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特開2023-34200走行計画算出装置及び自動列車運転装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034200
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】走行計画算出装置及び自動列車運転装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/00 20220101AFI20230306BHJP
   B61L 23/16 20060101ALI20230306BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B61L27/00 K
B61L23/16 Z
B60L15/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140320
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 純子
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 創
(72)【発明者】
【氏名】服部 陽平
【テーマコード(参考)】
5H125
5H161
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125CA06
5H125CB09
5H125EE52
5H125EE55
5H161AA01
5H161BB02
5H161BB06
5H161DD01
5H161EE04
5H161EE07
5H161FF07
5H161JJ21
5H161JJ40
(57)【要約】
【課題】所定走行時間に含まれる余裕が大きいケースで走行時に再計画する場合でも、走行時間精度を悪化させることなく速やかに新しい走行計画を算出する。
【解決手段】路線情報、車両情報、計画制限速度、仮計画に基づいて惰行開始点を調整する惰行開始点調整部と、路線情報、車両情報、計画制限速度、調整された前記惰行開始点に基づいて仮計画を算出する仮計画算出部と、目標走行時間と仮計画の走行時間を比較して仮計画の採否を判定する仮計画採否判定部と、を備え、惰行開始点調整部は、目標走行時間算出部、仮計画算出部、仮計画採否判定部の算出結果、判定結果に基づいて、仮計画の走行時間が目標走行時間を下回る間は、惰行開始点の調整可能範囲を拡張したうえで惰行開始点を調整可能範囲の境界まで調整することを繰り返す。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運行情報、列車速度及び列車位置に基づいて走行計画算出範囲を決定する走行計画算出範囲決定部と、
少なくとも制限速度情報と走行計画算出範囲に基づいて計画制限速度を設定する制限速度設定部と、
運行情報と走行時間と走行計画算出範囲に基づいて目標走行時間を算出する目標走行時間算出部と、
路線情報、車両情報、前記計画制限速度、仮計画に基づいて惰行開始点を調整する惰行開始点調整部と、
路線情報、車両情報、計画制限速度、調整された前記惰行開始点に基づいて仮計画を算出する仮計画算出部と、
目標走行時間と仮計画の走行時間を比較して仮計画の採否を判定する仮計画採否判定部と、を備え、
前記惰行開始点調整部は、前記目標走行時間算出部、仮計画算出部、仮計画採否判定部の算出結果、判定結果に基づいて、仮計画の走行時間が目標走行時間を下回る間は、惰行開始点の調整可能範囲を拡張したうえで前記惰行開始点を調整可能範囲の境界まで調整することを繰り返す、
走行計画算出装置。
【請求項2】
前記惰行開始点調整部は、前記計画制限速度が下がる地点及び前記計画制限速度が上がる地点から逆引きした逆行カーブに基づいて、前記惰行開始点の調整範囲を決定する、
請求項1に記載の走行計画算出装置。
【請求項3】
前記惰行開始点調整部は、前記計画制限速度と仮計画に基づいて前記逆行カーブの逆引き起点を決定する逆引き起点決定部と、
路線情報と車両情報と計画制限速度と逆引き起点に基づいて前記逆行カーブを算出する逆行カーブ算出部と、
計画制限速度と逆行カーブと仮計画に基づいて惰行開始点を決定する惰行開始点決定部と、を備え、
前記逆引き起点決定部は、計画制限速度の変化する位置とその前後の計画制限速度のうち低い方に基づく目標速度に基づいて逆引き起点を決定し、
前記惰行開始点決定部は、前記逆行カーブと仮計画に基づいて惰行開始点を動かせる範囲を決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の走行計画算出装置。
【請求項4】
前記惰行開始点調整部は、制限速度の上がる地点から惰行するようになった地点と、制限速度が下がった地点まで惰行するようになった地点と、を、前記逆行カーブの逆引き開始点から削除する、
請求項2または請求項3に記載の走行計画算出装置。
【請求項5】
前記逆引き起点決定部は、前記計画制限速度の上がる地点の逆引き起点から惰行するようになった地点と、前記計画制限速度の下がる地点の逆引き起点まで惰行するようになった地点を、逆引き起点から削除する、
請求項3に記載の走行計画算出装置。
【請求項6】
前記惰行開始点調整部は、更新した仮計画の走行時間が前記目標走行時間を上回った場合に、前記惰行開始点を前回の仮計画に対応する第1の惰行開始点と、今回の仮計画に対応する前記第1の惰行開始点に相当する第2の惰行開始点とに基づいて、二分法により新たな惰行開始点を調整する、
請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載の走行計画算出装置。
【請求項7】
前記仮計画採否判定部は、走行時間が前記目標走行時間と一致する仮計画を走行計画として採用し、走行時間が目標走行時間を下回る仮計画を仮採用し、走行時間が目標走行時間を上回る仮計画を破棄する、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の走行計画算出装置。
【請求項8】
前記惰行開始点調整部は、前記計画制限速度の下がる地点から逆引きした逆行カーブに基づいて、定速走行途中に惰行を挿入可能な範囲を求め、惰行挿入の惰行開始点として、定速走行の途中に惰行を挿入可能な範囲の境界を設定する。
請求項2乃至請求項6のいずれか一項に記載の走行計画算出装置。
【請求項9】
逆行カーブ算出部は、計画制限速度の変化する位置と変化前の計画制限速度に基づく目標速度から前記逆行カーブを逆引きし、
惰行開始点決定部は、前記逆行カーブに基づいて惰行挿入可能範囲を求め、惰行挿入可能範囲の開始位置に惰行開始点を設定する、
請求項3に記載の走行計画算出装置。
【請求項10】
前記仮計画の走行時間が目標走行時間を下回る間は、惰行挿入可能な範囲を定速走行するのに要する時間の最大値を惰行挿入時間とし、惰行挿入時間に基づいて惰行挿入の惰行開始位置を設定し、
更新した前記仮計画の走行時間が目標走行時間を上回ったあとは、惰行挿入時間を二分法により調整し、惰行挿入時間に基づいて惰行挿入の惰行開始位置を設定する
請求項9記載の走行計画算出装置。
【請求項11】
