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特開2023-3441空調システム、空調方法、及び空調システムを備えた発熱装置設置室
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003441
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】空調システム、空調方法、及び空調システムを備えた発熱装置設置室
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20230110BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
F24F5/00 101
F24F13/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104525
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 豊
(72)【発明者】
【氏名】案浦 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】古森 雄
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 博英
(72)【発明者】
【氏名】三家本 伊織
(72)【発明者】
【氏名】田上 翔太
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080BA00
(57)【要約】
【課題】発熱装置が設置された発熱装置設置室の空調エネルギーを可及的に抑制する空調システム、空調方法、及び空調システムを備えた発熱装置設置室を提供する。
【解決手段】本開示の一側面に係る空調システムは、発熱装置が設置された発熱装置設置室を置換空調する空調システムであって、発熱装置設置室の側部に設けられた第1の空調機と、発熱装置設置室の上部に設けられた第2の空調機と、屋外に設置され、少なくとも第2の空調機に冷却水を供給する冷却塔と、を備え、第1の空調機は、発熱装置設置室の上部に設けられた第1の吸気口から吸引した空気を、冷凍機で製造された冷熱で冷やし、発熱装置設置室の下部に設けられた第1の吹出口から吹き出す空調機であり、第2の空調機は、発熱装置設置室の上部に設けられた第2の吸気口と、冷却水を用いて冷却する冷却器と、冷却器によって冷却された冷気を第1の吸気口へ吹き出す第2の吹出口と、を含む。
【選択図】図34
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱装置が設置された発熱装置設置室を置換空調する空調システムであって、
前記発熱装置設置室の側部に設けられた第1の空調機と、
前記発熱装置設置室の上部に設けられた第2の空調機と、
屋外に設置され、少なくとも前記第2の空調機に冷却水を供給する冷却塔と、
を備え、
前記第1の空調機は、前記発熱装置設置室の上部に設けられた第1の吸気口から吸引した空気を、冷凍機で製造された冷熱で冷やし、前記発熱装置設置室の下部に設けられた第1の吹出口から吹き出す空調機であり、
前記第2の空調機は、
前記発熱装置設置室の上部に設けられた第2の吸気口と、
前記冷却水を用いて冷却する冷却器と、
前記冷却器によって冷却された冷気を前記第1の吸気口へ吹き出す第2の吹出口と、
を含む、空調システム。
【請求項2】
前記発熱装置設置室内の空間のうちの、床から所定の高さまでの第1の領域の上の第2の領域に配置され、前記発熱装置から上昇した高温の空気が上昇する上昇領域と他の領域とを区切る仕切り部材、
を更に備えた、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記発熱装置設置室の下部に、複数の前記第1の吹出口が縦方向及び横方向に並んで設けられ、
前記複数の第1の吹出口の各々に設けられ、空気に旋回成分を与えて前記発熱装置設置室内に吹き出させる旋回流発生器と、
を更に備えた、請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記第2の吹出口から吹き出す風量は、前記第1の吹出口から吹き出す風量よりも少ない、請求項1から3のいずれか一項に記載の空調システム。
【請求項5】
発熱装置が設置された発熱装置設置室を置換空調する空調方法であって、
前記発熱装置設置室の側部に設けられた第1の空調機において、前記発熱装置設置室の上部に設けられた第1の吸気口から吸引した空気を、冷凍機で製造された冷熱で冷やし、前記発熱装置設置室の下部に設けられた第1の吹出口から吹き出し、
前記発熱装置設置室の上部に設けられた第2の空調機において、前記発熱装置設置室の上部に設けられた第2の吸気口から吸引した空気を、屋外に設置された冷却塔で生成された冷却水を用いて冷却器で冷却し、第2の吹出口から前記第1の吸気口へ吹き出す、
空調方法。
【請求項6】
発熱装置が設置され、置換空調する空調システムを備えた発熱装置設置室であって、
前記空調システムは、
前記発熱装置設置室の側部に設けられた第1の空調機と、
前記発熱装置設置室の上部に設けられた第2の空調機と、
屋外に設置され、少なくとも前記第2の空調機に冷却水を供給する冷却塔と、
を備え、
前記第1の空調機は、前記発熱装置設置室の上部に設けられた第1の吸気口から吸引した空気を、冷凍機で製造された冷熱で冷やし、前記発熱装置設置室の下部に設けられた第1の吹出口から吹き出す空調機であり、
前記第2の空調機は、
前記発熱装置設置室の上部に設けられた第2の吸気口と、
前記冷却水を用いて冷却する冷却器と、
前記冷却器によって冷却された冷気を前記第1の吸気口へ吹き出す第2の吹出口と、
を含む、発熱装置設置室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調システム、空調方法、及び空調システムを備えた発熱装置設置室に関する。
【背景技術】
【0002】
空調空間内に低温空気を供給し、空調空間内の発熱体によって加熱されて上昇した加熱空気を空調空間の上部から排気する置換空調を行う際に、空調空間の下部に設けられた給気口から、低温空気に旋回成分を与えて空調空間内に吹き出す空調システムが知られている。このような空調システムによれば、旋回成分を与えないで吹き出す場合よりもドラフト感の無い吹き出しを行うことができる。これにより、空調空間の空気をかき乱さないので、温度成層を維持しながら置換空調を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4006196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、空調に要するエネルギーを削減する手段の一つとして、置換空調が注目されている。置換空調は、温度成層を維持しながら空調を行うので、設備や人が居ない上部空間を空気調和することによるエネルギーロスを削減できる。このような置換空調では、例えば、空調空間の下部に設けられた給気口から吹き出す空気に旋回成分を与えると、空調空間の空気をかき乱さないので、温度成層をより確実に維持しながら置換空調を行うことができる。
【0005】
置換空調は、温度成層を維持しながら空調を行うものなので、天井高の比較的高い工場等で有効である。そして、工作機械等の熱発生源が設置されている工場では、空調エネルギーを削減するために、熱発生源から発生した高温の空気は、空調機で冷やさずに天井付近から屋外へ排出されることが多い。しかし、例えば、半導体製造工場のクリーンルームのように、室内へ導入する空気に高い清浄度が要求される場合、室内の空気を屋外へ排出することによって得られる空調エネルギーの削減効果が、排出した分の空気を補うために導入する外気を清浄化するためのコストにより失われてしまう場合がある。
【0006】
本開示は、一側面では、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、発熱装置が設置された発熱装置設置室の空調エネルギーを可及的に抑制する空調システム、空調方法、及び空調システムを備えた発熱装置設置室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0008】
例えば、本開示の一側面に係る空調システムは、発熱装置が設置された発熱装置設置室を置換空調する空調システムであって、発熱装置設置室の側部に設けられた第1の空調機と、発熱装置設置室の上部に設けられた第2の空調機と、屋外に設置され、少なくとも第2の空調機に冷却水を供給する冷却塔と、を備え、第1の空調機は、発熱装置設置室の上部に設けられた第1の吸気口から吸引した空気を、冷凍機で製造された冷熱で冷やし、発熱装置設置室の下部に設けられた第1の吹出口から吹き出す空調機であり、第2の空調機は、発熱装置設置室の上部に設けられた第2の吸気口と、冷却水を用いて冷却する冷却器
と、冷却器によって冷却された冷気を第1の吸気口へ吹き出す第2の吹出口と、を含む。
【0009】
当該構成においては、発熱装置設置室の上部に設けられた第2の空調機において、発熱装置設置室の上部に設けられた第2の吸気口から吸引した空気を、冷却塔から供給された冷却水を用いて冷却器で冷却し、第2の吹出口から第1の空調機の第1の吸気口へ吹き出している。第2の吹出口から吹き出された冷気は、第1の空調機において第1の吸気口から吸引され、冷凍機で製造された冷熱で冷やされる。これにより、第2の空調機が存在しない場合に比べて、冷凍機で冷熱を製造するために必要な消費電力量を抑えることができる。このため、発熱装置が設置された発熱装置設置室の空調エネルギーを可及的に抑制することができる。
【0010】
なお、上記一側面に係る空調システムにおいて、発熱装置設置室内の空間のうちの、床から所定の高さまでの第1の領域の上の第2の領域に配置され、発熱装置から上昇した高温の空気が上昇する上昇領域と他の領域とを区切る仕切り部材、を更に備えてもよい。
【0011】
当該構成によれば、仕切り部材により、上昇領域から上昇した高温の空気が他の領域に流れるのを遮ることができる。これにより、置換空調による温度成層を保つことができる風量を維持しながら、他の領域の温度上昇を抑制することができる。
【0012】
また、上記一側面に係る空調システムにおいて、発熱装置設置室の下部に、複数の第1の吹出口が縦方向及び横方向に並んで設けられ、複数の第1の吹出口の各々に設けられ、空気に旋回成分を与えて発熱装置設置室内に吹き出させる旋回流発生器、を更に備えてもよい。
【0013】
当該構成によれば、第1の吹出口周辺の発熱装置設置室内の空気を誘引することができる。これにより、第1の吹出口から吹き出した冷気に誘引される第1の吹出口周辺の発熱装置設置室内の空気の誘引量(誘引比)が増加するので、冷気の風量を増加させて発熱装置設置室内に拡散させることができる。これにより、冷気に旋回成分を与えない場合よりドラフト感の無い吹き出しを行うことができる。
【0014】
また、上記一側面に係る空調システムにおいて、第2の吹出口から吹き出す風量は、第1の吹出口から吹き出す風量よりも少なくてもよい。
【0015】
当該構成によれば、置換空調による温度成層を殆ど乱すことなく、十分に保つことができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、発熱装置が設置された発熱装置設置室の空調エネルギーを可及的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は第1の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。
図2図2(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図2(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
図3図3は、空調ユニットの外観構成を示す斜視図である。
図4図4(A),(B)は、第1の実施形態の空調システムを適用したクリーンルーム内における冷気及び高温の空気の流れを説明する図である。
図5図5(A)は、第1の仕切り板を備えた場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図5(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図6図6(A),(B)は、同じく第1の仕切り板を備えた場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図7図7(A)は、第1の仕切り板を備えない場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図7(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図8図8(A),(B)は、同じく第1の仕切り板を備えない場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図9図9は、第2の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。
図10図10(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図10(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
図11図11(A)は、第1及び第2の仕切り板を備えた場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図11(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図12図12(A),(B)は、第1及び第2の仕切り板を備えた場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図13図13は、第3の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。
図14図14(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図14(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
