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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034490
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/45 20180101AFI20230306BHJP
   H04W 4/10 20090101ALI20230306BHJP
   H04B 1/38 20150101ALI20230306BHJP
【FI】
H04W76/45
H04W4/10
H04B1/38
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140746
(22)【出願日】2021-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000234937
【氏名又は名称】八重洲無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089956
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 利和
(72)【発明者】
【氏名】安部 恒夫
【テーマコード(参考)】
5K011
5K067
【Fターム(参考)】
5K011DA21
5K011DA29
5K011FA01
5K011KA12
5K011KA15
5K067AA13
5K067AA21
5K067BB02
5K067BB12
5K067DD23
5K067DD26
5K067EE02
5K067FF05
5K067GG02
5K067JJ03
(57)【要約】
【課題】複信同時通話が可能な特定小電力無線局では、通話モード中に他局から割り込みをかけて入れ替わることが困難である。
【解決手段】無線通信装置は、送信側回路のONが3分間継続で2秒間のOFFを介在させる第1の制御手段と、送受信回路がONで、自局音声信号が不検出であって、相手局の音声信号と相手局のキャリア信号の検出/不検出の各状態が確認されたときに送信側回路をOFFに切り替え、PTTのON信号又は前記各状態に応じた不検出信号の検出又は他局のキャリア信号の検出があったときに送信側回路をONに切り替える第2の制御手段と、送信側回路のOFFで、1.9秒毎に0.1秒間ON状態としてパルス信号を送信させる第3の制御手段とを備える。通信モードで会話が途絶えるときに送信側回路をOFFとして、他局からの割り込み可能な時間を長くする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定小電力無線局として複信方式での同時通話が可能な無線通信機において、
送信側回路のON状態が1分間以上で3分間以内の範囲で設定された第1の所定時間だけ継続したときに前記送信側回路をOFF状態に切り替え、そのOFF状態を2秒間以上で5秒間以内の範囲で設定された第2の所定時間だけ維持した後、ON状態に切り替える第1の制御手段と、
受信側回路と前記送信側回路とが共にON状態にあり、自局の音声信号が検出されず、相手局特定情報を含むキャリア信号(以下、「相手局のキャリア信号」という)及び相手局の音声信号が検出されている第1の状態、自局の音声信号及び相手局の音声信号が検出されず、相手局のキャリア信号が検出されている第2の状態、又は自局の音声信号と相手局の音声信号と相手局のキャリア信号のすべてが検出されていない第3の状態のいずれかが確認されたときに前記送信側回路をOFF状態に切り替え、その切り替え後、PTTボタンのON操作信号が検出されたとき、前記第1の状態で切り替えがあった場合であって自局の音声信号が検出されたとき、前記第2の状態で切り替えがあった場合であって自局の音声信号若しくは相手局の音声信号が検出されたとき、又は前記第3の状態で切り替えがあった場合であって自局の音声信号、相手局のキャリア信号若しくは前記相手局以外の他局の特定情報を含むキャリア信号が検出されたときに前記送信側回路をON状態に切り替える第2の制御手段と、
前記送信側回路がOFF状態で前記受信側回路がON状態にあり、前記受信側回路の不感状態の継続時間が2秒間に達する前に前記送信側回路を一定時間だけON状態に切り替えてパルス信号を送信させる第3の制御手段と
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記第1の制御手段による前記送信側回路の制御に係る前記第1の所定時間及び/又は前記第2の所定時間が、操作部からプログラマブルに変更できることとした請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記第2の制御手段が、前記第1の状態、前記第2の状態又は前記第3の状態のいずれかが2秒間以上で10秒間以内の範囲で前記第1から第3までの各状態に応じて設定された所定時間T1、T2、T3だけ継続したときに、前記送信側回路をOFF状態に切り替えることとした請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第2の制御手段による前記送信側回路の制御に係る前記所定時間T1、T2、T3は、T1≧T2≧T3の関係にあることとした請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第2の制御手段が、前記第1の状態の開始時から時間T1内に前記第2の状態になった場合には、前記第1の状態の開始時から時間T1の経過時と前記第2の状態になった時点から時間T2の経過時のいずれか早い方の時点で前記送信側回路をOFF状態に切り替え、前記第1の状態の開始時から時間T1内に前記第3の状態になった場合には、前記第1の状態の開始時から時間T1の経過時と前記第3の状態になった時点から時間T3の経過時のいずれか早い方の時点で前記送信側回路をOFF状態に切り替え、前記第2の状態の開始時から時間T2内に前記第3の状態になった場合には、前記第2の状態の開始時から時間T2の経過時と前記第3の状態になった時点から時間T3の経過時のいずれか早い方の時点で前記送信側回路をOFF状態に切り替える手段である請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記第2の制御手段による前記送信側回路の制御に係る前記所定時間T1、T2、T3は、操作部からプログラマブルに変更できることとした請求項3、4又は5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記第3の制御手段が、前記送信側回路を1.9秒間のOFF状態と0.1秒間のパルス信号の送信のためのON状態が交互に連続するように制御する手段である請求項1、2、3、4、5又は6に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信装置に係り、特に特定小電力無線局として複信方式の同時通話が可能な無線通信機における通信モードでの送信側回路の制御機能に係り、通信実行中の他局からの割り込みを容易にするものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築・土木・鉄道などの工事現場、森林作業現場、ホテルや旅館、比較的規模の大きい飲食店、病院や学校など様々な業務の中で携帯型の無線通信機が利用されている。
そして、この種の業務用無線通信機に関する標準規格については、電波法施行規則第6条に規定する特定小電力無線局の内、無線呼出を行う「無線電話用無線設備」として、1989年以来、一般社団法人電波産業会(ARIB)により策定・改訂されてきた標準規格番号:RCR STD-20(下記非特許文献1)がある。
【0003】
2台の無線通信機X,Yの回線接続手順(自動チャネル切替方式・複信方式による場合の例)は図9(下記非特許文献1のp.1-14を参照)に示すようなものである。
待受状態から発呼局と被呼局との間での制御信号/応答信号の送受信を実行して通信モードへ移行し、3分間以内の通信(複信同時通話)を実行して通信を終了させた後、2秒間以上の送信休止期間を設けて待受状態となり、以降、さらに通信を行う場合には前記の制御信号/応答信号の送受信手順から繰り返して実行することになる。
【0004】
ところで、下記非特許文献においては、無線設備の技術的条件が多種多様な事項について規定されているが、制御装置に関しては混信防止機能、送信時間制限装置、キャリアセンス及び回線接続手順の各事項について規定している。
【0005】
その内、送信時間制限装置(電波を発射してから次に示す送信時間内にその電波の発射を停止し、かつ、送信休止時間を経過した後でなければその後の送信を行わない機能を有する装置)については郵政省告示・平成元年第49号を受けたものであり、送信時間及び送信休止時間を「ア 通話チャネルを使用する場合の送信時間は、30秒以内とする。イ 周波数制御チャネルを使用する場合の送信時間は、0.5秒以内とする。ウ 送信休止時間は、2秒以上とする。」としているが、ただし書として「通信時間を自動的に3分以内に制限し、かつ、通信終了後2秒経過しなければその後の通信を行わない機能を有するもの並びに空中線電力が1mW以下であって、かつ、421.575MHz以上421.8MHz以下及び440.025MHz以上440.25MHz以下の周波数の電波を使用するものは、送信時間制限装置の備え付けを要しないものとする。」と規定している(下記非特許文献のp.1-10)。
【0006】
一方、前記規定に関して、無線通信機のユーザーにとっては一般的に通信時間をできる限り長く継続できることが好ましく、そのため、無線通信機のメーカーでは、前記ただし書に準拠した送信時間制御機能を実現するプログラムを無線通信機に具備させてその要求に応えるようにしている。
すなわち、許容される最長の通信時間である3分間に達するまで通信を実行させ、通信の終了後に要求される最短の送信休止時間である2秒間を送信休止に充てるようにしている。
【0007】
また、下記非特許文献の回線接続手順においては、「送信停止及び不感状態が2秒以上継続した場合は、通信終了とする。」とした通信終了条件が規定されている(下記非特許文献におけるp.1-13とp.1-14の注3)。
換言すると、送信側回路がOFF状態で受信側回路がON状態にあって、受信信号のない状態が2秒以上継続すると、自動的に通信を終了させることが要求されている。
【0008】
この規定によると、送信側回路がOFF状態である場合には受信信号が2秒間途絶えただけで通信終了となり、無線通信機のユーザーにとっては、その都度、待受状態からの回線接続手順を実行しなければならないために操作が煩雑になる。
そこで、無線通信機のメーカーではその回避策を採っている場合が多く、例えば、送信側回路がOFFで受信側回路がONの状態において、2秒間以内に一回パルス信号を送信させるように制御することで前記問題を解消させる方法などが採用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「特定小電力無線局・無線電話用無線設備/標準規格/RCR STD-20 5.0版」 一般社団法人電波産業会発行 2020年9月28日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
無線通信機同士の複信方式による通信(同時通話)は受信側回路と送信側回路をON状態にして行われるが、送信側回路については、前記送信時間制限装置に係るただし書の規定に基づいて、通話状態が継続しているか否かを問わず、継続的な通信時間が最長3分間又はそれに近い時間に設定されており、2秒間の送信休止時間を介在させながら通信が繰り返し実行されてゆく。
【0011】
その場合、一旦同時通話が開始されると、双方の無線通信機の送信側回路はその大半の時間帯においてON状態を保っているため、他局が複信方式の同時通話に係る対波の周波数(上記非特許文献1におけるp.1-5の表3-2とp.1-6の表3-4)に合わせてキャリアセンスを実行してもビジー状態となり、他局から割り込みをかけて入れ替わることはきわめて困難である。
すなわち、他局の無線通信機は通信中の各無線通信機における約3分間毎の送信休止時間(2秒間)のタイミングで回線接続手順を実行して割り込まざるを得ず、前記タイミングは他局の無線通信機において予知できるものではなく、また、3分間中の2秒間に割り込みタイミングが合致する確率はきわめて低いため、実際には、通信中に他局の無線通信機が割り込みをかけて入れ替わることは殆ど不可能に近い。
【0012】
