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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034237
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】水害対応システム、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 31/00 20060101AFI20230306BHJP
   G06Q 50/26 20120101ALI20230306BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20230306BHJP
   E02B 3/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G08B31/00 B
G06Q50/26
G08B21/10
E02B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140383
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 宏太
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5L049
【Fターム(参考)】
5C086AA15
5C086AA46
5C086CB08
5C086DA08
5C086EA40
5C086EA45
5C086FA01
5C087AA44
5C087DD02
5C087EE08
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG14
5C087GG17
5C087GG52
5C087GG65
5C087GG66
5C087GG84
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】設備コストを低減しながらも、水害発生時の浸水範囲を、浸水の経時的な変化を含む判定時点の実態をより反映した状態でリアルタイムに特定する。
【解決手段】河川の堤防に沿って想定される破堤点毎に、破堤点にて破堤が発生した時点から所定時間毎で浸水すると予測される領域を、所定時間毎に複数の異なる浸水発生事前予測領域として記憶する記憶部K6を備え、浸水を検出する浸水検出手段Wkを浸水発生事前予測領域の異なる場所に複数備え、現時点における複数の浸水検出手段Wkの検出結果と、複数の浸水発生事前予測領域とに基づいて、現時点で浸水が発生している可能性が高い領域として高確度浸水発生領域を水害情報として導出する浸水発生領域導出部K3を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸水を含む水害に対応する水害対応システムであって、
河川の堤防に沿って想定される破堤点毎に、前記破堤点にて破堤が発生した時点から所定時間毎で前記浸水すると予測される領域を、前記所定時間毎に複数の異なる浸水発生事前予測領域として記憶する記憶部を備え、
前記浸水発生事前予測領域内の異なる場所に複数備えられ且つ前記浸水を検出する浸水検出手段の現時点における検出結果と、複数の前記浸水発生事前予測領域とに基づいて、現時点で前記浸水が発生している可能性が高い領域として高確度浸水発生領域を水害情報として導出する浸水発生領域導出部を備える水害対応システム。
【請求項2】
前記浸水発生領域導出部は、複数の前記浸水発生事前予測領域のうち、現時点において前記浸水検出手段で前記浸水が検出された地点が少なくとも1つ以上含まれる領域を、前記高確度浸水発生領域として導出する請求項1に記載の水害対応システム。
【請求項3】
前記記憶部は、前記破堤点毎に記憶される複数の異なる前記浸水発生事前予測領域毎に、前記破堤が発生した時点から前記浸水発生事前予測領域で前記浸水が発生すると予測される時点までの予測時間を紐づけて記憶しており、
前記浸水発生領域導出部は、一の前記破堤点に対応する複数の前記浸水発生事前予測領域に関し、少なくとも一つを前記高確度浸水発生領域として導出した場合、
導出された前記高確度浸水発生領域に紐づく前記予測時間よりも、短い前記予測時間が紐づく前記浸水発生事前予測領域についても前記高確度浸水発生領域として導出する請求項1又は2に記載の水害対応システム。
【請求項4】
前記記憶部は、前記浸水発生事前予測領域の標高を地点毎に記憶し、
前記浸水検出手段は、設けられている地点の地表面から水面までの高さである浸水水位を検出可能に構成されており、
前記浸水検出手段にて検出される前記浸水水位と、当該浸水水位を検出した前記浸水検出手段が設けられる地点の前記標高とから、平均海面を基準とした海抜基準浸水水位を導出する海抜基準浸水水位導出部を備え、
複数の前記浸水発生事前予測領域のうち、前記高確度浸水発生領域として導出された領域に含まれる前記浸水検出手段の検出結果から導出される前記海抜基準浸水水位と、前記高確度浸水発生領域の夫々の地点の前記標高とから、前記高確度浸水発生領域の各地点での前記浸水水位を前記水害情報として導出する浸水水位導出部を備える請求項1~3の何れか一項に記載の水害対応システム。