図15図15(A)は、第1、第2及び第3の仕切り板を備えた場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図15(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図16図16(A),(B)は、第1、第2及び第3の仕切り板を備えた場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図17図17は、第4の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。
図18図18(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図18(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
図19図19(A)は、第3の仕切り板を備えた場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図19(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図20図20(A),(B)は、第3の仕切り板を備えた場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図21図21(A)は、第3の仕切り板を装置側に延長した場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図21(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図22図22(A),(B)は、第3の仕切り板を装置側に延長した場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図23図23は、第5の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。
図24図24(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図24(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
図25図25(A)は、ファンを備えた場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図25(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図26図26(A),(B)は、ファンを備えた場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図27図27(A)は、第3の仕切り板を備えずに、ファンのみを備えた場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図27(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図28図28(A),(B)は、同じく第3の仕切り板を備えずに、ファンのみを備えた場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
図29図29は、第6の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。
図30図30(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図30(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
図31図31は、空調ユニットの内部構成を説明する図である。
図32図32は、上部空調ユニットの外観構成を示す斜視図である。
図33図33は、上部空調ユニットの内部構成を説明する図である。
図34図34は、クリーンルーム内における空気の流れを説明する図である。
図35図35は、第7の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。
図36図36(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図36(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
図37図37は、給気チャンバの外観構成を示す斜視図である。
図38図38は、給気チャンバの内部構成を説明する図である。
図39図39は、外調機の内部構成を説明する図である。
図40図40は、クリーンルーム内における空気の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の一側面に係る実施形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面を参照しながら説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本開示の例示に過ぎない。本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本開示の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0019】
[第1の実施形態]
本実施形態の空調システムは、例えば、部屋内に設置した空調ユニットを用いて、置換空調によって部屋内を空調する空調システムである。その空調システムを適用した部屋は、例えば、複数の半導体製造装置が設置され、半導体製造装置から、又は半導体製造装置に半導体装置の中間製品や最終製品を搬送するための自動搬送システムを備えた半導体製造工場のクリーンルームである。また、半導体製造装置は、例えば、エッチング装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置等である。
【0020】
図1は、第1の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。また、図2(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図2(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、クリーンルーム1は、床2、四方の側壁3~6、及び天井7によって囲まれた部屋である。クリーンルーム1内の床2の上に、複数の半導体製造装置8(本開示の「発熱装置」の一例)が設置されている。複数の半導体製造装置8の各々の前面には、ロードポート9が設置されている。ロードポート9は、半導体製造装置8との間で容器10内に収容された製品の受け渡しを行うインターフェース部である。つまり、半導体製造装置8の前面では、製品が容器10から半導体製造装置8に搬送され、半導体製造装置8で処理した後の製品が半導体製造装置8から容器10に搬送されている。このため、半導体製造装置8の前面には、製品に応じた所定の温度条件が規定される。本実施形態では、本願でいう「発熱装置」の一例として半導体製造装置8を例示しているため、本願でいう「条件規定部」とは、半導体製造装置8が取り扱う製品の出し入れが行われる半導体製造装置8前面部分における当該製品の温度条件を規定しているが、半導体以外の各種製品の製造等を司る発熱装置の場合であれば、当該発熱装置が取り扱う製品の温度条件が「条件規定部」の温熱環境の条件が規定される。例えば、医薬や高性能材料を取り扱う実験装置や処理装置であれば、当該装置が取り扱う物品の温度条件が、当該装置において当該物品の出し入れが行われる部分(装置の前面や側面、後面等)の温熱環境の条件が「条件規定部」において規定されることになる。また、製品に応じた所定の温度条件は、半導体製造装置8の前面部分のような条件規定部に対して規定されているのみならず、当該半導体製造装置8に出し入れする製品が取り扱われる箇所においても規定されることになる。このように、半導体製造装置8に出し入れする製品が取り扱われるが故に、条件規定部で規定されるのと同様の温熱環境の条件が規定される領域(以下、「条件規定領域」という)箇所としては、半導体製造装置8の前面付近の空間や、後述の搬送装置によって当該製品の搬送が行われる半導体製造装置8の前面付近の上部の空間が挙げられる。半導体製造工場のクリーンルーム1では、製品の自動搬送が行われる箇所や、作業者が立ち入る箇所における温熱環境に諸条件が規定されるため、条件規定領域は、このような諸条件に応じた空間領域に設定されることになる。
【0022】
半導体製造装置8の上方には、吊り材11によって天井7から吊り下げられた格子状の天井フレーム12が設置されている。なお、天井フレーム12の格子間は開口部となっていて、天井フレーム12の上部と下部との間で空気が通流可能となっている。
【0023】
天井フレーム12の下には、自動搬送システムの搬送装置13が走行するレール14が設置されている。搬送装置13は、容器10を下部に保持しながら、レール14から吊り下げられた状態で走行する。また、搬送装置13は、ロードポート9との間を昇降するホイストを備え、ホイストの昇降によってロードポート9との間で製品が収容された容器10の受け渡しを行う。つまり、搬送装置13は、容器10を保持してレール14を走行することにより、レール14が延びている方向、すなわちクリーンルーム1の幅方向(図1及び図2では、X方向)及び長さ方向(奥行方向:図1及び図2では、Y方向)、つまり水平方向に容器10を搬送する。更に、搬送装置13は、ホイストによってロードポート9との間で容器10を昇降させることにより、クリーンルーム1の高さ方向(図2では、Z方向)、つまり垂直方向に容器10を搬送する。当該搬送装置13が取り扱う製品には温熱環境の条件が設定されるので、当該搬送装置13が設置される領域は、上述した条件規定領域に該当することになる。
【0024】
一方、天井フレーム12の上には、自動搬送システムや照明等のメンテナンスための通路が設けられている。
【0025】
以下、クリーンルーム1の空間のうち、床2から所定の高さまで、例えば、半導体製造装置8の上端までの高さ方向の領域のことを第1の領域と言う。更に、半導体製造装置8の上端より上の天井フレーム12までの高さ方向の領域のことを第2の領域と言う。そして、天井フレーム12より上の天井7までの高さ方向の領域のことを第3の領域と言う。
なお、本実施形態では、半導体製造装置8が設置された室内を、温度成層を保った状態で置換空調する形態を前提としているため、半導体製造装置8が設置される室内下部を第1の領域、後述する仕切り板を設置可能にする天井フレーム12等の支持部材が配置されている部分を第2の領域、半導体製造装置8から上昇した熱が溜まる室内上部を第3の領域として把握することが可能であるが、本願でいう第1の領域、第2の領域、第3の領域は、このように半導体製造装置8や天井フレーム12等の部材を境界にして画定される概念に限定されるものではない。例えば、半導体製造装置8の代わりに他の装置が設置される室内空間の場合であれば、当該他の装置が設置される室内下部が第1の領域として把握されることになる。また、仕切り板が天井フレーム12ではなく他の支持部材で支持されるような形態の場合であれば、当該他の支持部材によって仕切り部材が設けられる部分が第2の領域として把握されることになる。仕切り部材を設置することができる高さの下限、換言すると、第2の領域の下端の高さは、半導体製造装置8のような発熱装置が発する熱量や、半導体製造装置8が要求する温度条件に応じて決定され、置換空調による半導体製造装置8への冷気の供給が妨げられないように第1の領域が確保されることが望ましい。よって、本実施形態では、半導体製造装置8の上端の位置を、第2の領域の下限の位置として例示しているが、第1~3の各領域の境界はこのような形態に限定されるものでなく、例えば、メンテナンスを行う作業者の作業領域や、半導体製造装置8の装置外観形状等に応じた適宜の位置に設定される。
【0026】
第1~第3の領域のうちの第1の領域には、前述したように複数の半導体製造装置8が設置されている。複数の半導体製造装置8の一部(図1では、4つの半導体製造装置8)が、隙間を空けてクリーンルーム1の長さ方向に並んで配置されて、半導体製造装置8の列(以下、「装置列」と言う)が形成されている。更に、その装置列が、隙間を空けてクリーンルーム1の幅方向に複数(図1では、4つ)並んで配置されている。以下、複数の半導体製造装置8によって装置列を形成している方向のことを「列方向」と言う。なお、本実施形態では、列方向はクリーンルーム1の長さ方向(図1では、X方向)と同じ方向である。
【0027】
複数の装置列の各々では、ロードポート9が設置されている複数の半導体製造装置8の各々の前面が、列方向に垂直な方向(本実施形態では、クリーンルーム1の幅方向と同じ方向。図1では、Y方向)のうちの一方の方向(例えば、図1において左から2番目の装置列の場合では、右方向)に向いている。したがって、その後面は、列方向に垂直な方向のうちの他方の方向(前述した装置列の場合では、左方向)に向いている。
【0028】
そして、複数の装置列のうちの隣り合う装置列、例えば、図1において左から1番目及び2番目の装置列では、1番目の装置列内の半導体製造装置8の後面と2番目の装置列内の半導体製造装置8の後面とが向かい合っている。また、図1において左から2番目及び3番目の装置列では、1番目の装置列内の半導体製造装置8の前面と2番目の装置列内の半導体製造装置8の前面とが向かい合っている。半導体製造装置8の前面同士が向かい合っている隣り合う装置列間の部分(以下、「前面同士が向かい合っている装置列間の部分」と言う)は、製品が収容された容器10が搬送される部分となっている。一方、半導体製造装置8の後面同士が向かい合っている隣り合う装置列間の部分(以下、「後面同士が向かい合っている装置列間の部分」と言う)は、半導体製造装置8のメンテナンスのための部分となっている。また、後述する空調ユニットが設置されていない側壁4,6と半導体製造装置8との間にある、半導体製造装置8の前面側の部分も、製品が収容された容器10が搬送される部分となっている。
【0029】
