(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034166
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】車両充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20230306BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230306BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20230306BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20230306BHJP
B60L 53/63 20190101ALI20230306BHJP
B60L 53/67 20190101ALI20230306BHJP
【FI】
H02J3/14
H02J7/00 P
H02J7/02 J
B60L53/30
B60L53/63
B60L53/67
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140274
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】浅井 成実
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G066KA01
5G066KA11
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA01
5G503CC08
5G503FA06
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC11
5H125BE02
5H125CC06
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】 デマンド制御の実施と変圧器電流の監視に加えて、分電盤の主幹ブレーカを流れる電流も監視し、効果的な車両充電を実施できる。
【解決手段】 車両4を充電するための複数の充電器2と、充電器2の充電電流を制御する充電制御部3とを有している。充電制御部3は、受電した高圧電力を計測するスマートメータ10から受電電力の電流値情報を入手する第1計測部31aと、受電した高圧電力を低圧電力に変換して充電器4へ供給する変圧器5bの電流値情報を入手する第2計測部31bと、充電器2へ電力を供給する分電盤の主幹ブレーカ11に流れる電流値情報を入手する第3計測部31cとを有し、第1計測部31aが入手した受電電流値が所定の第1設定値を超えないよう、且つ第2計測部31bが入手した電流値が所定の第2設定値を超えないよう、更に第3計測部31cが入手した電流値が所定の第3設定値を超えないよう制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を充電するための複数の充電器と、前記充電器の充電電流を制御する充電制御部とを有する車両充電システムであって、
前記充電制御部は、受電した高圧電力を計測する電力量計から受電電力の電流値情報を入手する第1計測部と、
受電した高圧電力を低圧電力に変換して前記充電器へ供給する変圧器の電流値情報を入手する第2計測部と、
前記充電器へ電力を供給する分電盤の主幹ブレーカに流れる電流値情報を入手する第3計測部と、を有し、
前記第1計測部が入手した受電電流値が所定の第1設定値を超えないよう、且つ前記第2計測部が入手した電流値が所定の第2設定値を超えないよう、更に前記第3計測部が入手した電流値が所定の第3設定値を超えないよう制御することを特徴とする車両充電システム。
【請求項2】
前記充電制御部は、前記第1計測部を備えて前記第1設定値に対する受電電流の差分情報を出力する第1制御親機と、
前記第2計測部を備えて前記第2設定値に対する変圧器電流の差分情報を出力する第2制御親機と、
前記第3計測部を備えて前記第3設定値に対する主幹ブレーカ電流の差分情報を出力する第3制御親機と、
前記充電器毎に設置されて、前記第1制御親機、前記第2制御親機及び前記第3制御親機が出力する情報を基に、充電電流を制御する制御子機とに分離形成され、
前記制御子機は、前記第1制御親機、前記第2制御親機、前記第3制御親機から送信される差分情報を基に、前記受電電流値が前記第1設定値を超えないよう、且つ前記変圧器の電流値が前記第2設定値を超えないよう、更に前記主幹ブレーカに流れる電流値が前記第3設定値を超えないよう制御することを特徴とする請求項1記載の車両充電システム。
【請求項3】
