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特開2023-34225歯車の超仕上方法、砥石保持装置および超仕上装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034225
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】歯車の超仕上方法、砥石保持装置および超仕上装置
(51)【国際特許分類】
   B23F 19/00 20060101AFI20230306BHJP
   B24B 41/04 20060101ALI20230306BHJP
   B24B 47/02 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B23F19/00
B24B41/04
B24B47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140358
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】596066024
【氏名又は名称】西部自動機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】越智 研二
【テーマコード(参考)】
3C025
3C034
【Fターム(参考)】
3C025DD00
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB01
3C034BB33
3C034BB51
3C034BB56
3C034BB74
3C034CB04
(57)【要約】
【課題】歯車における周方向両側の歯面の超仕上を均等に行うことができる歯車の超仕上方法を提供する。
【解決手段】一対の砥石の研磨面の並びを歯車の歯すじが伸びる方向に直交させて、一対の砥石のそれぞれの研磨面を歯車の歯における両側側面の互いに異なる一方に押圧させる。続いて、一対の砥石を組としてオシレーションさせながら歯車の軸方向における一方の端から他方の端まで移動させ、このとき、歯車の歯がねじれ角を有する場合には、一対の砥石の軸方向への移動に同期させて歯車を回転させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の砥石のそれぞれの研磨面を歯車の歯における両側側面の互いに異なる一方に押圧させ、
前記一対の砥石を組としてオシレーションさせながら前記歯車の歯すじが伸びた方向における一方の端から他方の端まで移動させる
ことを特徴とする歯車の超仕上方法。
【請求項2】
一対の砥石の研磨面の並びを歯車の歯すじが伸びる方向に直交させ、
前記一対の砥石のそれぞれの前記研磨面を歯車の歯における両側側面の互いに異なる一方に押圧させ、
前記一対の砥石を組としてオシレーションさせながら前記歯車の軸方向における一方の端から他方の端まで移動させ、
前記歯車の歯がねじれ角を有するときには、前記一対の砥石の前記軸方向への移動に同期させて前記歯車を回転させる
ことを特徴とする歯車の超仕上方法。
【請求項3】
砥石保持ユニットと、
オシレーション装置に連結するためのアーム部と、を有し
前記砥石保持ユニットは、
一対の砥石の研磨面を、研磨対象物の歯車の歯における両側の歯面の互いに異なる一方に押圧するための一対の押圧装置と、
一対の前記砥石の研磨面を前記両側の歯面の互いに異なる一方に導くためのストーンヘッド部と、を備えた
ことを特徴とする砥石保持装置。
【請求項4】
一対の前記砥石のそれぞれ異なる一方に対応させた一対の前記ストーンヘッド部を備えた
請求項3に記載の砥石保持装置。
【請求項5】
前記押圧装置がエアシリンダである
請求項3または請求項4に記載の砥石保持装置。
【請求項6】
請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の砥石保持装置と、
研磨対象物の歯車を回転させるための歯車回転装置と、
前記砥石保持装置を前記歯車の歯すじが伸びた方向にオシレーションさせるオシレーション装置と、
前記オシレーション装置を前記歯車の回転軸と平行に移動させる移動装置と、を有する