第1の領域から第3の領域の一部に渡って、列方向の両側から複数の装置列を挟むように、四方の側壁3~6のうちの、列方向に垂直な方向と同じ方向の面方向を有する側壁3、5の各々には、複数(図1では、6つ)の空調ユニットが設置されている。複数の空調
ユニットの各々は、側壁3、5の下部に配置された給気部15と、給気部15の上に配置された吸気部16を備えている。
【0030】
図3は、空調ユニットの外観構成を示す斜視図である。
【0031】
空調ユニットのうちの吸気部16は、ファンを内部に備えている。そして、図3に示すように、吸気部16の上面16a(天井7側の側面)には、矩形状の吸気口17が設けられている。吸気部16では、ファンによって吸気口17からクリーンルーム1の上部の空気を吸い込み、給気部15に供給する。なお、吸気口17は、吸気部16の上面16aに設けたものに限定されるものでなく、側面等に設けてもよい。また、図3では、吸気部16が給気部15と一体化したものが図示されているが、吸気部16と給気部15はダクト等に連結された別体であってもよいし、内蔵のファン、冷却コイル等の内部部品も適宜の箇所に配置されていればよい。
【0032】
給気部15は、冷却コイル及びフィルタを内部に備えている。そして、図3に示すように、給気部15の前面15a(装置列側の側面)には、複数(図3では、8つ)の円形状の吹出口18が設けられている。複数の吹出口18は、隙間を空けて給気部15の高さ方向及び幅方向に並んで配置されている。給気部15では、冷却コイルにより、吸気部16から供給された空気を冷却して冷気を形成し、フィルタによって冷気中の塵埃等を除去した後、吹出口18から冷気を列方向に吹き出す。なお、給気部15において上から1番目の吹出口18の高さは、所定の温度条件の温度成層を形成するための高さであり、レール14から吊り下げられた搬送装置13に保持されている容器10の高さよりも少し高くなっている。
【0033】
複数の吹出口18の各々には、吹出口18の中央を中心にして複数のフィン19(本開示の「旋回流発生器」の一例)が円周方向に等間隔かつ放射状に取り付けられている。また、複数のフィン19の各々は、吹出口18の中心軸に対して傾斜して配置されている。これにより、給気部15からクリーンルーム1に冷気を吹き出すときに、中心軸を中心にする旋回成分を冷気に与えて、吹出口18周辺のクリーンルーム1内の空気を誘引することができる。
【0034】
また、複数の吹出口18のうち、給気部15の高さ方向において隣り合う吹出口18では、互いにフィン19の傾斜方向が逆になっていることで、互いに冷気に与える旋回成分が逆になる。例えば、図3において細い矢印で示すように、上から1番目の吹出口18で反時計回り方向の旋回成分を冷気に与える場合には、上から2番目の吹出口18では時計回り方向の旋回成分を冷気に与える。これにより、これらの吹出口18の間では、上から1番目の吹出口18による旋回成分と上から2番目の吹出口18による旋回成分が同じ方向(図3では、右方向)となり、互いに旋回成分が助長し合うようになる。また、この場合には、上から3番目の吹出口18では反時計回り方向の旋回成分を冷気に与える。これにより、上から2番目の吹出口18と上から3番目の吹出口18との間では、上から2番目の吹出口18による旋回成分と上から3番目の吹出口18による旋回成分が同じ方向(図3では、左方向)となり、互いに旋回成分が助長し合うようになる。
【0035】
この結果、吹出口18から吹き出した冷気に誘引される吹出口18周辺のクリーンルーム1内の空気の誘引量(誘引比)が増加するので、図3において太い矢印で示すように冷気の風量を増加させてクリーンルーム1内に拡散させることができる。これにより、冷気に旋回成分を与えない場合よりドラフト感の無い吹き出しを行うことができる。
【0036】
また、複数の給気部15は、図1及び図2に示すように、側壁3及び側壁5のうちの、列方向に垂直な方向における複数の装置列の一方の端(例えば、図1では左から1番目の
装置列)から他方の端(例えば、図1では右から1番目の装置列)までの範囲に対応する範囲に、隙間を空けて並んで配置されている。
【0037】
前述したように、給気部15の吹出口18から冷気を列方向に吹き出すときには、吹出口18周辺のクリーンルーム1内の空気を誘引するので、冷気の質量が増える。このため、吹出口18から吹き出した後の冷気は、運動量保存則に従って速やかに減速する。また、冷気は、比較的密度が高いので、下降して床2に沈んでいく。これらの結果、クリーンルーム1内に冷気が床2から層状に積み上がっていき、温度成層が形成されていく。このとき、前述した複数の空調ユニットの給気部15の配置により、第1の領域のうちの装置列間の部分に冷気を効率良く積み上げていくことができる。
【0038】
このように、本実施形態の空調システムは、基本構成として空調ユニット(給気部15及び吸気部16)を備えている。しかも、給気部15の吹出口18には、吹き出す冷気に旋回成分を与えるフィン19が取り付けられている。このような空調ユニットにより、温度成層を形成しながら、クリーンルーム1を置換空調している。この空調ユニットに加えて、本実施形態の空調システムは、更に第1の仕切り板20を備えている。
【0039】
図1及び図2に示すように、第1の仕切り板20は、例えば、樹脂板のような板状の部材であり、吊り下げ具を上端に設けて、天井フレーム12から吊り下げられている。これにより、第1の仕切り板20は、複数の装置列の各々について、第2の領域において半導体製造装置8の上面のうちの前面側の部分の上に床2に対して立った状態で配置されている。更に、第1の仕切り板20は、装置列内の複数の半導体製造装置8の先頭(図1では、上から1番目の半導体製造装置8)から後尾(図1では、下から1番目の半導体製造装置8)までの範囲で列方向、すなわち冷気の吹き出し方向と同じ方向に伸びている。
【0040】
また、第1の仕切り板20は、取り付け具を下端に設けて、装置列内の複数の半導体製造装置8の各々の上部に取り付けられている。これにより、第1の仕切り板20が、揺れるのを抑制することができる。なお、取り付け具を替えて、第1の仕切り板20の下部に錘が取り付けられてもよい。これによっても、第1の仕切り板20が揺れるのを抑制することができる。
【0041】
このように構成された本実施形態の空調システムを適用したクリーンルーム1内において、冷気及び高温の空気は以下のように流れる。
【0042】
図4(A),(B)は、第1の実施形態の空調システムを適用したクリーンルーム内における冷気及び高温の空気の流れを説明する図である。
【0043】
図4において細い矢印で示すように、空調ユニットの給気部15の前面15aに設けられた吹出口18から冷気が列方向に吹き出される。このとき、前述したように吹出口18のフィン19によって冷気に旋回成分が与えられるので、吹出口18から吹き出された冷気は、周囲の空気を誘引して速やかに減速する。また、冷気は、比較的密度が高いので、下降して床2に沈んでいく。これらの結果、例えば、第1の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分に冷気が床2から層状に積み上げられていく。
【0044】
一方、半導体製造装置8は、化粧パネルが設けられる前面以外の上面、後面及び側面から熱を排出する。特に、半導体製造装置8の上面は後面及び側面よりも多く熱を排出する。積み上げられた冷気は、半導体製造装置8の熱によって加熱されて、高温の空気となる。高温の空気は、冷気よりも密度が低いので、図4において白抜きの矢印に示すように浮力によって第2の領域を拡散しながら緩やかに上昇し、半導体製造装置8の上方の天井フレーム12を越えて、第3の領域のクリーンルーム1の上部に溜まっていく。なお、この
とき、半導体製造装置8等で生じた塵埃等も、高温の空気と共に上昇し、クリーンルーム1の上部に運ばれて、浮遊微粒子として溜まっていく。
【0045】
冷気は、高くなるにつれて徐々に温度が上昇しながらも、第1の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分だけでなく、その上の第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分にも積み上げられていく。第1の仕切り板20が配置されていない場合には、第2の領域において、半導体製造装置8上の部分の高温の空気が、比較的低温の前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に流れてくる。このため、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分の温度が更に上昇してしまう。
【0046】
本実施形態では、第1の仕切り板20により、第2の領域のうちの半導体製造装置8上の部分と、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分とが区切られている。これにより、半導体製造装置8上の部分(本開示の「高温の空気が上昇する上昇領域」の一例)の高温の空気が、図4において破線で囲まれた矩形部分に示すような前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分(本開示の「他の領域」の一例)に流れてくるのを遮ることができる。このため、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分では、積み上げられた冷気の温度上昇を抑制することができる。
【0047】
また、第1の仕切り板20により、第2の領域のうちの半導体製造装置8上の部分と、空調ユニットが設置されていない側壁4、6と半導体製造装置8との間にある、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分とが区切られている。これにより、半導体製造装置8上の部分の高温の空気が、図4において破線で囲まれた矩形部分に示すような半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分(本開示の「他の領域」の一例)に流れてくるのを遮ることができる。このため、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分でも、積み上げられた冷気の温度上昇を抑制することができる。
【0048】
ところで、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分や、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分は、図2に示すように、搬送装置13のホイストの昇降によってロードポート9と搬送装置13との間で製品が収容された容器10が垂直方向に搬送される垂直搬送領域を含んでいる。更に、搬送装置13のレール14での走行によって容器10が水平方向に搬送される水平搬送領域も含んでいる。
【0049】
そして、近年、半導体製造装置8の製品は、微細化が進み、例えば、20nmのような極細の配線を含んでいるので、熱による欠陥が生じる可能性がある。
【0050】
前述したように、本実施形態の空調システムでは、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分及び半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分の温度上昇を抑制することができるので、搬送中の製品に熱による欠陥が生じるのを抑制することができる。
【0051】
そして、クリーンルーム1の上部に溜まった高温の空気の一部は、側壁3、5に沿って下降し、空調ユニットの吸気部16の上面16aに設けられた吸気口17から吸気される。その後、高温の空気は、吸気部16から給気部15に供給され、給気部15にて冷却されて、冷気となる。そして、冷気は、給気部15にて冷気中の塵埃等が除去された後、再び吹出口18から吹き出される。
【0052】
第1の仕切り板20を備えた場合のクリーンルーム1内の温度分布をシミュレーションした。また、比較のために、第1の仕切り板20を備えない場合のクリーンルーム内の温度分布もシミュレーションした。
【0053】
図5(A)は、第1の仕切り板を備えた場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図5(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。更に、図6(A),(B)は、同じく第1の仕切り板を備えた場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
【0054】
また、図7(A)は、第1の仕切り板を備えない場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図7(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。更に、図8(A),(B)は、同じく第1の仕切り板を備えない場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
【0055】
これらのシミュレーションで使用した条件は以下のようにした。すなわち、クリーンルームの床面積は幅(列方向に垂直な方向の長さ)36m×奥行(列方向の長さ)35m=1,260mとし、天井の高さは8mとした。また、半導体製造装置8の台数は64台とし、装置8による負荷(発熱)は19,687.5W/台とした。なお、負荷の内訳は、装置8の上面50%、前面0%、後面30%、及び側面10%×2=20%とした。この結果、装置8による負荷の合計が1,260,000Wとなることから、クリーンルーム内の負荷の密度は1,000W/mとした。更にまた、空調ユニット(給気部15、吸気部16)の台数は24台とし、各空調ユニットの風量は12,000m/hとした。この結果、風量の合計は、288,000m/hとした。更に、空調ユニットの冷気の吹き出し温度は20℃とし、空調ユニットの循環回数は65回/hとした。なお、この循環回数は、保障高さ(3.5m)、すなわちレールから吊り下げられた搬送装置に保持されている容器の高さでの循環回数である。当該保証高さは、既述した条件規定領域として設定される高さとして把握される。
【0056】
更に、第1の仕切り板20は、天井フレームから吊り下げられることで、装置の上端(高さ2.5m)から天井フレーム(高さ4.5m)まで覆うものとした。天井フレームの高さは、概ね給気部15の吹出口18によって冷気が吹き出される部分の上限の高さに準ずる。