前記第1制御親機、前記第2制御親機、前記第3制御親機、及び前記制御子機は、無線により互いに通信し、
前記制御子機は、前記第1制御親機、前記第2制御親機及び前記第3制御親機から無線により前記差分情報を入手することを特徴とする請求項2記載の車両充電システム。
【請求項4】
前記第1制御親機、前記第2制御親機、及び前記第3制御親機は、前記制御子機への前記差分情報の送信を互いに把握し、
前記制御子機への個々の差分情報の送信に、衝突が発生しないようそれぞれが制御することを特徴とする請求項3記載の車両充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両充電システムに関し、詳しくデマンド制御に対応しつつ複数の車両の充電を同時に実施できる車両充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
EVやPHV等の蓄電池を備えた車両を複数同時に充電する車両充電システムとして、例えば特許文献1に開示された充電システムがある。特許文献1では、受電電力に加えて変圧器の電流を監視し、デマンド制御を実施しつつ受電設備を構成する変圧器がオーバーロードにならないよう車両の充電制御を実施し、効果的な車両充電を実施した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術は、デマンド制御を実施しつつ変圧器のオーバーロードも防止できた。しかしながら、車両を充電する充電器に電力を供給する分電盤に流れる電流まで監視してはいなかったため、分電盤の主幹ブレーカが過電流により遮断動作すると、車両充電も停止してしまい、受電電力及び変圧器を管理できても車両充電が停止する問題があった。
【0005】
ここでデマンド値について説明する。電気料金の基本料金には、過去1年間(当月と前11ヶ月)のデマンド値(30分毎の平均使用電力の1ヶ月間の最大値)の最大値(最大デマンド値)が適用されるため、1ヶ月のうちで一度でも過去11ヶ月のデマンド値より大きなデマンド値が計測されると、その値を基準に以降一年間の電気料金の基本料金が決定されることになる。つまり、電気料金の削減には、最大デマンド値を抑える制御(デマンド制御)を行うことが有効になる。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、デマンド制御の実施と変圧器電流の監視に加えて、分電盤の主幹ブレーカを流れる電流も監視し、効果的な車両充電を実施できる車両充電システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、車両を充電するための複数の充電器と、充電器の充電電流を制御する充電制御部とを有する車両充電システムであって、充電制御部は、受電した高圧電力を計測する電力量計から受電電力の電流値情報を入手する第1計測部と、受電した高圧電力を低圧電力に変換して充電器へ供給する変圧器の電流値情報を入手する第2計測部と、充電器へ電力を供給する分電盤の主幹ブレーカに流れる電流値情報を入手する第3計測部とを有し、第1計測部が入手した受電電流値が所定の第1設定値を超えないよう、且つ第2計測部が入手した電流値が所定の第2設定値を超えないよう、更に第3計測部が入手した電流値が所定の第3設定値を超えないよう制御することを特徴とする。
この構成によれば、受電電力の電流、変圧器の電流、主幹ブレーカの電流の3つを監視して車両の充電を制御するため、デマンド制御を実施すると共に変圧器のオーバーロードを防止しながら、充電が停止されることの無い効率の良い車両充電を実施できる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、充電制御部は、第1計測部を備えて第1設定値に対する受電電流の差分情報を出力する第1制御親機と、第2計測部を備えて第2設定値に対する変圧器電流の差分情報を出力する第2制御親機と、第3計測部を備えて第3設定値に対する主幹ブレーカ電流の差分情報を出力する第3制御親機と、充電器毎に設置されて、第1制御親機、第2制御親機及び第3制御親機が出力する情報を基に、充電電流を制御する制御子機とに分離形成され、制御子機は、第1制御親機、第2制御親機、第3制御親機から送信される差分情報を基に、受電電流値が第1設定値を超えないよう、且つ変圧器の電流値が第2設定値を超えないよう、更に主幹ブレーカに流れる電流値が第3設定値を超えないよう制御することを特徴とする。
この構成によれば、複数の充電器を備えても、充電器の制御は各充電器側で実施するため、全体を一括制御する制御部を設ける必要がない。そのため、充電器の増設を容易に実施できる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の構成において、第1制御親機、第2制御親機、第3制御親機、及び制御子機は、無線により互いに通信し、制御子機は、第1制御親機、第2制御親機及び第3制御親機から無線により差分情報を入手することを特徴とする。
