(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034387
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】廃棄物の処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20230306BHJP
B09B 3/30 20220101ALI20230306BHJP
C04B 7/38 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B09B5/00 N ZAB
B09B3/00 Z
C04B7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140606
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 建
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 洸
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA33
4D004AA36
4D004AA37
4D004BA02
4D004BA05
4D004CA04
4D004CA09
4D004CA15
4D004CB13
4D004DA03
4D004DA09
4D004DA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】焼却灰と廃コンクリートの効率的な処理方法を提供する。
【解決手段】焼却灰と廃コンクリートとを混合する混合工程と、混合工程により得られた混合物を破砕する破砕工程と、破砕工程で得られた破砕物を風力選別及び篩選別から選択される1以上に供し、風力選別により分離された重量物、及び/又は篩選別により分離された篩上を次工程に供給し、風力選別により分離された軽量物、及び/又は篩選別により分離された篩下をセメント原料として回収するセメント原料回収工程と、セメント原料回収工程からの供給物を、磁力選別、渦電流選別及び比重選別から選択される1以上に供して金属を回収する金属回収工程を含む、廃棄物の処理方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰と廃コンクリートとを混合する混合工程と、
混合工程により得られた混合物を破砕する破砕工程と、
破砕工程で得られた破砕物を風力選別及び篩選別から選択される1以上に供し、風力選別により分離された重量物、及び/又は篩選別により分離された篩上を次工程に供給し、風力選別により分離された軽量物、及び/又は篩選別により分離された篩下をセメント原料として回収するセメント原料回収工程と、
セメント原料回収工程からの供給物を、磁力選別、渦電流選別及び比重選別から選択される1以上に供して金属を回収する金属回収工程
を含む、廃棄物の処理方法。
【請求項2】
金属回収工程が、セメント原料回収工程からの供給物を磁力選別して磁着物と非磁着物とに分離し、磁着物として鉄スクラップを回収し、非磁着物を次工程に供給する第1の工程と、
第1の工程からの非磁着物を渦電流選別して非磁性金属と非金属とに分離し、非金属として再生骨材及び/又は路盤材を回収し、非磁性金属を次工程に供給する第2の工程と、
第2の工程からの非磁性金属を比重選別して重産物と軽産物とに分離し、重産物として貴金属を回収し、軽産物としてアルミニウムを回収する第3の工程を含む、請求項1記載の廃棄物の処理方法。
【請求項3】
焼却灰と廃コンクリートとを、両者の質量比(廃コンクリート/焼却灰)が1/7以上となる割合で混合する、請求項1又は2記載の廃棄物の処理方法。
【請求項4】
焼却灰及び廃コンクリートの大きさが40mm未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の廃棄物の処理方法。
【請求項5】
焼却灰の水分含量が15質量%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の廃棄物の処理方法。
【請求項6】
破砕工程において、混合物の大きさを20mm未満に破砕する、請求項1~5のいずれか1項に記載の廃棄物の処理方法。
【請求項7】
廃コンクリート破砕物を有効成分とする、焼却灰の付着防止剤又は団粒化防止剤。
【請求項8】
