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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034338
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】傾斜センサ
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/06 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G01C9/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140514
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 俊紀
(57)【要約】
【課題】検出精度の向上を図ることができる傾斜センサを提供する。
【解決手段】傾斜センサ100を構成する移動体1は、第1主面11mと、第2主面12mと、第1凸曲面部11と、第2凸曲面部12と、を含む。第1主面11mは、プリント配線板40と対向する側の主面である。第2主面12mは、案内路20の内側面20iと対向する側の主面である。第1凸曲面部11は、第1主面11mの少なくとも中央部に形成され、プリント配線板40に向かって凸の曲面を有する。第2凸曲面部12は、第2主面12mの少なくとも中央部に形成され、内側面20iに向かって凸の曲面を有する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材料で形成される扁平した回転体状の移動体と、
対象物に固定されて内部を前記移動体が回転軸と垂直な方向に変位可能な案内路が設けられた案内体と、
前記案内路において前記対象物が所定の角度以上傾いたときに前記移動体が到達する両端部と対向する位置にそれぞれ設けられた一対のコイルを有し、前記移動体が前記一対のコイルのいずれかと対向する位置まで変位することによる前記一対のコイルのいずれかのインダクタンス又はインピーダンスの変化に基づいて前記対象物が所定の角度以上傾いた転倒状態を検出する検出部と、を備え、
前記一対のコイルの各々は、前記案内体の内部に前記案内路に沿って配設されるプリント配線板に形成されるコイルパターンから成り、
前記移動体は、
前記プリント配線板と対向する側の主面である第1主面と、
前記案内路の内側面と対向する側の主面である第2主面と、
前記第1主面の少なくとも中央部に形成され、前記プリント配線板に向かって凸の曲面を有する第1凸曲面部と、
前記第2主面の少なくとも中央部に形成され、前記内側面に向かって凸の曲面を有する第2凸曲面部と、を含む、
傾斜センサ。
【請求項2】
前記第1凸曲面部は、前記第1主面の中央部に形成され、
前記移動体は、前記第1主面の、前記第1凸曲面部が形成される部分とは異なる部分に形成され、前記プリント配線板に向かって張り出す張出部、を更に含む、
請求項1に記載の傾斜センサ。
【請求項3】
前記第1凸曲面部は、前記第1主面の略全部に形成される、
請求項1に記載の傾斜センサ。
【請求項4】
前記第2凸曲面部は、前記第2主面の略全部に形成される、
請求項3に記載の傾斜センサ。
【請求項5】
前記第1凸曲面部が有する曲面と前記第2凸曲面部が有する曲面とは、互いに合同である、
請求項4に記載の傾斜センサ。
【請求項6】
前記移動体は、前記案内路の内底面と対向する面であり、前記第1主面及び前記第2主面の各々の外周に沿う側面、を更に含む、
請求項5に記載の傾斜センサ。
【請求項7】
前記移動体は、前記回転軸の方向に扁平した扁球又は略扁球の形状を有する、
請求項5又は6に記載の傾斜センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、傾斜センサに関し、より詳細には、バイク等の対象物に設けられ、対象物が所定の角度以上傾いた転倒状態を検出する、傾斜センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導電材料を含む円盤状の移動体と、対象物に固定されて内部を移動体が変位可能な案内路が設けられた案内体と、一対のコイルを有する検出部と、を備える傾斜センサが記載されている。一対のコイルは、案内路において、対象物が所定の角度以上傾いたときに移動体が到達する両端部と対向する位置、にそれぞれ設けられる。検出部は、移動体がいずれかのコイルと対向する位置まで変位することによるコイルのインピーダンス変化に基づいて、対象物が所定の角度以上傾いた転倒状態を検出する。このように構成された傾斜センサにおいて、一対のコイルの各々は、プリント配線板に形成されるコイルパターンから成り、プリント配線板は、案内体の内部に配設されて検出部の回路部品が実装される。これにより、部品点数の削減、及びセンサ全体の小型化が図られる。また、移動体は、厚み方向の断面が菱形であり、菱形の頂点に対応する部分が面取りされている。これによって、移動体は、案内路の内面等と面接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-28035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成を有する傾斜センサでは、対象物が、前傾若しくは減速、又は後傾若しくは加速している状態で転倒すると、移動体が案内路の内面等から受ける摩擦力が増し、移動体の案内路における変位が妨げられることがある。
