(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034484
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】シール受け付きスターター
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
E04F13/08 101R
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140739
(22)【出願日】2021-08-31
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ガルバリウム鋼板
(71)【出願人】
【識別番号】390018463
【氏名又は名称】アイジー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高梨伴弘
(72)【発明者】
【氏名】福久和寛
(72)【発明者】
【氏名】志藤洋一
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA42
2E110AB04
2E110AB23
2E110BA03
2E110CB02
2E110DA03
2E110DA09
2E110EA04
2E110EA05
2E110GA23W
2E110GA24Z
2E110GB02W
2E110GB02X
2E110GB02Y
2E110GB03W
2E110GB03X
2E110GB03Y
2E110GB05W
2E110GB05X
2E110GB05Y
2E110GB06W
2E110GB06X
2E110GB06Y
2E110GB07W
2E110GB07X
2E110GB07Y
2E110GB15Z
2E110GB32Z
2E110GB42Z
2E110GB43Z
2E110GB46W
2E110GB46X
2E110GB46Y
2E110GB46Z
2E110GB48W
2E110GB48X
2E110GB48Y
2E110GB54Z
(57)【要約】
【課題】スターターの載置面と固定部が離れすぎていると、固定部に必要以上に負荷がかかってしまい、さらにスターターと土台部の間にシーリング材を施工する場合には、シーリング材を受けるための別体の部材が必要であり、施工の手間がかかっていた。
【解決手段】スターターを胴縁51に取り付ける固定面2と、該固定面2には上部固定部2aおよび下部固定部2bを設け、サンドイッチパネル21等の外装材を載置する載置面3と、該載置面3の屋外側端部には突出片5、係止部6を設け、該載置面3の屋内側にはパネル受け部4を設けた。さらに固定面2の一方の端部には下端部9を設け、下端部9側を屋外側へ突出させたシール受け部10を設けたシール受け付きスターター1を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンドイッチパネルを施工する際に用いる長尺状のスターターであって、スターターを胴縁に取り付ける固定面と、固定面の略中央部から屋外側へ突出させた載置面と、載置面の屋外側端部を略垂直に屈曲させた突出片と、突出片と載置面の間には略垂直に形成した係止部と、載置面の屋内側にはパネル受け部を設け、さらに固定面の一方の端部には下端部を設け、下端部側の固定面から略垂直に屋外側へ突出させたシール受け部を設けたことを特徴とするシール受け付きスターター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサンドイッチパネル等の外装材を施工する際に使用するスターターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、サンドイッチパネル等の外装材を横張りで施工する際、胴縁に水切りとスターターを施工し、外装材を施工する。中でもスターターは、これまで数多くの発明により、施工性や高い美観性を実現したものが多く上市されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-223006号公報
【特許文献2】特開2018-44403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サンドイッチパネル等の外装材のスターターは、施工される場所に応じて、固定位置や留め付け方法、シーリング材の有無、水抜きパイプの有無など、多種多様な施工方法に対応しなければならない。例えば、スターターの留め付け方法では、外装材を載置する面の上側を固定する上留めと、外装材を載置する面の下側を固定する下留めが挙げられる。上留めであれば、その後の外装材の施工によって、スターターの留め付けに使用した固定具を完全に隠すことができる一方、施工する横胴縁は一定の大きさが必要である。そのため、横胴縁の大きさが十分に確保できないときや、外装材の下端から水切りまでの間に間隙を必要としないときには、下留めで施工する場合がある。
