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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034334
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230306BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20230306BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20230306BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20230306BHJP
   B23K 26/386 20140101ALI20230306BHJP
【FI】
H01L21/304 611B
H01L21/304 611Z
H01L21/78 Q
H01L21/78 B
H01L21/78 M
H01L21/02 C
B23K26/53
B23K26/386
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140509
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 正助
(72)【発明者】
【氏名】長屋 正武
(72)【発明者】
【氏名】大原 淳士
(72)【発明者】
【氏名】恩田 正一
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】小島 淳
(72)【発明者】
【氏名】河口 大祐
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 隆二
(72)【発明者】
【氏名】油井 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】原 佳祐
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD14
4E168AE01
4E168CB03
4E168CB11
4E168FC01
4E168HA01
4E168JA13
5F057AA05
5F057AA31
5F057AA43
5F057BA01
5F057BA11
5F057BA12
5F057BB06
5F057CA02
5F057CA03
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5F057CA31
5F057CA32
5F057CA40
5F057DA01
5F057DA22
5F057DA28
5F057DA31
5F057DA40
5F057EC06
5F057EC07
5F057EC08
5F057EC10
5F057EC16
5F057EC17
5F057EC18
5F057EC20
5F057FA15
5F057FA22
5F057FA28
5F057FA30
5F063AA05
5F063AA11
5F063AA18
5F063BA43
5F063CB05
5F063CB06
5F063CB08
5F063CB17
5F063CB24
5F063CB28
5F063CB30
5F063DD26
5F063DD27
5F063DD99
5F063EE07
5F063EE21
5F063EE22
5F063EE25
5F063EE36
5F063EE38
5F063EE40
5F063EE85
5F063FF04
(57)【要約】
【課題】 変質層の形成時に、ガスの圧力によって化合物半導体基板にクラックが発生することを抑制する。
【解決手段】 半導体装置の製造方法であって、化合物半導体基板(12)の表面(12b)に表面保護材(22)を貼り付ける工程と、前記化合物半導体基板の前記表面に穴または溝によって構成されたガス抜き部(14)を形成する工程と、前記表面保護材の貼り付け、及び、前記ガス抜き部の形成の後に、前記化合物半導体基板にレーザ(92)を照射することによって、前記ガス抜き部と重複する深さ範囲に前記化合物半導体基板の前記表面に沿って伸びる変質層(16)を形成する工程、を有する。前記変質層の形成時において、前記表面保護材が厚み方向に通気性を有している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
化合物半導体基板(12)の表面(12b)に表面保護材(22)を貼り付ける工程と、
