IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本信号株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-報知装置 図1
  • 特開-報知装置 図2
  • 特開-報知装置 図3
  • 特開-報知装置 図4
  • 特開-報知装置 図5
  • 特開-報知装置 図6
  • 特開-報知装置 図7
  • 特開-報知装置 図8
  • 特開-報知装置 図9
  • 特開-報知装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034239
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】報知装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140385
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】青木 芳憲
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181DD03
5H181DD07
5H181FF33
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】危険性を有する移動体が監視カメラの死角に移動した場合にも適切な警告を維持することができる報知装置を提供すること。
【解決手段】報知装置10は、道路A1,A2に付帯して設けられた計測装置11から得たデータに基づいて、検出エリアDAにおいて危険性を有する着目移動体V11を検出し、着目移動体V11が検出エリアDAに入った段階で警告情報の出力を開始し、着目移動体V11が検出エリアDAの外側に出た後において危険性の継続が予測される警告維持時間Tに亘って警告情報の出力を継続する情報処理装置18を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に付帯して設けられた計測装置から得たデータに基づいて、検出エリアにおいて危険性を有する着目移動体を検出し、前記着目移動体が前記検出エリアに入った段階で警告情報の出力を開始し、前記着目移動体が前記検出エリアの外側に出た後において危険性の継続が予測される警告維持時間に亘って前記警告情報の出力を継続する情報処理装置
を備える報知装置。
【請求項2】
前記情報処理装置は、前記計測装置及び前記着目移動体の状況に基づいて、前記着目移動体に付随する死角が前記検出エリアを出ると推定されるタイミングを反映するように前記警告維持時間を設定する、請求項1に記載の報知装置。
【請求項3】
前記情報処理装置は、前記着目移動体が前記検出エリア中に存在する状況で前記着目移動体及び前記死角を加味した着目長の通過時間を周期的に計算しつつ更新し、前記着目移動体が前記検出エリアを出る直前の前記着目長の前記通過時間に基づいて前記警告維持時間を算出する、請求項2に記載の報知装置。
【請求項4】
前記情報処理装置は、前記着目移動体の先頭部が前記検出エリアを出たタイミングで、前記着目移動体が前記検出エリアを出たと判定し、前記警告維持時間から前記検出エリアを出てからの経過時間を減算する処理を開始する、請求項1~3のいずれか一項に記載の報知装置。
【請求項5】
前記情報処理装置は、前記計測装置の設置高さ、前記着目移動体の車高、前記着目移動体の車長、前記計測装置から前記着目移動体までの距離、並びに前記着目移動体の速度に基づいて、前記警告維持時間を計算する、請求項1~4のいずれか一項に記載の報知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点、合流点等において潜在的な危険性を有する車両を監視し、警告情報を報知する報知装置に関し、特に自動運転車が交差点を通過する場面等において運転支援を可能にする報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
報知システムとして、交差点を走行する複数の対向移動体の画像をカメラで撮像し、交差点内の右折待ち位置から見えない死角移動体の有無を判定し、判定された死角移動体を交差点内の右折車両のドライバに報知するものが公知となっている(特許文献1)。
【0003】
また、交差点の状況を上から俯瞰した交差点画像データを取得し、例えば交差点画像データから死角車両を抽出した場合、交差点画像データを対象車両側から見た画像データに変換し、死角車両の存在位置と交差点からの距離とを付随させた支援情報を対象車両に送信するものが公知となっている(特許文献2)。
