IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイゾーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034333
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】噴霧製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20230306BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20230306BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/19
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140508
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横木 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】文珠 良侑
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB081
4C083AB131
4C083AC061
4C083AC102
4C083AC342
4C083AC642
4C083AC811
4C083AC812
4C083AD092
4C083DD08
(57)【要約】
【課題】乾燥性が優れ、火炎に対し安全性の高い噴霧製品を提供する。
【解決手段】原液および圧縮ガスとからなる噴霧用組成物と、噴霧用組成物を充填する噴霧容器とからなり、原液は、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンと、アルコールとを含む溶剤を含み、圧縮ガスは、25℃において原液に0.01g/mL以上溶解しており、噴霧容器は、噴霧用組成物の気相を導入するための気相導入孔が設けられたバルブを備えている、噴霧製品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液および圧縮ガスとからなる噴霧用組成物と、前記噴霧用組成物を充填する噴霧容器とからなり、
前記原液は、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンと、アルコールとを含む溶剤を含み、
前記圧縮ガスは、25℃において原液に0.01g/mL以上溶解しており、
前記噴霧容器は、前記噴霧用組成物の気相を導入するための気相導入孔が設けられたバルブを備えている、噴霧製品。
【請求項2】
前記圧縮ガスは、炭酸ガスまたは亜酸化窒素のうち少なくともいずれか1種を含む、請求項1記載の噴霧製品。
【請求項3】
前記溶剤の含有量は、原液中、50~99質量%である、請求項1または2記載の噴霧製品。
【請求項4】
前記沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンと前記アルコールとの質量比は、50:50~99:1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の噴霧製品。
【請求項5】
前記バルブは、前記噴霧用組成物の液相を導入する液相導入孔が設けられており、
前記気相導入孔の断面積(Vt)と、前記液相導入孔の断面積(Lt)との面積比(Vt/Lt)は、0.05~0.5である、請求項1~4のいずれか1項に記載の噴霧製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧製品に関する。より詳細には、本発明は、乾燥性が優れ、火炎に対し安全性の高い噴霧製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾燥性の優れた噴霧製品が開発されている。特許文献1には、沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとアルコールを含む原液と圧縮ガスとを含む噴霧用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-24786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の噴霧用組成物は、冷感を得ることを課題とする。そのため、特許文献1に記載の噴霧用組成物は、単位時間当たりの噴射量を多くし、粒子径を大きくする必要がある。また、特許文献1に記載の噴霧用組成物は、アルコールを多く含んでいるため、火気への安全性に関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、乾燥性が優れ、火炎に対し安全性の高い噴霧製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)原液および圧縮ガスとからなる噴霧用組成物と、前記噴霧用組成物を充填する噴霧容器とからなり、前記原液は、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンと、アルコールとを含む溶剤を含み、前記圧縮ガスは、25℃において原液に0.01g/mL以上溶解しており、前記噴霧容器は、前記噴霧用組成物の気相を導入するための気相導入孔が設けられたバルブを備えている、噴霧製品。
【0008】
このような構成によれば、原液は、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとアルコールとを含む。そのため、圧縮ガスは、原液中に所定濃度溶解することができる。また、噴霧容器は、気相導入孔が設けられたバルブを備えている。このような噴霧容器から噴霧用組成物を噴霧することにより、噴霧される粒子(噴霧粒子)は、細かくなり、頭髪や皮膚に付着して浸透しやすく、空間では拡散しやすい。また、噴霧粒子は、乾燥性が優れる。そのため、噴霧粒子は、頭髪や皮膚に噴霧した場合には垂れ落ちにくく、空間に噴霧した場合には床面が濡れない。さらに、噴霧製品は、単位時間当たりの噴射量が調整され、火気に対する安全性が高くなる。
