(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034389
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 29/02 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B43K29/02 Z
B43K29/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140608
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】光崎 嘉人
(57)【要約】
【課題】ノック体後端の摩擦部を用いて安定した摩擦操作が可能となる熱変色性筆記具を提供する。
【解決手段】軸筒2の後端開口部内面とノック体6の外面との間に前後方向に移動可能に筒状の締め付け部材8を設ける。締め付け部材8の内面に係止部84を設け、ノック体6の外面に係止部84と係止可能な被係止部65を設ける。摩擦部64を用いて摩擦操作する際、軸筒2の後端開口部内面とノック体6の外面との間に締め付け部材8を圧入し、係止部84が被係止部65と係止することにより、軸筒2に対する摩擦部64の少なくともペン先側方向の移動を阻止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記体の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先を設け、前記筆記体を軸筒内に前後方向に移動可能に収容し、前記軸筒の後端部にノック体を設け、前記ノック体を前方に押圧することにより前記ペン先を前記軸筒の前端孔から突出状態にし、再度、前記ノック体を前方に押圧することにより前記ペン先突出状態を解除し前記ペン先を前記軸筒の前端孔より前記軸筒内に没入状態にする出没機構を備え、前記ノック体の後端部外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部を設けた熱変色性筆記具であって、前記軸筒の後端開口部内面と前記ノック体の外面との間に前後方向に移動可能に筒状の締め付け部材を設け、前記締め付け部材の内面に係止部を設け、前記ノック体の外面に前記係止部と係止可能な被係止部を設け、前記摩擦部を用いて摩擦操作する際、前記軸筒の後端開口部内面と前記ノック体の外面との間に前記締め付け部材を圧入し、前記係止部が前記被係止部と係止することにより、前記軸筒に対する前記摩擦部の少なくともペン先側方向の移動を阻止してなることを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記締め付け部材が、前記軸筒の後端開口部内面との圧接により径方向内方に弾性変形し且つ前記ノック体の外面に接触可能な変形部と、該変形部の後方に形成され且つ前記軸筒の後端開口部内面のメネジ部に螺合可能なオネジ部と、該オネジ部より後方に形成される回転操作部と、を備え、前記変形部は複数本の軸方向に延びる弾性脚片からなり、前記各々の弾性脚片の内面に前記係止部が一体に形成されることを特徴とする請求項1記載の熱変色性筆記具。
【請求項3】
前記係止部が、凸部、凹部またはその組合せによる凹凸部からなり、前記被係止部が、凸部、凹部またはその組合せによる凹凸部からなることを特徴とする請求項1または2に記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筆記体の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先を設け、前記筆記体を軸筒内に前後方向に移動可能に収容し、前記軸筒の後端部にノック体を設け、前記ノック体を前方に押圧することにより前記ペン先を前記軸筒の前端孔から突出状態にし、再度、前記ノック体を前方に押圧することにより前記ペン先突出状態を解除し前記ペン先を前記軸筒の前端孔より前記軸筒内に没入状態にする出没機構を備え、前記ノック体の後端部外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部を設けた熱変色性筆記具において、前記軸筒の後端開口部内面と前記ノック体の外面との間に前後方向に移動可能に筒状の締め付け部材を設け、前記摩擦部を用いて摩擦操作する際、前記軸筒の後端開口部内面と前記ノック体の外面との間に前記締め付け部材を圧入し、前記軸筒に対する前記摩擦部の前後方向の移動を阻止する構造が開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1では、締め付け部材とノック体(具体的には弾性材料からなる摩擦部)との圧接(締め付け)のみによって摩擦部の前後方向の移動を阻止している。