前記惰行開始点決定部は、仮計画の走行時間が目標走行時間を下回る間は、惰行挿入可能範囲を目標速度で走行するのに要する時間の最大値を惰行挿入時間とし、仮計画の走行時間が目標走行時間を上回った後は、仮採用された仮計画と破棄されたうち最新の仮計画の惰行挿入時間の中間値に惰行挿入時間を更新し、惰行挿入可能範囲の終了位置から惰行挿入時間に目標速度で走行可能な距離だけ手前の位置と惰行挿入可能範囲の開始位置のうち進行方向側の位置を惰行開始点とする
請求項9または請求項10に記載の走行計画算出装置。
【請求項12】
惰行開始点を動かせる範囲と惰行挿入時間を拡大できる範囲を広げられなくなっても、仮計画の走行時間が目標走行時間を下回る場合は、仮計画の最高速度よりも低い速度で制限速度をリミットし、仮計画を更新する、
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の走行計画算出装置。
【請求項13】
前記惰行開始点調整部は、仮計画の走行時間が目標走行時間を下回る間、逆引き開始点を除去できなかったときに、仮計画の最高速度を下回るように計画制限速度を調整する制限速度調整部を備えた、
請求項12記載の走行計画算出装置。
【請求項14】
前記制限速度調整部は、前記制限速度を下げたことにより、更新した仮計画の走行時間が目標走行時間を上回ったあとは、制限速度をリミットする速度を二分法により調整する、
請求項13記載の走行計画算出装置。
【請求項15】
前記制限速度調整部は、計画制限速度を下げたことにより仮計画の走行時間が目標走行時間を上回ったときは、仮採用された仮計画の計画制限速度と破棄されたうち最新の仮計画の計画制限速度の中間に計画制限速度を更新する、
請求項13または請求項14に記載の走行計画算出装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の走行計画算出装置と、
列車の速度と位置を検出する速度位置検出部と、
路線情報、制限速度情報、運行情報、車両情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された路線情報、制限速度情報、運行情報、車両情報と、前記速度位置検出部の検出結果とに基づいて、駅間の走行計画を算出する走行計画算出部と、
前記速度位置検出部の検出結果と、前記走行計画算出部の算出した走行計画に基づいて、駆動/制動制御装置への制御指令を算出する制御指令算出部と、を備えた、
自動列車運転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、列車の走行計画を算出する走行計画算出装置及び自動列車運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、省エネルギーな走行を行うためには、惰行(動力による加速もブレーキによる減速もなく,車両が惰性で走行している状態)の活用が有効であることが知られている。
この省エネルギー走行を実現する方法の一つとして、駅間の目標走行時間を守れる範囲で惰行を多用する走行計画を算出して、走行計画に従って列車を制御する方法が提案されている。
【0003】
この場合において、力行とブレーキとの間に惰行を少しずつ追加したり、惰行区間を拡げるように少しずつ変化させたりすることにより走行計画において惰行を利用するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3881302号公報
【特許文献2】特許第6087805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、急行など、通過する駅がある列車では、運行ダイヤで設定されている駅間走行時間の余裕が大きい場合がある。また、次駅に停車中の先行列車の出発が遅れていて、駅手前での停車を回避するために次駅到着を遅らせる場合等には、次駅まで通常より長い走行時間で走行する必要があり、迅速に新しい走行計画を作成することが望まれる。
本発明は、所定走行時間に含まれる余裕が大きい条件で走行時に再計画を行う場合でも、走行時間精度を悪化させることなく速やかに新しい走行計画を算出できる走行計画算出装置及び自動列車運転装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の走行計画算出装置は、運行情報、列車速度及び列車位置に基づいて走行計画算出範囲を決定する走行計画算出範囲決定部と、少なくとも制限速度情報と走行計画算出範囲に基づいて計画制限速度を設定する制限速度設定部と、運行情報と走行時間と走行計画算出範囲に基づいて目標走行時間を算出する目標走行時間算出部と、路線情報、車両情報、計画制限速度、仮計画に基づいて惰行開始点を調整する惰行開始点調整部と、路線情報、車両情報、計画制限速度、調整された惰行開始点に基づいて仮計画を算出する仮計画算出部と、目標走行時間と仮計画の走行時間を比較して仮計画の採否を判定する仮計画採否判定部と、を備え、惰行開始点調整部は、目標走行時間算出部、仮計画算出部、仮計画採否判定部の算出結果、判定結果に基づいて、仮計画の走行時間が目標走行時間を下回る間は、惰行開始点の調整可能範囲を拡張したうえで惰行開始点を調整可能範囲の境界まで調整することを繰り返す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態の自動列車運転システムの概要構成ブロック図である。
図2図2は自動列車運転装置の概要動作フローチャートである。
図3図3は、走行計画算出部の概要構成ブロック図である。
図4図4は、走行計画算出部の概要動作フローチャートである。
図5図5は、惰行開始点の調整の概要処理フローチャートである。
図6図6は、第1逆行惰行カーブの逆引き起点の設定の説明図である。
図7図7は、第2逆行惰行カーブの逆引き起点の設定の説明図である。
図8図8は、逆行惰行カーブの概念説明図である。
図9図9は、逆行シミュレーション処理における位置と速度の算出処理の説明図である。
図10図10は、惰行開始位置の初期値の説明図である。
図11図11は、初期仮計画を説明する図である。
図12図12は、初期仮計画がある場合に、新たな仮計画を作成する場合の惰行開始点調整の説明図である。
図13図13は、第1仮計画を説明するための図である。
図14図14は、既に仮計画がある場合に、新たな仮計画を作成する場合の惰行開始点調整の説明図である。
図15図15は、第2仮計画を説明するための図である。
図16図16は、既に仮計画がある場合に、新たな仮計画を作成する場合の惰行開始点調整の説明図である。
図17図17は、第3仮計画を説明するための図である。
図18図18は、第3仮計画を作成した場合に、走行時間が所定の走行時間を超えてしまった場合の惰行開始点調整の説明図である。
図19図19は、第4仮計画を説明するための図である。
図20図20は、走行時間が目標走行時間以上となる仮計画がまだ1度も得られていないのに惰行開始位置が調整できなかった場合の処理説明図である。
図21図21は、制限速度を下げたあとの惰行開始点調整の説明図である。
図22図22は、第(k+1)仮計画を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に基づく実施形態の自動列車運転装置について、図面を参照しながら説明する。
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態の自動列車運転システムの概要構成ブロック図である。
図1において、列車10は、速度位置検出部11、ATC車上装置12、自動列車運転装置13、駆動/制動制御装置14、速度発電機(TG)15、車上子16、モータ17、受電器18及びブレーキ19を備えている。
