環水を散水されると共に下から上方向へ外気を通過させて、主に充てん材シート21間で循環水と空気との熱交換を行わせる構成である。
【0037】
前記水分配タンク30は、薄い箱状体で形成され、充てん材20のある位置より上側となる塔体10の上部側面に突出状態として配設され、この塔体上部で、前記下部水槽50を出て冷凍機や空気調和機器等に通じる循環管路90を経由してきた循環水の供給を受け、この循環水を一時的に所定量貯留可能とされる構成である。
この塔体上部外側に位置する水分配タンク30、及び、水分配タンク30に循環水を向かわせる循環管路90の一部が、循環水の供給部の役割を果たしている。
【0038】
水分配タンク30は、その下部に散水部40をなす各散水用パイプ41の一方の端部を接続されて、これら散水用パイプ41と連通し、貯留する循環水を各散水用パイプ41に流入させる構成である。
【0039】
また、水分配タンク30は、循環水の入口部31を、散水用パイプ41の接続位置から最大限離隔させる配置として設けられる。詳細には、水分配タンク30における循環水の入口部31は、下部の散水用パイプ41の接続位置からできるだけ離れるようにタンク中央の上寄りに設けられる。加えて、入口部31は、その口径をできるだけ大きくして設けられる。
【0040】
さらに、水分配タンク30は、タンク内部をこのタンクの外部(塔体内空間)に通じさせる通気孔32を設けられ、この通気孔32を通じて内部を大気開放状態とされる構成である。このタンク内部を外部に通じさせる通気孔32は、タンク中央の循環水の入口部31に対し、この入口部31から離隔した所定箇所、具体的には、タンクにおける長手方向両端部(散水用パイプ41並列方向の端部)の上部に設けられる。この通気孔32は、内部の循環水のこの孔位置を越える余剰分を溢水させる目的でも用いることができる。
【0041】
一方、水分配タンク30の外側では、入口部31の外方に突出する管部に循環管路90が接続され、入口部31に循環水を流入可能とされる。
そして、水分配タンク30の底部の所定箇所には、濃縮された循環水のブローダウン用の排水管34が接続され、循環水の一部をこの排水管34に流入させて取り出せる仕組みである。排水管34の途中には、ブローダウンを制御する弁が設けられる。
【0042】
なお、排水管34の接続位置を、水分配タンク30の底部の所定箇所としているが、これに限られるものではなく、塔体外側で循環水の供給部をなすものであれば、水分配タンクの他に、循環管路90の一部にブローダウン用の排水管を接続して循環水の一部を分岐流入させる構成としてもかまわない。
【0043】
前記散水部40は、複数の散水用パイプ41を、パイプ長手方向が水平となる向きで、パイプ長手方向と直交する向きに平行に並べて形成され、充てん材20の上側に動かない状態で配設される構成である。
散水部40の各散水用パイプ41は、水分配タンク30に対し、一方の端部を着脱可能に螺合させて接続状態とされる。
【0044】
また、各散水用パイプ41は、その下部に複数の孔42を設けられ、水分配タンク30に連通する一方の端部から水分配タンク内の循環水の供給を受け、パイプ内に流入した循環水を下部の孔42から自然流下させることとなる。
散水用パイプ41下部における複数の孔42は、パイプ長手方向に所定間隔で並べて設けられると共に、孔の大きさを、水分配タンク30から離れるほど小さくされる構成である。
【0045】
前記下部水槽50は、塔体10下部に連結される支持枠51上に配設され、流下した循環水を受けて一時貯溜しつつ回収するものである。
この下部水槽50には、水槽内の過剰量の水を溢水させて槽外へ排出するオーバーフロー管52が配設される。
【0046】
オーバーフロー管52は、その水の入口部52aを、上方の充てん材20の下面に面しない配置で、且つ案内部18の長手方向端部から流下する水及び案内部18から溢れて長手方向端部以外から流下する水の到達しない、下部水槽50の所定箇所に配設される構成である。
【0047】