【0005】
特許文献1の傾斜センサでは、移動体と案内路の内面等とが面接触するため、対象物の前傾・後傾等に応じて摩擦力が急増し、転倒状態の検出精度が低下する可能性があった。
【0006】
本開示の目的は、検出精度の向上を図ることができる傾斜センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る傾斜センサは、導電材料で形成される扁平した回転体状の移動体と、対象物に固定されて、内部を前記移動体が回転軸と垂直な方向に変位可能な案内路、が設けられた案内体と、一対のコイルを有する検出部と、を備える。前記一対のコイルは、前記案内路において、前記対象物が所定の角度以上傾いたときに前記移動体が到達する両端部と対向する位置、にそれぞれ設けられる。前記検出部は、前記移動体が前記一対のコイルのいずれかと対向する位置まで変位することによる前記一対のコイルのいずれかのインダクタンス又はインピーダンスの変化に基づいて、前記対象物が所定の角度以上傾いた転倒状態を検出する。前記一対のコイルの各々は、プリント配線板に形成されるコイルパターンから成る。前記プリント配線板は、前記案内体の内部に前記案内路に沿って配設される。前記移動体は、第1主面と、第2主面と、第1凸曲面部と、第2凸曲面部と、を含む。前記第1主面は、前記プリント配線板と対向する側の主面である。前記第2主面は、前記案内路の内側面と対向する側の主面である。前記第1凸曲面部は、前記第1主面の少なくとも中央部に形成され、前記プリント配線板に向かって凸の曲面を有する。前記第2凸曲面部は、前記第2主面の少なくとも中央部に形成され、前記内側面に向かって凸の曲面を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の傾斜センサは、検出精度の向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態に係る傾斜センサの斜視図である。
図2図2は、同上の傾斜センサの分解斜視図である。
図3図3は、同上の傾斜センサが備える案内体の正立状態での正面図である。
図4図4は、同上の案内体の傾斜状態での正面図である。
図5図5Aは、同上の傾斜センサの前傾状態での断面図であり、図5Bは、同上の傾斜センサの正立状態での断面図であり、図5Cは、同上の傾斜センサの後傾状態での断面図である。
図6図6Aは、同上の傾斜センサが備える移動体の上面図であり、図6Bは、同上の移動体の断面図である。
図7図7Aは、同上の移動体の変形例1の断面図であり、図7Bは、同上の移動体の変形例2の断面図であり、図7Cは、同上の移動体の変形例3の断面図であり、図7Dは、同上の移動体の変形例4の断面図であり、図7Eは、同上の移動体の変形例5の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
下記の実施形態において説明する各図は模式的な図であり、各構成要素の大きさ及び厚さのそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、以下の実施形態で説明する構成は本開示の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0011】
(1)傾斜センサ
本開示の実施形態に係る傾斜センサ100は、図1及び図2に示すように、移動体1と、案内体2と、カバー3と、検出部4と、を備える。
【0012】
(1-1)移動体の概要
移動体1は、導電材料で形成される。
【0013】
移動体1に用いる導電材料は、通常、金属である。金属には、合金も含まれる。金属は、具体的には、例えば、アルミ、鉄、ステンレス、銅などである。ただし、導電材料は、非金属のもの(例えば、導電性ポリマやグラファイト等)でもよく、導電性を有する材料であれば何でもよい。
【0014】
移動体1は、扁平した回転体状の物体である。
【0015】
回転体状とは、回転体の表面に沿う形状である。回転体の表面に沿う形状とは、回転体の表面と完全に一致する形状に限らず、全体として回転体の表面に近い形状であればよい。回転体状は、例えば、略回転体の形状と言い換えてもよい。
【0016】
扁平した回転体とは、回転軸方向の長さ(厚み)が、回転軸に垂直な方向の長さ(直径)より短い回転体である。扁平した回転体は、例えば、扁球である。扁球とは、楕円を、その短径を回転軸として回転してできる回転体(偏楕円体ともいう)であり、具体的には、碁石のような形状のものである。
【0017】
本実施形態における移動体1は、略扁球の形状を有する。略扁球の形状を有する(すなわち、扁球状の)移動体1は、例えば、図6に示すように、扁球形状を有する移動体本体に対して、外周部の面取りを施し、側面10sを形成したものである。
【0018】