この構成によれば、制御子機と各制御親機とは無線通信するため、別途通信線を配設する必要がない。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の構成において、第1制御親機、第2制御親機、及び第3制御親機は、制御子機への差分情報の送信を互いに把握し、制御子機への個々の差分情報の送信に、衝突が発生しないようそれぞれが制御することを特徴とする。
この構成によれば、制御子機に対して複数の制御親機が同時に制御信号を送信するようなことが無く、制御子機は各親機と良好に通信して安定した制御を実施できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、受電電力の電流、変圧器の電流、主幹ブレーカの電流の3つを管理して車両充電を制御するため、デマンド制御と変圧器のオーバーロード監視に加えて、主幹ブレーカの過電流を監視するため、車両充電を停止させることなく効率良く充電制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】車両充電システムの第1の形態を示す構成図である。
【
図2】優先順位割り振りの流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図1に示す車両充電システムの充電電流制御の流れを示すフローチャートである。
【
図4】車両充電システムの第2の形態を示す構成図である。
【
図9】第1制御親機の送信制御の流れを示すフローチャートである。
【
図10】第2制御親機の送信制御の流れを示すフローチャートである。
【
図11】第3制御親機の送信制御の流れを示すフローチャートである。
【
図12】制御子機の充電電流制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る車両充電システムの第1の形態を示す構成図である。
図1に示すように車両充電システム1は、車両4から延びた充電ケーブルL1が接続される複数の充電器2と、スマートメータ(電力量計)10から高圧の商用電力Qの受電電力情報(電流情報)を入手すると共に、複数箇所の電流情報を入手して、充電電流の制御信号を生成して各充電器2に出力する充電制御部3とを有している。
【0014】
尚、5(5a,5b)は高圧電力を低圧電力に変換する降圧変圧器(以下、単に「変圧器」とする)、6は三相電力が供給される空調機等の負荷、7は単相100/200Vが供給される照明等の負荷、11は充電器2に電力を供給する分電盤(図示せず)に設けられた主幹ブレーカを示している。充電器2には単相200Vの電力が供給される。
【0015】
充電器2は、充電制御部3からの制御信号を受けて、充電電流を変更する回路(図示せず)、接続された車両と通信する回路を備えている。
【0016】
充電制御部3は、スマートメータ10に通信線L2を介して接続されて受電電力の電流情報を入手する第1計測部31a、変圧器5のうち充電器2に電力を供給する変圧器5bの二次側電路に設けた電流センサ8から電流情報を入手する第2計測部31b、主幹ブレーカ11に流れる電流を計測する電流センサ9から電流情報を入手する第3計測部31c、後述する受電電流基準値(第1設定値)、変圧器5bの定格電流値(第2設定値)、主幹ブレーカ11の定格値(第3設定値)及び後述する充電電力閾値等を記憶する記憶部32、各充電器2の充電電流を決定すると共に充電制御部3の各部を制御する充電制御部CPU34、個々の充電器2と通信する複数の通信部35等を備えている。
【0017】
尚、受電電流基準値とは、受電電力が最大デマンド値より例えば10%小さい値になるよう設定された電流値であり、最大デマンド値を削減して契約料金を削減するために需要家が設定する数値である。また充電電力閾値(以下、単に「閾値」とする)は、充電車両の優先順位を設定する際に基準となる電力量であり、例えば設定された距離を走行するのに必要が電力量である。この閾値は、充電器3が車両4から入手した蓄電池の残量情報をを基に、充電制御部CPU34の制御により車両4毎に設定される。
【0018】
このように構成された車両充電システム1の充電制御は、以下のように実施される。まず、充電する車両4の優先順位の割り振りが成される。
図2は充電する車両4の優先順位を割り振る流れを示し、
図2を参照して説明する。
充電器2に車両4が接続されて(車両4の充電プラグが接続されて)、充電開始操作が成されると、充電制御部CPU34の制御により、既定値の電流で充電が開始される。同時に、既に充電制御を実施している他の車両4と合わせて、優先順位の割り振りが行われる。