【0004】
また、右折車両の対向車線において右折する対向右折車両と、対向右折車両によって死角となる暗対向車両とが存在する場合に、これらの車両の交差点に関する物理量を取得して右折車両に送信し、右折車両の車載装置がその運転者の視界に対応する交差点において対向右折車両を透視させて暗対向車両の画像を表示するものがある(特許文献3)。
【0005】
また、交差点付近に設置された路上カメラから車両のドライバにとって死角となる可能性がある画像情報が車両に送信されると、車両の支援装置は、この画像情報を運転支援情報として表示器に表示するものが公知となっている(特許文献4)。
【0006】
上記特許文献1~4では、ドライバにとっての死角に存在する移動体又は車両を撮像し情報化することが前提となっているが、先行車両等によって死角が形成される場合、監視カメラにとっても死角となって移動体を捉えることができない事態が想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-41058号公報
【特許文献2】特開2009-199532号公報
【特許文献3】特開2009-20675号公報
【特許文献4】特開2007-249364号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、危険性を有する移動体が監視カメラの死角に移動した場合にも適切な警告を維持することができる報知装置を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る報知装置は、道路に付帯して設けられた計測装置から得たデータに基づいて、検出エリアにおいて危険性を有する着目移動体を検出し、着目移動体が検出エリアに入った段階で警告情報の出力を開始し、着目移動体が検出エリアの外側に出た後において危険性の継続が予測される警告維持時間に亘って警告情報の出力を継続する情報処理装置を備える。ここで、着目移動体が検出エリアの外側に出るとは、着目移動体全体が検出エリアを出ることを意味する。また、着目移動体は、搭乗者が運転する一般的な自動車に限らず、有人の自動運転車、無人の自動運転車、二輪車、自転車、移動ロボット等を含む概念である。
【0010】
上記報知装置では、情報処理装置が、危険性を有する着目移動体が検出エリアに入った段階で警告情報の出力を開始し、着目移動体が検出エリアの外側に出た後において危険性の継続が予測される警告維持時間に亘って警告情報を出力するので、着目移動体の背後に形成される死角によってリアルタイムで危険性を判定できない状況であっても、危険性に関する適切な警告を行うことができる。
【0011】
本発明の具体的な側面によれば、上記報知装置において、情報処理装置は、計測装置及び着目移動体の状況に基づいて、着目移動体に付随する死角が検出エリアを出ると推定されるタイミングを反映するように警告維持時間を設定する。これにより、着目移動体の背後に形成される死角が検出エリアを出るまで警告情報の出力を維持するという観点で、警告維持時間の設定が適切なものとなる。
【0012】
本発明の別の側面によれば、情報処理装置は、着目移動体が検出エリア中に存在する状況で着目移動体及び死角を加味した着目長の通過時間を周期的に計算しつつ更新し、着目移動体が検出エリアを出る直前の着目長の通過時間に基づいて警告維持時間を算出する。この場合、着目移動体が検出エリア中に存在する段階で着目移動体が検出エリアを出る際の予測を準備していることになり、警告情報の出力を迅速に行いつつその正確性を高めることができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、情報処理装置は、着目移動体の先頭部が検出エリアを出たタイミングで、着目移動体が検出エリアを出たと判定し、警告維持時間から検出エリアを出てからの経過時間を減算する処理を開始する。着目移動体の先頭部は検出しやすい箇所であり、警告維持時間のカウントダウンをより適切なものとしやすい。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、情報処理装置は、計測装置の設置高さ、着目移動体の車高、着目移動体の車長、計測装置から着目移動体までの距離、並びに着目移動体の速度に基づいて、警告維持時間を計算する。これらの要素を用いて警告維持時間を計算することで、警告維持時間の値を状況に適合したものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の報知装置を含む報知システムを説明する概念的な側面図である。
