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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034169
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】止水板
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/22 20060101AFI20230306BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
E02B7/22
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140278
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】390033112
【氏名又は名称】積水テクノ成型株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】末永 祐介
(72)【発明者】
【氏名】森本 徳宏
(72)【発明者】
【氏名】西川 雅人
【テーマコード(参考)】
2D019
2E139
【Fターム(参考)】
2D019AA71
2E139AA08
2E139AC19
2E139AC20
(57)【要約】
【課題】 本発明は、氾濫水の進入が発生し又は氾濫水の進入が想定される道路や建物の開口部などの任意の場所に短時間のうちに簡便に配設して止水壁を構築し、雨水や氾濫水などの進入を概ね防止し、避難路の確保などを図ることができる止水板を提供する。
【解決手段】 本発明の止水板は、左右方向に接続することによって止水壁を構築可能な止水板であって、上記止水壁を構築する止水壁構築面上に載置する底部と、上記底部の後部から上方に立設した起立部とを有し、上記起立部は、その一端部に第1接続部を有していると共に、他端部に、左右方向に隣接して接続される止水板の起立部同士を所望角度にて接続させた状態にて、左右方向に隣接して接続される止水板の第1接続部に着脱自在に接続、固定される第2接続部を有していることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に接続することによって止水壁を構築可能な止水板であって、
上記止水壁を構築する止水壁構築面上に載置する底部と、
上記底部の後部から上方に立設した起立部とを有し、
上記起立部は、その一端部に第1接続部を有していると共に、他端部に、左右方向に隣接して接続される止水板の起立部同士を所望角度にて接続させた状態にて、左右方向に隣接して接続される止水板の第1接続部に着脱自在に接続、固定される第2接続部を有していることを特徴とする止水板。
【請求項2】
第1接続部は、円弧状の受止部を有していると共に、第2接続部は、上記受止部の所望位置にて係脱自在に係止可能な係止部を有していることを特徴とする請求項1に記載の止水板。
【請求項3】
第1接続部は、起立部の一端部に形成され且つ互いに隣接して接続される止水板の起立部の接続角度の変化方向に湾曲した凸円弧状の第1当接面を有していると共に、第2接続部は、上記第1当接面に当接する凹円弧状の第2当接面を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の止水板。
【請求項4】
第1接続部は、第1当接面の上端部に受止部を有している一方、第2接続部は、第2当接面の上端部に係止部を有していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の止水板。
【請求項5】
第1接続部の受止部は円環状に形成されていることを特徴とする請求項2~4の何れか1項に記載の止水板。
【請求項6】
第1接続部の受止部に杭部材を打ち込むことによって、第2接続部の係止部を上記第1部材の受止部に固定させるように構成していることを特徴とする請求項2~5の何れか1項に記載の止水板。
【請求項7】
止水板の底部は、その上面に上側係合段部が形成され且つ下面に下側係合段部が形成されており、左右方向に互いに隣接して接続される止水板において、上側に重ね合わせて配設される止水板の底部の下側係合段部は、左右方向に接続される止水板の起立部の少なくとも一の接続角度にて、下側に重ね合わせて配設される止水板の底部の上側係合段部の所定部位に係合するように構成されていることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の止水板。
【請求項8】
上側に重ね合わせて配設される止水板の底部の下側係合段部は、左右方向に接続される止水板における起立部の少なくとも一の接続角度にて、下側に重ね合わせて配設される止水板の底部の外周縁の所定部位に係止するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の止水板。
【請求項9】
止水板の底部に形成された上下係合段部は、上下方向に投影した時の形状が同一形状に形成されていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の止水板。
【請求項10】
第1接続部の受止部には係止突部が形成されていると共に、第2接続部の係止部は、上記係止突部に係止する係止片を有しており、
左右方向に隣接して接続される止水板において、上記第1接続部の係止突部と上記第2接続部の係止部の係止片との係止による回動規制方向と、底部の上下係合段部同士の係止による回動規制方向とが反対方向となるように構成されていることを特徴とする請求項7~9の何れか1項に記載の止水板。
【請求項11】
底部の上下面には複数個の上下係合段部がそれぞれ形成されており、