まず、充電量が閾値未満の車両4の数(未達成数:n)を把握(S1)し、次に閾値以上の充電が成されている車両4の数(達成数:m)を把握(S2)する。
尚、充電制御部CPU34は、個々の車両4に対する充電量(充電を開始してからの電力量)を把握しており、この値と閾値とを比較し判断する。
【0019】
次に、未達成数nに含まれる車両4を充電量の多い順に並べて、1番目からn番目と順位付けして割り振り(S3)、更に達成数mに含まれる車両4を充電量の多い順に並べて、n+1番目からn+m番目まで順位付けして割り振る(S4)。
こうして1番目からn+m番まで順番付けが成され、1~n番目の車両4の中では1番目の車両4の充電量が最も多く、n番目の車両4が最も充電量が少ない数値となる。また、n+1~n+m番目の車両4の中ではn+1番目の車両4の充電量が最も多く、n+m番目の車両4の充電量が最も少ない充電量となる。このように優先順位を割り振った後、充電電流の制御に進む。
【0020】
図3は、充電制御部3が実施する充電電流制御の流れを示すフローチャートを示し、このフローを参照して充電制御を説明する。
上述した優先順位の割り振り処理(S11)が終了したら、逸脱情報が判断される(S12)。
ここで逸脱情報を説明する。逸脱情報は、第1逸脱情報、第2逸脱情報、第3逸脱情報3つがあり、次式の式1~3でそれぞれ算出される。
第1逸脱情報(A)=現在の受電電流(低圧換算値(A))-受電電流基準値(低圧換算値(A))
・・・(式1)
第2逸脱情報(A)=変圧器電流(A)-変圧器定格(A)
・・・(式2)
第3逸脱情報(A)=主幹ブレーカ電流(A)-主幹ブレーカ定格(A)
・・・(式3)
尚、第1逸脱情報の低圧換算値とは、例えば6600Vの三相高圧電圧を200Vの単相低圧に降圧した場合の換算値で、例えば6600Vで1Aの場合、電力Pは、
P=√3×6600×1=11431.5W
であるから、200Vに換算すると電流Iは、
I=11431.5/200=57A
であり、57Aとなる。また、変換変圧器定格とは変圧器5bの定格容量(2次側電流)である。
また、変圧器電流とは、変圧器5bの2次側の電流値である。
【0021】
逸脱情報の判断は、第1~第3逸脱情報を総合して判断し、プラス、ゼロ、マイナスの何れかで判断される。この判断は次のように行われる。
<プラスの判断> 受電電流基準値である第1設定値を超えている。変圧器5bの電流が変圧器定格値を超えている。主幹ブレーカ11の電流が主幹ブレーカ11の定格値を超えている。この少なくとも何れかが事実であると判断されたらプラスと判断する。
尚、第1設定値とは、上述したように受電電力の電力量が設定された最大デマンド値より例えば10%小さい値になるよう設定された電流値である。受電電流が第1設定値を超えている場合とは、現在の受電電力から30分間の平均電力を計算して予想し、予想値がデマンド電力値の90%を超えて最大デマンド値に近づく可能性があると判断した場合である。
<ゼロの判断> 受電電流がほぼ第1設定値に等しい(数パーセントの差がある場合を含む)。変圧器5bの電流が変圧器定格値にほぼ等しい。主幹ブレーカ11の電流が定格値にほぼ等しい。この何れかが事実で、且つ何れも設定値或いは定格値を超えていない場合にゼロと判断する。
<マイナスの判断> 受電電流が第1設定値に達していない。変圧器5bの電流が変圧器定格値に達していない。主幹ブレーカ11の電流が定格値に達していない。この全てを満たしている場合にマイナスと判断する。
【0022】
こうして判断された逸脱情報のプラス、ゼロ、マイナスで制御は異なり、逸脱情報がプラスの値の場合はS13に進み、ゼロの場合は制御を終了し、マイナスの場合はS18に進む。
【0023】
逸脱情報がプラスの場合は、電流を削減する制御が実施される。具体的に、超えている電流値情報である逸脱情報の最大値を逸脱値として(S13)、閾値に達して且つ充電量の最も少ないn+m番目の車両4から番号の若い順に充電電流の削減制御(S14)が実施される。
但し、車両4の1台あたりの削減量の最大値は、現在の電流値から所定の最小電流値を引いた値及び算出した逸脱値のうちの小さい方とする(S15)。例えば、逸脱値が10アンペアで、現在の充電電流値から所定の最小電流値を引いた値が5アンペアであれば、5アンペアが選択され、優先順位の設定で最も優先順位の低い(充電量が多い)n+m番目の車両4の充電電流を5アンペア削減する制御が実施される。こうして、閾値に達した中で最も充電量の少ない車両4が充電電流削減の最優先対象となる。
【0024】