詳細には、オーバーフロー管52の入口部52aは、図8に示すように横向きとされたり、図9に示すように上向きとされると共にその上方の少し離れた位置にカバー52bを設けられるなどの構成を採用して、充てん材20の下面に面しないことで、充てん材20を通過して流下する水を管内に流入させない仕組みを有している。
【0048】
また、下部水槽50には、水分配タンク30から分岐されたブローダウン用の排水管34が、水槽側面に配設されているオーバーフロー排水用管路58に連結され、この管路を通じて水槽内部のオーバーフロー管52に接続される。この排水管34とオーバーフロー管52が連通するオーバーフロー排水用管路58では、オーバーフロー管52からの溢水で排出される循環水の流通を排水管34から流入する水で妨げることがなく、且つ排水管34からの水も支障なく排水可能となるようにされる。
【0049】
さらに、下部水槽50内には、多孔質材製のシート体55が、その下面を下部水槽50に一時貯留される循環水の水面に一致させるようにして配設される。
シート体55は、その下面側に、水に浮く材質からなる板状の浮体55aを一又は複数取り付けられ、水に浮くようにされて、下部水槽50における循環水の水量変化に伴う下部水槽水面の上下変動に追随して上下移動可能とされる。
【0050】
充てん材20を通過して下部水槽50に流下する水は、一旦シート体55に達し、多数の空隙があるシート体中に浸透して一時的に滞留する過程を経てから、最終的にシート体55を流れ出て直下の水面に達することで、水勢を減殺され、水が下部水槽50の水面に達しても音はほとんど発生しない仕組みである。
【0051】
なお、下部水槽50においては、水面の変動に合わせて上下動するシート体55の他に、同様の多孔質材からなる別のシート体を設けて、シート体を複数段配置とすることもできる。例えば、水面に位置するシート体とは別に、下部水槽50の上部に固定式のシート体を設けて、シート体を二段配置とすることもでき、充てん材20を出て下部水槽50に達する水の勢いを各シート体で確実に弱めて、水が水面に達した際の音の発生をより一層抑えられることとなる。
【0052】
この他、下部水槽50における、冷凍機や空気調和機器等に通じる循環管路90の送出し側端部や、循環水減少時に補給される補給水の給水部(図示を省略)等をそれぞれ接続される構成、及び、循環管路90へ進む循環水の出口でスケール等の異物を捕捉して水のみを通過させるストレーナ59が設けられる構成については、公知の冷却塔の下部水槽と同様のものであり、詳細な説明を省略する。
【0053】
前記送風機70は、塔体10の最上部に配設され、その下方に位置する充てん材20に対し誘引通風で吸込口11から導入した外部の空気を下方向から通し、充てん材30を上向きに通過した空気を上方へ吹出して冷却塔外へ排出するものである。
【0054】
この送風機70は、公知の小型の冷却塔に用いられるものと同様に、電動機75の駆動力をこれに連結された羽根車71に直接伝えることで、羽根車71を回転させて塔体内の空気を塔体外へ排出し、誘引通風を実行できる仕組みである。
【0055】
次に、本実施形態に係る冷却塔の作動状態について説明する。
冷却塔1を含む循環管路90を流通する熱媒体としての循環水は、公知の冷却塔同様に、通常の冷却塔運転状態では、循環管路90の経路中にある冷凍機や空気調和機器等を経て熱を受取り、温度を上げて冷却塔1に達する。冷却塔1に戻った循環水は、まず冷却塔1の塔体10側面の水分配タンク30に、その入口部31から導入され、この水分配タンク30内に一時的に貯留されることとなる。
【0056】
水分配タンク30に導入された循環水は、水分配タンク30が通気孔32を通じて内部を大気開放状態とされているのに伴い、所定時間水分配タンク30にとどまった後、タンク下部に接続された散水部40の各散水用パイプ41の一端部に流入する。そして、循環水は、散水用パイプ41をその他端部に向かう中で下部の各孔42に達し、これら各孔42を通過して自然流下することで、散水部40の下側の充てん材20各部へ散水されることとなる。
【0057】
散水部40の各散水用パイプ41から散水され、充てん材20に達した循環水は、充てん材20をなす充てん材シート21間の各隙間に進み、充てん材シート21に沿って流下しつつ、送風機70による誘引通風で充てん材20に対して上向きに導入される外部の空気と接触する。循環水は、主に空気と循環水の温度差に伴う熱伝達(顕熱)による冷却作用、及び、循環水の蒸発熱(潜熱)による冷却作用により冷却される一方、熱交換により逆に空気温度を上昇させることとなる。
【0058】
循環水は、充てん材20における空気との熱交換を経て冷却された後、充てん材20を出て下部水槽50に達し、下部水槽50の水面近くに位置するシート体55上に流れ込む。
ただし、循環水のうち、充てん材20における塔体内面近くの部位を通って充てん材20を出たものは、吸込口11の上側で内方に突出している案内部18で受け止められ、案内部18の長手方向両端部に案内される。そして、案内部18の端部から流下した水は、下側に位置する気流制御板19に沿ってさらに下方へ流下する。
【0059】
こうして案内部18を配置して、水が水滴として吸込口11の近くを流れる状態を生じさせないようにしていることで、吸込口11の近くに達した水が外部からの風の影響で押し流されたり、下部水槽50の吸込口11に近い部位における水跳ねが生じることもなく、吸込口11を通じての水の冷却塔外への飛散を抑えられる。
【0060】
また、隣り合う吸込口11に挟まれたコーナー部内側の気流制御板19は、吸込口11から吸い込まれた外気を上方の充てん材20に向けて案内する一方で、隣り合う吸込口11間を横風が通り抜けようとするのを阻むことで、このような横風で流下する水が押し流される事態を防ぐことができる。
【0061】
なお、案内部18で受ける水量が多くなり、その長手方向両端部への案内が滞って案内部18上に水が滞留し、案内部18の長手方向端部以外の部位から水が溢れる状態となることもある。こうした状態でも、塔体内面と連結する案内部18において、その長手方向端部以外では突出する先端側からのみ水が溢れて滴ることから、案内部18が塔体の内方に突出する分、溢れた水は吸込口11から離れた箇所を進行して、吸込口11の近くに達することはなく、案内部18の長手方向端部から流下させる場合と同様に、吸込口11の外への水の飛散を抑えることができる。
【0062】
循環水の流下する下部水槽50のシート体55において、循環水は、多数の空隙があるシート体中に浸透して一時的に滞留する状態となることで、水勢を大きく減殺される。そして、シート体55に滞留した循環水は、所定の時間の後、シート体55からしみ出すようにゆっくりと流れ出て直下の水面に達し、下部水槽50に溜まった水と合流し、回収される。このため、循環水が下部水槽50の水面に水滴として勢いよく落下することはなく、充てん材20を出た水が下部水槽50の水面に直接落ちた場合や、水面から離れた吸音材を経て水が水面に達する場合と比較して、騒音の発生を著しく抑制することができる。
【0063】
シート体55を出て、下部水槽50に溜った循環水は、下部水槽出口のストレーナ59を通過してから再び循環管路90に入り、熱媒体として新たに冷凍機や空気調和機器等で熱を受け取った後、冷却塔1に戻り、水分配タンク30の流入口31に導入される以降の前記過程が繰返される。
【0064】
一方、吸込口11から塔体10内に吸い込まれ、充てん材20をなす各充てん材シート21間の隙間を上向きに通過しつつ循環水と熱交換し温度を上昇させた空気は、送風機70の誘引により充てん材20から出て、送風機70と充てん材21との間の塔体内空間に進む。この塔体内空間に達した空気は、循環水の飛沫を伴うことなく、送風機70により冷却塔外に排出され、排出空気は外部の空気中に拡散する。
【0065】
冷却塔の下部水槽50においては、オーバーフロー管52が過剰量の水を溢水させ、オーバーフロー管52から槽外のオーバーフロー排水用管路58へ排出することで、水量を適切な範囲に維持している。このオーバーフロー管52における水の入口部52aは、上方の充てん材20の下面に面しない配置とされ、且つ、案内部18の長手方向端部から流下する水及び案内部18から溢れて長手方向端部以外から流下する水の到達しない箇所に配設されており、下部水槽50に溜まって過剰量となった水以外を流入させることはない。こうして、熱交換を終えて充てん材20を出た水が直接オーバーフロー管52に入り、オーバーフロー管52を通じて外部に排水されるのを防止して、熱交換した後の水の損失による熱交換効率の低下を抑えられる。