そこで、本発明は、無線通信機間で複信方式の同時通話を行っている通信状態において、同時通話にできるだけ影響を及ぼさない範囲で、他局の無線通信機からの割り込みと入れ替わりを容易にした無線通信機を提供し、その無線通信機の機能により多人数が入れ替わりながら同時通話を行えるネットワークの構築と柔軟な運用を可能にすることを目的として創作された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、特定小電力無線局として複信方式での同時通話が可能な無線通信機において、送信側回路のON状態が1分間以上で3分間以内の範囲で設定された第1の所定時間だけ継続したときに前記送信側回路をOFF状態に切り替え、そのOFF状態を2秒間以上で5秒間以内の範囲で設定された第2の所定時間だけ維持した後、ON状態に切り替える第1の制御手段と、受信側回路と前記送信側回路とが共にON状態にあり、自局の音声信号が検出されず、相手局特定情報を含むキャリア信号(以下、「相手局のキャリア信号」という)及び相手局の音声信号が検出されている第1の状態、自局の音声信号及び相手局の音声信号が検出されず、相手局のキャリア信号が検出されている第2の状態、又は自局の音声信号と相手局の音声信号と相手局のキャリア信号のすべてが検出されていない第3の状態のいずれかが確認されたときに前記送信側回路をOFF状態に切り替え、その切り替え後、PTTボタンのON操作信号が検出されたとき、前記第1の状態で切り替えがあった場合であって自局の音声信号が検出されたとき、前記第2の状態で切り替えがあった場合であって自局の音声信号若しくは相手局の音声信号が検出されたとき、又は前記第3の状態で切り替えがあった場合であって自局の音声信号、相手局のキャリア信号若しくは前記相手局以外の他局の特定情報を含むキャリア信号(以下、「他局のキャリア信号」という)が検出されたときに前記送信側回路をON状態に切り替える第2の制御手段と、前記送信側回路がOFF状態で前記受信側回路がON状態にあり、前記受信側回路の不感状態の継続時間が2秒間に達する前に前記送信側回路を一定時間だけON状態に切り替えてパルス信号を送信させる第3の制御手段と を具備したことを特徴とする無線通信装置に係る。
【0014】
本発明における前記第1の制御手段は上記非特許文献1の送信時間制限装置に係る規定に基づく制御であり、実際上は、前記第1の所定時間については3分間又はそれに近い時間が、また前記第2の所定時間については2秒間又はそれに近い時間が設定される場合が多いと考えられるが、無線通信機の運用において採用され得る範囲としては、前者に関しては1分間以上で3分間以内、後者に関しては2秒間以上で5秒間以内を見込むことができる。
【0015】
前記第2の制御手段は、前記第1の制御手段による前記送信側回路のON/OFF制御では複信方式の通信モードにおいて他局からの割り込み機会がほとんど得られないため、前記受信側回路と前記送信側回路とが共にON状態にあって、通話が途絶えていると推測される第1から第3の状態のいずれかが確認されたときに、前記送信側回路をOFF状態に切り替えることにより他局に割り込み機会を提供する。
これを簡素化すると、自局の音声信号が不検出となった場合には、相手局の音声信号やキャリア信号の有無に拘わらず前記送信側回路をON状態からOFF状態へ切り替えることになり、その制御内容だけであれば3つの状態に分ける必要はないが、切り替え後に前記送信側回路をOFF状態からON状態へ戻すときの条件が前記各状態と対応付けられなければ、前記送信側回路のOFF状態への動作が妨げられるからである。
なお、相手局のキャリア信号は一般的には相手局特定情報を含むキャリア信号のことであるが、具体的には、特定の無線通信装置を呼び出すシステムであるトーンスケルチやコードスケルチやデジタルコードスケルチ等で利用されている相手局と一致した選択信号を含むキャリア信号(搬送波信号)のことである。
【0016】
前記第2の制御手段は、前記送信側回路をOFF状態とした後、一定の信号検出条件下でON状態に切り替える。
すなわち、前記の第1、第2及び第3の状態で前記送信側回路がOFF状態に切り替えられた場合において、PTTボタンのON操作信号が検出されたとき、又はそれぞれの状態で不検出となっていた信号のいずれかが検出されたとき、また特別に前記第3の状態で前記送信側回路がOFF状態に切り替えられた場合に関しては他局のキャリア信号が検出されたときに、それぞれ前記送信側回路がON状態に切り替えられる。
なお、第3の状態は相手局の音声信号と相手局のキャリア信号のいずれも検出されていない状態であるが、相手局の音声信号が検出される前提として当然に相手局のキャリア信号が検出されるため、相手局のキャリア信号の検出のみが条件となる。
また、「他局のキャリア信号が検出されたとき」とは他局からの割り込みが入る状態に外ならず、当然にそれに応じて前記送信側回路がON状態に切り替えられるが、これは本発明により他局の割り込み機会が拡大された効果が利用されたことを意味する。
したがって、通話の開始又はその前提状態を検知することで前記送信側回路をON状態として他局(相手局又は割り込んだ他局以外の局)からの割り込みができない状態に戻ることになる。
そして、前記送信側回路がOFF状態とされた時点からこのON状態に切り替えられる時点までが他局からの割り込み可能な時間帯となり、合理的条件で前記送信側回路がOFF状態となる時間帯を構成することにより、他局からの割り込み機会が多く得られるようにしている。
【0017】
前記第3の制御手段は、前記第2の制御手段により前記送信側回路をOFF状態とした場合に、上記非特許文献1において規定されている「送信停止及び不感状態が2秒以上継続した場合は、通信終了とする。」とした通信終了条件が作動しないようにするための制御であり、これによって前記送信側回路のOFF状態の持続が担保されて他局からの割り込み機会が安定的に得られる。
したがって、結果的には、複信方式での通信モードにおいて、前記第2の制御手段により前記送信側回路がOFF状態とされる時間帯の内、前記第3の制御手段により前記送信側回路がON状態とされる時間帯を除いた時間帯が他局からの割り込み可能時間となる。
【0018】
なお、前記第1の制御手段による前記送信側回路の制御に係る前記第1の所定時間及び/又は前記第2の所定時間は、操作部からプログラマブルに変更できるようにしておくことが望ましい。
【0019】
本発明において、前記第2の制御手段は、前記第1の状態、前記第2の状態又は前記第3の状態のいずれかが2秒間以上で10秒間以内の範囲で前記第1から第3までの各状態に応じて設定された所定時間T1、T2、T3だけ継続したときに、前記送信側回路をOFF状態に切り替える手段としてもよい。
【0020】