そして、逸脱値から削減した電流値を引いた電流値を新たな逸脱値とし(S16)、逸脱値がゼロに成るまで或いは全ての車両4に対してS14からS17のステップを繰り返し、設定された順番の車両順に制御を実施する。こうして、新たに設定された充電電流値が通信部35から個々の充電器2に通知(S23)され、このS11からS23の制御が所定の時間間隔で繰り返されて充電電流が制御される。
この結果、充電量が閾値に達した車両4の中で、最も充電量の少ない車両4から充電電流が削減される。よって、後から充電を開始した車両4の充電量が先に充電を開始した車両4の充電量を上回る事が無く、充電時間の長い利用者が不満を抱く事が無いよう制御できる。
【0025】
尚、逸脱情報がゼロの場合は、何れの車両4も充電電流を変更せず、最初のステップであるS11に戻り、優先順位の割り振りが再び行われる。
【0026】
一方、逸脱情報がマイナスの場合は、充電電流を増やす制御が実施される。具体的に、増やせる電流値情報である逸脱情報の絶対値の最小値を余裕値として(S18)、閾値に達するまでの増やせる電流値(余裕情報)が次式の式4~6を基に算出さる。
第1余裕情報=第1逸脱情報の絶対値 ・・・(式4)
第2余裕情報=第2逸脱情報の絶対値 ・・・(式5)
第3余裕情報=第3逸脱情報の絶対値 ・・・(式6)
余裕値はこの第1~3余裕情報のうちの最小値となり、閾値に満たない車両4のうち、充電量の最も多い車両4から少ない車両4の順に充電電流を増加させる(S19)。
閾値に達しておらず且つ充電量の最も多い1から、n+m番目の車両4まで若い順に充電電流の増加制御(S20)が実施される。
【0027】
但し、車両4の1台あたり最大増加量は、所定の充電最大電流値から現在の電流値を引いた値及び算出した余裕値のうちの小さい方とする(S20)。例えば、充電最大電流値から現在の電流値を引いた値が5アンペアで、余裕値が10アンペアであれば、5アンペアが選択されて最も充電量の少ない1番目の車両4の充電電流を5アンペア増やす制御が実施される。
こうして、閾値に達していない車両4の中で最も充電量の多い車両4が、充電電流増加の最優先対象となり、電流増が実施される。
【0028】
そして、余裕値から増加させた電流値を引いた電流値を新たな余裕値(S21)とし、余裕値がゼロになるまで或いは全ての車両4に対してS19からS22のステップを繰り返し、設定された順番の車両順に制御を実施する。こうして、新たに設定された充電電流値が個々の充電器2に通知(S23)され、充電が制御される。
この結果、充電量が閾値を下回る車両4の中で最も充電量の多い車両4から充電電流が増加する。よって、後から充電を開始した車両4の充電量が先に充電を開始した車両4の充電量を上回る事が無く、充電時間の長い利用者が不満を抱かないよう制御できる。
【0029】
このように、受電電力の電流、変圧器5bの電流、主幹ブレーカ11の電流の3つを監視して車両4の充電を制御するため、デマンド制御を実施すると共に変圧器5bのオーバーロードを防止しながら、充電が停止されることの無い効率の良い車両充電を実施できる。
【0030】
次に、車両充電システム1の第2の形態を説明する。
図4は車両充電システム1の第2の形態を示す構成図であり、
図4に基づいて説明する。但し、上記第1の形態と共通する構成要素には同一の符号を付与して説明を省略する。
この車両充電システム1は、複数の充電器2と、高圧の商用電力Qから受電する電力を計測すうスマートメータ10から受電電力の電流情報を入手して第1逸脱情報(差分情報)を出力する第1制御親機110と、変圧器5bの二次側に設けた電流センサ8から電流情報を入手して第2逸脱情報(差分情報)を出力する第2制御親機115と、電流センサ9により主幹ブレーカ11に流れる電流情報を入手して第3逸脱情報(差分情報)を出力する第3制御親機120と、充電器2毎に設置されて充電器2の充電電流を制御する制御子機130とを備えている。
尚、第1~第3逸脱情報(差分情報)とは、上述した式1~3に示した情報である。
【0031】
図5は第1制御親機110のブロック図を示している。
図5に示すように、第1制御親機110は、スマートメータ10から受電電流情報を入手する第1親機計測部111、受電電流基準値(第1設定値)等を記憶する第1親機記憶部112、第1制御親機110を制御する第1親機CPU113、制御子機130と無線通信すると共に、第2制御親機115、第3制御親機120と無線通信する第1親機通信部114等を備えている。スマートメータ10とは通信線L2を介して接続されている。
【0032】
図6は第2制御親機115のブロック図を示している。
図6に示すように、第2制御親機115は、電流センサ8から変圧器5bの電流情報を入手する第2親機計測部116、変圧器定格電流(第2設定値)等を記憶する第2親機記憶部117、第2制御親機115を制御する第2親機CPU118、制御子機130と無線通信すると共に、第1制御親機110、第3制御親機120と無線通信する第2親機通信部119等を備えている。