【0009】
(2)前記圧縮ガスは、炭酸ガスまたは亜酸化窒素のうち少なくともいずれか1種を含む、(1)記載の噴霧製品。
【0010】
このような構成によれば、圧縮ガスは、原液に所定濃度となるよう溶解しやすい。その結果、噴霧製品は、噴霧粒子が細かくなりやすく、頭髪や皮膚に付着して浸透しやすく、空間では拡散しやすい。また、噴霧粒子は、より乾燥性が優れる。そのため、噴霧粒子は、頭髪や皮膚に噴霧した場合には垂れ落ちにくく、空間に噴霧した場合には床面が濡れない。さらに、噴霧製品は、単位時間当たりの噴射量が調整され、火気に対する安全性がより高くなる。
【0011】
(3)前記溶剤の含有量は、原液中、50~99質量%である、(1)または(2)記載の噴霧製品。
【0012】
このような構成によれば、圧縮ガスは、原液に所定濃度となるよう溶解しやすい。その結果、噴霧製品は、噴霧粒子が細かくなりやすく、頭髪や皮膚に付着して浸透しやすく、空間では拡散しやすい。また、噴霧粒子は、より乾燥性が優れる。そのため、噴霧粒子は、頭髪や皮膚に噴霧した場合には垂れ落ちにくく、空間に噴霧した場合には床面が濡れない。さらに、噴霧製品は、単位時間当たりの噴射量が調整され、火気に対する安全性がより高くなる。
【0013】
(4)前記沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンと前記アルコールとの質量比は、50:50~99:1である、(1)~(3)のいずれかに記載の噴霧製品。
【0014】
このような構成によれば、圧縮ガスは、原液に所定濃度となるよう溶解しやすい。その結果、噴霧製品は、噴霧粒子が細かくなりやすく、より乾燥性が優れる。
【0015】
(5)前記バルブは、前記噴霧用組成物の液相を導入する液相導入孔が設けられており、前記気相導入孔の断面積(Vt)と、前記液相導入孔の断面積(Lt)との面積比(Vt/Lt)は、0.05~0.5である、(1)~(4)のいずれかに記載の噴霧製品。
【0016】
このような構成によれば、噴霧製品は、噴霧される噴霧用組成物中に気体の圧縮ガスを混合し、噴霧粒子をより微細化することができる。また、噴霧製品は、単位時間当たりの噴射量が調整され、火気に対する安全性がより高くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、乾燥性が優れ、火炎に対し安全性の高い噴霧製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[噴霧製品]
本発明の一実施形態の噴霧製品は、原液および圧縮ガスとからなる噴霧用組成物と、噴霧用組成物を充填する噴霧容器とからなる。原液は、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンと、アルコールとを含む溶剤を含む。圧縮ガスは、25℃において原液に0.01g/mL以上溶解している。噴霧容器は、噴霧用組成物の気相を導入するための気相導入孔が設けられたバルブを備えている。以下、それぞれについて説明する。
【0019】
<噴霧用組成物>
噴霧用組成物は、原液および圧縮ガスとからなる。
【0020】
(原液)
原液は、溶剤と任意成分とからなる。
【0021】
・溶剤
溶剤は、圧縮ガスを所定濃度溶解し、噴霧用組成物を微細な粒子にして毛髪や皮膚に付着しやすくする。また、溶剤は、空間に噴霧した場合は拡散性を良くし、効果を発揮しやすくするために配合される。
【0022】
溶剤は、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとアルコールとを含む。
【0023】
沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、圧縮ガスを多く溶解し、噴射物の粒子径や乾燥性を調整し、安全性を高めるために配合される。
【0024】
沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは特に限定されない。一例を挙げると、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E)、沸点19℃)、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(Z)、沸点39℃)、シス-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロオレフィン(HFO-1224yd(Z)、沸点15℃)等である。沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、併用されてもよい。
【0025】
沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、97質量%以下であることが好ましく、96質量%以下であることがより好ましい。沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量が上記範囲内であることにより、噴霧用組成物は、毛髪や皮膚に付着した際に付着物の乾燥性を高くしやすい。ここで、技術常識によれば、噴霧された噴霧用組成物の乾燥性を向上させるためには、沸点の低い液化ガス(たとえば、ノルマルブタン、イソブタン、プロパンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、沸点が5℃未満のハイドロフルオロオレフィン等)を配合することが考えられる。しかしながら、本実施形態では、このような技術常識とは真逆に、あえて、従来使用されていた沸点が5℃未満の噴射剤に代えて、さらに沸点の高い沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンを配合することにより、毛髪や皮膚、空間に噴霧された噴霧用組成物の乾燥性が改善されることを見出したものである。