図2図1の報知システムの利用状態を説明する概念的な平面図である。
図3】(A)は、報知装置を説明する概念的なブロック図であり、(B)は、車両搭載装置を説明する概念的なブロック図である。
図4】報知装置による一監視状態を説明する概念図である。
図5】報知装置による別の監視状態を説明する概念図である。
図6】報知装置によるさらに別の監視状態を説明する概念図である。
図7】検出エリアに複数の車両が検出される場合の処理を説明する概念図である。
図8】横方向の死角に対処する変形例を説明する図である。
図9】報知装置の一動作例について説明する図である。
図10】報知装置の変形例を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る一実施形態の報知装置を組み込んだ報知システムについて説明する。
【0017】
図1を参照して、報知システム100は、交差点等において、潜在的な危険性を有する車両の存在(具体的には、利用者移動体V01が右折する場合において衝突する可能性がある直進対向車両の存在)を監視し、周辺車両に警告情報を報知するものであり、交差点A0の近傍に設置された報知装置10と、利用者移動体V01に搭載された車両搭載装置20とを備える。報知装置10は、交差点A0に一方から近づく車両V11,V12を監視し、交差点A0に他方から近づく利用者移動体V01に対して車両V11等の存在に関連する警告情報を含む付加的支援情報を提供する。報知装置10は、図示の例では、交差点A0の車両用信号機31に組み込むように設けられているが、車両用信号機31から独立して設けられるものであってもよい。利用者移動体V01は、搭乗者が運転する一般的な自動車に限らず、有人の自動運転車、無人の自動運転車、二輪車、自転車等を含む概念である。車両V11,V12は、その背後に死角が形成されるものであり、一般的な自動車、有人の自動運転車、無人の自動運転車、二輪車等を含む概念である。図示の交差点A0は、道路交通法が適用される道路を前提としているが、道路交通法が適用されない道路や通路の交差点においても、報知システム100を設置することができる。
【0018】
図2に示すように、交差点A0では、第1の道路A1と第2の道路A2とが交差する。第1の道路A1は、対向する車線A11,A12を有し、第2の道路A2は、対向する車線A21,A22を有する。交差点A0の角部には、4つの車両用信号機31,32,33,34が設けられている。第1の車両用信号機31は、第1の道路A1のうち紙面左側に向かう車線A11に存在する車両V11,V12等を対象とするものであり、これらの車両V11,V12に向けて表示を行う。第2の車両用信号機32は、第1の道路A1のうち紙面右側に向かう車線A12に存在する車両(利用者移動体V01等)に対して表示を行うものである。第3及び第4の車両用信号機33,34は、第2の道路A2に存在する車両に対して表示を行うものである。各車両用信号機31,32,33,34には、報知装置10がそれぞれ設けられ、車線A11,A12,A21,A22をそれぞれ主に監視するが、以下では、第1の車両用信号機31に設けられた報知装置10の構造や動作について説明する。
【0019】
図3(A)に示すように、報知装置10は、計測装置11と通信装置13と情報処理装置18とを備える。
【0020】
報知装置10において、計測装置11は、例えばパルス光を2次元走査しつつ飛行時間を計測する距離画像計測装置であり、前景を構成する対象物までの距離を測定して3次元的な情報を得ることができる。計測装置11は、詳細な図示を省略するが、レーザ光L1を投光する投光部と、レーザ光L2を受光する受光部と、レーザ光L1,L2を投受光に際して走査する2次元走査デバイスと、レーザ光L1の射出を検出するタイミング検出部と、レーザ光L1の射出から反射光であるレーザ光L2の入射までの経過時間を計測する時間計測部と、各部の動作状態を制御する動作制御回路とを備える。計測装置11は、距離画像を計測できるものであれば、走査型の計測装置に限らず、光源及びイメージセンサを用いるTOFカメラであってもよく、視差から距離を計測するステレオカメラであってもよい。計測装置11は、距離画像計測装置に限らず、2次元画像から対象物を抽出し、対象物が検出エリアDA(図2参照)に入ったか否かの判別を可能にするものであってもよい。
【0021】