ことを特徴とする超仕上装置。
【請求項7】
前記歯車の歯すじの伸びた方向とは異なる他の歯車に対応させるため、前記砥石保持装置をオシレーションさせる方向が前記歯車の回転軸となす角度を変更可能に構成された
請求項6に記載の超仕上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車における他の歯車との噛み合いに関与する歯面の超仕上に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品の表面を超仕上加工することにより、回転機器および軸受等の摺動部分の耐摩耗性(耐久性)が向上することが知られている。歯車についても、他の歯車との噛み合いに関与する歯の側面(以下「歯面」と略す)を超仕上により平滑化することで耐摩耗性が高まり、伝達効率の向上および騒音、振動、発熱の減少等が期待できる。
歯車の歯面の超仕上について、被研磨歯車を治具歯車と噛み合わせ、噛み合う歯の間に研磨シートを介在させて被研磨歯車をその回転軸方向に振動させる技術が提案されている(特許文献1)。この研磨シートの被研磨歯車側の表面には、粒径の大きな砥粒から次第に粒径が小さくなるように粒度勾配が設けられて付着されている。さらに、この技術では、被研磨歯車の歯面の超仕上において研磨シートの被研磨歯車の周方向への移動速度を治具歯車の回転速度(周速)よりもわずかだけ速くし、研磨の進行と共に研磨シートの研磨に寄与する砥粒が小さくなるようにして、荒研磨、中研磨および仕上げ研磨を一工程で行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-273624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に提案された歯車の歯面の超仕上方法は、治具歯車を駆動(回転)させることで超仕上する被研磨歯車を回転させて歯を次々に変更する。
ところで、噛み合う2つの歯車には、通常バックラッシ(両歯車の噛み合う歯の隙間)が存在する。特許文献1の超仕上技術においても治具歯車と被研磨歯車との噛み合う歯の間にバックラッシが存在すると推測され、そうであれば、少なくとも被研磨歯車の一方向のみの回転では、被研磨歯車の(周方向)両側の歯面の超仕上程度について差が生ずる(バックラッシが生ずる側で超仕上が不十分になる)虞がある。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、歯車における周方向両側の歯面の超仕上を均等に行うことができる超仕上方法、この方法に用いる砥石保持装置および超仕上装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歯車の超仕上方法は、先ず一対の砥石のそれぞれの研磨面を歯車の歯における両側側面の互いに異なる一方に押圧させる。そして、一対の砥石を組としてオシレーションさせながら歯車の歯すじが伸びた方向における一方の端から他方の端まで移動させる。
ここで「歯すじが伸びた方向」とは、平歯車では歯幅方向であり、ヘリカルギアではその歯のねじれ角方向をいう。
【0007】
本発明に係る他の歯車の超仕上方法は、一対の砥石の研磨面の並びを歯車の歯すじが伸びる方向に直交させ、一対の砥石のそれぞれの研磨面を歯車の歯における両側側面の互いに異なる一方に押圧させる。そして、一対の砥石を組としてオシレーションさせながら歯車の軸方向における一方の端から他方の端まで移動させる。歯車の歯がねじれ角を有するときには、一対の砥石の歯車の軸方向への移動に同期させて歯車を回転させる。
【0008】
ここで「砥石の歯車の軸方向への移動に同期させて歯車を回転させる」とは、「砥石の歯車の軸方向への移動」の開始とともに歯車の回転を開始し、「砥石の歯車の軸方向への移動」の停止とともに歯車の回転を停止し、且つその間の移動速度および回転速度が一定であることをいう。
本発明に係る砥石保持装置は、砥石保持ユニットと、オシレーション装置に連結するためのアーム部と、を有する。砥石保持ユニットは、一対の砥石の研磨面を、研磨対象物の
歯車の歯における両側の歯面の互いに異なる一方に押圧するための一対の押圧装置と、一対の砥石の研磨面を両側の歯面の互いに異なる一方に導くためのストーンヘッド部と、を備える。