【0057】
また、シミュレーション結果では、列方向の所定の位置として、空調ユニットが設置された側壁から19.25mの位置での温度分布を示した。更に、高さ方向の所定の位置として、第1の領域にある床から1.5mの高さでの温度分布と、第2の領域にある3.5mの高さでの温度分布を示した。なお、シミュレーション結果のうち、白抜きの部分は装置8を示している。また、装置列間の部分のうち、装置間の距離が長い方のものが、前面同士が向かい合っている装置列間の部分を示し、装置間の距離が短い方のものが、後面同士が向かい合っている装置列間の部分を示している。
【0058】
例えば、第1の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分において、前述した列方向の所定の位置は、クリーンルームの奥行の中央付近の位置である。この位置は、装置8の側面及び後面からの熱が装置列内の装置8間の部分の各々から流れてくるので、図6(A)及び図8(A)に示すように列方向で温度が最も高くなるような位置である。このような列方向の所定の位置において、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に注目すると、保障高さの温度分布は、以下のようになっている。すなわち、第1の仕切り板20を備えていない場合には、図7(B)及び図8(B)に示すように、保障高さに、30℃から32℃までの温度範囲の領域と、32℃から34℃までの温度範囲の領域が混在している。これに対し、第1の仕切り板20を備えている場合には、図5(B)及び図6(B)に示すように、例えば、30℃から32℃までの温度範囲の領域が高くなることで、保障高さに、32℃から34℃までの温度範囲の
領域がなくなり、30℃から32℃までの温度範囲の領域のみが存在している。このことから、第1の仕切り板20を備えることにより、注目した部分では、冷気の温度上昇が抑制されていることが判明した。同様に、第2の領域のうちの装置の前面側の部分の上の部分においても、冷気の温度上昇が抑制されていることが判明した。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の空調システムでは、例えば、第1の仕切り板20が、第2の領域において、半導体製造装置8の上面のうちの前面側の部分の上に床2に対して立った状態で配置され、半導体製造装置8の上面の上の部分と、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分とが区切られている。これにより、半導体製造装置8上の部分の高温の空気が、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に流れてくるのを遮ることができる。このため、置換空調による温度成層を保つことができる風量を維持しながら、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分の冷気の温度上昇を抑制することができる。
【0060】
本実施形態では、上述したように置換空調を前提とした空調システムを採用しており、室内の温度成層を保った状態で半導体製造装置8の熱を空調で処理する形態にしているため、第1の仕切り板20や後述するその他の仕切り板は、室内空間を完全に仕切るものではない。すなわち、本実施形態は、室内の温度成層を保って床2から天井7へ徐々に空気を押し上げる置換空調による効率的な空調の実現を基調としており、例えばデータセンタで採用されるようなコールドアイルとホットアイルを仕切りで完全に遮断する強制循環を前提とした空調を採用していないため、半導体製造装置8と第1の仕切り板20との間には隙間が存在している。このため、このような隙間を通じた作業者の通過や物品の出し入れが可能であり、半導体製造装置8の点検等も容易である。後述する他の実施形態においても同様である。
【0061】
なお、本実施形態では、各装置列の上に配置された第1の仕切り板20は、1つの板状の部材から構成されていたが、複数の板状の部材から構成されていてもよい。また、第1の仕切り板20は、半導体製造装置8から天井フレーム12まで覆うものとしたが、これに限定されない。例えば、半導体製造装置8と第1の仕切り板20との間、又は第1の仕切り板20と天井フレーム12との間、あるいはこれらの間の両方に隙間を設けて、半導体製造装置8から天井フレーム12までの一部を覆うものとしてもよい。
【0062】
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。また、図10(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図10(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
【0063】
前述した第1の実施形態の空調システムでは、第1の仕切り板20を備えている。本実施形態の空調システムでは、第1の仕切り板20に加えて、更に第2の仕切り板を備えている。本実施形態の空調システムにおいて、第2の仕切り板以外の構成は第1実施形態の空調システムと同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0064】
図9及び図10に示すように、第2の仕切り板21は、例えば、樹脂板のような板状の部材であり、吊り下げ具を上端に設けて、天井フレーム12から吊り下げられている。これにより、第2の仕切り板21は、後面同士が向かい合っている隣り合う装置列(図9では、例えば、左から1番目及び2番目の装置列)について、以下のように配置されている。すなわち、第2の仕切り板21は、第1の領域及び第2の領域のうちの、装置列内の先頭の半導体製造装置8の列外側の側面の横と、後尾の半導体製造装置8の列外側の側面の横とにそれぞれ床2に対して立った状態で配置されている。更に、第2の仕切り板21は
、一方の装置列の半導体製造装置8から、後面同士が向かい合っている装置列間の部分を通って、他方の装置列の半導体製造装置8までの範囲で列方向に垂直な方向、すなわち冷気の吹き出し方向に垂直な方向に伸びている。
【0065】
このため、第2の領域については、第1及び第2の仕切り板20、21により、隣り合う装置列内の半導体製造装置8上の部分の周囲が囲まれる。
【0066】
このように構成された本実施形態の空調システムを適用したクリーンルーム1内において、冷気及び高温の空気の流れは、基本的には、第1の実施形態のそれと同じである。但し、第2の仕切り板21が配置されることにより、以下の点が異なる。
【0067】
まず、冷気に関し、第2の仕切り板21が配置されていない場合には、給気部15の吹出口18から列方向に吹き出された冷気は、例えば、第1の領域のうちの装置列間の部分、すなわち前面同士が向かい合っている装置列間の部分、及び後面同士が向かい合っている装置列間の部分の両方に積み上げられていく。
【0068】
これに対し、本実施形態では、第2の仕切り板21により、第1の領域については、隣り合う装置列の列方向の両端において、後面同士が向かい合っている装置列間の部分が覆われる。これにより、給気部15の吹出口18から吹き出された冷気は、装置列間の部分のうちの、後面同士が向かい合っている装置列間の部分にはあまり積み上げられずに、前面同士が向かい合っている装置列間の部分に集中して積み上げられていく。このため、第1の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分と、その上の第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分では、積み上げられた冷気の温度を全体的に低くすることができる。
【0069】
その上で、高温の空気に関し、第2の仕切り板21が配置されていない場合には、第1の領域については、隣り合う装置列の列方向の両端において、半導体製造装置8の側面及び後面の横の部分の高温の空気が、半導体製造装置8と側壁3、5との間の部分に流れ、更に前面同士が向かい合っている装置列間の部分に流れてくる。更に、第2の領域については、半導体製造装置8上の部分の高温の空気が、半導体製造装置8と側壁3、5との間の部分の上の部分に流れ、更に前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に流れてくる。
【0070】
これに対し、本実施形態では、第2の仕切り板21により、第1の領域については、半導体製造装置8の側面の横と、その側面の横の半導体製造装置8と側壁3、5との間の部分を介して、前面同士が向かい合っている装置列間の部分とが区切られている。これにより、半導体製造装置8の側面及び後面の横の部分(本開示の「高温の空気が上昇する上昇領域」の一例)の高温の空気が、前面同士が向かい合っている装置列間の部分(本開示の「他の領域」の一例)に流れてくるのを遮ることができる。更に、第2の領域については、半導体製造装置8上の部分と、半導体製造装置8と側壁3、5との間の部分の上の部分を介して、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分とが区切られている。これにより、半導体製造装置8上の部分(本開示の「高温の空気が上昇する上昇領域」の一例)の高温の空気が、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分(本開示の「他の領域」の一例)に流れてくるのを遮ることができる。
【0071】
以上により、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分では、積み上げられた冷気の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0072】
また、第2の仕切り板21により、給気部15の吹出口18から吹き出された冷気は、第1の領域については、半導体製造装置8の前面側の部分にも集中して積み上げられてい
く。このため、半導体製造装置8の前面側の部分と、その上の第2の領域のうちの半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分では、積み上げられた冷気の温度を全体的に低くすることができる。
【0073】
また、第2の仕切り板21により、第1の領域については、半導体製造装置8の側面及び後面の横と、半導体製造装置8と側壁3、5との間の部分を介して、半導体製造装置8の前面側の部分とが区切られている。これにより、半導体製造装置8の側面及び後面の横の部分の高温の空気が、半導体製造装置8の前面側の部分(本開示の「他の領域」の一例)に流れてくるのを遮ることができる。更に、第2領域については、半導体製造装置8上の部分と、半導体製造装置8と側壁3、5との間の部分の上の部分を介して、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分とが区切られている。これにより、半導体製造装置8上の部分の高温の空気が、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分(本開示の「他の領域」の一例)に流れてくるのを遮ることができる。
【0074】
以上により、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分でも、積み上げられた冷気の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0075】
第1及び第2の仕切り板20、21を備えた場合のクリーンルーム1内の温度分布をシミュレーションした。
【0076】
図11(A)は、第1及び第2の仕切り板を備えた場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図11(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。更に、図12(A),(B)は、第1及び第2の仕切り板を備えた場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
【0077】
このシミュレーションで使用した条件は、第1実施形態のシミュレーションで使用した条件を全て含んでいる。本実施形態では、その条件に加えて、更に、第2の仕切り板21は、天井フレームから吊り下げられることで、床(高さ0m)から天井フレーム(高さ4.5m)まで覆うものとした。
【0078】
例えば、前述した列方向の所定の位置において、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に注目すると、保障高さの温度分布は、以下のようになっている。すなわち、第1及び第2の仕切り板20、21を備えている場合には、図11(B)及び図12(B)に示すように、例えば、28℃から30℃までの温度範囲の領域が高くなることで、保障高さに、第1の仕切り板20のみを備えている場合(図5及び図6を参照)には存在していた30℃から32℃までの温度範囲の領域がなくなり、28℃から30℃までの温度範囲の領域のみが存在している。このことから、第2の仕切り板21を更に備えることにより、注目した部分では、冷気の温度上昇がより一層抑制されていることが判明した。同様に、第2の領域のうちの装置の前面側の部分の上の部分においても、冷気の温度上昇がより一層抑制されていることが判明した。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の空調システムでは、第1の仕切り板20の配置に加えて、更に第2の仕切り板21が、第1の領域及び第2の領域において、後面同士が向き合っている隣り合う装置列内の先頭の半導体製造装置8の列外側の側面の横と、後尾の半導体製造装置8の列外側の側面の横とにそれぞれ床2に対して立った状態で配置されている。
【0080】
第2の仕切り板21により、隣り合う装置列の列方向の両端において、後面同士が向かい合っている装置列間の部分が覆われる。これにより、給気部15の吹出口18から吹き