通信装置13は、交差点A0及びその近傍に存在する車両との間で路車間通信を可能にする。通信装置13は、、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communication)等の狭域無線通信方式を利用したものであり、所定の通信ゾーンに存在する対象車両との間、つまり図1に示す利用者移動体V01に搭載された車両搭載装置20との間で、デジタルデータ通信を行う。通信装置13は、DSRCに限らず、ビーコン等のスポット通信方式を利用したものであってもよい。さらに、通信装置13は、無線LAN等に代表される中域の無線通信方式を利用したものであってもよい。通信装置13は、5G、4GLTEに代表される移動体通信回線を利用するものであってもよい。ただし、通信装置13が中域の無線通信方式や移動体通信回線を用いたものである場合、通信装置13から提供される情報は、交差点A0のどの車両用信号機31,32,33,34に設けられた報知装置10からのものであるかを、報知装置10から提供される配置情報、固有情報等に基づいて利用者移動体V01の車両搭載装置20において識別可能にする必要がある。
【0022】
通信装置13は、単一の機器で構成されるものに限らず、利用者移動体V01の通過が想定される通信ゾーンをカバーすべく複数の機器で構成されるものであってもよい。
【0023】
情報処理装置18は、集積回路からなるコンピュータ本体であり、主制御回路18aとIF回路18bと記憶回路18cとを有する。情報処理装置18は、IF回路18bにより、計測装置11及び通信装置13と通信しデータの受け渡しを行う。記憶回路18cには、情報処理装置18を動作させるプログラムが格納され、報知装置10による監視動作及び通報動作を可能にする。この際、情報処理装置18は、計測装置11によって対象とする監視エリアにおける交通情報を収集しつつ、交通情報から抽出した付加的支援情報を通信装置13を介して車両搭載装置20に送信する。付加的支援情報には、後述する警告情報のほか、車両用信号機31の現示状態のような関連情報を含めることができる。この関連情報には、現示に限らず、信号機の将来秒数(現在現示の次以降の現示の予定秒数)、残秒数(現在現示の残りの秒数)等の情報を含めることができる。記憶装置82には、以上のような動作を可能にするため、計測装置11によって得た距離画像から移動するオブジェクトを抽出する処理、抽出したオブジェクトから高さや奥行きといった形状的な特徴を決定する処理、抽出したオブジェクトの移動ベクトルを決定する処理、抽出したオブジェクトが検出エリアDA内にいるか否かを判定する処理、抽出したオブジェクトやその死角が検出エリアDA内に存在する場合に、警告情報を通信装置13を介して車両搭載装置20に送信する処理を実行するためのアプリケーションソフトやデータが格納されている。ここで、死角とは、抽出したオブジェクトの背後、実際には車両V11の背後に存在する空間領域であり、計測装置11によって観察できない空間領域を意味する。
【0024】
図3(B)に示すように、車両搭載装置20は、計測装置21と通信装置23と測位装置24とユーザIF装置25と駆動制御装置26と制御処理装置28とを備える。車両搭載装置20は、例えば自動運転制御装置、或いはナビゲーション等を行う車載装置として利用者移動体V01に組み込まれる。
【0025】
車両搭載装置20において、計測装置21は、LiDAR、カメラ等の各種センサ、センサ出力に基づく周囲物体や路面状況の検出、さらにはセンサフュージョンを可能にする信号処理回路を含む。通信装置23は、5G、4GLTEその他の移動体通信回線を介して管理サーバ(不図示)との間でデータ通信可能であり、報知装置10との間で高速で直接又は間接のデータ通信を行う。通信装置23は、報知装置10の通信装置13から送信される付加的支援情報を受信するため、通信装置13の通信方式と対応する通信機能を有する。測位装置24は、車両の位置と方位を検出するための装置であり、GNSSを利用する計測装置を含むが、利用者移動体V01の速度、加速度、角速度等に関する情報を各種センサによって取得し測位の精度向上を図るもの、固定局を利用するRTK方式といった各種高精度測位技術を利用するものとすることができる。さらに、測位装置24は、カメラその他のセンサで取得した情報と地図とを照らし合せて位置情報を算出する技術、道路に埋め込まれた電磁誘導線の検出又は磁気マーカの検出によって場所を特定する技術等を利用するものであってもよい。ユーザIF装置25は、タッチパネルディスプレイ25a、スピーカ25b、マイク25c等を含む。