左右方向に接続される止水板の起立部同士を少なくとも一の接続角度にて接続した状態において、上側に重ね合わせて配設される止水板の底部に形成された少なくとも一の下側係合段部は、その一部の形状が、下側に重ね合わせられて配設される止水板の底部に形成された一の上側係合段部の一部の形状に合致して形成されていることを特徴とする請求項7~10の何れか1項に記載の止水板。
【請求項12】
底部の表面積が起立部の表面積よりも大きいことを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の止水板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、豪雨などによって短時間に大量の降雨が発生し、河川が氾濫するなどして、洪水が発生し、氾濫水が道路に進入して道路が冠水したり、氾濫水が建物内に進入することが頻発している。このような氾濫水の進入に対応するために止水板を配設することが提案されている。
【0003】
特許文献1には、複数の板体を高さ方向に連設して構成され、前記建物開口の前方端縁に当接する開口当接面と、グラウンドに当接するグラウンド当接面と、を具備する立設板状の止水板本体と、前記止水板本体を上方から下方に向けて押圧する下向き押圧機構と、を具備して構成され、前記高さ方向に連設する一方の板体と他方の板体の内、前記一方の板体の他方の板体側端部の前方側外縁及び後方側外縁に、前記他方の板体の一方の板体側端部を嵌装させる立設面が形成された止水板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-14723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記止水板は、建物に設けられた開口部に止水板本体を配設して用いられるものであり、予め使用が想定された建物の開口部にしか使用することができず、氾濫水が発生した任意の場所に配設することができないという問題点を有する。
【0006】
又、上記止水板は、建物の開口部に止水板本体を配設するための作業に時間を要し、止水板を短時間のうちに配設することができないという問題点を有する。
【0007】
本発明は、氾濫水の進入が発生し又は氾濫水の進入が想定される道路や建物の開口部などの任意の場所に短時間のうちに簡便に配設して止水壁を構築し、雨水や氾濫水などの進入を概ね防止し、避難路の確保などを図ることができる止水板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の止水板は、左右方向に接続することによって止水壁を構築可能な止水板であって、
上記止水壁を構築する止水壁構築面上に載置する底部と、
上記底部の後部から上方に立設した起立部とを有し、
上記起立部は、その一端部に第1接続部を有していると共に、他端部に、左右方向に隣接して接続される止水板の起立部同士を所望角度にて接続させた状態にて、左右方向に隣接して接続される止水板の第1接続部に着脱自在に接続、固定される第2接続部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の止水板は、複数の止水板を止水壁構築面上に左右方向に連続させて配設し、互いに左右方向に隣接する止水板における一方の止水板の第1接続部と他方の止水板の第2接続部とを接続するという簡単な作業によって、複数の止水板を左右方向に連続的に接続して止水壁を容易に構築することができる。
【0010】
本発明の止水板は、上述の通り、左右方向に隣接する止水板における互いに対向する第1接続部と第2接続部とを接続することによって左右方向に連続的に接続するものであり、止水壁を構築する場所に止水板を配設するための設備を別途、要しない。従って、本発明の止水板は、止水壁を構築する場所を選ぶことなく、所望の場所に止水壁を構築することができる。
【0011】
上記止水板において、第1接続部は、円弧状の受止部を有していると共に、第2接続部は、上記受止部の所望位置にて係脱自在に係止可能な係止部を有している場合には、第2接続部を第1接続部の円弧状の受止部の所望位置に係止させることによって、互いに隣接する止水板の起立部を所望の接続角度でもって左右方向に接続することができ、所望形状の止水壁を構築することができる。
【0012】
上記止水板において、第1接続部は、起立部の一端部に形成され且つ互いに隣接して接続される止水板の起立部の接続角度の変化方向に湾曲した凸円弧状の第1当接面を有していると共に、第2接続部は、上記第1当接面に当接する凹円弧状の第2当接面を有している場合には、互いに隣接する止水板において、一方の止水板における第1接続部の凸円弧状の第1当接面に、他方の止水板における第2接続部の凹円弧状の第2当接面を当接させて、他方の止水板を一方の止水板の第1接続部を中心にして位置決めした上で、他方の止水板を一方の止水板の第1接続部を中心にして第1当接面をガイド面として円滑に回動させることによって、互いに隣接する止水板の起立部同士の接続角度を容易に調整することができ、所望形状の止水壁を短時間のうちに構築することができる。
【0013】
上記止水板において、第1接続部は、第1当接面の上端部に受止部を有している一方、第2接続部は、第2当接面の上端部に係止部を有している場合には、互いに隣接する止水板において、他方の止水板における第2接続部の係止部を一方の止水板における第1接続部の受止部に係止又は引っ掛けた状態にして、他方の止水板を一方の止水板の受止部を中心にして位置決めした上で、他方の止水板を一方の止水板の受止部を中心にして回動させることによって、互いに隣接する止水板同士を所望の接続角度にて接続させて所望形状を有する止水壁を容易に構築することができる。
【0014】
上記止水板において、第1接続部の受止部は円環状に形成されている場合には、互いに隣接する止水板において、一方の止水板の受止部の任意の部分に他方の止水板の係止部を係止又は引っ掛けた上で、一方の止水板の第1接続部を中心にして他方の止水板を回動変位させることによって、互いに隣接する止水板をその起立部を所望の接続角度でもって容易に接続することができる。