なお、図6Aの上面図において、第1主面11mは、側面10sの上側の輪郭線に沿う仮想的な平面(上底面)であり、第2主面12mは、側面10sの下側の輪郭線に沿う仮想的な平面(下底面)である。図6Bの断面図では、これら上底面及び下底面がそれぞれ凸曲面化されて、第1凸曲面部11の曲面及び第2凸曲面部12の曲面を形成している。
【0019】
また、詳細は変形例で説明するが、移動体1は、例えば、図7A図7Dに示すように、移動体1の本体(以下、移動体本体)である円板10を含み、円板10の2つの主面(第1主面11m及び第2主面12m)の各々に凸曲面部(第1凸曲面部11,第2凸曲面部12)を形成したものでもよい。
【0020】
または、移動体1は、例えば、図7Eに示すように、円板を含まず(すなわち、円板10の厚みが略0であり)、2つの凸曲面部(第1凸曲面部11及び第2凸曲面部12)を直に結合したものでもよい。なお、図7Eの移動体では、2つの凸曲面部の結合部が刃状であるが、結合部も曲面状(従って、移動体全体として扁球状)であってよい。
【0021】
また、図7A図7Eの移動体1では、円板10、第1凸曲面部11等の2つ以上の要素は、個別に形成され、一体化されるが、当該2つ以上の要素の全部又は一部が一体形成されてもよい。例えば、図7Dの移動体1において、円板10、第1凸曲面部11及び第2凸曲面部12を一体成形したものが、図6の移動体1である。
【0022】
(1-2)案内体
案内体2は、対象物に固定される。
【0023】
本実施形態における対象物は、例えば、バイク(自動二輪車、原動機付自転車など)である。ただし、対象物は、例えば、自動車、自転車、船舶など、バイク以外の乗り物でもよい。
【0024】
また、対象物は、必ずしも人が乗る乗り物である必要はなく、例えば、遠隔制御で又は自動的に走行又は航行する物でもよい。走行等には、加速及び減速が伴う。さらに、対象物は、必ずしも走行等せず、前傾又は後傾する物(遊具等)でもよい。
【0025】
案内体2は、案内体2自身の主軸201が鉛直線200と平行になり、かつ、案内路20の内側面20i(後述)が、対象物の進行方向(前後方向)と垂直になるような姿勢で、対象物に固定される(図3参照)。
【0026】
なお、案内体2の主軸201が鉛直線200と平行であることは、移動体1の回転軸202が鉛直線200と垂直であることと同等である。また、移動体1の回転軸202の方向は、バイク等の対象物の進行方向(前後方向)と一致する。
【0027】
本実施形態では、鉛直線200に沿って上向き及び下向きを「上下」と称する。また、鉛直線200と垂直かつ内側面20iと平行な方向を「左右」と称する。さらに、「上下」及び「左右」と垂直な方向を「前後」等と称する。
【0028】
案内体2には、案内路20が設けられる。本実施形態における案内体2は、前方の主面側が開放されており、案内路20は、案内体2の内部の、後方の主面側に設けられる。
【0029】
(1-2-1)案内路
案内路20とは、移動体1を、後述する一対のコイル(41,41)のいずれかの位置へと案内するための通路である。案内路20は、移動体1の厚み(例えば、扁球の短径)より僅かに広い幅(前後方向のサイズ)を有する。
【0030】
案内路20は、左右対称かつ下に凸の形状に形成される。本実施形態における案内路20は、例えば、図2等に示されるようなV字型である。
【0031】
このV字型の案内路20では、V字の頂点に対応する部分(以下、頂部)が水平面であり、V字の2つの斜線の各々に対応する部分(以下、斜部)は、傾きが異なる4つの平面(以下、平斜面)を連結した形状を有する。一の斜部を構成する4つの平斜面のうち、頂部に近い方から奇数番目(すなわち、1番目及び3番目)のものは、偶数番目(すなわち、2番目及び4番目)のものより、傾斜が大きい。これによって、例えば、移動速度の抑制が図られる。
【0032】
ただし、V字型の案内路20において、頂部は曲面でもよいし、斜部を構成する平斜面の数は、1つ~3つでも、5つ以上でもよい。
【0033】
または、案内路20は、U字型(図示しない)でもよい。案内路20の形状は、左右対称かつ下に凸であれば、どのような形状でもよい。
【0034】
案内路20の対称軸は、図3等に示されるように、案内体2の主軸201と一致している。
【0035】
案内路20は、内側面20iと、内側面20iの周囲を囲む内底面20jとで構成される。なお、案内路20の、内側面20iと対向する側は、前述したように開放されている。
【0036】
(1-2-1a)内側面
内側面20iは、移動体1の第2主面12mと対向する面である。
【0037】
内側面20iは、平面である。なお、本実施形態では、内側面20iの略全体が平面であるが、内側面20iのうち、少なくとも、移動体1の第2凸曲面部12と接触し得る部分(案内路20の中心付近)、が平面であればよい。内側面20iのうち、移動体1の第2凸曲面部12と接触し得ない部分(案内路20の周縁付近)は、例えば、湾曲したり、凹凸や溝などがあったりしてもよい。
【0038】
(1-2-1b)内底面
内底面20jは、移動体1の外周(通常、側面10s)と対向する面である。
【0039】
内底面20jは、例えば、図2等に示されるように、複数の平面を連結したものである。ただし、内底面20jは、一の曲面でも、平面と曲面とを組み合わせたものでもよい。
【0040】