特許文献1では、上留め、下留め関係なく使用することができる略コの字形状のスターターが記載されているが、特殊な形状の水切りを使用しなければ、スターターと水切りを当接させた施工ができず、スターター施工位置の墨出しが必要になってくる。また、外装材の重量が1つの面に集中してしまい、変形を招いてしまう恐れがある。
【0005】
特許文献2では、同一部材を回転させることにより、上留め、下留めに対応したスターターが記載されているが、下留めで施工する場合、サンドイッチパネル等の外装材を載置する面と、固定具を用いて固定する固定部との距離が離れすぎてしまい、固定部12aに対して、必要以上に負荷がかかってしまう恐れがあった。また、水切りとスターターの間にシーリング材を施工するためには、シール受け部材を別途作成し、スターターに留め付ける必要があったため、施工性の観点でも、改善の余地があると言える。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明では、スターターを胴縁に取り付ける固定面に複数個の固定部を設け、サンドイッチパネル等の外装材を載置する載置面と、該載置面の屋外側端部には突出片、係止部を設け、該載置面の屋内側にはパネル受け部を設けた。さらに固定面の一方の端部には下端部を設け、下端部側を屋外側へ突出させたシール受け部を設けたシール受け付きスターターを提供する。
【0007】
また、
図5および
図6のように本発明品を下留めにて使用する場合、下端部9を水切り40の傾斜面42の屋内側端部へ当接させて施工することにより、シール受け付きスターター1の墨出しの工程を省略できる。さらに固定部を上部固定部2aおよび下部固定部2bのように、複数個設けることにより、シール受け付きスターター1自体は回転させることなく、固定する位置によって上留め、下留めを使い分けることができる。
【発明の効果】
【0008】
上記のように、本発明では、部材点数を減らし、同一部材で上留め、下留めに対応できるため、施工性が良くなり、さらにサンドイッチパネル等の外装材を載置する面の強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るシール受け付きスターターの側面図および斜視図である。
【
図2】本発明に係るシール受け付きスターターの従来例の側面図および斜視図である。
【
図3】本発明に係るシール受け付きスターターの施工に使用するサンドイッチパネルの一実施例である。
【
図4】本発明に係るシール受け付きスターターの施工に使用する水切りの一実施例である。
【
図5】本発明に係るシール受け付きスターターの施工順序を示す施工図である。
【
図6】本発明に係るシール受け付きスターターを下留めに使用したときの施工図である。
【
図7】本発明に係るシール受け付きスターターを上留めに使用したときの施工図である。
【
図8】本発明に係るシール受け付きスターターの従来例を使用したときの施工図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0010】
以下、図面を用いて本発明に係るシール受け付きスターターおよびその取付構造の実施例について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略している。
図1(a)は本発明に係るシール受け付きスターターの側面図、
図1(b)は本発明に係るシール受け付きスターターの斜視図である。
図2(a)は従来使用されていたスターターの上留めで使用する際の側面図、
図2(b)は従来使用されていたスターターの下留めで使用する際の側面図、
図2(c)は従来使用されていたスターターの斜視図である。
図3は本発明に使用されるサンドイッチパネルの一実施例を横張りに施工した際の鉛直方向の断面図である。
図4は本発明に使用される水切りの一実施例の側面図である。
図5は本発明に係るシール受け付きスターターを下留めに使用した際の施工順序を示す施工図である。
図6は本発明に係るシール受け付きスターターを下留めに使用した際の一実施例を示す施工図である。
図7は本発明に係るシール受け付きスターターを上留めに使用した際の一実施例を示す施工図である。
図8は従来使用されてきたスターターを上留めに使用した際の一実施例を示す施工図である。