【請求項5】
前記浸水水位導出部は、複数の前記浸水発生事前予測領域のうち、前記高確度浸水発生領域として導出された領域に設けられる複数の前記浸水検出手段の検出結果から導出される前記海抜基準浸水水位が、複数の前記浸水検出手段毎で異なる場合、
前記高確度浸水発生領域毎で、最も大きい前記海抜基準浸水水位又は前記海抜基準浸水水位の平均値を用いて、前記高確度浸水発生領域の各地点での前記浸水水位を導出する請求項4に記載の水害対応システム。
【請求項6】
前記浸水発生事前予測領域を含む判定領域での気象に係る気象情報を取得する気象情報取得部を備え、
前記気象情報取得部が取得した前記気象情報が、以降に前記破堤が発生する可能性がある情報である場合、複数の前記浸水検出手段からの検出結果を前記浸水発生領域導出部が受信するための通信回線の接続を確立する通信回線接続部が設けられている請求項1~5の何れか一項に記載の水害対応システム。
【請求項7】
前記水害情報を導出した場合に、当該水害情報を外部へ報知する報知処理部が設けられている請求項1~6の何れか一項に記載の水害対応システム。
【請求項8】
前記浸水発生領域導出部が前記高確度浸水発生領域を導出した場合、前記高確度浸水発生領域に含まれるガス配管網における供給ガス圧を制御するガス設備を停止すると共に、前記高確度浸水発生領域に含まれる前記ガス配管網を遮断する遮断弁を遠隔で遮断する遠隔操作部を備える請求項1~7の何れか一項に記載の水害対応システム。
【請求項9】
浸水を含む水害に対応する水害対応システムの制御方法であって、
河川の堤防に沿って想定される破堤点毎に、前記破堤点にて破堤が発生した時点から所定時間毎で前記浸水すると予測される領域を、前記所定時間毎に複数の異なる浸水発生事前予測領域として記憶する記憶部を備える構成において、
前記浸水発生事前予測領域内の異なる場所に複数備えられ且つ前記浸水を検出する浸水検出手段の現時点における検出結果と、複数の前記浸水発生事前予測領域とに基づいて、現時点で前記浸水が発生している可能性が高い領域として高確度浸水発生領域を水害情報として導出する浸水発生領域導出工程を実行する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸水を含む水害に対応する水害対応システム、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、大気中の温室効果ガスの濃度上昇が引き起こす地球規模の気象現象として、局地的な温暖化や、極渦の発生・移動による局地的な寒冷化が発生している。特に、局地的な温暖化に伴う海水温の上昇により、大気に含まれる水分が増加し局地的に降雨量が増加して、河川の氾濫等を伴う水害が発生する場合がある。
このような状況に鑑みて、例えば、降雨強度情報に基づいて河川流域のハザードマップを予め作成し、作成したハザードマップを用いて種々の水防支援を行う水防支援システムが知られている(特許文献1を参照)。ここで、ハザードマップは、対象地域の地図上に、各エリアの水害の危険度を示すハザードレベルが可視化されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-192206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記水防支援システムにあっては、予め作成したハザードマップに基づいて水防支援を行うため、例えば、河川の堤防の破堤点がわかれば、水害の発生予測領域をハザードマップに従って即時に予測することができるメリットがある反面、ハザードマップでは、通常浸水が想定される最大範囲が設定されるため、実態に即した正確な浸水状況の把握が難しいという問題があった。
また、その他の浸水範囲の把握方法として、航空写真から浸水範囲を把握する方法があるが、当該方法では、実際の浸水範囲をリアルタイムに特定することができるメリットがあるものの、浸水発生時に多い暴風等の気象条件のときには、写真を取得するための飛行体を飛ばせず航空写真を取得できず浸水範囲を把握できないという問題がある他、飛行体で撮影した航空写真を取得し、当該写真を分析して浸水範囲を特定するまでに、現状では最短でも数時間がかかるという時間的な問題がある。
その他、現場を目視やドローン等で確認する方法もあるが、断片的な情報であるため、浸水範囲の特定が難しいと共に、現場の安全を確保した後に現場確認を行うことになるため、浸水発生直後の浸水範囲を把握するという即時性は低いという課題がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、設備コストを低減しながらも、水害発生時の浸水範囲を、浸水の経時的な変化を含む判定時点の実態をより反映した状態でリアルタイムに特定することができる水害対応システム、及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための水害対応システムは、浸水を含む水害に対応する水害対応システムであって、その特徴構成は、
河川の堤防に沿って想定される破堤点毎に、前記破堤点にて破堤が発生した時点から所定時間毎で前記浸水すると予測される領域を、前記所定時間毎に複数の異なる浸水発生事前予測領域として記憶する記憶部を備え、
