(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003416
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】粘着テープ、電化製品、車載部材及び固定方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20221228BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20221228BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J133/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101204
(22)【出願日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021104288
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 寛生
(72)【発明者】
【氏名】片岡 寛幸
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB01
4J004CB03
4J004DB03
4J004FA08
4J040BA202
4J040DF031
4J040DF061
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA07
4J040HA026
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA26
4J040KA35
4J040LA01
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA11
(57)【要約】
【課題】生物由来の材料を使用しても、高温環境下での良好な保持力を維持し、かつ低極性被着体に対して加熱した際の剥離容易性を有する粘着テープを提供する。
【解決手段】バイオ率50%以上の粘着剤からなる粘着剤層を備える粘着テープであって、前記粘着剤の80℃における貯蔵弾性率をG’(80℃)[Pa]としたとき、logG’(80℃)が4.50以下であり、下記式(1)で算出されるtanδ(23℃)が0.7以上であり、凝集力試験により測定した80℃におけるズレ量(80℃)が290μm以上1900μm以下である、粘着テープ。
tanδ(23℃)=、G”(23℃)[Pa]/G’(23℃)[Pa] (1)
式(1)中、G’(23℃)[Pa]は前記粘着剤の23℃における貯蔵弾性率であり、G”(23℃)[Pa]は前記粘着剤の23℃における損失弾性率である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ率50%以上の粘着剤からなる粘着剤層を備える粘着テープであって、
前記粘着剤の80℃における貯蔵弾性率をG’(80℃)[Pa]としたとき、logG’(80℃)が4.50以下であり、
下記式(1)で算出されるtanδ(23℃)が0.7以上であり、
凝集力試験により測定した80℃におけるズレ量(80℃)が290μm以上1900μm以下である、粘着テープ。
tanδ(23℃)=、G”(23℃)[Pa]/G’(23℃)[Pa] (1)
式(1)中、G’(23℃)[Pa]は前記粘着剤の23℃における貯蔵弾性率であり、G”(23℃)[Pa]は前記粘着剤の23℃における損失弾性率である。
【請求項2】
前記tanδ(23℃)と前記ズレ量(80℃)との積が1,000μm以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
下記式(2)で算出されるtanδ(80℃)と前記ズレ量(80℃)との積が630μm以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
tanδ(80℃)=、G”(80℃)[Pa]/G’(80℃)[Pa] (2)
式(2)中、G’(80℃)[Pa]は前記粘着剤の80℃における貯蔵弾性率であり、G”(80℃)[Pa]は前記粘着剤の80℃における損失弾性率である。
【請求項4】
前記ズレ量(80℃)が300μm以上1,000μm以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記ズレ量(80℃)が300μm以上700μm以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層が、n-ヘプチルアクリレート由来の構成単位を主成分とするポリマー(X1)を含有する粘着剤からなる請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記ポリマー(X1)の重量平均分子量が40万以上90万以下である、請求項6に記載の粘着テープ。
【請求項8】
基材をさらに備え、前記粘着剤層が前記基材の少なくとも一方の面に設けられる、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記基材が、不織布、樹脂フィルム及び発泡体からなる群から選択されるいずれかである、請求項8に記載の粘着テープ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の粘着テープを備える、電化製品。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の粘着テープを備える、車載部材。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の粘着テープを用いて、電化製品を構成する部品又は車載部材を固定する固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ、電化製品、車載部材及び固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電化製品、車両、住宅及び建材などの製品において各種の部品を固定するために、粘着剤よりなる粘着剤層を備える粘着テープが広く用いられている。粘着剤としては、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレートなどのアクリル(メタ)アクリレート由来の構成単位を主成分とするアクリル系ポリマーを含有する粘着剤が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
そして、近年、各企業の生産拠点のグローバル化により、粘着剤及び粘着テープは、様々な環境下で使用されるようになっており、高温環境下で使用されることがある。そのため、粘着剤には、高温環境下における高い保持力が求められる。
【0004】
また、現在は、環境保護の見地から、有限な資源の有効利用のために、粘着剤を剥離して製品を分解し、リサイクルすることが推進されている。そこで、粘着剤にも分解時に剥離が容易となる剥離容易性が求められている。つまり、粘着剤には、使用時には粘着性及び保持力を良好にする必要がある一方で、分解時には簡単に剥離でき、かつ粘着成分が残らない剥離容易性が求められる。なお、剥離容易性は、製品分解が加熱して行われることが多く、加熱時に求められることが多い。また、ポリプロピレン(PP)などの低極性被着体は、テープ貼り付け後に粘着力が上昇しやすい傾向にある。
【0005】
また、石油資源の枯渇や、石油由来製品の燃焼による二酸化炭素の排出が問題視されていることから、粘着剤及び粘着テープの分野でも生物由来材料の使用が求められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-021067号公報
【特許文献2】特開2015-120876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、生物由来の材料を使用し、粘着特性を良好にしつつ、高温環境下での良好な保持力を維持し、かつポリプロピレン(PP)などの低極性被着体に対して加熱した際の剥離容易性を有する粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、粘弾性と凝集力のコントロールによって、高温環境下での保持力を維持し、かつ加熱した際の剥離容易性を有することを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[12]を要旨とする。
[1]バイオ率50%以上の粘着剤からなる粘着剤層を備える粘着テープであって、
前記粘着剤の80℃における貯蔵弾性率をG’(80℃)[Pa]としたとき、logG’(80℃)が4.50以下であり、
下記式(1)で算出されるtanδ(23℃)が0.7以上であり、
凝集力試験により測定した80℃におけるズレ量(80℃)が290μm以上1900μm以下である、粘着テープ。
tanδ(23℃)=、G”(23℃)[Pa]/G’(23℃)[Pa] (1)
式(1)中、G’(23℃)[Pa]は前記粘着剤の23℃における貯蔵弾性率であり、G”(23℃)[Pa]は前記粘着剤の23℃における損失弾性率である。