【0033】
図7は第3制御親機120のブロック図を示している。
図7に示すように、第3制御親機120は、電流センサ9から主幹ブレーカ11に流れる電流の情報を入手する第3親機計測部121、主幹ブレーカ11の定格値(第3設定値)等を記憶する第3親機記憶部122、第3制御親機120を制御する第3親機CPU123、制御子機130と無線通信すると共に、第1制御親機110、第2制御親機115と無線通信する第3親機通信部124等を備えている。
【0034】
図8は制御子機130のブロック図を示している。
図8に示すように、制御子機130は充電器2毎に設けられ、第1制御親機110、第2制御親機115、そして第3制御親機120と無線通信する子機通信部131、充電量の閾値、後述する持続時間、待機時間等を記憶する子機記憶部132、制御子機130を制御する子機CPU133、充電器2に制御信号を出力する充電器制御部134等を備えている。充電器2とは伝送線L3を介して接続されている。
尚、制御子機130と充電器2とは一体に形成しても良い。
【0035】
第1親機記憶部112に保存される第1設定値、第2親機記憶部117に保存される変圧器定格は、上記第1の実施形態で示した設定値と同一であり、第1設定値は最大デマンド値に対して例えば10%ほど小さい値で設定された値であるし、変圧器定格は変圧器5bの定格値に基づいて設定された値である。
【0036】
このように構成された車両充電システムの充電制御は、以下のように実施される。
まず、第1制御親機110がスマートメータ10から受電電流の情報を入手して、逸脱情報を1秒間隔等一定の間隔で各制御子機130に通知する。同時に電流センサ8等から変圧器5bの電流情報・電圧情報を入手し、逸脱情報を1秒間隔等一定の間隔で各制御子機130に通知する。
尚、各制御子機130へ通知される逸脱情報は、上記第1の形態の逸脱情報と同様であり、上記式1~式3で算出される第1~第3逸脱情報を基に決定されるプラス、ゼロ、マイナスの3値から成る情報(差分情報)である。
【0037】
第1~第3制御親機110,115,120から制御子機130へは次のように情報が送信される。
図9は第1制御親機の送信制御の流れ、
図10は第2制御親機の送信制御に流れ、
図11は第3制御親機の送信制御の流れを示しており、これらの図を参照して説明する。
第1制御親機110は、まず算出した第1逸脱情報を制御子機130に送信する(S31)。その後、第3制御親機120から第3逸脱情報が送信されるのを待ち、送信されたらそれを受信(S32、S33)して認識し、更に一定時間待機する(S34)。その後、次の第1逸脱情報を制御子機130に送信する。
【0038】
第2制御親機115は、第1制御親機110が第1逸脱情報を制御子機130へ送信するのを待ち、送信したらそれを受信(S35、S36)して認識し、更に一定時間待機する(S37)。その後、第2逸脱情報を制御子機130に送信する(S38)。
【0039】
第3制御親機120は、第2制御親機115が第2逸脱情報を制御子機130へ送信するのを待ち、送信したらそれを受信(S39,S40)して認識し、更に一定時間待機する(S41)。その後、第3逸脱情報を制御子機130へ送信する(S42)。
【0040】
このように、制御子機130と各制御親機110,115,120とは無線通信するため、別途通信線を配設する必要がなく、充電器2の増減がし易い。加えて、各制御親機110,115,120から制御子機130への情報の送信タイミングには、一定のルールが設けられて同時に送信されることが無いため、制御子機130へ情報を送信する信号同士の衝突による不具合が発生することがない。
【0041】
尚、上記実施形態では、制御親機110,115,120の送信タイミングにルールを設けて、信号同士の衝突を防止しているが、制御子機130の方から各制御親機110,115,120に対して順番に情報を取りに行っても良い。
【0042】
こうして各制御親機110,115,120から逸脱情報を受信した個々の制御子機130は次のような制御を実施する。
図12は、制御子機130の子機CPU133が行う電流制御の流れを示すフローチャートを示し、このフローを参照して説明する。この制御は逸脱情報(第1~第3逸脱情報)を受信する毎に実施される。
逸脱情報を受信(S50)すると、逸脱情報が判断される(S51)。上記形態と同様に、第1~第3逸脱情報を総合して判断し、プラス、ゼロ、マイナスの何れかで判断される。
その後、充電量の状態を判断し(S52)、充電を開始してからの充電量により異なる制御を実施する。充電量が予め設定された閾値に達していなければS53に進み、達していたらS56に進む。
