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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034368
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】植木鉢及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20230306BHJP
【FI】
A01G9/02 101N
A01G9/02 101V
A01G9/02 101U
A01G9/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140571
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】521384201
【氏名又は名称】株式会社まる由
(71)【出願人】
【識別番号】521384212
【氏名又は名称】植物開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岡 由賢
(72)【発明者】
【氏名】杉山 拓巳
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NA10
2B327NB03
2B327NC02
2B327NC24
2B327NC40
2B327NC44
2B327ND01
2B327QA02
2B327QB14
2B327QB24
2B327QC23
2B327QC32
(57)【要約】
【課題】通気性と共に保水性を確保でき、植物の根の成長を促進できる植木鉢及びその製造方法を提供する。
【解決手段】上面が開口した鉢本体1の外周面に、複数の孔2が形成された植木鉢10である。鉢本体には、開口状に形成された上端開口部11と閉塞状に形成された下端底部12とを孔を有して連結するリブ部13を備え、少なくとも、リブ部は、上下方向に積層された積層部131から成り、積層部同士の間には、複数の微小隙間d3が形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した鉢本体の外周面に、複数の孔が形成された植木鉢であって、
前記鉢本体には、開口状に形成された上端開口部と閉塞状に形成された下端底部とを前記孔を有して連結するリブ部を備え、
少なくとも、前記リブ部は、上下方向に積層された積層部から成り、前記積層部同士の間には、複数の微小隙間が形成されていることを特徴とする植木鉢。
【請求項2】
請求項1に記載された観葉植物用の植木鉢において、
前記リブ部は、前記孔がリブ外周側よりリブ内周側で狭くなるように形成されていることを特徴とする植木鉢。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された植木鉢において、
前記積層部の微小隙間は、リブ外周側よりリブ内周側で大きく又は数多くなるように形成されていることを特徴とする植木鉢。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された植木鉢において、
前記下端底部の鉢内面は、中心部が外周部より高く略山型に形成され、前記孔の一部又は全部が前記外周部まで延設されていることを特徴とする植木鉢。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された植木鉢の製造方法であって、
溶融樹脂を紐状に吐出するノズルを有し、当該ノズルを立体的に移動させて立体造形物を形成する3次元造形装置を備え、
前記溶融樹脂を前記ノズルから吐出して水平状に積層した積層部から成る前記鉢本体の一部を造形する樹脂造形工程と、前記樹脂造形工程で積層した積層部同士の間に微小隙間が形成された状態で前記溶融樹脂を冷却させる樹脂冷却工程と、前記鉢本体の全体を造形したか否かを確認し、否の場合、前記樹脂造形工程と前記樹脂冷却工程とを繰り返させる確認工程と、を備えたことを特徴とする植木鉢の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植木鉢及びその製造方法に関し、詳しくは、通気性を有しつつ、保水性を有して植物の活性化を促進させることができる植木鉢及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、観葉植物は、部屋に飾ると落ち着いた雰囲気となって、心が癒される効果を備えている。そのため、各種の観葉植物が、鉢植えにして販売されている。ところが、鉢植えの観葉植物を室内で元気に育てて、長い期間観賞するためには、適当な日当たり、水やり、風通し、湿度、温度といった環境条件を整えることが大切である。従来から、この環境条件の内、特に風通しを良くして、根腐りを防止する植木鉢の工夫がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、通気性を好む風貴蘭に適した鉢を提供するため、上面が開口した椀状の鉢本体101の下部に、複数の脚部102を形成すると共に、鉢本体101の外周面に、縦方向に細長い複数の長孔103を開口してなる蘭用鉢(植木鉢)100が開示されている。