[2]前記tanδ(23℃)と前記ズレ量(80℃)との積が1,000μm以下である、上記[1]に記載の粘着テープ。
[3]下記式(2)で算出されるtanδ(80℃)と前記ズレ量(80℃)との積が630μm以下である、上記[1]又は[2]に記載の粘着テープ。
tanδ(80℃)=、G”(80℃)[Pa]/G’(80℃)[Pa] (2)
式(2)中、G’(80℃)[Pa]は前記粘着剤の80℃における貯蔵弾性率であり、G”(80℃)[Pa]は前記粘着剤の80℃における損失弾性率である。
[4]前記ズレ量(80℃)が300μm以上1,000μm以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の粘着テープ。
[5]前記ズレ量(80℃)が300μm以上700μm以下である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の粘着テープ。
[6]前記粘着剤層が、n-ヘプチルアクリレート由来の構成単位を主成分とするポリマー(X1)を含有する粘着剤からなる上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の粘着テープ。
[7]前記ポリマー(X1)の重量平均分子量が40万以上75万以下である、上記[6]に記載の粘着テープ。
[8]基材をさらに備え、前記粘着剤層が前記基材の少なくとも一方の面に設けられる、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の粘着テープ。
[9]前記基材が、不織布、樹脂フィルム及び発泡体からなる群から選択されるいずれかである、上記[8]に記載の粘着テープ。
[10]上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の粘着テープを備える、電化製品。
[11]上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の粘着テープを備える、車載部材。
[12]上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の粘着テープを用いて、電化製品を構成する部品又は車載部材を固定する固定方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生物由来の材料を使用しても、高温環境下での良好な保持力を維持し、かつ低極性被着体に対して加熱した際の剥離容易性を有する粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】微小せん断ずれ変位測定試験装置を用いた凝集力試験の概略、及びA部拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態を用いて詳細に説明する。
【0012】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、バイオ率50%以上の粘着剤からなる粘着剤層を備える。粘着テープは、基材を有しないノンサポートテープあってもよいし、基材を有する粘着テープであってもよく、基材を有する粘着テープであることが好ましい。
ノンサポートテープは、基材を有さずに、粘着剤層単層の状態で使用される両面粘着テープである。基材を有する粘着テープは、基材と、基材の少なくとも一方の面に設けられる粘着剤層とを備える。この場合、粘着テープは、基材の両面に粘着剤層が設けられ、両面粘着テープとして使用されてもよいし、基材の片面のみに粘着剤層が設けられ、片面粘着テープとして使用されてもよい。各粘着テープにおいて、露出する粘着剤層の表面には、適宜剥離シートが貼付されて保護されてもよい。剥離シートは、剥離シート基材の少なくとも一方の面に剥離剤が塗布されて剥離面となるものであり、剥離面が粘着剤層に接触するように貼付されるとよい。
なお、基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープでは、少なくとも一方の粘着剤層が後述する本発明の粘着剤で構成されればよいが、両方の粘着剤層が後述する本発明の粘着剤で構成されることが好ましい。また、本発明では、分解時に剥離しやすい観点から、基材を有する両面粘着テープが好ましい。
【0013】
(バイオ率)
本発明の粘着剤は、生物由来の炭素の含有率(以下、「バイオ率」ともいう)が50質量%以上である。バイオ率50質量%以上であると、「バイオベース製品」であるといえる。バイオベース製品は、再生可能な有機資源を使用することで石油資源を節約でき、また、石油由来製品の燃焼による二酸化炭素の排出量を減らすことができ、環境への負荷を低減できる。これら観点からバイオ率は60質量%以上であることがさらに好ましい。また、バイオ率は、高ければ高いほどよく、100質量%以下であればよい。
生物由来の炭素には一定割合の放射性同位体(C-14)が含まれるのに対し、石油由来の炭素にはC-14がほとんど含まれない。そのため、バイオ率は、粘着剤または後述する粘着テープに含まれるC-14の濃度を測定することによって算出することができる。具体的には、多くのバイオプラスチック業界で利用されている規格であるASTM D6866に準じて測定することができる。
【0014】
<tanδ(23℃)>
本発明の粘着テープにおける粘着剤層を形成する粘着剤のtanδ(23℃)は、23℃における貯蔵弾性率をG’(23℃)[Pa]、及び23℃における損失弾性率をG”(23℃)[Pa]とすると、G”(23℃)[Pa]/G’(23℃)[Pa]で表される。なお、「[Pa]」の記載は、単位が「Pa」であることを示す。tanδ(23℃)は、ポリマー(X1)に使用されるモノマー成分の種類、量、ポリマー(X1)の重量分子量、ゲル分率、分子量分布、添加剤の種類、量などにより調整できる。tanδ(23℃)は、0.7以上である。tanδ(23℃)が0.7未満であると、貼り付け性、被着体に対する接着性が悪くなる。このような観点から、tanδ(23℃)は、0.7以上1.5以下であることが好ましく、0.7以上1.3以下であることがより好ましく、0.72以上1.11以下であることがさらに好ましい。
【0015】
<貯蔵弾性率G’(23℃)>
23℃における貯蔵弾性率をG’(23℃)[Pa]とすると、logG’(23℃)は、4.8以上5.5以下であることが好ましく、4.85以上5.4以下であることがより好ましく、4.9以上5.3以下であることがさらに好ましい。logG’(23℃)が上記範囲内であることで、常温環境下における粘着特性を向上させ、例えば常温環境下における低極性の被着体に対する接着性を良好にしやすくなる。ポリマー(X1)に使用されるモノマー成分の種類、量、ポリマー(X1)の重量分子量、ゲル分率、分子量分布、添加剤の種類、量などを適宜選択することで、logG’(23℃)の値を上記範囲内に調整しやすくなる。 なお、貯蔵弾性率G’(23℃)[Pa]は、高分子動的粘弾性測定装置を使用して、後述する実施例記載の測定条件にて測定して得た値である。
【0016】
<ズレ量(23℃)>
本発明の粘着テープは、凝集力試験により測定した23℃におけるズレ量が1,000μm以下であることが好ましく、750μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましく、300μm以下であることが特に好ましい。ズレ量(23℃)が上記上限値以下であることで、粘着剤層の凝集力が大きくなり、常温及び高温環境下における保持力が向上する。ポリマー(X1)に使用されるモノマー成分の種類、量、ポリマー(X1)の重量分子量、ゲル分率、分子量分布、添加剤の種類、量、粘着剤の厚みなどを適宜選択することで、上記ズレ量(23℃)の値を上記範囲内に調整しやすくなる。なお、上記ズレ量は、3分間せん断方向に所定の荷重を作用させたときに発生するズレ量であり、詳しい測定方法は後述する。
【0017】
また、上記のとおりに3分間せん断方向に荷重を作用させた後、上記ズレ量(荷重除去前のズレ量)に対する、荷重を除去して回復したときのズレ量(荷重除去後のズレ量)の割合は、ずれ変位回復率(%)と定義される。ずれ変位回復率(%)は、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、また、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。回復率が、上記のような範囲になると、粘着テープを圧着した際の被着体への追従性がよくなり、貼付け性や粘着力が向上する。
ポリマー(X1)に使用されるモノマー成分の種類、量、ポリマー(X1)の重量分子量、ゲル分率、分子量分布、添加剤の種類、量、粘着剤の厚みなどを適宜選択することで、上記ずれ変位回復率(%)の値を上記範囲内に調整しやすくなる。
【0018】
ズレ量は、
図1に示した微小せん断ずれ変位測定試験装置(旭精工社製、剪断クリープ測定装置、NST1)を用いた凝集力試験により測定できる。具体的には以下の通りである。
まず、試験対象となる両面粘着テープの一方の面の剥離シートを剥がし、両面粘着テープの一方の露出した粘着剤層の表面にコロナ処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付けた。その後、幅1cm×縦12cmにカットして試験片5とする。装置の温調器4を設定温度に設定し、設定温度(23℃)で安定するまで放置する。温調器4は、2以上の温調器を適宜組み合わせてもよい。