そのため、摩擦部の前後方向の移動を阻止する際は、締め付け部材を強く圧入する必要があった。さらに、締め付け部材及びノック体の材質によっては、摩擦部の前後方向の移動を確実に阻止できないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、ノック体と締め付け部材の材質によらず、しかも、締め付け部材を比較的軽く圧入した場合でも、摩擦部の前方向の移動を確実且つ容易に阻止することができる熱変色性筆記具を提供しようとするものである。尚、本発明で、「前」とは、ペン先側を指し、「後」とは、その反対側を指す。尚、本発明で、「ペン先没入状態」とは、ペン先が軸筒内に没入した状態をいい、「ペン先突出状態」とは、ペン先が軸筒の前端より外部に突出した状態をいう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の発明は、筆記体3の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体3の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先31を設け、前記筆記体3を軸筒2内に前後方向に移動可能に収容し、前記軸筒2の後端部にノック体6を設け、前記ノック体6を前方に押圧することにより前記ペン先31を前記軸筒2の前端孔21から突出状態にし、再度、前記ノック体6を前方に押圧することにより前記ペン先突出状態を解除し前記ペン先31を前記軸筒2の前端孔21より前記軸筒2内に没入状態にする出没機構を備え、前記ノック体6の後端部外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部64を設けた熱変色性筆記具1であって、前記軸筒2の後端開口部内面と前記ノック体6の外面との間に前後方向に移動可能に筒状の締め付け部材8を設け、前記締め付け部材8の内面に係止部84を設け、前記ノック体6の外面に前記係止部84と係止可能な被係止部65を設け、前記摩擦部64を用いて摩擦操作する際、前記軸筒2の後端開口部内面と前記ノック体6の外面との間に前記締め付け部材8を圧入し、前記係止部84が前記被係止部65と係止することにより、前記軸筒2に対する前記摩擦部64の少なくともペン先側方向の移動を阻止してなることを特徴とする。
【0007】
前記第1の発明の熱変色性筆記具1は、摩擦部64を用いて摩擦操作する際、締め付け部材8を圧入し、係止部84が被係止部65と係止することで摩擦部64の少なくとも前方向の移動を阻止するため、ノック体6及び締め付け部材8の材質によらず、且つ、締め付け部材8を軽く圧入した場合でも、摩擦部64の前方向の移動を確実且つ容易に阻止することができる。
【0008】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の熱変色性筆記具1において、前記締め付け部材8が、前記軸筒2の後端開口部内面との圧接により径方向内方に弾性変形し且つ前記ノック体6の外面に接触可能な変形部81と、該変形部81の後方に形成され且つ前記軸筒2の後端開口部内面のメネジ部22に螺合可能なオネジ部82と、該オネジ部82より後方に形成される回転操作部83と、を備え、前記変形部81は複数本の軸方向に延びる弾性脚片からなり、前記各々の弾性脚片の内面に前記係止部84が一体に形成されることを特徴とする。
【0009】
前記第2の発明の熱変色性筆記具1は、回転操作部83を回転操作することにより、締め付け部材8が圧入され、変形部81の弾性変形とともに係止部84が径方向内方へ移動し、係止部84が被係止部65と係止するため、締め付け部材8による摩擦部64の係止及び係止解除を容易に行うことができる。
【0010】
本願の第3の発明は、前記係止部が、凸部、凹部またはその組合せによる凹凸部からなり、前記被係止部が、凸部、凹部またはその組合せによる凹凸部からなることを特徴とする。
【0011】
前記第3の発明の熱変色性筆記具1は、締め付け部材8を圧入した際、係止部84及び被係止部65に設けられた凸部、凹部またはその組合せによる凹凸部が互いに係止することで、摩擦部64の前方向の移動を確実に阻止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ノック体6及び締め付け部材8の材質によらず、且つ、締め付け部材8を軽く圧入した場合でも、摩擦部64の前方向の移動を確実且つ容易に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態の締め付け部材による締め付け前の状態を示す縦断面図である。