【0015】
上記止水板において、第1接続部の受止部に杭部材を打ち込むことによって、第2接続部の係止部を上記第1部材の受止部に固定させるように構成して場合には、受止部に杭部材を打ち込むという簡単な作業でもって、複数個の止水板を左右方向に連続的に接続一体化して止水壁を構築することができる。
【0016】
上記止水板において、止水板の底部は、その上面に上側係合段部が形成され且つ下面に下側係合段部が形成されており、左右方向に互いに隣接して接続される止水板において、上側に重ね合わせて配設される止水板の底部の下側係合段部は、左右方向に接続される止水板の起立部の少なくとも一の接続角度にて、下側に重ね合わせて配設される止水板の底部の上側係合段部の所定部位に係止するように構成されている場合には、互いに隣接する止水板において、底部に形成された上下係合段部が部分的に互いに係合しており、止水板に加わる水圧によって起立部同士の接続角度が不用意に変化することを低減することができ、止水壁が変形することを概ね防止し、止水壁は優れた止水効果を奏することができる。
【0017】
上記止水板において、上側に重ね合わせて配設される止水板の底部の下側係合段部は、左右方向に接続される止水板の起立部の少なくとも一の接続角度にて、下側に重ね合わせて配設される止水板の底部の外周縁の所定部位に係止するように構成されている場合には、互いに隣接する止水板の起立部の接続角度が止水板に加わる水圧によって不用意に変化することを低減することができ、止水壁が変形することを概ね防止して、止水壁に優れた止水効果を付与することができる。
【0018】
上記止水板において、止水板の底部に形成された上下係合段部は、上下方向に投影した時の形状が同一形状に形成されている場合には、複数個の止水板を上下方向に積み重ねた状態にすると、下側にある止水板の底部の上側係合段部に、上側にある止水板の底部の下側係合段部が略合致した状態となり、複数個の止水板を上下高さを低くした状態に積み重ねることができ、保管スペースを節約することができると共に、複数個の止水板を小さな容積でもって所望の止水壁構築面に容易に且つ効率よく搬送して止水壁の構築を図ることができる。
【0019】
上記止水板において、第1接続部の受止部には係止突部が形成されていると共に、第2接続部の係止部は、上記係止突部に係止する係止片を有しており、左右方向に隣接して接続される止水板において、上記第1接続部の係止突部と上記第2接続部の係止部の係止片との係止による回動規制方向と、底部の上下係合段部同士の係止による回動規制方向とが反対方向となるように構成されている場合には、上記第1接続部の係止突部と上記第2接続部の係止部の係止片との係止と、底部の上下係合段部同士の係合とによって、互いに左右方向に接続された止水板の起立部同士を所望の接続角度でもって強固に固定させることができ、止水板に加わる水圧にもかかわらず、止水壁の変形を概ね防止して、優れた止水効果を奏する止水壁を構築することができる。
【0020】
上記止水板において、底部の上下面には複数個の上下係合段部がそれぞれ形成されており、左右方向に接続される止水板の起立部同士を少なくとも一の接続角度にて接続した状態において、上側に重ね合わせて配設される止水板の底部に形成された少なくとも一の下側係合段部は、その一部の形状が、下側に重ね合わせられて配設される止水板の底部に形成された一の上側係合段部の一部の形状に合致して形成されている場合には、互いに重ね合わせられる止水板の底部に形成された上下係合段部同士を部分的に合致させた状態により強固に係合させることができ、互いに左右方向に接続された止水板同士をその起立部が所望の接続角度となるようにより強固に固定させ、止水板に加わる水圧にもかかわらず、止水壁の変形を概ね防止して優れた止水効果を奏する止水壁を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の止水板を示した斜視図である。
図2】止水板を示した平面図である。
図3】止水板を示した斜視図である。
図4】止水板を示した斜視図である。
図5】D-D線端面図である。
図6】止水板を示した底面図である。
図7】左右方向に止水板を接続させた状態を示した平面図である。
図8】左右方向に止水板を接続させた状態を示した平面図である。
図9】止水板の第1接続部の受止部に第2接続部の係止部を係止させた状態を示した斜視図である。
図10】左右方向に止水板を接続させた状態を示した平面図である。
図11】エンド部材を示した斜視図である。
図12】エンド部材を示した斜視図である。
図13】止水板を用いて構築された止水壁を示した平面図である。
図14】止水板を左右に接続させた状態を示した斜視図である。
図15】エンド部材を用いて止水壁を構築する要領を示した平面図である。
図16】エンド部材を用いて止水壁を構築する要領を示した平面図である。
図17】エンド部材を用いて止水壁を構築した状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の止水板の一例を図面を参照しつつ説明する。止水板Aは、図1~4に示したように、底部1と、この底部1の後部(好ましくは後端縁部)に上方に向かって一体的に設けられた起立部2とを有している。
【0023】
底部1は、平面横長方形状の中央部1aの左右端部のそれぞれに扇形状の左右部1b、1cを結合させた形状を有し、概ね直線状に形成された後端縁11の左右両端から前方に向かって互いに離間する方向に広がった直線状の両側縁12、13を有している。そして、底部1は、その前端縁14において、中央部14aを略直線状に形成していると共に、左右端部14b、14cを凸円弧状に形成している。
【0024】