前記浸水発生事前予測領域内の異なる場所に複数備えられ且つ前記浸水を検出する浸水検出手段の現時点における検出結果と、複数の前記浸水発生事前予測領域とに基づいて、現時点で前記浸水が発生している可能性が高い領域として高確度浸水発生領域を水害情報として導出する浸水発生領域導出部を備える点にある。
【0007】
上記目的を達成するための水害対応システムの制御方法は、浸水を含む水害に対応する水害対応システムの制御方法であって、その特徴構成は、
河川の堤防に沿って想定される破堤点毎に、前記破堤点にて破堤が発生した時点から所定時間毎で前記浸水すると予測される領域を、前記所定時間毎に複数の異なる浸水発生事前予測領域として記憶する記憶部を備える構成において、
前記浸水発生事前予測領域内の異なる場所に複数備えられ且つ前記浸水を検出する浸水検出手段の現時点における検出結果と、複数の前記浸水発生事前予測領域とに基づいて、現時点で前記浸水が発生している可能性が高い領域として高確度浸水発生領域を水害情報として導出する浸水発生領域導出工程を実行する点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、まずもって破堤点にて破堤が発生した時点から所定時間毎で前記浸水すると予測される領域を、所定時間毎に複数の異なる浸水発生事前予測領域として用いるから、経時的に変化する浸水領域を、予め複数の浸水発生事前予測領域として記憶しておくことになる。即ち、複数の浸水発生事前予測領域の夫々は、破堤点から近い順に、比較的早い段階で浸水が発生する領域から、遅い段階で浸水が発生する領域までを、破堤時点から浸水するまでの時間を含めた状態で、記憶部に記憶される。
ただし、浸水発生事前予測領域は、破堤点での破堤状況や降雨状況が、最も厳しい条件で安全サイドに設定されているため、実際の破堤状況や降雨状況に基づく浸水領域とは異なる領域となる場合が多い。
そこで、上記特徴構成においては、複数の浸水検出手段を備えて、当該浸水検出手段での浸水の発生の有無の検出結果を用いる。これにより、浸水発生領域の特定において、当該浸水検出手段の設置位置での浸水の発生の有無をリアルタイムに反映することができる。
ただし、このような浸水検出手段による浸水の有無の検出結果のみにより、浸水範囲を特定するためには、浸水が予測される領域に多くの浸水検出手段を設定する必要があり、設備コストが大きくなる。
上記特徴構成によれば、浸水発生領域導出部は、現時点における複数の浸水検出手段の検出結果と、複数の浸水発生事前予測領域とに基づいて、現時点で浸水が発生している可能性が高い領域として高確度浸水発生領域を水害情報として導出するから、例えば、浸水を検出した浸水検出手段が設置される浸水発生事前予測領域は、その全域にて浸水が発生している可能性が高いとして、高確度浸水発生領域として導出することで、浸水範囲を、浸水の経時的な変化等の判定時点の実態をより反映した状態でリアルタイムに特定できる。
また、浸水検出手段の検出結果のみならず、浸水発生事前予測領域の情報にも基づいて、高確度浸水発生領域を導出するから、浸水範囲を浸水検出手段の設置場所のみに限定せずに、その周辺に広がりを持たせた状態で導出することができ、浸水検出手段の設置数を増加させ過ぎずに、設備コストの低減を図ることができる。
以上より、設備コストを低減しながらも、水害発生時の浸水範囲を、浸水の経時的な変化を含む判定時点の実態をより反映した状態でリアルタイムに特定することができる水害対応システム、及びその制御方法を提供することができる。
【0009】
水害対応システムの更なる特徴構成は、
前記浸水発生領域導出部は、複数の前記浸水発生事前予測領域のうち、現時点において前記浸水検出手段で前記浸水が検出された地点が少なくとも1つ以上含まれる領域を、前記高確度浸水発生領域として導出する点にある。
【0010】
上記特徴構成の如く、複数の浸水発生事前予測領域のうち、現時点において浸水検出手段にて浸水が発生していると検出された地点が少なくとも1つ以上含まれる領域を、高確度浸水発生領域として導出することで、設置する浸水検出手段の数を抑制して設備コストを低減しながらも、比較的広い範囲において、浸水の経時的な変化を含む判定時点の実態をより反映した状態で浸水範囲をリアルタイムに特定できる。
【0011】
水害対応システムの更なる特徴構成は、
前記記憶部は、前記破堤点毎に記憶される複数の異なる前記浸水発生事前予測領域毎に、前記破堤が発生した時点から前記浸水発生事前予測領域で前記浸水が発生すると予測される時点までの予測時間を紐づけて記憶しており、
前記浸水発生領域導出部は、一の前記破堤点に対応する複数の前記浸水発生事前予測領域に関し、少なくとも一つを前記高確度浸水発生領域として導出した場合、
導出された前記高確度浸水発生領域に紐づく前記予測時間よりも、短い前記予測時間が紐づく前記浸水発生事前予測領域についても前記高確度浸水発生領域として導出する点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、浸水発生事前予測領域のすべてに、浸水検出手段を必ずしも設ける必要がなくなるので、より経済性の高いシステムを実現できながらも、導出される高精度浸水発生領域の信頼性は一定以上に維持できる。
【0013】
水害対応システムの更なる特徴構成は、