駆動制御装置26は、エンジン、ステアリング、ブレーキ、方向指示器等に適正な走行動作を行わせる部分であり、特に自動運転制御を行う場合、制御処理装置28からの指令に基づいて、利用者移動体V01の加速、減速、操舵角調整等を行う。制御処理装置28は、集積回路からなるコンピュータ本体であり、主制御回路28aとIF回路28bと記憶回路28cとを有する。主制御回路28aは、IF回路28bにより、通信装置23、測位装置24、及びユーザIF装置25と通信しデータの受け渡しを行う。記憶回路28cには、制御処理装置28を動作させるプログラムが格納されている。制御処理装置28は、自動運転制御を行う場合、基本動作として、記憶回路28c、測位装置24、通信装置23等から必要な情報を収集し、利用者移動体V01が目的地に到達するように走行状態を時々刻々と制御する処理を行う。つまり、制御処理装置28は、測位装置24、通信装置23等から得た利用者移動体V01の現在状況や周囲の環境情報と、記憶回路28cに保管されている目的地や経路に関する情報と、先行走行によって収集した経験情報を含む自動運転の走行アルゴリズムとに基づいて、利用者移動体V01の現状に応じて安全を確保しつつ目的地に向かうように、略リアルタイムで走行状態を監視し管理する。また、制御処理装置28は、運転者が存在し運転者にナビゲーションを行う場合、基本動作として、測位装置24、通信装置23、ユーザIF装置25等から情報を収集し、利用者移動体V01の搭乗者に運転支援情報を提示する処理を行う。つまり、制御処理装置28は、測位装置24から得た情報に基づいて利用者移動体V01の現在位置を特定し、ユーザIF装置25から入力された情報に基づいて目的地までの経路を設定し、目的地に向かう過程で随時案内を行う。
【0026】
制御処理装置28は、自動運転制御を行っている場合において、通信装置13を介して報知装置10から前方の交差点A0に関連する付加的支援情報を受け取ったときは、受け取った付加的支援情報に基づいて駆動制御装置26を動作させ、利用者移動体V01に制動等を行わせる走行制御を実行する。例えば利用者移動体V01が右折する場合、車両搭載装置20から報知装置10に右折予定を含む自車状況に関する情報を提供し、報知装置10は、付加的支援情報として右折の障害となる交通状況を含む情報を車両搭載装置20の制御処理装置28に通知する。このような通知を受取った制御処理装置28は、利用者移動体V01の安全が確保されたタイミングで右折させる制御を行う。
【0027】
制御処理装置28は、ナビゲーションを行っている場合において、通信装置13を介して報知装置10から前方の交差点A0に関連する付加的支援情報を受け取ったときは、受け取った付加的支援情報に基づいてタッチパネルディスプレイ25aやスピーカ25bにおいて案内を行う。この案内には、対向車両に起因する危険性等を報知する警告情報が含まれる。警告情報は、制御処理装置28が、報知装置10の情報処理装置18から受け取った警告情報に基づき、利用者移動体V01の走行状況を加味して、予め用意されたパターンから選択するものであり、具体的には、利用者移動体V01が交差点A0で右折する場合に、対向する車線A11において直進する可能性のある車両V11等が存在することを注意喚起する画像又は音声である。警告情報が音声によって提示される場合、例えば「対向車線に車両が認められますので、その死角に注意してください。」といったアナウンスが、後述する警告維持時間中において継続される。
【0028】
図4を参照して、報知装置10から車両搭載装置20(図1参照)に警告情報が報知される場合について説明する。報知装置10は、監視エリアSAにおいて距離画像のデータを取得しており、監視エリアSAは、計測装置11の画角FGに対応する。報知装置10は、監視エリアSAのうち、車線A11を走行する車両が車線A12を走行する車両にとって危険性を生じさせる可能性がある範囲を検出エリアDAとして、ここに車両が存在するか否かを判定し、検出エリアDAに走行する車両が存在する場合、付加的支援情報である警告情報を車両搭載装置20に送信する。報知装置10は、計測装置11によって得た距離画像のデータから、検出エリアDAに車両V11が存在すればこの車両V11を検出することができる。ただし、報知装置10は、車両V11の死角BSに侵入した後続の車両V12を検出することができない。一方、後続の車両V12が死角BSの後端REかそれよりも後ろの位置Prに存在する場合、報知装置10は、車両V11から独立したものとして車両V12を検出することができる。なお、後続の車両V12が死角BSに部分的に侵入した場合、つまり距離画像において車両V11と車両V12とが完全に分離・独立していないときは、車両V12の検出精度が下がることを防止する観点で、本実施形態では、車両V12が死角BSに存在するとして各種処理を行う。