【0009】
好ましくは、砥石保持装置は、一対の砥石のそれぞれ異なる一方に対応させた一対のストーンヘッド部を備える。
さらに好ましくは、押圧装置としてエアシリンダが用いられる。
本発明に係る超仕上装置は、前記砥石保持装置と、研磨対象物の歯車を回転させるための歯車回転装置と、砥石保持装置を歯車の歯すじが伸びた方向にオシレーションさせるオシレーション装置と、オシレーション装置を歯車の回転軸と平行に移動させる移動装置と、を有する。
【0010】
歯車の歯すじが伸びた方向が異なる他の歯車に対応させるため、好ましくは、砥石保持装置をオシレーションさせる方向と歯車の回転軸とのなす角度が変更可能に構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、歯車における周方向両側の歯面の超仕上を均等に行うことができる超仕上方法、この方法に用いる砥石保持装置および超仕上装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は超仕上装置の要部斜視図である。
図2図2は超仕上装置の平面図である。
図3図3は砥石保持装置の斜視図である。
図4図4はストーンヘッド部を示す図である。
図5図5は砥石保持装置の正面図である。
図6図6は砥石保持装置の平面図である。
図7図7は砥石保持装置の右側面図である。
図8図8は平歯車を超仕上するための超仕上装置の要部平面図である。
図9図9は平歯車の超仕上過程を示す図である。
図10図10はヘリカルギアに対する砥石保持装置の姿勢を示す図である。
図11図11はヘリカルギアの超仕上過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は超仕上装置1の要部斜視図、図2は超仕上装置1の平面図、図3は砥石保持装置2の斜視図、図4はストーンヘッド部11を示す図、図5は砥石保持装置2の正面図、図6は砥石保持装置2の平面図、図7は砥石保持装置2の右側面図である。図4において(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
超仕上装置1は、歯車回転装置3、オシレーションユニット4およびオシレーションユニット移動装置5を有する。歯車回転装置3、オシレーションユニット4およびオシレーションユニット移動装置5は、基台6に支持されている。
【0014】
歯車回転装置3は、主軸台12および心押台13からなる。
主軸台12および心押台13は、それぞれが超仕上対象の歯車の両端面を支えるためのセンタ14,15を有する。主軸台12は主軸16を備え、主軸16はサーボモータ17により正回転および逆回転する。サーボモータ17は、図示しない制御装置によりその回転が制御される。
【0015】
主軸16には所謂ケレ18が固定されている。ケレ18は、その伸びた先端が歯車の歯の間に入り込んで、センタ14,15が支える超仕上対象の歯車を主軸16とともに回転させる働きをする。
主軸台12および心押台13は、それぞれその下部に一体化されたアリガタがいずれも基台6に固定されたアリミゾ19に嵌め入れられている。主軸台12および心押台13は、センタ14,15の並び方向つまり主軸16の回転軸方向(アリミゾ19が伸びた方向)に別個に移動可能である。主軸台12および心押台13は、超仕上対象の歯車の長さ等に応じてそれぞれの位置が決定され、回転軸方向への移動がそれぞれの固定装置により制限される。
【0016】
オシレーションユニット4は、オシレーション装置7、砥石保持装置2およびベース部
21を有する。
オシレーション装置7は、偏心カム22、一対のバネ23、サーボモータ24、振動ロッド25およびフレーム26等で構成される。オシレーション装置7は、サーボモータ24が偏心カム22を回転させ、偏心カム22の回転中心の偏りによってフレーム26に対して振動ロッド25を高速微振動(オシレーション)させる。
【0017】
ここでフレーム26とは、バネ23の一端部、サーボモータ24等を固定する枠組みをいう。フレーム26は、その下部が平面視(図2)において、略正方形の一辺に鈍角二等辺三角形の底辺を一致させた五角形の形状を有する板材(以下「回動板27」という)で形成されている。フレーム26は、下部の回動板27における鈍角二等辺三角形の頂角が、平面視においてサーボモータ24から離れた側に位置する。フレーム26(の回動板27)は、後述するベース部21に非固定的に一体化されている。振動ロッド25は、一方の端がフレーム26を貫通して外方に露出する。