前記記憶部は、前記浸水発生事前予測領域の標高を地点毎に記憶し、
前記浸水検出手段は、設けられている地点の地表面から水面までの高さである浸水水位を検出可能に構成されており、
前記浸水検出手段にて検出される前記浸水水位と、当該浸水水位を検出した前記浸水検出手段が設けられる地点の前記標高とから、平均海面を基準とした海抜基準浸水水位を導出する海抜基準浸水水位導出部を備え、
複数の前記浸水発生事前予測領域のうち、前記高確度浸水発生領域として導出された領域に含まれる前記浸水検出手段の検出結果から導出される前記海抜基準浸水水位と、前記高確度浸水発生領域の夫々の地点の前記標高とから、前記高確度浸水発生領域の各地点での前記浸水水位を前記水害情報として導出する浸水水位導出部を備える点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、浸水水位導出部は、高確度浸水発生領域として導出された領域に含まれる浸水検出手段にて導出される海抜基準浸水水位と、高確度浸水発生領域の夫々の地点の標高とから、高確度浸水発生領域の各地点での浸水水位を水害情報として導出するから、高確度浸水発生領域が浸水しているか否かの情報のみならず、高確度浸水発生領域が、どの程度の浸水水位であるかを含めて導出できるから、より実態を反映した水害情報を提供できる。
【0015】
水害対応システムの更なる特徴構成は、
前記浸水水位導出部は、複数の前記浸水発生事前予測領域のうち、前記高確度浸水発生領域として導出された領域に設けられる複数の前記浸水検出手段の検出結果から導出される前記海抜基準浸水水位が、複数の前記浸水検出手段毎で異なる場合、
前記高確度浸水発生領域毎で、最も大きい前記海抜基準浸水水位又は前記海抜基準浸水水位の平均値を用いて、前記高確度浸水発生領域の各地点での前記浸水水位を導出する点にある。
【0016】
上記特徴構成の如く、浸水水位導出部が、高確度浸水発生領域毎で、最も大きい海抜基準浸水水位を用いて、高確度浸水発生領域の各地点での浸水水位を導出することで、より安全サイドで浸水水位を提示して、水害発生時の早期対応を促すことができる。
また、浸水水位導出部が、高確度浸水発生領域毎で、海抜基準浸水水位の平均値を用いて、高確度浸水発生領域の各地点での浸水水位を導出することで、より高確度浸水発生領での浸水の実態に即した浸水水位を提供することができる。
尚、高確度浸水発生領域の夫々の地点の標高、水位センサが設けられる高確度浸水発生領域の各地点以外の地点も含むものとする。
【0017】
水害対応システムの更なる特徴構成は、
前記浸水発生事前予測領域を含む判定領域での気象に係る気象情報を取得する気象情報取得部を備え、
前記気象情報取得部が取得した前記気象情報が、以降に前記破堤が発生する可能性がある情報である場合、複数の前記浸水検出手段からの検出結果を前記浸水発生領域導出部が受信するための通信回線の接続を確立する通信回線接続部が設けられている点にある。
【0018】
通常、浸水等の水害が発生した後には、通信回線が混み合うため、浸水検出手段による検出結果を浸水発生領域導出部が受け取れない等の問題が生じる場合がある。
上記特徴構成によれば、通信回線接続部は、気象情報取得部が取得した気象情報が、以降に破堤が発生する可能性がある情報(例えば、大雨洪水警報等)である場合、複数の浸水検出手段からの検出結果を浸水発生領域導出部が受信するための通信回線の接続を確立するため、浸水等の水害が発生して、通信回線が混み合う前から、確実に通信回線の接続を確立して、水害発生時には、安定的に水害情報の通信を行うことができる。
【0019】
これまで説明してきた水害対応システムは、前記水害情報を導出した場合に、当該水害情報を外部へ報知する報知処理部が設けられていることが好ましい。
【0020】
水害対応システムの更なる特徴構成は、
前記浸水発生領域導出部が前記高確度浸水発生領域を導出した場合、前記高確度浸水発生領域に含まれるガス配管網における供給ガス圧を制御するガス設備を停止すると共に、前記高確度浸水発生領域に含まれる前記ガス配管網を遮断する遮断弁を遠隔で遮断する遠隔操作部を備える点にある。
【0021】
例えば、ガス設備が、ガス配管網の二次側への供給ガス圧を制御すると共に、助動球盤を有する整圧装置である場合、水没すると、二次側への供給ガス圧が一次圧まで昇圧して、ガス使用箇所におけるガスの異常噴出等を生じる虞がある。
上記特徴構成によれば、高確度浸水発生領域が導出された場合、遠隔操作部が、高確度浸水発生領域を導出した場合、高確度浸水発生領域に含まれるガス配管網における供給ガス圧を制御するガス設備を停止すると共に、高確度浸水発生領域に含まれるガス配管網を遮断する遮断弁を遠隔で遮断するから、ガス使用箇所でのガスの異常噴出の発生を事前に防止できる。
ちなみに、遠隔操作ができないガス設備や遮断弁については、上述した報知処理部からの報知により状況を知り得た管理担当者が、現場に赴いてガス設備の停止及び遮断弁によるガス配管網の遮断を行うことになる。
尚、遮断弁は、上記高確度浸水発生領域に含まれるものに加え、当該高確度浸水発生領域に設けられるガス配管網の上流側のガス配管網に設けられる上流側遮断弁も含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る水害対応システムの概略構成図である。