出された冷気は、例えば、第1の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分に集中して積み上げられていく。このため、前面同士が向かい合っている装置列間の部分と、その上の第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分では、積み上げられた冷気の温度を全体的に低くすることができる。
【0081】
更に、第2の仕切り板21により、半導体製造装置8の側面の横と、その側面の横の半導体製造装置8と側壁3、5との間の部分を介して、前面同士が向かい合っている装置列間の部分とが区切られている。これにより、半導体製造装置8の側面及び後面の横の部分の高温の空気が、前面同士が向かい合っている装置列間の部分に流れてくるのを遮ることができる。更に、第2の領域については、半導体製造装置8上の部分と、半導体製造装置8と側壁3、5との間の部分の上の部分を介して、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分とが区切られている。これにより、半導体製造装置8上の部分の高温の空気が、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に流れてくるのを遮ることができる。
【0082】
以上により、置換空調による温度成層を保つことができる風量を維持しながら、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分の冷気の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0083】
なお、本実施形態では、隣り合う装置列の列方向の両端の各々に配置された第2の仕切り板21は、1つの板状の部材から構成されていたが、複数の板状の部材から構成されていてもよい。また、第2の仕切り板21は、床2から天井フレーム12まで覆うものとしたが、これに限定されない。例えば、床2と第2の仕切り板21との間、又は第2の仕切り板21と天井フレーム12との間、あるいはこれらの間の両方に隙間を設けて、床2から天井フレーム12までの一部を覆うものとしてもよい。
[第3の実施形態]
【0084】
図13は、第3の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。また、図14(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図14(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
【0085】
前述した第2の実施形態の空調システムでは、第1及び第2の仕切り板20、21を備えている。本実施形態の空調システムでは、第1及び第2の仕切り板20、21に加えて、更に第3の仕切り板を備えている。本実施形態の空調システムにおいて、第3の仕切り板以外の構成は第2実施形態の空調システムと同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0086】
図13及び図14に示すように、第3の仕切り板22は、例えば、樹脂板のような板状の部材であり、留め具を下面に設けて、部分的な天井パネルとして天井フレーム12の上に設置されている。これにより、第3の仕切り板22は、半導体製造装置8の前面同士が向かい合っている隣り合う装置列(図13では、左から2番目及び3番目の装置列)について、以下のように配置されている。すなわち、第3の仕切り板22は、その一部(以下、「第1の部分」と言う)として、第2の領域の上部のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に床2に対して倒れた状態で配置されている。更に、第3の仕切り板22の第1の部分は、装置列内の先頭から後尾までの範囲で列方向に直線状に伸びている。これに加えて、第3の仕切り板22は、複数の装置列の周囲について、以下のようにも配置されている。すなわち、第3の仕切り板22は、残りの部分(以下、「第2の部分」と言う)として、第2の領域の上部のうちの、四方の側壁3~6と半導体製造装置8との間の部分の上の部分に床2に対して倒れた状態で枠状に配置されている。そして
、第3の仕切り板22の第2の部分は、空調ユニットが設置された側壁3、5の中央付近で第3の仕切り板22の第1の部分の両端に接続されている。
【0087】
このように構成された本実施形態の空調システムを適用したクリーンルーム1内において、冷気及び高温の空気の流れは、基本的には、第2の実施形態のそれと同じである。但し、第3の仕切り板22が配置されることにより、以下の点が異なる。
【0088】
前述したように、第3の領域には、半導体製造装置8の熱によって加熱され、上昇した高温の空気が溜まっている。第3の仕切り板22が配置されていない場合には、第3の領域の熱気が、第2の領域のうちの比較的温度の低い前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に流れてくる。
【0089】
これに対し、本実施形態では、第3の仕切り板22の第1の部分により、第3の領域と、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分とが区切られている。これにより、第3の領域(本開示の「高温の空気が上昇する上昇領域」の一例)の高温の空気が、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分(本開示の「他の領域」の一例)に流れてくるのを遮ることができる。このため、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分では、積み上げられた冷気の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0090】
また、第3の仕切り板22の第2の部分により、第3の領域と、第2の領域のうちの半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分とが区切られている。これにより、第3の領域の高温の空気が、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分(本開示の「他の領域」の一例)に流れてくるのを遮ることができる。このため、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分でも、積み上げられた冷気の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0091】
第1、第2及び第3の仕切り板20、21、22を備えた場合のクリーンルーム1内の温度分布をシミュレーションした。
【0092】
図15(A)は、第1、第2及び第3の仕切り板を備えた場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図15(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。更に、図16(A),(B)は、第1、第2及び第3の仕切り板を備えた場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
【0093】
このシミュレーションで使用した条件は、第2実施形態のシミュレーションで使用した条件を全て含んでいる。本実施形態では、その条件に加えて、更に、第3の仕切り板22は、天井フレーム(高さ4.5m)の上に設置されるものとした。
【0094】
例えば、前述した列方向の所定の位置において、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に注目すると、保障高さの温度分布は、以下のようになっている。すなわち、第1、第2及び第3の仕切り板20~22を備えている場合には、図15(B)及び図16(B)に示すように、保障高さに、第1及び第2の仕切り板20、21のみを備えている場合(図11及び図12を参照)には存在していた28℃から30℃までの温度範囲の領域がなくなり、20℃から22℃までの温度範囲の領域のみが存在している。このことから、第3の仕切り板22を更に備えることにより、注目した部分では、冷気の温度上昇がより一層抑制されていることが判明した。同様に、第2の領域のうちの装置の前面側の部分の上の部分においても、冷気の温度上昇がより一層抑制されていることが判明した。
【0095】
以上説明したように、本実施形態の空調システムでは、第1及び第2の仕切り板20、21の配置に加えて、例えば、第3の仕切り板22の第1の部材が、第2の領域の上部のうちの、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に床2に対して倒れた状態で配置され、第3の領域と、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分とが区切られている。これにより、第3の領域の高温の空気が、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に流れてくるのを遮ることができる。このため、置換空調による温度成層を保つことができる風量を維持しながら、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分の冷気の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0096】
なお、本実施形態では、第3の仕切り板22は天井フレーム12の上に設置されるものとしたが、これに限定されない。例えば、第3の仕切り板を複数の板状の部材から構成し、その複数の板状の部材を格子状の天井フレーム12の格子間の開口部にはめ込むようにしてもよい。
【0097】
[第4の実施形態]
図17は、第4の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。また、図18(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図18(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
【0098】
前述した第1の実施形態の空調システムでは、第1の仕切り板20のみが配置されている。本実施形態の空調システムでは、第1の仕切り板20を替えて、第3の実施形態の空調システムで使用した第3の仕切り板22のみを備えている。本実施形態の空調システムにおいて、第1の仕切り板20を替えて、第3の仕切り板22のみを備えていること以外の構成は第1実施形態の空調システムと同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0099】
図17及び図18に示すように、本実施形態の第3の仕切り板22は、第3の実施形態の第3の仕切り板22と同じ部材である。このため、第3の仕切り板22の詳細な説明は省略する。
【0100】
このように構成された本実施形態の空調システムを適用したクリーンルーム1内において、冷気及び高温の空気の流れは、基本的には、第1の実施形態のそれと同じである。但し、第1の仕切り板20を替えて、第3の仕切り板22が配置されることにより、以下の点が異なる。
【0101】
第3の仕切り板22が配置されていない場合には、第3の領域の高温の空気が、第2の領域のうちの比較的温度の低い前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に流れてくる。
【0102】
これに対し、本実施形態では、第3の仕切り板22の第1の部分により、第3の領域と、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分とが区切られている。これにより、第3の領域の高温の空気が、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に流れてくるのを遮ることができる。
【0103】
更に、第3の仕切り板22の第1の部分により、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分と、その上の第3の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分との境界部分が覆われる。これにより、第2の領域において、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に積み上げられた冷気が、その上ではなく、その横の半導体製造装置8上の部分に流れていく。この冷気の流れ
に伴い、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分には、その下の第1の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分からより低温の冷気が持ち上がってくる。
【0104】
以上により、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分では、積み上げられた冷気の温度上昇を抑制することができる。
【0105】
また、第3の仕切り板22の第2の部分により、第3の領域と、第2の領域のうちの半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分とが区切られている。これにより、第3の領域の高温の空気が、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分に流れてくるのを遮ることができる。
【0106】
更に、第3の仕切り板22の第2の部分により、第2の領域のうちの半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分と、その上の第3の領域のうちの半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分との境界部分が覆われる。これにより、第2の領域において、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分に積み上げられた冷気が、その横の半導体製造装置8上の部分に流れていく。この冷気の流れに伴い、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分には、その下の第1の領域のうちの半導体製造装置8の前面側の部分からより低温の冷気が持ち上がってくる。