試験片5の他方の剥離シートをその端部から3cm程度剥がして除去し、露出した粘着剤層を、接着面積が5mm×20mmになるよう被着体3に貼り付ける。この際、剥離シート8は、端部以外の部分において粘着剤層7に貼付されるままである。試験片5の他方の露出した粘着剤層7の表面を、接着面積が5mm×20mmになるよう被着体3に貼り付ける。被着体3はSUS製である。
貼り付け面上に端面を鏡面処理した石英製のブロック2(石英ガラスにクロム蒸着したもの)を載せる。ブロック2の端面の鏡面処理面10には、レーザー干渉計1(例えば、キーエンス製「SI-F1」)からのレーザー光が照射されるようにする。
試験片5を200gのおもり6につなぐワイヤーにとりつけ、その状態で23℃又は80℃で放置し、5分間恒温化する。23℃又は80℃の環境下のまま5分後に試験片5におもり6の荷重を加えて、試験片5に対し水平方向へのせん断負荷を与える。荷重を加えてから3分後において、レーザー干渉計1によって試験片5上のブロック2の変位を検出し、その検出値を粘着剤のズレ量とする。
【0019】
また、上記のとおりに荷重を加え、3分経過後に荷重を除去し、荷重除去した後のさらに3分経過後のズレ量(荷重除去後)を測定して、上記のとおり荷重除去前に測定したズレ量をズレ量(荷重除去前)として、ズレ量(荷重除去後)/ズレ量(荷重除去前)×100(%)をずれ変位回復率(%)とする。なお、ズレ量(荷重除去後)は、ズレ量(荷重除去前)と同様にレーザー干渉計1で測定する。ずれ変位回復率(%)の具体的な算出方法は、以下の通りである。
ずれ変位回復率(%)=(荷重除去3分後のずれ変位(μm))/(荷重負荷3分後のずれ変位(μm))×100
なお、以上の説明は、両面粘着テープにおけるズレ量の測定方法を示したが、片面粘着テープでも一方の粘着剤層表面にPETフィルムを貼り付けることを省略する以外同様に行うとよい。また、両面粘着テープは、基材を有しないノンサポートテープでも同様に測定できる。また、両面粘着テープは、剥離シートが粘着剤層に貼付されていない場合には、その剥離する工程などを省略して同様に行うとよい。
【0020】
<tanδ(80℃)>
本発明の粘着テープにおける粘着剤層を形成する粘着剤のtanδ(80℃)は、80℃における貯蔵弾性率をG’(80℃)[Pa]、及び80℃における損失弾性率をG”(80℃)[Pa]とすると、G”(80℃)[Pa]/G’(80℃)[Pa]で表される。tanδ(80℃)は、ポリマー(X1)に使用されるモノマー成分の種類、量などにより調整できる。
tanδ(80℃)は、0.50以上1.00以下であることが好ましく、0.55以上0.95以下であることがより好ましく、0.65以上0.90以下であることがさらに好ましい。tanδ(80℃)が上記範囲内であることで、高温環境下における,貼り付け性、保持力及びポリオレフィン樹脂などの低極性の被着体に対する接着性を良好にしやすくなる。
なお、貯蔵弾性率G’(80℃)[Pa]は、高分子動的粘弾性測定装置を使用して、後述する実施例記載の測定条件にて測定して得た値である。
【0021】
<貯蔵弾性率G’(80℃)>
80℃における貯蔵弾性率をG’(80℃)[Pa]とすると、logG’(80℃)は、4.50以下である。logG’(80℃)が4.50よりも大きいと、貼り付けた後に粘着特性が悪くなり、加熱した際に粘着力が上がり低極性の被着体に対する剥離性が悪くなる。このような観点から、logG’(80℃)は、4.00以上4.50以下であることが好ましく、4.10以上4.45以下であることがより好ましく、4.20以上4.40以下であることがさらに好ましい。
ポリマー(X1)の重量分子量、ゲル分率、分子量分布、添加剤の種類、量などを適宜選択することで、logG’(80℃)の値を上記範囲内に調整しやすくなる。
なお、貯蔵弾性率G’(80℃)[Pa]は、高分子動的粘弾性測定装置を使用して、後述する実施例記載の測定条件にて測定して得た値である。
【0022】
<ズレ量(80℃)>
本発明の粘着テープは、上記の凝集力試験により測定した80℃におけるズレ量(80℃)は、290μm以上1,900μm以下である。ズレ量(80℃)が290μm未満であると、粘着剤層の凝集力が高くなり、被着体への濡れ広がりが悪くなり、被着体に対する粘着性が悪くなる。また、ズレ量(80℃)が1,900μmよりも大きいと、粘着剤層の凝集力が小さくなり、高温環境下における保持力が悪くなる。このような観点から、ズレ量(80℃)は、300μm以上1,000μm以下であることが好ましく、300μm以上700μm以下であることがより好ましい。
ポリマー(X1)に使用されるモノマー成分の種類、量、ポリマー(X1)の重量分子量、ゲル分率、分子量分布、添加剤の種類、量、粘着剤の厚みなどを適宜選択することで、上記ズレ量(80℃)の値を上記範囲内に調整しやすくなる。
また、本発明の粘着テープは、80℃におけるズレ量を低くして凝集力を大きくしつつ、粘着剤のlogG’(80℃)を小さくし、tanδ(23℃)を上記の通り所望の範囲内(特に、0.72以上1.11以下)とする。これにより、高温環境下で被着体から剥離する際、被着体がポリプロピレン(PP)などの比較的極性が低いものであっても界面剥離が生じやすくなる。そのため、加熱することで被着体からの剥離をより一層容易に行うことができる。この傾向は、粘着テープを長期間使用した後に顕著である。
【0023】
<tanδ(23℃)×ズレ量(23℃)>
本発明の粘着テープは、粘着剤の23℃における貯蔵弾性率をG’(23℃)[Pa]、粘着剤の23℃における損失弾性率をG”(23℃)[Pa]とし、G”(23℃)[Pa]/G’(23℃)[Pa]で求められるtanδ(23℃)と、凝集力試験により測定した23℃におけるズレ量(23℃)との積(tanδ(23℃)×ズレ量(23℃))が130μm以上740μm以下であることが好ましい。tanδ(23℃)とズレ量(23℃)との積が130μm以上740μm以下であると、高温に加熱すると十分に粘着力が低下し、分解時に粘着テープを被着体から剥離することが容易になったり、粘着成分の残存を抑制したりすることができる。また、高温環境下での保持力の低下が抑制され、高温環境下での使用が容易になる。
これら観点から、tanδ(23℃)とズレ量(23℃)との積は、140μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましく、160μm以上がよりさらに好ましく、170μm以上がよりさらに好ましく、180μm以上がよりさらに好ましい。また、tanδ(23℃)とズレ量(23℃)との積は、720μm以下がより好ましく、700μm以下がさらに好ましく、680μm以下がよりさらに好ましい。なお、粘着剤が、n-ヘプチルアクリレート由来の構成単位を主成分として含むとともに、分子量、ゲル分率、粘着付与剤の種類と量などを適宜選択することで、上記積(tanδ(23℃)×ズレ量(23℃))の値を上記範囲内に調整しやすくなる。
【0024】
<tanδ(23℃)×ズレ量(80℃)>
本発明の粘着テープは、粘着剤の23℃における貯蔵弾性率をG’(23℃)[Pa]、粘着剤の23℃における損失弾性率をG”(23℃)[Pa]とし、G”(23℃)[Pa]/G’(23℃)[Pa]で求められるtanδ(23℃)と、凝集力試験により測定した80℃におけるズレ量(80℃)との積(tanδ(23℃)×ズレ量(80℃))が1,000μm以下であることが好ましく、900μm以下であることがより好ましく、700μm以下であることがさらに好ましい。また、250μm以上が好ましく、310μm以上がより好ましい。tanδ(23℃)とズレ量(83℃)との積が上記範囲内であることで、高温環境下で、粘着力が低下しかつ被着体から剥離する際に界面剥離が生じやすくなるため、加熱することで被着体からの剥離を容易に行うことができ、高温環境下での保持力の低下が抑制され、高温環境下での使用が容易になる。この傾向は、粘着テープを長期間使用した後や、被着体がポリオレフィン樹脂などの低極性である場合に顕著である。なお、粘着剤が、n-ヘプチルアクリレート由来の構成単位を主成分として含むとともに、分子量、ゲル分率、粘着付与剤の種類と量などを適宜選択することで、上記積(tanδ(23℃)×ズレ量(80℃))の値を上記範囲内に調整しやすくなる。
【0025】
<tanδ(80℃)×ズレ量(80℃)>
本発明の粘着テープは、粘着剤の80℃における貯蔵弾性率をG’(80℃)[Pa]、粘着剤の80℃における損失弾性率をG”(80℃)[Pa]とし、G”(80℃)[Pa]/G’(80℃)[Pa]で求められるtanδ(80℃)と、凝集力試験により測定した80℃におけるズレ量(80℃)との積(tanδ(80℃)×ズレ量(80℃))が630μm以下であることが好ましく、600μm以下であることがより好ましく、570μm以下であることがさらに好ましい。また、180μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、240μm以上がさらに好ましい。tanδ(80℃)とズレ量(23℃)との積が上記範囲内であることで、高温環境下で、粘着力が低下しかつ被着体から剥離する際に界面剥離が生じやすくなるため、加熱することで被着体からの剥離を容易に行うことができる。この傾向は、粘着テープを長期間使用した後や、被着体がポリオレフィン樹脂などの低極性である場合に顕著である。