図2】破堤点に対応する浸水発生事前予測領域、水位センサでの浸水検出位置、及びそれらから導出される高確度浸水発生領域を示す図である。
図3】高確度浸水発生領域を含む領域でのガス配管網、ガス設備としての整圧装置、及び遮断弁の配置を示す図である。
図4】ガス設備の一例としての整圧装置の概略構成図である。
図5】実施形態に係る水害対応システムの制御フロー図である。
図6】別実施形態に係る水害対応システムの制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係る水害対応システム100及びその制御方法は、設備コストを低減しながらも、水害発生時の浸水範囲を、浸水の経時的な変化を含む判定時点の実態をより反映した状態でリアルタイムに特定することができるものに関する。
以下、図1~5に基づいて、当該実施形態に係る水害対応システム100について説明する。
【0024】
当該実施形態に係る水害対応システム100は、ハードウェアとソフトウエアとが協働する形で実現する監視センターKを含んで構成されており、当該監視センターKは、当該監視センターKにネットワーク回線Nを介して接続される複数の水位センサW1、W2・・・Wk(k≧2の整数:浸水検出手段の一例)の計測結果を受信可能に構成されている。更に、当該水位センサWkは、設けられている地点の地表面から水面までの高さである浸水水位を検出可能に構成されている。
【0025】
当該監視センターKは、河川R(図2に図示)の堤防に沿って想定される破堤点P(図2に図示)毎に、破堤点Pにて破堤が発生した時点から所定時間毎で浸水すると予測される領域を、所定時間毎に複数の異なる浸水発生事前予測領域S(図2(a)でS1~S4)として記憶する記憶部K6を備えると共に、現時点における浸水発生事前予測領域S尚の複数の水位センサWkの検出結果と、複数の浸水発生事前予測領域Sとに基づいて、現時点で浸水が発生している可能性が高い領域として高確度浸水発生領域HS(図2に図示)を水害情報として導出する浸水発生領域導出部K3を備えている。
【0026】
記憶部K6は、所謂ハザードマップとして、破堤点P毎に記憶される複数の異なる浸水発生事前予測領域S毎に、破堤が発生した時点から浸水発生事前予測領域Sで浸水が発生すると予測される時点までの予測時間を紐づけて記憶している。即ち、通常は、破堤点Pに距離的に近い浸水発生事前予測領域Sほど短い予測時間と紐付けられる形態で記憶されている。
例えば、図2のように、破堤点Pから近い順に第1浸水発生事前予測領域S1~第4浸水発生事前予測領域S4が隣接して存在する場合、破堤点Pに近接する第1浸水発生事前予測領域S1では破堤直後から浸水が発生し、第2浸水発生事前予測領域S2では破堤後30分程度で浸水が発生し、第3浸水発生事前予測領域S3では破堤後60分程度で浸水が発生し、第4浸水発生事前予測領域S4では破堤後90分程度で浸水が発生する等のように、記憶部K6に記憶される。
【0027】
浸水発生領域導出部K3について説明を追加すると、浸水発生領域導出部K3は、複数の浸水発生事前予測領域Sのうち、現時点において水位センサWkで浸水が検出された地点が少なくとも1つ以上含まれる領域を、高確度浸水発生領域HSとして導出する。
ここで、水位センサWkで浸水が検出されるとは、予め設定された浸水判定水位(例えば、30cm:ハザードマップの最下限値)以上の水位が検出された場合をいう。
更に、浸水発生領域導出部K3は、一の破堤点Pに対応する複数の浸水発生事前予測領域Sに関し、少なくとも一つを高確度浸水発生領域HSとして導出した場合、導出された高確度浸水発生領域HSとしての浸水発生事前予測領域Sに紐づく予測時間よりも、短い予測時間が紐づく浸水発生事前予測領域Sについても高確度浸水発生領域HSとして導出する。
図2(a)を例にして説明すると、例えば、第4浸水発生事前予測領域S4にのみ水位センサWkが設けられており、第1~第3浸水発生事前予測領域S1~S3には水位センサWkが設けられていない状況において、浸水発生領域導出部K3が、第4浸水発生事前予測領域S4のみを高確度浸水発生領域HSとして導出した場合、浸水発生領域導出部K3は、第4浸水発生事前予測領域S4に紐づく予測時間よりも、短い予測時間に紐づく第1~第3浸水発生事前予測領域S1~S3についても、高確度浸水発生領域HSとして導出する。
このような制御は、これまで説明してきた浸水発生事前予測領域Sの定義から、第4浸水発生事前予測領域S4にて浸水が発生している場合、第1~第3浸水発生事前予測領域S1~S3でも浸水が発生している可能性が高いことに基づいている。
尚、当該制御を備えることにより、水位センサWkは、必ずしも、浸水発生事前予測領域Sのすべてに設けられていなくても良いことになる。
【0028】
複数の水位センサWkは、上述した複数の浸水発生事前予測領域Sに、分散して設けられており、当該実施形態においては、図3に示すように、ガス配管網Pwを形成するガス配管の二次側の圧力を所定の設定圧力に制御するガス設備としての整圧装置G1,G2・・・Gm(m≧1の整数)に隣接して設けられている。因みに、ガス配管網Pwを形成するガス配管には、図3に示すように、整圧装置Gmに加え、当該ガス配管を遮断する遮断弁V1、V2・・・Vn(nは、n≧1の整数)が設けられている。