移動体1は、バイク等の対象物の転倒時に、案内路20の内部を、回転軸202の方向(前後方向)と垂直な方向(左右方向)に変位可能である。
【0041】
(1-3)検出部
検出部4は、一対のコイル(41,41)を有する。
【0042】
なお、一対のコイル(41,41)の各々は、検知用コイルであり、検出部4は、参照用コイル(図示しない)を更に有していてもよい。検知用コイル、参照用コイルについては、後述する。
【0043】
(1-3-1)一対のコイル
一対のコイル(41,41)は、図2図4等に示されるように、案内路20において、対象物が所定の角度以上傾いたときに移動体1が到達する両端部と対向する位置、にそれぞれ設けられる。
【0044】
なお、本実施形態における傾きは、バイク等の対象物の進行方向(すなわち、前後方向)に対して垂直な方向(すなわち、左右方向)の傾きである。傾きは、例えば、図4に示すように、案内体2の主軸201(案内路20の対称軸)と鉛直線200とがなす角度θで表現される。
【0045】
検出部4は、移動体1が、一対のコイル(41,41)のいずれかと対向する位置まで変位することによる一対のコイル(41,41)のいずれかのインダクタンス又はインピーダンスの変化に基づいて、転倒状態を検出する。
【0046】
転倒状態とは、対象物が所定の角度(θth)以上傾いた状態である。なお、所定の角度θthは、例えば、60度であるが、50度~70度の範囲内の値でもよい。または、所定の角度θthは、45度~75度の範囲内の値でも、40度~80度の範囲内の値でも構わない。
【0047】
本実施形態における検出部4は、一対のコイル(41,41)のいずれかのインダクタンスの変化に基づいて、転倒状態を検出する。
【0048】
詳しくは、検出部4は、例えば、一対のコイル(41,41)の各々について、インダクタンスを計測する。そして、検出部4は、得られた2つの計測結果の各々を予め決められた閾値と比較し、いずれかの計測結果が予め決められた閾値を超えた場合に、転倒状態であると判断する。いずれの計測結果も予め決められた閾値を超えない場合は、転倒状態でないと判断される。
【0049】
具体的には、例えば、バイク等の対象物が直進走行している期間、案内体2は正立しており、案内体2の主軸201は、鉛直線200と平行(θ=0)である。対象物が転倒すると、案内体2が傾斜し、案内体2の主軸201は、鉛直線200に対して左又は右に所定の角度(θth)以上傾く(すなわち、θ≧θthとなる)。
【0050】
角度θがθth以上となると、移動体1は、案内路20内を左又は右に変位し、案内路20の左端部または右端部に到達する。これに応じて、一対のコイル(41,41)のいずれかのインダクタンスが変化する。検出部4は、こうして生じる一対のコイル(41,41)のいずれかのインダクタンスの変化を検知する。
【0051】
または、検出部4は、例えば、一対のコイル(41,41)のいずれかと参照コイル(図示しない)との間のインダクタンスの差分、の変化に基づいて、転倒状態を検出してもよい。
【0052】
詳しくは、検出部4は、参照用コイルのインダクタンスを計測し、その計測結果である参照値を取得する。なお、参照用コイルのインダクタンスの計測は、予め決められた時間間隔で定期的に、又は不定期に実行される。取得された参照値は、新たな参照値が取得されるまで保持される。
【0053】
また、検出部4は、一対のコイル(41,41)の各々について、インダクタンスを計測し、2つの計測結果の各々と、保持している参照値との差分を算出する。なお、一対のコイル(41,41)の各々についてのインダクタンスの計測、及び参照値との差分の算出は、参照用コイルのインダクタンスの計測に引き続いて実行される。
【0054】
そして、検出部4は、得られた2つの算出結果の各々を予め決められた閾値と比較し、いずれかの算出結果が予め決められた閾値を超えた場合に、転倒状態であると判断する。いずれの算出結果も予め決められた閾値を超えない場合は、転倒状態でないと判断される。
【0055】
なお、転倒状態は、一対のコイル(41,41)のいずれかのインピーダンスの変化、又は一対のコイル(41,41)のいずれかと参照コイルとの間のインピーダンスの差分の変化、に基づいて検出されてもよい。
【0056】
本実施形態では、一対のコイル(41,41)の各々は、プリント配線板40に形成されるコイルパターンから成る。なお、参照コイルも同様のコイルパターンから成る。ただし、一対のコイル(41,41)等の各々は、例えば、スプリング型のコイルでもよく、その形態は問わない。
【0057】
(1-3-2)プリント配線板
プリント配線板40には、検出部4の上記機能を実現する各種の回路部品(例えば、プロセッサ及びメモリ等:いずれも図示しない)が実装されている。
【0058】
プリント配線板40は、案内体2の内部に、案内路20に沿って配設される。
【0059】
本実施形態のプリント配線板40は、例えば、図2に示すように、案内体2の内部の、案内路20の開放された内側面側の略上半分を塞ぐ位置、に設けられる。
【0060】
(1-4)カバー
カバー3は、案内体2の主面と略同じ輪郭形状を有する。カバー3は、左右方向の中央かつ上下方向の下寄りの位置に、凹部30が形成されている。凹部30の深さ(前後方向の厚み)は、案内体2の厚みから案内路20の厚みを減じた長さ、と略同じである。