【
図2】
図1の締め付け部材による締め付け後の状態を示す縦断面図である。
【
図4】
図1の締め付け部材の変形例の斜視図である。
【
図5】
図1の締め付け部材の変形例の斜視図である。
【
図9】熱変色性インキの変色挙動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を
図1乃至
図9に示す。
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2内に収容される筆記体3と、該筆記体3のペン先31を軸筒2の前端孔21より出没自在にさせる出没機構と、前記軸筒2の後端開口部に螺着される締め付け部材8とを備える。
【0015】
・本体
本体1は、熱変色性筆記具である。本体1は、軸筒2、筆記体3、カム部4、回転部材5、ノック体6、弾発体7、締め付け部材8により構成される。
【0016】
・熱変色性インキ
本願発明において、前記熱変色性インキは、可逆熱変色性インキが好ましい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0017】
また、前記可逆熱変色性インキに含有される色材は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性顔料が好適に用いられる。
【0018】
本発明では、
図9に示すように、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t
1)以下の低温域での発色状態、または完全消色温度(t
4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t
2~t
3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で記憶保持できる色彩記憶保持型熱変色性インキが適用されることが好ましい。
図9において、ΔHは、ヒステリシスの程度を示す温度幅(即ちヒステリシス幅)を示す。ΔHの値が小さいと、変色前後の両状態のうち一方の状態しか存在しえない。ΔHの値が大きいと、変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0019】
本発明では、前記熱変色性インキの摩擦部64の摩擦熱による変色温度は、25℃~95℃(好ましくは36℃~95℃)に設定される。即ち、本発明では、前記高温側変色点〔完全消色温度(t4)〕を、25℃~95℃(好ましくは、36℃~90℃)の範囲に設定し、前記低温側変色点〔完全発色温度(t1)〕を、-30℃~+20℃(好ましくは、-30℃~+10℃)の範囲に設定することが有効である。それにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができるとともに、可逆熱変色性インキによる筆跡を摩擦部64による摩擦熱で容易に変色することができる。
【0020】
・軸筒
軸筒2は、円筒状の前軸2aと、該前軸2aの後端に連結される円筒状の後軸2bとからなる。前記前軸2aと前記後軸2bは、螺合または嵌合により着脱自在に連結される。前記軸筒2の後端開口部(即ち後軸2bの後端開口部)内面にはメネジ部22が形成される。さらに、前記メネジ部22より前方の前記軸筒2の後端開口部(即ち後軸2bの後端開口部)内面には、前方に向かうに従い内径が小さくなる傾斜面23が形成される。軸筒2は、合成樹脂(例えばポリプロピレン、ポリカーボネイト)または金属により形成される。
【0021】
・筆記体
筆記体3は、ペン先31と、該ペン先31が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管32と、該インキ収容管32内に充填される熱変色性インキと、該熱変色性インキの後端に充填され且つ該熱変色性インキの消費に伴い前進する追従体(例えば高粘度流体)とからなる。
【0022】
前記ペン先31は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンのみからなる構成、または前記ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。また、前記インキ収容管32の後端開口部に、インキ収容管32内部と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓を取り付けてもよい。
【0023】
・出没機構