ガス設備としての整圧装置Gmには、図示は省略するが、商用電力系統から電力が供給されると共に、補助バッテリーが設けられるのに加え、ネットワーク回線Nを介して外部と通信可能な通信機器(図示せず)が設けられている。当該通信機器及び水位センサWkは、通常時は商用電力系統から供給される電力にて駆動すると共に、商用電力系統からの電力供給が停止した場合には、補助バッテリーから電力が供給されて駆動するよう構成されている。因みに、当該補助バッテリーは、浸水時でも電力供給が可能なように、地表面から嵩上げされて配置されている。
【0029】
ここで、監視センターKの浸水発生領域導出部K3は、水位センサWkからFOMA又はLTE回線を用いて水害情報I2を受信している。水害が発生した場合、FOMA又はLTE回線は混み合うため、浸水発生領域導出部K3は水位センサWkから水害情報I2を受信できない虞がある。
そこで、当該実施形態に係る水害対応システム100では、気象情報I1を保有する気象システムKSから浸水発生事前予測領域Sを含む判定領域での気象情報I1をネットワーク回線Nを介して取得する気象情報取得部K1を備え、気象情報取得部K1が取得した気象情報I1が、以降に破堤が発生する可能性がある情報(例えば、判定領域での大雨洪水警報を含む情報等)である場合、複数の水位センサWkからの検出結果を浸水発生領域導出部K3が受信するためのFOMA又はLTE回線の接続を確立する通信回線接続部K2が設けられている。
当該通信回線接続部K2は、接続を確立した場合、少なくとも以降に破堤が発生する可能性がある気象情報I1が取得されている間、好ましくは判定領域において水害が発生する虞がある間は、接続の確立を維持し続け、水位センサWkからの水害情報I2を所定時間毎(例えば、1分毎)に取得し続ける。
【0030】
さて、上述した整圧装置Gは、浸水した場合に当該整圧装置Gの二次側のガス圧を設定圧力以上に昇圧させ、二次側の需要家に設けられるガス消費部が使用された場合に、当該ガス消費部からガスが噴出する虞がある。
詳述すると、整圧装置Gは、図4に示すように、レイノルド式のガスガバナとして構成されており、当該整圧装置Gは、1次側のガス配管PBから供給されるガスを、主器であるメインガバナ8を介して、2次側のガス配管PBから、一定の2次圧として供給する。
当該整圧装置Gは、所謂中低圧から、低圧へ減圧するガスガバナであって、地区整圧器用として使用される。メインガバナ8は、2つの弁体10を有し、その弁体10は、ダイヤフラムスピンドル11を経て、主ダイヤフラム12に連結される。この主ダイヤフラム12の下側の部屋13には、2次圧が導かれている。
更に、整圧装置Gは、メインガバナ8の一次側のガス配管PBに1次圧力調整管14を介して接続される中圧補助ガバナ15と、当該中圧補助ガバナ15に調整管16を介して接続される低圧補助ガバナ17と、当該中圧補助ガバナ15に管路18を介して接続される助動球盤19とを有する。低圧補助ガバナ17は、2次圧力調整管20を介してガス配管PBの二次側に接続されている。調整管16の管路18との接続部位より中圧補助ガバナ15の側には、ニードル弁21が介在される。メインガバナ8と助動球盤19とを連結するために、レバー22と吊棒23とが設けられ、レバー22と吊棒23とには、メインガバナ8を開くためのウエイト24が載置されている。
【0031】
当該整圧装置Gの圧力制御は、2次側の需要が全くないときには、2次圧が高いため、このとき低圧補助ガバナ17は閉止した状態となり、かつ中圧補助ガバナ15は、中間圧力に設定されているので、この圧力が調整管16を経由して助動球盤19のダイヤフラム26の下側の部屋27に伝達され、これによって吊棒23及びレバー22が押し上げられ、メインガバナ8の2つの弁体10が上昇して開孔10aを閉止している。
【0032】
2次側に需要が発生して2次圧力が低下すると、低圧補助ガバナ17が働き、助動球盤19の部屋27のガスが2次側へ流れ始める。このとき、中圧補助ガバナ15も働き始めるが、助動球盤19との間のニードル弁21による絞りにより流量が制限されるので、調整管16の中間圧力が低下し、助動球盤19のダイヤフラム26が下降して吊棒23及びレバー22が下がり、メインガバナ8が開放する。
【0033】
需要が減少して2次圧力が上昇すると、低圧補助ガバナ17が閉じ、中間圧力が上昇して、メインガバナ8が閉止することになる。2次圧力の設定は、低圧補助ガバナ17に載置される小ウエイト17aの数で調節される。
【0034】
以上の構成を有する整圧装置Gが浸水する場合、助動球盤19のダイヤフラム26の上部の部屋へ大気開放孔19aを介して水が流れ込み、その水圧によりダイヤフラム26が下降して吊棒23及びレバー22が下がり、メインガバナ8が開放し、二次側の圧力が設定圧力を超えて昇圧する虞があるのである。
【0035】
このように、整圧装置Gが浸水して二次側の圧力が設定圧力を超えて昇圧すると、二次側の需要家にて火災等の二次災害が発生する可能性があるため、浸水発生領域導出部K3にて導出された高確度浸水発生領域HSに存在する整圧装置G(図3ではG1、G2)については、停止され遮断されることが好ましい。