【0018】
オシレーション装置7の基本的な構造は、特開2002-11650号公報に記載されており公知である。
図3図7を参照して、砥石保持装置2は、いずれも一対のストーンヘッド部31,31、エアシリンダ32,32、支え(ステー)33,33、およびこれらを保持する基部34、アーム部35等からなる。
【0019】
ストーンヘッド部31は、形状が略三角柱であり、(三角柱の)「側面の一つ」から平面視(図4(b))における対向する頂角の間を、矩形断面を有する砥石孔36が貫通する。ストーンヘッド部31には、(三角柱の)「他の側面の一つ」からこの側面に直交して内部に伸びる2つの雌ネジ37,37が設けられている。雌ネジ37,37は雄ネジ39,39とともに、砥石孔36に挿入される(超仕上用)砥石Stの抜け落ちを防ぐ薄板バネ40の固定に用いられる。
【0020】
また、ストーンヘッド部31は、三角柱の高さ方向に貫通する、断面が(図4(b)において横方向に長い)長円形の間隔調整孔38,38を、砥石孔36を挟んだ両側に備えられている。
一対のストーンヘッド部31,31は、「側面の一つ」および「他の側面の一つ」以外の「孔が貫通しない側面」に平行な面について面対称である。「孔が貫通しない側面」とは、略三角柱における3つの側面のうち前述した「側面の一つ」および「他の側面の一つ」以外の側面である。
【0021】
一対のストーンヘッド部31,31は、それぞれの砥石孔36,36が下方で接近するように「孔が貫通しない側面」を対向させて、いずれも間隔調整孔38,38を貫通する固定ボルト41,41により基部34に固定される。
ストーンヘッド部31は、歯車の歯面の超仕上時に、砥石Stの研磨面を歯面に導く働きをする。ここで「導く」とは、砥石Stの研磨面を歯面に適切に当接させる意である。
【0022】
支え33は、略矩形の厚板状であって、この略矩形における長手方向に長い長円形の2つの距離調整孔43,43を有する。距離調整孔43,43は、支え33の長手方向の一方の側でこの方向に直交する方向に並ぶ。支え33は、長手方向の他方の側でエアシリンダ32を保持する。
図5を参照して、基部34は、厚板状であって、横長の矩形の下辺に上下反転した鈍角二等辺三角形を加えた五角形の形状を有する。基部34は、横長の矩形の上辺側に段46が設けられ、段46よりも上辺側が下編側に比べて厚さが薄い。(図5において)基部34は対称軸AxSについて線対称である。基部34はその厚さが薄い部分に、調整ボルト47に螺合する4つの雌ネジが設けられている。
【0023】
一対の支え33,33は、基部34の対称軸AxSについて線対称となるように、且つそれぞれの距離調整孔43,43側を近づけて、距離調整孔43,43を貫通する調整ボルト47,…,47によって基部34に一体化されている。
アーム部35は、基部34の背面に一体化され、基部34における鉛直な一方の側面(図5の左側面)側において側方に拡がる。このアーム部35における基部34の側面から側方に拡がる部分を「アーム45」という。アーム45は、基部34から離れた側に肉厚部分を有し、肉厚部分は、厚さ方向にその中心線が直交する断面円形の取付孔48を備える。
【0024】
基部34は、アジャストボルト44を操作することでアーム部35に対してその高さを変更可能である。したがって、基部34に一体化されたストーンヘッド部31,31、エアシリンダ32および砥石Stは、その高さをアジャストボルト44により調節可能である。
ここで砥石保持装置2について整理する。
【0025】
砥石保持装置2は、ストーンヘッド部31、エアシリンダ32および支え33の組み合わせ(以下「砥石保持部」という)を2組有する。それぞれのストーンヘッド部31は、その砥石孔36の中心線の一方向の延長が平面視(図5)において基部34の対称軸AxSに交わる。
エアシリンダ32は、そのロッド49が砥石孔36の中心線の他方向の延長線上に位置するように、支え33を介してアーム部35に一体化されている。なお、エアシリンダ32は、ストーンヘッド部31から離れた位置に一体化されている。