【0009】
速度位置検出部11は、速度発電機(TG)のパルスや、地上子から車上子を介して受信する地上子検知情報に基づいて、列車の速度と位置を検出する。
ATC車上装置12は、列車を先行列車に衝突したり脱線したりさせないためのブレーキ指令を出力する。
【0010】
地上側に設置されたATC地上装置21は、レール(軌道回路)22を介して各閉塞区間の列車在線有無を検知し、在線状況に応じて各閉塞区間の信号現示を決定し、各閉塞区間のレール(軌道回路)を介してATC車上装置12に送信する。ATC車上装置12は、ATC地上装置からの信号現示を受電器を介して受信すると、この信号現示に基づく制限速度と、速度位置検出部11で検出した列車速度とを比較し、列車速度が制限速度を超過している場合に、駆動/制動制御装置14にブレーキ指令を出力する。
【0011】
自動列車運転装置13は、列車が制限速度を守りながら所定の走行時間で駅間を走行し、駅の所定位置(停止目標位置)に停止するための力行指令・ブレーキ指令を算出する。
駆動/制動制御装置14は、ATC車上装置12からのブレーキ指令と、自動列車運転装置13からの力行指令・ブレーキ指令と、図示しない運転士の操作する図示しない主幹制御器(マスコン)からの力行指令・ブレーキ指令とに基づいてモータ17とブレーキ19を制御する。
列車10は、モータ17とブレーキ19により車輪20が駆動/制動されてレール22上を走行する。
【0012】
自動列車運転装置13は、記憶部31、走行計画算出部32及び制御指令算出部33を備えている。
記憶部31は、路線情報、制限速度情報、運行情報及び車両情報を記憶している。
【0013】
ここで、路線情報としては、例えば、路線の勾配及び曲線(曲率半径)が挙げられる。
制限速度情報としては、例えば、各閉塞区間の制限速度情報、閉塞長(閉塞区間の距離)及び線形情報(閉塞区間の並び)が挙げられる。
運行情報としては、例えば、各駅の停止目標位置、運転種別ごとの停車駅と各駅間の所定走行時間が挙げられる。
【0014】
車両情報として、自列車の列車長、列車重量、力行指令・ブレーキ指令に対応した加速度・減速度の特性、空気抵抗・勾配抵抗・曲線抵抗の特性、電空切換開始速度・終了速度が記憶されている。
走行計画算出部32は、制御指令算出部33から受信した列車速度と位置と、記憶部31から読み出した運行情報、車両情報とに基づいて、列車が駅間を所定の走行時間で走行するための走行計画を算出する。
【0015】
制御指令算出部33は、速度位置検出部11で検出した列車の速度と位置と、記憶部31から読み出した路線情報、制限速度情報、運行情報、車両情報と、走行計画算出部32から受信した走行計画と、ATC車上装置12から受信した信号情報とに基づいて、列車を次駅まで走行させるための力行指令・ブレーキ指令を算出する。
【0016】
次に、自動列車運転装置13の動作について説明する。
図2は自動列車運転装置の概要動作フローチャートである。
自動列車運転装置13は、運転士が図示しない出発ボタンを押し下げることにより出発信号を受信すると、自動列車運転装置13の制御指令算出部33は走行制御を開始する。
【0017】
走行制御の開始は、停車位置に設置された地上子23を介して駅装置から出発指令を受信する、モニタ装置やICカードから入力された列番情報と運行ダイヤ情報と図示しない計時部からの時刻情報に基づいて出発時刻に達したと判断する、などの方法によってもよい。
走行制御中、制御指令算出部33は、列車を次駅まで走行させるための力行指令・ブレーキ指令(ノッチ)を算出する。
【0018】
まず、制御指令算出部33は、ATC車上装置12から受信した信号情報に基づいて、現在位置での制限速度を把握する(ステップS11)。
次に、制御指令算出部33は、当該列車における次停車駅に停車するための駅停止制御領域に達したか否かを判断する(ステップS12)。
【0019】
ここで、駅停止制御領域に達したか否かは、TASC(Train Automatic Stop-position Controller)開始地上子を検知したか否か、駅停止パターンが逆引きで制限速度に達する位置から一定距離だけ手前に達したか否か、等の方法により判断できる。
この場合において、駅停止制御領域に達していない場合は(ステップS12;Yes)、制御指令算出部33は、走行計画算出部32から受信した走行計画がないか否かを判断する(ステップS13)。
【0020】
制御指令算出部33は、走行計画がない場合は(ステップS13;Yes)、走行計画算出部32に走行計画(の算出)を要求し(ステップS14)、走行計画が得られるまでは、制限速度から一定速度だけ低い速度を目標にノッチを選択する(ステップS15)。
【0021】
また、制御指令算出部33は、制限速度が下がる箇所で一時的に制限速度超過を許容するいわゆる「当て運転」ではなく、制限速度を超過しないようにするいわゆる「くぐり抜け運転」を行う場合は、制限速度が下がる箇所で、手前に設置されている地上子を検知したらブレーキノッチを選択する、記憶部31から読み出した制限速度情報に基づいて引いた減速パターンに追従するようにノッチ選択する、などの方法により、制限速度を超過しないように制御する。
【0022】
そして、制御指令算出部33は、停車したか否かを判断する(ステップS16)。
制御指令算出部33は、停車した場合には、転動防止ブレーキを選択して(ステップS17)、処理を終了する。
【0023】
また、走行計画が得られている場合には(ステップS13;No)、制御指令算出部33は、最後に走行計画を要求した後で、制限速度、駅間の目標走行時間などの条件が変化したか否かを判断する(ステップS18)。
【0024】
制御指令算出部33は、最後に走行計画を要求した後で条件が変化していた場合(ステップS18;Yes)、走行計画算出部32に走行計画の算出を要求する(ステップS19)。この場合において、制御指令算出部33は、走行計画の算出要求に対する走行計画が得られないまま条件変化から一定時間が経過したら、条件に合わなくなった走行計画を破棄するようにしてもよい。
【0025】
次いで、制御指令算出部33は、制限速度と、記憶部31から読み出した車両情報と、最新の走行計画に基づいて、ノッチを選択する(ステップS20)。
ここで、ノッチの選択は、走行計画の走行曲線に追従する、走行計画で指定された走行モード(力行・定速走行・惰行・ブレーキ)に従う、などの方法で行えばよい。ただし、制御指令算出部33は、制限速度を超えないようにノッチを選択する。
【0026】
駅停止制御領域に達している場合は(ステップS12;No)、制御指令算出部33は、駅の停止目標位置に列車を停止させるためのノッチを選択する(ステップS21)。ノッチの選択は、停止パターンに追従するようにしたり、停止位置誤差の予測値が小さくなるようにしたりする、などの方法を利用すればよい。
そして制御指令算出部33は、列車が停止したら、転動防止ブレーキを選択し、走行制御を終了する。
【0027】
一方、走行計画算出部32は、制御指令算出部33から走行計画算出の要求を受信すると、走行計画を算出する。
【0028】
ここで、走行計画算出部32の動作について説明する。
図3は、走行計画算出部32の概要構成ブロック図である。
図4は、走行計画算出部の概要動作フローチャートである。
まず、走行計画算出部32は、列車の走行状態として、列車速度と位置、出発からの走行時間、信号情報を、制御指令算出部33から受信する(ステップS31)。