底部1は、後述するように、止水板A、Aを左右方向に連続的に接続させた状態において、左右方向に隣接する止水板A、Aの底部1、1の対向端部(左右部1b、1c)同士が重なり合い又は対向端縁同士がその略全長に亘って当接可能に構成されている。底部1における左右部1b、1cの前端縁の左右幅は、左右方向に接続する止水板A、Aの起立部2、2同士の接続角度αに応じて適宜、調整されればよい。従って、図1~4に示した止水板Aは、その底部1の左右部1b、1cの前端縁の左右幅が相違しているが同一幅であってもよい。
【0025】
なお、起立部の接続角度αとは、左右方向に接続される止水板Aの起立部2の前面(背面)が形成する平面(起立部2の前面(背面)に凹凸部が形成されている場合、起立部2の前面(背面)から凹凸部を捨象して得られる平坦面とする)同士のなす角度(0°≦α≦90°)である。例えば、下記の要領で特定される。一の止水板の左右のそれぞれに止水板を第1接続部及び第2接続部を用いて接続した後であって杭部材による固定前の状態において、中央の止水板を基準として左右に接続した止水板を回動させた時の左右の止水板の回動中心同士を結ぶ直線を止水板の起立部の基準線Lとする。左右方向に接続させた止水板の起立部の基準線L、L同士がなす角度(0°≦α≦90°)を起立部の接続角度αとする。
【0026】
底部1は、その上面に複数個の上側係合段部4(41、42)が形成され且つ下面にも複数個の下側係合段部5(51、52)が形成されている。上下係合段部4、5は、上側係合段部4と下側係合段部5とが係脱自在に係合可能で且つ垂直な係合面4a、5aを有している(図5参照)。
【0027】
図1~3に示した止水板Aにおいては、底部1の上面には2個の上側係合段部4は形成されている。左側の上側係合段部(第1上側係合段部)41は、底部1の中央部1aの後端縁部から左側部1bの前端縁に向かって左方向に曲線を描きながら形成されている。具体的には、第1上側係合段部41は、前端部41bを除いた主体部41aが右方に突出した平面凸円弧状に形成されていると共に、前端部41bは、主体部41aの前端に屈曲部41cを介して接続し且つ底部1の前端縁に達して僅かに右方向に突出した平面凸円弧状に形成されている。
【0028】
また、底部1の上面に形成された右側の上側係合段部(第2上側係合段部)42は、底部の右側端縁13の前部から中央部14aの前端縁の左側部に向かって左方に曲線を描きながら形成されている。具体的には、第2上側係合段部42は、左側部42bを除いた主体部42aが前方に突出した平面凸円弧状に形成されていると共に、左側部42bは、主体部42aの左端に屈曲部42cを介して接続し且つ底部1の中央部1aの前端縁に達して僅かに前方に突出した平面凸円弧状に形成されている。
【0029】
そして、図6に示したように、底部1の下面にも2個の下側係合段部5が形成されている。下側係合段部5は、平面から見て、上側係合段部4を僅かに左方に平行移動させた位置に形成され且つ同一形状に形成されている。
【0030】
詳細には、底部1の下面に形成された左側の下側係合段部(第1下側係合段部)51は、平面から見て、第1上側係合段部41と同一形状に形成されている。第1下側係合段部51は、底部1の中央部1aの後端縁部から左側部1bの前端縁に向かって左方向に曲線を描きながら形成されている。具体的には、第1下側係合段部51は、前端部51bを除いた主体部51aが右方に突出した平面凸円弧状に形成されていると共に、前端部51bは、主体部51aの前端に屈曲部51cを介して接続し且つ底部1の前端縁に達して僅かに右方に突出した平面凸円弧状に形成されている。
【0031】
底部1の下面に形成された右側の下側係合段部(第2下側係合段部)52は、平面から見て、第2上側係合段部42と同一形状に形成されている。第2下側係合段部52は、底部の右側端縁13の前部から中央部14aの前端縁の左側部に向かって左方に曲線を描きながら形成されている。具体的には、第2下側係合段部52は、左側部52bを除いた主体部52aが前方に突出した平面凸円弧状に形成されていると共に、左側部52bは、主体部52aの左端に屈曲部52cを介して接続し且つ底部1の中央部1aの前端縁に達して僅かに前方に突出した平面凸円弧状に形成されている。
【0032】
図7に示したように、第2上側係合段部42と第1下側係合段部51とは、それらの一部分の形状が合致するように形成されている。具体的には、第1下側係合段部51における主体部51aの後端部を除いた部分(第1下側係合段部51の後端部を除いた残余部分)と、第2上側係合段部42における左側部42bの前側部を除いた部分(第2上側係合段部42の前端部を除いた残余部分)とが同一形状となるように形成されている。
【0033】
図7に示すように、第2下側係合段部52の左側部52bは、底部1の中央部1aにおける前端縁の右端部1a1から底部1の右側部1cにおける前端縁の左端部1c1に至る形状と同一形状に形成され又は同一形状である部分を有している。
【0034】
更に、図8に示したように、第1下側係合段部51の主体部51aにおける長さ方向の中央部51a1は、第2上側係合段部42の主体部42aの右端部42a1の形状と同一形状に形成されている。また、第2下側係合段部52の左側部52bは、その一部分(前端部を除いた残余部分)52b1が、底部1における右側部1cの前端縁の右端部1c2の形状と同一形状に形成されている。
【0035】
そして、図7及び図8に示したように、止水板A、Aを左右方向に所定の起立部の接続角度αでもって接続一体化させた状態において、第2下側係合段部52が、底部1の右側部1cにおける前端縁に当接するように形成されている。
【0036】
上述のように、止水板Aにおける起立部2の少なくとも一の接続角度αでもって左右方向に隣接して接続された止水板において、下側にある底部1に形成された何れかの上側係合段部4の一部及び/又は底部1の前端縁が、上側にある底部1に形成された何れかの下側係合段部5の一部に係合した状態となり、止水板A、A同士がそれらの起立部2、2の接続角度αが大きく方向に変位することを概ね抑制するように構成されている。