【0026】
アルコールは、ハイドロフルオロオレフィンや後述する任意成分を安定に溶解し、均一な噴霧用組成物を形成するための溶媒として配合される。また、アルコールは、噴霧された噴霧用組成物の乾燥性や粒子径等を調整するために配合される。
【0027】
アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、アルコールは、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2~3個の1価アルコールである。
【0028】
アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコールの含有量は、原液中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、原液中、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、噴霧用組成物は、毛髪や皮膚に付着しやすい粒子径となるよう噴霧されやすく、空間で適度に拡散して効果を発揮しやすくする。また、噴霧された粒子は、優れた乾燥性が得られやすい。
【0029】
溶剤の含有量は、原液中、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましい。また、溶剤の含有量は、原液中、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、圧縮ガスは、原液に所定濃度となるよう溶解しやすい。その結果、噴霧製品は、噴霧粒子が細かくなりやすく、頭髪や皮膚に付着して浸透しやすく、空間では拡散しやすい。また、噴霧粒子は、より乾燥性が優れる。そのため、噴霧粒子は、頭髪や皮膚に噴霧した場合には垂れ落ちにくく、空間に噴霧した場合には床面が濡れない。さらに、噴霧製品は、単位時間当たりの噴射量が調整され、火気に対する安全性がより高くなる。
【0030】
沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとアルコールとの質量比は、50:50~99:1であることが好ましく、55:45~98:2であることがより好ましい。沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとアルコールとの質量比が上記範囲内であることにより、圧縮ガスは、原液に所定濃度となるよう溶解しやすい。その結果、噴霧製品は、噴霧粒子が細かくなりやすく、より乾燥性が優れる。
【0031】
・任意成分
本実施形態の噴霧用組成物は、上記した溶剤に加え、任意成分として、適宜有効成分、多価アルコール、水、油剤を含んでもよい。有効成分は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分は、(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMP、(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーTEA、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル/アルキルアクリルアミド)コポリマーAMP、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル/アルキルアクリルアミド)コポリマーTEAなどのアクリル樹脂アルカノールアミン液などのアニオン型樹脂、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸オクチルアミド-アクリル酸ヒドロキシプロピル-メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体などの両性型樹脂、ビニルピロリドン-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体硫酸塩、ヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウムクロリドなどのカチオン型樹脂、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン、アクリル酸アルキル-スチレン共重合体エマルジョンなどのエマルジョン型樹脂、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル-アクリル酸ブチル-アクリル酸メトキシエチル共重合体などのノニオン型樹脂等のスタリング用樹脂、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタン、オクチルトリメトキシシラン被覆酸化チタンなどの紫外線散乱剤、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤、クロロヒドロキシアルミニウム、イソプロピルメチルフェノールなどの制汗剤、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)、カプリル酸ジエチルアミド等の害虫忌避剤、ピレトリン、フタルスリン、アレスリン、ペルメトリン、テフルスリン、ベンフルスリン等の殺虫剤、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、緑茶エキスなどの消臭剤、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類、センブリ抽出液やローズマリー抽出液などの各種抽出物、ヒアルロン酸などの保湿剤、フローラル、グリーン、シトラスグリーン、グリーンフローラル、シトラス、ローズ、ローズウッド、ハーバルウッド、レモン、ペパーミントなどの香料、l-メントール、カンフル、ハッカ油などの清涼剤、アルミニウム粉末、シリカ、酸化鉄などの顔料、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、赤色2号、赤色3号、青色1号、青色2号などの染料、ポリソルベート、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの界面活性剤、エデト酸二ナトリウムなどのキレート剤、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌消毒剤、パラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤などである。
【0032】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、得られる噴霧用組成物は、有効成分を配合することによる所望の効果が得られやすい。
【0033】
多価アルコールは、原液の引火性を低くして火気への安全性を高くする等の目的で配合され得る。
【0034】
多価アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、多価アルコールは、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ソルビトールなどの2~6価アルコールである。
【0035】
多価アルコールが配合される場合、多価アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、多価アルコールの含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、多価アルコールの含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。多価アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、噴霧用組成物は、均一相を形成しつつ原液の引火点を高くして火気への安全性を高くする。
【0036】
水は、噴霧用組成物の乾燥性を調節し、火気への安定性を高くする等の目的で好適に配合される。
【0037】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。
【0038】
水が配合される場合、水の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、水の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、水の含有量は、原液中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、噴霧用組成物は、均一相を形成しやすく、優れた乾燥性が得られやすい。
【0039】
油剤は、それ自身を添加剤として用いる、油溶性の有効成分や界面活性剤などを溶解するための溶媒として好適に配合される。
【0040】
油剤は特に限定されない。一例を挙げると、油剤は、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、イソパラフィンなどの炭化水素油;アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、乳酸セチル、ステアリン酸イソセチル、セトステアリルアルコール、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油;メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリグリセロール変性シリコーン等のシリコーンオイル;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール等の高級アルコール;イソステアリン酸等の液体脂肪酸;アボカド油、マカダミアナッツ油、シア脂、オリーブ油、ツバキ油等の油脂;ミツロウ、ラノリンロウ等のロウ類等である。
【0041】
油剤が配合される場合、油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油剤の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、油剤の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。油分の含有量が上記範囲内であることにより、噴霧用組成物は、有効成分や界面活性剤などを溶解しやすい。
【0042】
原液の調製方法は特に限定されない。原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、原液は、アルコールに有効成分などの任意成分を混合し、これに沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンを添加することにより調製され得る。
【0043】
(圧縮ガス)
圧縮ガスは、一部が原液に溶解して噴霧粒子を微細化する微粒子剤として、また、圧縮ガスは、原液に溶解しきれずに噴霧容器内の気相部にあり、噴霧用組成物を加圧して外部に噴霧する噴射剤として配合される。
【0044】
圧縮ガスは特に限定されない。一例を挙げると、圧縮ガスは、窒素、空気、酸素、水素、二酸化炭素、亜酸化窒素等である。圧縮ガスは、炭酸ガスまたは亜酸化窒素のうち少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。炭酸ガスおよび亜酸化窒素は、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンへの溶解量が多い。そのため、これらの圧縮ガスを用いることにより、圧縮ガスは、原液に所定の濃度となるよう溶解しやすく、後述するハウジングにベーパータップ孔を設けることができる。その結果、噴霧製品は、毛髪や皮膚に付着しやすく、空間で拡散しやすい大きさの粒子を形成しやすく、火炎長試験で火炎長を短くする、さらには火炎長をなくすことができる。