焼却灰と廃コンクリート破砕物とを混合する、焼却灰の付着又は団粒化の防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント工場では、廃棄物の焼却処理に伴って排出される焼却灰をセメント原料として再利用しているが、原料として投入される前に焼却灰に含まれる金属塊等の異物を除去するために、破砕、篩分け、磁力選別等の前処理が実施されている。しかし、焼却灰は水冷処理や発塵防止のための散水によって水分を多く含んでいるため、そのまま前処理工程に焼却灰を投入すると、設備内部に多量の焼却灰の付着や灰の団粒化が発生して設備内が閉塞し、処理量の低下や設備の停止、付着物の除去作業等により製造効率が低下する。その対策として焼却灰を加熱して乾燥し、水分を低減させる方法が考えられるが、熱源の確保には大きなエネルギーが必要となる。また、焼却灰の天日乾燥も考えられるが、多湿な気候の地域では安定的に水分を減じることが難しい。
【0003】
そこで、焼却灰を改質して付着や団粒化を防止する技術が種々の検討されている。例えば、焼却灰の破砕又は分級前に、都市ごみの焼却飛灰、石炭飛灰、石灰石粉及び砂粉砕物から選択される改質材として団粒化を防止する方法(特許文献1)、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、セメント等の改質材を添加することにより放射性セシウムで汚染された都市ごみ焼却灰の付着を防止する方法(特許文献2)、焼却灰に酸化カルシウム等の固着防止材を混合して固着を防止する方法(特許文献3)、リグニン系化合物等の有機化合物を添加して焼却灰の固着を防止する方法(特許文献4)が提案されている。
【0004】
他方、廃コンクリートは、破砕・分級により路盤材としての再利用が広く行われているほか、骨材粒子からセメント分を粉砕によって除去して再生骨材を製造する方法が多く開発されている。例えば、特許文献5には、廃コンクリートを粗破砕及び篩分けし、篩残留分を破砕、磨砕、分級して再生粗骨材と再生細骨材と廃コンクリート微粉末とに分離回収する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-58059号公報
【特許文献2】特許第6313205号明細書
【特許文献3】特開2020-124679号公報
【特許文献4】特開2001-4121号公報
【特許文献5】特開2012-17227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~4に記載の方法は、いずれも一般に有価で扱われる材料を付着防止材として使用するものであり、処理すべき焼却灰が増量するほどコストが増加するという課題がある。また、特許文献5の記載の方法によれば、セメント原料のうちカルシウム源である石灰石を代替することができるが、骨材混入によるアルカリ成分の上昇や採算性が課題となる。従来、焼却灰と廃コンクリートは、その再利用法について個別に検討がなされているだけで、両者を同時に処理して再利用することは検討されていない。
本発明の課題は、焼却灰と廃コンクリートの効率的な処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、焼却灰と廃コンクリートを同時に再利用すべく検討したところ、廃コンクリートが焼却灰の付着・団粒化の防止効果を発現し、従来使用されていた固着防止材を要せずとも、焼却灰のハンドリング性を改善できることを見出した。また、焼却灰中の金属粒子が廃コンクリートの粉砕媒体として機能するため、焼焼却灰と廃コンクリートとの混合物を破砕して特定の物理選別に供することで、セメント原料と金属とを選別回収できることを本発明者らは見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔8〕を提供するものである。
〔1〕焼却灰と廃コンクリートとを混合する混合工程と、
混合工程により得られた混合物を破砕する破砕工程と、
破砕工程で得られた破砕物を風力選別及び篩選別から選択される1以上に供し、風力選別により分離された重量物、及び/又は篩選別により分離された篩上を次工程に供給し、風力選別により分離された軽量物、及び/又は篩選別により分離された篩下をセメント原料として回収するセメント原料回収工程と、
セメント原料回収工程からの供給物を、磁力選別、渦電流選別及び比重選別から選択される1以上に供して金属を回収する金属回収工程
を含む、廃棄物の処理方法。
〔2〕 金属回収工程が、セメント原料回収工程からの供給物を磁力選別して磁着物と非磁着物とに分離し、磁着物として鉄スクラップを回収し、非磁着物を次工程に供給する第1の工程と、
第1の工程からの非磁着物を渦電流選別して非磁性金属と非金属とに分離し、非金属として再生骨材及び/又は路盤材を回収し、非磁性金属を次工程に供給する第2の工程と、
第2の工程からの非磁性金属を比重選別して重産物と軽産物とに分離し、重産物として貴金属を回収し、軽産物としてアルミニウムを回収する第3の工程を含む、前記〔1〕記載の廃棄物の処理方法。