【0037】
止水板Aの底部1の下面、好ましくは、底部1の下面前端部には、弾性体から形成されたシール部材1dが配設一体化されており、このシール部1dによって止水板Aを載置する止水壁構築面Bに形成された凹凸を吸収して止水板Aを止水壁構築面B上にできるだけ隙間が生じないように載置可能に構成している。図5では、止水板Aの底部1の前端部にシール部1dを配設一体化した場合を示したが、底部1の下面の他の部分にシール部を配設一体化してもよい。なお、シール部材1dを構成している弾性体は、止水板Aの使用環境下において弾性復元可能な弾性を有しておればよい。
【0038】
シール部材を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、非膨張単体シール材(未加硫ブチルゴム、ポリ塩化ビニル)、非膨張複合シール材(クロロプレンゴムを芯材とし且つ未加硫ブチルゴムを粘着材として組み合わせたシール材)、水膨張単体シール材(クロロプレンゴムに高吸水性ポリマーを混合した均質材料のシール材)、水膨張複合シール材(例えば、水膨張単体シール材とクロロプレンゴムとを組み合わせたシール材)などが挙げられる。このような材料は、柔軟性(可撓性、弾性)を有する材料、例えば、合成樹脂材料(ゴム、エラストマ、柔軟性樹脂など)で形成されている。例えば、独立発泡型の気泡を多く含むゴム材料で、温度変化に対する劣化が少なく、耐摩耗性のある材料で構成することが好ましい。一例として、EPDMゴム発泡体であるエプトシールや中空ゴムを用いることができる。
【0039】
止水板Aの底部1の後部(好ましくは後端部)には、その左右方向の全長に亘って上方における僅かに斜め後方に傾斜した状態に起立部2が突設されている。底部1を平面から見た時の表面積が、起立部2を前方から見た時の表面積よりも大きくなるように構成されており、止水板Aを用いて構築された止水壁Cによって水をせき止めた状態において、止水板Aの底部1に加わる水の全圧力及び止水板Aの重量の合計が、止水板Aの起立部2に加わる水の全圧力よりも大きくなるようにして、止水板Aをその底部1が止水壁構築面B上に載置され且つ起立部2が上方に起立した状態に安定的に載置されるように構成されている。
【0040】
止水板Aの起立部2の高さは、30cm以上が好ましく、50cm以上がより好ましく、70cm以上がより好ましい。止水板Aの起立部2の高さは、200cm以下が好ましく、150cm以下がより好ましく、120cm以下がより好ましい。
【0041】
止水板Aの起立部2における右端部には第1接続部21が形成されている。第1接続部21は、止水板Aの起立部2の右端部を前方に向かって膨出させることによって、円錐台の外周面から形成され且つ前方に露出した凸円弧状の第1当接面21aを有している。第1当接面21aは、水平方向に沿った断面が前方に向かって突出し且つ下方から上方に向かって漸次、左右幅が狭くなっていると共に僅かに斜め後方に向かって傾斜した凸円弧状面に形成されている。第1当接面21aは、左右方向に接続される止水板A、Aにおいて、一方の止水板Aの起立部2を基準とした時の他方の止水板Aの起立部2の変位方向に凸円弧状に(図7における下方に向かって突出した状態に)湾曲形成されている。
【0042】
一方、止水板Aの起立部2の左端部には第2接続部22が形成されている。第2接続部22は、止水板Aの起立部2の左端部を上下方向の略全長に亘って前方に向かって膨出させることによって、凹円弧状で且つ後方に露出した第2当接面22aを有している(図1及び図4参照)。第2当接面22aは、第1当接面21aの曲面形状と略同一形状に形成されており、第2当接面22aを第1当接面21aに前方から重ね合わせると、第1当接面21aと第2当接面22aとの対向面同士がその上下方向の全長に亘って当接して概ね密着した状態となり、第1当接面21aと第2当接面22aの対向面間からの漏水は概ね防止されるように構成されている。
【0043】
また、第1接続部21は、その上端に後方に向かって突出した状態にすり鉢状の受止部21bを有している。第1接続部21の受止部21bの上端開口端縁には、一定幅の円環状のフランジ部21cが外方に向かって水平状に形成されており、後述する第2接続部22の係止部22bが係脱自在に係止可能に構成されている。
【0044】
一方、第2接続部22の上端には、第1接続部21の受止部21bのフランジ部21cに係脱自在に係止する係止部22bが形成されている。係止部22bは、第2接続部22の上端の全長から後方に向かって水平状に突設され且つ第1接続部21の受止部21bに係止部22bを係止させた状態において第1接続部21の受止部21bのフランジ部21c上に載置される係止板部22cと、この係止板部22cの後端から後方における斜め下方に延設され且つ第1接続部1の受止部21bに第2接続部22の係止部22bを係止させた状態において受止部21bのすり鉢状の傾斜面21fに沿って配設される凹円弧状の係止傾斜部22dとを有している。
【0045】
第2接続部22の係止部22bの係止板部22cは、一定幅を有し且つ第1接続部の受止部21bにおける円環状のフランジ部21cと同一曲率半径にて湾曲した平面円弧状に形成されている。第2接続部22の係止部22bは、その係止板部22cを第1接続部21の受止部21bのフランジ部21cから僅かに浮かせた状態で、第1接続部21の受止部21bの傾斜面21fを第2接続部22の係止部22bの係止傾斜部22dの誘導面として第1接続部21の受止部21bのフランジ部21cの周方向に移動可能に構成されている。
【0046】