【0045】
圧縮ガスは、25℃における容器内の圧力が0.3MPaとなるように充填されることが好ましく、0.4MPa以上となるように充填されることがより好ましい。また、圧縮ガスは、25℃における容器内の圧力が1.0MPa以下となるように充填されることが好ましく、0.8MPa以下となるように充填されることがより好ましい。圧力が上記範囲内になるよう圧縮ガスが充填されることにより、圧縮ガスが原液に所定の濃度となるよう溶解しやすく、噴霧用組成物は、毛髪や皮膚に付着しやすく、空間で拡散しやすい大きさの粒子を形成しやすく、適量が噴霧されやすい。
【0046】
本実施形態の噴霧用組成物は、圧縮ガスが、25℃において原液に0.01g/mL以上となるよう溶解している。圧縮ガスは、0.02g/mL以上となるよう溶解していることが好ましい。圧縮ガスの溶解量が0.01g/mL未満である場合、圧縮ガスのほとんどが気相にあるため、噴霧製品は、噴射に伴い圧縮ガスが気相導入孔から排出されて圧力が低下し、最後まで噴射できないようになる。また、圧縮ガスの溶解量は、0.1g/mL以下であることが好ましく、さらには0.08g/mL以下であることがより好ましい。圧縮ガスの溶解量が0.1g/mLを超える場合、噴霧用組成物は、容器内の圧力が高くなりすぎ、頭髪や皮膚に噴射する場合は勢いが強くなりすぎ、付着性が低下しやすくなる。
【0047】
噴霧用組成物の製造方法は、特に限定されない。一例を挙げると、噴霧用組成物は、耐圧容器内に原液を充填し、耐圧容器の開口部にバルブを取り付け、バルブから圧縮ガスを充填し、圧縮ガスを原液に飽和溶解させることにより調製することができる。
【0048】
噴霧製品全体の説明に戻り、本実施形態の噴霧製品は、上記した噴霧用組成物が、噴霧容器に充填された噴霧製品である。
【0049】
噴霧容器は、噴霧用組成物を充填する耐圧容器と、耐圧容器の開口部に取り付けられるバルブと、バルブに取り付けられる噴射部材とを主に備える。
【0050】
耐圧容器は、噴霧用組成物が充填される容器であり、有底筒状である。
【0051】
耐圧容器の材質は特に限定されない。一例を挙げると、耐圧容器の材質は、アルミニウム、ブリキ等の金属、各種合成樹脂、耐圧ガラス等である。
【0052】
バルブは、耐圧容器の開口部を閉止して密封するための部材である。また、バルブは、耐圧容器の開口部に装着されるマウンティングカップに保持されるハウジングと、耐圧容器の内外を連通するステム孔が形成されたステムと、ステム孔の周囲に取り付けられ、ステム孔を閉止するためのステムラバーとを主に備える。ハウジングは、ステムと、ステムラバーと、ステムを上方に付勢するスプリングとを収容する。
【0053】
ハウジングは、略筒状であり、側面に噴霧用組成物の気相を導入する気相導入孔(ベーパータップ孔)が設けられており、下部に噴霧用組成物の液相を導入する液相導入孔が設けられている。
【0054】
気相導入孔の寸法(断面積Vt)は特に限定されない。一例を挙げると、気相導入孔の寸法(断面積Vt)は、0.01mm2以上であることが好ましく、0.03mm2以上であることがより好ましい。また、気相導入孔の寸法(断面積Vt)は、0.20mm2以下であることが好ましく、0.15mm2以下であることがより好ましい。気相導入孔の寸法(断面積Vt)が上記範囲内であることにより、噴射時にハウジング内に圧縮ガスを導入して、毛髪や皮膚に付着しやすく、空間で拡散しやすい大きさの粒子を形成しやすく、また、火炎に向けて噴射したときの火炎の伸びを測定する火炎長試験で火炎長を短くする、さらには火炎長をなくすことができ、噴射された噴霧用組成物の安全性を高めることができる。
【0055】
液相導入孔の寸法(断面積Lt)は特に限定されない。一例を挙げると、液相導入孔の寸法(断面積Lt)は、0.1mm2以上であることが好ましく、0.2mm2以上であることがより好ましい。また、液相導入孔の寸法(断面積Lt)は、3.5mm2以下であることが好ましく、3.0mm2以下であることがより好ましい。液相導入孔の寸法(断面積Lt)が上記範囲内であることにより、噴霧用組成物の液相部分をハウジング内に適量導入しやすく、噴射状態がより安定する。
【0056】
気相導入孔の面積(Vt)と、液相導入孔の面積(Lt)との面積比(Vt/Lt)は、0.05以上であることが好ましく、0.06以上であることがより好ましい。また、面積比(Vt/Lt)は、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。面積比(Vt/Lt)が上記範囲内であることにより、噴霧製品は、噴霧される噴霧用組成物中に気体の圧縮ガスを混合し、噴霧粒子をより微細化することができる。また、噴霧製品は、単位時間当たりの噴射量が調整され、火気に対する安全性がより高くなる。
【0057】
なお、技術常識では、圧縮ガスを含むエアゾール製品の場合、圧縮ガスのほとんどが気相にあるため、噴射に伴い圧縮ガスが気相導入孔から排出されて圧力が低下し、最後まで噴射できないようになる。一方、本実施形態の噴霧用組成物は、原液が、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとアルコールとを含んでいる。そのため、圧縮ガスとして炭酸ガスや亜酸化窒素ガスを含む場合、原液への溶解量が0.01g/mL以上であり、好ましくは0.02g/mL以上と多いことから、噴射時に気相にある圧縮ガスが気相導入孔から排出されても、原液に溶解していた圧縮ガスが揮発して圧力が上昇し、最後まで噴射することができる。
【0058】