〔3〕焼却灰と廃コンクリートとを、両者の質量比(廃コンクリート/焼却灰)が1/7以上となる割合で混合する、前記〔1〕又は〔2〕記載の廃棄物の処理方法。
〔4〕焼却灰及び廃コンクリートの大きさが40mm未満である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の廃棄物の処理方法。
〔5〕焼却灰の水分含量が15質量%以上である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の廃棄物の処理方法。
〔6〕破砕工程において、混合物の大きさを20mm未満に破砕する、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一に記載の廃棄物の処理方法。
〔7〕廃コンクリート破砕物を有効成分とする、焼却灰の付着防止剤又は団粒化防止剤。
〔8〕焼却灰と廃コンクリート破砕物とを混合する、焼却灰の付着又は団粒化の防止方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、廃棄物である焼却灰と廃コンクリートを同時に処理することで、焼却灰の付着・団粒化を防止しつつ、廃棄物に含まれる有価物を効率よく選別回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の廃棄物の処理方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の廃棄物の処理方法は、混合工程、破砕工程、セメント原料回収工程及び金属回収工を含むことを特徴とする。以下、各工程について詳細に説明する。
【0012】
〔混合工程〕
本工程は、焼却灰と廃コンクリートとを混合する工程である。これにより、焼却灰の付着・団粒化を防止することができる。
本工程では、焼却灰として、都市ゴミ、産業廃棄物、下水汚泥を焼却炉で焼却した際に炉底に溜まる焼却主灰(ボトムアッシュ)が好適に使用され、焼却主灰には焼却した際の排ガス中の煤塵である焼却飛灰(フライアッシュ)が含まれていてもよい。なお、産業廃棄物としては、例えば、廃自動車、廃家電、自動販売機、OA機器等のシュレッダーダスト、建築廃プラスチック、農業廃プラスチック、漁業廃プラスチック、海洋廃プラスチック等の廃プラスチックを挙げることができる。
【0013】
焼却灰の水分含量は、本発明の効果を享受しやすい点で、15質量%以上が好ましく、18質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。なお、かかる水分含量の上限値は、通常35質量%以下であり、好ましくは30質量%以下である。
【0014】
焼却灰は、搬入された際の大きさが通常40mm未満であり、そのまま使用することが可能であるが、付着・団粒化防止、混合効率の観点から、35mm未満が好ましく、30mm未満が更に好ましい。なお、焼却灰の大きさの下限値は特に限定されないが、生産効率の観点から、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1mm以上が更に好ましい。なお、焼却灰の大きさが40mm未満とは、篩目が40mmである篩を通過する大きさであることを意味する。本明細書において、焼却灰、並びに後述する廃コンクリート及び混合物の大きさは、試料が通過した篩の篩目を指標に判断するものとする。
【0015】
廃コンクリートとしては、土木工事や構造物の解体等によって発生する解体コンクリートや、建築物等の建設時等に発生した余剰コンクリート等を挙げることができる。
廃コンクリートとしては、鉄筋等の異物を分離する目的で小割り、磁力選別、手選別されたコンクリート塊を用いることができる。
【0016】
また、廃コンクリートは、一般的に焼却灰より粗大であるため、大き過ぎて混合等に支障をきたす場合は、混合前に廃コンクリートのみ予備粉砕を行ってもよい。予備粉砕には、例えば、破砕機を用いることができる。破砕機としては、例えば、ジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロールクラッシャー、ロータリークラッシャーが挙げられる。なお、破砕機には、廃コンクリートの粒度を調整するために、所望する篩目のスクリーンを装着するか、あるいはスクリーンを装着しない場合には、固定歯、回転歯、内壁等を所望するクリアランスに調整すればよい。
【0017】
廃コンクリートの大きさは、混合効率の観点から、40mm未満が好ましく、35mm未満がより好ましく、30mm未満が更に好ましい。なお、廃コンクリートの大きさの下限値は特に限定されないが、生産効率の観点から、0.25mm以上が好ましく、0.5m以上がより好ましく、1mm以上が更に好ましい。
【0018】
焼却灰と廃コンクリートとの混合は、混合装置を用いることができる。