【0061】
カバー3は、案内体2の内部に移動体1及びプリント配線板40が収納された状態で、案内体2の開放された主面側を覆うように、案内体2に取り付けられる。
【0062】
案内路20の開放された内側面側の略下半分(つまり、プリント配線板40で覆われていない部分)は、カバー3に形成された凹部30によって覆われる。
【0063】
ただし、傾斜センサ100は、案内路20の開放された内側面側を覆うインナーカバー(図示しない)、を更に有していてもよい。その場合、プリント配線板40は、インナーカバーを介して、案内路20の上部側と対向する位置に設けられる。
【0064】
(2)移動体の詳細
本実施形態における移動体1は、例えば、図6に示されるように、第1主面11mと、第2主面12mと、側面10sと、第1凸曲面部11と、第2凸曲面部12と、を含む。
【0065】
ただし、移動体1は、図7Eに示されるように、側面10sを含まなくてもよい。なお、側面10sを含まないことは、例えば、図7Dに示される移動体1において、円板10の厚みが概ね0であることでもよい。
【0066】
第1主面11mは、プリント配線板40と対向する側の主面である。第2主面12mは、案内路20の内側面20iと対向する側の主面である。
【0067】
なお、第1主面11mと第2主面12mとは、通常、合同であるが、完全な合同でなくてもよい。
【0068】
(2-1)第1凸曲面部
第1凸曲面部11は、第1主面11mの少なくとも中央部に形成され、プリント配線板40に向かって凸の曲面を有する。
【0069】
第1凸曲面部11は、本実施形態では、図6に示されるように、第1主面11mの全部に形成される。だだし、第1凸曲面部11は、図7A図7Bに示されるように、第1主面11mの中央部のみに形成されてもよい。
【0070】
第1凸曲面部11が有する曲面は、例えば、扁球面(偏楕円面ともいう)である。第1凸曲面部11が有する扁球面は、例えば、扁球の表面を外周に沿って切った半分、又は半分に満たない範囲)である。ただし、曲面は、例えば、球面(例えば、球の表面の半分以下の範囲)でもよいし、双曲面、放物面等でもよい。
【0071】
(2-2)第2凸曲面部
第2凸曲面部12は、第2主面12mの少なくとも中央部に形成され、案内路20の内側面20iに向かって凸の曲面を有する。
【0072】
第2凸曲面部12は、本実施形態では、図6に示されるように、第2主面12mの全部に形成される。ただし、第2凸曲面部12は、図7A図7B図7Cに示されるように、第2主面12mの中央部のみに形成されてもよい。
【0073】
第2凸曲面部12が有する曲面は、第1凸曲面部11が有する曲面と同様、例えば、扁球面であるが、球面等でもよい。
【0074】
(2-3)第1凸曲面部と第2凸曲面部との関係
第1凸曲面部11と第2凸曲面部12とは、本実施形態では、図6に示されるように、同じサイズを有するが、異なるサイズを有していてもよい。サイズとは、例えば、主面に占める当該部位の割合である。詳しくは、例えば、図7Cに示されるように、第1凸曲面部11は、第1主面11mの略全部に形成され、第2凸曲面部12は、第2主面12mの中央部のみに形成されてもよい。
【0075】
また、サイズは、前後方向の厚みでもよい。例えば、第1凸曲面部11の厚みは、第2凸曲面部12の厚みよりも厚くてもよい。
【0076】
また、第1凸曲面部11が有する曲面と、第2凸曲面部12が有する曲面とは、本実施形態では、図6に示されるように、互いに合同である。ただし、これら2つの曲面は、合同でなくてもよく、例えば、曲率が異なっていてもよい。
【0077】
(2-4)側面
側面10sは、案内路20の内底面20jと対向する面であり、第1主面11m及び第2主面12mの各々の外周に沿う面である。
【0078】
本実施形態における側面10sは、例えば、扁球状の移動体1から外周部を面取りすることにより形成される、薄い円筒の形状を有する曲面である。第1主面11m及び第2主面12mの各々は、このような薄い円筒が有する2つの底面である。
【0079】
(2-5)移動体とプリント配線板等との接触
移動体1は、第1主面11m側の第1凸曲面部11がプリント配線板40(又はカバー3の凹部30)と、第2主面12m側の第2凸曲面部12が案内路20の内側面20iと、それぞれ間欠的に接触する。また、移動体1は、第1主面11m及び第2主面12mの各々に沿う側面10sが、案内路20の内底面20jと略常時接触する。
【0080】
(3)傾斜センサの動作例
本例において、対象物は、バイクである。また、移動体1は、アルミで成形(金型成形等)された扁球に対し、外周部を面取りして側面10sを形成したもの(図6参照)である。
【0081】
対象物が走行中または停止中に転倒すると、移動体1は、案内路20内を移動する。通常、移動体1は、回転軸202の周りを回転しながら、回転軸202に対して垂直な方向に移動する。
【0082】
移動中、移動体1の外周部(通常、側面10s)は、案内路20の内底面20jと略常時、線接触するため、移動体1の姿勢が安定する。また、移動体1の外周部と案内路20の内底面20jとの間で、線接触による摩擦力が生じ、その摩擦力によって移動体1は回転する。移動体1の姿勢は、回転することで一層安定する。