【0029】
走行計画算出部32の走行計画算出範囲決定部41は、制御指令算出部33から受信した列車速度と位置、記憶部31から読み出した運行情報に基づいて、列車の現在位置から次駅(停車駅または通過駅)までを、走行計画算出範囲として設定する(ステップS32)。
【0030】
制限速度設定部42は、記憶部31から読み出した制限速度情報と制御指令算出部33から受信した信号情報に基づいて、走行計画算出範囲における計画制限速度を設定する(ステップS33)。
また、制限速度設定部42は、列車在線中の閉塞区間については、制限速度情報の当該閉塞区間における制限速度と、信号情報に対応する制限速度のうち、低い方に設定する。
【0031】
目標走行時間算出部43は、記憶情報から読み出した運行情報から次駅までの所定走行時間を抽出し、制御指令算出部33から受信した出発からの走行時間を差し引いて、現在位置から次駅までの目標走行時間を算出する(ステップS34)。
惰行開始点調整部40は、逆行惰行カーブを引いて仮計画と比較し、惰行開始点の調整を行う(ステップS35)。なお、惰行開始点の調整については、詳細は後述する。
【0032】
仮計画算出部45は、仮計画がまだない場合、または、惰行開始点を調整できたか否かを判断する(ステップS36)。
【0033】
ステップS36の判断において、仮計画がまだない場合、または、惰行開始点を調整できた場合に(ステップS36;Yes)、仮計画算出部45は、列車の現在速度と位置を起点に次駅までの仮計画を算出する(ステップS37)。
【0034】
この場合において、仮計画算出部45は、計画制限速度より一定速度だけ低い速度を目標速度とし、列車の現在速度・位置からは力行モード、目標速度以上のときに計画制限速度が上がって目標速度未満になったときは力行モード、力行モードで目標速度に達したときは定速走行モード、力行モードまたは定速走行モードで惰行開始点に達したら惰行モード、目標速度を超過したらブレーキモードを設定する。
【0035】
さらに仮計画算出部45は、力行モードでは所定の力行ノッチを選択する。また、仮計画算出部45は、ブレーキモードでは所定のブレーキノッチを選択する。さらに、仮計画算出部45は、惰行モードでは惰行ノッチ(緩解)を選択する。さらにまた、仮計画算出部45は、定速走行モードでは一定速度で走行するようにノッチを選択する。
【0036】
そして、仮計画算出部45は、記憶部31から読み出した路線情報と車両情報に基づいて所定の時間刻み(例えば1秒)のシミュレーションを行って走行曲線を引く(生成する)。
【0037】
また、仮計画算出部45は、停止目標位置で停止する仮計画とするため停止目標位置からは停止パターンを逆引きし、「くぐり抜け運転」を行う場合は制限速度が下がったところから減速パターンを逆引きしておき、停止パターンや減速パターンに達したらブレーキモードを設定する。
【0038】
ここで、逆引きとは、指定した地点に指定した速度で到達するように、到達地点より手前の地点での列車の挙動(停止パターン、減速パターン等)を設定することをいう。
【0039】
仮計画採否判定部46は、目標走行時間と仮計画の走行時間を比較し(ステップS38)、仮計画の走行時間が目標走行時間未満ならば(ステップS38;<)、得られた仮計画を仮採用して(ステップS39)、惰行開始点の調整(ステップS35)に戻る。
【0040】
また、仮計画採否判定部46は、仮計画の走行時間が目標走行時間を超えるならば(ステップS38;>)、仮計画を仮採用せずに惰行開始点の調整(ステップS35)に戻る。
さらに仮計画採否判定部46は、仮計画の走行時間が目標走行時間に等しければ(所定許容時間範囲内であれば)(ステップS38;=)、仮計画を走行計画として採用し(ステップS40)、走行計画算出を終了する。
【0041】
さらにまた、仮計画採否判定部46は、ステップS36の判断において、仮計画があり、かつ、惰行開始点を調整できなかった場合も(ステップS36;No)、最後に仮採用された仮計画を走行計画として採用し(ステップS40)、走行計画算出を終了する。
【0042】
次に惰行開始点調整部40における惰行開始点の調整について、ステップS35~ステップS39の繰り返し計算に沿って説明する。
図5は、惰行開始点の調整の概要処理フローチャートである。
図5中においては、第1逆行惰行カーブRIC1を「逆行惰行カーブ1」と表記し、第2逆行惰行カーブRIC2を「逆行惰行カーブ2」と表記し、逆引き起点SP1を「逆引き起点1」と表記し、逆引き起点SP2を「逆引き起点2」と表記するものとする。また、以下の説明において、ステップS35~ステップS40のいずれかのステップを記載した場合には、図4において対応するステップを、ステップS41~ステップS60のいずれかのステップを記載した場合には、図5において対応するステップを意味するものとする。
【0043】
まず、走行計画算出要求を受信して目標走行時間と計画制限速度を設定した段階での惰行開始点調整部40における惰行開始点の調整(ステップS35)について説明する。
まず、惰行開始点決定部44は、仮採用された仮計画がまだ無いか否かを判断する(ステップS11)。
【0044】
惰行開始点決定部44は、走行計画算出要求を受信して目標走行時間と計画制限速度を設定した段階では、仮計画がまだないと判断されるので(ステップS41;Yes)、以下の手順で惰行開始点の初期値を設定する。
また、仮計画がまだないと判断された段階では、制限速度調整部49は計画制限速度を調整しないものとする。
【0045】
図6は、第1逆行惰行カーブの逆引き起点の設定の説明図である。
図6において、縦軸は、列車の速度、横軸は、列車の走行位置である。
まず、逆引き起点決定部47は、計画制限速度の上がる位置と上がる前の計画制限速度に対応する目標速度、および、計画制限速度の下がる位置と下がった後の計画制限速度に対応する目標速度を、第1逆行惰行カーブRIC1の逆引き起点SP1(=SP11~SP17)に設定する(ステップS42)。
【0046】
つまり、制限速度区間iの終端位置であって、制限速度区間iの目標速度と制限速度区間i+1の目標速度のうち、いずれか低い方の目標速度を第1逆行惰行カーブRIC1の逆引き起点SP1(図6の例の場合、SP11~SP17)に設定する。
【0047】
図7は、第2逆行惰行カーブの逆引き起点の設定の説明図である。
また、計画制限速度の変化する位置と変化する前の計画制限速度に対応する目標速度を、第2逆行惰行カーブRIC2の第2逆引き起点SP2に設定する(ステップS43)。
【0048】
つまり、制限速度区間iの終端位置であって、制限速度区間iの目標速度を第2逆行惰行カーブRIC2の逆引き起点SP2(図7の例の場合、SP21~SP27)に設定する。
【0049】
図8は、逆行惰行カーブの概念説明図である。
図8において、縦軸は、列車の走行速度、横軸は列車の走行位置である。
次に、逆行カーブ算出部48は、第1逆引き起点SP1及び第2逆引き起点SP2から、記憶部31から読み出した路線情報と車両情報に基づき所定の時間刻み(例えば1秒)で位置と時間を遡る方向のシミュレーション(逆行シミュレーション)を行う(ステップS44)。
この結果、計画制限速度一定の区間(制限速度区間)の始端位置まで、第1逆行惰行カーブRIC1と第2逆行惰行カーブRIC2を逆行シミュレーションにより逆引きして、各制限速度区間における第1逆行惰行カーブ及び第2逆行惰行カーブが生成される。
【0050】