混合装置の種類は特に限定されないが、例えば、固定容器型の混合装置として、リボンミキサー、スクリューミキサー、プラネタリーミキサーを用いることが可能であり、容器回転型の混合装置として、例えば、水平円筒型ミキサー、V型ミキサーを用いることができる。また、自走式耕運機やホイルローダー、バックホー、ブルドーザー等の重機を用いて床面で混合を行ってもよく、スコップ等を用いて人力により切り返しを行って混合してもよい。
【0019】
焼却灰と廃コンクリートとの混合割合は特に限定されないが、焼却灰が多すぎると付着を防ぐことができないため、両者の質量比(廃コンクリート/焼却灰)は、1/7以上が好ましく、1/6以上がより好ましく、1/5以上が更に好ましい。また、廃コンクリートが多すぎると有価金属の回収量が低下するため、両者の質量比(廃コンクリート/焼却灰)は、10/1以下が好ましく、8/1以下がより好ましく、6/1以下が好ましい。
【0020】
〔破砕工程〕
本工程は、混合工程により得られた混合物を破砕する工程である。これにより、焼却灰を融着した金属とスラグ相とに分離し、廃コンクリートを骨材とモルタルに分離することができる。
本工程では、例えば、破砕機を用いることが可能であり、例えば、上記において説明した破砕機を用いることができる。なお、破砕機に所望の篩目のスクリーンの装着や、固定歯等のクリアランスの調整により、粒度を調整してもよい。
【0021】
本工程では、焼却灰の付着・団粒化の防止、有価物の選別回収の観点から、混合物の大きさを20mm未満となるように破砕することが好ましく、15mm未満となるように破砕することが更に好ましい。なお、混合物の大きさの下限値は特に限定されない。
【0022】
本工程は、2回以上行ってもよい。例えば、1回目の粉砕(1次破砕)は体積粉砕を目的とし、2回目の破砕(2次破砕)は表面粉砕を目的に行うことができる。2次破砕で表面粉砕を行うことで、焼却灰中の金属粒子が粉砕媒体として機能するため、粒子同士の衝突が増加し、焼却灰に含まれる金属粒子から灰分を分離し、また廃コンクリートに含まれる骨材からセメントペーストを剥離することができる。例えば、1次破砕では、大きな粒子を破壊することができる装置が望ましく、例えば、ジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、ボールミルを使用することができる。また、2次破砕では、固い粒子の表面に付着した異なる成分を剥離することができる装置が望ましく、例えば、機械擦り揉み方式、スクリュー摩砕方式及び偏心ローター方式から選択される1以上の粉砕機を使用することができる。機械擦り揉み方式としては、例えば、攪拌型ミル、ローラーミル、ボールミル、ロッドミル、自生粉砕ミルが挙げられる。スクリュー摩砕方式としては、回転するスクリューの摩擦によって削り取るものであれば特に限定されることなく、公知の装置を使用することができる。また、偏心ローター方式としては、ローターの旋回による摩擦で削り取るものあれば特に限定されず、公知の装置を適宜選択すればよい。なお、焼却灰には大きな金属塊や鉄線が含まれており、粉砕機の故障に繋がる場合があるため、性状に応じて粗砕の前後に篩分けや磁力選別を行うことができる。
【0023】
〔セメント原料回収工程〕
本工程は、破砕工程で得られた破砕物を風力選別及び篩選別から選択される1以上に供し、風力選別により分離された軽量物、及び/又は篩選別により分離された篩下をセメント原料として回収する工程である。風力選別では軽産物、篩選別では篩下の細粒群にセメント原料に適した成分が濃縮する。なお、風力選別により分離された重量物、及び/又は篩選別により分離された篩上は、次工程に供給される。
【0024】
風力選別は、公知の風力選別機を用いることができる。風力選別機としては特に限定されないが、例えば、ジグザグ式、内部循環式を挙げることができる。
風力選別において、例えば、内部循環式を用いた場合、ファンにより下から上方向に空気の流れを作ると、破砕物の重量物は空気の流れに逆らって下方向に移動し、他方軽量物は空気の流れに乗って上方向に移動する。このようにして破砕物は、重量物と軽量物とに選別され、セメント成分が濃縮した軽量物が回収される。この場合、重産物に金属やガラス等の夾雑物が主体になるように、風力選別の風速を設定することが好ましい。例えば、風速は、5m/s以上が好ましく、7.5m/s以上がより好ましく、10m/s以上が更に好ましく、また濃縮したセメント成分回収の観点から、30m/s以下が好ましく、25m/s以下が更に好ましい。
【0025】
篩選別は、篩選別機を用いることができる。篩選別機としては特に限定されないが、例えば、振動式篩、面内運動式篩、回転式篩、固定式篩を挙げることができる。