【0083】
一方、移動体1の第1凸曲面部11はプリント配線板40と、移動体1の第2凸曲面部12は案内路20の内側面20iと、それぞれ間欠的に接触する。ただし、対象物が減速(及び/又は前傾)している間(以下、減速/前傾期間)は、第1凸曲面部11がプリント配線板40と略常時接し、対処物が加速(及び/又は後傾)している間(以下、加速/後傾期間)は、第2凸曲面部12がプリント配線板40と略常時、接触する状態となる。
【0084】
減速/前傾期間に第1凸曲面部11とプリント配線板40(又はカバー3の凹部30)との間で生じる摩擦力と、加速/後傾期間に第2凸曲面部12と案内路20の内側面20iとの間で生じる摩擦力とは、いずれも移動体1の移動を妨げる。そして、特に、移動体1が、例えば、図5Aのように前傾(及び/又は減速)している状態で転倒した場合、または、図5Cのように後傾(及び/又は加速)している状態で転倒した場合、このような摩擦力は、その傾き(及び/又は加速度)に応じて増大する。
【0085】
しかし、本実施形態における移動体1は、図6図7A図7Eに示したような形状の第1凸曲面部11及び第2凸曲面部12を有するため、移動体1の移動を妨げる摩擦力の発生が抑制される。
【0086】
詳しくは、移動体1とプリント配線板40等との接触、及び移動体1と案内路20の内側面20iとの接触、がそれぞれ点接触に近付くことで、対象物が、図5Bのように正立して定速走行している状態に転倒した場合に限らず、図5Aのように前傾若しくは減速している状態で転倒した場合、及び図5Cのように後傾若しくは加速している状態で転倒した場合、のいずれでも、移動体1の変位の妨げとなる摩擦力の増大は、面接触の場合と比べて抑制される。
【0087】
以上のように、この実施形態では、第1主面11m及び第2主面12mの各々において、少なくとも中央部を凸曲面化することで、移動体1とプリント配線板40等との接触面積、及び移動体1と案内路20の内側面20iとの接触面積、がそれぞれ小さくなる(つまり、点接触に近付く)。これにより、移動体1の変位の妨げとなる摩擦力が抑制される結果、傾斜センサ100の検出精度の向上を図ることができる。
【0088】
(4)移動体の変形例
(4-1)変形例1
変形例1に係る移動体1は、図7Aに示すように、円板10と、第1凸曲面部11と、第2凸曲面部12とを含む。円板10は、第1主面11m、第2主面12m、及び側面10sを有する。第1凸曲面部11は、円板10を構成する第1主面11mの中央部に形成される。第2凸曲面部12は、円板10を構成する第2主面12mの中央部に形成される。
【0089】
すなわち、変形例1に係る移動体1は、実施形態に係る移動体1と同等の外形及び機能を有する。ただし、実施形態に係る移動体1は、全体が一体成形されるのに対し、変形例1に係る移動体1は、円板10、第1凸曲面部11及び第2凸曲面部12が個別に形成された後、一体化される点で異なる。
【0090】
この変形例によれば、第1主面11m及び第2主面12mの各々の中央部のみを凸曲面化することで、移動体1の軽量化を図ることができる。
【0091】
(4-2)変形例2
変形例2に係る移動体1は、図7Bに示すように、変形例1に係る移動体1(図7A参照)において、張出部111を更に備える。張出部111は、第1主面11mの、第1凸曲面部11が形成される部分とは異なる部分に形成される。張出部111は、プリント配線板40に向かって張り出す部位である。
【0092】
本変形例における張出部111は、プリント配線板40に対して平行な平面を有している。ただし、張出部111が有する平面は、プリント配線板40に対して傾斜していてもよい。
【0093】
また、張出部111は、プリント配線板40に向かって凸の曲面を有していてもよい。なお、張出部111が有する曲面は、第1凸曲面部11が有する曲面と同じ曲率を有していてもよい。
【0094】
張出部111は、通常、移動体1の他の部位と同様、導電材料で形成される。ただし、張出部111本体は、導電材料以外の材料(例えば、弾性材料)で形成され、張出部111本体の、プリント配線板40と対向する面(曲面又は平面)が、導電材料で被覆されてもよい。
【0095】
変形例2における張出部111は、図7Bに示されるように、第1主面11mの、第1凸曲面部11が形成されている部分を除いた残り、の一部にされている。ただし、張出部111は、第1主面11mの、第1凸曲面部11が形成されている部分を除いた残り、の全部に形成されていてもよい。
【0096】
この変形例によれば、第1主面11mにおいて、凸曲面化により張り出した中央部の周囲も張り出すことで、移動体1とプリント配線板40との間隔が縮小される。その結果、インダクタンス又はインピーダンスの変化の検出が容易となり、検出精度の更なる向上を図ることができる。
【0097】
なお、変形例2において、第2主面12m側にも、張出部111に相当する部位が形成されてもよい。すなわち、前述した張出部111は、第1張出部111であり、移動体1は、第2張出部(図示しない)を更に備えていてもよい。第2張出部は、第2主面12mの、第2凸曲面部12が形成されている部分とは異なる部分に形成され、案内路20の内側面20iに向かって張り出している。なお、第2張出部は、第1張出部111と合同であることが好適であるが、合同でなくてもよい。これによって、移動体1の対称性が高まり、移動体1の姿勢の安定化を図ることができる。