【0011】
各図中に示されている軸は、各図面の方向を示している。X軸は屋外側(Xi)-屋内側(Xii)、Y軸は屋根側(Yi)-土台側(Yii)、Z軸は、水平方向をそれぞれ示しており、他の図面に記載されている軸も同様の方向を示している。
【0012】
図1には、本発明に係るシール受け付きスターター1を示しており、固定面2と、固定面2から屋外側へ略垂直に突出させた載置面3と、載置面3の屋外側端部を土台側へ略垂直に屈曲させた突出片5と、突出片5と載置面3の間には屋根側へ略垂直に設けた係止部6からなる。載置面3の屋内側にはパネル受け部4を設け、係止部6の端部には傾斜部7、凸部8が設けられている。固定面2には、上部固定部2aと下部固定部2bと固定面2c、土台側端部には下端部9が設けられ、固定部2cから屋外側へ略垂直に突出させたシール受け部10が設けられている。
【0013】
パネル受け部4の大きさは、載置面3の1/3~1/2程度が好ましく、固定面2cの厚さは固定面2の1/2~2/3程度が好ましい。また、上部固定部2aは施工性を考慮し、傾斜部7よりもYi方向側へ設けられるのが好ましい。下部固定部2bは、載置面3とシール受け部10のY軸方向の中間地点よりもYi方向側へ、固定面2cは、載置面3とシール受け部10のY軸方向の中間地点よりも、Yii方向側へ設けられるのが好ましい。
【0014】
シール受け付きスターター1は、アルミ成形によって成形されるのが好ましいが、その他、金属(例えば、鉄、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板など)や合成樹脂(例えば、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネイト樹脂など)からなるものを押出成形、ロール成形等によって成形したものでも良い。
【0015】
図2には、従来使用されていたスターター11を示しており、固定面12と、固定面12に対して略垂直に設けられた受け面13と、受け面13の屋外側端部に設けられた当接面14とから構成され、略工の字形状をしている。さらに固定面12には、固定部12aが設けられている。当接面14は、固定部12a側の当接面14が当接面14a、固定部12aとは反対側に位置する当接面14が当接面14bであり、受け面13を対称軸として、当接面14aと当接面14bは対称に設けられている。
【0016】
従来使用されていたスターター11は、施工する際、
図2(a)のように受け面13に対して屋根側(Yi側)に固定部12aが設けられる向きであれば、上留めで施工ができる。また、
図2(b)のように受け面13に対して土台側(Yii側)に固定部12aが設けられるように180度回転させれば、下留めで施工ができる。従来使用されていたスターター11は、単一部材で上留め、下留めを兼ねることができていたが、留め付け方に応じて、部材自体を回転させなければならなかった。スターター11は略工の字形状をしているが、固定面12は、受け面13を対称軸として、対称の形状ではない。そのため、下留めで施工する場合は、受け面13と固定部12aとの距離が離れすぎてしまうため、固定部12aに対して、必要以上に負荷がかかってしまう恐れがあった。また、水切りとの間にシーリング材を施工する場合は
図8のように、シール受け部材81を準備しなければならなかった。
【0017】
図3には、本発明に使用されるサンドイッチパネル21の一実施例を示しており、サンドイッチパネル21は、表面材22と裏面材23の間に芯材24が充填されている。表面材22および裏面材23は、鋼板(例えば、鉄、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ガルバ鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板(塩ビ鋼板等)、サンドイッチ鋼板(制振鋼板等)、合成樹脂鋼板材、例えば塩化ビニル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等(もちろん、これらを各種色調に調色し、塗装した鋼板も含む))からなり、ロール成形、プレス成形等によって各種形状に成形したものである。その間に充填されている芯材24は、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ユリアフォーム等の合成樹脂発泡体からなるものである。例えば、レゾール型フェノールの溶液と硬化剤、発泡剤を混合し、表面材22又は裏面材23の裏側に吐出させ、加熱して反応、発泡、硬化させて形成したものである。また芯材24の中には各種難燃材として軽量骨材(パーライト粒、ガラスビーズ、石膏スラグ、タルク石、シラスバルーン、水酸化アルミニウム等)、繊維状物(グラスウール、ロックウール、カーボン繊維、グラファイト等)を混在させ、防火性、耐火性を向上させることも可能である。