【0029】
報知装置10又は情報処理装置18(図3参照)は、処理の便宜上、着目する車両V11の前端つまり先頭部91が検出エリアDAの後端E1の位置Piに到着したと判定した時を、車両V11が検出エリアDAに入ったタイミングとして処理し、着目する車両V11の前端が検出エリアDAの前端E2の位置Poに到着したと判定した時を、処理の便宜上車両V11が検出エリアDAから出たタイミングとして処理する。現実の問題として、検出エリアDAに車両が存在する場合、警告情報を発する必要があるが、車両V11が検出エリアDAから出た場合であっても、後続の車両V12が検出エリアDAに存在すれば、警告情報を発する必要がある。そこで、報知装置10又は情報処理装置18は、車両V11が検出エリアDAに入った場合、車両V11全体が検出エリアDAから出ても、車両V11によって形成される死角BSが検出エリアDAから出るまでは、警告情報の出力を継続する。つまり、報知装置10は、着目移動体である車両V11が検出エリアDAに入った段階で警告情報の出力を開始し、着目移動体である車両V11全体が検出エリアDAの外側に出た後において危険性の継続が予測される警告維持時間に亘って警告情報の出力を継続する。ここで、警告維持時間は、着目移動体である車両V11に付随する死角BSが検出エリアDAを出ると推定されるタイミングを反映するように設定される。この警告維持時間は、例えば、着目移動体である車両V11の前端つまり先頭部91が検出エリアDAの前端E2に到着した時点を基準とし、その時点で車両V11に付随する死角BSの後端REが検出エリアDAの前端E2を通過すると推定される時間とする。つまり、図中の位置Peに車両V11が到達したとき、死角BSの後端REが前端E2に到達し、この時点を予測して警告情報の出力が継続される。このように警告情報を出力することにより、車両V11に付随する死角BSに存在する後続の車両V12が検出エリアDAに存在する可能性を排除したと推定される時刻まで警告情報の出力が継続される。言い換えれば、車両V11によって生じるオクルージョンの問題を、警告情報の適正な保持つまり警告情報の出力時間の延長によって回避している。
【0030】
警告維持時間の具体的な計算方法について説明する。車両V11と死角BSとを加算した着目長X1は、着目移動体である車両V11の車長をLcとし、車両V11に付随する死角BSの車線A11に沿った長さをX2とした場合、
X1=Lc+X2
である。着目長X1が検出エリアDAの前端E2を通過する際に要すると推定される時間、つまり警告維持時間Tは、着目移動体である車両V11の速度をvとして、
T=X1/v
=(Lc+X2)/v … (1)
である。死角BSの長さX2については、計測装置11の設置高さをHsとし、着目移動体である車両V11の車高をHcとし、計測装置11から着目移動体である車両V11の前端(つまり先頭部91)までの距離をLdとして、
X2=Hc・(Ld+Lc)/(Hs-Hc) … (2)
である。ここで、値X2は時間tの変数であり、車両V11の前端が検出エリアDAの前端E2に到着した時間をtoとして、値X2(to)は、車両V11の前端が検出エリアDAの前端E2に到着したタイミングにおける死角BSの長さを示す。警告維持時間Tは、式(2)の値X2を式(1)に代入して、
T={Lc+Hc・(Ld+Lc)/(Hs-Hc)}/v … (3)
で与えられる。実際の測定では、着目移動体である車両V11が検出エリアDAに入ると、情報処理装置18は、車両V11の前端が検出エリアDAから出るまでの期間中、式(3)に基づいて警告維持時間Tの計算を繰り返し、車両V11の前端が検出エリアDAの前端E2に達した時点の警告維持時間T(to)を最終的な警告維持時間と決定し、この警告維持時間を、その後において警告情報の出力を継続する時間とする。この警告維持時間Tは、車両V11がその速度vを維持した場合に、着目長X1が検出エリアDAの前端E2を通り過ぎる時間に相当し、死角BS又はこれに潜んでいる車両V12が検出エリアDAから完全に出ると推定される時間(以下、着目長X1の通過時間とも呼ぶ)に相当する。警告維持時間Tは、計測装置11及び着目移動体(具体的には車両V11)の状況(具体的には車長Lc、車高Hc、車両V11の先頭部91までの距離Ld、計測装置11の設置高さHs、車両V11の速度v等を含む検出情報)に基づいて設定されるものである。
【0031】