前記化合物半導体基板の前記表面に穴または溝によって構成されたガス抜き部(14)を形成する工程と、
前記表面保護材の貼り付け、及び、前記ガス抜き部の形成の後に、前記化合物半導体基板にレーザ(92)を照射することによって、前記化合物半導体基板の内部であって前記ガス抜き部と重複する深さ範囲に前記化合物半導体基板の前記表面に沿って伸びる変質層(16)を形成する工程、
を有し、
前記変質層の形成時において、前記表面保護材が厚み方向に通気性を有している、
製造方法。
【請求項2】
前記化合物半導体基板を前記変質層に沿って分割する工程をさらに有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記表面保護材の貼り付けでは、接着層(24)を介して前記表面保護材を前記化合物半導体基板の前記表面に貼り付け、
前記変質層の形成時において、前記接着層が厚み方向に通気性を有している、
請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記表面保護材の貼り付け後に、前記ガス抜き部の形成が実施され、
前記ガス抜き部の形成では、前記化合物半導体基板にレーザを照射することによって前記ガス抜き部を形成する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記表面保護材の貼り付け後に、前記ガス抜き部の形成が実施され、
前記ガス抜き部の形成では、前記表面保護材を貫通して前記化合物半導体基板に達する穴または溝を形成することによって、前記ガス抜き部を形成する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ガス抜き部の形成後に、前記表面保護材の貼り付けが実施され、
前記表面保護材の貼り付けでは、接着層を介して前記表面保護材を前記化合物半導体基板の前記表面に貼り付け、
前記接着層が、流動性を有さない、
請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記変質層の形成時に、前記変質層で発生したガスが前記ガス抜き部と前記表面保護材を介して前記化合物半導体基板の外部に排出される、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
特許文献1に開示の半導体装置の製造方法では、化合物半導体基板にレーザを照射することによって、化合物半導体基板の内部に変質層を形成する。変質層は、化合物半導体基板の表面に沿って伸びるように形成される。このように変質層を形成することで、化合物半導体基板を加工することができる。例えば、変質層に沿って化合物半導体基板を分割することで、より薄い化合物半導体基板を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-102520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化合物半導体基板の内部に変質層を形成するときに、変質層でガスが発生する。発生したガスの圧力によって、化合物半導体基板に意図しない方向にクラックが生じる場合がある。本明細書では、変質層の形成時に、ガスの圧力によって化合物半導体基板にクラックが発生することを抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、化合物半導体基板の表面に表面保護材を貼り付ける工程と、前記化合物半導体基板の前記表面に穴または溝によって構成されたガス抜き部を形成する工程と、前記表面保護材の貼り付け、及び、前記ガス抜き部の形成の後に、前記化合物半導体基板にレーザを照射することによって、前記化合物半導体基板の内部であって前記ガス抜き部と重複する深さ範囲に前記化合物半導体基板の前記表面に沿って伸びる変質層を形成する工程、を有する。前記変質層の形成時において、前記表面保護材が厚み方向に通気性を有している。
【0006】
なお、前記表面保護材の貼り付けと前記ガス抜き部の形成のいずれを先に実施してもよい。
【0007】
また、前記表面保護材の貼り付け前から前記表面保護材が厚み方向に通気性を有していてもよいし、前記表面保護材の貼り付け後に前記表面保護材に対して厚み方向に通気性が付与されてもよい。
【0008】
この製造方法では、化合物半導体基板にガス抜き部が形成されており、かつ、化合物半導体基板に表面保護材が貼り付けられている状態で、変質層の形成が実施される。変質層の形成時において、表面保護材が厚み方向に通気性を有している。したがって、変質層を形成すると、変質層で発生したガスが、ガス抜き部と表面保護材を介して化合物半導体基板の外部へ排出される。したがって、化合物半導体基板の内部でガスの圧力が高くなり難く、化合物半導体基板にクラックが生じ難い。すなわち、この製造方法によれば、ガスの圧力によって化合物半導体基板にクラックが発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】GaN基板12の断面図。