図9は、逆行シミュレーション処理における位置と速度の算出処理の説明図である。
逆行シミュレーションにおいては、逆行カーブ算出部48は、所定の時間ステップ毎に位置及び速度を算出することになる。
より具体的には、逆行シミュレーションにおいては、逆引き起点に対応する位置及び速度に基づいて、所定の時間ステップずつ時間的に遡った時点における列車の位置及び速度を順次算出する。
【0051】
まず、逆行カーブ算出部48は、速度制限区間毎に、走行区間及び制限速度情報に基づいて逆行惰行カーブの起点、終点の位置及び上限速度を設定し、図9(A)に示すように、設定した逆行惰行カーブの起点を、今回の時間ステップの点として設定する。
そして、逆行カーブ算出部48は、今回の時間ステップの点の位置における勾配抵抗、曲線抵抗、および走行抵抗に基づいて、惰行時の加速度を算出する。
【0052】
加速度の算出後、逆行カーブ算出部48は、算出した加速度の符号を反転し、出発駅側に向かって、既定の時間(刻み時間)経過後の次回の時間ステップの点の位置と速度とを算出する。
【0053】
そして、逆行カーブ算出部48は、次回の時間ステップの点の位置での速度が上限速度以下であると判断すると、算出結果を次回の時間ステップの点の位置および速度として採用する。
【0054】
一方、逆行カーブ算出部48は、次回の時間ステップの点の位置での速度が上限速度を超過していると判断すると、今回の時間ステップの点における速度が上限速度未満か否か判断する。
【0055】
そして、逆行カーブ算出部48は、今回の時間ステップの点における速度が上限速度未満であると判断した場合には、図9(B)に示すように、上限速度到達位置を、次回の時間ステップの点における位置および速度と今回の時間ステップの点における位置および速度との間での要素内補間により算出し、算出した上限速度到達位置を次回の時間ステップの点の位置とし、次回の時間ステップの点の速度を上限速度とする。
【0056】
一方、逆行カーブ算出部48は、今回の時間ステップの点における速度が上限速度以上であると判断した場合には、図9(C)に示すように、次回の時間ステップの点の速度(=上限速度を超過した速度)を上限速度に置き換える。
【0057】
以下、同様の手順により、第1逆行惰行カーブRIC1については、進行方向に1つ手前の逆引き起点位置に達するまで、逆引きシミュレーションを実行する。
また、第2逆行惰行カーブRIC2については、当該制限速度区間の始端位置まで逆引きシミュレーションを実行する。
【0058】
次に、惰行開始点決定部44は、図8に示すように、第2逆行惰行カーブRIC2が逆引きシミュレーションにおいて目標速度から下がった後、逆引きシミュレーションにより速度が上がる範囲を、惰行挿入可能範囲ARIと設定する(ステップS45)。
続いて、惰行開始点決定部44は、惰行挿入可能範囲を目標速度で定速走行するのにかかる時間を求め、その最大値を惰行挿入時間とする(ステップS46)。
【0059】
図10は、惰行開始位置の初期値の説明図である。
そして、惰行開始点決定部44は、図10に示すように、(制限速度区間iの終端位置,制限速度区間iの目標速度)を第1惰行開始点COS1の初期値に設定し、惰行挿入可能範囲ARIの終点を第2惰行開始点COS2の初期値に設定する(ステップS47)。
【0060】
これにより、走行計画算出要求を受信して目標走行時間と計画制限速度を設定した段階での惰行開始点調整(ステップS35)が終了する。仮計画算出部45は、仮計画がまだないため(ステップS36)、初期仮計画PL0を作成する(ステップS37)。
【0061】
図11は、初期仮計画を説明する図である。
図11において、縦軸は、速度、横軸は、列車の走行位置であり、実線は、各制限速度区間VLS1~VLS7における制限速度を表し、破線は当該制限速度区間VLS1~VLS7における列車の目標速度を表している。
【0062】
仮計画算出部45は、初期仮計画PL0を以下の手順で進行方向へのシミュレーションにより作成する。(ステップS37)
まず、仮計画算出部45は、出発位置(走行中の再計画の場合は、列車現在位置・速度)及び制限速度の上がる地点からは、目標速度に達するまで力行するように初期仮計画PL0を作成する。
【0063】
そして、仮計画算出部45は、目標速度に達したら定速走行を行うように初期仮計画PL0を作成する。
また、仮計画算出部45は、目標速度を超えたら、目標速度までブレーキをかけるように初期仮計画PL0を作成する。
【0064】
また、仮計画算出部45は、駅停止用の減速パターンに達したら減速パターンに沿ってブレーキをかけるように初期仮計画PL0を作成する。
【0065】
そして、仮計画算出部45は、各制限速度区間の第1惰行開始点COS1(COS11~COS17)に達したら、目標速度に達するか制限速度区間終端まで惰行するように初期仮計画PL0を作成する。
【0066】
仮計画算出部45で初期仮計画PL0の走行曲線を生成する(引く)際は、制限速度区間の終端位置あるいは惰行挿入可能範囲の終端位置に達すると次(進行方向)の制限速度区間あるいは次の惰行挿入可能範囲における第1惰行開始点COS1及び第2惰行開始点COS2を参照するようにされている。
【0067】
このため、制限速度区間あるいは惰行挿入可能範囲の終端位置に設定された第1惰行開始点COS1あるいは第2惰行開始点COS2に達しても惰行モードを選択しないので、図11に示すように、各制限速度区間の目標速度を力行とブレーキでつないだ初期仮計画PL0、すなわち、最速走行計画が得られることとなる。
【0068】
仮計画採否判定部46は、目標走行時間と仮計画の走行時間を比較し(ステップS38)、仮計画の走行時間が目標走行時間未満なので(ステップS38;<)、得られた仮計画を仮採用して(ステップS39)、惰行開始点の調整(ステップS35)に戻る。
【0069】
次に、最速走行計画である初期仮計画PL0が得られた段階、すなわち、仮採用された仮計画があり、それまでに算出した仮計画が目標走行時間を超過したことがない場合の惰行開始点調整部40における惰行開始点の調整(ステップS35)について説明する。
まず、惰行開始点決定部44は、仮採用された仮計画がまだ無いか否かを判断する(ステップS41)。
【0070】
この場合においては、仮採用された仮計画として、初期仮計画PL0が存在しているので(ステップS41;No)、惰行開始点決定部44は、それまでに算出した仮計画(本例では、初期仮計画PL0)が目標走行時間を超過したことがあるか否かを判断する(ステップS48)。
【0071】
ステップS48の判断において、それまでに算出した仮計画が目標走行時間を超過したことがない場合は(ステップS48;Yes)、以下の手順で惰行開始点を調整する。
【0072】
まず、逆引き起点決定部47が、仮採用された最新の仮計画と計画制限速度を比較し、計画制限速度の上がる位置と速度から惰行するようになった地点に相当する第1惰行開始点COS及び計画制限速度が下がった位置と速度まで惰行するようになった地点に相当する第1逆引き起点SP1を、第1逆引き起点SP1から削除する。初期仮計画PL0には惰行で走行する部分はないので、この段階では第1逆引き起点SP1をどれも削除しない(ステップS49)。
【0073】
次に、逆行カーブ算出部48が、図8及び図9で説明したように、第1逆行惰行カーブと第2逆行惰行カーブを算出する(ステップ50の前半)。
さらに、惰行開始点決定部44が惰行開始点1と惰行開始点2を決定する(ステップS50の後半)。
【0074】