この第2の制御手段では、上記のように第1、第2又は第3の状態のいずれかが確認された際に直ちに前記送信側回路をOFF状態に切り替えるのではなく、各状態がそれぞれについて設定された所定時間T1、T2、T3だけ継続したときに前記送信側回路をOFF状態に切り替えるようにしている。
これは、前記の各状態が一定時間継続していることを確認して通話が途絶えていると判断し、通話が途絶える状態をより高い精度で予測・判断できるようにしたものである。
そして、この場合の継続時間は第1、第2又は第3の各状態に応じてT1、T2、T3として設定されるが、基本的には通信モードでの通話がどの程度の時間途絶えた場合に非通話状態へ移行しているとみなせるのかという意義を有しており、本発明の無線通信装置同士での会話のあり様を考慮して2~10秒間の範囲で選択設定される。
すなわち、通話のあり様と設定時間の関係で他局からの割り込み機会となる頻度が変化するが、一般的にはあまり長くするとその頻度は小さくなって、結果的に他局からの割り込み機会が少なくなる一方、あまり短くすると前記送信側回路のON/OFFが頻繁になって通話の妨げとなる可能性があるため、前記2~10秒間の範囲で選択することが妥当である。
【0021】
なお、前記第2の制御手段による前記送信側回路の制御に係る前記所定時間T1、T2、T3は、T1≧T2≧T3の関係とすることが望ましい。
前記のように所定時間T1、T2、T3は第1から第3の各状態に応じて経験的に2~10秒間の範囲で設定されるが、第1の状態から第3の状態の正順で通話継続の可能性が低くなる傾向(通話の途絶える可能性が高くなる傾向)があるため、T1>T2>T3の関係として、通話継続の可能性が低くなるほど、より短時間で送信側回路がOFFに切り替えられるようにしておくのが合理的である。
もっとも、間断なく会話が交わされて突然通信が切断されるような通話傾向の場合などでは、T1>T2>T3とすることにそれほど大きな効果は認められないため、単純にT1=T2=T3として設定することを排除するものではない。
【0022】
ところで、前記のように第1から第3の状態に応じてそれら各状態の継続所定時間をT1≧T2≧T3としていると、例えば、第1の状態が継続している時間帯に第2や第3の状態になった場合に、後発の第2や第3の状態の継続所定時間に切り替えてしまうと、第1の状態の継続所定時間が経過した後、さらに第2や第3の状態の継続所定時間が経過しなければ送信側回路をOFF状態にできないことがあり得る。
これは、第1の状態よりも第2や第3の状態の方が通話の途切れてしまう可能性がより高いことを考慮すると不合理な制御となり、それは第2の状態が継続している時間帯に第3の状態になった場合にも同様のことが言える。
したがって、前記第2の制御手段による制御としては、前記第1の状態の開始時から時間T1内に前記第2の状態になった場合には、前記第1の状態の開始時から時間T1の経過時と前記第2の状態になった時点から時間T2の経過時のいずれか早い方の時点で前記送信側回路をOFF状態に切り替え、前記第1の状態の開始時から時間T1内に前記第3の状態になった場合には、前記第1の状態の開始時から時間T1の経過時と前記第3の状態になった時点から時間T3の経過時のいずれか早い方の時点で前記送信側回路をOFF状態に切り替え、前記第2の状態の開始時から時間T2内に前記第3の状態になった場合には、前記第2の状態の開始時から時間T2の経過時と前記第3の状態になった時点から時間T3の経過時のいずれか早い方の時点で前記送信側回路をOFF状態に切り替えるようにすることが望ましい。
【0023】
なお、前記第2の制御手段による前記送信側回路の制御に係る前記所定時間T1、T2、T3についても、通話の多様な傾向を考慮して、操作部からプログラマブルに変更できるようにしておくことが望ましい。
また、前記第3の制御手段は、前記のように「送信停止及び不感状態が2秒以上継続した場合は、通信終了とする。」とした規定による通信終了条件を回避させるものであるが、前記送信側回路を1.9秒間のOFF状態と0.1秒間のパルス信号の送信のためのON状態が交互に連続するように制御する手段とすることが合理的である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の無線通信装置は、次のような効果を奏する。
複信方式での同時通話を行う通信モードでは、特定小電力無線局/無線電話用無線設備に係る標準規格(上記非特許文献1)で規定されている通信時間の制限範囲(郵政省告示 平成元年第49号)において連続的通信ができるだけ長く確保できるように、通信時間を3分間又はそれに近い時間に設定し、2秒間の送信休止時間を介在させながら通信を繰り返せるように制御することが一般的であるが、その通信時間の制御では前記同時通話中に他局が割り込みをかけることが殆ど不可能であることに鑑みて、自局の音声信号の有無及び相手局の音声信号/キャリア信号の有無を参照して通話の途切れ状態を予測して送信側回路をOFF状態に切り替え、逆に、その切り替え後にはPTTボタンのON操作信号や自局の音声信号の検出又は相手局の音声信号/相手局のキャリア信号の検出により送信側回路をON状態に切り替えるという制御を行うことにより、他局からの割り込み可能な時間をより多く介在させ、以って、多数の無線通信端末が使用されるような業務現場での端末間接続の切り替わりを容易にして、通信ネットワークの柔軟な運用を可能にする。
また、送信側回路のOFF状態への切り替えについて、自局の音声信号の有無及び相手局の音声信号/キャリア信号の有無の組み合わせに係る状態ごとに継続時間を設定しておき(通話の途切れの可能性が高いほど短時間)、前記状態が対応する継続時間だけ連続した場合に送信側回路をOFF状態に切り替えるようにすることで、通話の途切れを高い精度で検出できるようにして、より合理的な割り込み可能時間の設定を可能にする。
また、前記標準規格で規定されている通信時間と休止時間や、前記状態に応じた継続時間を操作部からプログラマブルに変更できるようにしたことで、無線通信端末が使用される業務現場で取り交わされる通話の傾向に応じて最適な送信側回路のON/OFF制御が行われるように調整設定することが可能になる。
なお、本発明によれば、送信側回路をOFF状態にしている時間帯が長くなるため、バッテリー電源の消耗を抑制できるという副次的効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る業務用無線通信機のブロック図である。