この場合、噴射時に気相導入孔を介してハウジング内に導入された圧縮ガスと、液相導入孔を介してハウジング内に導入された噴霧用組成物の液相部分とが、ハウジング内において混合される。噴霧用組成物は、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとアルコールとを含む原液に圧縮ガスが多く溶解しており、これに気体の圧縮ガスが混合された状態で噴霧される。これにより、噴霧された噴霧用組成物は、毛髪や皮膚に付着しやすく、空間で拡散しやすい大きさの噴霧粒子を形成しやすく、また、火炎に向けて噴射したときの火炎の伸びを測定する火炎長試験で火炎長を短くする、さらには火炎長をなくすことができ、安全性を高めることができる。
【0059】
噴射部材は、バルブの開閉を操作して噴霧用組成物を噴射するための部材であり、ステムの上端に取り付けられる。噴射部材は、噴射孔が形成されたノズル部と、使用者が指等により操作する操作部とを主に備える。噴射孔からは、噴霧用組成物が噴射される。噴射孔の数および形状は特に限定されない。噴射孔は、複数であってもよい。また、噴射孔の形状は、略円形状、略角形状等であってもよい。
【0060】
本実施形態の噴霧製品は、噴射部材が押し下げられると、バルブのステムが下方に押し下げられる。これにより、ステムラバーが下方に撓み、ステム孔が開放される。その結果、耐圧容器内と外部とが連通する。耐圧容器内と外部とが連通すると、耐圧容器内の圧力と外部との圧力差によって、噴霧用組成物がハウジング内に取り込まれ、次いで、ステム孔、ステム内通路を通過し、噴射部材に送られ、その後、噴射孔から噴射される。
【0061】
噴霧製品から噴霧させる噴霧粒子は、圧縮ガスによって加圧して噴霧するにもかかわらず、噴霧粒子を細かくすることができる。そのため、噴霧粒子は、毛髪や皮膚に付着しやすく、空間で拡散しやすい粒子径になる。
【0062】
噴霧粒子の平均粒子径は、5μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましい。また、噴霧粒子の平均粒子径は、40μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましい。噴霧粒子の平均粒子径が上記範囲内であることにより、噴霧粒子は、付着しやすく、吸入されにくい。また、噴霧粒子は、乾燥性が優れ、床面が濡れにくい。
【0063】
以上、本実施形態の噴霧製品は、噴霧用組成物を圧縮ガスの圧力で噴霧することができる。噴霧された粒子は、毛髪や皮膚に付着しやすく、空間で拡散しやすい大きさで噴霧されやすく、かつ、消費者が吸入しにくい。
【0064】
噴霧製品を頭髪用セット剤とした場合は、毛髪に付着した付着物中にハイドロフルオロオレフィンが残留しやすい。これにより、付着物は、非常に短い時間で乾燥する。また、付着物は、乾燥することにより、毛髪上でスタイリング用樹脂の皮膜を形成しやすく、優れたセット力が得られやすい。さらに、噴霧製品は、単位時間当たりの噴射量が調整され、火気に対する安全性が高くなる。
【実施例0065】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0066】
(実施例1)
以下の表1に記載の処方(単位:質量%)に従って、原液1を調製し、アルミ製の耐圧容器に100g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ0.6、ベーパータップ孔:φ0.3)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから炭酸ガスを充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.5MPa(25℃)であった。なお、25℃における溶剤への炭酸ガスの溶解量は、0.040g/mLであった。また、Vt/Lt(断面積比)は0.25であった。
【0067】
【表1】
【0068】
(実施例2~6)
原液の処方を表1に記載の処方(原液2~6)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法により、整髪用噴霧製品を調製した。なお、25℃における溶剤への炭酸ガスの溶解量は、実施例2が0.034g/mLであり、実施例3が0.032g/mLであり、実施例4が0.042g/mLであり、実施例5が0.039g/mLであり、実施例6が0.038g/mLであった。また、Vt/Lt(断面積比)は、いずれも0.25であった。
【0069】
(実施例7)
表1に記載の原液7をアルミ製の耐圧容器に100g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ0.6、ベーパータップ孔:φ0.3)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから炭酸ガスを充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.45MPa(25℃)であった。なお、25℃における溶剤への炭酸ガスの溶解量は0.039g/mLであった。また、Vt/Lt(断面積比)は0.25であった。
【0070】
(実施例8)
表1に記載の原液8を用いたこと以外は、実施例7と同様の方法により、整髪用噴霧製品を調製した。なお、25℃における溶剤への炭酸ガスの溶解量は0.039g/mLであった。また、Vt/Lt(断面積比)は0.25であった。
【0071】
(実施例9)
表1に記載の原液9をアルミ製の耐圧容器に100g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ1.55、ベーパータップ孔:φ0.4)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから炭酸ガスを充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.45MPa(25℃)であった。なお、25℃における溶剤への炭酸ガスの溶解量は0.039g/mLであった。また、Vt/Lt(断面積比)は0.07であった。