【0004】
この蘭用鉢(植木鉢)100は、合成樹脂により一体成形されて、鉢本体101の開口部104の外周部には、端縁が下方へ屈曲された鍔部105が形成されている。また、鉢本体101の底部には、鉢本体101が平坦面などに安定しておけるように、4箇所に脚部102が膨出形成されていると共に、各脚部102の底面には、水抜き孔106が開口されている。さらに、各長孔103の下端側には、長孔103を横切るように連接部107が形成されていて、鉢本体101が補強されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6-34435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された蘭用鉢(植木鉢)100は、以下のような問題があった。すなわち、鉢本体101の外周面に、縦方向に細長い複数の長孔103を開口しているので、根に対する通気性が向上して根腐りを低減できるものの、根の周りを保護する培養土や苔等が乾燥しやすく、頻繁に水やりを行う必要があるという欠点があった。
【0007】
また、植物の根は、光から逃げる負の屈光性を有するので、鉢本体101の外周面に形成された長孔103から光が鉢内の培養土等を照射すると、植物の根が、鉢の中心側へ逃げて鉢全体に張ることができない。そのため、根の成長を促進して、植物の活性化を図ることができないという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、通気性と共に保水性を確保でき、植物の根の成長を促進できる植木鉢及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る植木鉢及びその製造方法は、以下の構成を備えている。
(1)上面が開口した鉢本体の外周面に、複数の孔が形成された植木鉢であって、
前記鉢本体には、開口状に形成された上端開口部と閉塞状に形成された下端底部とを前記孔を有して連結するリブ部を備え、
少なくとも、前記リブ部は、上下方向に積層された積層部から成り、前記積層部同士の間には、複数の微小隙間が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、鉢本体には、開口状に形成された上端開口部と閉塞状に形成された下端底部とを孔を有して連結するリブ部を備え、少なくとも、リブ部は、上下方向に積層された積層部から成り、積層部同士の間には、複数の微小隙間が形成されているので、通気性と共に保水性を確保でき、植物SBの根NEの成長を促進できる。
【0011】
すなわち、鉢本体には、開口状に形成された上端開口部と閉塞状に形成された下端底部とを孔を有して連結するリブ部を備えているので、リブ部に形成された複数の孔を介して、鉢内の余分な水を外部へ排水できると同時に、鉢内外の通気性を確保できる。また、リブ部に形成された複数の孔から鉢内の余分な水を外部へ排水することによって、鉢内の培養土等に含まれる老廃物や雑菌等を外部へ流出させ、鉢内の清浄度を高めることができる。そのため、根腐りを低減し、根の成長を促進できる。
【0012】
また、少なくとも、リブ部は、上下方向に積層された積層部から成り、積層部同士の間には、複数の微小隙間が形成されているので、その微小隙間に鉢内に供給された水分や養分を蓄積し、植木鉢の保水性を高めることができる。そのため、鉢内の過度な乾燥を抑制して、頻繁な水やりを一定程度回避できる。
【0013】
さらに、植物の根は、光から逃げる負の屈光性を有するが、水分の豊富な方向へ屈曲する水分屈曲性という性質も持っている。そのため、長孔から光が鉢内の用土等を照射することによって、根がリブ部の内周面側に向けて伸び、リブ部を形成する積層部の微小隙間に蓄積された水分や養分を吸収して、根の成長を促進させることができる。
【0014】
よって、通気性と共に保水性を確保でき、植物の根の成長を促進できる植木鉢を提供することができる。
【0015】
(2)(1)に記載された植木鉢において、