【0043】
充電電流が閾値に達していない状態(S52で左へ進む)で、逸脱情報がマイナスの場合(S53で右へ進む)、即ち充電電流に余裕がある場合は、増加電流を次式(式7)で算出し、算出した電流を充電電流に加算して増加させる(S55)。尚、充電電流には最大値が設定されており、最大値に達している場合はそれ以上増加しない。
増加電流=最大電流値(A)×充電量(Wh)/閾値(Wh) ・・・(式7)
【0044】
一方、逸脱情報がゼロの場合(S53で左へ進む)は、充電電流を変更しない信号を充電器2に出力(S62)して終了する。
逸脱情報がプラスの場合(S53で下へ進む)、即ち電流を削減する必要がある場合は、削減電流を次式(式8)で算出し、削減電流分を電流値から減少させる(S54)。尚、充電電流には最小値が設定されており、最小値に達している場合はそれ以上削減しない。
削減電流=最大電流値(A)×(閾値(Wh)-充電量(Wh))/閾値(Wh)
・・・(式8)
こうして設定された新しい電流値が充電器2に通知(S62)される。
【0045】
一方、逸脱情報を受信した段階で、閾値以上に充電が進んでいる場合(S52で右へ進む)は以下のように制御する。
逸脱情報がマイナス(S56で右へ進む)、即ち充電電流に余裕がある場合は、子機記憶部132に記憶している持続時間を読み取り、持続時間が60秒等の設定された待機時間に達していなければ(S57でNO)、持続時間を1単位(逸脱情報を受信する時間間隔)加算(S58)して保存し、電流を変更しない信号を充電器2に出力(S62)して終了する。
そして、持続時間が待機時間に達していたら(S57でYES)、現在の電流に最小増加電流を加算(S59)する信号を充電器2に出力(S62)して終了する。
【0046】
この制御により、充電電流が閾値に達している車両4は、待機時間を設けてその時間が経過するまでは充電電流の変更を停止するため、充電量が閾値に達していない車両4があれば、この待機時間を利用して充電電流を増加させて充電を促進することが可能となり、充電器2を一括管理する制御部を持たなくてもバランスの取れた電流制御ができる。
【0047】
また、S56で逸脱情報がほぼゼロであったら(S56で左へ進む)、記憶している持続時間をリセット(S61)してゼロにし、電流を変更しない信号を充電器2に出力(S62)して終了する。
逸脱情報がプラス(S56で下へ進む)、即ち電流を減らす必要がある場合は、充電電流をゼロにする(S60)と共に、記憶している持続時間を0にリセットする(S61)。結果、充電電流を0にする信号を充電器2に出力して終了する。
【0048】
この制御により、受電電力の電流が第1設定値を超えている場合、或いは変圧器5bの電流が変圧器定格を超えている場合は、待機時間にかかわらず閾値以上に充電が進んでいる車両4の充電を停止するため、デマンド制御を行うと同時に、変圧器5bの良好な状態を維持できる。
また、待機時間のカウントはリセットされるため、十分な待機時間(持続時間)を設定でき、その間に充電量が閾値に達していない車両4の充電を継続することができ、充電電流の振り分けをバランスよく実施できる。
【0049】
このように、複数の充電器2を備えても充電器2の制御は充電器2毎に実施するため、全体を一括制御する機能を設ける必要が無い。そのため、充電器2を増減する際に制御子機130を合わせて増減するだけで良く、第1制御親機110、第2制御親機115、更に第3制御親機120の変更等が発生せず、充電器2の増設がし易くシステムに拡張性を有する。
【0050】
尚、上記実施形態では、第2設定値を変圧器5bの定格電力を基準(変圧器定格)に設定しているが、定格値より僅かに小さい値、例えば10%小さい値を設定しても良い。この設定値の設け方は、第3設定値に関しても同様である。
【符号の説明】
【0051】
1・・車両充電システム、2・・充電器、3・・充電制御部、4・・車両、5b・・変圧器(降圧変圧器)、9・・電流センサ、10・・スマートメータ(電力量計)、11・・主幹ブレーカ、31・・計測部、31a・・第1計測部、31b・・第2計測部、31c・・第3計測部、32・・記憶部、34・・充電制御部CPU、35・・通信部、110・・第1制御親機(充電制御部)、111・・第1親機計測部(第1計測部)、114・・第1親機通信部(無線通信部)、114・・第2制御親機、115・・第2制御親機(充電制御部)、116・・第2親機計測部(第2計測部)、118・・第2親機通信部(無線通信部)、120・・第3制御親機(充電制御部)、121・・第3親機計測部(第3計測部)、123・・第3親機通信部(無線通信部)、130・・制御子機(充電制御部)、131・・子機通信部(無線通信部)。