【0026】
2組の砥石保持部は、正面視(図5)において対称軸AxSについて線対称となるように配される。したがって、砥石保持装置2では、2組の砥石保持部が面対称に配されている。
超仕上に使用される砥石Stは、断面が細長い矩形の長い板状であり、ストーンヘッド部31の砥石孔36に挿入されて薄板バネ40により下方への落下が防止されている。薄板バネ40は、砥石孔36内における砥石Stの自重による動きを制限する程度の弱い付勢力である。
【0027】
砥石Stにおける砥石孔36に挿入される側の端面(以下「研磨面」という)は、砥石Stの矩形断面における長辺が(砥石Stの長さ方向に対して)前後するように傾斜する。砥石Stの研磨面側の端部は、僅かに露出する。2組の砥石保持部は面対称に配されるので、2つの砥石St,Stの研磨面は、図5においてカタカナの「ハ」字状となる。
砥石Stの長さ方向の他方の端は、エアシリンダ32のロッド49に固定されずに単に接している。
【0028】
2組の砥石保持部は、いずれもそれぞれの間隔調整孔38,38および距離調整孔43,43の大きさの範囲内において、互いの距離および砥石孔36,36の中心線がなす角度を変更可能である。
砥石保持装置2は、その取付孔48に、オシレーション装置7におけるフレーム26から突出する振動ロッド25が嵌め入れられ、オシレーション装置7により振動ロッド25とともに高速微振動する。
【0029】
図1および図2を参照して、ベース部21は、矩形の板材で形成され、その上に回動板27を回動可能に載置する。ここで、回動板27はその五角形形状の鈍角の頂点近傍をその回動軸28としてベース部21に対して回動可能である。回動軸28は、ベース部21の矩形形状の長辺近傍に位置する。
ベース部21は、その下面がオシレーションユニット移動装置5(の移動体54)に固定される。
【0030】
なお、オシレーション装置7の振動ロッド25の中心線CLと、これに一体化された砥石保持装置2における2組の砥石保持部の並び方向と、は直交する。
オシレーションユニット移動装置5は、移動体54、一対のリニアガイド55,55、ボールネジ56およびサーボモータ57を備える。一対のリニアガイド55,55は、そのレール58,58が互いに平行に且つアリミゾ19が伸びた方向(主軸16の回転軸方向)に伸びて基台6に固定されている。ボールネジ56は、そのネジ軸59がレール58,58の中間にこれらと平行に配されている。ネジ軸59の両端の軸受けは基台6に固定されている。
【0031】
移動体54は、その上面に(オシレーションユニット4の)ベース部21が固定されている。移動体54は、その下方にリニアガイド55,55のブロックおよびボールネジ56のボールナットが固定されている。
ネジ軸59の一端には、サーボモータ57が連結されている。サーボモータ57は、基台6に固定されている。サーボモータ57は、図示しない制御装置によりその回転が制御されて、移動体54をリニアガイド55,55が伸びた方向(図2の横方向)に往復移動させる。
【0032】
オシレーションユニット移動装置5は歯車回転装置3の横(図2では上)に配され、移動体54に載置されたオシレーションユニット4の回動軸28は歯車回転装置3側に位置する。
超仕上装置1は、砥石保持装置2におけるアーム部35のアーム45の長さを異ならせることにより、ヘリカルギア(はすば歯車)および平歯車(スパーギヤ)のいずれの歯面をも超仕上することができる。図1図7に記載した超仕上装置1における砥石保持装置2は、ヘリカルギア超仕上用のアーム部35を用いたものである。
【0033】
図8は平歯車W1を超仕上するための超仕上装置1の要部平面図、図9は平歯車W1の超仕上過程を示す図である。図9において、(a)~(c)は超仕上の様子を横から見た図(正面図)であり、(d)は(a)~(c)における平歯車W1の右側面図である。
平歯車W1の超仕上は、上述した砥石保持装置2におけるアーム部35を、長いアーム45Bを有するアーム部35Bに交換して行われる。図8を参照して、オシレーション装置7は、砥石保持装置2の一対の砥石保持部(ストーンヘッド部31、エアシリンダ32および支え33の組み合わせ)の並びが平歯車W1の回転軸に直交するように、回動軸28回りに回動されて姿勢が変更される(姿勢変更前は図2参照)。