前記出没機構は、回転カム機構を用いたノック式出没機構であり、軸筒2内面(後軸2b内面)に形成されたカム部4と係合し且つ筆記体3の後端と当接する回転部材5と、該回転部材5と係合し且つ軸筒2後端(後軸2b後端)より突出するノック体6と、軸筒2内に収容され且つ筆記体3を後方に付勢する弾発体7(例えば圧縮コイルスプリング)とからなる。本実施の形態の出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもがノック体6を前方に押圧する操作のダブルノック式である。
【0024】
前記軸筒2内面のカム部4は、前方に突出する鋸歯状の複数のカム歯41と、該カム歯41間に形成され、回転部材5が係合するカム溝42とを備える[
図8(c)参照]。前記回転部材5は、その外面に長手方向に延びる4本の突条51を備え、該突条51が、前記軸筒2内面のカム部4のカム溝42と係合される[
図8(b)参照]。
【0025】
・ノック体
前記ノック体6は、棒状の本体部61と、その前端部に、カム部4のカム溝42内を摺動するガイド突条62と、回転部材5の突条51の後端と係合するカム歯63と、その後端部に摩擦部64とを備える[
図8(a)参照]。ノック体6は、摩擦部64を除いて合成樹脂(例えばポリプロピレン、ポリカーボネイト)または金属により形成される。
【0026】
ノック体6の外面には被係止部65が設けられている。ペン先31没入状態において、締め付け部材8を圧入することで、係止部84が被係止部65と係止する。それにより、摩擦部64の少なくとも前方向の移動が阻止される。被係止部65は、環状凸部、環状凹部またはその組合せによる環状凹凸部からなる。
図6、
図7では、被係止部65が環状凹凸部からなる例を示す。
図6は
図1の要部拡大縦断面図であり、締め付け部材8を圧入する前の状態を示す。
図7は
図2の要部拡大縦断面図であり、締め付け部材8を圧入した後の状態を示す。前記凹凸部を構成する各凹部及び各凸部は、例えば、R形状、三角形状、台形状等の断面形状を有する。被係止部65は、ローレットや粗面であってもよい。
【0027】
被係止部65は、軸方向に並ぶ複数の環状凸部、複数の環状凹部またはその組合せによる複数の環状凹凸部からなっていてもよい。前記構成により、ペン先31の没入、突出状態に関わらず、軸方向の任意の位置で摩擦部64の前方向の移動を阻止することができる。この場合、被係止部65は、ペン先31没入状態において、軸筒2及び締め付け部材8の径方向内方に位置していることが好ましい。前記構成により、被係止部65が目視できる位置に露出せず、熱変色性筆記具1の外観に影響を及ぼすことがない。
【0028】
締め付け部材8と接触するノック体6の外面及び被係止部65は、摩擦部64を構成する弾性材料から構成されている。前記構成により、ノック体6に圧接(締め付け)による力を加えることができ、一層確実に摩擦部64の前方向の移動を阻止することができる。尚、締め付け部材8と接触するノック体6の外面及び被係止部65は、合成樹脂(例えばポリプロピレン、ポリカーボネイト)から構成されていてもよい
【0029】
・摩擦部
本発明において摩擦部64は、弾性材料(軟質材料)から構成されることが好ましい。前記摩擦部64を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦部64を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。尚、本発明のノック体6は、少なくとも後端部外面が弾性材料からなる構成であればよく、例えば、ノック体6全体を弾性材料から構成してもよい。
【0030】
前記摩擦部64は、弾性材料(例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂、SEBS樹脂等)により形成される部材である。
図1に示すように、前記摩擦部64は、前方に開口する取付孔を備えた有底円筒体である。前記摩擦部64の取付孔内面とノック体6の本体部61の後部外面とが嵌合固定される。前記摩擦部64の後端は、その外面が凸曲面状になっており、それにより、ノック操作性及び摩擦操作性が向上する。
【0031】
・締め付け部材
前記締め付け部材8は、合成樹脂(例えばポリプロピレン、ポリカーボネイト)からなる筒状体からなる。前記締め付け部材8は、前端部の変形部81と、該変形部81の後方に一体に形成されるオネジ部82と、該オネジ部82より後方に鍔状に一体に形成される回転操作部83とからなる。前記変形部81は、前記軸筒2の後端開口部内面の傾斜面23に圧接され、径方向内方に弾性変形可能である。前記オネジ部82は、前記軸筒2の後端開口部内面の前記メネジ部22に螺合される。前記回転操作部83を回転操作することにより、前記締め付け部材8が軸筒2に対して前後に移動する。前記変形部81は、複数本の軸方向に延びる弾性脚片からなり、前方に開放される複数の軸方向のスリットを備える。それにより、径方向の弾性変形が容易となる。