【0026】
<ボールタック>
本発明の粘着テープのボールタックでは、粘着面で停止した最大のボールのナンバーは、20以上であることが好ましい。なお、ボールタックはJIS Z 0237に準拠した試験方法を用いて測定した値である。
【0027】
<テープ強度>
本発明の粘着テープの常温(23℃)における粘着テープ破断強度は10N/mm2以上であることが好ましい。常温(23℃)における粘着テープ破断強度が10N/mm2以上であると、粘着テープを剥がす際に上記テープがちぎれる等の不具合が生じにくくなり、粘着テープの加工が容易になる。上記破断強度は13N/mm2以上であることがより好ましい。なお、粘着テープの常温(23℃)における粘着テープ破断強度は、引っ張り試験機(例えば、島津製作所社製のオートグラフ万能試験機AGS-X)を用いて引張速度300mm/minの条件で測定することができる。
【0028】
〔粘着剤層〕
本発明の粘着テープにおける粘着剤層を形成する粘着剤は、n-ヘプチルアクリレート由来の構成単位を主成分とするポリマー(X1)を含有することが好ましい。粘着剤層は、このようなポリマー(X1)を含有することで、粘着剤層の粘着特性が良好となる。そして、logG’(80℃)、tanδ(23℃)及びズレ量(80℃)等の値を適切な範囲に調整しやすくなり、高温環境下での保持力、及び加熱時の剥離容易性を良好にしやすくなる。
また、n-ヘプチルアクリレートは、生物由来原料から製造しやすく、バイオ率を高くしやすくなる。
【0029】
n-ヘプチルアクリレートは、生物由来の炭素からなる官能基で構成されることが好ましい。n-ヘプチルアクリレートが生物由来の炭素からなる官能基で構成されることでバイオ率を高くできる。生物由来の炭素からなる官能基は、動植物等から採取される飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸を原料として、これをアルコール化、エステル化することにより、安価かつ容易に入手することが可能である。
【0030】
ポリマー(X1)におけるn-ヘプチルアクリレート由来の構成単位の含有量は、特に限定されないが、50重量%を超えることが好ましく、60重量%以上がより好ましく、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。n-ヘプチルアクリレート由来の構成単位の含有量が上記下限値以上であることで、バイオ率を高くしつつ、粘着特性、高温環境下での保持力及び加熱時の剥離容易性などを良好にしやすくなる。また、n-ヘプチルアクリレート由来の構成単位の含有量は、例えば、後述する官能基含有モノマーを所定量含有させるために、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、97.5質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
ポリマー(X1)は、n-ヘプチルアクリレート由来の構成単位以外の、他のモノマー由来の構成単位を含有することが好ましい。他のモノマーは、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などの重合性の炭素-炭素二重結合を有するモノマーであるとよい。他のモノマーとしては、極性基を含有するモノマー(以下、「極性基含有モノマー」ともいう)が好ましい。ポリマーが極性基含有モノマー由来の構成単位を含有することで、粘着剤の粘着力を高めやすくなり、粘着性能、及び高温環境下における保持力を良好にしやすくなる。
極性基としては、活性水素を有する官能基であり、具体的には、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。極性基は、後述する架橋剤と反応可能な官能基であってもよい。極性基含有モノマーは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
極性基含有モノマーとしては、カルボキシ基を含有するモノマー(以下、「カルボキシ基含有モノマー」ともいう)、及び水酸基を含有するモノマー(以下、「水酸基含有モノマー」ともいう)のうちいずれかを含有することが好ましく、これらを併用することがより好ましい。
【0032】
カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの中では、アクリル酸及びメタアクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
ポリマー(X1)におけるカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、0.5~10質量%が好ましい。カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量が上記範囲内であることで、粘着剤の粘着力が適切に高くなり、高温環境下における保持力及び剥離容易性を良好にしやすくなる。これら観点から、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、1~8質量%がより好ましく、2~6質量%がさらに好ましい。
【0033】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート、アリルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、水酸基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0034】
ポリマー(X1)における水酸基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、粘着剤の各種性能を向上させる観点から、0.05質量%以上15質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。また、水酸基含有モノマーは、カルボキシ基含有モノマーと併用することが好ましく、併用する場合の水酸基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.9質量%以下がさらに好ましい。カルボキシ基含有モノマーと併用する場合には、このように少量でも粘着剤の粘着力などを向上させ、高温環境下における保持力なども良好にしやすくなる。
【0035】
また、アミド基を含有するモノマーとしては、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
n-ヘプチルアクリレート由来のモノマー以外の他のモノマーとしては、官能基含有モノマー以外を使用してもよく、例えば、アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1~6のアルキル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、2-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)オクタノール-1と(メタ)アクリル酸とのエステル、ベヘニル(メタ)アクリレート、アラキジル(メタ)アクリレート等の炭素数8~24程度のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、他のモノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの脂環構造を有する(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基を有するモノマー、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、スチレン等が挙げられる。
極性基含有モノマー以外の他のモノマーも、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記他のモノマーは、後述するバイオ率を向上させる観点から、生物由来の炭素を含むものであることが好ましいが、生物由来の炭素を含まず、石油由来のモノマーであってもよい。
【0036】
ポリマー(X1)における各モノマー由来の構成単位の含有量は、上記ポリマー(X1)の質量分析及び1H-NMR測定を行い、各モノマーに由来する水素のピークの積分強度比から算出することができる。
【0037】
ポリマー(X1)の重量平均分子量(Mw)は、40万以上90万以下であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)を40万以上とすると、粘着剤のせん断強度などを高めて、粘着剤の高温環境下における保持力を高くできる。また、90万以下とすると、粘着剤の粘着力を良好にすることができる。これら観点から、重量平均分子量(Mw)は、40万以上75万以下がより好ましく、42万以上70万以下がさらに好ましく、44万以上65万以下がよりさらに好ましい。46万以上65万以下とすることで、粘着剤の高温環境下における保持力をより一層高くできる。