【0107】
以上により、第2の領域のうちの半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分でも、積み上げられた冷気の温度上昇を抑制することができる。
【0108】
第3の仕切り板22のみを備えた場合のクリーンルーム1内の温度分布をシミュレーションした。
【0109】
図19(A)は、第3の仕切り板を備えた場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図19(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。更に、図20(A),(B)は、第3の仕切り板を備えた場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
【0110】
このシミュレーションで使用した条件は、第1実施形態のシミュレーションで使用した条件と基本的に同じである。但し、本実施形態では、第1実施形態で使用した、第1の仕切り板20は装置の上端の高さから天井フレームの高さまで覆うものとしたという条件を替えて、第3の仕切り板22は天井フレーム(高さ4.5m)の上に設置されるものとした。
【0111】
例えば、前述した列方向の所定の位置において、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に注目すると、保障高さの温度分布は、以下のようになっている。すなわち、第3の仕切り板22のみを備えている場合には、図19(B)及び図20(B)に示すように、保障高さに、第1~第3の仕切り板20~23のいずれも備えていない場合(図7及び図8を参照)には存在していた30℃から34℃までの温度範囲の領域がなく、26℃から28℃までの温度範囲の領域及び28℃から30℃までの温度範囲の領域が混在している。このことから、第3の仕切り板22を備えることにより、注目した部分では、冷気の温度上昇が抑制されていることが判明した。同様に、第2の領域のうちの装置の前面側の部分の上の部分においても、冷気の温度上昇が抑制されていることが判明した。
【0112】
以上説明したように、本実施形態の空調システムでは、例えば、第3の仕切り板22の
第1の部材が、第2の領域の上部のうちの、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に床2に対して倒れた状態で配置され、第3の領域と、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分とが区切られている。これにより、第3の領域の高温の空気が、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に流れてくるのを遮ることができる。このため、置換空調による温度成層を保つことができる風量を維持しながら、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分の冷気の温度上昇を抑制することができる。
[第4の実施形態の変形例]
【0113】
前述した第4の実施形態の空調システムでは、第3の仕切り板22の第1の部分が、第2の領域の上部のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に配置されている。つまり、第3の仕切り板22の第1の部分の幅は、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の幅と同じである。但し、第3の仕切り板22の第1の部分の幅は、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の幅と同じであることに限定されない。
【0114】
例えば、本変形例では、第3の仕切り板の第1の部分の両端を、それぞれ半導体製造装置8の上面の一部を覆うように、隣り合う装置列内の半導体製造装置8側に延長して、第1の部分の幅を、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の幅よりも広くしている。更に、空調ユニットが設置されていない側壁4、6側の第3の仕切り板の第2の部分の一端についても、半導体製造装置8の上面の一部を覆うように、装置列内の半導体製造装置8側に延長して、第2の部分の幅を、側壁4、6と半導体製造装置8との間の部分の幅よりも広くしている。なお、空調ユニットが設置されている側壁3、5側の第3の仕切り板の第2の部分の幅については、第4の実施形態と同じく側壁3、5と半導体製造装置8との間の部分の幅と同じにしている。
【0115】
第3の仕切り板を半導体製造装置8側に延長した場合のクリーンルーム1内の温度分布をシミュレーションした。
【0116】
図21(A)は、第3の仕切り板を装置側に延長した場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図21(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。更に、図22(A),(B)は、第3の仕切り板を装置側に延長した場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
【0117】
このシミュレーションで使用した条件は、第4実施形態のシミュレーションで使用した条件と基本的に同じである。但し、本変形例では、第3の仕切り板22として、第4実施形態の第3の仕切り板22に対して、第1の部分の両端をそれぞれ装置側に2m延長すると共に、空調ユニットが設置されていない側壁側の第2の部分の一端を装置側に2m延長した仕切り板を使用した。
【0118】
例えば、前述した列方向の所定の位置において、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に注目すると、保障高さの温度分布は、以下のようになっている。すなわち、第3の仕切り板22を装置側に延長した場合には、図21(B)及び図22(B)に示すように、保障高さに、26℃から28℃までの温度範囲の領域のみが存在している。このことから、第3の仕切り板22を装置側に2mまで延長しても、注目した部分では、第3の仕切り板22を延長しない場合と同程度に冷気の温度上昇が抑制されていることが判明した。同様に、第2の領域のうちの装置の前面側の部分の上の部分においても、第3の仕切り板22を延長しない場合と同程度に冷気の温度上昇が抑制されていることが判明した。
【0119】
なお、第3の仕切り板22を延長すると、使用する板状の部材の量が増えるので、第3の仕切り板22の費用が上がる。このことから、費用対効果の観点から、第3の仕切り板22を装置側に延長するか否かを決定してもよく、延長する場合には2mまでの長さのうちのどの長さにするのかを決定してもよい。
【0120】
[第5の実施形態]
図23は、第5の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。また、図24(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図24(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
【0121】
前述した第4の実施形態の空調システムでは、第3の仕切り板22のみを備えている。本実施形態の空調システムでは、第3の仕切り板22に加えて、更にファンを備えている。本実施形態の空調システムにおいて、ファン以外の構成は第4の実施形態の空調システムと同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0122】
図23及び図24に示すように、ファン23は、空気を上方に流すものであり、留め具を設けて、天井フレーム12に設置されている。また、ファン23は、第2の領域の上部のうちの、複数の半導体製造装置8の各々の上方に配置されている。なお、ファン23は、置換空調による温度成層を保つことができる程度の風量に設定されている。
【0123】
このように構成された本実施形態の空調システムを適用したクリーンルーム1内において、冷気及び高温の空気の流れは、基本的には、第4の実施形態のそれと同じである。但し、ファン23が配置されることにより、以下の点が異なる。
【0124】
前述したように、第3の仕切り板22により、第2の領域において、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に積み上げられた冷気が、その横の半導体製造装置8上の部分に流れていく。
【0125】
一方、ファン23が配置されていない場合にも、第2の領域のうちの半導体製造装置8上の部分の高温の空気は第3の領域に上昇するものの、ファン23が配置されることにより、第2の領域のうちの半導体製造装置8上の部分の高温の空気を第3の領域に強制的に上昇させることができる。
【0126】
本実施形態では、ファン23による高温の空気の強制的な上昇に伴い、第2の領域において、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に積み上げられた冷気は、その横の半導体製造装置8上の部分により強く流れる。更に、この冷気の流れに伴い、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分には、その下の第1の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分からより低温の冷気が持ち上がってくる。このため、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分では、積み上げられた冷気の温度上昇を抑制することができる。
【0127】
また、ファン23による高温の空気の強制的な上昇に伴い、第2の領域において、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分に積み上げられた冷気は、その横の半導体製造装置8上の部分により強く流れる。更に、この冷気の流れに伴い、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分には、その下の第1の領域のうちの半導体製造装置8の前面側の部分からより低温の冷気が持ち上がってくる。このため、半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分でも、積み上げられた冷気の温度上昇を抑制することができる。
【0128】
ファン23を備えた場合のクリーンルーム1内の温度分布をシミュレーションした。
【0129】
図25(A)は、ファンを備えた場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図25(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。更に、図26(A),(B)は、ファンを備えた場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
【0130】
このシミュレーションで使用した条件は、第4実施形態のシミュレーションで使用した条件を全て含んでいる。本実施形態では、その条件に加えて、更に、ファン23は、複数の装置の各々の上方の天井フレーム(高さ4.5m)の下に設置されるものとした。更にまた、ファン23の風量は4,500m/hとした。
【0131】
例えば、前述した列方向の所定の位置において、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に注目すると、保障高さの温度分布は、以下のようになっている。すなわち、ファン23を備えている場合には、図25(B)及び図26(B)に示すように、保障高さに、ファン23を備えていない場合(図21及び図22を参照)に存在していた28℃から30℃までの温度範囲の領域がなくなり、24℃から26℃までの温度範囲の領域及び26℃から28℃までの温度範囲の領域が混在している。このことから、ファン23を更に備えることにより、注目した部分では、冷気の温度上昇がより一層抑制されていることが判明した。同様に、第2の領域のうちの装置の前面側の部分の上の部分においても、冷気の温度上昇がより一層抑制されていることが判明した。
【0132】
なお、比較のために、第3の仕切り板22を備えずに、ファン23のみを備えた場合のクリーンルーム内の温度分布もシミュレーションした。
【0133】
図27(A)は、第3の仕切り板を備えずに、ファンのみを備えた場合のクリーンルームの構成の概略を示す図であり、図27(B)は、その場合の列方向の所定の位置における垂直方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。更に、図28(A),(B)は、同じく第3の仕切り板を備えずに、ファンのみを備えた場合の高さ方向の所定の位置における水平方向のクリーンルーム内の温度分布を示す断面図である。
【0134】
このシミュレーションで使用した条件は、第4実施形態のシミュレーションで使用した条件と基本的に同じである。但し、第4実施形態で使用した、第3の仕切り板22は天井フレーム(高さ4.5m)の上に設置されるものとしたという条件を替えて、ファン23は、複数の装置の各々の上方の天井フレーム(高さ4.5m)の下に設置されるものとした。更に、ファン23の風量は4,500m/hとした。
【0135】
例えば、前述した列方向の所定の位置において、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分に注目すると、保障高さの温度分布は、以下のようになっている。すなわち、第3の仕切り板を備えずに、ファン23のみを備えている場合には、図27(B)及び図28(B)に示すように、保障高さに、32℃から34℃までの温度範囲の領域、及び第1~第3の仕切り板20~22及びファン23のいずれも備えていない場合(図7及び図8を参照)にも存在していない34℃から36℃までの温度範囲の領域が混在している。このことから、ファン23のみを備えるよりも、第3の仕切り板22のような仕切り板と共にファン23を備えることが好適であることが判明した。同様に、第2の領域のうちの装置の前面側の部分の上の部分においても、仕切り板と共にファン23を備えることが好適であることが判明した。