図2】実施例1で使用する保護部材の断面図。
図3】実施例1の表面保護材貼り付け工程の説明図。
図4】実施例1のガス抜き部形成工程の説明図。
図5】ガス抜き溝が形成されたGaN基板12の平面図。
図6】実施例1の変質層形成工程の説明図。
図7】比較例の変質層形成工程の説明図。
図8】分割工程の説明図。
図9】実施例2で使用する保護部材の断面図。
図10】実施例2の変質層形成工程の説明図。
図11】実施例3で使用する保護部材の断面図。
図12】実施例3の変質層形成工程の説明図。
図13】実施例4のガス抜き部形成工程の説明図。
図14】実施例4の変質層形成工程の説明図。
図15】実施例5のガス抜き部形成工程の説明図。
図16】実施例5の変質層形成工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記化合物半導体基板を前記変質層に沿って分割する工程をさらに有していてもよい。
【0011】
この構成によれば、薄い化合物半導体基板を得ることができる。
【0012】
本明細書が開示する一例の製造方法においては、前記表面保護材の貼り付けでは、接着層を介して前記表面保護材を前記化合物半導体基板の前記表面に貼り付けてもよい。この場合、前記変質層の形成時において、前記接着層が厚み方向に通気性を有していてもよい。
【0013】
なお、表面保護材の貼り付け前から接着層が厚み方向に通気性を有していてもよいし、表面保護材の貼り付け後に接着層に対して厚み方向に通気性が付与されてもよい。
【0014】
この構成によれば、変質層で発生したガスを、ガス抜き部、接着層、及び、表面保護材を介して化合物半導体基板の外部へ排出することができる。
【0015】
本明細書が開示する一例の製造方法においては、前記表面保護材の貼り付け後に、前記ガス抜き部の形成が実施されてもよい。この場合、前記ガス抜き部の形成では、前記化合物半導体基板にレーザを照射することによって前記ガス抜き部を形成してもよい。
【0016】
本明細書が開示する一例の製造方法においては、前記表面保護材の貼り付け後に、前記ガス抜き部の形成が実施されてもよい。前記ガス抜き部の形成では、前記表面保護材を貫通して前記化合物半導体基板に達する穴または溝を形成することによって、前記ガス抜き部を形成してもよい。
【0017】
本明細書が開示する一例の製造方法においては、前記ガス抜き部の形成後に、前記表面保護材の貼り付けが実施されてもよい。前記表面保護材の貼り付けでは、接着層を介して前記表面保護材を前記化合物半導体基板の前記表面に貼り付けてもよい。前記接着層が、流動性を有さなくてもよい。
【0018】
この構成によれば、表面保護材の貼り付け時に、接着層がガス抜き部内に流入することを防止できる。
【0019】
本明細書が開示する一例の製造方法においては、前記変質層の形成時に、前記変質層で発生したガスが前記ガス抜き部と前記表面保護材を介して前記化合物半導体基板の外部に排出されてもよい。
【実施例0020】
実施例1の製造方法では、図1に示す窒化ガリウム基板12(以下、GaN基板12という)から半導体装置を製造する。GaN基板12は、光透過性を有する。また、図2は、GaN基板12の下面12bを保護するための保護部材を示している。保護部材は、表面保護材22と接着層24を有している。表面保護材22は、硬い板材であってもよいし、柔軟性を有するシート状の部材であってもよい。接着層24は、表面保護材22の一方の表面に設けられている。表面保護材22と接着層24は、光透過性を有している。実施例1では、表面保護材22は、多孔質であり、その厚み方向に通気性を有している。また、実施例1では、接着層24は、多孔質であり、その厚み方向に通気性を有している。
【0021】
(表面保護材貼り付け工程)
まず、表面保護材貼り付け工程を実施する。表面保護材貼り付け工程では、図3に示すように、GaN基板12の下面12bに接着層24を介して表面保護材22を貼り付ける。後の工程では、表面保護材22によって、下面12bにキズが入ることが抑制される。
【0022】
(ガス抜き部形成工程)