そこで、監視センターKには、浸水発生領域導出部K3にて導出された高確度浸水発生領域HSに整圧装置Gが位置するか否かを判定し、高確度浸水発生領域HSに位置する整圧装置Gがある場合、当該整圧装置Gへネットワーク回線Nを介して停止情報I4を送信し遠隔停止する遠隔操作部K5が設けられている。
更に、当該遠隔操作部K5は、高確度浸水発生領域HSに含まれるガス配管網Pwを遮断する遮断弁、換言すると、高確度浸水発生領域HSに位置する遮断弁V1や、高確度浸水発生領域HSに含まれるガス配管網Pwの上流側のガス配管網Pwを遮断する上流側遮断弁V2に、遮断情報I4を送信し遠隔遮断する。
ここで、監視センターKには、浸水発生領域導出部K3にて導出された高確度浸水発生領域HSの水害情報I3をモニタM等の地図上に表示したり、作業員T1,T2・・・Te(eはe≧1の整数)が所持するスマートフォンやタブレット端末へ送信し地図上に表示したりする報知処理部K4が設けられており、作業員Teは、所持するスマートフォンやタブレット端末の地図上に高確度浸水発生領域HSが表示された場合、遠隔操作ができない整圧装置Gの停止処理、遮断弁V1、上流側遮断弁V2の遮断処理を実行する。
【0036】
以下、図1、2、3、及び図5の制御フローに基づいて、当該実施形態の水害対応システム100に係る水害対応の制御方法を説明する。
〔制御フロー〕
気象情報取得部K1は、気象システムKSから所定時間毎に気象情報I1を取得しており(#01)、取得した気象情報I1が、以降に破堤が発生する可能性がある情報(例えば、判定領域での大雨洪水警報に相当する情報等)である場合(#02でYes)、以下の#03以降のステップを実行すると共に、取得した気象情報I1が、以降に破堤が発生する可能性がある情報でない場合(#02でNo)、#01のステップを繰り返す。
【0037】
気象情報取得部K1により取得された気象情報I1が以降に破堤が発生する可能性がある情報である場合(#02でYes)、通信回線接続部K2は、すべての水位センサWkと監視センターKとを接続する通信回線を確立し、当該接続を維持する(#03)。
【0038】
次に、監視センターKが、破堤点Pが発生した破堤情報を取得した場合(#04でYes)、破堤点Pに対応する複数の浸水発生事前予測領域S(図2、3でS1~S4)を記憶部K6から抽出する(#05)。一方、破堤点Pが発生した破堤情報を取得していない場合(#04でNo)、#04のステップを繰り返す。
【0039】
次に、浸水発生事前予測領域Sにおいて水位センサWkにて浸水を検出した場合(#06でYes)、浸水発生領域導出部K3は、複数の浸水発生事前予測領域S1~S4の夫々のうち、検出した浸水地点(図2(b)では水位センサW1、W2が図示される地点)から、高確度浸水発生領域HS(図2(c),図3に図示)を導出する(高確度浸水発生領域導出工程の一例)(#07)。
【0040】
高確度浸水発生領域HSが導出されると、報知処理部K4が、当該高確度浸水発生領域HSに基づく水害情報I3を報知する(#08)と共に、遠隔操作部K5が、水害情報ISに基づいて、高確度浸水発生領域HSに対応する整圧装置(図3では、整圧装置G1、G2)を停止すると共に、遮断弁(図3でV1)及び上流側遮断弁(図3でV2)を遮断する。
尚、整圧装置Gの停止と、遮断弁(図3でV1)及び上流側遮断弁(図3でV2)の遮断は、何れか一方を実行する構成としても構わない。
このとき、図3に示されるように、地図上において、高確度浸水発生領域HSに重畳しない整圧装置G3~G6は停止されず、及び高確度浸水発生領域HSの下流側の遮断弁V3は遮断されない。
【0041】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、破堤点Pを取得して、当該破堤点Pに対応する複数の浸水発生事前予測領域Sに基づいて、高確度浸水発生領域HSを導出した。
しかしながら、実際の水害発生時においては、破堤点Pが不明な状況で浸水が発生している領域のみが、その領域の住宅等からの連絡により判明している場合がある。
このような場合には、破堤点Pを取得することなく、浸水を検出する水位センサWkが設けられる浸水発生事前予測領域Sに基づいて、高確度浸水発生領域HSを導出しても構わない。
【0042】
(2)上記実施形態においては、浸水発生領域導出部K3は、一の破堤点Pに対応する複数の浸水発生事前予測領域Sに関し、少なくとも一つを高確度浸水発生領域HSとして導出した場合、導出された高確度浸水発生領域HSとしての浸水発生事前予測領域Sに紐づく予測時間よりも、短い予測時間が紐づく浸水発生事前予測領域Sについても高確度浸水発生領域HSとして導出するものとした。
しかしながら、浸水発生領域導出部K3は、導出された高確度浸水発生領域HSとしての浸水発生事前予測領域Sに紐づく予測時間よりも、短い予測時間が紐づく浸水発生事前予測領域Sについても高確度浸水発生領域HSとして導出しない構成を採用しても構わない。
【0043】
(3)上記実施形態では、記憶部K6は、所謂ハザードマップとして、破堤点P毎に記憶される複数の異なる浸水発生事前予測領域S毎に、破堤が発生した時点から経時的に浸水が発生すると予測される時点までの予測時間を紐づけて記憶している例を示した。
しかしながら、記憶部K6は、このような予測時間を記憶しない構成を採用しても構わない。