【0066】
冷却塔の使用を継続すると、循環水の濃縮が進行するため、適切なタイミングで濃縮された循環水のブローダウンを実行する必要がある。循環水のブローダウンを行う際には、水分配タンク30から分岐された排水管34の途中に設けられたバルブが一時開状態とされ、所定量の循環水が排水管34を通じて下部水槽50側面のオーバーフロー排水用管路58に達し、この管路を通じて外部に排出される。一方、ブローダウンで排出された水量に対応する補給水が別途下部水槽50に供給されることで、循環水の濃縮状態は緩和される。
【0067】
こうしたブローダウンにおいて、排出する循環水の一部を熱交換前の循環水から取り出すことで、従来の冷却塔塔体内でブローダウンに係る取水を行う場合のように、排出する水には本来必要のない熱交換を行わずに済み、効率低下を招くことなくブローダウン実行による循環水の水質確保が図れる。
【0068】
冷却塔を作動させる中、散水部の各散水用パイプ41は、一方の端部を水分配タンク30に接続され、動かない状態に保持されていることから、可動部分が停止するといった不具合を生じることはあり得ず、循環水の散水用パイプ41からの散水状態は長期にわたり変化せず、空気との熱交換による循環水の冷却を安定したものとすることができる。
【0069】
なお、散水部40の散水用パイプ41の経年劣化等に伴うメンテナンスが必要となった際には、水分配タンク30とは反対側の塔体10上部側面にあるカバー部15を塔体10から取り外して開口部13を開放状態とし、作業者の各散水用パイプ41に対する筒体外から開口部13を通じての作業を実行可能とする。
【0070】
このように、本実施形態に係る冷却塔においては、塔体10における吸込口11の上側に略樋状の案内部18を設けて、塔体内面近傍を流下する水を案内部18で受けて、その下方の吸込口11近傍位置に達しないようにし、水が吸込口11近くをそのまま通過する状態を生じさせないことで、吸込口11の近くに達した水が外部からの風の影響で流されたり、下部水槽50の吸込口11に近い箇所に落ちた水が跳ね返るなどして、水が吸込口11の外に出て飛散するのを防止できる。
【0071】
なお、前記実施形態に係る冷却塔は、塔体10内に設けた熱交換部としての充てん材20に対し上方の散水部40から循環水を散水すると共に、充てん材20より下側の吸込口11から外気を導入して、充てん材20で外気と循環水との熱交換を行わせる開放式冷却塔とされる構成としているが、熱交換部を挟んで上側に散水部、下側に空気の吸込口が設けられ、熱交換部に対し下から上に通風される小型の向流型冷却塔であれば、開放式冷却塔に限られるものではなく、密閉式冷却塔とすることもできる。
【0072】
また、前記実施形態に係る冷却塔においては、塔体10内に充てん材20を一段又は上下に複数段重ねて設ける構成としているが、特に充てん材を複数段重ねて設ける場合、上下に重ねられる充てん材を、各段ごとに充てん材シートの積層方向を異ならせるように配置するのが望ましい。
【0073】
この場合、充てん材を重なる各段ごとに充てん材シートの積層方向が90°異なるように配置するのがより望ましいが、これに限られるものではなく、上下に重なって隣り合う充てん材における充てん材シートの積層方向が異なるように配置していれば、その異なる角度の大きさを90°以外の任意の角度としてもよい。
【0074】
また、前記実施形態に係る冷却塔において、塔体10内部に設けられる散水部40を、平行に並べた複数の散水用パイプ41で形成する構成としているが、これに限られるものではなく、循環水を散水部の各部へ行き渡らせつつ、散水部の下部からのみ充てん材に対し循環水の散水を行えるものであれば、パイプに代えて、例えば上部が開放した樋状の部材を動かない状態で複数並べて設け、この樋状部材下部に複数設けられた孔から循環水を流下させる形式の散水部としてもかまわない。
【0075】