図2】実施形態1に係る送信側回路のON/OFF制御を示すタイムチャートであり、(A)及び(C)はそれぞれ既定の制御に係るもの、(B)は(A)の制御の中で実行される本発明の実施形態1の制御に係るものである。
図3】実施形態1に係る送信側回路のON/OFF制御に係るフローチャートである。
図4図3のステップS8~S10で送信側回路がOFF状態とされた段階で作動する送信側回路の制御[図2(C)に対応]に係るフローチャートである。
図5】送信側回路についての図3のステップS8~S10での制御と図4での制御を合成したタイムチャートである。
図6】実施形態2に係る送信側回路のON/OFF制御を示すタイムチャートであり、実施形態1に係る図2(B)に係るものを実施形態2の制御に係るタイムチャートとして書き換えたものである。
図7】実施形態2に係る送信側回路のON/OFF制御に係るフローチャートである。
図8図7のステップS7,S41*~S44*において、信号検出状態Di(i=1,2,3)に該当した後、その設定時間Tiが経過する前に信号検出状態Dj(j=1,2,3)に該当した場合における時間(Ti又はTj)の設定手順を示すフローチャートである。
図9】業務用無線通信機による複信方式の回線接続手順(自動チャネル切替方式の場合)の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の無線通信装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<実施形態1>
先ず、図1は実施形態1に係る業務用無線通信機のブロック図である。
この無線通信機の受信再生系は受信アンテナ11と受信復調部12と増幅器13とスピーカ14とからなり、受信アンテナ11で電波受信した信号が受信復調部12で復調され、その復調された音声信号が増幅器13で増幅された後、スピーカ14から音声再生出力される。
なお、以下において「受信側回路」というときは、受信復調部12と増幅器13を対象としているが、受信復調部12だけを対象としてもよい。
【0027】
一方、送信出力系はマイクロホン21と増幅器22と変調送信部23とアンテナ24とからなり、マイクロホン21から得られる音声信号は増幅器22で増幅され、変調送信部23が増幅された音声信号でキャリア信号(搬送波信号)を変調し、変調後の信号を電力増幅して送信アンテナ24から電波放射させる。
なお、以下において「送信側回路」というときは、増幅器22と変調送信部23を対象としているが、変調送信部23だけを対象としてもよい。
【0028】
そして、送信側回路22,23と受信側回路12,13を含むシステム全体は制御部30によって制御されるが、この実施形態の制御部30は3つのタイマー31,32,33を備えており、送受信の状態や音声信号の有無を確認しながら、各タイマー31,32,33を用いて送信側回路22,23のON/OFFに係る特徴的制御を実行する。
ただし、この実施形態1においてはタイマー31,33だけを使用し、タイマー32は下記実施形態2において使用する。
また、送信側回路22,23と受信側回路12,13についてON状態/OFF状態というときは、音声信号の有無に拘わらず、それら回路の動作状態/非動作状態を表すこととする。
【0029】
操作部41はPTT(Push to Talk)ボタンを含む各種ボタン類とダイヤルを備えており、同操作部41からの指示入力により、制御部30が通信モード設定、使用チャネル設定、送信出力や再生音声出力の調整などの各種制御を行う。
また、表示部42は液晶方式によるものであり、制御部30からの制御により通信モード/使用チャネルなどを表示させる。
【0030】
この無線通信機での制御部30による送信側回路22,23のON/OFF制御の概略は図2のタイムチャート(A)、(B)及び(C)に示される。
ここに、タイムチャート(A)は上記非特許文献1の通信時間の制限(郵政省告示 平成元年第49号)に対応する制御に係るものであり、タイムチャート(C)は同非特許文献のp.1-13と1-14の注3に対応する制御に係るものであり、タイムチャート(B)が本実施形態において付加された制御である。
そして、それらの制御は、図9に示した無線通信機X,Yの通信シーケンスにおいて、待受状態から一連の回線接続手順を経て通信状態へ移行した段階から各無線通信機X,Yで実行されるものである。
【0031】
図3のフローチャートは、前記無線通信機X,Yの一方をこの実施形態1の無線通信機とした場合における制御部30による送信側回路22,23のON/OFF制御に係るものであり、待受状態から回線接続手順を経て通信モードへ移行した後、図2(A)の基本制御の下に図2(B)の制御が実行される手順を示している。
なお、図3の制御手順の中で図2(B)の制御が実行されると、自動的に図2(C)の制御(図4のフローチャート)が開始されることになるが、その詳細は図3の制御手順において当該段階(ステップS8~S10)に至ったときに説明する。
【0032】
先ず、待受状態(受信側回路12,13:ON)から送信側回路22,23をON状態として一連の回線接続手順(図9参照)を実行して回線接続が完了すると、通信モードへ移行して受信側回路12,13と送信側回路22,23はON状態を保つ(S1~S5)。
そして、通信モードへ移行すると同時にタイマー31をリセットしてカウントを開始させる(S5,S6)。
このタイマー31は、図2(A)に示される基本シーケンスで送信側回路22,23を制御するために用いられるものであり、180秒間と2秒間をカウントするインターバルタイマーに相当するものである。
【0033】
通信モードへ移行すると、制御部30は、マイクロホン21から送信側回路22,23へ入力される自局の入力音声信号の有無、受信側回路12,13の受信復調部12から得られる相手局からの受信音声信号の有無、及び受信復調部12から得られる相手局のキャリア信号の有無をそれぞれ判定しており、それら信号の検出/不検出に係る3つの信号検出状態(D1/D2/D3)[図2(B)のTABLE(1)を参照]のいずれかに該当するかどうかを確認し続ける(S7)。
すなわち、状態D1は、自局の音声信号は検出されておらず、相手局の音声信号とキャリア信号は検出されている状態であり、状態D2は、自局と相手局の音声信号が検出されておらず、相手局のキャリア信号は検出されている状態であり、状態D3は、自局と相手局の音声信号と相手局のキャリア信号のいずれも検出されていない状態であるが、いずれも自局の音声信号の不検出が条件になっており、自局からみた通話の途切れを示す状態に他ならない。