重量平均分子量(Mw)は、重合開始剤の使用量、重合温度等の重合条件、重合方法などを適宜選択することにより適宜調整できる。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0038】
ポリマー(X1)は、粘着剤において主成分となるものである。粘着剤におけるポリマー(X1)の含有量は、適切な粘着性能を付与するために、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。また、粘着付与剤、架橋剤などのポリマー(X1)以外の成分を粘着剤に所定量配合できるように、粘着剤におけるポリマー(X1)は、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がさらに好ましく、92質量%以下がさらに好ましい。
【0039】
<ポリマー(X1)の製造方法>
ポリマー(X1)は、上記原料となるモノマーの混合物を重合開始剤の存在下にてラジカル反応させることによって得ることができる。
ラジカル反応の方式は特に限定されず、例えば、リビングラジカル重合、フリーラジカル重合等が挙げられる。リビングラジカル重合によれば、フリーラジカル重合と比較してより均一な分子量及び組成を有する共重合体が得られ、低分子量成分等の生成を抑えることができ、上記粘着剤の凝集力が高くなる。重合方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、エマルジョン重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。なかでも、合成が簡便であることから、溶液重合が好ましい。
【0040】
重合方法として溶液重合を用いる場合、反応溶剤として、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらの反応溶剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0041】
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物として、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0042】
また、リビングラジカル重合の場合には、上記重合開始剤として、例えば、有機テルル重合開始剤が挙げられる。上記有機テルル重合開始剤は、リビングラジカル重合に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、有機テルル化合物、有機テルリド化合物等が挙げられる。なお、リビングラジカル重合においても、上記有機テルル重合開始剤に加えて、重合速度の促進を目的として上記重合開始剤としてアゾ化合物を用いてもよい。
【0043】
上記粘着剤層は、界面活性剤を含有しないことが好ましい。
上記粘着剤層が界面活性剤を含有しないことにより、粘着テープの粘着力、特に高温での粘着力がより高くなる。なお、上記粘着剤層が界面活性剤を含有しないとは、上記粘着剤層における界面活性剤の含有量が3重量%以下であることを意味し、好ましくは1重量%以下である。
上記粘着剤層が界面活性剤を含有しないためには、上記アクリル共重合体を得る際に界面活性剤を使用しないことが好ましい。このためには、例えば、上記アクリル共重合体を得る際の重合方法として、溶液重合、UV重合等を採用すればよい。
上記界面活性剤の含有量は、例えば、上記粘着剤層について液体クロマトグラフィー質量分析計(例えば、島津製作所社製NEXCERA、Thermo Fisher Scientific社製Exactive等)を用いて測定することで求めることができる。より具体的には、上記粘着剤層の酢酸エチル溶液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過する。得られた濾液約10μLを液体クロマトグラフィー質量分析計に注入して下記条件で分析する。上記粘着剤層に占める上記界面活性剤に対応するピークの面積比から、上記界面活性剤の含有量を求めることができる。なお、界面活性剤種ごとに上記粘着剤層中の上記界面活性剤の含有量が既知のサンプルを作製し、界面活性剤含有量とピーク面積比との関係を示す検量線を作成し、分析することが好ましい。
カラムThermo Fisher Scientific社製、Hypersil GOLD(2.1×150mm)
移動相アセトニトリル
カラム温度40℃
流速1.0mL/min
イオン化方法ESI
キャピラリー温度350℃
【0044】
<粘着付与剤>
本発明の粘着剤は、上記ポリマー(X1)に加えて、粘着付与剤を含有することが好ましい。粘着付与剤を含有することで、粘着剤の粘着性が向上する。
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、重合ロジンエステル樹脂などのロジンエステル系樹脂、水添ロジン系樹脂等のロジン系粘着付与剤や、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂等のテルペン系粘着付与剤や、クマロンインデン系樹脂、脂環族飽和炭化水素系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5-C9共重合系石油樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記した中では、ロジン系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤が好ましい。これら粘着付与剤は、生物由来原料から容易に合成でき、バイオ率を向上しやすくなる。例えば、ロジン系粘着付与剤は、松脂等の天然樹脂に由来し、また、テルペン系粘着付与剤は、植物の精油等に由来する。また、粘着付与剤としては、特にロジン系粘着付与剤が好適である。ロジン系粘着付与剤を使用することで、ポリプロピレン樹脂に代表されるポリオレフィン系樹脂などの低極性の被着体に対する接着性を優れたものにしやすくなる。
【0046】
粘着付与剤の軟化点は、120℃以上が好ましい。上記したポリマー(X1)は比較的ガラス転移温度が低くなる傾向にあり、高温時における保持力が低くなりやすいが、軟化点が比較的高い粘着付与剤と併用することで、高温時における保持力が低くなることを防止できる。そのような観点から、粘着付与剤の軟化点は、130℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。また、粘着付与剤の軟化点は、粘着剤に適切な粘着性能を付与する観点から、165℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、155℃以下がさらに好ましい。なお、軟化点はJIS K 2207に準拠して測定することができる。
【0047】
粘着剤が粘着付与剤を含む場合、粘着付与剤の含有量は、ポリマー(X1)100質量部に対して、10質量部以上40質量部以下であることが好ましい。粘着付与剤の含有量を上記下限値以上とすると、粘着性を良好にしやすくなる。また、上記上限値以下とすることで、高温環境下における保持力が低下することを防止できる。以上の観点から、粘着付与剤の含有量は、15質量部以上35質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上30質量部以下であることがさらに好ましい。
【0048】
<架橋剤>
本発明の粘着剤は、架橋剤が配合され、架橋されることが好ましい。すなわち、粘着剤は、上記したポリマー(X1)、又はポリマー(X1)及び粘着付与剤に加えて、架橋剤を含有する粘着剤組成物を架橋したものであることが好ましい。架橋剤は、例えばポリマー(X1)が有する極性基との反応により、粘着剤を架橋させてもよい。
架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0049】
イソシアネート系架橋剤は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物が好ましい。
イソシアネート系架橋剤の市販品としては、コロネートL-45、コロネートL-55E(東ソー社製)等の各種ポリイソシアネート化合物、スミジュールN(住友バイエルウレタン社製)等のビューレットポリイソシアネート化合物、デスモジュールIL、HL(バイエルAG社製)、コロネートEH(日本ポリウレタン社製)等のイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物、スミジュールL(住友バイエルウレタン社製)、コロネートL、コロネートHL(日本ポリウレタン社製)等のアダクトポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0050】