次に、ガス抜き部形成工程を実施する。ガス抜き部形成工程では、GaN基板12の下面12bにガス抜き溝14を形成する。ここでは、図4に示すように、下面12b側からGaN基板12にレーザ90を照射する。表面保護材22と接着層24が光透過性を有するので、レーザ90は表面保護材22と接着層24を透過する。レーザ90は、GaN基板12内で焦点S1を形成するように照射される。レーザ90が照射された位置に、ガス抜き溝14が形成される。ここでは、レーザ90の照射位置を移動させることによって、図5に示すように、格子状にガス抜き溝14を形成する。このように、レーザ90を照射する方法によれば、下面12bに表面保護材22が貼り付けられている状態でも、下面12bにガス抜き溝14を形成することができる。なお、ガス抜き部形成工程では、上面12a側からGaN基板12にレーザ90を照射して、GaN基板12の下面12bにガス抜き溝14を形成してもよい。
【0023】
(変質層形成工程)
次に、GaN基板12の内部に変質層16を形成する変質層形成工程を実施する。変質層形成工程では、図6に示すように、真空吸着ステージ30上にGaN基板12を載置する。ここでは、表面保護材22が真空吸着ステージ30の上面に接する向きでGaN基板12を真空吸着ステージ30上に載置する。図示していないが、真空吸着ステージ30の内部には、多数の吸着流路が設けられている。例えば、真空吸着ステージ30が多孔質であり、真空吸着ステージ30の内部の空孔によって吸着流路が形成されていてもよい。また、真空吸着ステージ30の内部に、真空吸着ステージ30の上面に繋がる吸着流路が多数設けられていてもよい。図示しないポンプを作動させることによって、真空吸着ステージ30の内部の吸着流路を減圧することができる。ここでは、ポンプを作動させることによって、真空吸着ステージ30上に載置されたGaN基板12を真空吸着ステージ30によって吸着して固定する。
【0024】
次に、上面12a側からGaN基板12にレーザ92を照射する。レーザ92は、GaN基板12の内部で焦点S2を形成するように照射される。焦点S2の位置では、GaN(すなわち、窒化ガリウム)が加熱されて分解される。その結果、焦点S2の位置に、ガリウムの析出層等によって構成された変質層16が形成される。変質層16の強度は、元の窒化ガリウム単結晶よりも低い。したがって、変質層16の強度は、その周囲の窒化ガリウム単結晶よりも低い。ここでは、レーザ92の照射位置をGaN基板12の上面12a及び下面12bと平行な方向に移動させることで、上面12a及び下面12bに沿って伸びる変質層16を形成する。また、ここでは、変質層16とガス抜き溝14とが深さ範囲において重複するように変質層16を形成する。言い換えると、GaN基板12の厚み方向における変質層16の範囲16aと、GaN基板12の厚み方向におけるガス抜き溝14の範囲14aとが重複するように、変質層16を形成する。また、ここでは、GaN基板12の横方向(すなわち、GaN基板12の上面12a及び下面12bと平行な方向)の全体に変質層16を形成する。以下では、GaN基板12のうち、変質層16よりも下面12b側の部分を第1部分61といい、変質層16よりも上側の部分を第2部分62という。
【0025】
GaN基板12へのレーザ92の照射によってGaNが分解されるとき(すなわち、変質層16が形成されるとき)に、窒素ガス(すなわち、Nガス)が発生する。上述したように、真空吸着ステージ30の内部の吸着流路は減圧されている。また、接着層24と表面保護材22が多孔質であるので、ガス抜き溝14は接着層24と表面保護材22を介して真空吸着ステージ30の吸着流路に接続されている。したがって、ガス抜き溝14内は減圧されている。また、変質層16は、ガス抜き溝14と重複する深さ範囲に形成される。このため、図6の矢印100に示すように、変質層16の形成位置で発生した窒素ガスは、ガス抜き溝14、接着層24、及び、表面保護材22を介して真空吸着ステージ30に吸引される。すなわち、変質層16の形成位置で発生した窒素ガスは、ガス抜き溝14、接着層24、及び、表面保護材22を介してGaN基板12の外部に排出される。これによって、GaN基板12の内部で窒素ガスの圧力が高くなることが防止される。このため、窒素ガスの圧力によってGaN基板12にクラックが生じることが防止される。
【0026】