【0034】
なお、自局の音声信号は増幅器22の出力側から検出してもよく、相手局からの音声信号は増幅器13の出力側から検出してもよい。
また、自局又は相手局からの音声信号の有無については音声信号に係る電圧が所定のしきい値以上であるか否かで判定することができ、相手局からの相手局情報を含むキャリア信号の有無については、NSQ(Noise Squelch)値とRSSI(Received Signal Strength Indicator)値の複合判定で行うことができる。
【0035】
そして、制御部30は、タイマー31が180秒をカウントする前に前記の3つの信号検出状態(D1/D2/D3)のいずれかに該当することが確認された場合には、直ちに送信側回路22,23をON状態からOFF状態に切り替えてその状態を維持する(S7→S13→S7,S7→S8)。
【0036】
一方、制御部30は、送信側回路22,23をOFF状態に切り替えた後、前記の各信号検出状態(D1/D2/D3)に対応した所定の信号が検出されるかどうかを連続的に確認し続ける(S9)。
ここに、各信号検出状態(D1/D2/D3)に対応する所定の信号検出条件(U1/U2/U3)とは、図2(B)のTABLE(2)に示されるように、信号検出条件U1についてはPTTボタンのON操作信号又は自局の音声信号の検出であり、信号検出条件U2についてはPTTボタンのON操作信号、自局の音声信号又は相手局の音声信号の検出であり、信号検出条件U3についてはPTTボタンのON操作信号、自局の音声信号、相手局のキャリア信号又は他局のキャリア信号の検出である。
【0037】
そして、制御部30は、前記切り替えに係るそれぞれの信号検出状態(D1/D2/D3)に対応する信号検出条件(U1/U2/U3)が確認されたときには、送信側回路22,23をOFF状態からON状態に切り替える(S9,S10)。
この実施形態1の無線通信機の特徴は、以上の送信側回路22,23のON→OFF/OFF→ONの切り替え手順におけるOFF状態となった時間帯が他局からの割り込み可能時間となる点にある。
すなわち、上記非特許文献1の送信時間制限装置の規定に準拠した従来の通信時間管理では他局からの割り込み機会がほとんど得られなかったのに対して、通話の途切れを検出してきめ細かく送信側回路22,23をOFF状態に切り替えて割り込み可能な時間を多くするようにしている。
信号検出条件U3-(4)にある他局のキャリア信号の検出は、正に送信側回路22,23がOFF状態に切り替えられたことで他局から割り込みがかかった状態に相当し、そのため、制御部30は直ちに送信側回路22,23をON状態に切り替えて割り込みに伴う回線接続手順の実行に備えることになる。
【0038】
したがって、信号検出条件U3-(4)に該当した場合には、タイマー31のカウントを停止させると共に、割り込みをかけた無線通信機との間で回線接続手順を実行し、回線接続の完了によって新たな通信モードへ入って、割り込みをかけた無線通信機との間で複信方式による同時通話がなされると共に、タイマー31はリセットされてカウントが開始される(S11,S12→S3~S6)。
一方、U3-(4)以外の信号検出条件であるU1、U2及びU3-(1)~(3)の場合、制御部30は、前記信号検出状態(D1/D2/D3)に該当した時点で送信側回路22,23をOFF状態としても相手局との通信モードが維持されたままであるためにタイマー31のカウントはそのまま進行させ、180秒に達するまでは信号検出状態(D1/D2/D3)と信号検出条件(U1/U2/U3-(1)~(3))の確認の度に送信側回路22,23のOFF/ON制御を繰り返すことになる(S11,S13→S7~S10)。
【0039】
ところで、ステップS8からステップS10までの時間帯で他局からの割り込みが無い場合は、送信側回路22,23がOFF状態にあり、受信側回路12,13がON状態で不感状態にあることになる。
したがって、その時間帯では図2(C)の制御が立ち上がる条件が成立する[図3、S8~S10での(注)]。
この図2(C)の制御に係る手順は図4のフローチャートに示される。
先ず、図3のステップS8で送信側回路22,23がON状態からOFF状態に切り替わると、タイマー33をリセットしてカウントを開始させる(S31,S32)。
【0040】
そして、タイマー33が1.9秒間をカウントする前に上記信号検出条件(U1/U2/U3)が確認されて送信側回路22,23がOFF状態からON状態に切り替わると、タイマー33のカウントを停止させて、再び送信側回路22,23がON状態からOFF状態に切り替わるかどうかを確認する動作に戻るが(S33,S34,S31)、送信側回路22,23がOFF状態のままでタイマー33が1.9秒間をカウントすると、送信側回路22,23を0.1秒間だけON状態にして、その0.1秒間にパルス信号を送信出力させる(S35,S36~S38)。
【0041】
前記パルス信号の送信後、タイマー33は2秒間をカウントするが、その時点でタイマー33は停止せしめられると共に、直ちにリセットされて再びカウントを開始する(S39,S40,S32)。
以降、送信側回路22,23がOFF状態で、受信側回路12,13がON状態で不感状態にあれば、2秒間に1回ずつ送信側回路22,23が0.1秒間だけON状態となってパルス信号を送信することになる。
【0042】
したがって、送信側回路22,23がOFF状態で図2(C)に係る制御手順が実行されることにより、上記非特許文献のp.1-13と1-14の注3に規定されている「送信停止及び不感状態が2秒以上継続した場合は、通信終了とする。」とした通信終了条件を回避させながら、送信側回路22,23を2秒間中の1.9秒間でOFF状態となる制御が可能になる。
【0043】
図5は、図3のステップS8からS10までの送信側回路22,23がOFF状態にある時間帯において図4の制御手順が実行された場合の送信側回路22,23のON/OFF状態に係るタイムチャートである。
同図に示されるように、前記時間帯においては、送信側回路22,23が1.9秒間のOFF状態と0.1秒間のON状態を交互に繰り返すことになり、1.9秒間のOFF状態が他局の割り込み可能時間となる。
特定小電力無線局の無線通信機同士での他局との回線接続のための所要時間は通常0.5~0.7秒間程度であるため、前記1.9秒間は他局の割り込みのための時間としては充分である。