エポキシ系架橋剤は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ジグリシジルアニリン、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1、6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノエチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤の市販品としては、例えば、E-AX、E-5C(綜研化学社製)等が挙げられる。
架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記架橋剤の分子量は特に限定されないが、製造上の観点から、分子量は2000未満が好ましく、100以上が好ましい。
【0051】
粘着剤における架橋剤の配合量は、ポリマー(X1)の種類、架橋度などの所望する物性などに応じて適宜変更すればよいが、ポリマー(X1)100質量部に対して、例えば0.1質量部以上20質量部以下、好ましくは0.4質量部以上8質量部以下、より好ましくは0.7質量部以上4質量部以下である。
【0052】
<架橋度>
本発明の粘着剤の架橋度は、30%以上であることが好ましい。架橋度を上記下限値以上とすることで、粘着特性、及び高温環境下における保持力を良好にしやすくなる。このような観点から、粘着剤の架橋度は、35%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。また、架橋度の上限値は特に限定されず、60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。
また、本発明では、架橋度を高くしつつ、粘着付与剤の含有量を所定の範囲とすることで高温環境下における保持力をより一層高くできる。具体的には、架橋度を40%以上としつつ、粘着付与剤の上記した含有量を20質量部以上30質量部以下とすることで、高温環境下における保持力が顕著に優れたものにできる。
粘着剤の架橋度は、ゲル分率で示され、その測定方法は、実施例に示す通りである。粘着剤の架橋度は、架橋剤の配合量などを変更することで適宜調整できる。
【0053】
<顔料>
本発明の粘着剤は、遮光性の観点から顔料を含むことが好ましい。上記顔料としては、例えば、黒色顔料、等が挙げられ、特に意匠性の観点から黒色顔料が好ましい。黒色顔料しては、カーボンブラック、アニリンブラック、酸化チタン等があげられる。上記粘着剤層における上記顔料の含有量は特に限定されないが、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限は2重量部、好ましい上限は20重量部である。上記顔料の含有量が上記範囲内であれば、十分な遮光性が得られる。上記顔料の含有量のより好ましい下限は2.5重量部、より好ましい上限は15重量部であり、更に好ましい上限は12重量部である。
【0054】
<全光線透過率>
本発明の粘着テープの全光線透過率は特に限定されないが、遮光性の観点から50%以下であることが好ましい。上記全光線透過率の好ましい上限は25%、より好ましい上限は10%であり、さらに好ましい上限は5%である。
なお、全光線透過率の測定は、次のようにして行われる。
粘着シートを厚み1mmのガラス板に貼り合わせて得られた測定サンプルに対して、JIS K 7361に準拠し、ヘイズメーター(例えば、日本電色工業社製のHaze Meter NDH4000等)を用いて、23℃、湿度50%雰囲気下測定することができる。
【0055】
<その他の添加剤>
本発明の粘着剤は、必要に応じて、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤等を含有していてもよい。これらの添加剤としても、バイオ率を高める観点から、可能な範囲で生物由来の材料を選択することが好ましい。
【0056】
(タック値)
本発明の粘着剤は、タック試験により測定した23℃における粘着テープの剥離限界値が400gf・s以上であることが好ましい。なお、タック試験は、次のようにして行われる。
まず、タック試験機(例えば、レスカ社製のTAC-1000等)の23℃に設定したプレート上に、粘着剤層が上になるようにして粘着テープを載せる。なお、粘着テープの非測定面は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のフィルムで裏打ちされる。次いで、粘着テープに対して、プローブ温度23℃、押付け速度2mm/s、押付け荷重100gfで直径5mmの円柱状のステンレス製のプローブを押付け、その状態で0.1秒間保持する。その後、引き上げ速度0.2mm/sでプローブを引き上げていく。この間の粘着テープにかかる力を測定する。
なお、以上の説明は、粘着剤が粘着テープを構成する場合の例を説明したが、粘着テープを構成しない場合も同様にタック試験機の23℃に設定したプレート上に粘着剤を配置して同様に測定するとよい。
【0057】
上記剥離限界値とは、上記タック試験により測定した23℃における粘着テープにかかる力を示す力-時間曲線において、力が0を示す時間T1から最大力(ピークトップ)を示す時間までの積分値を意味する。タック試験において、粘着テープに対してプローブを押付けると、力-時間曲線は下降し、その後、プローブを引き上げ始めると、力-時間曲線は上昇していく。力が0を示す時間T1から最大力(ピークトップ)を示す時間T2までの積分値を算出し、これを剥離限界値とする。
上記剥離限界値を上記範囲に調整することにより、高温高湿下かつ復元力がかかる状況下でも粘着テープの剥離を抑制することができる。上記剥離限界値の好ましい下限は450gf・s、より好ましい下限は500gf・sである。また、上記剥離限界値の上限は特に限定されない。
【0058】
<粘着剤の作製>
本発明の粘着剤は、例えば粘着剤組成物を調製し、粘着剤組成物より形成されればよい。粘着剤組成物は、粘着剤を形成するための成分からなり、具体的にはポリマー(X1)に加えて、必要に応じて配合される粘着付与剤、架橋剤、その他の添加剤などを含有するものである。粘着剤組成物は、有機溶剤等の希釈溶液により希釈されていてもよい。希釈溶液は、ポリマー(X1)を合成するときに使用した溶媒でもよいし、ポリマー(X1)を合成した後に加えられたものでもよい。
粘着剤組成物は、必要に応じて加熱して乾燥などすることで架橋され、粘着剤となるとよい。粘着剤は、通常は粘着テープなどに使用されるものであり、粘着剤層を構成するとよい。
【0059】
〔基材〕
粘着テープに使用される基材は、特に限定されないが、不織布、樹脂フィルム及び発泡体から選択されるいずれかであることが好ましく、不織布を使用することがより好ましい。不織布を使用することで、テープの破断強度が高くなり、分解時の剥離が容易になる。
【0060】
不織布としては、樹脂成分よりなる不織布であってもよいし、パルプなどの樹脂成分以外の繊維を使用した不織布であってもよい。樹脂成分以外の繊維を使用した不織布は、樹脂成分以外の繊維単独で形成されてもよいし、樹脂成分以外の繊維と樹脂繊維の両方より形成されてもよい。樹脂成分としては、例えば、上記した樹脂フィルムを構成する樹脂成分として列挙されたものから適宜選択して使用すればよい。また、パルプを使用した不織布は、バイオ率が高い製品が商業的に入手可能であり、粘着テープとしてのバイオ率も高くしやすくなる。
【0061】
樹脂フィルムを構成する樹脂成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリ乳酸(PLA)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のポリエステル(PES)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などのポリオレフィン、ポリウレタン(PU)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリアミド(PA)等が挙げられる。これら樹脂成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。樹脂フィルムとしては、上記した中では、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)が好ましい。PETフィルムは、機械強度が良好であり、粘着剤層を適切に支持できる。また、PETフィルムは、バイオ率が高い製品が商業的に入手可能であり、粘着テープとしてのバイオ率も高くしやすくなる。
【0062】
発泡体を基材として使用する場合、発泡体は、樹脂成分としてPE、PP、EVAなどのポリオレフィン樹脂を使用したポリオレフィン樹脂発泡体、ポリウレタン樹脂を使用したポリウレタン発泡体などが挙げられる。
【0063】
不織布、樹脂フィルム、及び発泡体を構成する樹脂成分は、例えば、石油由来の樹脂、動植物由来の樹脂、石油及び動植物の両方に由来する樹脂のいずれを使用してもよいが、粘着テープをバイオベース製品とするために、動植物由来の樹脂を少なくとも含むことが好ましい。例えば、基材がPETフィルムである場合には、動植物由来のPETを使用すればよい。また、基材としてポリオレフィン樹脂発泡体などを使用する場合などには、発泡体を構成するポリオレフィン樹脂に動植物由来のものを使用すればよい。
【0064】