前記リブ部は、前記孔がリブ外周側よりリブ内周側で狭くなるように形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、リブ部は、孔がリブ外周側よりリブ内周側で狭くなるように形成されているので、リブ外周側からより多くの光が孔を介して鉢内の用土等を照射することができる。そのため、根がリブ部の内周面側に向けてより多く伸び、リブ部を形成する積層部の微小隙間に蓄積された水分や養分をより多く吸収して、根の成長をより一層促進させることができる。
【0017】
また、リブ部は、孔がリブ外周側よりリブ内周側で狭くなるように形成されているので、リブ内周側でより多くの微小隙間を形成でき、その微小隙間に水分や養分を蓄積し、植木鉢の保水性をより一層高めることができる。
【0018】
さらに、孔がリブ外周側よりリブ内周側で狭くなるようにリブ部が形成されたことによって、孔を通して見える鉢内の用土等が目立ちにくくなると共に、リブ部を立体的に造形でき、植木鉢としてのデザイン性も向上できる。
【0019】
(3)(1)又は(2)に記載された観葉植物用の植木鉢において、
前記積層部の微小隙間は、リブ外周側よりリブ内周側で大きく又は数多くなるように形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、積層部の微小隙間は、リブ外周側よりリブ内周側で大きく又は数多くなるように形成されているので、リブ内周側でより多く保水することができる。そのため、根がリブ部の内周面側に向けてより多く伸び、リブ部を形成する積層部の微小隙間により多く蓄積された水分や養分を吸収して、根の成長をより一層促進させることができる。
【0021】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された植木鉢において、
前記下端底部の鉢内面は、中心部が外周部より高く略山型に形成され、前記孔の一部又は全部が前記外周部まで延設されていることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、下端底部の鉢内面は、中心部が外周部より高く略山型に形成され、孔の一部又は全部が外周部まで延設されているので、鉢本体の下端底部に溜まる余分な水を鉢内面の中心部から外周部へ流し、外周部まで延設された孔から外部へ排出させることができる。そのため、植木鉢の排水性を向上させ、根腐りを低減して、根の成長をより一層促進できる。
【0023】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された植木鉢の製造方法であって、
溶融樹脂を紐状に吐出するノズルを有し、当該ノズルを立体的に移動させて立体造形物を形成する3次元造形装置を備え、
前記溶融樹脂を前記ノズルから吐出して水平状に積層した積層部から成る前記鉢本体の一部を造形する樹脂造形工程と、前記樹脂造形工程で積層した積層部同士の間に微小隙間が形成された状態で前記溶融樹脂を冷却させる樹脂冷却工程と、前記鉢本体の全体を造形したか否かを確認し、否の場合、前記樹脂造形工程と前記樹脂冷却工程とを繰り返させる確認工程と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明においては、溶融樹脂を紐状に吐出するノズルを有し、当該ノズルを立体的に移動させて立体造形物を形成する3次元造形装置を備え、溶融樹脂をノズルから吐出して水平状に積層した積層部から成る鉢本体の一部を造形する樹脂造形工程と、樹脂造形工程で積層した積層部同士の間に微小隙間が形成された状態で溶融樹脂を冷却させる樹脂冷却工程と、鉢本体の全体を造形したか否かを確認し、否の場合、樹脂造形工程と樹脂冷却工程とを繰り返させる確認工程と、を備えたので、開口状に形成された上端開口部と閉塞状に形成された下端底部とを孔を有して連結するリブ部を備えた鉢本体を、樹脂の積層部によって連続的に造形でき、積層部同士の間に複数の微小隙間を形成することができる。そのため、孔を介して、鉢内の余分な水を外部へ排水できると同時に、鉢内外の通気性を確保でき、根腐りを低減し、根の成長を促進できる植木鉢を簡単に製造することができる。
【0025】
また、リブ部は、上下方向に積層された積層部から成り、積層部同士の間には、複数の微小隙間が形成されているので、その微小隙間に鉢内に供給した水分や養分を蓄積し、植木鉢の保水性を高めることができる。そのため、鉢内の過度な乾燥を抑制して、頻繁な水やりを一定程度回避できる。
【0026】
さらに、植物の根は、光から逃げる負の屈光性を有するが、水分の豊富な方向へ屈曲する水分屈曲性という性質も持っている。そのため、長孔から光が鉢内の用土等を照射することによって、根がリブ部の内周面側に向けて伸び、リブ部を形成する積層部の微小隙間に蓄積された水分や養分を吸収して、根の成長を促進させることができる。
【0027】