図12は、初期仮計画がある場合に、新たな仮計画を作成する場合の惰行開始点調整の説明図である。
図12において、破線矢印は、惰行開始点の移動を表している。
惰行開始点決定部44は、初期仮計画PL0における制限速度区間の中で最初に第1逆行惰行カーブRIC1と交差する地点、あるいは、速度が上回る地点まで、第1惰行開始点COS1を移動させる。さらに各惰行挿入可能範囲の始端(時間的に遡る側)まで第2惰行開始点COS2を移動させる(ステップS50)。
【0075】
より具体的には、第1制限速度区間においては、第1制限速度区間の全域で第1逆行惰行カーブRIC1を上回っているので、第1制限速度区間の始点に第1惰行開始点COS11を移動している。
また、第3制限速度区間においては、最初に第1逆行惰行カーブRIC1と交差する地点に第3惰行開始点COS13を移動する。
【0076】
また、第4制限速度区間においては、最初に第1逆行惰行カーブRIC1と交差する地点に惰行開始点COS14を移動する。
また、第5制限速度区間においては、第5制限速度区間の全域で第1逆行惰行かーぶRIC1を上回っているので、第5制限速度区間の始点に第1惰行開始点COS15を移動している。
【0077】
また、第7制限速度区間においては、第7制限速度区間の全域で第1逆行惰行かーぶRIC1を上回っているので、第7制限速度区間の始点に第1惰行開始点COS17を移動している。この結果、第6制限速度区間の第1惰行開始点COS16及び第7制限速度区間の第1惰行開始点COS17は等しくなっている。
【0078】
また、図12の例においては、惰行挿入可能範囲ARIは、惰行挿入可能範囲ARI1~ARI3の3つ存在するので、各惰行挿入可能範囲ARI1~ARI3の始点に第2惰行開始点COS21~COS23をそれぞれ移動する。
次に制限速度調整部49は、ステップS48~ステップS50の処理において第1惰行開始点を調整できたか否かを判断する(ステップS51)。
ステップS51の判断において、第1惰行開始点を調整できた場合には(ステップS51;Yes)、惰行開始点の調整(ステップS35)を終了する。
これにより、最速走行計画である初期仮計画PL0が得られた段階、すなわち、仮採用された仮計画があり、それまでに算出した仮計画が目標走行時間を超過したことがない場合の惰行開始点調整部40における惰行開始点の調整(ステップS35)が終了する。仮計画算出部45は、惰行開始点を調整できたため(ステップS36)、新しい仮計画として第1仮計画PL1を作成する(ステップS37)。
【0079】
図13は、第1仮計画を説明するための図である。
仮計画算出部45は、第1仮計画PL1を以下の手順で進行方向へのシミュレーションにより作成する。
まず、仮計画算出部45は、出発位置(走行中の再計画の場合は、列車現在位置・速度)及び制限速度の上がる地点からは、目標速度に達するまで力行するように第1仮計画PL1を作成する。
【0080】
そして、仮計画算出部45は、目標速度に達したら定速走行を行うように第1仮計画PL1を作成する。
また、仮計画算出部45は、目標速度を超えたら、目標速度までブレーキをかけるように第1仮計画PL1を作成する。
【0081】
そして、仮計画算出部45は、各制限速度区間の第1惰行開始点COS1(COS11~COS17)に達したら、目標速度に達するか制限速度区間終端まで惰行するように第1仮計画PL1を作成する。
【0082】
この場合において、惰行中に第1逆行惰行カーブRIC1に達したら、仮計画算出部45は、当該制限速度区間終端まで第1逆行惰行カーブRIC1に沿って第1仮計画PL1を作成する。
そして、仮計画算出部45は、当該制限速度区間の第2惰行開始点COS2(COS21~COS23)と惰行挿入可能範囲の終端の間に目標速度で達した場合には、再び目標速度に達するまで惰行するように第1仮計画PL1を作成する。
【0083】
この場合において、惰行中に第2逆行惰行カーブRIC2に達したら、仮計画算出部45は、目標速度に達するまで第2逆行惰行カーブRIC2に沿って第1仮計画PL1を作成する。
また、仮計画算出部45は、駅停止用の減速パターンに達したら減速パターンに沿ってブレーキをかけるように第1仮計画PL1を作成する。
【0084】
これらの結果、図13に示すような第1仮計画PL1が作成され、走行曲線が各制限速度区間において、第1逆引き起点SP1を下回らないギリギリの範囲まで一度に惰行区間を追加し、走行時間を延長することができる。
仮計画採否判定部46は、目標走行時間と仮計画の走行時間を比較し(ステップS38)、仮計画の走行時間が目標走行時間未満なので(ステップS38;<)、得られた仮計画を仮採用して(ステップS39)、惰行開始点の調整(ステップS35)に戻る。
【0085】
次に、第1仮計画PL1が得られた段階、すなわち、仮採用された仮計画に計画制限速度の上がる地点からの惰行や計画制限速度が下がった地点までの惰行があり、それまでに算出した仮計画が目標走行時間を超過したことがない場合の惰行開始点調整部40における惰行開始点の調整(ステップS35)について説明する。
まず、惰行開始点決定部44は、仮採用された仮計画がまだ無いか否かを判断する(ステップS41)。
【0086】
この場合においては、仮採用された仮計画として、第1仮計画PL1が存在しているので(ステップS41;No)、惰行開始点決定部44は、それまでに算出した仮計画(本例では、初期仮計画PL0~第1仮計画PL1)が目標走行時間を超過したことがあるか否かを判断する(ステップS48)。
【0087】
ステップS48の判断において、それまでに算出した仮計画が目標走行時間を超過したことがない場合には(ステップS48;Yes)、以下の手順で惰行開始点を調整する。
【0088】
図14は、既に仮計画がある場合に、新たな仮計画を作成する場合の惰行開始点調整の説明図である。
図14において、破線矢印は、惰行開始点の移動を表している。
まず、逆引き起点決定部47は、仮採用された最新の仮計画と計画制限速度を比較し、計画制限速度の上がる地点から惰行するようになった地点に相当する第1逆引き起点SP1及び計画制限速度が下がった地点まで惰行するようになった地点に相当する第1逆引き起点SPを、第1逆引き起点SP1から削除する(ステップS49)。
【0089】
具体的には、図14に示すように、第0制限速度区間における第1逆引き起点SP10、第4制限速度区間における第1逆引き起点SP14及び第6制限速度区間における第1逆引き起点SP16を削除する。
【0090】
次に、逆行カーブ算出部48が、図8及び図9で説明したように、第1逆行惰行カーブと第2逆行惰行カーブを算出する(ステップ50の前半)。第1逆行惰行カーブRIC1の第1逆引き起点SP1を削除した制限速度区間では、次の制限速度区間からの第1逆行惰行カーブRIC1を延長して逆引きシミュレーションを行う。すなわち、第1逆行惰行カーブRIC1の第1逆引き起点SP14を削除した第4制限速度区間では、次の制限速度区間、すなわち、第5制限速度区間からの第1逆行惰行カーブRIC1を延長して逆引きシミュレーションを行う。同様に、第1逆行惰行カーブRIC1の第1逆引き起点SP16を削除した第6制限速度区間では、次の制限速度区間、すなわち、第7制限速度区間からの第1逆行惰行カーブRIC1を延長して逆引きシミュレーションを行う。
【0091】