以上では、着目移動体である車両V11の前端が検出エリアDAの前端E2に達した時点の警告維持時間T(to)を最終的な警告維持時間としているが、情報処理装置18は、計測装置11によって車両V11の後端が検出できる限り、警告維持時間Tを計算し更新することができる。
【0032】
図5は、車両V11の後端が検出できる限り警告維持時間Tを計算し更新する場合を説明する図である。この場合、着目長X1は、検出エリアDAの前端を基準とする厳密着目長X1aよりもはみ出し量δだけ長くなるが、警告維持時間Tが警告維持時間T(to)よりも若干長くなるだけであり、安全面での問題は生じない。なお、情報処理装置18は、警告維持時間Tの計算に際してはみ出し量δを考慮した修正を加えることができ、例えば厳密着目量X1a=X1-δ及び速度vから警告維持時間Tを計算することができる。
【0033】
図6は、車両V11の先頭部91が計測装置11を通り越した場合を示す。この場合、検出エリアDAが信号機の近くに設定され、検出エリアDAの監視中、計測装置11から着目移動体である車両V11の先頭部91までの距離Ldがマイナスとなって適切な値を計測することができなくなっている。このような場合、Ld=0とし、車両V11の車長Lcを計測装置11の位置から車両V11の後端までの距離Lc'として、式(3)による警告維持時間Tの計算を行う。図6のように車両V11の先頭部91が計測装置11を通り越した場合においても、図5の場合と同様に、警告維持時間Tの計算に際してはみ出し量δを考慮した修正を加えることができる。
【0034】
図7は、検出エリアDAに複数の車両が検出される場合を示す。この場合、計測装置11及び着目移動体(具体的には車両V11,V12)の状況に基づいて、先行する車両V11の着目長X1と後続の車両V12の着目長X1とが個別に計算され、それぞれに対応する警告維持時間Tが経過するまで継続される。結果的に、車両ごとの警告維持時間Tの和集合として期間中は、警告情報が出力される。つまり、情報処理装置18は、検出エリアDAにおいて危険性を有する複数の着目移動体(具体的には車両V11,V12)を検出した場合、各着目移動について警告維持時間Tを設定することにより警告情報の出力について継続の要否を判断する。これにより、複数の車両V11,V12が検出エリアに存在する場合にも、それぞれの死角BSを考慮し、危険性に関する適切な警告を行うことができる。
【0035】
図8は、正面の車両用信号機31とは別の箇所に報知装置110すなわち計測装置11を設置した場合を示す。この例では、計測装置11等は、車両用信号機32に組み込まれたものとなっている。この場合、計測装置11は、車線A12上方に配置されて車線A11を観察するので、横方向に関して生じる死角BSが問題となる。このように横方向の死角BSが形成される場合であっても、計測装置11の路側からの距離をWsとし、着目移動体である車両V11の路側又は内側からの側面位置をWcとして、警告維持時間T2は、式(3)と同様に、
T2={Lc+Wc・(Ld+Lc)/(Ws-Wc)}/v … (4)
で与えられる。なお、計測装置11による計測は、高さ方向に関しても死角BSの影響を受けるので、式(3)によって得た警告維持時間Tと式(4)によって得た警告維持時間T2との和集合として期間中は、警告情報が出力される。
【0036】
図9を参照して、情報処理装置18の動作の一例について説明する。最初に、情報処理装置18は、計測装置11によって計測した距離画像を取り込んでオブジェクト抽出処理等の各種処理を行う(ステップS11)。情報処理装置18は、オブジェクト抽出処理によって検出エリアDA内に車両を検出した場合(ステップS12でYes)、検出データを読み取る(ステップS13)。検出データには、検出されたオブジェクトに対応する車両の車長Lc、車高Hc、計測装置11から車両前端(先頭部91)までの距離Ld、計測装置11の設置高さHs、車両の速度v等に関するデータが含まれる。次に、情報処理装置18は、既に計算されて記憶回路18cに保管されている警告維持時間Tを一旦クリアし(ステップS14)、ステップS13で取り込んだ新たな検出データに基づいて警告維持時間Tを計算し記憶回路18cに記憶する(ステップS15)。警告維持時間Tは、式(3)に基づいて計算されるものであり、警報の保持時間に相当する。次に、情報処理装置18は、検出エリアDAにおいて車両が存在すること及びそれに付随する情報を含む警告情報を車両搭載装置20に出力する(ステップS16)。