さらに、前記実施形態に係る冷却塔において、塔体10の側面をなす外板17は側面ごとに一つずつ設けられる構成としているが、この他、塔体の側面における外板を複数分割構造とし、この側面における複数の外板のうち、散水部又は充てん材が存在する範囲に対応する外板のみを、塔体の他部分に対し取り外し可能な構造、又は扉状に開ける構造とし、この一部の外板を取り外すか開くことで塔体内部に通じる開放部分を生じさせ、この開放部分を通じて塔体外側から作業者が散水部又は充てん材を取り扱えるようにする構成としてもかまわない。
【0076】
また、前記実施形態に係る冷却塔において、シート体55は浮体55aを一又は複数取り付けられて水に浮くようにされ、下部水槽50内でその下面を循環水の水面に一致させ、水量変化に伴う水面の上下変動に追随して上下移動可能とされる構成としているが、これに限られるものではなく、多孔質材製のシート体を下部水槽内における冷却塔の通常運転時の水位に対応する位置に固定配設する構成とすることもできる。
この場合も、図12に示すように、シート体56に対し、同様の多孔質材からなる別のシート体57を、下部水槽50の上部に固定状態で設けて、シート体を二段配置とすることもできる。充てん材20を出て落下する水の勢いを、所定間隔で配置した二つのシート体56、57で確実に弱められると共に、仮に下部水槽内の予期せぬ水位上昇で下段のシート体56の一部が水面下となる状況でも、上段のシート体57により、水が水面に勢いよく落ちて周囲に水滴等を跳ね飛ばすようなことは起こらず、水が水面に達した際の音の発生を抑えられる。また、充てん材20を出た水が上段側のシート体57に達した際、水は多数の空隙があるシート体57中に浸透しやすく、シート体57表面で弾かれる割合は極めて小さくなっていることに加え、上段側のシート体57が下部水槽50の上側を覆って、下部水槽50内から上方への水滴の移動を妨げることから、下部水槽50から冷却塔外への水の飛散を抑えられる。
【0077】
また、前記実施形態に係る冷却塔において、下部水槽50に設けられる給水管やボールタップ(図示を省略)と上方の充てん材20との間に介在するものは特に設けられず、給水管やボールタップに対し、充てん材20を出た水が直接到達する構成としているが、これに限らず、給水管などを上から覆うカバー60を設ける構成とすることもできる(図13参照)。
下部水槽内における給水管やボールタップのある位置とその周辺部は、給水や水位調整のためにシート体55が設けられず、水面が露出した状態となっている。このような給水管やボールタップを、その周辺の水面が露出した箇所も含めてカバー60で覆うことで、充てん材20を出て落下した水が給水管などに当たったり、給水管などの周辺の水面に達することを防ぐことができ、水が水面に勢いよく落ちた際のような騒音の発生と、水が給水管などに当たって水滴が跳ね返ることに伴う塔外への水飛散量の増大とを、抑えられることとなる。
こうしたカバー60における、上方の充てん材20に面する表面部を、シート体55同様の多孔質材製とすれば、充てん材20を出て落下する水がカバー60表面に達しても、水を多孔質部分に浸透させつつ水の勢いを弱めて、水がカバー60に当たった際の音の発生やカバー60表面での水滴の跳ね返りを抑えることができ、さらに好ましい。
また、カバー60の形状についても、水の落下方向と直角をなす水平面を少なくし、水平方向に対し傾いた斜面で主に形成されるもの、例えば、錐台状、錐状、半球状、ドーム状、あるいはこれらの複合形状等、とすれば、充てん材20を出て落下する水がカバー60表面に当たった際に水の圧力を斜面に沿って逃がせる分、騒音の発生や水滴の跳ね返りを抑えることができ、より好ましい。
【0078】
また、前記実施形態に係る冷却塔において、塔体10の吸込口11には、吸込口を通じた塔体内への異物の進入を防止する金網等の防護体11aを設ける構成としているが、こうした防護体11aを塔体10への固定式ではなく、吸込口11の上下に位置する部材で挟持して吸込口11に対し上下及び前後に動かないようにする一方、横方向にスライド可能として塔体10に対し着脱できるようにする構成としてもかまわない(図14参照)。このように防護体11aを着脱可能とすることで、補修や交換等のメンテナンスを行いやすくすることができる。