さらに惰行開始点決定部44は、第1仮計画PL1における制限速度区間の中で最初に第1逆行惰行カーブRIC1と交差する地点、あるいは、速度が上回る地点まで、第1惰行開始点COS1を移動させる。さらに各惰行挿入可能範囲の始端(時間的に遡る側)まで第2惰行開始点COS2を移動させる(ステップS50の後半)。
【0092】
より具体的には、第4制限速度区間においては、最初に第1逆行惰行カーブRIC1と交差する地点に惰行開始点COS14を移動する。他の制限速度区間の第1惰行開始点はこれ以上移動できない。
【0093】
また、図14の例においては、第2惰行開始点COS21~COS23もこれ以上移動できない。
【0094】
次に、制限速度調整部49は、ステップS18~ステップS20の処理において惰行開始位置を調整できたか否かを判断する(ステップS51)。
ステップS51の判断において、惰行開始位置を調整できた場合には(ステップS21;Yes)、惰行開始点の調整(ステップS35)を終了する。
これにより、第1仮計画PL1が得られた段階、すなわち、仮採用された仮計画に計画制限速度の上がる地点からの惰行や計画制限速度が下がった地点までの惰行があり、それまでに算出した仮計画が目標走行時間を超過したことがない場合の惰行開始点調整部40における惰行開始点の調整(ステップS35)が終了する。仮計画算出部45は、惰行開始点を調整できたため(ステップS36)、新しい仮計画として第2仮計画PL2を作成する(ステップS37)。
【0095】
図15は、第2仮計画を説明するための図である。
仮計画算出部45は、第2仮計画PL2を以下の手順で進行方向へのシミュレーションにより作成する。
【0096】
まず、仮計画算出部45は、出発位置(走行中の再計画の場合は、列車現在位置・速度)及び制限速度の上がる地点からは、目標速度に達するまで力行するように第2仮計画PL2を作成する。
そして、仮計画算出部45は、目標速度に達したら定速走行を行うように第2仮計画PL2を作成する。
【0097】
また、仮計画算出部45は、目標速度を超えたら、目標速度までブレーキをかけるように第2仮計画PL2を作成する。
そして、仮計画算出部45は、各制限速度区間の第1惰行開始点COS1(COS11~COS17)に達したら、目標速度に達するか制限速度区間終端まで惰行するように第2仮計画PL2を作成する。
【0098】
この場合において、惰行中に第1逆行惰行カーブRIC1に達したら、仮計画算出部45は、当該制限速度区間終端まで第1逆行惰行カーブRIC1に沿って第2仮計画PL2を作成する。
そして、仮計画算出部45は、当該制限速度区間の第2惰行開始点COS2と惰行挿入可能範囲の終端の間に目標速度で達した場合には、再び目標速度に達するまで惰行するように第2仮計画PL2を作成する。
【0099】
この場合において、惰行中に第2逆行惰行カーブRIC2に達したら、仮計画算出部45は、目標速度に達するまで第2逆行惰行カーブRIC2に沿って第2仮計画PL2を作成する。
また、仮計画算出部45は、駅停止用の減速パターンに達したら減速パターンに沿ってブレーキをかけるように第2仮計画PL2を作成する。
【0100】
これらの結果、図15に示すような第2仮計画PL2が作成され、走行曲線が各制限速度区間において、逆引き起点SP1、SP2を下回らないギリギリの範囲まで一度に惰行区間を追加し、延長することができる。
仮計画採否判定部46は、目標走行時間と仮計画の走行時間を比較し(ステップS38)、仮計画の走行時間が目標走行時間未満なので(ステップS38;<)、得られた仮計画を仮採用して(ステップS39)、惰行開始点の調整(ステップS35)に戻る。
【0101】
図16は、既に仮計画がある場合に、新たな仮計画を作成する場合の惰行開始点調整の説明図である。
図16において、破線矢印は、惰行開始点の移動を表している。
第2仮計画PL2は、第1仮計画PL1と同様に、計画制限速度の上がる地点からの惰行や計画制限速度が下がった地点までの惰行があるので、図14と同様の手順で、図16に示すように、逆引き起点決定部47は第1制限速度区間における第1逆引き起点SP11、第5制限速度区間における第1逆引き起点SP15を削除する(ステップS49)。
【0102】
逆行カーブ算出部48は第1逆行惰行カーブと第2逆行惰行カーブを算出し(ステップ50の前半)、惰行開始点決定部44は第1惰行開始点COS1(COS11~COS17)と第2惰行開始点COS2(COS21~COS23)を移動させる(ステップS50の後半)。
【0103】
制限速度調整部49は、惰行開始位置を調整できたと判断し(ステップS51;Yes)、惰行開始点の調整(ステップS35)を終了する。
【0104】
図17は、第3仮計画を説明するための図である。
惰行開始点を調整できたため(ステップS36)、続いて、仮計画算出部45は、第1仮計画PL1あるいは第2仮計画PL2の場合と同様に、第3仮計画PL3を進行方向へのシミュレーションにより作成する。
【0105】
この結果、図17に示すような第3仮計画PL3が作成され、走行曲線が各制限速度区間において、逆引き起点SP1、SP2を下回らないギリギリの範囲まで一度に惰行区間を追加し、延長することができる。
次に、算出した仮計画の走行時間が目標走行時間を超過したときの処理を説明する。
仮計画採否判定部46は、目標走行時間と仮計画の走行時間を比較し(ステップS38)、仮計画の走行時間が目標走行時間を超えるならば(ステップS38;>)、仮計画を仮採用せずに惰行開始点の調整(ステップS35)に戻る。
まず、惰行開始点決定部44は、仮採用された仮計画がまだ無いか否かを判断する(ステップS41)。
【0106】
第3仮計画PL3の走行時間が目標走行時間を超過していた場合、第3仮計画PL3は仮採用されない。仮採用された仮計画として、第2仮計画PL2が存在しているので(ステップS41;No)、惰行開始点決定部44は、それまでに算出した仮計画(本例では、初期仮計画PL0~第3仮計画PL3)が目標走行時間を超過したことがあるか否かを判断する(ステップS48)。第3仮計画PL3で目標走行時間を超過したため(ステップS48;No)、制限速度調整部49は、最新の仮計画から計画制限速度を下げた結果目標走行時間を超過したか否かを判断する(ステップS56)。計画制限速度を下げてはいないため(ステップS56;No)、第1惰行開始点と第2惰行開始点を、仮採用中の第2仮計画PL2と仮採用されなかったうちで最新の第3仮計画PL3の中間に調整する(ステップS59、S60)。
【0107】
図18は、第3仮計画を作成した場合に、走行時間が所定の走行時間を超えてしまった場合の惰行開始点調整の説明図である。
図18において、破線矢印は、惰行開始点の移動を表している。
【0108】
具体的には、今回作成した第3仮計画PL3で得られた第1逆行惰行カーブRIC1と、前回作成した第2仮計画PL2で得られた第1逆行惰行カーブRIC1と、における同一の第1惰行開始点COS1の中間の位置及び速度を第1惰行開始点COS1とする。また、惰行挿入時間を1/2にし、惰行挿入区間の終端(第2逆行惰行カーブの速度が最も下がった位置)から目標速度で惰行挿入時間に走行可能な距離だけ手前の位置を第2惰行開始位置とする。
【0109】
図19は、第4仮計画を説明するための図である。
惰行開始点を調整できたので(ステップS36;Yes)、第1仮計画PL1ないし第3仮計画PL3の場合と同様に、第4仮計画PL4を進行方向へのシミュレーションにより作成する。