検出エリアDA内に車両を検出しなかった場合(ステップS12でNo)、情報処理装置18は、記憶回路18cに警告維持時間Tの記憶があるか否かを確認し(ステップS17)、警告維持時間Tの記憶がある場合(ステップS17でYes)、警告維持時間Tの更新を行う(ステップS18)。警告維持時間Tの更新では、記憶回路18cに保持されている警告維持時間Tから、ステップS11で繰り返し実行されるセンシング処理の時間間隔に相当する前回チェック時からの経過時間を差し引き、得られた新たな警告維持時間Tを記憶回路18cに記録された警告維持時間Tに対して上書きする。情報処理装置18は、警告維持時間Tが≦0であるか否かを判断し(ステップS19)、警告維持時間Tが≦0でない場合(ステップS19でNo)、ステップS16に進んで警告情報を車両搭載装置20に対して出力する。一方、警告維持時間Tが≦0である場合(ステップS19でYes)、或いは警告維持時間Tの記憶がない場合(ステップS17でNo)、検出エリアDAにおいて車両が存在しないことを意味する危険車両なしの情報を車両搭載装置20に対して出力する(ステップS20)。
【0037】
以上のような動作により、着目移動体である車両V11が検出エリアDA中に存在する状況で車両(着目移動体)V11及び死角BSを加味した着目長X1の通過時間を周期的に計算しつつ更新することになり、車両(着目移動体)V11が検出エリアDAを出る直前の着目長X1の通過時間に基づいて警告維持時間Tを算出することになる。また、以上のような動作により、車両(着目移動体)V11の先頭部91(図4参照)が検出エリアDAを出たタイミングで、車両(着目移動体)V11が検出エリアDAを出たと判定し(ステップS12でNo)、警告維持時間Tから検出エリアDAを出てからの経過時間を減算する処理を開始することになる(ステップS18以降)。
【0038】
以上で説明した実施形態の報知装置10,110では、情報処理装置18が、危険性を有する車両(着目移動体)V11が検出エリアDAに入った段階で警告情報の出力を開始し、車両(着目移動体)V11が検出エリアDAの外側に出た後において危険性の継続が予測される警告維持時間Tに亘って警告情報を出力するので、車両(着目移動体)V11の背後に形成される死角BSによってリアルタイムで危険性を判定できない状況であっても、危険性に関する適切な警告を行うことができる。
【0039】
図10は、図1等に示す報知装置10の変形例であり、この場合、報知装置10は、高速道路その他の合流点の近傍において、標識等に付随して設置されている。報知装置10は、本線B11及び追越車線B12のうち主に本線B11を監視し、合流点に近づく車両V11を検出する。検出エリアDAに車両V11が存在する場合、図4等に示す場合と同様に、着目移動体である車両V11後方の死角BSを含めた着目長X1を計算し、着目長X1の通過を予測する警告維持時間Tを計算する。報知装置10は、加速車線B13から合流点に近づく利用者移動体V01が存在する場合、車両搭載装置20に対して、警告維持時間Tに相当する期間に亘って合流の障害となる車両の存在を示す警告情報を出力する。
【0040】
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0041】
上記実施形態では、道路A1が片側1車線であるとしたが、道路A1が片側2車線であっても同様の処理が可能である。ただし、片側複数車線である場合、車線が右折用か直進用かといった車線の種類に応じて警報処理を行うか否かといった処理内容を変更することができる。
【0042】
上記実施形態では、車両(着目移動体)V11の死角BSが検出エリアDAを出ると推定される警告維持時間に基づいて報知装置10から車両搭載装置20に警告情報を出力するとしているが、例えば車両V11全体が検出エリアDAを出た段階で警告情報の内容を切り替えて死角が通過することを報知するといった処理も可能である。
【符号の説明】
【0043】
10,110…報知装置、 11…計測装置、 13…通信装置、 18…情報処理装置、 20…車両搭載装置、 23…通信装置、 24…測位装置、 25…ユーザIF装置、 28…制御処理装置、 31,32,33,34…車両用信号機、 82…記憶装置、 91…先頭部、 100…報知システム、 A0…交差点、 A1,A2…道路、 A11,A12,A21,A22…車線、 BS…死角、 DA…検出エリア、 E1…後端、 E2…前端、 L1,L2…レーザ光、 RE…後端、 SA…監視エリア、 V01…利用者移動体、 V11,V12…車両、 X1…着目長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10