また、第1接続部21の受止部21bの中央部には、杭部材6を打ち込むための貫通孔21eが上下方向に貫通した状態に形成されており、受止部21bの上端開口部を通じて貫通孔21eに杭部材6を打ち込むことによって、受止部21bのフランジ部21c(又は係止突部21d)に、この受止部21bに係止させた係止部22bの係止板部22cを圧着させて、第1接続部21の受止部21bに、第2接続部22の係止部22bを係止させた状態にて固定一体化させるように構成されている。なお、杭部材6は、その下半部61が弾性復元可能なゴム部材から構成されており、杭部材6を第1接続部21の受止部21b内に打ち込むことにより、杭部材6のゴム部材の弾性復元力によって、第1接続部21の受止部21bに、第2接続部22の係止部22bを圧着させるように構成されている。
【0047】
更に、受止部21bのフランジ部21c上面における前方(底部1側)部分には、フランジ部21cの周方向に所定間隔ごとに複数個の係止突部21dが突設されている一方、第2接続部22の係止部22bの係止板部22cの左端縁には下方に向かって係止片22eが突設されており、第1接続部21の受止部21bに第2接続部22の係止部22bを係止させた状態において、第2接続部22の係止部22bの係止片22eが第1接続部21の受止部21bの係止突部21dに係止可能に構成されている。
【0048】
上記止水板Aでは、起立部2の右端部に第1接続部21を、左端部に第2接続部22を形成した場合を説明したが、起立部2の左端部に第1接続部21を、右端部に第2接続部22を形成してもよい。
【0049】
また、上記止水板Aでは、起立部2の右端部を膨出させて第1接続部21を形成した場合を説明したが、起立部2の右端部に、弾性体から形成された第1接続部を配設一体化させてもよい。なお、弾性体は、止水板Aの使用環境下にて弾性復元可能な弾性を有しておればよく、上述したシール部材と同様の材料を用いることができる。
【0050】
また、上記止水板Aでは、底部1に2個ずつ係合段部を形成した場合を説明したが、底部1に形成される上下係合段部4、5はそれぞれ、1個又は3個以上であってもよい。底部に形成される上下係合段部4、5の形状は同一である必要はなく相違していてもよいし、上下係合段部4、5の数は互いに相違してもよい。
【0051】
また、左右方向に互いに隣接する止水板A、Aを載置する止水壁構築面Bの高さが相違している場合には、互いに隣接する止水板A、Aの底部1、1の上下高さが相違し、一方の止水板Aの第1接続部21の受止部21bに他方の止水板Aの第2接続部22の係止部22bを係止させることができず、隣接する止水板A、Aの対向面間に隙間が形成され、この隙間から漏水が生じる。
【0052】
このような場合は、高さが相違する止水壁構築面B上に載置され且つ互いに左右方向に隣接する止水板A、Aの対向部のそれぞれにエンド部材7を着脱自在に装着し、エンド部材7同士を密着させて止水壁構築面Bの高さの相違を吸収すればよい。
【0053】
図11及び図12に示したように、エンド部材7は、扇状の底部71と、底部71の後部(好ましくは後端縁部)から上方における斜め後方に僅かに傾斜した状態に突設された起立部72a、72bとを有していると共に、起立部72a、72bの対向部間には、前方に向かって膨出させることによって当接部73が形成されている。止水板Aに装着した状態において、エンド部材7の扇状の底部71と、止水板Aの底部1との対向端部同士が部分的に重なり合うように構成されている。エンド部材7を止水板Aに装着した状態において、エンド部材7の起立部72a、72bを止水板Aの起立部2に密着させると、エンド部材7の起立部72a(72b)と止水板Aの起立部2とはこれらの対向面において全面的に概ね密着した状態となるように構成されている。
【0054】
エンド部材7の当接部73は、水平方向に沿った断面が、前方に向かって突出し且つ下方から上方に向かって漸次、左右幅が狭くなっていると共に僅かに斜め後方に向かって傾斜した凸円弧状に形成されている。
【0055】
エンド部材7の当接部73の前方側の周面は、円錐台の外周面から形成され且つ前方に露出した凸円弧状の第1当接面73aに形成されている一方、エンド部材7の当接部73の後方側の周面は、凹円弧状で且つ後方に露出した第2当接面73bに形成されている。
【0056】
エンド部材7の当接部73の第2当接面73bは、止水板Aの第1当接面21aの曲面形状と略同一形状に形成されており、エンド部材7の第2当接面73bを止水板Aの第1当接面21aに前方から重ね合わせると、止水板Aの第1当接面21aとエンド部材7の第2当接面73bとの対向面同士がその上下方向の全長に亘って当接して概ね密着した状態となり、止水板Aの第1当接面21aとエンド部材7の第2当接面73bの対向面間からの漏水は概ね防止されるように構成されている。
【0057】
同様に、エンド部材7の当接部73の第1当接面73aは、止水板Aの第2当接面22aの曲面形状と略同一形状に形成されており、エンド部材7の第1当接面73aに止水板Aの第2当接面22aを前方から重ね合わせると、止水板Aの第2当接面22aとエンド部材7の第1当接面73aとの対向面同士がその上下方向の全長に亘って当接して概ね密着した状態となり、止水板Aの第2当接面22aとエンド部材7の第1当接面73aの対向面間からの漏水は概ね防止されるように構成されている。
【0058】
また、エンド部材7の当接部73の上端には、止水板Aの第1接続部における受止部21bに係脱自在に係止可能な係止部73cが一体的に形成されている。エンド部材7の係止部73cは、当接部73の平面円弧状の上端の全長から後方に向かって水平状に突設され且つ止水板Aの第1接続部21の受止部21bにエンド部材7の係止部73cを係止させた状態において、止水板Aの第1接続部21における受止部21bのフランジ部21c上に載置される平面円弧状の係止板部73dと、この係止板部73dの後端から後方における斜め下方に延設され且つ止水板Aの第1接続部1の受止部21bにエンド部材7の係止部73cを係止させた状態において受止部21bのすり鉢状の傾斜面21fに沿って配設される凹円弧状の係止傾斜部73eとを有している。