【0044】
ところで、図3のステップS8からS10までの制御において、自局の音声信号が検出されると送信側回路22,23はOFF状態からON状態に切り替わるようになっているが、前記パルス信号は制御部30が変調送信部23で生成させて送信させるものである一方、自局の入力音声信号はマイクロホン21の出力側又は増幅器22の出力側から検出されるようになっているため、前記パルス信号が自局の入力音声信号として検出されることはなく、図3のステップS8からS10までの制御に影響を与えることはない。
【0045】
そして、図3における通信モードでのステップS7~S13はステップS11で信号検出条件がU3-(4)にならなければ繰り返し手順であり、送信側回路22,23がOFF状態となる時間帯(ただし、2秒周期でパルス信号送信のための0.1秒間の瞬間的ON状態あり)は当然に長短様々なパターンで構成される。
しかし、そのパターンとは関係なく、いずれにしてもタイマー31がインターバルの180秒間をカウントすると、その時点で送信側回路22,23は強制的にOFF状態に切り替えられ、同時にタイマー31はリセットされて次のインターバルである2秒間のカウントを開始する(S13~S15,S16)。
【0046】
この段階でのタイマー31のリセットとカウント開始は図2(A)の制御における送信側回路22,23の休止期間に相当する2秒間をカウントするためであり、その2秒間のカウントにより送信側回路22,23はOFF状態からON状態に切り替えられる(S15,S16,S17)。
また、この2秒間の休止期間は上記非特許文献にある送信時間制限装置の制約規定を遵守するものであり、送信側回路22,23をON状態に切り替えた後には、再度回線接続手順を実行した上で相手局との通信モード(複信方式での同時通話)へ移行することになる(S17→S3,S4,S5)。
【0047】
以降、ステップS3~S17の手順を繰り返し実行し、相手局との複信方式による同時通話を適宜実行することになるが、その通信モード中のステップS8~S10においては、送信側回路22,23がOFF状態となった時間帯で図5に示すような条件で他局からの割り込みが可能になり、従来のように図2(A)の制御だけで180秒間毎に挿入される2秒間の休止時間だけが割込み可能時間になる場合と比較して、遥かに高い確率で他局からの割り込み機会が提供されることになる。
【0048】
なお、図2(A)に係る送信側回路22,23のON/OFF制御は上記非特許文献1の送信時間制限装置に係る規定に基づくものであって、通信時間を3分以内として、通信終了後に2秒以上の休止時間を設けるという条件で選択することができる一方、通話のあり様によって図2(B)に係る送信側回路22,23のON/OFF制御が様々なパターンで入るため、前者の図2(A)に係るON/OFF制御を180秒間(通信時間)と2秒間(休止時間)の固定的条件とするよりも、規定の範囲内で変更できるようにしておく方が通信ネットワークの運用が円滑になることもある。
したがって、この実施形態1の無線通信機では、操作部41から機能設定モードを選択して、ボタン操作によって前記の通信時間や休止時間をプログラマブルに変更設定できるようになっている。
【0049】
<実施形態2>
この実施形態2に係る業務用無線通信機は、上記実施形態1のように3つの信号検出状態(D1/D2/D3)のいずれかが確認された場合に直ちに送信側回路22,23をON状態からOFF状態に切り替えるのではなく、それぞれの信号検出状態(D1/D2/D3)に応じて所定時間(T1/T2/T3)だけその状態が継続した場合に切り替えるようにした点に特徴がある。
したがって、無線通信機の基本的構成は上記実施形態1と同様で図1のブロック図に示されるものであり、制御部30がタイマー31を用いて図2(A)に係る制御を実行し、またタイマー33を用いて図2(C)に係る制御を実行することに関しても上記実施形態1と同様である。
【0050】
上記実施形態1と相違している点は、制御部30がタイマー32を用いて送信側回路22,23をOFF状態に切り替える制御手順にある。
図6は、上記実施形態1の図2(B)に相当するものであり、この実施形態2における送信側回路22,23のON/OFF制御を示すタイムチャートであるが、そのタイムチャートの上側に示されているTABLE(1a)では、上記実施形態1と同様の3つの信号検出状態(D1/D2/D3)に対応させて時間(T1/T2/T3)が設定されている。
なお、タイムチャートの下側に示されているTABLE(2)は上記実施形態1の場合と同様である。
【0051】
以下、図7のフローチャートに基づいて、この実施形態2における送信側回路22,23のON/OFF制御手順について説明する。
まず、図7図3のフローチャートを比較すれば明らかなように、ステップS1からステップS7まで、すなわち、待受状態から一連の回線接続手順を実行して回線接続が完了して通信モード(複信方式での同時通話可能)へ移行し、タイマー31をリセットしてカウントを開始させると共に、信号検出状態がD1/D2/D3のいずれかに該当するかどうかの確認を開始するまでの手順については上記実施形態1の場合と同様である。
また、図6においてTABLE(2)が図2(B)のTABLE(2)と共通であることからも明らかなように、この実施形態2の制御によって送信側回路22,23がON状態からOFF状態に切り替えられた後のステップS8からステップS17までの手順に関しても上記実施形態1の場合と同様である。
【0052】
したがって、それらの上記実施形態1と同様の手順を除いて、この実施形態2の特徴的手順だけを抽出すると、図7におけるステップS41*からS44*までの手順であり、以下においてはそれらとその前後の手順に絞り込んで説明する。
まず、制御部30は、3つの信号検出状態(D1/D2/D3)のいずれかに該当することを確認すると、それらの信号検出状態(D1/D2/D3)にあらかじめ対応付けられている時間(T1/T2/T3)をタイマー32にセットし、直ちにカウントを開始させる(S7,S41*)。
【0053】
ここに、各時間(T1/T2/T3)は、“信号検出状態(D1/D2/D3)がそれぞれTi(i=1,2,3)秒間継続すれば送信側回路22,23をON状態からOFF状態へ切り替える”という意義を有する時間であり、経験的に2~10秒間の範囲内で設定される。