よって、通気性と共に保水性を確保でき、植物の根の成長を促進できる植木鉢の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、通気性と共に保水性を確保でき、植物の根の成長を促進できる植木鉢及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態の一態様に係る植木鉢の斜視図である。
図2図1に示すA矢視図である。
図3図2に示すB‐B断面図である。
図4図3に示すC-C断面図である。
図5図4に示すD-D断面図である。
図6図4に示すE矢視の写真図である。
図7図1に示す本植木鉢を用いて植物を育成する状態を示す概略断面図である。
図8図1に示す本植木鉢を製造する工程のフローチャート図である。
図9図1に示す本植木鉢を製造する製造過程の概略斜視図である。
図10】特許文献1に記載された蘭用鉢の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本実施形態の一態様に係る植木鉢及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本植木鉢における構成及び機能を詳細に説明した上で、本植木鉢の製造方法について詳細に説明する。
【0031】
<本植木鉢の構成及び機能>
まず、本植木鉢の構成及び機能について、図1図7を用いて詳細に説明する。図1に、本実施形態の一態様に係る植木鉢の斜視図を示す。図2に、図1に示すA矢視図を示す。図3に、図2に示すB‐B断面図を示す。図4に、図3に示すC-C断面図を示す。図5に、図4に示すD-D断面図を示す。図6に、図4に示すE矢視の写真図を示す。図7に、図1に示す本植木鉢を用いて植物を育成する状態を示す概略断面図を示す。
【0032】
図1図7に示すように、本植木鉢10は、上面が開口した鉢本体1の外周面に、細長い複数の長孔2が略上下方向に形成された植木鉢10であって、鉢本体1には、開口状に形成された上端開口部11と閉塞状に形成された下端底部12とを長孔2を隔てて連結する複数のリブ部13を備えている。また、少なくともリブ部13は、上下方向に積層された積層部131から成り、積層部131同士の間には、複数の微小隙間d3が形成されている。
【0033】
ここでは、鉢本体1は、上端開口部11が円環状に形成され、リブ部13の下方が円弧状に湾曲して形成され、全体としてお椀状に形成されているが、必ずしも、上記形状に限定されず、植える植物SBの種類や大きさ等に応じて、各種形状(例えば、お皿型、円筒型、角筒型等)にデザインすることができる。また、長孔2は、上下方向の長さが異なる2種類の長孔2を周方向で交互に配置されているが、これも上記形状に限定する必要はない。例えば、丸孔や角孔、斜めに螺旋状に形成された略螺旋状長孔等でも良い。よって、鉢本体1には、開口状に形成された上端開口部11と閉塞状に形成された下端底部12とを孔2を有して連結するリブ部13を備えている。また、リブ部13における積層部131の厚さは、例えば、0.1~0.2mm程度が好ましく、微小隙間d3は、0.01~0.03mm程度が好ましい。なお、リブ内周13N側の長孔2の幅d1は、鉢内に収容する用土(赤玉土等)BDの粒度に応じて設定し、上下方向で略同一の幅が好ましい。また、鉢本体1の下端底部12には、脚部が形成されていないが、適宜形状の脚部を設けても良い。
【0034】
本植木鉢10は、上記構成を有することによって、通気性と共に保水性を確保でき、植物SBの根NEの成長を促進できる。具体的には、鉢本体1には、開口状に形成された上端開口部11と閉塞状に形成された下端底部12とを長孔2を隔てて連結する複数のリブ部13を備えているので、隣接するリブ部13同士の間に形成された複数の細長い長孔(孔)2を介して、鉢内の余分な水を外部へ排水できると同時に、鉢内外の通気性を確保できる。また、リブ部13に形成された複数の長孔(孔)2から鉢内の余分な水を外部へ排水することによって、鉢内の培養土等に含まれる老廃物や雑菌等を外部へ流出させ、鉢内の清浄度を高めることができる。そのため、根腐りを低減し、根NEの成長を促進できる。
【0035】
また、リブ部13は、上下方向に積層された積層部131から成り、積層部131同士の間には、複数の微小隙間d3が形成されているので、その微小隙間d3に鉢内に供給する水分や養分を蓄積し、植木鉢10の保水性を高めることができる。そのため、鉢内の過度な乾燥を抑制して、頻繁な水やりを一定程度回避できる。なお、リブ部13は、上下方向の中間部が略円弧状に外方へ膨出して形成されている。これによって、植木鉢10の保水性をより一層高めることができる。
【0036】
さらに、植物SBの根NEは、光から逃げる負の屈光性を有するが、水分の豊富な方向へ屈曲する水分屈曲性という性質も持っている。そのため、長孔(孔)2から光が鉢内の用土BD等を照射することによって、根NEがリブ部13の内周面側に向けて伸び、リブ部13を形成する積層部131の微小隙間d3に蓄積された水分や養分を吸収して、根NEの成長を促進させることができる。