この場合、浸水発生領域導出部K3は、導出された高確度浸水発生領域HSとしての浸水発生事前予測領域Sに紐づく予測時間よりも、短い予測時間が紐づく浸水発生事前予測領域Sについても高確度浸水発生領域HSとして導出しない構成を採用することになる。
【0044】
(4)上記実施形態では、浸水検出手段は、設けられている地点の地表面から水面までの高さである浸水水位を検出可能な水位センサWkから構成した。
浸水検出手段の他の構成例としては、設けられている地点が浸水しているか否かのみを検出する浸水検知センサであっても構わない。
【0045】
(5)本発明の水害対応システム100及びその制御方法では、水位センサWkにて検出される浸水水位を用いて、高確度浸水発生領域HSの海抜基準浸水水位を導出するよう構成しても構わない。
この場合、水位センサWkは、設けられている地点の地表面から水面までの高さである浸水水位を検出可能に構成されている。
更に、監視センターKは、記憶部K6は、浸水発生事前予測領域Sの標高を地点毎に記憶し、水位センサWkにて検出される浸水水位と、当該浸水水位を検出した水位センサWkが設けられる地点の標高とから、平均海面を基準とした海抜基準浸水水位を導出する海抜基準浸水水位導出部(図示せず)を備え、複数の浸水発生事前予測領域Sのうち、高確度浸水発生領域HSとして導出された領域に含まれる水位センサWkの検出結果から導出される海抜基準浸水水位と、高確度浸水発生領域HSの夫々の地点の標高とから、高確度浸水発生領域HSの各地点での浸水水位を水害情報として導出する浸水水位導出部(図示せず)を備える。
ここで、浸水水位導出部は、複数の浸水発生事前予測領域Sのうち、高確度浸水発生領域HSとして導出された領域に設けられる複数の水位センサWkの検出結果から導出される海抜基準浸水水位が、複数の水位センサWkで異なる場合、高確度浸水発生領域HS毎で、最も大きい海抜基準浸水水位又は海抜基準浸水水位の平均値を用いて、高確度浸水発生領域HSの各地点での浸水水位を導出しても構わない。
【0046】
当該構成を採用する場合、制御方法としては、図6に示すように、図5の制御フローに加え、#07-a、#07-bを実行することになる。
即ち、#07-aのステップでは、海抜基準浸水水位導出部(図示せず)が、水位センサWkにて検出される浸水水位と、当該浸水水位を検出した水位センサWkが設けられる地点の標高とから、平均海面を基準とした海抜基準浸水水位を導出する。
更に、#07-bのステップでは、浸水水位導出部は、複数の浸水発生事前予測領域Sのうち、高確度浸水発生領域HSとして導出された領域に含まれる水位センサWkの検出結果から導出される海抜基準浸水水位と、高確度浸水発生領域HSの夫々の地点の標高とから、高確度浸水発生領域HSの各地点での浸水水位を水害情報として導出する。
【0047】
(6)上記実施形態では、高確度浸水発生領域HSが導出された場合、当該導出結果に基づいて、ガス配管網Pwに設けられる整圧装置G、遮断弁V1、上流側遮断弁V2を遮断する構成例を示した。
他の例として、高確度浸水発生領域HSが導出された場合、高確度浸水発生領域HS自体の情報を、他の防災センターへ送信したり、高確度浸水発生領域HSを含む領域へ直接スピーカ(図示せず)等により報知したりするよう構成しても構わない。
【0048】
(7)上記実施形態の制御フローの#04、#05において、破堤点Pを取得して、破堤点Pに対応する複数の浸水発生事前予測領域Sを記憶部K6から抽出する制御を実行したが、当該制御を実行することなく、#05以降の制御を実行しても構わない。
この場合、#05以降の処理では、すべての浸水発生事前予測領域Sに対して各種制御が実行されることになる。
【0049】
(8)上記実施形態における水害対応システム100により導出された高確度浸水発生領域HS等の水害情報は、整圧装置Gの停止や遮断弁V1及び上流側遮断弁V2の遮断後の復旧計画の策定において、浸水被害の大きさや浸水被害の内エリアを早期に把握する場合にも使用できる。
更に、水害情報として浸水水位を導出する場合、高確度浸水発生領域HSにおける床上浸水や床下浸水等の建物の被害の概要を把握するのにも使用できると共に、救難・消防活動の対応を検討する場合に、浸水深さ等から人的・物的被害が大きいと想定されるエリアの選定等にも使用できる。
【0050】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の水害対応システム、及びその制御方法は、設備コストを低減しながらも、水害発生時の浸水範囲を、浸水の経時的な変化を含む判定時点の実態をより反映した状態でリアルタイムに特定することができる水害対応システム、及びその制御方法として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
2 :整圧装置
100 :水害対応システム
G :整圧装置
HS :高確度浸水発生領域
I1 :気象情報
K1 :気象情報取得部
K2 :通信回線接続部
K3 :浸水発生領域導出部
K4 :報知処理部
K5 :遠隔操作部
K6 :記憶部
P :破堤点
PB :ガス配管
R :河川
S :浸水発生事前予測領域
S :浸水発生事前予測領域
V :遮断弁
W :水位センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6