【0059】
そして、エンド部材7の係止板部73dの幅は、止水板Aの第1接続部21における受止部21bのフランジ部21cの幅と、止水板Aの第2接続部22における係止板部22cの幅との間の幅を有しており、エンド部材7の係止板部73dに、止水板Aの第2接続部22の係止部22bを係脱自在に係止可能に構成していると共に、止水板Aの第1接続部21における受止部21bのフランジ部21cにエンド部材7の係止部73cを係脱自在に係止可能に構成している。
【0060】
次に、止水板Aの使用要領について説明する。止水板Aは、氾濫水の進入が発生し又は氾濫水の進入が想定される道路や建物の開口部などの所望の止水壁構築面B上に、複数個の止水板A、A・・・を左右方向に接続させることによって止水壁Cを構築するために用いられる(図13参照)。
【0061】
止水板A、Aを左右方向に接続一体化させるには、左側に配設した止水板Aの第1接続部21の第1当接面21aに、右側に配設した止水板Aの第2当接面22aを前方からあてがって当接させた状態とし、右側に配設した止水板Aの第2接続部22の係止部22bを、左側に配設した止水板Aの第1接続部21の受止部21bに係脱自在に係止させる(例えば、図14参照)。この状態において、止水板Aの第2接続部22の係止片22eが、左右方向に接続する止水板A、Aの起立部2の接続角度αに応じて、止水板Aの第1接続部21における受止部21bの複数個の係止突部21dのうちの一の係止突部21dに係止した状態とする。なお、以下において、左右に接続させる又は接続した状態の2個の止水板A、Aのうち、左側に配設された止水板Aを「左側止水板」、右側に配設された止水板Aを「右側止水板」ということがある。
【0062】
しかる後、左側止水板Aの第1接続部21の受止部21b内に杭部材6を打ち込み、右側止水板Aの第2接続部22の係止板部22cが、左側止水板Aの第1接続部21のフランジ部21c上に圧着されていると共に、左側止水板Aの第1当接面21aと、右側止水板Aの第2当接面22aとが上下方向の全長に亘って概ね当接した状態に、止水板A、A同士を相対変位しないように左右方向に接続させた状態に固定することができる。
【0063】
上述の要領で、止水板Aは、左右方向に接続する止水板A、Aの起立部2同士の接続角度αを所望角度としながら左右方向に接続させて止水壁Cを構築することができる。
【0064】
図8は、止水板A、Aをその起立部2、2が直線上に位置した状態(起立部の接続角度α=0°)となるように左右方向に接続した状態を示した平面図である。この状態において、右側止水板Aの底部1の下面に形成された第1下側係合段部51の主体部51aにおける長さ方向の中央部51a1と、左側止水板Aの底部1の上面に形成された第2上側係合段部42の主体部42aの右端部42a1の形状とが係合した状態となっている。
【0065】
更に、右側止水板Aの底部1に形成された第2下側係合段部52の左側部52bにおける前端部を除いた残余部分52b1と、左側止水板Aの底部1における右側部1cの前端縁の右端部1c2とが係合した状態となっている。
【0066】
図7は、止水板A、Aを、右側止水板Aの起立部2が左側止水板Aの起立部2よりも所定角度(起立部の接続角度α=30°)だけ前方に位置させて左右方向に接続した状態を示した平面図である。この状態において、右側止水板Aにおける第1下側係合段部51の後端部を除いた残余部分と、左側止水板Aにおける第2上側係合段部42の前端部を除いた残余部分とが係合した状態となっている。
【0067】
更に、右側止水板Aにおける第2下側係合段部52の左側部52bと、左側止水板Aにおける底部1の中央部1aにおける前端縁の右端部1a1から底部1の右側部1cにおける前端縁の左端部1c1に至る部分とが部分的に係合した状態となっている。
【0068】
上述の通り、止水板Aは、予め定められた起立部の接続角度αにおいて、左右に接続された止水板A、Aの底部1に形成された上下係合段部4、5同士、及び/又は、左側止水板Aの底部の前端縁と右側止水板の下側係合段部5とが部分的に係合しており、右側止水板Aは、左側止水板Aに対して平面から見て時計回り方向への回動が規制されている。
【0069】
更に、左側止水板Aの第1接続部21における受止部21bの係止突部21dに、右側止水板Aの第2接続部22における係止部22bの係止片22eが左側から係止しており、右側止水板Aは、左側止水板Aに対して反時計回り方向への回動が規制されている。
【0070】
従って、止水板Aの第1接続部21及び第2接続部22における杭部材6による固定に加えて、左右止水板A、Aの相対的な回動変位も上記係合によって規制されており、左右方向に接続された止水板A、Aは、これらの起立部2、2の接続角度αを確実に維持した状態に左右方向に接続されて強固な止水壁Cを構築することができる。
【0071】
左右方向に止水板A、Aを接続一体化して止水壁を構築するにあたって、左右方向に接続させる止水板A、Aの起立部2、2の接続角度αにおいて、頻繁に用いられる起立部2、2の接続角度αは概ね定まっているので、頻繁に用いられる起立部2、2の接続角度αにおいて、左右止水板A、Aの上下係合段部4、5の係合、及び/又は、一方の止水板Aの底部1の前側周縁と他方の止水板Aの下側係合段部5との係合が形成されるように、止水板Aの底部1の上下係合段部4、5が形成されていればよい。
【0072】
上記止水板Aによれば、止水板Aの第1接続部21における受止部21bの円環状のフランジ部21c上にその周方向に所定間隔ごとに複数個の係止突部21dを形成しており、これらの複数の係止突部21dのうちの所望の係止突部21dに、別の止水板Aの第2接続部22における係止部22bの係止片22eを係止させ、左側止水板Aに所望の起立部の接続角度αにて右側止水板Aを左側止水板Aに対して平面から見て反時計回りの回動が規制された状態に接続一体化させることができる。