【0037】
よって、通気性と共に保水性を確保でき、植物SBの根NEの成長を促進できる植木鉢10を提供することができる。なお、本植木鉢10は、例えば、モンテスラ、アンスリウム等の熱帯性の観葉植物や、白ボタン等の多肉植物、サボテン等の乾燥性の観葉植物など、様々な観葉植物に適用することができる。また、上記観葉植物に限らず、バラや蘭などの花観賞植物、イチゴなどの農産植物等、様々な種類の植物に適用することができる。
【0038】
また、本植木鉢10においては、リブ部13は、長孔2の横幅d1、d2(孔2の大きさ)がリブ外周13G側よりリブ内周13N側で狭くなるよう略台形状断面に形成されていることが好ましい。
【0039】
この場合、リブ外周13G側からより多くの光が鉢内の用土BD等を照射することができる。そのため、根NEは、光から逃げようとして、リブ部13の内周面側に向けてより多く伸び、リブ部13を形成する積層部131の微小隙間d3に蓄積された水分や養分をより多く吸収して、根NEの成長をより一層促進させることができる。
【0040】
また、リブ部13は、長孔2の横幅d1、d2(孔2の大きさ)がリブ外周13G側よりリブ内周13N側で狭くなるよう略台形状断面に形成されているので、リブ内周13N側でより多くの微小隙間d3を形成でき、その微小隙間d3に水分や養分を蓄積し、植木鉢10の保水性をより一層高めることができる。
【0041】
さらに、長孔2の横幅d1、d2(孔2の大きさ)がリブ外周13G側よりリブ内周13N側で狭くなり、リブ部13が略台形状断面に形成されたことによって、長孔2を通して見える鉢内の用土BD等が目立ちにくくなると共に、リブ部13を立体的に造形でき、植木鉢10としての大きさや形状の自由度を含めたデザイン性も向上できる。
【0042】
また、本植木鉢10においては、積層部131の微小隙間d3は、リブ外周13G側よりリブ内周13N側で大きく又は数多くなるように形成されていることが好ましい。
【0043】
この場合、リブ内周13N側でより多く保水することができる。そのため、根NEがリブ部13の内周面側に向けてより多く伸び、リブ部13を形成する積層部131の微小隙間d3により多く蓄積された水分や養分を吸収して、根NEの成長をより一層促進させることができる。
【0044】
また、本植木鉢10においては、下端底部12の鉢内面121は、中心部121Tが外周部121Gより高く略山型に形成され、長孔(孔)2の一部又は全部が外周部121Gまで延設されていることが好ましい。ここでは、長さの異なる2種類の長孔2の内、長さの大きい長孔2の端縁が、下端底部12の外周部121Gまで延設されている。
【0045】
この場合、鉢本体1の下端底部12に溜まる余分な水を鉢内面121の中心部121Tから外周部121Gへ流し、外周部121Gまで延設された長孔(孔)2から外部へ排出させることができる。そのため、植木鉢10の排水性をより一層向上させ、根腐りを低減して、根NEの成長をより一層促進できる。
【0046】
<本植木鉢10の製造方法>
次に、本植木鉢10の製造方法を、図8図9を用いて説明する。図8に、図1に示す本植木鉢を製造する工程のフローチャート図を示す。図9に、図1に示す本植木鉢を製造する製造過程の概略斜視図を示す。
【0047】
図8図9に示すように、本植木鉢10の製造方法は、溶融樹脂YGを紐状に吐出するノズル51を有し、当該ノズル51を立体的に移動させて立体造形物を形成する3次元造形装置50を備え、樹脂造形工程S1と、樹脂冷却工程S2と、確認工程S3と、を備えている。
【0048】
ここで、樹脂造形工程S1は、溶融樹脂YGをノズル51から吐出して水平状に積層した積層部131から成る鉢本体1の一部を造形する工程である。溶融樹脂YGは、熱可塑性の樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)から成る樹脂ワイヤをノズル51内で加熱軟化して、基板上に吐出する。ノズル51から吐出した溶融樹脂YGによって、積層部131を水平状に形成し、水平状に形成した積層部131を上下方向で積層させながら鉢本体1を造形する。具体的には、はじめに下端底部12を造形した後、全部のリブ部13が水平面で等しい高さになるように積層部131を1つ1つ水平状に積層し、最後に上端開口部11の積層部131を水平状に積層して鉢本体1の全体形状を造形する。なお、1つ1つの積層部131は、溶融樹脂YGを鉢本体1の外縁部に沿って吐出し、外縁部から徐々に内方へ吐出することによって水平状に形成する。
【0049】