【0072】
(比較例1)
表1に記載の原液1をアルミ製の耐圧容器に100g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ2.0、ベーパータップ孔:なし)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから炭酸ガスを充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.5MPa(25℃)であった。なお、25℃における溶剤への炭酸ガスの溶解量は0.039g/mLであった。
【0073】
(比較例2)
表1に記載の原液1をアルミ製の耐圧容器に100g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ2.0、ベーパータップ孔:なし)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから窒素を充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.5MPa(25℃)であった。なお、25℃における溶剤への窒素の溶解量は0.001g/mLであった。
【0074】
(比較例3)
表1に記載の原液1をアルミ製の耐圧容器に100g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ0.6、ベーパータップ孔:φ0.3)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから窒素を充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.5MPa(25℃)であった。なお、25℃における溶剤への窒素の溶解量は0.001g/mLであった。また、Vt/Ltは0.5であった。
【0075】
実施例1~9および比較例1~3において調製した整髪用噴霧製品を用いて、以下の評価方法により、噴射状態、付着性、浸透性、平均粒子径、乾燥性、付着物の状態、セット力、詰まり、火炎長を測定した。結果を表2に示す。
【0076】
<噴射状態>
整髪用噴霧製品を、25℃に調整し、噴霧した。噴射状態を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:噴霧用組成物が、最後まで噴霧できた。
×:噴霧用組成物が、最後まで噴霧できずに残った。
【0077】
<付着性>
整髪用噴霧製品を、25℃に調整し、毛束に10cmの距離から噴霧した。毛束への付着性を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:噴霧用組成物が、毛束全体に均一に付着した。
△:噴霧用組成物が、毛束一部に粒状に付着し、毛束全体には均一に付着しなかった。
×:噴霧用組成物が、毛束一部に粒状にまばらに付着し、毛束全体には均一に付着しなかった。
【0078】
<浸透性>
整髪用噴霧製品を、25℃に調整し、毛束に10cmの距離から噴霧した。毛束の裏側への浸透性を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:毛束に噴霧した噴霧用組成物は、裏側に浸透していた。
×:毛束に噴霧した噴霧用組成物は、裏側に浸透していなかった。
【0079】
<平均粒子径>
整髪用噴霧製品を、25℃に調整し、マイクロトラック・ベル(株)製、粒度分布測定装置(LDSA-3400A)を用いて、噴射孔からの距離15cmにおける噴射粒子の平均粒子径を測定した。
【0080】
<乾燥性>
整髪用噴霧製品を、25℃に調整し、毛束に10cmの距離から、毛束全体を1往復するように噴霧した。毛束の乾燥性を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:毛束は、5分以内に乾燥した。
○:毛束は、5~10分で乾燥した。
×:毛束は、10分経過しても乾燥しなかった。
【0081】
<付着物の状態>
噴霧用組成物を25℃に調整し、頭髪に噴霧した。付着物の状態を以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:乾燥しても樹脂の析出は無かった。
×:乾燥すると樹脂が析出した。
【0082】
<セット力>
整髪用噴霧製品を、25℃に調整し、マネキンから毛束を垂直方向に立ち上げ、10cmの距離から噴霧した。毛束が乾燥するまで持ち上げ、乾燥した後で手を離し、毛束の角度を確認し、以下の評価基準に従って評価した。なお、毛束の角度とは、垂直方向を90°とし、毛束と水平面との間の角度をいう。
(評価基準)
◎:毛束の角度は90~60°であった。
○:毛束の角度は59~30°であった。
×:毛束の角度は29~0°であった。
【0083】
<詰まり>
25℃で保存した整髪用噴霧製品を、1日当たり1秒噴射を2回行う操作を1ヵ月間続け、噴口の詰まりを確認し、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:噴口に詰まりがなく、噴霧用組成物を安定に噴霧できた。
×:噴口に詰まりができ、噴霧用組成物を噴霧できなかった。
【0084】
<火炎長>
整髪用噴霧製品を25℃に調整し、15cm後方から高さ5cmの火炎に噴射し、以下の評価基準にしたがって、火炎の延び(火炎長)を評価した。
(評価基準)
◎:火炎長が認められなかった。
○:火炎長は25cm未満であった。
△:火炎長は25cm以上、45cm未満であった。
×:火炎長は45cm以上であった。
【0085】
【表2】
【0086】