第4仮計画PL4の走行時間が目標走行時間未満となった場合は(ステップS38;<)、第4仮計画PL4が新たに仮採用されるので、第1惰行開始点と第2惰行開始点を、仮採用された第4仮計画PL4と仮採用されなかったうちで最新の第3仮計画PL3の中間に調整する。
【0110】
第4仮計画PL4の走行時間が目標走行時間を超えた場合は(ステップS38;>)、第4仮計画PL4は仮採用されないので、第1惰行開始点と第2惰行開始点を、仮採用中の第2仮計画PL2と仮採用されなかったうちで最新の第4仮計画PL4の中間に調整する。
【0111】
このように、一度、目標走行時間を超過してからは、惰行開始点を、目標走行時間を超過せず仮採用された仮計画と、目標走行時間を超過して仮採用されなかったうちで最新の仮計画の中間点に調整していく。惰行開始点の移動量が充分小さくなるまで繰り返すことにより、走行時間精度の高い走行計画が得られる。
【0112】
以上の処理の結果、所定走行時間に含まれる余裕が大きい条件で走行時に再計画を行う場合でも、走行時間精度を悪化させることなく、かつ、速やかに新しい走行計画を算出できる走行計画算出装置を提供することができる。
【0113】
以上の説明は、惰行開始位置が調整できた場合のものであったが、以下においては、惰行開始位置が調整できなかった場合の処理について説明する。
【0114】
図20は、走行時間が目標走行時間以上となる仮計画がまだ1度も得られていないのに惰行開始位置が調整できなかった場合の処理説明図である。
【0115】
ステップS51の判断において、惰行開始位置を調整できなかった場合には、(ステップS51;No)、制限速度調整部49は、仮採用された最新の仮計画の最高速度の制限速度区間あるいは、所定速度より高い制限速度区間において、より低い速度で計画制限速度を制限(リミット)する、すなわち、制限速度を下げる(ステップS52)。
【0116】
図21は、制限速度を下げたあとの惰行開始点調整の説明図である。
図21において、破線矢印は、惰行開始点の移動を表している。
そして、逆引き起点決定部47は、新しい計画制限速度に基づいて、制限速度区間の終端でなくなった第2逆引き起点SP2を削除し、逆行カーブ算出部48は、第2逆行惰行カーブRIC2を逆引きシミュレーションして、惰行挿入可能範囲ARIを更新する(ステップS53)。
【0117】
続いて、逆引き起点決定部47は、新しい計画制限速度に基づいて、制限速度区間の終端でなくなった第1逆引き起点SP1を削除し、逆行カーブ算出部48は、第1逆行惰行カーブRIC1を逆引きシミュレーションする(ステップS54)。
【0118】
これにより、惰行開始点決定部44は、既に生成済みの第(k-1)仮計画PL(k-1)と第1逆行惰行カーブRIC1との交点を新たな第1惰行開始点COS1とし、惰行挿入可能範囲の始端位置を新たな第2惰行開始点COS2として決定して(ステップS55)、惰行開始点の調整(ステップS35)を終了する。
【0119】
図22は、第(k+1)仮計画を説明するための図である。
惰行開始点を調整できたので(ステップS36;Yes)、続いて仮計画算出部45は、第1仮計画ないし第3仮計画の場合と同様に、第k仮計画を進行方向へのシミュレーションにより算出する。
【0120】
すなわち、惰行開始位置が調整できなかった場合でも、計画制限速度を制限することにより、惰行開始位置の調整が可能な状態とすることができるので、走行時間が目標走行時間に達していないのに、惰行区間を追加あるいは延長できるところがなくなった場合でも走行時間を合わせることができる。
【0121】
次に、計画制限速度を下げた結果、算出した仮計画の走行時間が目標走行時間を超過した場合について説明する。
【0122】
ステップS48の判断において、それまでに算出した仮計画の走行時間が目標走行時間を超過したことがある場合は(ステップS48;No)、仮採用中の(目標走行時間を超過しなかったうち最新の)仮計画から計画制限速度を下げた結果、超過したのか否かを判断する(ステップS56)。
【0123】
ステップS56の判断において、仮採用中の仮計画から計画制限速度を下げた結果、超過した場合には(ステップS56;Yes)、仮採用中の最新の仮計画と走行時間が超過して仮採用されなかったうち最新の仮計画の中間に計画制限速度を更新する(ステップS57)。
【0124】
逆引き起点決定部47は、第1逆引き起点SP1及び第2逆引き起点SP2を更新し、逆行カーブ算出部48は、第1逆行惰行カーブRIC1及び第2逆行惰行カーブRIC2を逆引きシミュレーションし、惰行開始点決定部44は第1惰行開始点COS1及び第2惰行開始点COS2を更新し、処理を再びステップS37に移行して、仮計画算出部45が新たな仮計画を生成する。
【0125】
以上の説明のように、本実施形態によれば、惰行開始点調整部は、前記目標走行時間算出部、仮計画算出部、仮計画採否判定部の算出結果、判定結果に基づいて、仮計画の走行時間が目標走行時間を下回る間は、惰行開始点の調整可能範囲を拡張したうえで惰行開始点を調整可能範囲の境界まで調整することを繰り返し、すなわち、仮計画の走行時間が目標走行時間を下回る間は、制限速度の上がるところの逆引き起点から惰行するようになったところと制限速度の下がったところの逆引き起点まで惰行するようになったところを逆引き起点から削除しながら、逆引き起点から逆引きした逆行カーブと仮計画の交点まで惰行開始点を動かすことを繰り返し、速やかに走行時間を合わせることができる。
【0126】
さらに、仮計画の走行時間が目標走行時間を上回った後は、惰行開始点を二分法で調整し、すなわち、目標走行時間を下回ったうち最新の仮計画における惰行開始点及び目標走行時間を超過したうち最新の仮計画における惰行開始点の中間値を新たな惰行開始点とすることにより、走行時間の精度を確保し、所定走行時間に含まれる余裕が大きい条件で走行時に再計画を行う場合でも、走行時間精度を悪化させることなく、かつ、速やかに新しい走行計画を算出できる走行計画算出装置を提供することができる。
【0127】
これらの結果、走行計画の再計画時の処理時間を短くでき、ひいては、実際の走行状態に対して適切な制御指令を出力することができる。
また、再計画時の処理時間を短くしつつ、走行計画の走行時間精度を維持することができるので、早着や遅延を招くことがない。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0129】
10 列車
11 速度位置検出部
12 ATC車上装置
13 自動列車運転装置
14 制動制御装置
16 車上子
17 モータ
18 受電器
19 ブレーキ
20 車輪
21 ATC地上装置
22 レール
23 地上子
31 記憶部
32 走行計画算出部
33 制御指令算出部
40 惰行開始点調整部
41 走行計画算出範囲決定部
42 制限速度設定部
43 目標走行時間算出部
44 惰行開始点決定部
45 仮計画算出部
46 仮計画採否判定部
47 起点決定部
48 逆行カーブ算出部
49 制限速度調整部
ARI1~ARI3 惰行挿入可能範囲
COS1、COS11~COS17 第1惰行開始点
COS2、COS21~COS23 第2惰行開始点
PL0 初期仮計画
PL1 第1仮計画
PL2 第2仮計画
PL3 第3仮計画
PL4 第4仮計画
PLk 第k仮計画
PL(k+1) 第(k+1)仮計画
RIC1 第1逆行惰行カーブ
RIC2 第2逆行惰行カーブ
SP1、SP2 逆引き起点
図1
図2
図3
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図22