【0098】
(4-3)変形例3
変形例3に係る移動体1は、図7Cに示すように、変形例1に係る移動体1(図7A参照)において、第1凸曲面部11が、第1主面11mの略全部に形成されたものである。
【0099】
この変形例によれば、第1主面11m全体を凸曲面化することで、移動体1とプリント配線板40との接触面積を安定的に小さくするこができる。また、第1主面11m全体が凸曲面化により張り出す結果、移動体1とプリント配線板40等との間隔が縮小され、検出精度の更なる向上を図ることができる。
【0100】
(4-4)変形例4
変形例4に係る移動体1は、図7Dに示すように、変形例3に係る移動体1(図7C参照)において、第2凸曲面部12が、第2主面12mの略全部に形成されたものである。
【0101】
この変形例によれば、第2主面12m全体を凸曲面化することで、移動体1と案内路20の内側面20iとの接触面積を安定的に小さくすることができる。
【0102】
なお、変形例4において、第1凸曲面部11が有する曲面(又は第1凸曲面部11の断面)と、第2凸曲面部12が有する曲面(又は第2凸曲面部12の断面)とは、図7Dに示されるように、互いに合同である。ただし、これら2つの曲面(又は断面)は、完全に合同でなくてもよく、例えば、曲率(又は前後方向の厚み)が異なっていてもよい。
【0103】
これによって、移動体1の対称性が高まり、移動体1の姿勢変化が抑制される結果、検出精度の向上を図ることができる。
【0104】
(4-5)変形例5
変形例5に係る移動体1は、図7Eに示すように、変形例4に係る移動体1(図7D参照)において、円板10の厚みを略0としたものであり、側面を有さない。
【0105】
すなわち、変形例5に係る移動体1では、第1凸曲面部11が有する曲面の外周と、第2凸曲面部12が有する曲面の外周と、の間に側面は介在せず、それら2つの外周が直に結合している。
【0106】
これによって、移動体1の構造が簡単になり、製造の容易化及びコスト低下が図られる。
【0107】
なお、変形例5に係る移動体1では、第1凸曲面部11が有する曲面と、第2凸曲面部12が有する曲面との間の係合部は、図7Eに示されるように刃状であるが、結合部は、丸みを帯びていてもよい。
【0108】
特に、例えば、変形例5に係る移動体1において、第1凸曲面部11が有する曲面と、第2凸曲面部12が有する曲面とで、一の扁球の表面が構成されてもよい。このような移動体1は、実施形態に係る移動体1(図6参照)において、面取りを施す前の扁球、と同等のものである。
【0109】
この変形例によれば、単純な構造の移動体1を用いて、検出精度の向上を図ることができる。
【0110】
なお、実施形態及び変形例1-5では、移動体1は、通常、導電材料のみで形成される。ただし、変形例6,7で説明するように、移動体1は、導電材料と、導電材料以外の材料(以下、非導電材料)とで形成されてもよい。なお、非導電材料は、例えば、弾性材料である。弾性材料は、例えば、ゴム、エストラマ等であるが、弾性を有する材料であれば何でもよい。
【0111】
(4-6)変形例6
変形例6における移動体1は、金属等の導電材料で形成された移動体本体の表面の一部又は全部を、ゴム等の弾性材料で形成された弾性部材(図示しない)で覆ったもの、である。被覆は、移動体1の表面のうち外周を含む部分、に形成されることが好適である。
【0112】
本変形例の弾性部材は、移動体1(図6A図7A図7E参照)を構成する第1主面11m及び第2主面12mの各々の外周を少なくとも覆う。
【0113】
移動体1が、例えば、図6A図7A図7Eに示されるように、側面10sを含む場合、弾性部材は、第1主面11m及び第2主面12mの各々の外周に加えて、側面10sを更に覆う。
【0114】
例えば、図6Aに示した移動体1において、弾性部材は、第1主面11m及び第2主面12mの各々の外周近傍、及び側面10sを覆う。なお、このような弾性部材は、例えば、タイヤ形状を有するが、膜形状を有していてもよい。
【0115】
または、弾性部材は、例えば、図6Aに示した移動体1の表面全体(すなわち、第1凸曲面部11の曲面、第2凸曲面部12の曲面及び側面10s、の全部)を覆ってもよい。なお、このような弾性部材は、通常、膜形状を有する。
【0116】
この変形例によれば、移動体1の少なくとも外周を弾性部材で覆うことで、移動体1の移動に伴って、移動体1と案内路20の内底面20jとの接触により生じる雑音、の抑制を図ることができる。また、移動体の全体を弾性部材で覆うことで、雑音の更なる抑制を図ることもできる。
【0117】
(4-7)変形例7
変形例7における移動体1は、弾性材料で形成された移動体本体の表面に、導電材料で形成された被覆層(例えば、金属のメッキ層)を形成したもの、である。
【0118】
この変形例によれば、移動体1の略全体を弾性材料で形成したことで、移動体1の移動に伴う雑音の更なる抑制を図ることができる。
【0119】
(5)まとめ