【0018】
サンドイッチパネル21の幅方向(Z軸)方向の上下端部は雄部25および雌部26からなる。雄部25は、段差27、固定用ネジ窪み28、嵌入れ凸部29、当接縁30、嵌入れ凸部31が設けられている。
【0019】
雌部26は、カバー部32、嵌受凹部33、当接部34、嵌受凹部35、連結凸部36、パッキン37が設けられている。パッキン37は例えば、ポリ塩化ビニル系、クロロプレン系、クロロスルホン化ポリエチレン系、エチレンプロピレン系、アスファルト含有ポリウレタン系、EPMやEPDM等の一般的に市販されているものである。
【0020】
図4は、本発明に使用される水切り40の一実施例を示しており、固定面41と、固定面41からから屋外側へ傾斜して突出した傾斜面42と、傾斜面42から土台側(Yii側)へ屈曲させた化粧面43からなる。その素材としては、例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板(塩ビ鋼板等)、サンドイッチ鋼板(制振鋼板等)等、(もちろん、これらを各種色調に塗装したカラー板、エンボス加工板を含む)の金属製板材である。
【0021】
図5は本発明に係るシール受け付きスターター1を下留めする場合の施工方法を示しており、
図6は下留めで施工した場合の一実施例の施工図である。シール受け付きスターターの一般的な施工方法は、墨出しを行った後、水切り40を胴縁51の取り付け、スターター用に再度墨出しを行った後、シール受け付きスターター1を下部固定部2bに固定具54を使用して胴縁51へ固定し、
図6のようにサンドイッチパネル21を施工する。なお、上留めで施工する場合の手順も同様であり、胴縁51への固定は上部固定部2aを使用する。
【0022】
突出片5は、サンドイッチパネル21がXi側からXii側に向かって圧力(主に風圧)を受けた際、カバー片32が変形した場合に押さえの役割を果たし、カバー片32の変形を最小限に抑えることができる。また、傾斜部7はサンドイッチパネル21を施工する際、当接部34が当たってしまった場合、当接部34をスムーズに載置面3へ誘導できるように、Xi側からXii側に向かって傾斜がついている。さらに、傾斜部7と凸部8を設けることにより、施工後のパッキン37との接触面積を大きく確保できるため、Xi側からXii側方向へ浸入しようとする雨水等に対して、より高い防水性を発揮することができる。
【0023】
シール受け付きスターター1は、水切り40の傾斜面42からサンドイッチパネル21のカバー部までの間隙を必要としない場合には、シール受け付きスターター1の下端部9を、水切り40の傾斜面42の屋内側端部に当接させて施工することができる。そのため、スターター用の墨出しの工程を省略することができ、施工性が向上する。
【0024】
下留めで施工する場合は、下部固定部2bを使用するため、パネル受け部4に近い位置で胴縁51に固定できるため、載置面3、パネル受け部4および係止部6への負荷を固定具54にも分散することができ、シール受け付きスターター1の変形を抑制することができる。シール受け付きスターター1の下端部9と水切り40を当接させた場合には、この負荷をさらに分散することができる。
【0025】
図7は、シール受け付きスターター1を上留めで施工した場合の一実施例を示した施工図である。胴縁の大きさが十分に確保できるときや、カバー部32から水切り40までの間隙にシーリング71を必要とするとき等に用いることができる施工方法である。上留めで施工する場合には、シール受け付きスターター1のシール受け部10の土台側(Yii側)に沿ってバックアップ材73を施工した後、シーリング71を施工することができる。別途、シーリング受部材を準備する必要がないため、サンドイッチパネル21を施工した後、現場判断でシーリングが必要になった場合にも、より円滑にシーリング材の施工を行うことができる。
【0026】
図8は、従来使用されていたスターター11を使用した場合の一実施例を示した施工図である。スターター11には、シール受けが設けられていないため、別部材としてシール受け部材81を準備し、スターター11に留め付ける必要があった。
【0027】
以上に開示したものは、一実施例に過ぎず、スターターとしての強度を十分に確保できるのであれば、より単純な形状でも良く、例えば、サンドイッチパネル21のカバー部32の変形を抑制できるのであれば、突出片5はなくても良い。