【0073】
このように、上記止水板Aによれば、左側止水板Aを止水壁構築面B上に載置し、この左側止水板Aの受止部21bに右側止水板Aの係止部22bを引っ掛けながら、左側止水板Aの受止部21bを中心にして右側止水板Aを回動させ、右側止水板Aを左側止水板Aに対して所望の起立部の接続角度αとなるように配設した上で、左側止水板Aの受止部21b内に杭部材6を打ち込むことによって、右側止水板Aを左側止水板Aに固定させて、右側止水板Aを左側止水板Aに対して所望の接続角度αにて容易に接続一体化させることができる。
【0074】
また、図2及び図6に示したように、止水板Aの底部1上面の右端縁部にはその全長に亘って一定高さの係合縁部13aが上方に向かって突設されている一方、止水板Aの底部1下面の左端縁部及び左部1bの前端角部にはその全長に亘って一定高さの係合縁部12aが形成されている。
【0075】
そして、図10に示したように、左側止水板Aの第1接続部21における受止部21bの係止突部21dのうちの最も右側にある係止突部21dに、右側止水板Aの第2接続部22における係止部22bの係止片22eを係止させると、左側止水板Aの底部1上面の係合縁部13aと、右側止水板Aの底部1下面の係合縁部12aとが係合し、右側止水板Aを左側止水板Aに対して平面から見て反時計回りの回動が規制された状態に接続一体化させることができる。
【0076】
そして、上述の要領で左右方向に接続させた止水板A、Aの右側止水板Aを左側止水板Aとし、止水板Aの起立部の接続角度αを適宜、所望角度に調整しながら、上述と同様の要領を繰り返し行なうことによって、所望形状を有する止水壁Cを止水壁構築面B上に短時間のうちに簡単に構築することができる(図13参照)。
【0077】
また、止水壁構築面Bに段差がある場合には、図15~17に示したように、止水壁構築面Bの段差にて接続する止水板A、Aにおいて、右側の止水壁C1(以下「右側止水壁」ということがある)の左端を構成している止水板(以下「左端止水板」ということがある)A1の第2接続部22の第2当接面22aに、エンド部材7の第1当接面73aを後方から当接させる。更に、エンド部材7の係止部73cの係止板部73d上に左端止水板A1の第2接続部22の係止板部22cを載置し且つ左端止水板A1の第2接続部22の係止傾斜部22dをエンド部材7の係止部73cの係止傾斜部73eに沿った状態として、左端止水板A1の第2接続部22の係止部22bをエンド部材7の係止部73cに係脱自在に係止させた状態とし、エンド部材7をその左側起立部72aが左端止水板A1の起立部2に対して所定角度をなした状態に配設する。
【0078】
なお、図16においては、エンド部材7の左側起立部72aの基端部が左端止水板A1の底部1の左端縁に合致した状態にエンド部材7を配設した場合を示したが、エンド部材7の左側起立部72aを左端止水板A1の底部1の左端縁から離間した状態に、エンド部材7を配設してもよい。
【0079】
更に、止水壁構築面Bの段差にて接続する止水板A、Aにおいて、左側の止水壁C2(以下「左側止水壁」ということがある)の右端を構成している止水板(以下「右端止水板」ということがある)A2の第1接続部21の第1当接面21aに、エンド部材7の第2当接面73bを前方から当接させる。更に、エンド部材7の係止部73cの係止板部73dを右端止水板A2の第1接続部21のフランジ部21c上に載置し且つエンド部材7の係止部73cの係止傾斜部73eを右端止水板A1の第1接続部21の傾斜面21fに沿った状態として、右端止水板A2の第1接続部21の受止部21bにエンド部材7の係止部73cを係止させた上で、右止水板A2の第1接続部21の受止部21b内に杭部材6を打ち込み、エンド部材7を右端止水板A1に対して所定角度にて配設、固定する。
【0080】
なお、図16においては、エンド部材7の左側起立部72aが右端止水板A2の起立部2前面に密着した状態にエンド部材7を右端止水板A2上に配設した場合を示したが、エンド部材7の左側起立部72aを右端止水板A2の起立部2前面から離間した状態に、エンド部材7を右端止水板A2上に配設してもよい。
【0081】
しかる後、図16及び図17に示したように、右端止水板A1に配設したエンド部材7の左側起立部72aと、左端止水板A2に配設したエンド部材7の右側起立部72bとをこれらの対向面同士が密着した状態に配設することによって、止水壁構築面Bに形成された段差を吸収した上で、左右止水壁をエンド部材7、7を介して接続一体化して一つの止水壁Cを構築することができる。
【0082】
上述のようにして止水壁構築面B上に構築された止水壁Cは、氾濫水の進入が発生し又は氾濫水の進入が想定される道路や建物の開口部などの任意の止水壁構築面B上に構築して止水用途に用いることの他に、水の流路内に止水板を用いて止水壁を構築し、この止水壁を流路の壁部とし、流路内を流通する水などの流体の流通方向を変更して所望方向に流体を流通させるために用いられてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 底部
2 起立部
21 第1接続部
21a 第1当接面
21b 受止部
21c フランジ部
21d 係止突部
21e 貫通孔
21f 傾斜面
22 第2接続部
22a 第2当接面
22b 係止部
22c 係止板部
22d 係止傾斜部
22e 係止片
4 上側係合段部
5 下側係合段部
7 エンド部材
71 底部
73 当接部
73a 第1当接面
73b 第2当接面
73c 係止部
73d フランジ部
A 止水板
B 止水壁構築面
α 接続角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17