なお、図7は、接着層24及び表面保護材22が通気性を有さない場合を示している。この場合、接着層24及び表面保護材22が通気性を有さないため、ガス抜き溝14は真空吸着ステージ30内の吸着流路に接続されていない。したがって、変質層16の形成位置で発生した窒素ガスは、真空吸着ステージ30へ流れることができない。この場合には、変質層16で発生した窒素ガスは、変質層16またはガス抜き溝14を通ってGaN基板12の径方向へ流れる。このため、窒素ガスは、矢印102に示すように、GaN基板12の外周面12cからGaN基板12の外部へ排出される。この場合、外周面12cから遠いGaN基板12の中央部では、変質層16の形成位置で発生した窒素ガスがGaN基板12の外部へ排出され難い。したがって、GaN基板12の中央部で窒素ガスの圧力が高くなり易く、中央部近傍でGaN基板12にクラックが生じ易い。これに対し、実施例1の製造方法(すなわち、図6)では、接着層24及び表面保護材22が厚み方向に通気性を有しているので、変質層16の形成位置で発生した窒素ガスがGaN基板12の厚み方向に流れてGaN基板12の外部に排出される。したがって、GaN基板12の全体で窒素ガスの圧力が高くなり難い。このため、窒素ガスの圧力によるクラックの発生をGaN基板12の全体で抑制することができる。
【0027】
(分割工程)
次に、図8に示すように、第2部分62に対して第1部分61から離れる方向に力を加えることで、変質層16でGaN基板12を分割する。すなわち、第2部分62を第1部分61から分離させる。上述したように、変質層16の強度は窒化ガリウム単結晶の強度よりも低いので、変質層16でGaN基板12を分割することができる。第1部分61にはガス抜き溝14が格子状に形成されているので、第1部分61は多数のチップ64となる。各チップ64は表面保護材22によって支持されているので、各チップ64は表面保護材22上に固定されている。
【0028】
その後、第1部分61の上面61a(すなわち、各チップ64の上面)を研磨し、上面61aに電極等を形成することで、半導体装置が製造される。また、第2部分62は、その後、半導体装置の製造に再利用される。例えば、第2部分62の下面62aを研磨、エッチング等し、その後、下面62a上にGaN層をエピタキシャル成長させることで、第2部分62の厚みを元のGaN基板12の厚みまで増加させることができる。厚みを増加させた第2部分62をGaN基板12として再利用して、半導体装置の製造を行うことができる。
【実施例0029】
実施例2の製造方法では、実施例1の保護部材(すなわち、図2)とは異なる保護部材を使用する。実施例2では、図9に示す保護部材を使用する。実施例2で使用する保護部材では、接着層24が多孔質ではない。また、実施例2で使用する保護部材では、接着層24が、表面保護材22の上面にパターニングした状態で設けられている。すなわち、表面保護材22の上面に、接着層24の未形成領域24aが設けられている。表面保護材22の上面において、未形成領域24aは格子状に伸びている。また、実施例2の表面保護材22は、実施例1の表面保護材22と同様に、多孔質であり、厚み方向に通気性を有している。したがって、実施例2では、未形成領域24aを通って接着層24の厚み方向に気体が流れることができる。すなわち、未形成領域24aによって接着層24に対してその厚み方向に通気性が付与されている。また、実施例2で使用するGaN基板12は、実施例1で使用するGaN基板12と等しい。
【0030】
実施例2の表面保護材貼り付け工程では、図10に示すように、接着層24を介して表面保護材22をGaN基板12の下面12bに貼り付ける。実施例2のガス抜き部形成工程では、実施例1と同様にレーザを照射することによって、ガス抜き溝14を形成する。ここでは、図10に示すように、接着層24の未形成領域24aに沿ってガス抜き溝14を形成する。実施例2の変質層形成工程では、実施例1と同様にレーザ92を照射することによって、変質層16を形成する。図10の矢印100に示すように、変質層16の形成位置で発生する窒素ガスは、ガス抜き溝14、未形成領域24a及び表面保護材22を介して真空吸着ステージ30内の吸着流路へ排出される。したがって、窒素ガスの圧力によってGaN基板12にクラックが生じることが防止される。実施例2の分割工程では、実施例1と同様に、変質層16でGaN基板12を分割する。その後、実施例1と同様にして、半導体装置を製造する。
【実施例0031】
実施例3の製造方法では、実施例1の保護部材(すなわち、図2)とは異なる保護部材を使用する。実施例3では、図11に示す保護部材を使用する。実施例3で使用する保護部材では、接着層24及び表面保護材22が多孔質ではない。また、実施例3で使用する保護部材では、表面保護材22に貫通孔22aが設けられている。なお、図11では貫通孔22aによって表面保護材22が複数の部分22xに分離されているように見えるが、図示しない位置で各部分22xは互いに繋がっている。貫通孔22aは、表面保護材22の略全体に分散して配置されている。また、図11に示すように、貫通孔22aは表面保護材22と接着層24を貫通している。したがって、実施例3では、貫通孔22aを通って接着層24と表面保護材22に厚み方向に気体が流れることができる。すなわち、貫通孔22aによって接着層24と表面保護材22に対してその厚み方向に通気性が付与されている。また、実施例2で使用するGaN基板12は、実施例1で使用するGaN基板12と等しい。