また、防護体11aを横方向に複数分割構造とすれば(図14参照)、防護体11aの各分割体の長さを短くできる分、防護体11aの交換等の際に防護体11aを冷却塔外で取り扱うのに必要なスペースを小さくすることができ、冷却塔周囲にメンテナンス用の作業空間を確保しやすくなり、より好ましい。
【0079】
また、前記実施形態に係る冷却塔において、塔体10の吸込口11やその周囲には、吸込口11を通じた塔体10内への異物の進入を防止する金網等の防護体11a以外のものを特に設けない構成としているが、これに限られるものではなく、例えば、図15に示すように、吸込口の下側となる塔体の外周位置に斜め上方へ突出する突出板61を配設する構成とすることもできる。
この突出板61は、吸込口11を通じた塔体内からの水滴状の水の外部への飛散を防ぐ役割を有するものである。冷却塔の通常運転状態では、充てん材20の下部出口から落下する散布水の水滴は、吸込口11から冷却塔内に流入する空気により押し流されることで、吸込口11側には進行しにくかった。一方、送風機停止運転状態では、吸込口11から塔内への内向き空気流が生じないために、充てん材20の下部出口から落下する散布水の水滴の一部が、直接、又はシート体55に衝突し跳ね返って、吸込口11に向けて進み、吸込口11を抜けて冷却塔の周囲に飛散するおそれがあった。
突出板61を設けた場合、吸込口11を通って塔外へ向かう水滴の進路をこの突出板61によって遮ることで、水の飛散を防止できる。
突出板61の塔外への突出量は、塔体幅寸法に対し3ないし5%程度の大きさとし、また、突出板61の仰角(水平面からの傾き角度)は30°程度とするのが、突出板61による水飛散防止性能と、吸込口11から流入する空気に対する突出板61の圧力損失とのバランスの点で望ましい。
【0080】
また、こうした突出板を設ける場合に、図16に示すように、突出板62をその一部が塔内に位置する板状体として形成し、塔内に位置する部分が下部水槽50内に設けられ、その部分から斜め上方向に連続する配置で塔外部分が存在する構成とすることもできる。この場合、図16に示すように、突出板62をなす板状体の塔内部分が下部水槽50の水切り部を兼ねるようにして、この塔内部分に多孔質材からなるシート体63を重ねて配設すると、充てん材20を出て落下する水が下部水槽50内に達した際の、騒音の発生や、水滴の跳ね返りに伴う塔外への水飛散を、効率よく抑えることができる。このため、シート体63の上方に別のシート体を設けて、シート体を二段配置としなくても、十分に騒音や水飛散の抑制が図れる。
さらに、突出板62が、下部水槽50で支持される塔内部分と塔外に突出する部分とを一体に連続させた構造として設けられることで、水の飛散を防止する役割を果たす塔外への突出部分の傾き角度を、確実に所望の角度に設定できると共に、この設定した角度を安定的に維持することができる。
【0081】
この他、こうした突出板を設ける場合に、突出板を下部水槽の一部として一体化する、例えば、下部水槽をFRPで成形する際に、突出部を下部水槽の延長部分として一体成形する、構成とすることもでき、下部水槽と突出板とを別途に設ける場合に比べて、部品点数や冷却塔製造に係る工数の削減、製造作業の省力化が図れ、製造コスト抑制に繋げられる。
【符号の説明】
【0082】
1 冷却塔
10 塔体
11 吸込口
11a 防護体
12 排出口
13 開口部
15 カバー部
16 枠体
17 外板
18 案内部
19 気流制御板
20 充てん材
21 充てん材シート
30 水分配タンク
31 入口部
32 通気孔
34 排水管
40 散水部
41 散水用パイプ
42 孔
50 下部水槽
51 支持枠
52 オーバーフロー管
52a 入口部
52b カバー
55 シート体
55a 浮体
56、57 シート体
58 オーバーフロー排水用管路
59 ストレーナ
60 カバー
61、62 突出板
63 シート体
70 送風機
71 羽根車
75 電動機
90 循環管路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16