表2に示されるように、実施例1~9の整髪用噴霧製品は、最後まで噴霧でき、毛束全体に均一に付着し、毛束の裏側に浸透せず、乾燥性が優れた。また、実施例1~9の整髪用噴霧製品は、乾燥しても樹脂が析出せず、セット力が優れ、詰まりを生じず、火炎長が認められないか、または、25cm未満であった。一方、気相連通孔を設けなかった比較例1の整髪用噴霧製品は、火炎の延びが大きかった。気相連通孔を設けず、圧縮ガスの溶解量が少なかった比較例2の整髪用噴霧製品は、火炎の延びが大きかった。圧縮ガスの溶解量が少なかった比較例3の整髪用噴霧製品は、最後まで噴射できなかった。
【0087】
(実施例10)
表3に記載の原液10をアルミ製の耐圧容器に100g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ1.55、ベーパータップ孔:φ0.4)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから炭酸ガスを充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、空間用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.45MPa(25℃)であった。なお、25℃における溶剤への炭酸ガスの溶解量は、0.039g/mLであった。また、Vt/Lt(断面積比)は0.07であった。
【0088】
【表3】
【0089】
実施例10において調製した空間用噴霧製品を用いて、上記評価方法により、噴射状態、平均粒子径、火炎長を測定した。結果を表4に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
表4に示されるように、実施例10の噴霧製品は、最後まで噴霧できた。高さ1.5mから空間用噴霧製品を室内に噴霧すると噴霧粒子が拡散して、すぐに香料の香りが広がった。また、噴霧粒子は落下の途中で見えなくなり、床面(フローリング)に付着せず濡れなかった。また、実施例10の噴霧製品は、火炎長が認められなかった。
【0092】
(実施例11)
表5に記載の原液11をアルミ製の耐圧容器に100g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ1.55、ベーパータップ孔:φ0.4)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから炭酸ガスを充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、虫よけ用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.45MPa(25℃)であった。なお、25℃における溶剤への炭酸ガスの溶解量は、0.041g/mLであった。また、Vt/Lt(断面積比)は0.07であった。
【0093】
【表5】
【0094】
実施例11において調製した虫よけ用噴霧製品を用いて、上記評価方法により、噴射状態、平均粒子径、火炎長を測定した。結果を表6に示す。
【0095】
【表6】
【0096】
表6に示されるように、実施例11の噴霧製品は、最後まで噴霧できた。皮膚から10cmで虫よけ用噴霧製品を噴霧すると噴霧粒子が付着して、垂れ落ちることなくすぐに乾燥した。また、実施例11の噴霧製品は、火炎長が認められなかった。
【0097】
(実施例12)
表7に記載の原液12をアルミ製の耐圧容器に100g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ1.55、ベーパータップ孔:φ0.4)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから炭酸ガスを充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、日焼け止め用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.45MPa(25℃)であった。なお、25℃における溶剤への炭酸ガスの溶解量は、0.041g/mLであった。また、Vt/Lt(断面積比)は0.07であった。
【0098】
【表7】
【0099】
実施例12において調製した日焼け止め用噴霧製品を用いて、上記評価方法により、噴射状態、平均粒子径、火炎長を測定した。結果を表8に示す。
【0100】
【表8】
【0101】
表8に示されるように、実施例12の噴霧製品は、最後まで噴霧できた。皮膚から10cmで日焼け止め用噴霧製品を噴霧すると噴霧粒子が付着して、垂れ落ちることなくすぐに乾燥した。また、実施例12の噴霧製品は、火炎長が認められなかった。
【0102】
(実施例13)
表9に記載の原液13をアルミ製の耐圧容器に100g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ1.55、ベーパータップ孔:φ0.4)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから炭酸ガスを充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、殺虫剤用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.45MPa(25℃)であった。なお、25℃における溶剤への炭酸ガスの溶解量は、0.038g/mLであった。また、Vt/Lt(断面積比)は0.07であった。
【0103】
【表9】
【0104】
実施例13において調製した殺虫剤用噴霧製品を用いて、上記評価方法により、噴射状態、平均粒子径、火炎長を測定した。結果を表10に示す。
【0105】
【表10】
【0106】
表10に示されるように、実施例13の噴霧製品は、最後まで噴霧できた。殺虫剤用噴霧製品を室内に噴霧すると噴霧粒子が拡散した。また、噴霧粒子は落下の途中で見えなくなり、床面(フローリング)に付着せず濡れなかった。また、実施例13の噴霧製品は、火炎長が認められなかった。