【0032】
実施例3の表面保護材貼り付け工程では、図12に示すように、接着層24を介して表面保護材22をGaN基板12の下面12bに貼り付ける。実施例3のガス抜き部形成工程では、実施例1と同様にレーザを照射することによって、ガス抜き溝14を形成する。ここでは、図12に示すように、貫通孔22aと重複する位置にガス抜き溝14を形成する。なお、貫通孔22aと重複する位置に加えて、貫通孔22aと重複しない位置にガス抜き溝14を形成してもよい。実施例3の変質層形成工程では、実施例1と同様にレーザ92を照射することによって、変質層16を形成する。図12の矢印100に示すように、変質層16の形成位置で発生する窒素ガスは、ガス抜き溝14と貫通孔22aを介して真空吸着ステージ30内の吸着流路へ排出される。したがって、窒素ガスの圧力によってGaN基板12にクラックが生じることが防止される。実施例3の分割工程では、実施例1と同様に、変質層16でGaN基板12を分割する。その後、実施例1と同様にして、半導体装置を製造する。
【0033】
なお、実施例1の接着層24(すなわち、多孔質であるとともに貫通孔を有さない接着層)と実施例3の表面保護材22(すなわち、貫通孔22aを有する表面保護材)を組み合わせてもよい。この場合、変質層16の形成位置で発生する窒素ガスは、ガス抜き溝14、多孔質の接着層24、及び、貫通孔22aを介してGaN基板12の外部へ排出される。
【実施例0034】
実施例4の製造方法では、実施例1の保護部材(すなわち、図2)とは異なる保護部材を使用する。実施例4で使用する保護部材では、接着層24と表面保護材22が多孔質ではない。また、実施例4で使用する保護部材では、接着層24と表面保護材22に貫通孔が形成されていない。したがって、実施例4で使用する保護部材では、使用前の状態において、接着層24と表面保護材22が厚み方向に通気性を有していない。また、実施例4で使用するGaN基板12は、実施例1で使用するGaN基板12と等しい。
【0035】
実施例4の表面保護材貼り付け工程では、実施例1(すなわち、図3)と同様に、接着層24を介して表面保護材22をGaN基板12の下面12bに貼り付ける。実施例4のガス抜き部形成工程では、図13に示すように、レーザ90を照射することによって、表面保護材22と接着層24を貫通してGaN基板12に達するガス抜き溝14を形成する。すなわち、レーザ90の焦点S1が表面保護材22と接着層24とGaN基板12の内部を通過するように焦点S1を移動させることで、表面保護材22と接着層24を貫通してGaN基板12に達するガス抜き溝14を形成する。表面保護材22と接着層24を貫通するガス抜き溝14によって、表面保護材22と接着層24に対して厚み方向に通気性が付与される。なお、図13ではガス抜き溝14が表面保護材22と接着層24を貫通しているが、別の断面では図4と同様にガス抜き溝14が表面保護材22と接着層24に形成されない。したがって、図13に示す表面保護材22の各部分22xは図13以外の位置で互いに接続されている。実施例4の変質層形成工程では、実施例1と同様にレーザ92を照射することによって、変質層16を形成する。図14の矢印100に示すように、変質層16の形成位置で発生する窒素ガスは、ガス抜き溝14を介して真空吸着ステージ30内の吸着流路へ排出される。したがって、窒素ガスの圧力によってGaN基板12にクラックが生じることが防止される。実施例4の分割工程では、実施例1と同様に、変質層16でGaN基板12を分割する。その後、実施例1と同様にして、半導体装置を製造する。
【0036】
なお、実施例4のガス抜き部形成工程では、レーザ90によって表面保護材22と接着層24を貫通してGaN基板12に達するガス抜き溝14を形成した。しかしながら、ブレード等の切削工具等によって表面保護材22と接着層24を貫通してGaN基板12に達するガス抜き溝14を形成してもよい。
【実施例0037】
上述した実施例1~4では、表面保護材貼り付け工程の後にガス抜き部形成工程を実施した。これに対し、実施例5では、ガス抜き部形成工程の後に表面保護材貼り付け工程を実施する。
【0038】