【0136】
以上説明したように、本実施形態の空調システムでは、第3の仕切り板22に加えて、更にファン23が、第2の領域の上部のうちの、複数の半導体製造装置8の各々の上方に
配置されている。これにより、第2の領域のうちの半導体製造装置8上の部分の高温の空気を第3の領域に強制的に上昇させることができる。これに伴い、例えば、第2の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分には、その下の第1の領域のうちの前面同士が向かい合っている装置列間の部分からより低温の冷気が持ち上がってくる。このため、置換空調による温度成層を保つことができる風量を維持しながら、前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分の冷気の温度上昇を抑制することができる。
【0137】
なお、本実施形態では、ファン23は、第2の領域の上部のうちの、複数の半導体製造装置8の各々の上方に配置されるものとしたが、これに限定されない。例えば、ファンは、第2の領域の上部のうちの、後面同士が向かい合っている装置列間の部分の上方に配置されてもよい。また、ファンは、第2の領域の上部のうちの、複数の半導体製造装置8の各々の上方と、後面同士が向かい合っている装置列間の部分の上方とに配置されてもよい。
【0138】
前述した第1~第5の実施形態及びその変形例は、それぞれ組み合わせる事ができる。
【0139】
例えば、第1~第3の実施形態の空調システムの各々に、第5の実施形態の空調システムで使用したファン23を追加してもよい。
【0140】
また、第4及び第5の実施形態の空調システムの各々に、第2の実施形態の空調システムで使用した第2の仕切り板21を追加してもよい。
【0141】
また、第1の実施形態の空調システムでは、第1の仕切り板20のみを備え、第4の実施形態の空調システムでは、第3の仕切り板22のみを備えている。同様に、空調システムに第2の仕切り板21のみを備えてもよい。
【0142】
[第6の実施形態]
図29は、第6の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。また、図30(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図30(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
【0143】
前述した第4の実施形態の空調システムでは、給気部15及び吸気部16を備えた空調ユニットが設置されている。本実施形態の空調システムでは、空調ユニットに加えて、更に上部空調ユニットを備えている。本実施形態の空調システムにおいて、上部空調ユニット以外の構成は第4の実施形態の空調システムと基本的に同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0144】
図29及び図30に示すように、第3の仕切り板22の上には、自動搬送システムや照明等の保守及び修理を行うための通路(歩廊24)が設けられている。図29では、理解を容易にするため、歩廊24にハッチングを施している。歩廊24は、第3の仕切り板22と重なるように、半導体製造装置8の前面同士が向かい合っている隣り合う装置列(図29では、左から2番目及び3番目の装置列)間の部分の上と、四方の側壁3~6と半導体製造装置8との間の部分の上とに配置されている。また、歩廊24は、上方から見たときに空調ユニットの吸気部16よりも列方向(図29では、Y方向)内側の吸気部16の近傍に配置されており、吸気部16の保守及び修理を行うことも可能となっている。
【0145】
第3の仕切り板22の上方のクリーンルーム1の天井7には、上部空調ユニット25が設置されている。上部空調ユニット25は、空調ユニットが設置されている側壁3、5の
各々に沿って複数(図29では、5つ)並んで配置されている。また、上部空調ユニット25は、上方から見たときに歩廊24よりも列方向内側の歩廊24の近傍に配置されている。つまり、上部空調ユニット25と空調ユニットとは、列方向の両側から歩廊24を挟むように配置されていると言える。
【0146】
図31は、空調ユニットの内部構成を説明する図である。
【0147】
図31に示すように、空調ユニット26は、前述したように給気部15及び吸気部16を備えている。吸気部16は、ファン27を内部に備えており、ファン27によって上面16aの吸気口17からクリーンルーム1の上部の空気を吸い込み、給気部15に供給する。給気部15は、冷却コイル28及びフィルタ29を備えている。給気部15では、冷却コイル28により、吸気部16から供給された空気を冷却して冷気を形成し、フィルタ29によって冷気中の粉塵等を除去した後、前面15aの吹出口18から冷気を吹き出す。
【0148】
図32は、上部空調ユニットの外観構成を示す斜視図である。また、図33は、上部空調ユニットの内部構成を説明する図である。
【0149】
図32及び図33に示すように、上部空調ユニット25の側面25aには吸気口30が設けられ、下面25bには吹出口31が設けられている。また、上部空調ユニット25は、内部にフィルタ32、冷却コイル33及びファン34を備えている。上部空調ユニット25では、ファン34によって吸気口30からクリーンルーム1の天井7付近の空気を吸い込む(図30(B)参照)。そして、当該空気中の粉塵等をフィルタ32によって除去した後、冷却コイル33によって空気を冷却して冷気を形成し、吹出口31から冷気を吹き出す。
【0150】
空調ユニット26の冷却コイル28及び上部空調ユニット25の冷却コイル33は、それぞれクリーンルーム1外部から供給された冷水及び冷却水によって冷却されることで、冷却コイル28、33を通過する空気を冷却して冷気を形成することができる。
【0151】
図34は、クリーンルーム内における空気の流れを説明する図である。また、図34では、空調ユニット26の冷却コイル28に供給される冷水、及び上部空調ユニット25の冷却コイル33に供給される冷却水の流れも併せて説明している。なお、図34では、説明を容易にするために、クリーンルーム1内の吊り材11、搬送装置13、レール14、空調ユニット26のフィルタ29、及び上部空調ユニット25のフィルタ32等の図示を省略している。
【0152】
図34に示すように、半導体製造工場は、クリーンルーム1と、クリーンルーム1外部の機械室35とを備えている。機械室35には、空調ユニット26の冷却コイル28に供給する冷水を生成するための冷凍機36が設置されている。また、半導体製造工場の屋外には、上部空調ユニット25の冷却コイル33に供給する冷却水を生成するための冷却塔37が設置されている。
【0153】
冷却塔37は、例えば、強制通風型冷却塔であり、送風機、散水パイプ、充填材及び水槽等を備えている。冷却塔37では、気化熱を利用して、冷却塔37に供給された水を冷却して冷却水を生成する。冷却塔37で生成された冷却水は、ポンプ38により、その一部が冷凍機36に供給される。
【0154】
冷凍機36は、例えば、圧縮型冷凍機であり、凝縮器39、蒸発器40、圧縮機及び膨張弁等を備えている。凝縮器39では、圧縮機で高温高圧となった冷媒蒸気が供給され、
冷却塔37から供給された冷却水に熱を与えて液化して、低温・高圧の冷媒液となる。その後、冷媒液は、膨張弁を通って気液混合状態となり、蒸発器40に供給される。一方、冷却水は、凝縮器39で冷媒蒸気によって温められて、冷却塔37に戻る。また、蒸発器40では、気液混合状態となった冷媒は、空調ユニット26の冷却コイル28で温められた冷水によって蒸発して、低温低圧の冷媒蒸気となる。そして、冷媒蒸気は圧縮機に運ばれる。一方、温められた冷水は、冷媒の蒸発によって熱を奪われて冷たい冷水となる。蒸発器40で生成された冷水は、バルブ41がオンであるときに、ポンプ42によって冷却コイル28に供給される。冷水は、冷却コイル28を通るときに、ファン27によって吸気部16から給気部15に供給された比較的温かいクリーンルーム1の上部の空気(冷気CA2)を冷却する。一方、冷水は当該空気から熱を与えられて温められた冷水となり、蒸発器40に戻る。
【0155】
また、冷却塔37で生成された冷却水の残りの部分は、上部空調ユニット25の冷却コイル30に供給される。冷却水は、冷却コイル30を通るときに、ファン34によって吸気されたクリーンルーム1の天井7付近の高温の空気HAを冷却する。一方、冷却水は高温の空気HAから熱を与えられて温められた冷却水となり、冷却塔37に戻る。
【0156】
続いて、図34を用いてクリーンルーム1内における空気の流れを説明する。本実施形態では、基本的には空調ユニット26によって循環方式の空調がクリーンルーム1内で行われている。
【0157】
空調ユニット26では、クリーンルーム1の上部の空気が、ファン27によって吸気口17から吸い込まれ、冷却コイル28で冷却されて冷気CA1となる。そして、図34において細い矢印で示すように、冷気CA1は、クリーンルーム1の下部に設けられた吹出口18から側方(列方向)に吹き出される。このとき、前述したように吹出口18のフィン19によって冷気CA1に旋回成分が与えられるので、吹出口18から吹き出された冷気CA1は、周囲の空気を誘引して速やかに減速する。また、冷気は、比較的密度が高いので、下降して床2に沈んでいく。これらの結果、第1の領域に冷気CA1が床2から層状に積み上げられていく(図4参照)。
【0158】
一方、積み上げられた冷気CA1は、半導体製造装置8の熱によって加熱されて、高温の空気HAとなる。高温の空気HAは、冷気CA1よりも密度が低いので、図34において白抜きの矢印に示すように浮力によって第2の領域を拡散しながら緩やかに上昇し、半導体製造装置8の上方の天井フレーム12を越えて、第3の領域のクリーンルーム1の上部に溜まっていく。
【0159】
近年、半導体製造装置8の大型化に伴い、半導体製造装置8から多くの熱が排出されている。また、本実施形態では、天井フレーム12の上に、部分的な天井パネルとして第3の仕切り部材22が設置されている。これにより、第3の領域の高温の空気HAが、第2の領域のうちの比較的温度が低い半導体製造装置8の前面同士が向かい合っている装置列間の部分の上の部分や、側壁4、6に面した半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分に流れてくるのを遮ることができる。その一方で、第3の領域の高温の空気HAが第2の領域に流れていかないことにより、第3の領域に高温の空気HAがますます溜まるようになる。これらの結果、第3の領域が高温となってしまう。例えば、冷気CA1によって第1の領域が所定の温度条件として23±3℃の温度範囲となっているときに、第3の領域が40℃~60℃の温度範囲となることがある。
【0160】
本実施形態では、クリーンルーム1の上部に上部空調ユニット25が設置されている。上部空調ユニット25では、クリーンルーム1の天井7付近の高温の空気HAが、ファン34によって吸気口30から吸い込まれ、冷却コイル33を通る冷却水によって冷却され
て冷気CA2となる。例えば、32℃の冷却水を用いた場合に、37℃の冷気CA2を形成することができる。そして、冷気CA2は、空調ユニット26の吸気口17よりも上方に設けられた吹出口31から下方に吹き出される。これにより、第3の領域のうちの吹出口31と吸気口17との間の部分の温度を低下させることができる。
【0161】
吹出口31から空調ユニット26の吸気口17の方へ吹き出された冷気CA2は、空調ユニット26の吸気口17から吸気される。その後、冷気CA2は、ファン27によって吸気部16から給気部15に供給され、冷却コイル28で冷却されて冷気CA1となる。そして、冷気CA1は再び吹出口18から吹き出される。
【0162】
このとき、冷気CA2は高温の空気HAよりも温度が低いので、高温の空気HAから冷気CA1を形成する場合と比べると、冷却コイル28で冷却に要する冷熱の熱量が小さい。そして、冷気CA2は、冷却塔37で冷却された冷却水が流れる上部空調ユニット25の冷却コイル33で冷やされたものなので、高温の空気HAから冷気CA2を得るために要するエネルギーは、ポンプ38や冷却塔37内の電動ファンといった補機類の僅かな動力だけであり、冷凍機のような大型の動力を必要としない。これにより、冷凍機36で冷水を生成するために必要な消費電力量(例えば、圧縮機で冷媒を圧縮するために必要な消費電力量)を抑えることができる。
【0163】
以上により、半導体製造装置8が設置されたクリーンルーム1の空調エネルギーを可及的に抑制することができる。
【0164】
また、第3の領域には歩廊24が設けられており、歩廊24上に空調ユニット26等を保守及び修理を行う作業員がいる場合がある。本実施形態では、歩廊24よりも上方に設けられた上部空調ユニット25の吹出口31から冷気CA2が下方に吹き出されているので、第3の領域のうちの吹出口31と歩廊24との間の部分の温度も低下させることができる。これにより、歩廊24上の作業員に対して熱による負担を軽減することができる。更に、クリーンルーム1の上部に設置された照明等の設備に対しても熱による負担を軽減することができる。
【0165】
なお、上部空調ユニット25のファン34は、空調ユニット26のファン27よりも風量が少ない。これにより、置換空調による温度成層を殆ど乱すことなく、十分に保つことができる。
【0166】
以上説明したように、本実施形態の空調システムでは、クリーンルーム1の上部に上部空調ユニット25が設置されている。上部空調ユニット25では、クリーンルーム1の上部の高温の空気HAが吸気口30から吸気され、冷却塔37から供給された冷却水を用いて冷却コイル33で冷却されて冷気CA2となる。そして、冷気CA2は、吹出口31から空調ユニット26の吸気口17へ吹き出されている。その後、冷気CA2は、空調ユニット26において吸気口17から吸気され、冷凍機36から供給された冷水を用いて冷却コイル28で冷却されて冷気CA1となる。これにより、上部空調ユニット25が存在しない場合に比べて、冷凍機36で冷水を生成するために必要な消費電力量を抑えることができる。このため、半導体製造装置8が設置されたクリーンルーム1の空調エネルギーを可及的に抑制することができる。
【0167】