また、樹脂冷却工程S2は、樹脂造形工程S1で積層した積層部131同士の間に複数の微小隙間d3が形成された状態で溶融樹脂YGを冷却させる工程である。冷却された溶融樹脂YGは、下層の積層部131の樹脂と溶着される。溶融樹脂YGを積層した状態では、形状が柔らかくて、次の積層部131を直ぐに積層すると、下層の積層部131が変形する可能性がある。そのため、下層の積層部131を形成した段階で、一旦、所定の時間を置いて冷却させた後に、上層の積層部131を形成する溶融樹脂YGを吐出する。なお、リブ部13の積層部131は、別のリブ部13の積層部131を形成している間に、冷却させることができる。
【0050】
また、確認工程S3は、鉢本体1の全体を造形したか否かを確認し、否の場合、樹脂造形工程S1と樹脂冷却工程S2とを繰り返させる工程である。確認工程S3は、例えば、3次元造形装置50に入力し、記憶された鉢本体1の3次元形状データとノズル51の位置データとを比較して、鉢本体1の全体を造形したか否かを判定する。否の場合、樹脂造形工程S1と樹脂冷却工程S2とを繰り返して、鉢本体1の全体を造形した後に、終了する。
【0051】
本植木鉢10の製造方法によれば、開口状に形成された上端開口部11と閉塞状に形成された下端底部12とを長孔2を隔てて連結する複数のリブ部13を備えた鉢本体1を、樹脂の積層部131によって連続的に造形でき、積層部131同士の間に複数の微小隙間d3を形成することができる。そのため、長孔2を介して、鉢内の余分な水を外部へ排水できると同時に、鉢内外の通気性を確保でき、根腐りを低減し、根NEの成長を促進できる観葉植物用の植木鉢10を簡単に製造することができる。
【0052】
また、リブ部13は、上下方向に積層された積層部131から成り、積層部131同士の間には、微小隙間d3が形成されているので、その微小隙間d3に鉢内に供給した水分や養分を蓄積し、植木鉢10の保水性を高めることができる。そのため、鉢内の過度な乾燥を抑制して、頻繁な水やりを一定程度回避できる。
【0053】
さらに、植物SBの根NEは、光から逃げる負の屈光性を有するが、水分の豊富な方向へ屈曲する水分屈曲性という性質も持っている。そのため、長孔2から光が鉢内の用土BD等を照射することによって、根NEがリブ部13の内周面側に向けて伸び、リブ部13を形成する積層部131の微小隙間d3に蓄積された水分や養分を吸収して、根NEの成長を促進させることができる。
【0054】
よって、通気性と共に保水性を確保でき、植物SBの根NEの成長を促進できる植木鉢10の製造方法を提供することができる。
【0055】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る植木鉢10によれば、鉢本体1には、開口状に形成された上端開口部11と閉塞状に形成された下端底部12とを孔2を有して連結するリブ部13を備え、少なくとも、リブ部13は、上下方向に積層された積層部131から成り、積層部131同士の間には、複数の微小隙間d3が形成されているので、通気性と共に保水性を確保でき、植物SBの根NEの成長を促進できる。
【0056】
すなわち、鉢本体1には、開口状に形成された上端開口部11と閉塞状に形成された下端底部12とを孔2を有して連結するリブ部13を備えているので、リブ部13に形成された複数の孔2を介して、鉢内の余分な水を外部へ排水できると同時に、鉢内外の通気性を確保できる。また、リブ部13に形成された複数の孔2から鉢内の余分な水を外部へ排水することによって、鉢内の培養土等に含まれる老廃物や雑菌等を外部へ流出させ、鉢内の清浄度を高めることができる。そのため、根腐りを低減し、根NEの成長を促進できる。
【0057】
また、少なくとも、リブ部13は、上下方向に積層された積層部131から成り、積層部131同士の間には、複数の微小隙間d3が形成されているので、その微小隙間d3に水分や養分を蓄積し、植木鉢10の保水性を高めることができる。そのため、鉢内の過度な乾燥を抑制して、頻繁な水やりを一定程度回避できる。
【0058】
さらに、植物SBの根NEは、光から逃げる負の屈光性を有するが、水分の豊富な方向へ屈曲する水分屈曲性という性質も持っている。そのため、長孔2から光が鉢内の用土BD等を照射することによって、根NEがリブ部13の内周面側に向けて伸び、リブ部13を形成する積層部131の微小隙間d3に蓄積された水分や養分を吸収して、根NEの成長を促進させることができる。
【0059】
よって、本実施形態によれば、通気性と共に保水性を確保でき、植物SBの根NEの成長を促進できる植木鉢10を提供することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、リブ部13は、孔2がリブ外周13G側よりリブ内周13N側で狭くなるように形成されているので、リブ外周13G側からより多くの光が鉢内の用土BD等を照射することができる。そのため、根NEがリブ部13の内周面側に向けてより多く伸び、リブ部13を形成する積層部131の微小隙間d3に蓄積された水分や養分をより多く吸収して、根NEの成長をより一層促進させることができる。