実施例5のガス抜き部形成工程では、図15に示すように、レーザ90によってGaN基板12の下面12bにガス抜き溝14を形成する。なお、実施例5のガス抜き部形成工程では、ブレード等の切削工具、または、エッチング等によってガス抜き溝14を形成してもよい。実施例5の表面保護材貼り付け工程では、図16に示すように、接着層24を介して表面保護材22をGaN基板12の下面12bに貼り付ける。なお、実施例5で使用する表面保護材22は、多孔質である。また、実施例5で使用する接着層24は、多孔質である。また、実施例5で使用する接着層24は、流動性を有さない。したがって、実施例5の表面保護材貼り付け工程では、接着層24がガス抜き溝14内に流入しない。このため、ガス抜き溝14が接着層24によって閉塞されることが防止される。表面保護材貼り付け工程の後に、変質層形成工程を実施する。実施例5の変質層形成工程では、実施例1と同様にレーザ92を照射することによって、変質層16を形成する。実施例1(すなわち、図6の矢印100)と同様に、変質層16の形成位置で発生する窒素ガスは、ガス抜き溝14、接着層24、及び、表面保護材22を介して真空吸着ステージ30内の吸着流路へ排出される。したがって、窒素ガスの圧力によってGaN基板12にクラックが生じることが防止される。実施例5の分割工程では、実施例1と同様に、変質層16でGaN基板12を分割する。その後、実施例1と同様にして、半導体装置を製造する。
【0039】
なお、実施例5において、図9のようにパターニングされた接着層24を使用してもよい。この場合、接着層24は多孔質でなくてもよい。また、実施例5において、図11のように接着層24と表面保護材22に貫通孔22aが設けられていてもよい。この場合、接着層24と表面保護材22は多孔質でなくてもよい。また、実施例5において、表面保護材貼り付け工程の後に、表面保護材22と接着層24に貫通孔等を形成することによって、表面保護材22と接着層24に厚み方向に通気性を付与してもよい。
【0040】
以上に説明したように、実施例1~5のいずれの製造方法でも、変質層形成工程の段階で、接着層24と表面保護材22が厚み方向に通気性を有している。したがって、GaN基板12内の変質層16の形成位置で発生した窒素ガスが、ガス抜き溝14、接着層24、及び、表面保護材22を介してGaN基板12の外部に排出される。したがって、窒素ガスの圧力によってGaN基板12に意図しないクラックが生じることを抑制できる。
【0041】
なお、上述した実施例1~5では、ガス抜き部形成工程において、下面12b側からGaN基板12にレーザ90を照射した。しかしながら、ガス抜き部形成工程において、上面12a側からGaN基板12にレーザ90を照射してもよい。
【0042】
上述した実施例1~5では、変質層形成工程において、上面12a側からGaN基板12にレーザ92を照射した。しかしながら、変質層形成工程において、下面12b側からGaN基板12にレーザ92を照射してもよい。
【0043】
上述した実施例1~5においては、変質層16とステージの間の間隔(例えば、図6の間隔C1)を、1mm以下とすることができる。この構成によれば、より適切に窒素ガスをGaN基板12から真空吸着ステージ30に排出することができる。また、上述した実施例1~5では、GaN基板12の全体でクラックを抑制できる。言い換えると、GaN基板12の中央部にクラックが生じ難い。したがって、従来よりも大口径のGaN基板を用いて半導体装置を製造することができる。例えば、直径が6~8インチのウエハを用いることも可能である。
【0044】
また、上述した実施例1~5では、真空吸着ステージ30上で変質層形成工程を行った。しかしながら、ガス抜き溝14からの窒素ガスの排出が可能であれば、変質層形成工程においてGaN基板12をどのように支持してもよい。
【0045】
また、上述した実施例1~5では、ガス抜き部が格子状に伸びるガス抜き溝14であったが、ガス抜き部がガス抜き穴によって構成されていてもよい。例えば、GaN基板12にガス抜き穴を分散して形成することで、変質層形成工程において適切に窒素ガスを排出することができる。
【0046】
また、上述した実施例1~5では、GaN基板12を使用した。しかしながら、GaN基板以外の化合物半導体基板を使用して半導体装置を製造してもよい。
【0047】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0048】
12:GaN基板、14:ガス抜き溝、16:変質層、22:表面保護材、24:接着層、30:真空吸着ステージ
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