各粘着テープにおいて、基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上2,000μm以下であるとよい。また、基材の厚さの好適な範囲は、使用する基材の種類によって異なり、例えば基材が樹脂フィルム、不織布である場合には、好ましくは1μm以上100μm以下、より好ましくは5μm以上50μm以下である。これら基材の厚さを5μm以上100μm以下とすることで、柔軟性を損なうことなく粘着テープに一定の機械強度を付与できる。
また、基材が発泡体である場合には、基材の厚さは、好ましくは50μm以上2,000μm以下である。上記範囲内となることで高い耐衝撃性を発揮しながら、被着体の形状に沿って密着させて貼り合わせる高い柔軟性を発揮することができる。
【0065】
各粘着テープにおいて、粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、例えば5μm以上200μm以下程度であればよく、好ましくは10μm以上100μm以下である。粘着剤層の厚みがこの範囲内であると、得られる粘着テープは充分な粘着力を発揮することができる。
また、粘着テープの総厚さ(基材と粘着剤層の厚さの合計)は、10μm以上400μm以下であることが好ましい。粘着テープの総厚みがこの範囲内であると、得られる粘着テープは、充分な粘着力を発揮することができる。
【0066】
<粘着テープのバイオ率>
本発明の粘着テープは、上記した粘着剤と同様の観点から、バイオ率が40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。また、バイオ率は、高ければ高いほどよく、100質量%以下であればよい。なお、粘着テープは、一般的に各構成部材(例えば、粘着剤層、及び基材)によってバイオ率が異なる。そのため、バイオ率は、各構成部材のバイオ率を求め、各構成部材の質量を重み付けとして加重平均により算出するとよい。
【0067】
<粘着テープの製造方法>
粘着テープの製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法により製造することができる。例えば、まず、必要に応じて有機溶剤などで希釈された粘着剤組成物を用意し、粘着剤組成物を剥離シートなどの支持体上に塗布して、必要に応じて加熱して乾燥して、粘着剤層を形成すればよい。剥離シートに粘着剤組成物を塗布する場合には、剥離シートの剥離面上に塗布するとよい。剥離シートなどの支持体上に形成した粘着剤層は、さらに基材に貼り合わせて、基材を有する粘着テープが得られる。また、粘着剤組成物を基材に直接塗布して必要に応じて加熱して乾燥することで、基材上に粘着剤層を設けた粘着テープを得てもよい。
なお、両面粘着テープを作成する場合には、上記いずれかの方法で基材の両面それぞれに粘着剤層を形成すればよい。
また、ノンサポートテープを製造する場合には、剥離シートに粘着剤組成物を塗布して、必要に応じて加熱して乾燥して、粘着剤層を形成することで得ることができる。この場合、形成された粘着剤層には、剥離シートをさらに貼り合わせて、粘着剤層を保護してもよい。ノンサポートテープでは、粘着剤層は、剥離シートから剥離されて使用されるとよい。
【0068】
<粘着剤の用途>
本発明の粘着剤及び粘着テープの用途は特に限定されないが、電化製品、車両用途において使用されることが好ましい。例えば電化製品においては、電化製品を構成する部品の固定に使用されることが好ましい。具体的には、電化製品において、部品同士を粘着剤又は粘着テープにより固定させるとよい。したがって、本発明は、上記粘着剤又は粘着テープを備える電化製品も提供するものである。電化製品としては、特に限定されないが、携帯電子機器、テレビなどの各種ディスプレイ、洗濯機、冷蔵庫、食器用洗浄機、掃除機、プリンタ、各種オーディオ機器などが挙げられる。
【0069】
また、車両用途では、例えば、車載部材の固定に使用することが好ましい。車載部材としては、車両用内装材が挙げられ、例えば、天井パネル、ドアパネル、インストルメントパネルなどの車載用パネル、カーエアコン、ドアトリム、制振部材、エンブレム、加飾フィルム、止水部材などが挙げられる。車載部材は、例えば粘着剤又は粘着テープを介して車両に固定されるとよい。したがって、本発明は、上記粘着剤又は粘着テープを備える車載部材も提供するものである。
【0070】
電化製品及び車両内部は、高温に晒されることがあるが、本発明の粘着剤は、高温環境下でも高い保持力を発揮するので、電化製品の部品や車載部材を安定的に固定させることができる。
【実施例0071】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【0072】
[測定及び評価方法]
各物性の測定、及び評価は以下の要領で行った。
【0073】
<重量平均分子量>
ポリマー(X1)の重量平均分子量(Mw)は、GPC装置「HLC822GPC」(東ソー社製)により測定し、ポリスチレン換算値で求めた。具体的には、得られたポリマー(X1)をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過し、測定サンプルを調製した。この測定サンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、ポリマー(X1)のポリスチレン換算の分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0074】
<架橋度>
粘着剤(試料)をW1(g)採取し、採取した試料を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した際の不溶解分を200メッシュの金網で濾過した。金網上の残渣を110℃の条件下で1時間乾燥し、乾燥後の質量W2(g)を測定し、下記式によりゲル分率(架橋度)を算出した。
ゲル分率(質量%)=100×W2/W1
【0075】
<バイオ率>
粘着剤のバイオ率はASTM 6866に準拠して測定した。
【0076】
<凝集力>
各温度におけるズレ量は、
図1に示した微小せん断ずれ変位測定試験装置(旭精工社製、剪断クリープ測定装置、NST1)を用いて、上述した凝集力試験により測定した。
【0077】
<弾性率>
各温度における貯蔵弾性率G’ [Pa]及び損失弾性率G” [Pa]は、高分子動的粘弾性測定装置「itkDVA-200」(アイティー計測制御社製)により下記条件にて測定した。
測定モード:せん断
昇温速度:5℃/分
測定温度範囲:-30~150℃
設定歪み:0.1%
振動数:10Hz
測定試料は、本実施例、比較例では、各例で調製した粘着剤組成物溶液を、最終的に得られる試料形状が厚み0.1mm、幅0.6mm、長さ10mmとなるように成形し、各例における粘着剤層の形成時と同じ条件で加熱乾燥することにより作製した。
【0078】
<SUS粘着力>
JIS Z-1528「両面粘着テープ」に準じ、幅1cm、長さ100mmに裁断した両面粘着テープの一方の面を、23℃、50%RH下で厚み2mm、幅50mm、長さ100mmのステンレス鋼板(SUS304板)に接着長さが75mmとなるように貼り合わせた。両面粘着テープの他方の面をPETフィルムでバッキングした後、23℃、50%RH下で2kgローラーを1往復させて圧着し接着試験片を作成した。
得られた接着試験片を放置せずに、インストロン試験機を用いて、引張り速度200mm/分で引張り、剥離角度180°でステンレス板から剥離して、23℃又は80℃で初期粘着力(N/cm)を測定した。得られた23℃及び80℃で初期粘着力(N/cm)を対比し、高温環境下(80℃)にした際の高温時粘着力低下率(%)を算出した。
また、得られた接着試験片を40℃、50%RHの雰囲気下に7日間放置した後、インストロン試験機を用いて、引張り速度200mm/分で引張り、剥離角度180°でステンレス板から剥離して、23℃又は80℃で40℃7日間粘着力(N/cm)を測定した。得られた23℃及び80℃で40℃7日間粘着力(N/cm)を対比し、高温環境下(80℃)にした際の高温時粘着力低下率(%)を算出した。
また、剥離した箇所の剥離状況を以下の評価基準で評価した。
A:界面剥離
B:凝集剥離
【0079】
<PP粘着力>
JIS Z-1528「両面粘着テープ」に準じ、幅1cm、長さ100mmに裁断した両面粘着テープの一方の面を、23℃、50%RH下で厚み2mm、幅50mm、長さ100mmのポリプロピレン板(タキロン社製、PP1300)に接着長さが75mmとなるように貼り合わせた。両面粘着テープの他方の面をPETフィルムでバッキングした後、23℃、50%RH下で2kgローラーを1往復させて圧着し接着試験片を作成した。
得られた接着試験片を放置せずに、インストロン試験機を用いて、引張り速度200mm/分で引張り、剥離角度180°でポリプロピレン板から剥離して、23℃又は80℃で初期粘着力(N/cm)を測定した。得られた23℃及び80℃で初期粘着力(N/cm)を対比し、高温環境下(80℃)にした際の高温時粘着力低下率(%)を算出した。
また、得られた接着試験片を40℃、50%RHの雰囲気下に7日間放置した後、インストロン試験機を用いて、引張り速度200mm/分で引張り、剥離角度180°でポリプロピレン板から剥離して、23℃又は80℃で40℃7日間粘着力(N/cm)を測定した。得られた23℃及び80℃で40℃7日間粘着力(N/cm)を対比し、高温環境下(80℃)にした際の高温時粘着力低下率(%)を算出した。