【0032】
摩擦操作しない時、
図1に示すように、前記締め付け部材8の変形部81は、ノック体6の外面と非接触状態が維持される。それにより、ノック体6のノック操作(即ちペン先出没操作)が可能となる。
【0033】
変形部81の各々の弾性脚片の前端部の内面には係止部84が一体に形成されている[
図3参照]。ペン先31没入状態において、締め付け部材8を圧入することで、係止部84が被係止部65と係止する。それにより、摩擦部64の少なくとも前方向の移動が阻止される。係止部84は、各々の弾性脚片にて分断された非連続の環状凹部、環状凸部またはその組合せによる環状凹凸部からなる。
図6、
図7では、係止部84が環状凹凸部からなる例を示す。前記凹凸部を構成する各凹部及び各凸部は、例えば、R形状、三角形状、台形状等の断面形状を有する。係止部84は、ローレットや粗面であってもよい。係止部84と被係止部65の形状は任意に組み合わせてもよい。
【0034】
図6、
図7では、被係止部65の最前端の凹部と係止部84の最前端の凸部が互いに噛み合う形状である。この場合、締め付け部材8を圧入した際、被係止部65と係止部84とが噛み合うため、摩擦部64の前後方向の移動を阻止することができる。
【0035】
係止部84が、軸方向に並ぶ複数の環状凹部、複数の環状凸部またはその組合せによる複数の環状凹凸部からなっていてもよい。前記構成により、ペン先31の没入、突出状態に関わらず、軸方向の任意の位置で摩擦部64の少なくとも前方向の移動を阻止することができる。
【0036】
図4に示すように、係止部84は内向突起であってもよい。さらに、前記突起が軸方向に複数並んでいてもよい。前記突起は、例えば、R形状、三角形状、台形状等の断面形状を有する。
【0037】
図5に示すように、係止部84は平坦面であってもよい。この場合、締め付け部材8を圧入した際、変形部81の前端部が被係止部65と係止する。
【0038】
・使用方法
摩擦操作する時、
図2に示すように、前記締め付け部材8の回転操作部83をネジ締め方向に回転させ、前記締め付け部材8を軸筒2に対して前方に移動させ、前記締め付け部材8の変形部81の前端部を、前記傾斜面23に圧接させることにより径方向内方に弾性変形させ、前記締め付け部材8の係止部84を前記被係止部65に係止させる。それにより、軸筒2に対する摩擦部64の少なくとも前方向の移動が阻止される。
【0039】
摩擦操作後、前記回転操作部83をネジ緩み方向に回転させ、前記締め付け部材8を軸筒2に対して後方に移動させ、変形部81と傾斜面23との圧接を解除し、変形部81を径方向外方に自己復元力により変形させるとともに、変形部81とノック体6との係止状態が解除される。それにより、
図1に示すように、ノック体6のノック操作(即ちペン先出没操作)が可能となる。
【0040】
本実施の形態の発明の熱変色性筆記具1は、摩擦部64を用いて摩擦操作する際、締め付け部材8を圧入し、係止部84が被係止部65と係止することで摩擦部64の少なくとも前方向の移動を阻止するため、ノック体6及び締め付け部材8の材質によらず、且つ、締め付け部材8を軽く圧入した場合でも、摩擦部64の前方向の移動を確実に且つ容易に阻止することができる。
【0041】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、回転操作部83を回転操作することにより、締め付け部材8が圧入され、変形部81の弾性変形とともに係止部84が径方向内方へ移動し、係止部84が被係止部65と係止するため、締め付け部材8による摩擦部64の係止及び係止解除を容易に行うことができる。
【0042】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記第3の発明の熱変色性筆記具1は、締め付け部材8を圧入した際、係止部84及び被係止部65に設けられた凸部、凹部またはその組合せによる凹凸部が互いに係止することで、摩擦部64の前方向の移動を確実に阻止することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 熱変色性筆記具
2 軸筒
21 前端孔
22 メネジ部
23 傾斜面
2a 前軸
2b 後軸
3 筆記体
31 ペン先
32 インキ収容管
4 カム部
41 カム歯
42 カム溝
5 回転部材
51 突条
6 ノック体
61 本体部
62 ガイド突条
63 カム歯
64 摩擦部
65 被係止部
7 弾発体
8 締め付け部材
81 変形部
82 オネジ部
83 回転操作部
84 係止部