なお、本実施形態では、半導体製造装置8から高温の空気HAが上昇する上昇領域と、他の領域とを仕切る仕切り部材として第3の仕切り部材22が設けられているが、これに限定されない。例えば、第3の仕切り部材22の代わりに、第1の仕切り部材20又は第2の仕切り部材21が設けられてもよい。また、第1の仕切り部材20、第2の仕切り部材21及び第3の仕切り部材22のいずれか、又は全部が設けられてもよい。
【0168】
[第7の実施形態]
図35は、第7の実施形態に係る空調システムを適用したクリーンルームの構成を示す上面図である。また、図36(A)は、装置列の列方向に見たときのクリーンルームの一部の構成を示す側面図であり、図36(B)は、装置列の列方向に垂直な方向に見たときのその構成を示す側面図である。
【0169】
前述した第6の実施形態の空調システムでは、上部空調ユニット25が設置されている。本実施形態の空調システムでは、上部空調ユニット25に加えて、更に給気チャンバ、外調機及び熱交換器が設置されている。本実施形態の空調システムにおいて、給気チャンバ、外調機及び熱交換器以外の構成は第6の実施形態の空調システムと基本的に同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0170】
図35及び図36に示すように、クリーンルーム1の床2の上に、屋外から外気をクリーンルーム1内に供給するための給気チャンバ43が設置されている。本実施形態では、第1~第6の実施形態と同じく循環方式の空調を行うことを基本としているが、作業員に対する適切な作業環境を確保するために外気を導入して必要最低限の換気を行っている。給気チャンバ43が配置される位置は特に限定されない。例えば、本実施形態では、給気チャンバ34はクリーンルーム1の中央部に配置されている。
【0171】
図37は、給気チャンバの外観構成を示す斜視図である。また、図38は、給気チャンバの内部構成を説明する図である。
【0172】
図37及び図38に示すように、給気チャンバ43の側面43a、43bの各々には、複数(図38及び図39では、8つ)の円形状の吹出口44が設けられている。複数の吹出口44は、隙間を空けて給気チャンバ43の高さ方向及び幅方向に並んで配置されている。複数の吹出口44の各々には、空調ユニット26の吹出口18と同様に、吹出口44が吹き出される空気に旋回成分を与える複数のフィン45が取り付けられている。これにより、ドラフト感の無い吹き出しを行うことができる。また、給気チャンバ43は、内部にフィルタ46を備えている。給気チャンバ43では、外調機で空調された外気がダクト47を介して供給される。そして、当該外気中の粉塵等をフィルタ46によって除去した後、吹出口44から吹き出す。
【0173】
図39は、外調機の内部構成を説明する図である。
【0174】
図39に示すように、外調機48の一方の側面にはダクト47が接続され、当該側面に対向する他方の側面には外気を導入するための吸気口49が設けられている。また、外調機48は、内部にフィルタ50、冷却コイル51、加熱コイル52、加湿器53、加熱コイル54、加湿器55、冷却コイル56、加熱コイル57、ファン58及びフィルタ59を、吸気口49からダクト47に向かってこの順序で備えている。外調機48では、ファン58によってプレフィルタを介して吸気口49から外気を吸い込み、該外気中の粉塵等をフィルタ50によって除去する。その後、夏場の高温高湿度の外気に対しては、冷却コイル51又は冷却コイル56(あるいは、冷却コイル51、56の両方)によって冷却し、加熱コイル57によって再熱することにより、クリーンルーム1に供給する給気を形成する。また、冬場の低温低湿度の外気に対しては、加熱コイル52、加湿器53、加熱コイル54及び加湿器55を用いて二段階の加湿を行い、加熱コイル57によって再熱することにより、クリーンルーム1に供給する給気を形成する。このように二段階の加湿を行うことで、一段階の加湿では目標の湿度まで加湿することができない場合にも目標の湿度まで加湿できるようになると共に、加熱コイル52、54に供給する温水として比較的低温の温水を利用できるようになる。そして、当該給気中の粉塵等をフィルタ59によって
除去した後、ダクト47を介してクリーンルーム1内の給気チャンバ43に給気を供給する。
【0175】
図40は、クリーンルーム内における空気の流れを説明する図である。また、図40では、空調ユニット26の冷却コイル28に供給される冷水、上部空調ユニット25の冷却コイル33に供給される冷却水、及び外調機48の冷却コイル51及び加熱コイル52に供給される冷水の流れも併せて説明している。なお、図40では、説明を容易にするために、外調機48については冷却コイル51及び加熱コイル52のみを図示し、その他の冷却コイル56及び加熱コイル54、57の図示を省略している。
【0176】
図40に示すように、半導体製造工場の機械室35には、冷凍機36に加えて、更に外調機48及び熱交換器60が設置されている。
【0177】
冷凍機36の蒸発器40で生成された冷水は、バルブ41及びバルブ61がオンであるときに、ポンプ42により、その一部が空調ユニット26の冷却コイル28に供給されると共に、残りの部分が外調機48の冷却コイル51に供給される。冷水は、冷却コイル51を通るときに、ファン58によって導入された外気OAを冷却する。一方、冷水は、外気OAから熱を与えられて温められた冷水となり、蒸発器40に戻る。なお、蒸発器40で生成された冷水は、外調機48の冷却コイル56にも供給され、外気OAから熱を与えられて温められた冷水となった後に蒸発器40に戻る。
【0178】
また、蒸発器40で生成された冷水は、冷却コイル28を通るときに、クリーンルーム1の上部の空気(冷気CA2)から熱を与えられて温められた冷水となる。当該温められた冷水は、その一部が蒸発器40に戻ると共に、バルブ62がオフで、バルブ63及びバルブ64がオンであるときに、残りの部分がポンプ65によって外調機48の加熱コイル52に供給される。温められた冷水は、加熱コイル52を通るときに外気OAを加熱する。一方、温められた冷水は、外気OAに熱を奪われて、蒸発器40に戻る。なお、温められた冷水は、外調機40の加熱コイル54、57にも供給され、外気OAに熱を奪われた後に蒸発器40に戻る。
【0179】
また、冷却コイル28で温められた冷水は、バルブ62及びバルブ63がオフで、バルブ64がオンであるときには、熱交換器60を通って加熱コイル52に供給される。熱交換器60では、バルブ66がオンであるときに、半導体製造工場の付帯設備から温水が供給される。温められた冷水は、熱交換器60を通るときに温水から熱を与えられて加温され、加熱コイル52に供給される。
【0180】
続いて、図40を用いてクリーンルーム1内における空気の流れを説明する。空調ユニット26及び上部空調ユニット25によって行われる循環方式の空調については第6の実施形態と同じなので、本実施形態では、外調機48によって行わる空調について説明する。
【0181】
外調機48では、外気OAが、ファン58によって吸気口49から吸い込まれ、冷却コイル51、56、加熱コイル52、54、56及び加湿器53、55によって空調されて給気SAとなる。そして、給気SAは、図40において白抜きの矢印に示すように、可変ダンパ67を介して給気チャンバ43に供給され、吹出口44から吹き出される。このとき、吹出口44のフィン45によって給気SAに旋回成分が与えられるので、吹出口44から吹き出された給気SAは、周囲の空気を誘引して速やかに減速する。
【0182】
例えば、冬場の低温低湿度の外気OAを空調する場合には、加熱コイル52及び加湿器53によって外気OAを加熱及び加湿することにより、第一段階の加湿を行う。続いて、
加熱コイル54及び加湿器55によって外気OAを加熱及び加湿することにより、第二段階の加湿を行う。そして、加熱コイル57によって外気OAを再熱する。これらにより、クリーンルーム1に供給する給気SAを形成する。本実施形態では、加熱コイル52、54、57に供給する温水として、空調ユニット26の冷却コイル28で温められた冷水を使用している。例えば、冷却コイル28に供給される冷水の温度が14℃であるときに、冷却コイル28で温められた冷水の温度は26℃となる。これにより、半導体製造工場の付帯設備から供給される温水を使用しなくても、冬場の外気OAから所定の温度条件及び湿度条件(例えば、23±3℃の温度範囲、及び45±15%の湿度範囲)の給気SAを十分に形成することができる。
【0183】
ところで、クリーンルーム1の上部の空気(冷気CA2)の温度が比較的低いなどの理由により、冷却コイル28で温められた冷水の温度が26℃よりも1℃から数℃低くなることがある。本実施形態では、冷却コイル28と加熱コイル52との間に、半導体製造工場の付帯設備から温水が供給される補助用の熱交換器60が設けられている。例えば、半導体製造工場の付帯設備から供給される温度は40℃である。熱交換器60で熱交換することにより、冷却コイル28で温められた冷水の温度を26℃にすることができる。
【0184】
また、夏場の高温高湿度の外気OAを空調する場合には、例えば、冷却コイル51によって外気OAを冷却し、加熱コイル57によって再熱することにより、給気SAを形成する。本実施形態では、加熱コイル57に供給する温水として、空調ユニット26の冷却コイル28で温められた冷水を使用している。これにより、半導体製造工場の付帯設備から供給される温水を使用しなくても、夏場の外気OAから所定の温度条件及び湿度条件の給気SAを十分に形成することができる。
【0185】
以上説明したように、本実施形態の空調システムでは、外調機48の加熱コイル52、54、57に供給する温水として、空調ユニット26の冷却コイル28で温められた冷水を使用している。これにより、半導体製造工場の付帯設備から供給される温水を使用しなくても、外気OAから所定の温度条件及び湿度条件の給気SAを十分に形成することができる。このため、外気OAから所定の温度条件及び湿度条件の給気SAを効率良く形成することができる。
【0186】
[変形例]
前述した実施形態では、仕切り板20~22に、樹脂板のような板状の部材を使用しているが、例えば、透明なビニルシートのような可撓性の薄い部材を使用してもよい。透明な可撓性の薄い部材であれば、仕切り板20~22を通じて装置の状態を視認しやすい。また、可撓性があれば、人や物品の接触に対して変形可能であり、作業等の妨げになるのを防ぐことができる。なお、可撓性の部材を採用する場合は、遊動を抑制するために下端が半導体製造装置8へ着脱自在に取り付けられていることが好ましい。
【0187】
また、前述した実施形態では、空調ユニット26の給気部15の吹出口18に、例えば、フィン19のような冷気に旋回成分を与える旋回流発生器を取り付けて、置換空調を行う空調システムについて説明しているが、吹出口に旋回流発生器を取り付けずに置換空調を行う空調システムにも適用することができる。
【0188】
前述した実施形態では、給気部15及び吸気部16を備えた空調ユニット26をクリーンルーム1内に設置して、置換空調を行う空調システムについて説明しているが、置換空調を行う空調システムの形態はこれに限定されない。例えば、給気部については、クリーンルームの外部で冷気を形成し、クリーンルーム内の側壁の下部に設置された給気チャンバに供給することにより、給気チャンバの吹出口から冷気を吹き出してもよい。また、吸気部については、クリーンルーム内の側壁の上部や天井に吸気口を設け、クリーンルーム
の外部にファンを設置することにより、クリーンルーム内の高温の空気を外部に排気してもよい。また、前述した実施形態では、吸気部16がファンを備え、給気部15が冷却コイル及びフィルタを備えた空調ユニット26について説明しているが、空調ユニットの形態はこれに限定されない。例えば、空調ユニットのうち、吸気部にファン及び冷却コイルを備え、給気部にフィルタを備えてもよい。
【0189】
前述した実施形態では、置換空調を行う空調システムを、複数の半導体製造装置8が設置されたクリーンルーム1に適用した場合について説明しているが、1つの半導体製造装置8が設置されたクリーンルーム1に適用してもよい。この場合には、第1の仕切り板を、第2の領域のうちの半導体製造装置8上面のうちの前面側の部分の上に床に対して立った状態で配置してもよい。これに加えて、更に第2の仕切り板を、第1の領域及び第2の領域において、半導体製造装置8の側面及び後面の横にそれぞれ床に対して立った状態で配置してもよい。これに加えて、更に第3の仕切り板を、第2の領域の上部のうちの半導体製造装置8の前面側の部分の上の部分に床2に対して倒れた状態で配置してもよい。また、第3の仕切り板のみを、前述したように配置してもよい。更にまた、仕切り板に加えて、ファンを、第2の領域の上部のうちの半導体製造装置8の上方に配置してもよい。
【0190】
前述した実施形態では、置換空調を行う空調システムを、半導体製造装置8が設置されたクリーンルーム1に適用した場合について説明しているが、適用対象は、半導体製造装置8が設置されたクリーンルーム1に限定されない。例えば、温度管理が厳しい薬品等の製造装置が設置されたクリーンルームやクリーンルーム以外の部屋に適用してもよい。
【符号の説明】
【0191】
1 クリーンルーム
2 床
3~6 側壁
7 天井
8 半導体製造装置
9 ロードポート
10 容器
11 吊り材
12 天井フレーム
13 搬送装置
14 レール
15 空調ユニットの給気部
15a 給気部の前面
16 空調ユニットの吸気部
16a 吸気部の上面
17 空調ユニットの吸気口
18 空調ユニットの吹出口
19 空調ユニットのフィン
20 第1の仕切り板
21 第2の仕切り板
22 第3の仕切り板
23 ファン
24 歩廊
25 上部空調ユニット
25a 上部空調ユニットの側面
25b 上部空調ユニットの下面
26 空調ユニット
27 空調ユニットのファン
28 空調ユニットの冷却コイル
30 上部空調ユニットの吸気口
31 上部空調ユニットの吹出口
33 上部空調ユニットの冷却コイル
34 上部空調ユニットのファン
35 機械室
36 冷凍機
37 冷却塔
39 凝縮器
40 蒸発器
43 給気チャンバ
44 給気チャンバの吹出口
45 給気チャンバのフィン
47 ダクト
48 外調機
51、56 外調機の冷却コイル
52、54、57 外調機の加熱コイル
53、55 加湿器
58 外調機のファン
60 熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40