篩目は、濃縮したセメント成分回収の観点から、通常0.1~10mmであり、破砕物の大きさに応じて適宜選択することができる。
【0026】
〔金属回収工程〕
本工程は、セメント原料回収工程からの供給物、即ち風力選別により分離された重量物、及び/又は篩選別により分離された篩上を、磁力選別、渦電流選別及び比重選別から選択される1以上に供して金属を回収する工程である。
【0027】
磁力選別は、公知の磁力選別機を用いることができる。磁力選別機としては、例えば、ドラム式、プーリー式及び吊下げ式のいずれでもよく、特に限定されない。
磁力選別では、例えば、内側に永久磁石が配置されたドラム上にセメント原料回収工程からの供給物を供給し、セメント原料回収工程からの供給物に含まれる磁着物がドラム表面に吸着され、ドラムの回転により運ばれ、磁着物排出口から排出される。他方、セメント原料回収工程からの供給物に含まれる非磁着物は、ドラムの回転によりドラム表面より離反・落下し、非磁着物排出口から排出される。磁力選別では、鉄が選択的に回収される。
磁力選別機の表面磁束密度は、磁着物回収の観点から、700~10000ガウスが好ましく、1000~7500ガウスがより好ましく、1500~5000ガウスが更に好ましい。
【0028】
渦電流選別は、公知の渦電流選別機を用いることができる。渦電流選別機としては特に限定されないが、例えば、回転磁石式、直行ベルトコンベヤ式、回転円筒式を挙げることができる。
渦電流選別においては、例えば、コンベヤベルトの先端側に設けられた回転磁石体の移動磁界の電磁誘導作用を受けて内部に生じる誘導電流と移動磁界との相互作用によって、コンベヤベルトの先端側に搬送されたセメント原料回収工程からの供給物に回転磁石体の回転方向に推力を与え、コンベヤベルトの表面からこの推力と導電性物質に作用する重力との合成力の方向に導電性物質を飛び出させて、導電性物質と非導電物質とを分離する。渦電流選別では、アルミニウムが選択的に回収される。
回転磁石体の回転数は、導電性物質回収の観点から、1500rpm以上が好ましく、3000rpm以上がより好ましく、4500rpm以上が更に好ましい。
【0029】
比重選別は、公知の比重選別機を用いることができる。比重選別機は、乾式及び湿式のいずれでも構わないが、乾式のテーブル式比重選別機が好ましく、エアテーブルが更に好ましい。
比重選別において、例えば、エアテーブルを用いた場合、振動式テーブルの上面に供給されたセメント原料回収工程からの供給物は、振動式テーブルを通過する空気流によって振動式テーブルの上面から浮上した状態となり、振動式テーブルの傾斜方向に付与された振動により、比重の大きい重産物が下層に、比重の小さい軽産物が上層に移動し、下層の重産物は振動式テーブルの上面から摩擦力と振動力とを受けて斜め上方へ移動し、上層の軽産物は振動式テーブルの上面から摩擦力と振動力とを受けずに斜め下方へ押し流される。そして、振動式テーブルから重産物と軽産物が別々に排出される。比重選別では、銅等の重金属や貴金属が選択的に回収される。
なお、特に比重選別については、選別精度を向上するために、篩分けにより粒度を複数群に分け、粒群ごとに行ってもよい。
【0030】
本工程における好適な態様を
図1に示す。以下、図面を参照しながら詳細に説明する。
セメント原料回収工程からの供給物(粗粒)、即ち、風力選別により分離された重量物、及び/又は篩選別により分離された篩上は、
図1に示されるように、先ず磁力選別に供される。磁力選別によって磁着物と非磁着物とに分離し、磁着物として鉄スクラップを回収する。
次に、磁力選別により分離された非磁着物を、渦電流選別に供する。渦電流選別によって非磁性金属と非金属とに分離し、非金属として再生骨材、路盤材を回収する。
次に、渦電流選別により分離された非磁性金属を、比重選別に供する。比重選別によって重量物と軽量物とに分離し、軽量物としてアルミニウムを回収し、重量物として銅や貴金属を回収する。
【0031】
以上説明したとおり、本発明においては廃棄物である焼却灰と廃コンクリートを同時に処理することで、焼却灰の付着・団粒化を防止しつつ、廃棄物に含まれる有価物を効率よく選別回収することができる。
【0032】
〔焼却灰の付着又は団粒化の防止剤、防止方法〕
本発明の焼却灰の付着防止剤又は団粒化防止剤は、廃コンクリート破砕物を有効成分とするものである。また、本発明の焼却灰の付着又は団粒化の防止方法は、焼却灰と廃コンクリート破砕物とを混合する。
本発明の焼却灰の付着又は団粒化の防止効果は、焼却灰と廃コンクリート破砕物とが共存した状態において発現される。そのため、廃コンクリート破砕物は、あらかじめ破砕したものを使用しても、焼却灰と廃コンクリートとを混合して破砕し、廃コンクリートを破砕物の形態としてもよい。そして、両者が共存する混合物の大きさは、20mm未満が好ましく、15mm未満が更に好ましく、その下限値は特に限定されない。なお、焼却灰及び廃コンクリートの具体的構成は、上記において説明したとおりである。