【0034】
平歯車W1の歯面の超仕上は、歯ごとに行われる。
図9を参照して、歯車回転装置3は、いずれかの歯Gtの歯先が真上を向くように平歯車W1を回転させる。歯Gtの歯先を真上に向かせる動作は、例えば(主軸16に一体化された)ケレ18が平歯車W1の歯数ごとに記憶された特定の位置(例えば回転軸の直下または「回転軸を含む鉛直面」に対する特定の角度)で停止するように、制御装置が歯車回転装置3を制御して行われる。
【0035】
超仕上装置1は、歯Gtの回転軸方向における一方の端における両側の歯面に、砥石保持装置2が保持する一対の砥石St,Stの研磨面がそれぞれ当たる位置まで、オシレーションユニット移動装置5を移動させる(図9(a),(d))。砥石St,Stの研磨面の傾斜の程度は、それぞれが事前に両側の歯面の傾斜の程度に一致するよう加工されている。
【0036】
なお、一対の砥石St,Stの研磨面がそれぞれ歯Gtの両側の歯面に適切に当接するように、アジャストボルト44によって事前に砥石保持部の高さが調節される。
続いてオシレーション装置7が高速微振動を開始し、砥石保持装置2は、高速微振動しながらオシレーションユニット移動装置5により歯Gtの他方の端に向けて移動する(図9(b),(c))。このとき、歯Gtの両側の歯面が同時に超仕上される。
【0037】
一つの歯Gtの超仕上が終わると砥石保持装置2は歯Gtの外方に移動し、歯車回転装置3が歯Gtの1ピッチ分だけ平歯車W1を回転させ、同様にして次の歯Gtの超仕上が行われる。
砥石保持装置2は、超仕上の間、動作空気圧が同一の別個のエアシリンダ32,32により砥石St,Stの研磨面が歯面に適正な力で押圧される。砥石保持装置2は、2つの互いに独立した砥石St,Stを用いて同一条件を実現して歯Gtの両側の歯面を均等に超仕上することができる。通常一つの歯Gtの超仕上は砥石保持装置2が平歯車W1の軸方向に一往復して行われるが、片道移動であっても砥石St,Stは別々のエアシリンダ32,32で押圧されるので、両側の歯面を均等に超仕上することができる。
【0038】
また、砥石保持装置2では、ストーンヘッド部31とエアシリンダ32とが離れているのでロッド49の可動範囲が大きい。そのため、長時間継続する超仕上により砥石Stが摩耗しても、摩耗分がロッド49の可動範囲に収まる間は砥石Stの交換が不要である。
なお、図9において、砥石保持装置2の位置が(a)~(c)のいずれであっても、その右側面図は(d)で表せる。
【0039】
次に超仕上装置1によるヘリカルギアW2の超仕上方法について説明する。
図10はヘリカルギアW2に対する砥石保持装置2の姿勢を示す図、図11はヘリカルギアW2の超仕上過程を示す図である。図11において、(a),(d),(g)は超仕上の様子を横から見た図、(b),(e),(h)は(a),(d),(g)における特定の歯Gtと砥石St,Stとの位置関係を横から見た図、(c),(f),(i)は(b),(e),(h)におけるヘリカルギアW2の右側面図である。また、図11の(c),(f),(i)において「網掛け」で表示された部分は、ヘリカルギアW2における超仕上対象の歯Gtである。
【0040】
ヘリカルギアW2の超仕上は、図3等に記載された砥石保持装置2を備えた超仕上装置1(図2)により行われる。超仕上装置1のオシレーション装置7における振動ロッド25の中心線CLとヘリカルギアW2の回転軸とがなす角度は、ヘリカルギアW2のねじれ角と一致する。砥石保持装置のアーム45は、2つの砥石St,Stの研磨面がヘリカルギアW2の回転軸の真上となる長さを有するものが選択される。
【0041】
ヘリカルギアW2の歯面の超仕上は、平歯車W1と同様に歯Gtごとに行われる。
図11を参照して、歯車回転装置3は、いずれかの歯Gtの一方の端の歯先が上を向くようにヘリカルギアW2を回転させる。この歯車回転装置3によるヘリカルギアW2の回転は、平歯車W1の場合と同じ要領で行われる。
超仕上装置1は、砥石保持装置2の一対の砥石St,Stの研磨面が一つの歯Gtの回転軸方向の一方の端において歯Gtのそれぞれの異なる歯面に当たるよう、オシレーションユニット移動装置5を移動させる(図11(a),(b))。砥石St,Stの研磨面の傾斜の程度は、それぞれが事前に両側の歯面の傾斜の程度に一致するよう加工されている。