また、剥離した箇所の剥離状況を以下の評価基準で評価した。
A:界面剥離
B:凝集剥離
【0080】
<高温環境下における保持力>
JISZ-1528に準じ、幅25mm、長さ100mmに裁断した両面粘着テープの一方の面を、23℃で厚み1.5mm、幅25mm、長さ100mmの冷間圧延ステンレス鋼板(SUS304板)に接着長さが25mmとなり、長さ75mm分の両面粘着テープがSUS304板の端部からはみ出すように、長さ方向においてずらして貼り合わせた。その後、両面粘着テープの他方の面をPETフィルムでバッキングした後、2kgローラーを1往復させて圧着し接着試験片を作成した。
得られた接着試験片を23℃、50%RHの雰囲気下に20分間放置した後、接着試験片のはみ出した両面粘着テープ側を下側にして、80℃の恒温乾燥機中で鉛直に1時間懸垂し、次いで、両面粘着テープの下端に1kgの荷重を懸けて80℃、24時間鉛直に懸垂し、1時間後と24時間後の接着部分のズレ距離(mm)を測定した。
また、ズレ距離(mm)を以下の評価基準で評価した。
S:ズレ距離が0mm以上0.5mm以下
A:ズレ距離が0.5mm超、1.0mm以下
B:ズレ距離が1.0mm超、1.5mm以下
C:ズレ距離が1.5mm超、2.0mm以下
D:ズレ距離が2.0mm超、又は落下
【0081】
<ボールタック>
ボールタックはJIS Z 0237に準拠した試験方法を用いて測定した。
【0082】
<テープ強度>
常温(23℃)における粘着テープ破断強度は、引っ張り試験機(例えば、島津製作所社製のオートグラフ万能試験機AGS-X)を用いて引張速度300mm/minの条件で測定した。
【0083】
<全光線透過率>
全光線透過率及びヘイズは、粘着シートを厚み1mmのガラス板に貼り合わせて得られた測定サンプルに対して、JIS K 7361に準拠し、ヘイズメーター(例えば、日本電色工業社製のHaze Meter NDH4000等)を用いて測定することができる。
【0084】
実施例、比較例で使用した成分は、以下のとおりである。
<モノマー>
・n-ヘプチルアクリレート(HA):アクリル酸とn-ヘプチルアルコールとのエステル化反応により調製した。n-ヘプチルアルコールは、ひまし油由来のリシノール酸を原料として、これをクラッキングすることによって調製した。
・ブチルアクリレート(BA):三菱ケミカル社製
・アクリル酸(AAc):日本触媒社製
・2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA):大阪有機化学工業社製
・2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA):三菱ケミカル社製
<粘着付与剤(TF)>
・重合ロジンエステル樹脂、水酸基価46、軟化点150℃、生物由来炭素含有率95質量%
<架橋剤>
・ポリイソシアネート系架橋剤、東ソー社製、「コロネートL-45」
<顔料>
・大日精化株式会社製、カーボンブラック
<基材>
・不織布:日本製紙パピリア株式会社製、SPC-N、厚み10μm
・ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET):東洋クロス株式会社製、厚み23μm
【0085】
(実施例1)
[ポリマー(X1)の合成]
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、n-ヘプチルアクリレート(HA)96.9質量部、アクリル酸(AAc)2.9質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.2質量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、5時間重合反応を行い、ポリマー(X1)含有溶液を得た。得られたポリマー(X1)について、重量平均分子量(Mw)を測定したところ、80万であった。
【0086】
[両面粘着テープの作製]
得られたポリマー(X1)含有溶液に、ポリマー(X1)100質量部に対して架橋剤3.5質量部、粘着付与剤25質量部を加え、粘着剤組成物溶液を調製した。この粘着剤組成物溶液を、一方の面が剥離処理した剥離シートの剥離面に、粘着剤組成物溶液を塗布して、加熱して乾燥させて、粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層を基材としての不織布の両面に転写して、基材の両面それぞれに厚み60μmの粘着剤層が設けられた両面粘着テープを得た。
得られた両面粘着テープの粘着剤層より粘着剤を採取して架橋度及びバイオ率を測定した。また、粘着剤組成物溶液より測定試料を作成して貯蔵弾性率G’ [Pa]及び損失弾性率G” [Pa]を測定した。さらに、両面粘着テープを用いて、凝集力、SUS粘着力、PP粘着力、及び高温環境下における保持力を評価した。評価結果を表1~3に示す。
【0087】
(実施例2)
架橋剤の配合量を2.0質量部に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0088】
(実施例3)
架橋剤の配合量を1.5質量部に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0089】
(実施例4)
粘着付与剤(TF)及び加工材の配合量を表1に記載の質量部に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0090】
(実施例5)
粘着付与剤(TF)及び架橋剤の配合量を表1に記載の質量部に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0091】
(実施例6)
重合時間を5時間から4時間に変更して、ポリマー(X1)の重量平均分子量(Mw)を50万に変更し、架橋剤の配合量を5.0質量部に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0092】
(実施例7)
架橋剤の配合量を3.5質量部に変更した以外は実施例6と同様に実施した。
【0093】
(実施例8)
基材を厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)に変更した以外は実施例7と同様に実施した。
(実施例9)
顔料を10重量部配合した以外は、実施例1と同様に実施した。
(実施例10、11)
粘着剤厚みを75μm、及び45μmにそれぞれ変更した以外は、実施例9と同様に実施した。
【0094】
(比較例1)
ポリマー(X1)を作製する際、n-ヘプチルアクリレートを、n-ブチルアクリレート(BA)に変更し、粘着付与剤(TF)及び架橋剤の配合量を表1に記載の質量部に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0095】
(比較例2)
ポリマー(X1)を作製する際、n-ヘプチルアクリレート(HA)96.9質量部を、n-ブチルアクリレート(BA)50質量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2HEA)46.9質量部に変更し、粘着付与剤(TF)及び架橋剤の配合量を表1に記載の質量部に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0096】
(比較例3)
粘着付与剤(TF)及び架橋剤の配合量を表1に記載の質量部に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0097】
(比較例4)
架橋剤の配合量を表1に記載の質量部に変更した以外は実施例6と同様に実施した。
【0098】
(比較例5)
重合時間を5時間から6時間に変更して、ポリマー(X1)の重量平均分子量(Mw)を120万に変更し、粘着付与剤(TF)及び架橋剤の配合量を表1に記載の質量部に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
(比較例6)
粘着剤厚みを40μmに変更した以外は、は実施例と同様に実施した。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
以上の各実施例では、粘着剤の80℃における貯蔵弾性率をG’(80℃)[Pa]としたとき、logG’(80℃)が4.50以下であり、tanδ(23℃)が0.7以上であり、ズレ量(80℃)が290μm以上1900μm以下であったので、高温環境下における保持力、及び低極性被着体に対する加熱時の剥離容易性が良好となった。
それに対して、比較例1は、logG’(80℃)が4.50よりも大きかったため、低極性被着体に対する加熱時の剥離容易性が悪かった。比較例3及び4は、ズレ量(80℃)が1900μmよりも大きかったため、高温環境下における保持力が悪かった。比較例5はtanδ(23℃)が0.7未満であり、比較例6は、ズレ量(80℃)が290μm未満であり、tanδ(23℃)が0.7未満であったため、高温環境下における保持力、及び低極性被着体に対する加熱時の剥離容易性の評価の前提となる、被着体に対する粘着性が悪かった。また、比較例2は、バイオ率が50%未満であった。