本開示の第1の態様に係る傾斜センサ(100)は、導電材料で形成される扁平した回転体状の移動体(1)と、対象物に固定されて、内部を移動体(1)が回転軸(202)と垂直な方向に変位可能な案内路(20)、が設けられた案内体(2)と、一対のコイル(41,41)を有する検出部(4)と、を備える。一対のコイル(41,41)は、案内路(20)において、前記対象物が所定の角度以上傾いたときに移動体(1)が到達する両端部と対向する位置、にそれぞれ設けられる。検出部(4)は、移動体(1)が一対のコイル(41,41)のいずれかと対向する位置まで変位することによる一対のコイル(41,41)のいずれかのインダクタンス又はインピーダンスの変化に基づいて、前記対象物が所定の角度以上傾いた転倒状態を検出する。一対のコイル(41,41)の各々は、プリント配線板(40)に形成されるコイルパターンから成る。プリント配線板(40)は、案内体(2)の内部に案内路(20)に沿って配設される。移動体(1)は、第1主面(11m)と、第2主面(12m)と、第1凸曲面部(11)と、第2凸曲面部(12)と、を含む。第1主面(11m)は、プリント配線板(40)と対向する側の主面である。第2主面(12m)は、案内路(20)の内側面(20i)と対向する側の主面である。第1凸曲面部(11)は、第1主面(11m)の少なくとも中央部に形成され、プリント配線板(40)に向かって凸の曲面を有する。第2凸曲面部(12)は、第2主面(12m)の少なくとも中央部に形成され、内側面(20i)に向かって凸の曲面を有する。
【0120】
この態様によれば、第1主面(11m)及び第2主面(12m)の各々において少なくとも中央部を凸曲面化することで、移動体(1)と、プリント配線板(40)及び案内路(20)の内側面(20i)の各々との接触面積を小さくする(つまり、点接触に近付ける)ことが可能となる。これによって、対象物が前傾若しくは減速又は後傾若しくは加速しても、移動体(1)の変位の妨げとなる摩擦力の増大は、面接触の場合と比べて抑制されるので、検出精度の向上を図ることができる。
【0121】
第2の態様に係る傾斜センサ(100)では、第1の態様において、第1凸曲面部(11)は、第1主面(11m)の中央部に形成される。移動体(1)は、プリント配線板(40)に向かって張り出す張出部(111)を更に含む。張出部(111)は、第1主面(11m)の、第1凸曲面部(11)が形成される部分とは異なる部分に形成される。
【0122】
この態様によれば、第1主面(11m)において凸曲面化により張り出した中央部の周囲も張り出すことで、移動体(1)とプリント配線板(40)との間隔が縮小され、検出精度の更なる向上を図ることができる。
【0123】
第3の態様に係る傾斜センサ(100)では、第1の態様において、第1凸曲面部(11)は、第1主面(11m)の略全部に形成される。
【0124】
この態様によれば、第1主面(11m)全体を凸曲面化することで、移動体(1)とプリント配線板(40)との接触面積を安定的に小さくするこができる。また、第1主面(11m)全体が凸曲面化により張り出す結果、移動体(1)とプリント配線板(40)との間隔が縮小され、検出精度の更なる向上を図ることができる。
【0125】
第4の態様に係る傾斜センサ(100)では、第3の態様において、第2凸曲面部(12)は、第2主面(12m)の略全部に形成される。
【0126】
この態様によれば、第2主面(12m)全体を凸曲面化することで、移動体(1)と案内路(20)の内側面(20i)との接触面積を安定的に小さくすることができる。
【0127】
第5の態様に係る傾斜センサ(100)では、第4の態様において、第1凸曲面部(11)が有する曲面と第2凸曲面部(12)が有する曲面とは、互いに合同である。
【0128】
この態様によれば、移動体(1)の対称性が高まり、移動体(1)の姿勢変化が抑制される結果、検出精度の向上を図ることができる。
【0129】
第6の態様に係る傾斜センサ(100)は、第5の態様において、移動体(1)は、側面(10s)を更に含む。側面(10s)は、案内路(20)の内底面(20j)と対向する面であり、第1主面(11m)及び第2主面(12m)の各々の外周に沿う面である。
【0130】
この態様によれば、移動体(1)の側面(10s)が案内路(20)の内底面(20j)と線接触することで、移動体(1)の姿勢変化がより一層抑制される結果、検出精度の更なる向上を図ることができる。
【0131】
第7の態様に係る傾斜センサ(100)は、第5又は第6の態様において、移動体(1)は、回転軸(202)の方向に扁平した扁球又は略扁球の形状を有する。
【0132】
この態様によれば、単純な構造の移動体(1)を用いて、検出精度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0133】
100 傾斜センサ
1 移動体
10 円板
11 第1凸曲面部
12 第2凸曲面部
111 張出部(第1張出部)
10s 側面
11m 第1主面
12m 第2主面
2 案内体
20 案内路
20i 内側面
20j 内底面
3 カバー
30 凹部
4 検出部
40 プリント配線板
41 コイル
200 鉛直線
201 主軸
202 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7