【0042】
次にオシレーション装置7が高速微振動を開始し、砥石保持装置2は、高速微振動しながらオシレーションユニット移動装置5によりヘリカルギアW2の回転軸方向(以下「軸方向」という)における他方の端に向けて移動する(図11(d),(g))。この移動中常に、砥石保持装置2における一対の砥石St,Stの並び方向は、平面視(図11(b),(e),(h))においてヘリカルギアW2の歯すじが伸びた方向(ねじれ角で傾斜する方向)に直交する。
【0043】
また、ヘリカルギアW2の歯Gtの超仕上では、主軸台12が、オシレーションユニット4の歯車軸方向への移動に同期させてヘリカルギアW2を回転させる。これにより、軸方向に移動する砥石St,Stは、軸方向に傾斜する並びのまま、超仕上対象である特定の歯Gtをその軸方向の一方の端から他方の端まで超仕上することができる。
ここで「同期させて」とは、ヘリカルギアW2の軸方向における長さ(砥石St,Stが移動する軸方向の距離)をL、ヘリカルギアW2の代表径(例えば基準内直径)をD、ねじれ角をθとすると、砥石St,StがL移動したときヘリカルギアW2が(L×tanθ÷πD)×360度回転するような速度でヘリカルギアW2を回転させることを言う。
【0044】
砥石St,Stが軸方向における他方の端に達する(図11(g),(h),(i))と、オシレーション装置7(オシレーションユニット4)は軸方向の一方の端側に向けて戻り始める。同時に主軸台12は、オシレーションユニット4の軸方向の一方の端側への移動に同期させてヘリカルギアW2を逆回転させる。
一つの歯Gtの超仕上が終わると砥石保持装置2は歯Gtの外方に移動し、歯車回転装置3が歯Gtの1ピッチ分だけヘリカルギアW2を回転させ、前述したと同様にして次の歯Gtの超仕上が行われる。
【0045】
ヘリカルギアW2の超仕上は、上記オシレーション装置7の移動を、ヘリカルギアW2の軸方向における一端から他端に片道のみ行わせてもよいし往復行わせてもよい。いずれの場合も、超仕上の間、動作空気圧が同一の別個のエアシリンダ32,32により砥石St,Stの研磨面が歯面に同一の適正な力で押圧されるので、両側の歯面を均等に超仕上することができる。
【0046】
砥石保持装置2は、ストーンヘッド部31に間隔調整孔38,38が設けられ且つ支え33に距離調整孔43,43が設けられていることにより、一対の砥石保持部の間隔を歯
車の歯の幅に応じて調整でき、且つ歯面の傾斜に応じて砥石Stの傾斜を調整することができる。また、砥石保持装置2は、アジャストボルト44を操作することにより、径が異なる歯車の歯を超仕上することができる。
【0047】
上述の実施形態において、ストーンヘッド部31は、超仕上時における砥石Stの研磨面の歯車に対する姿勢を維持できかつ単独で砥石Stの脱落を防止できれば、上述したストーンヘッド部31と異なる他の形態を採用することができる。
ストーンヘッド部31は、一対の砥石St,Stのそれぞれに1つとするのではなく、2つのストーンヘッド部31,31が1つに連結された形態とすることができる(図5のストーンヘッド部31C)。
【0048】
また、エアシリンダ32のロッド49と砥石Stの一方の端(研磨面とは反対側の端)とを連結し、砥石Stがロッド49と共に進退する構造とすることができる。この場合には、薄板バネ40が不要である。
その他、超仕上装置1、および超仕上装置1の各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、歯車における他の歯車との噛み合いに関与する歯面の超仕上に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 超仕上装置
2 砥石保持装置
3 歯車回転装置
5 オシレーションユニット移動装置(移動装置)
7 オシレーション装置
31,31C ストーンヘッド部
32 エアシリンダ(押圧装置)
35,35B アーム部
Gt 歯車の歯
St (超仕上用)砥石
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