各時間(T1/T2/T3)がその時間の範囲内で設定されることとしているのは、通話が途切れる時間の長短は無線通信機が使用される様々な現場で交わされる会話のあり様によって異なり、また、複信方式の同時通話において通話が(T1/T2/T3)秒間途絶えたときに、その後も通話の無い状態がある程度継続するであろうという推定に基づいて送信側回路22,23をOFF状態にして他局からの割り込み機会を設けることを企図したものであることから、あまり長くすると割り込みの機会があまり得られず、逆に短くすると送信側回路22,23が頻繁にON/OFFを繰り返し過ぎて会話に支障を来す場合があるという実際上の事由に基づいている。
そのため、各時間(T1/T2/T3)については、固定的なものとせずに、操作部41からのボタン操作によりプログラマブルに調整設定できるようしておくことが望ましい。
【0054】
また、各時間(T1/T2/T3)は、2~10秒間の範囲内で、例えば、T1=8秒間、T2=5秒間、T3=3秒間というように、T1>T2>T3となるように設定されている。
これは、3つの信号検出状態(D1/D2/D3)において、通話の途切れる予測可能性という基準でみるとD1<D2<D3であるため、その予測可能性が高い状態ほど短い継続時間で送信側回路22,23をOFF状態に切り替えて他局からの割り込み機会を早く提供することが合理的であるからである。
【0055】
そして、制御部30は、タイマー32のカウントが開始された後、信号検出状態(D1/D2/D3)に対応する時間(T1/T2/T3)がカウントされる前に、前記状態(D1/D2/D3)に対応した信号検出条件(U1/U2/U3)に係る信号(図6のTABLE(2)を参照)が検出された場合には、タイマー32のカウントを停止・リセットさせた後、再度信号検出状態(D1/D2/D3)に該当するかどうかの確認動作に戻る(S41*,S42*,S43*→S7)。
【0056】
一方、信号検出条件(U1/U2/U3)に係る信号が検出されることなく、タイマー32が時間(T1/T2/T3)をカウントすると、制御部30はその段階で送信側回路22,23をON状態からOFF状態に切り替える(S42*,S44*,S8)。
すなわち、図6に示すように、信号検出状態(D1/D2/D3)に該当した段階で、上記実施形態1のように直ちに送信側回路22,23をOFF状態に切り替えないで、該当した信号検出状態(D1/D2/D3)がそれに対応する時間(T1/T2/T3)だけ継続していることを確認した段階で切り替えを行うようにしている。
【0057】
なお、制御部30が、送信側回路22,23をON状態からOFF状態に切り替えた後も、該当した信号検出状態(D1/D2/D3)に対応する信号検出条件(U1/U2/U3)に係る信号を検出するかどうかを確認し続けて、その信号検出があった場合に送信側回路22,23をOFF状態からON状態に切り替えることは上記実施形態1の場合と同様である(S8~S10,S12)。
【0058】
ところで、3つの信号検出状態(D1/D2/D3)の内、例えば、状態D1に該当した後、タイマー32が時間T1をカウントする前に状態D2や状態D3となった場合、又は状態D2に該当した後、タイマー32が時間T2をカウントする前に状態D3となった場合においては、後発の状態で設定されている時間の方が短いため、先発の状態での設定時間をそのままカウントアウトさせるとすると、後発の状態で設定される時間を経過しても先発の状態で設定された時間が継続していることもあり得るが、そのような場合には後発の状態で設定される時間T2やT3をタイマー32にセットすることが望ましい。
【0059】
この実施形態2における前記課題についての対策としては、先に発生した信号検出状態Di(i=1,2,3)と後に発生した信号検出状態Dj(j=1,2,3)との関係において、図8に示すような手順でタイマー32にセットする時間を調整する対応方法がある。
先ず、制御部30において、信号検出状態Diに該当することが確認されると、その状態Diに対応した時間Ti(秒)がタイマー32にセットされてカウントを開始することになるが(S51,S52)、タイマー32がその時間Ti(秒)をカウントする前に信号検出状態Djに該当した場合(S53)には、i<jである場合とi>jである場合に分けて、それぞれの場合にタイマー32に対して次のような時間設定が行われる。
【0060】
i<jになる場合としては、DiがD1で、DjがD2又はD3の場合又はDiがD2で、DjがD3の場合であるが、DiよりもDjの方が通話の途切れる可能性がより高い状態であるために、タイマー32にセットされる時間についてはTi>Tjの関係になっている(S54)。
したがって、その場合には、Diに該当した時からTi(秒)経過した時点とDjに該当した時からTj(秒)経過した時点とで何れか早い方となる時間(Ti又はTj)をタイマー32にセットしてカウントを開始させる(S54,S55)。
【0061】
一方、i>jになる場合としては、DiがD2で、DjがD1の場合、又はDiがD3で、DjがD1又はD2の場合があるが、前記とは逆に、タイマー32にセットされる時間についてはTi<Tjの関係になっている(S56)。
そして、この場合はDiよりもDjの方が通話の途切れる可能性がより低い状態であるため、Djに該当した時点からTj(秒)をタイマー32にセットしてカウントを開始させる(S56,S57)。
【0062】
このように、信号検出状態Diに該当した後、タイマー32が時間Tiをカウントする前に、信号検出状態Djに変化した場合に、送信側回路22,23をON状態らOFF状態へ切り替えるまでの時間を合理的に選択してより精細な制御を行うことで、他局に対する割り込み機会を通話の途切れの可能性に対応させてより適切に提供することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の無線通信機は、特定小電力無線局として複信方式の同時通話が可能な無線通信機に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
11…受信アンテナ、12…受信復調部、13…増幅器、14…スピーカ、21…マイクロホン、22…増幅器、23…変調送信部、24…送信アンテナ、30…制御部、31…タイマー、32…タイマー、33…タイマー、41…操作部、42…表示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9