【0061】
また、リブ部13は、孔2がリブ外周13G側よりリブ内周13N側で狭くなるように形成されているので、リブ内周13N側でより多くの微小隙間d3を形成でき、その微小隙間d3に水分や養分を蓄積し、植木鉢10の保水性をより一層高めることができる。
【0062】
さらに、孔2がリブ外周13G側よりリブ内周13N側で狭くなるようにリブ部13が形成されたことによって、孔2を通して見える鉢内の用土BD等が目立ちにくくなると共に、リブ部13を立体的に造形でき、植木鉢10としての大きさや形状の自由度を含めたデザイン性も向上できる。
【0063】
また、本実施形態によれば、積層部131の微小隙間d3は、リブ外周13G側よりリブ内周13N側で大きく又は数多くなるように形成されているので、リブ内周13N側でより多く保水することができる。そのため、根NEがリブ部13の内周面側に向けてより多く伸び、リブ部13を形成する積層部131の微小隙間d3により多く蓄積された水分や養分を吸収して、根NEの成長をより一層促進させることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、下端底部12の鉢内面121は、中心部121Tが外周部121Gより高く略山型に形成され、孔2の一部又は全部が外周部121Gまで延設されているので、鉢本体1の下端底部12に溜まる余分な水を鉢内面121の中心部121Tから外周部121Gへ流し、外周部121Gまで延設された孔2から外部へ排出させることができる。そのため、植木鉢10の排水性を向上させ、根腐りを低減して、根NEの成長をより一層促進できる。
【0065】
また、本他の実施形態に係る植木鉢の製造方法によれば、溶融樹脂YGを紐状に吐出するノズル51を有し、当該ノズル51を立体的に移動させて立体造形物を形成する3次元造形装置50を備え、溶融樹脂YGをノズル51から吐出して水平状に積層した積層部131から成る鉢本体1の一部を造形する樹脂造形工程S1と、樹脂造形工程S1で積層した積層部131同士の間に微小隙間d3が形成された状態で溶融樹脂YGを冷却させる樹脂冷却工程S2と、鉢本体1の全体を造形したか否かを確認し、否の場合、樹脂造形工程S1と樹脂冷却工程S2とを繰り返させる確認工程S3と、を備えたので、開口状に形成された上端開口部11と閉塞状に形成された下端底部12とを孔2を有して連結するリブ部13を備えた鉢本体1を、樹脂の積層部131によって連続的に造形でき、積層部131同士の間に微小隙間d3を形成することができる。そのため、孔2を介して、鉢内の余分な水を外部へ排水できると同時に、鉢内外の通気性を確保でき、根腐りを低減し、根NEの成長を促進できる植木鉢10を簡単に製造することができる。
【0066】
また、リブ部13は、上下方向に積層された積層部131から成り、積層部131同士の間には、微小隙間d3が形成されているので、その微小隙間d3に水分や養分を蓄積し、植木鉢10の保水性を高めることができる。そのため、鉢内の過度な乾燥を抑制して、頻繁な水やりを一定程度回避できる。
【0067】
さらに、植物SBの根NEは、光から逃げる負の屈光性を有するが、水分の豊富な方向へ屈曲する水分屈曲性という性質も持っている。そのため、長孔2から光が鉢内の用土BD等を照射することによって、根NEがリブ部13の内周面側に向けて伸び、リブ部13を形成する積層部131の微小隙間d3に蓄積された水分や養分を吸収して、根NEの成長を促進させることができる。
【0068】
よって、本他の実施形態によれば、通気性と共に保水性を確保でき、植物SBの根NEの成長を促進できる植木鉢10の製造方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、通気性を有しつつ、保水性を有して植物の活性化を促進させることができる植木鉢及びその製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 鉢本体
2 長孔、孔
10 植木鉢
11 上端開口部
12 下端底部
13 リブ部
13G リブ外周
13N リブ内周
50 3次元造形装置
51 ノズル
121 鉢内面
121G 外周部
121T 中心部
131 積層部
d1、d2 横幅
d3 微小隙間
S1 樹脂造形工程
S2 樹脂冷却工程
S3 確認工程
YG 溶融樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10