【0033】
焼却灰と廃コンクリートとの混合割合は特に限定されないが、焼却灰が多すぎると付着を防ぐことができないため、両者の質量比(廃コンクリート/焼却灰)は、1/7以上が好ましく、1/6以上がより好ましく、1/5以上が更に好ましい。また、廃コンクリートが多すぎると有価金属の回収量が不足するため、両者の質量比(廃コンクリート/焼却灰)は、10/1以下が好ましく、8/1以下がより好ましく、6/1以下が好ましい。
【実施例0034】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0035】
本実施例で使用した試料は、以下のとおりである。
(1)水分含量が10質量%、20質量%又は30質量%であり、粒径が10mm未満である都市ごみ焼却灰
(2)粒径が1.2mm以上5.0mm未満である廃コンクリート
【0036】
実施例1
水分含量が20質量%である都市ごみ焼却灰と、廃コンクリートとを、両者の質量比(廃コンクリート/焼却灰)が1/5となる割合で混合し、混合物を破砕した。なお、破砕は、ステンレス製ポットミルに、混合物350gと、径10mmのボール1.5kgを入れ、それをポットミル回転台(ANZ-51D、日陶科学製)に載置し、回転台速度100rpmにて1時間行った。
破砕後、ポットミルから混合物を取り出し、最初の投入量(350g)に対する回収量の割合(回収率)を計算した。その結果を表1に示す。
【0037】
実施例2
都市ごみ焼却灰と廃コンクリートとの質量比(廃コンクリート/焼却灰)を1/1に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で処理し、回収率を計算した。その結果を表1に示す。
【0038】
実施例3
水分含量が30質量%である都市ごみ焼却灰を用い、都市ごみ焼却灰と廃コンクリートとの質量比(廃コンクリート/焼却灰)を5/1に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で処理し、回収率を計算した。その結果を表1に示す。
【0039】
比較例1
水分含量が10質量%である都市ごみ焼却灰のみを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で処理し、回収率を計算した。その結果を表1に示す。
【0040】
比較例2
水分含量が20質量%である都市ごみ焼却灰のみを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で処理し、回収率を計算した。その結果を表1に示す。
【0041】
【0042】
比較例1は、焼却灰の水分含量が少なく、容器への焼却灰の付着があまり生じなかったため、高い収率で回収することができた。これに対し、実施例1~3は、比較例1よりも水分含量が2倍以上高い焼却灰を用いたにも拘わらず、廃コンクリートを混合しなかった比較例2に比べて、高い収率で回収することができた。したがって、表1から、焼却灰と廃コンクリートとを混合することで、容器への焼却灰の付着を低減できることがわかる。
【0043】
実施例1~3及び比較例1、2で回収された混合物を、それぞれ篩分けし、団粒化の有無を評価した。具体的には、篩目9.5mm、4.75mm、2.36mm、1.18mm、0,6mm、0.3mm、又は0.15mmの篩を用いて、篩分けが可能な篩目を指標に団粒化の有無を評価した。なお、「団粒化の有無の評価」においては、団粒化を生じて所定の篩目で篩分けできなかった場合だけでなく、目詰まりを生じて本来篩下に落ちるべき粒子が篩下に落ちなかった場合も、篩分け不能と判断した。その結果を表2に示す。
【0044】
【0045】
比較例1は、焼却灰の水分含量が少なく、団粒化や目詰まりがあまり生じなかったため、小さな篩目でもある程度篩分けが可能であった。これに対し、実施例1~3は、比較例1よりも水分含量が2倍以上高い焼却灰を用いたにも拘わらず、廃コンクリートを混合しなかった比較例2に比べて、より小さな篩目で篩分けできた。したがって、表2から、焼却灰と廃コンクリートとを混合することで、焼却灰の団粒化が抑制されることがわかる。
【0046】
上記において篩分けされた各粒群について、セメント原料としての再利用性を評価するため、蛍光X線分析(XRF)による全元素分析により、カルシウム含有率(CaO換算)を求めた。その結果を表3に示す。
【0047】
【0048】
表3から、CaOは粒径のより細かな粒群に多く含まれていることがわかる。したがって、粒径の細かい粒群がより多く回収されている実施例1~3は、骨材が混入することなく、セメント原料を選択的に回収できることがわかる。